説明

透明部を有する漏水受板

【課題】ずい道等の構造物のコンクリート壁面の漏水部に漏水受板を取り付けて漏水部からの漏水を導水処理する導水装置において、導水路の内部を長期間に亘って、漏水受板を取り外すことなく外部から容易に目視観察可能とする。又、導水路内の水が冷却されて凍結してしまうのを防止する。
【解決手段】外板5と内板6とが、両側に間隔保持部7,7を介在させて一体化され、間隔保持部7,7間に水密な空間部9が形成されると共に、両側に取付端部11,11が設けられている。空間部9の内外の面部は透明部22b,22aとして形成されている。内板6の透明部22bの内面32の長手中央線に沿って中央の遮水突条33が突設されている。中央の遮水突条33は、コンクリート壁面3と内板6との間に形成された導水路4を左右に分割する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ずい道や地下道、地下室等の構造物のコンクリート壁面に取り付けられることにより該壁面との間で導水路を形成する、透明部を有する漏水受板に関するものである。より詳しくは、コンクリート壁面の漏水部からの漏水を受けてこれを導水処理する導水路の詰まり状態や、漏水部の拡大状態、漏水部の漏水量、壁面の剥落の進行状態等の導水路の内部状態を、漏水受板を取り外すことなく外部から容易に目視観察でき、しかも長期間に亘って目視観察可能とする透明部を有する漏水受板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ずい道や地下道、地下室等の構造物のコンクリート壁面の漏水部からの漏水を受けてこれを排水処理する手段の一つとして、実開昭61−121300号公報等が開示する導水装置が提案されている。
【0003】
該導水装置は、図32に示すように、構造物のコンクリート壁面aに所要間隔を置いて平行状態に固定される保持具bと、その幅方向の両側に設けられた挿入溝c,cに端縁部分dが挿入される漏水受板eとを具えている。該保持具bは、その一面に設けられた止水材fが前記壁面aに当接せしめられた状態で、該壁面aに打ち込まれたアンカーボルトgとこれに螺合するナットhとを用いて該壁面aに固定される。そして、隣り合う保持具b,bの対向する挿入溝c,cに、前記漏水受板eの両端縁部分d,dを挿入することにより、該漏水受板eと前記壁面aとの間で導水路jを形成し、該壁面aの漏水部kからの漏水を該導水路jにより排水溝に導水するものであった。
【0004】
かかる導水装置にあっては、該壁面aの漏水部kで成長した遊離石灰の塊や該壁面aの一部分で剥落して落下した剥落片等によって導水路jに詰まり状態が発生して導水路jの導水機能が劣化しやすい問題があった。
【0005】
このような導水路の詰まり状態等を点検するために、漏水受板の一部分を取り外して導水路を部分的に点検することが行われていたが、その取り外しや取り外した後における復旧工事が大掛かりとなって施工コストの上昇を招く問題があったばかりか、あくまでも部分的な点検であって導水路の全体を確実に点検することができない不完全な点検にならざるを得ない問題があった。
【0006】
そこでかかる問題点を解決せんとして、漏水を受ける受板とこれに対向する断熱板とを透光性を有する材料によって形成した導水装置が特開2005−220580号公報によって提案されている。該導水装置によるときは受板と断熱板が透明であるために、導水路の詰まり状態等の点検を、漏水受板や断熱板を取り外すことなく容易に行い得る利点があった。
【0007】
しかしながら該導水装置にあっては、漏水を受ける受板の、前記壁面に臨む内表面が平滑面に形成されていたことから、該漏水を受ける受板が前記壁面の漏水部からの漏水を受けてこれを導水する際、受けられた漏水が該受板の流下面を自由に流下することになる。その結果、該流下する水に含まれている遊離石灰や鉄分等の不純物が該流下面に付着していくことにより、前記受板全体の透明度が劣化して詰まり状態等の確認が困難となる問題があった。このような不純物の付着は、前記漏水部からの漏水が雪解け時や梅雨時には生じても真夏には生じにくい等により導水路の流下面に漏水が流れる状態と該流下面が乾燥した状態を繰り返す場合は特に多くなるため、かかるときは前記受板全体の透明度の劣化が比較的短期間の内に進行し易かった。
【0008】
又、該導水装置にあっては、前記受板の全体が透明に形成されていたため、該受板の側部分で成長した遊離石灰や該側部分に落下している剥落片をもが該透明な受板を通して見えることになり、美観を損なう問題があった他、該受板の中央部分の剥落片だけならまだしも該側部分の剥落片をも含めた多くの剥落片が下から見えることは、これらの剥落片が落下してくるような不安感を与えやすく好ましいものでなかった。
【0009】
【特許文献1】実開昭61−121300号公報(第2−4頁、図2)
【特許文献2】特開2005−220580号公報(第6−7頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みて開発されたものであり、漏水受板の良好な透明度を極力長く維持できるようにして、導水路の詰まり状態や、漏水部の拡大状態、漏水部の漏水量、壁面の剥落状態等の導水路の内部状態を、漏水受板を取り外すことなく長期間に亘って外部から容易に目視観察可能とした、透明部を有する漏水受板の提供を課題とするものである。更に進んで、導水路内に遊離石灰の塊や剥落片が存する場合においても導水路の美観を極力損なわないだけでなく、これらの塊や剥落片が落下してくるような不安感を緩和できる漏水受板の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため本発明は以下の手段を採用する。
