説明

透明電波吸収体用の吸収層、透明電波吸収体、および透明電波吸収体用の吸収層を製作する方法

【課題】従来に比べて、FSSパターンの隙間部分が目立ちにくい透明電波吸収体用の吸収層を提供する。
【解決手段】第1の透明基板120上に、透明導電性素子126と、該透明導電性素子126の周囲の非パターン化領域とで構成されたFSSパターンを有し、該FSSパターンの上に第2の透明基板135を設置することにより構成された、透明電波吸収体用の吸収層110であって、前記非パターン化領域には、透明絶縁性部材131が充填され、該透明絶縁性部材131は、該透明絶縁性部材131の屈折率nと、前記第1の透明基板120の屈折率nとの差Δnの絶対値、および前記第2の透明基板135の屈折率nとの差Δnの絶対値がいずれも、0〜0.2の範囲となるような材料で構成されることを特徴とする、透明電波吸収体用の吸収層。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明電波吸収体に関し、特に、FSSを有する透明電波吸収体の吸収層に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の無線技術の著しい進展は、同時に、無線システムにおいて、干渉や混信などの電波障害を引き起こす可能性を高める結果となっている。例えば、物品に備えられたRFIDタグをリーダライターと呼ばれる無線機器で認識する、UHF帯のRFIDシステムにおいては、リーダライターの識別ゾーンにおける電波障害が普及を妨げる大きな要因となっている。
【0003】
このような無線システムの識別ゾーンにおける干渉や混信等の電波障害を防止するため、透明電波吸収体の使用が提案されている。
【0004】
一般に、透明電波吸収体は、透明吸収層と、該透明吸収層から所定の距離(例えば波長の1/4)だけ離間して設置された透明反射層とで構成される。最近の例では、両層の離間距離を狭めるため、透明吸収層は、2つの透明基板の間に、FSS(Frequency Selective Surface)と呼ばれる周波数選択部材を設置することにより構成される。FSSは、透明導電性素子とその周囲の隙間部分とで構成されたパターン(以下、「FSSパターン」と称する)を有する。一方、透明反射層は、透明基板に透明反射膜を設置することにより構成される。
【0005】
ところで、このような構成を有する透明電波吸収体において、該透明電波吸収体を例えば、吸収層の側から視認した場合、FSSパターンにぎらつきが生じ、FSSパターンの隙間部分が目立って見えてしまう。またこれにより、透明電波吸収体の見栄えが悪くなり、意匠性や美観が損なわれることが問題となっている。
【0006】
そこで、このような意匠性の問題に対応するため、液晶表示装置の分野ではあるが、ITO(インジウムスズ酸化物)からなる透明導電性素子同士の隙間部分に、屈折率がITOに近い、ZrOおよびSiOからなる透明絶縁材(屈折率1.81)を充填することが提案されている(特許文献1)。この場合、透明導電性素子と隙間部分(すなわち透明絶縁材充填部分)との間の反射率の差が小さくなるため、隙間部分が見えにくくなることが報告されている。
【特許文献1】特開平2−22622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述の特許文献1に記載の方法は、液晶表示装置に関するものであり、以下の理由により、透明電波吸収体の吸収層には、そのまま適用することは難しい。
【0008】
透明電波吸収体において、FSSパターンのぎらつきおよび/または隙間部分の際だった視認性には、吸収層を形成する各透明基板とFSSパターンの隙間部分(すなわち空気部分)との界面での屈折率の差異が大きく関与している。例えば、一方の透明基板がガラスの場合、その屈折率は、1.52程度である。従って、この界面での屈折率の差Δnは、空気の屈折率n=1として、Δn=0.52となる。
【0009】
一方、透明導電性素子間の隙間部分に、特許文献1のような屈折率が1.81の透明絶縁材を充填した場合、一つの透明基板と隙間部分(すなわち透明絶縁材)の界面での屈折率の差Δnは、Δn=1.81−1.52=0.29となる。このように、隙間部分に透明絶縁材を充填することにより、界面での屈折率の差Δnは、多少低下するものの、その低下量はあまり大きくはなく、効果としては未だ不十分である。
【0010】
従って、特許文献1の方法を透明電波吸収体にそのまま適用しても、ぎらつきを抑制したり、FSSパターンの隙間部分を十分に視認できなくしたりすることは難しく、前述の意匠性の問題は、依然として残ると考えられる。