即ち本発明に係る透明部を有する漏水受板(以下漏水受板という)の第1の態様は、外板と内板とが、両側に間隔保持部を介在させて一体化され、該間隔保持部間に水密な空間部が形成されると共に、該一体化物の両側には、構造物のコンクリート壁面に取り付く取付端部が設けられており、前記内板と前記壁面との間で前記壁面からの漏水を受ける導水路を形成する漏水受板であって、前記空間部の内外の面部の少なくとも幅方向中央部分が、該空間部の長手方向に延長し且つ前記導水路の内部を目視観察可能とする透明部として形成されている。そして、前記内板の透明部の、前記壁面に臨む内表面の幅方向の中間部に、該透明部の長手方向に延長する中央の遮水突条が連続状態に突設され、前記導水路の底面をなす流下面で受けられた前記漏水の水位が該中央の遮水突条の上端を超えないことを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る漏水受板の第2の態様は、外板と内板とが、両側に間隔保持部を介在させて一体化され、該間隔保持部間に水密な空間部が形成されると共に、該一体化物の両側には、構造物のコンクリート壁面に取り付く取付端部が設けられており、前記内板と前記壁面との間で前記壁面からの漏水を受ける導水路を形成する漏水受板であって、前記空間部の内外の面部の少なくとも幅方向中央部分が、該空間部の長手方向に延長し且つ前記導水路の内部を目視観察可能とする透明部として形成されている。そして、前記内板の透明部の、前記壁面に臨む内表面の長手中央線に沿って中央の遮水突条が連続状態に突設され、前記導水路の底面をなす流下面で受けられた前記漏水の水位が該中央の遮水突条の上端を超えないことを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る漏水受板の第3の態様は、外板と内板とが、両側に間隔保持部を介在させて一体化され、該間隔保持部間に水密な空間部が形成されると共に、該一体化物の両側には、構造物のコンクリート壁面に取り付く取付端部が設けられており、前記内板と前記壁面との間で前記壁面からの漏水を受ける導水路を形成する漏水受板であって、前記空間部の内外の面部の少なくとも幅方向中央部分が、該空間部の長手方向に延長し且つ前記導水路の内部を目視観察可能とする透明部として形成されている。そして、前記内板の透明部の、前記壁面に臨む内表面の、長手中央線の両側に所要間隔を隔てて2本の中央の遮水突条が平行して連続状態に突設され、前記導水路の底面をなす流下面で受けられた前記漏水の水位が該中央の遮水突条の上端を超えないことを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係る漏水受板の第4の態様は、前記第1、第2、第3の態様に係る漏水受板において、前記内板の透明部の、前記壁面に臨む内表面の両側縁部に沿って側部の遮水突条を連続状態に突設し、前記導水路の底面をなす流下面で受けられた前記漏水の水位が該側部の遮水突条の上端を超えないように構成するのがよい。
【0015】
本発明に係る漏水受板の第5の態様は、外板と内板とが、両側に間隔保持部を介在させて一体化され、該間隔保持部間に水密な空間部が形成されると共に、該一体化物の両側には、構造物のコンクリート壁面に取り付く取付端部が設けられており、前記内板と前記壁面との間で前記壁面からの漏水を受ける導水路を形成する漏水受板であって、前記空間部の内外の面部の少なくとも幅方向中央部分が、該空間部の長手方向に延長し且つ前記導水路の内部を目視観察可能とする透明部として形成されている。そして、前記内板の透明部の、前記壁面に臨む内表面の両側縁部に沿って側部の遮水突条が連続状態に突設され、前記導水路の底面をなす流下面で受けられた前記漏水の水位が該側部の遮水突条の上端を超えないことを特徴とするものである。
【0016】
前記第1、第2、第3、第4、第5の態様に係る漏水受板において、前記空間部の内外の面部の全体を透明部として形成するのがよい。又、これらの各漏水受板において、前記中央の遮水突条を透明に形成するのがよい。
【0017】
前記各漏水受板において、前記透明部の両側に存する部分は不透明部として形成することがある。
【0018】
前記第1、第2、第3、第4、第5の態様に係る漏水受板において、前記外板と前記内板とが、全体が透明な硬質合成樹脂からなるものとし、前記空間部の外の面部の少なくとも幅方向中央部分を構成する、前記外板の幅方向の中央部分を、透明のまま残して前記透明部とする共に、該透明部の両側に存する部分は、その外表面及び/又は内表面を不透明に塗装することによって不透明部とすることがある。
【0019】
前記第1、第2、第3、第4、第5の態様に係る漏水受板において、前記外板と前記内板とが、全体が透明な硬質合成樹脂を用いて構成されたものとし、前記空間部の内外の面部の少なくとも幅方向中央部分を構成する、前記内板の幅方向の中央部分及び前記外板の幅方向の中央部分を、共に、透明のまま残して前記透明部とすると共に、該透明部の両側に存する部分の内表面及び/又は外表面は、不透明に塗装することによって不透明部とすることがある。
【0020】
前記不透明部は、前記取付端部を除いて形成してよい。特に、不透明に塗装することによって不透明部を形成するときは、漏水受板の製造コストの低減を期し得る。
【発明の効果】
【0021】
本発明は以下の如き優れた効果を奏する。
(1) 本発明に係る漏水受板は、外板と内板との間に形成された空間部の内外の面部の少なくとも幅方向中央部分が、該空間部の長手方向に延長する透明部として形成されると共に、該内板の内表面に中央の遮水突条や側部の遮水突条が設けられているため、構造物のコンクリート壁面に該漏水受板が取り付けられて導水路が形成された状態で、該導水路を複数の分割水路に分割できることになる。
【0022】
その結果、本発明によるときは、該漏水受板を取り外すことなく、該透明部を透視して導水路の内部を外部から目視観察でき、漏水部における遊離石灰の成長状態や壁面の剥落状態、導水路の詰まり状態、漏水部の漏水状態、漏水部の拡大状態等の導水路の内部状態に応じて必要な処置を施すことができる。
【0023】
そして、前記内板に設けられている前記中央の遮水突条や側部の遮水突条によって、前記導水路が複数の分割水路に分割されることになるので、特定の分割水路に流入した漏水が他の分割水路に移動するのが阻止され、流下する漏水に含まれている遊離石灰や鉄分等の不純物によって透明部の全体が一様に汚れるのを防止できる。かかることから、導水路の内部を目視観察するために必要な透明度を、部分的なものとはなっても、極力長く維持させ得ることとなる。
【0024】
(2) 前記透明部の幅を、前記空間部の幅方向中央部分に止め、該透明部の両側に存する部分を不透明部に構成する場合は、前記壁面の漏水部で成長した遊離石灰の塊や該壁面で剥落した剥落片等が導水路に存していても、該導水路の両側部分に存するものは目視され難い状態となる。これによって、ずい道や地下道等の構造物の美観を極力損なわないようになし得るだけでなく、これらの塊や剥落片等が落下してくるような不安感を緩和できる。
【0025】
(3) 外板と内板とを両側に間隔保持部を介在させて一体化し、該間隔保持部間に水密な空間部を形成する如く構成されているため、内板と外板自体の断熱効果に加えて該空間部の空気層による断熱効果が得られる。かかることから本発明の漏水受板によるときは、寒冷地においても、該導水路内の水が冷却されて凍結してしまうのを防止できることとなる。
【実施例1】
【0026】
図1〜2において本発明に係る漏水受板1は、ずい道や地下道、地下室等の構造物2(例えばずい道2a)のコンクリート壁面3に取り付けられて導水路4を形成でき、該壁面3の漏水部8からの漏水を受けてこれを排水溝等の排水設備44に導水処理するものである。より具体的に説明すれば、該漏水受板1は、外板5と内板6とが、両側に間隔保持部7,7を介在させて一体化され、該間隔保持部7,7間に水密な空間部9が形成されると共に、該一体化物10の両側は、構造物のコンクリート壁面3に取り付く取付端部11,11とされた二重板構造を呈しており、前記内板6と前記壁面3との間で、前記壁面3の漏水部8からの漏水を受けるための前記導水路4を形成する。
【0027】
前記外板5は、本実施例においては図2〜4に示すように、全体が、例えば塩化ビニルやABS樹脂、ポリエチレン樹脂等の硬質合成樹脂(本実施例では塩化ビニル)を以て押出成型されており、樋状板部12の両側に、断面コ字状を呈する前記取付端部11,11が連設されている。該取付端部11は、該樋状板部12の側端縁13,13で側方に向け突出する基片15の両側縁に外の保持片16と内の保持片17が突設されることにより全体として断面コ字状を呈し、該内外の保持片17,16間に、溝状凹部19が形成されている。又該基片15には、例えば500mm間隔で挿通孔20が並設されている。そして該取付端部11,11には、合成ゴム弾性体等からなる止水材21,21が、前記溝状凹部19,19に密接に嵌め込まれて接着されることにより固定状態とされている。
【0028】
前記樋状板部12は、本実施例においては、幅が約220mmに設定されており、その幅方向の中央部分には、透明な硬質合成樹脂を以って、100mm幅の透明部22aが形成され、該透明部22aの両側に存する部分は、不透明な硬質合成樹脂を以って、不透明部35,35に形成されている。又前記間隔保持部7,7は、本実施例においては発泡ポリエチレン等の発泡合成樹脂製のものであり、肉厚が10mm程度で幅が60mm程度の帯状を呈し、その外側の面23は、前記樋状板部12の内面部25の両側部分26,26の形状に合致するように形成されると共に、その内側の面27の端部側は外方に向けて稍湾曲状態にある。かかる構成を有する間隔保持部7,7は、前記外側の面23,23が前記樋状板部12の前記内面部25の両側部分26,26に密接に当接され、且つ、その左右方向内端29,29が前記透明部22aの両側縁30,30に略合致されている。
【0029】
又前記内板6は、その両側部分31,31が前記左右の間隔保持部7,7の内側の面27,27に当接し得る樋状に形成され、全体が、例えば塩化ビニルやABS樹脂、ポリエチレン樹脂等の透明な硬質合成樹脂(本実施例では塩化ビニル)を以て押出成型されており、全体が透明に形成されている。又、該内板6の透明部22bの内表面(前記壁面3に臨む面)32には、その長手中央線に沿って、該内表面32と一体に、中央の遮水突条33が連続状態に突設されている。
【0030】
該中央の遮水突条33は、本実施例においては、透明な硬質合成樹脂を以って、透明に形成され、上下に長い断面長方形状を呈しており、前記透明部22a,22bを透かして視認できる。該中央の遮水突条33の上端34の高さは、前記導水路4の底面をなす流下面45で受けられた前記漏水の水位が該上端34を超えないように設定されている。本実施例においては該中央の遮水突条33の高さを3〜10mmに、例えば6mmに設定している。
【0031】
然して、前記樋状板部12の内面部25の両側部分26,26に前記左右の間隔保持部7,7の外側の面23,23を当接状態に接着すると共に、該左右の間隔保持部7,7の内側の面27,27に前記内板6の両側部分31,31を当接状態に接着することによって、該左右の間隔保持部7,7間に前記水密な空間部9が形成され、該空間部9の内外の面部の全体が透明部22b,22aとして形成された前記漏水受板1が構成される。そして、該透明部22b,22aの両側に存する部分は不透明部35,35に形成されている。本実施例においては、該透明部22b,22aの左右幅は100mmであり、該不透明部35,35の幅は60mmである。
【0032】
なお本実施例においては、前記内板6の透明部22bの内表面32と外板5の透明部22aの外表面36に汚れが付着しにくくするために、又、該透明部22aの外表面36に付着した汚れ(ずい道等の内部で発生した埃や排気ガス等による汚れ)を拭き取りやすくするために、該内表面32及び外表面36に、フッ素樹脂やシリコン樹脂等の撥水性樹脂を塗布することによって撥水表面処理を施している。
【0033】
かかる構成を有する漏水受板1を前記壁面3に取り付けるに先立って、図2に示すように、前記取付端部11,11の前記溝状凹部19,19に、合成ゴム弾性体等からなる前記止水材21,21を密接に嵌め込んで接着することにより、該止水材21,21を固定状態とする。
【0034】
その後図2、図5に示すように、前記壁面3に発生している前記漏水部8を前記内板6で覆うように前記漏水受板1を壁面3に取り付ける。その際、前記透明部22a,22bを透視しながら、該透明部22bが該漏水部8の多くの部分を覆うように該漏水受板1の左右の止水材21,21を壁面3に当接させるのであるが、このとき、前記中央の遮水突条33を前記内板6の長手中央線を示す目印線として利用すると、漏水受板1の取り付け作業を正確且つ容易に行うことができる。
【0035】
この状態で、前記挿通孔20を挿通し且つ前記止水材21を貫通したドリルで前記壁面3に削孔してアンカー孔37を形成する。そして、該アンカー孔37に打入されて該壁面3に植設されたアンカーボルト39のネジ軸部40を、前記止水材21と前記基片15の挿通孔20に貫通させると共に、該ネジ軸部40に座金41を嵌めてナット42を螺締する。これにより、図2に示すように漏水受板1が、前記止水材21,21を介して該壁面3に水密に取り付けられ、前記漏水部8からの漏水を受けて導水する前記導水路4が内板6と壁面3との間で形成されてなる導水装置43が構成される。該導水路4の底面をなす流下面45は、前記漏水部8からの漏水を受け、これを、両側の取付端部11,11から漏洩させることなく確実に導水して排水させることができる。