【0011】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、従来に比べて、FSSパターンの隙間部分が目立ちにくく、ぎらつきの少ない透明電波吸収体用の吸収層を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、第1の透明基板上に、透明導電性素子と、該透明導電性素子の周囲の非パターン化領域とで構成されたFSSパターンを有し、該FSSパターンの上に第2の透明基板を設置することにより構成された、透明電波吸収体用の吸収層であって、
前記非パターン化領域には、透明絶縁性部材が充填され、
該透明絶縁性部材は、該透明絶縁性部材の屈折率nと、前記第1の透明基板の屈折率nとの差Δnの絶対値、および前記第2の透明基板の屈折率nとの差Δnの絶対値がいずれも、0〜0.2の範囲となるような材料で構成されることを特徴とする、透明電波吸収体用の吸収層が提供される。
【0013】
ここで本発明よる透明電波吸収体用の吸収層は、さらに、前記透明導電性素子と前記第2の透明基板の間に、前記透明絶縁性部材が設置されていても良い。
【0014】
また本発明による透明電波吸収体用の吸収層において、前記導電性素子は、ITO(インジウムスズ酸化物)で構成されていても良い。
【0015】
また本発明による透明電波吸収体用の吸収層において、前記透明絶縁性部材は、屈折率nが1.375〜1.775の範囲であっても良い。
【0016】
また本発明による透明電波吸収体用の吸収層において、前記透明絶縁性部材は、樹脂で構成されても良い。
【0017】
また本発明では、吸収層と反射層とを間隔を介して配置することにより構成された透明電波吸収体であって、
前記吸収層が、前述のいずれかの特徴を有する吸収層で構成された、透明電波吸収体が提供される。
【0018】
また本発明では、
(A)第1の屈折率を有する第1の透明基板を準備するステップと、
(B)前記第1の透明基板の表面上に、透明導電膜を形成するステップと、
(C)前記透明導電膜の一部を除去することにより、前記第1の透明基板の露出部が形成されるステップと、
(D)前記露出部を、前記第1の屈折率との差が0.2以内である第2の屈折率を有する透明絶縁性部材で被覆するステップと、
(E)前記透明導電膜および前記透明絶縁性部材上に、前記第2の屈折率との差が0.2以内である第3の屈折率を有する第2の透明基板を設けるステップと
を備えたことを特徴とする透明電波吸収体用の吸収層を製作する方法が提供される。
【0019】
さらに本発明では、第1の透明基板上に、透明導電性素子と、該透明導電性素子の周囲の非パターン化領域とで構成されたパターンを有するFSSを有し、該FSSの上に第2の透明基板を有する、透明電波吸収体用の吸収層を製作する方法であって、
(A)前記第1の透明基板の一方の表面上に、前記透明導電性素子のパターンを形成するステップと、
(B)前記第2の透明基板の一方の表面上に、透明絶縁性部材を設置するステップであって、前記透明絶縁性部材は、該透明絶縁性部材の屈折率nと、前記第1の透明基板の屈折率nとの差Δnの絶対値、および前記第2の透明基板の屈折率nとの差Δnの絶対値がいずれも、0〜0.2の範囲となるような材料で構成される、ステップと、
(C)前記第1の透明基板の前記一方の表面と、前記第2の透明基板の前記一方の表面とが対向するようにして、前記第1および第2の透明基板を接合するステップであって、これにより、少なくとも前記非パターン化領域に、前記透明絶縁性部材が充填されるステップと、
を有する方法が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、従来に比べて、FSSパターンの隙間部分が目立ちにくく、ぎらつきの少ない透明電波吸収体用の吸収層を提供することが可能となる。また、そのような特徴を有する透明電波吸収体、およびそのような特徴を有する透明電波吸収体用の吸収層の製作方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面により、本発明の特徴について詳しく説明する。
【0022】
図1には、本発明による透明電波吸収体の断面の一例を示す。また、図2には、本発明の透明電波吸収体における吸収層の上面図の一例を示す。なお、両図において、いくつかの部材の寸法は、誇張して示されており、このため、これらの図は、実際のスケールには対応していないことに留意する必要がある。
【0023】
図1に示すように、本発明の透明電波吸収体100は、吸収層110と、反射層140と、両者の間に空間160を形成するためのスペーサ170とで構成される。
【0024】