【0036】
このようにして形成された導水路4は、内板6と外板5との間に水密な空間部9が形成されているため、内板6と外板5自体の断熱効果に加えて該空間部9の空気層による断熱効果が得られる。これにより、寒冷地においても、導水路4内の水が冷却されて凍結してしまうのを防止できる。そして、前記空間部9の内外の面部としての前記透明部22a,22bは、図6に示すような、前記壁面3の漏水部8で成長した遊離石灰の塊46や該壁面3の一部分で剥落した剥落片47等による導水路4の詰まり状態、漏水部8の拡大状態、漏水部8の漏水量、壁面3の剥落の進行状態等の導水路4の内部状態を、前記漏水受板1を取り外すことなく外部から容易に目視観察可能とする。そして、これらの内部状態の観察情報に基づき、漏水受板1を取り外して遊離石灰の塊46や剥落片47等を除去して漏水受板を取り替えたり、壁面を補強したりする等の必要な処置を施す。
【0037】
又、漏水に含まれている遊離石灰や鉄分等の不純物の付着によって前記透明部22bの透明度が徐々に低下していくのはやむを得ないことであるが、前記中央の遮水突条33は、該透明部22bが一様に汚れるのを防止し、導水路4の内部状態を確認可能な程度の透明度を極力長く維持させる。
【0038】
これをより具体的に説明すれば、前記導水路4は、図7に示すように、前記中央の遮水突条33を境にして左の分割水路49aと右の分割水路49bに分割されるため、前記漏水部8からの漏水が、図7(A)(B)に示すように、該左右の分割水路49a,49bに流入して両分割水路を略同じ水深で或いは異なる水深で流れることの他、図7(C)に示すように、該左の分割水路49aにのみ流入したとすれば、該漏水は、左の分割水路49aを流下することになり右の分割水路49bを流下することはない。逆に図7(D)に示すように、前記漏水部8からの漏水が前記右の分割水路49bに流入したとすれば、該漏水は、右の分割水路49bを流下することになり左の分割水路49aを流下することはない。このように漏水部8からの漏水は、左右の分割水路49a,49bを同時に流下することの他、左の分割水路49aや右の分割水路49bに規制されて流下することもある。かかることから、前記中央の遮水突条33は、前記導水路4の透明部22bが一様に汚れるのを防止し、該透明部22bの、導水路4の内部状態を確認可能な程度の透明度を、部分的なものとはなっても、極力長く維持させることができるのである。透視可能部分が、透明部22bの幅方向の一部分だけとなっても、この一部分での目視観察(透明部22a,22bを通しての目視観察)によって導水路4の内部状態の全体を推測することが可能である。
【0039】
そして本実施例においては、前記透明部22b,22aの両側に存する部分が不透明部35,35に形成されているために、図6に示すように、前記漏水部8で成長した遊離石灰の塊46や該壁面の一部分で剥落した剥落片47によって導水路4に詰まり状態が発生した場合、該導水路4の両側部分に存するものは目視され難い状態となる。これによって、ずい道や地下道等の構造物の美観を極力損なわないようになし得るだけでなく、詰まり物が落下してくるような不安感を緩和できる。
【0040】
図8〜9は、前記内板6の前記透明部22bの内表面32の長手中央線に沿って中央の遮水突条33が連続状態に突設されると共に、該透明部22bの内表面32の両側縁部50,50に沿って側部の遮水突条51,51が連続状態に突設されてなる漏水受板1を示すものであり、前記導水路4が4つの分割水路49,49,49,49に分割されるように構成されている。本実施例においては、前記中央の遮水突条33は透明に形成され、上下に長い断面長方形状を呈しており、前記透明部22a,22bを透かして視認できる。又前記側部の遮水突条51,51は、前記透明部22bの側縁部50,50の外側で、即ち前記不透明部35で突設され、上下に長い断面長方形状を呈している。そして、該中央の遮水突条33の高さ及び該側部の遮水突条51,51の高さは、前記導水路4の底面をなす流下面45で受けられた漏水の水位が該中央の遮水突条33の上端34や側部の遮水突条51,51の上端52,52を超えないように、3〜10mm、例えば6mmの高さに設定されている。図8は、かかる構成を有する漏水受板1を壁面3に取り付けて構成された導水装置43を示すものである。
【0041】
漏水部8における漏水は、壁面3を伝い流れて該漏水部8の周辺で滴下することや、拡大した漏水部の先側部分で滴下することもあるが、前記側部の遮水突条51,51が突設されてなる前記漏水受板1によるときは、図8(B)に示すように、該周辺で滴下する漏水や該先側部分で滴下する漏水を側方の分割水路49cに流入させることができるため、滴下した漏水の流下を分割水路でより細かく規制できることになる。このようなことから本実施例に係る漏水受板1は、中央の遮水突条33だけが設けられてなる前記漏水受板1に比し、透明部22bの必要な透明状態(導水路4の内部の状態を確認可能な程度の透明状態)をより長く維持させることができる。
【0042】
そして本実施例においては、前記透明部22b,22aの両側に存する部分が不透明部35,35に形成されているために、図6に示したと同様に、前記漏水部8で成長した遊離石灰の塊46や該壁面の一部分で剥落した剥落片47によって導水路4に詰まり状態が発生した場合、該導水路4の両側部分に存するものは目視され難い状態となる。これによって、ずい道や地下道等の構造物の美観を極力損なわないようになし得るだけでなく、詰まり物が落下してくるような不安感を緩和できる。
【0043】
図10〜11は、本発明に係る漏水受板1のその他の実施例を示すものであり、前記外板5と内板6は共に、平板状に形成されている。
【0044】
該外板5は、全体が透明に形成されており、例えば200mmの幅寸法を有する平板部53の両側に、平板状を呈する前記取付端部11,11が連設されている。そして該平板部53の内面部55の両側部分56,56には、断面矩形状を呈する帯状の間隔保持部7,7(例えば肉厚が10mmで幅寸法が50mm)の外側の面23,23が接着されている。
【0045】
又前記内板6は、全体が透明に形成されており、前記平板部53と略等幅の平板状を呈している。又、該内板6の透明部22bの内表面32には、その長手中央線に沿って中央の遮水突条33が連続状態に突設されている。本実施例においては、該中央の遮水突条33は透明に形成され、上下に長い断面長方形状を呈しており、前記透明部22a,22bを透かして視認できる。