吸収層110は、第1の透明基板120上にFSS(周波数選択膜)125を配置し、さらにこのFSS125の上に第2の透明基板135を設置することにより構成される。第1の透明基板120および第2の透明基板135は、例えば、ガラス、または透明プラスチック(例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート))等の透明材料で構成される。
【0025】
一方、反射層140は、第3の透明基板150と、その一方の表面に配置された透明反射膜145とにより構成される。第3の透明基板150は、例えば、ガラス、または透明プラスチック(例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート))等の透明材料で構成される。透明反射膜145は、例えば、透明金属薄膜と透明酸化物薄膜とを繰り返し積層することにより構成される。透明金属薄膜には、例えば、銀が使用され、透明酸化物薄膜には、例えば、酸化亜鉛、酸化インジウム等が使用される。
【0026】
図2には、吸収層110の上面図を示す。この図は、図1の上側から、吸収層110を見たときの状態を示している。ただし図2では、第2の透明基板135は、省略されていることに留意する必要がある。FSS125は、図2に示すように、第1の透明基板120上に配置された導電性素子126の規則パターンにより構成される。導電性素子126は、例えば、ITO(インジウムスズ酸化物)等の透明導電性材料で構成される。
【0027】
図2の例では、導電性素子126は、一辺の長さがLの正方形の形状を有し、各導電性素子126が縦方向(X方向)と横方向(Y方向)に、繰り返し(5回)配置されることにより、導電性素子126の規則パターンが形成される。なお、各導電性素子126は、幅の寸法がgの非パターン化領域130により、他の導電性素子126と離間されている。本願では、このような導電性素子126の規則パターンと、非パターン化領域130とからなるパターンを、以降「FSSパターン」128と称する。
【0028】
ここで、本発明では、図1に示すように、FSS125の非パターン化領域130に、透明絶縁性部材131が充填されていることを特徴とする。また、この透明絶縁性部材131の材料は、第1の透明基板120の屈折率n、および第2の透明基板135の屈折率nの両方に近い屈折率を有するように選定される。より具体的には、透明絶縁性部材131の屈折率nは、第1の透明基板120の屈折率nとの差Δn(すなわちn−n)の絶対値、および第2の透明基板135の屈折率nとの差Δn(すなわちn−n)の絶対値Δnがいずれも、0〜0.2の範囲となるように選定される。
【0029】
次に、このように構成された本発明による透明電波吸収体の特徴をより良く理解するため、透明絶縁性部材のない透明電波吸収体の構成およびその問題について説明する。
【0030】
図3には、透明絶縁性部材のない透明電波吸収体の模式的な断面図を示す。また、図4には、図3の透明電波吸収体の吸収層の部分の断面拡大図を模式的に示す。
【0031】
透明絶縁性部材のない透明電波吸収体300は、基本的に、図1に示した本発明による電波吸収体100とほぼ同様の部材で構成される。従って、図3において、図1の部材と対応する部材には、図1の参照符号に200を足した符号が付されている。例えば、吸収層は、310で表され、FSSは325で表され、導電性素子は326で表されている。
【0032】
ただし、透明絶縁性部材のない透明電波吸収体300の場合、本発明による透明電波吸収体100とは異なり、非パターン化領域330に、透明絶縁性部材131は、充填されていない。すなわち、非パターン化領域330は、隙間332になっており、ここには空気が存在している。
【0033】
このように構成された透明絶縁性部材のない透明電波吸収体300の場合、図4に示すように、吸収層310の第1の透明基板320の側から光410が照射されると、該光の一部410Aは、第1の透明基板320、FSSパターンの非パターン化領域330(すなわち隙間332)、および第2の透明基板335を通り、吸収層310を透過する。
【0034】
ここで、第1および第2の透明基板320、335が、いずれもPET(屈折率1.575)で構成されているとすると、第1の透明基板320と非パターン化領域330の間の界面I、および非パターン化領域330と第2の透明基板335との間の界面Iでは、屈折率に大きな変化が生じることになる。すなわち、空気の屈折率を1とした場合、いずれの界面I、Iにおいても、屈折率の差の絶対値は、0.575となり、屈折率に大きな変化が生じる。
【0035】