【0046】
前記構成を有する内板6は、その両側部分59,59が、前記のようにして外板5に接着されている左右の間隔保持部7,7の内側の面27,27に当接状態で接着される。これにより、該左右の間隔保持部7,7間に水密な空間部9が形成され、該空間部9の内外の面部が透明部22b,22aとして形成されると共に、該透明部22b,22aの両側に存する部分が不透明部35,35に形成された前記漏水受板1が構成される。本実施例においては、該透明部22b,22aの左右幅が100mmに設定されると共に該不透明部35,35の幅が50mmに設定されている。
【0047】
かかる構成を有する二重板構造の漏水受板1は、図10に示すように、前記壁面3に所要間隔を置いて平行状態に固定されたS字状屈曲の固定具60,60を介して該壁面3に取り付けられる。この取り付けに際しては、前記平板状の取付端部11,11が、該固定具60,60の左右対向する挿入溝61,61に挿入されると共に、該壁面3に植設されたアンカーボルト39のネジ軸部40が該取付端部11の挿通孔62に挿通せしめられ、ナット42で締め付けられる。これにより、該取付端部11,11は、前記固定具60と共に前記壁面3に固定され、前記壁面3と前記内板6との間で導水路4が形成される。このようにして形成された導水路4は、内板6と外板5との間に水密な空間部9が形成されているため、内板6と外板5自体の断熱効果に加えて該空間部9の空気層による断熱効果が得られる。かかる構成の漏水受板1によるときは、寒冷地においても、導水路4内の水が冷却されて凍結してしまうのを防止できるのはもとより、前記中央の遮水突条33により、前記と同様にして、漏水部8からの漏水を左右の分割水路49a,49bで規制して流下させることができるため、前記内側の透明部22bの、導水路4の内部の状態を確認可能な程度の透明度を極力長く維持させることができる。
【0048】
図12は、外板5と内板6が共に、全体が透明な平板状に形成されてなる前記漏水受板1において、更に、該内板6の前記透明部22bの内表面32の両側縁部50,50に沿って側部の遮水突条51,51を連続状態に突設した場合を示すものである。かかる構成の二重板構造の漏水受板1によるときは、内板6と外板5自体の断熱効果に加えて、前記内板6と外板5との間に形成されている空間部9の空気層による断熱効果が得られるため、寒冷地においても、導水路4内の水が冷却されて凍結してしまうことを防止できるのはもとより、前記と同様にして、漏水部8からの漏水の流下を4つの分割水路49,49,49,49によってより細かく規制できることになり、中央の遮水突条33だけが設けられてなる前記二重板構造の漏水受板1に比し、透明部22bの前記必要な透明状態をより長く維持させることができる。
【0049】
図13〜14は、外板5と内板6が共に、全体が透明な平板状に形成されてなる前記漏水受板1のその他の実施例をその使用状態で示すものである。前記実施例においては、内板6の幅が外板5の幅に比して前記取付端部11,11の幅分だけ小さく形成されているが、本実施例においては、外板5と内板6が同幅に形成されている。そして、該外板5と内板6の両側に、前記と同様構成の間隔保持部7,7が介在され接着されることによって該外板5と内板6とが一体化されており、該左右の間隔保持部7,7間に水密な空間部9が形成され、該空間部9の内外の面部の全体が透明部22b,22aとして形成されている。そして、かかる構成を有する漏水受板1の該一体化物の両側としての二重板の取付端部11,11が、前記壁面3に所要間隔を置いて平行状態に固定された(アンカーボルト39とナット42で固定されている)固定具60,60の左右対向する挿入溝61,61に密接に挿入されている。そして該漏水受板1においては、前記内板6の内表面57に、その長手中央線に沿って中央の遮水突条33が連続状態に突設されている。
【0050】
又図15に示す漏水受板1においては、内板6の透明部22bの内表面32に中央の遮水突条33が連続状態に突設されることに加えて、該内板6の透明部22bの内表面32の両側縁部50,50に沿って側部の遮水突条51,51が連続状態に突設されている。その他の構成は、図13に示す場合と同様である。
【0051】
そして、図13や図15に示す漏水受板1は、前記と同様にして、内板6と外板5自体の断熱効果に加えて前記空間部9の空気層による断熱効果が得られるため、寒冷地においても、導水路4内の水が冷却されて凍結してしまうのを防止できるのはもとより、漏水部8からの漏水を分割水路49で規制して流下させることができるため、前記内側の透明部22bの、導水路4の内部の状態を確認可能な程度の透明部を極力長く維持させることができる。
【0052】
なお、図10〜11、図12、図13〜14、図15に示す前記各漏水受板1においても、前記内板6の内表面57と前記外板5の外表面66に、前記と同様にして撥水表面処理を施すのがよい。
【実施例2】
【0053】
本発明は、前記実施例で示したものに限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。その一例を挙げれば次のようである。
【0054】
(1) 本発明の漏水受板1において、漏水を受ける前記内板6の幅(漏水を受ける部分の幅)に対する前記透明部22a,22bの幅の割合は、前記漏水受板1を壁面3に取り付けることによって形成される導水路4の内部を外部から目視観察するのに支障がないように2割以上に設定するのがよい。
【0055】
このような目視観察を可能とすることに加えて、透明部22a,22bの両側に存する部分を不透明部35,35として、導水路4の内部の両側部分を目隠しするように構成する場合は、前記割合を2割〜8割に、好ましくは3割〜7割に設定するのがよい。
【0056】
かかる両方の機能を具える漏水受板1の透明部22a,22bの幅を、図8に示す漏水受板1に代表させて例示すれば、漏水を受ける内板6の幅Lが200mmの場合は透明部22a,22bの幅を40〜160mmに設定し、好ましくは60〜140mmに、例えば図16(A)に示すように80mmに設定する。又、漏水を受ける内板6の幅が300mmの場合は透明部22a,22bの幅を60〜240mmに設定し、好ましくは90〜210mmに、例えば図16(B)に示すように100mmに設定する。又、漏水を受ける内板6の幅Lが400mmの場合は透明部22a,22bの幅を80〜320mmに設定し、好ましくは120〜280mmに、例えば図16(C)に示すように150mmに設定する。又、漏水を受ける内板6の幅Lが500mmの場合は透明部22a,22bの幅を100〜400mmに設定し、好ましくは150〜350mmに、例えば図16(D)に示すように200mmに設定する。
【0057】
本発明の漏水受板1の使用上の選択に際しては、壁面3における漏水部8の拡がり状態や剥落部分の拡がり状態に合わせて、該漏水部や該剥落部分の全体を覆うことができる所要幅のものを選択する。そして、該漏水部8の拡がり状態や剥落部分の拡がり状態によっては、図17〜18に示すように、所要幅の漏水受板1を屈曲状態や枝分かれ状態にして壁面3に取り付けることもある。
【0058】
(2) 本発明の漏水受板1において、前記空間部9の内外の面部の少なくとも幅方向中央部分を、該空間部9の長手方向に延長し且つ前記導水路4の内部を目視観察可能とする透明部22a,22bとして形成するとは、例えば図19に代表させて示すように、内外の面部の幅方向の一部分のみを透明部22a,22bとして形成する場合を含むものである。
【0059】
又、前記空間部9の内外の面部の全体を透明部22a,22bとして形成する場合、図13〜15に示すように、内板6と外板5の双方を全体透明に形成することの他、図20(A)(B)に示すように、何れか一方のみを全体透明に形成し、他方を部分透明に形成することもある。更には、内外56と外板5の双方を部分透明に形成することもある。
【0060】
(3) 前記中央の遮水突条33を透明部22bの内表面32の長手中央線に沿って突設するとは、図21に実線で示すように、該長手中央線に正しく沿わせて突設することの他、図21に破線又は一点鎖線で示すように、該長手中央線の左右に10mm程度の範囲で位置をずらして突設することも含まれる。又、側部の遮水突条51,51を透明部22bの内表面32の左右の側縁部50,50に突設するとは、図22に実線で示すように該側縁部50,50に正確に位置させて突設することの他、図22に破線又は一点鎖線で示すように、該側縁部50,50の左右に10mm程度の範囲で位置をずらして突設することも含まれる。又、本発明の課題を達成できる限り、該中央の遮水突条33を、前記長手中央線の左右に10mmを越える範囲で位置をずらして突設することがある。これは、壁面3に臨む内表面の幅方向の中間部に中央の遮水突条33を突設する場合の一例である。又、側部の遮水突条51は、前記側縁部の左右に10mmを越える範囲で位置をずらして突設することもある。
【0061】
(4) 前記中央の遮水突条33や前記側部の遮水突条51,51は、前記内板6と一体に形成されることの他、接着や溶着等の手段で後付けされることもある。
【0062】
(5) 前記漏水受板1の左右の取付端部11,11の、前記壁面3に対する固定手段は、水密を確保して固定できる手段であれば、前記の他、各種に設定され得る。
【0063】
(6) 図23(A)(B)(C)は、本発明に係る漏水受板1のその他の実施例を示すものであり、透明部22bに、その長手中央線の両側に所要間隔を隔てて、例えば50mmの間隔を隔てて、2本の中央の遮水突条33,33が突設されている。この場合は、導水路4が、該2本の中央の遮水突条33,33によって3つの分割水路49,49,49に分割されることになり、透明部22bの必要な透明度をより長く確保できることになる。又図24は、該実施例において、更に、透明部22bの両側縁部50,50に沿って側部の遮水突条51,51を連続状態に突設してなる漏水受板1を示すものである。
【0064】
(7) 図25(A)(B)は、本発明に係る漏水受板1のその他の実施例を示すものであり、中央の遮水突条33と側部の遮水突条51,51が設けられてなる図8や図12に示されているような漏水受板1において、前記中央の遮水突条33が省略されている。
【0065】
(8) 前記中央の遮水突条33や前記側部の遮水突条51は、前記実施例においては断面長方形状に形成されているが、分割水路49に流入した漏水の流れ状態を規制できるものであれば、断面正方形状や断面三角形状等の他の断面形状に形成されることもある。
【0066】
(9) 本発明に係る漏水受板1が複数本の中央の遮水突条33を具えたり複数本の側部の遮水突条51を具えたり、中央の遮水突条33と側部の遮水突条51を具える等、複数本の突条を具える場合、各突条の高さが異なることもある。
【0067】
(10)前記中央の遮水突条33は、透明部22a,22bの透視による導水路4の内部の確認を容易化する上では透明に形成するのが好ましが、前記導水路4の内部の目視観察に支障がない場合は不透明に形成されることもある。又、前記側部の遮水突条42は透明に形成されることもある。
【0068】
(11)前記透明部22bの内表面32の両側縁部50,50に沿って側部の遮水突条51,51を連続状態に突設する場合、図26に示すように、該側部の遮水突条51,51を透明樹脂部67と不透明樹脂部69の合体によって形成すると、漏水受部7における透明樹脂部67と不透明樹脂部69の接合部70の強度アップが図られて好ましい。
【0069】
(12)本発明の漏水受板1は、例えば図27に示すように、内板6と外板5とを端部側で一体に形成することもある。このように構成した場合、該内板6と該外板5の両側に、その端部6a,5a相互を連結するように板状の間隔保持部7,7が介在されている。
【0070】
(13)図28(A)(B)、図30(A)(B)は、本発明に係る漏水受板1のその他の実施例を示すものである。
【0071】
図28(A)(B)に示す漏水受板1は、外板5と内板6とが、全体が透明な硬質合成樹脂を用いて構成されており、両側に間隔保持部7,7を介在させて一体化され、該一体化物の両側に、前記コンクリート壁面3に取り付く取付端部11,11が設けられている。該外板5は本実施例においては、樋状板部12の両側に、断面コ字状を呈する、前記と同様構成の取付端部11,11が連接されている。該樋状板部12は、その幅方向の中央部分が、透明のまま残されて透明部22aとされると共に、該透明部22aの両側に存する部分は、その外表面74が不透明に塗装されることによって(塗装部分を太線で示し符号71を付している)不透明部35とされている。該不透明部35は、前記取付端部11,11も含めて形成してもよいのであるが、本実施例においては該取付端部11,11を除いて形成している。又本実施例においては、前記内板6は、樋状に形成され、全体が透明のままであり、該内板6の透明部22bの内表面(前記壁面3に臨む面)32には、例えばその長手中央線に沿って、中央の遮水突条33が連続状態に突設されている。かかる構成を有する漏水受板1にあっては、両側の間隔保持部7,7間に形成された水密な空間部9の内外の面部のうち、外の面部の幅方向中央部分が透明部22aとされ且つ内の面部の全体が透明部22bとして形成された状態にある。