このような界面I、Iでの屈折率の大きな変化は、透明電波吸収体300を視認した際に、非パターン化領域330がぎらついたり、際立って見えたりする原因となる。また、そのような非パターン化領域330がぎらつきは、透明電波吸収体の意匠性や美感を損なう要因となる。
【0036】
また、このような問題を軽減するため、前述の特許文献1に記載のように、非パターン化領域330に、ZrOとSiOとからなる屈折率が1.81の充填剤を充填することが考えられる。しかしながら、非パターン化領域330に、そのような充填剤を充填したとしても、PET製の第1の透明基板320(屈折率1.575)と充填剤との界面I、および充填剤とPET製の第2の透明基板335(屈折率1.575)との界面Iには、いずれも、0.235程度の屈折率の変化が残る。従って、そのような方法を適用したとしても、両界面における屈折率の変化は、十分に低減されているとは言い難い。従って、この場合も、依然として、透明電波吸収体を視認した際に、FSSパターンがぎらつき、非パターン化領域が際だって見え、これにより美感が損なわれる恐れがある。
【0037】
これに対して、前述の図1に示した本発明による電波吸収体100では、FSS125の非パターン化領域130は、第1および第2の透明基板と屈折率の近い透明絶縁性部材131で充填されており、透明絶縁性部材131を構成する材料は、第1の透明基板120の屈折率n、および第2の透明基板135の屈折率nの両方に近い屈折率を有する。より具体的には、透明絶縁性部材131の屈折率nは、第1の透明基板120の屈折率nとの差Δn(すなわちn−n)の絶対値、および第2の透明基板135の屈折率nとの差Δn(すなわちn−n)の絶対値がいずれも、0〜0.2の範囲となるように選定されている。従って、本発明では、第1の透明基板120と透明絶縁性部材131との界面I、および透明絶縁性部材131と第2の透明基板135との界面Iにおける屈折率の変化を十分に抑制することができる。これにより、本発明の透明電波吸収体では、従来の透明電波吸収体のような、FSSパターンがぎらつき、および/または非パターン化領域が際だって見え、透明電波吸収体の意匠性が損なわれるという問題を有意に抑制することが可能になる。
【0038】
例えば、本発明において、第1の透明基板120および第2の透明基板135がいずれもPET(屈折率1.575)で構成される場合、透明絶縁性部材131は、屈折率nが、1.375〜1.775の範囲の材料で構成される。また、第1の透明基板120および第2の透明基板135がいずれもガラス(屈折率1.52)で構成される場合、透明絶縁性部材131は、屈折率nが、1.32〜1.72の範囲の材料で構成される。また、第1の透明基板120がPET(屈折率1.575)で構成され、および第2の透明基板135がガラス(屈折率1.52)で構成される場合(あるいはその逆の場合)、透明絶縁性部材131は、屈折率nが、1.375〜1.72の範囲の材料で構成される。
【0039】
なお、本願において、屈折率とは、波長550nmにおける屈折率を意味する。
【0040】
このような透明絶縁性部材131の材料としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ポリアルコール・ポリグリコール型エポキシ樹脂、ポリオレフィン型エポキシ樹脂、脂環式やハロゲン化ビスフェノールなどのエポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、いずれも屈折率が1.55〜1.60の範囲である。
【0041】
また、透明絶縁性部材131の材料として、エポキシ樹脂以外にも、天然ゴム(屈折率1.52)、ポリイソプレン(屈折率1.521)、ポリ1,2−ブタジエン(屈折率1.50)、ポリイソブテン(屈折率1.505〜1.51)、ポリブテン(屈折率1.5125)、ポリ−2−へプチル−1,3−ブタジエン(屈折率1.50)、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン(屈折率1.506)、ポリ−1,3−ブタジエン(屈折率1.515)などの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン(屈折率1.4563)、ポリオキシプロピレン(屈折率1.4495)、ポリビニルエチルエーテル(屈折率1.454)、ポリビニルヘキシルエーテル(屈折率1.4591)、ポリビニルブチルエーテル(屈折率1.4563)などのポリエーテル類、ポリビニルアセテート(屈折率1.4665)、ポリビニルプロピオネート(屈折率1.4665)などのポリエステル類、ポリウレタン(屈折率1.5〜1.6)、エチルセルロース(屈折率1.479)、ポリ塩化ビニル(屈折率1.54〜1.55)、ポリアクリロニトリル(屈折率1.52)、ポリメタクリロニトリル(屈折率1.52)、ポリスルホン(屈折率1.633)、ポリスルフィド(屈折率1.6)、およびフェノキシ樹脂(屈折率1.5〜1.6)などが使用できる。