【0072】
又、図29(A)に示すように、前記透明部22aの両側に存する部分の内表面72を不透明に塗装することによって、或いは図29(B)に示すように、前記外表面74と該内表面72の双方を不透明に塗装することによって前記不透明部35を構成してもよい。又、前記空間部9の外の面部の全体を透明部22aとすると共に、その両側に存する部分を前記のように不透明部35としてもよい。
本実施例において、前記遮水突条(中央の遮水突条33や側部の遮水突条51)の本数や突設位置は、前記と同様にして適宜変更してよい。
【0073】
又、図30(A)(B)に示す漏水受板1は、外板5と内板6とが、全体が透明な硬質合成樹脂を用いて構成されており、両側に間隔保持部7,7を介在させて一体化され、該一体化物の両側に、前記コンクリート壁面3に取り付く取付端部11,11が設けられている。該外板5と該内板6とは、共に、その幅方向の中央部分が、透明のまま残されて透明部22a,22bとされている。そして、該透明部22aの両側に存する部分は、その外表面74が不透明に塗装されることによって(塗装部分を太線で示し符号71を付している)不透明部35とされている。又、該透明部22bの両側に存する部分は、その外表面73が不透明に塗装されることによって(塗装部分を太線で示し符号71を付している)不透明部35とされている。そして、前記内板6の透明部22bの内表面(前記壁面3に臨む面)32には、例えばその長手中央線に沿って中央の遮水突条33が連続状態に突設されている。かかる構成を有する漏水受板1にあっては、両側の間隔保持部7,7間に形成された水密な空間部9の内外の面部の幅方向中央部分が、透明部22b,22aとして形成された状態にある。
【0074】
又、前記透明部22a,22bの両側に存する部分を不透明に塗装する構成としては、例えば図31(A)に示すように、前記透明部22a,22bの両側に存する部分の外表面74、内表面75を不透明に塗装する構成の他、図31(B)に示すように、前記内表面72、前記外表面73を不透明に塗装する構成、又、図32(A)に示すように、前記内表面72,75を不透明に塗装する構成、或いは図32(B)に示すように、前記外表面74,73と前記内表面72,75の双方を不透明に塗装する構成を挙げることができる。又、前記空間部9の内外の面部の全体を透明部22b,22aとすると共に、その両側に存する部分を前記のように不透明部35としてもよい。
本実施例において、前記遮水突条(中央の遮水突条33や側部の遮水突条51)の本数や突設位置は、前記と同様にして適宜変更してよい。
【0075】
このように不透明に塗装することによって不透明部35を構成する漏水受板1の構成は、例えば前記した図10や図13に示すような、前記外板5と内板6の双方を平板状に形成してなる漏水受板に対しても応用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る漏水受板を用いて構成された導水装置を示す斜視図である。
【図2】その導水装置を示す断面図である。
【図3】その導水装置を構成する漏水受板を示す斜視図である。
【図4】その導水装置を構成する漏水受板を示す斜視図である。
【図5】漏水受板を壁面に取り付けた状態を示す正面図である。
【図6】導水路における遊離石灰の塊や剥落片の詰まり状態を示す断面図である。
【図7】中央の遮水突条によって分割された左右の分割水路における漏水の流下状態を示す断面図である。
【図8】中央の遮水突条と側部の遮水突条を具える漏水受板を用いて構成された導水装置を示す断面図である。
【図9】その導水装置を構成する漏水受板を示す斜視図である。
【図10】平板状に形成された漏水受板を用いて構成された導水装置を示す断面図である。
【図11】その導水装置を構成する漏水受板を示す斜視図である。
【図12】中央の遮水突条と側部の遮水突条を具える平板状を呈する漏水受板を用いて構成された導水装置を示す断面図である。
【図13】中央の遮水突条を具える平板状を呈する漏水受板を用いて構成された導水装置を示す断面図である。
【図14】その導水装置を構成する漏水受板を示す斜視図である。
【図15】中央の遮水突条と側部の遮水突条を具える平板状を呈する漏水受板を用いて構成された導水装置を示す断面図である。
【図16】漏水を受ける幅の異なる漏水受板を示す断面図である。
【図17】壁面に対する漏水受板の他の取付状態を示す正面図である。
【図18】壁面に対する漏水受板のその他の取付状態を示す正面図である。
【図19】空間部の内外の透明部の他の態様を示す断面図である。
【図20】空間部の内外の透明部のその他の態様を示す断面図である。
【図21】中央の遮水突条の他の態様を示す断面図である。
【図22】側部の遮水突条の他の態様を示す断面図である。
【図23】中央の遮水突条のその他の態様を示す断面図である。
【図24】中央の遮水突条と側部の遮水突条を具える漏水受板のその他の実施例を示す断面図である。
【図25】側部の遮水突条が設けられた漏水受板を示す断面図である。
【図26】側部の遮水突条の他の態様を示す断面図である。
【図27】漏水受板のその他の態様を示す断面図である。
【図28】不透明塗装によって不透明部が形成されてなる漏水受板を示す断面図である。
【図29】不透明塗装によって不透明部が形成されてなる漏水受板の他の実施例を示す断面図である。
【図30】不透明塗装によって不透明部が形成されてなる漏水受板のその他の実施例を示す断面図である。
【図31】不透明塗装によって不透明部が形成されてなる漏水受板のその他の実施例を示す断面図である。
【図32】不透明塗装によって不透明部が形成されてなる漏水受板のその他の実施例を示す断面図である。
【図33】従来の導水装置を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0077】
1 漏水受板
2 構造物
3 コンクリート壁面
4 導水路
5 外板
6 内板
7 間隔保持部
8 漏水部
11 取付端部
19 溝状凹部
21 止水材
22a 外板の透明部
22b 内板の透明部
32 内表面
33 中央の遮水突条
35 不透明部
36 外表面
39 アンカーボルト
42 ナット
43 導水装置
49 分割水路
51 側部の遮水突条
60 固定具
72 内表面
73 外表面
74 外表面
75 内表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外板と内板とが、両側に間隔保持部を介在させて一体化され、該間隔保持部間に水密な空間部が形成されると共に、該一体化物の両側には、構造物のコンクリート壁面に取り付く取付端部が設けられており、前記内板と前記壁面との間で前記壁面からの漏水を受ける導水路を形成する透明部を有する漏水受板であって、前記空間部の内外の面部の少なくとも幅方向中央部分が、該空間部の長手方向に延長し且つ前記導水路の内部を目視観察可能とする透明部として形成されると共に、前記内板の透明部の、前記壁面に臨む内表面の幅方向の中間部に、該透明部の長手方向に延長する中央の遮水突条が連続状態に突設され、前記導水路の底面をなす流下面で受けられた前記漏水の水位が該中央の遮水突条の上端を超えないことを特徴とする透明部を有する漏水受板。
【請求項2】
外板と内板とが、両側に間隔保持部を介在させて一体化され、該間隔保持部間に水密な空間部が形成されると共に、該一体化物の両側には、構造物のコンクリート壁面に取り付く取付端部が設けられており、前記内板と前記壁面との間で前記壁面からの漏水を受ける導水路を形成する透明部を有する漏水受板であって、前記空間部の内外の面部の少なくとも幅方向中央部分が、該空間部の長手方向に延長し且つ前記導水路の内部を目視観察可能とする透明部として形成されると共に、前記内板の透明部の、前記壁面に臨む内表面の長手中央線に沿って中央の遮水突条が連続状態に突設され、前記導水路の底面をなす流下面で受けられた前記漏水の水位が該中央の遮水突条の上端を超えないことを特徴とする透明部を有する漏水受板。
【請求項3】
外板と内板とが、両側に間隔保持部を介在させて一体化され、該間隔保持部間に水密な空間部が形成されると共に、該一体化物の両側には、構造物のコンクリート壁面に取り付く取付端部が設けられており、前記内板と前記壁面との間で前記壁面からの漏水を受ける導水路を形成する透明部を有する漏水受板であって、前記空間部の内外の面部の少なくとも幅方向中央部分が、該空間部の長手方向に延長し且つ前記導水路の内部を目視観察可能とする透明部として形成されると共に、前記内板の透明部には、前記壁面に臨む内表面の長手中央線の両側に所要間隔を隔てて2本の中央の遮水突条が平行して連続状態に突設され、前記導水路の底面をなす流下面で受けられた前記漏水の水位が該中央の遮水突条の上端を超えないことを特徴とする透明部を有する漏水受板。
【請求項4】
前記内板の透明部の、前記壁面に臨む内表面の両側縁部に沿って側部の遮水突条が連続状態に突設され、前記導水路の底面をなす流下面で受けられた前記漏水の水位が該側部の遮水突条の上端を超えないことを特徴とする請求項1、2又は3記載の透明部を有する漏水受板。
【請求項5】
外板と内板とが、両側に間隔保持部を介在させて一体化され、該間隔保持部間に水密な空間部が形成されると共に、該一体化物の両側には、構造物のコンクリート壁面に取り付く取付端部が設けられており、前記内板と前記壁面との間で前記壁面からの漏水を受ける導水路を形成する透明部を有する漏水受板であって、前記空間部の内外の面部の少なくとも幅方向中央部分が、該空間部の長手方向に延長し且つ前記導水路の内部を目視観察可能とする透明部として形成されると共に、前記内板の透明部の、前記壁面に臨む内表面の両側縁部に沿って側部の遮水突条が連続状態に突設され、前記導水路の底面をなす流下面で受けられた前記漏水の水位が該側部の遮水突条の上端を超えないことを特徴とする透明部を有する漏水受板。
【請求項6】
前記空間部の内外の面部の全体が透明部として形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の透明部を有する漏水受板。
【請求項7】
前記中央の遮水突条は透明に形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の透明部を有する漏水受板。
【請求項8】
前記透明部の両側に存する部分は不透明部として形成されていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の透明部を有する漏水受板。
【請求項9】
前記外板と前記内板とが、全体が透明な硬質合成樹脂を用いて構成されており、前記空間部の外の面部の前記少なくとも幅方向中央部分を構成する、前記外板の幅方向の中央部分が、透明のまま残されて前記透明部とされると共に、該透明部の両側に存する部分は、その外表面及び/又は内表面が不透明に塗装されることによって不透明部とされていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の透明部を有する漏水受板。
【請求項10】
前記外板と前記内板とが、全体が透明な硬質合成樹脂を用いて構成されており、前記空間部の内外の面部の前記少なくとも幅方向中央部分を構成する、前記内板の幅方向の中央部分及び前記外板の幅方向の中央部分が、共に、透明のまま残されて前記透明部とされると共に、該透明部の両側に存する部分の内表面及び/又は外表面は、不透明に塗装されることによって不透明部とされていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の透明部を有する漏水受板。
【請求項11】
前記不透明部は、前記取付端部を除いて形成されていることを特徴とする請求項8、9又は10記載の透明部を有する漏水受板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2008−25333(P2008−25333A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155146(P2007−155146)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(393022470)三重重工業株式会社 (6)