【0042】
また、透明絶縁性部材131の材料として、上記樹脂の他にも、ポリエチルアクリレート(屈折率1.4685)、ポリブチルアクリレート(屈折率1.46)、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート(屈折率1.463)、ポリ−t−ブチルアクリレート(屈折率1.4638)、ポリ−3−エトキシプロピルアクリレート(屈折率1.465)、ポリオキシカルボニルテトラメタクリレート(屈折率1.465)、ポリメチルアクリレート(屈折率1.472〜1.480)、ポリイソプロピルメタクリレート(屈折率1.4728)、ポリドデシルメタクリレート(屈折率1.474)、ポリテトラデシルメタクリレート(屈折率1.4746)、ポリ−n−プロピルメタクリレート(屈折率1.484)、ポリ−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(屈折率1.484)、ポリエチルメタクリレート(屈折率1.485)、ポリ−2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート(屈折率1.4868)、ポリテトラカルバニルメタクリレート(屈折率1.4889)、ポリ−1,1−ジエチルプロピルメタクリレート(屈折率1.4889)、ポリメチルメタクリレート(屈折率1.4893)などのポリ(メタ)アクリル酸エステルが使用できる。さらに、これらのアクリルポリマーは、必要に応じて、2種以上共重合したり、2種以上を混合したりして使用しても良い。
【0043】
なお、前述の説明では、FSSパターンの例として図2に示す形態のものを示したが、本発明による吸収層において、FSSパターンの態様は、特に限られない。例えば、FSSパターンは、図7に示すような導電性素子および非パターン化領域の規則配列で構成されても良い。
【0044】
この図において、FSSパターン128Aは、第1の導電性素子126Aと、第2の導電性素子127Aと、両者の間に設置された非パターン化領域130Aとの2次元繰り返しパターンで構成される。ここで第1の導電性素子126Aは、前述の図2における導電性素子126と同様に、一辺の長さがLの正方形の形状を有する。また、非パターン化領域130Aは、幅gを有する。これに対して、第2の導電性素子127Aは、第1の導電性素子128A以外の導電性素子で構成され、実質的に3種類の部分(第1の矩形部分127'、 第2の矩形部分127''、および正方形部分127''')を有する。第1の矩形部分127'のX方向の長さは、Dであり、Y方向の長さは、Lである。第2の矩形部分127''のX方向の長さは、Lであり、Y方向の長さは、Dである。一方、正方形部分127'''のXおよびY方向の長さは、Dである。
【0045】
この他にも、様々な形態のFSSパターンが想定され得ることは、当業者には明らかである。
【0046】
(第2の実施形態)
次に、本発明による透明電波吸収体の別の実施形態について説明する。
【0047】
図8には、本発明による第2の透明電波吸収体の一例の模式的な断面図を示す。この透明電波吸収体500は、基本的に、図1に示した電波吸収体100とほぼ同様の部材で構成される。従って、図8において、図1の部材と対応する部材には、図1の参照符号に400を足した符号が付されている。例えば、透明電波吸収体500の吸収層は、510で表され、透明電波吸収体500のFSSは、525で表され、透明電波吸収体500の導電性素子は、526で表されている。
【0048】
ただし、この第2の透明電波吸収体500の場合、前述の透明電波吸収体100とは異なり、FSS525の上部に、FSSパターン全体を覆うようにして、透明絶縁性部材534が設置されている。換言すれば、透明絶縁性部材534は、FSSパターンの非パターン化領域530を充填するとともに、導電性素子526の上部表面全体を覆うようにして設置される。なお、この透明絶縁性部材534は、前述の透明電波吸収体100の透明絶縁性部材131と同様、第1の透明基板520の屈折率n、および第2の透明基板535の屈折率nの両方に近い屈折率を有する材料で構成されるという特徴を有する。より具体的には、透明絶縁性部材534の屈折率nは、第1の透明基板520の屈折率nとの差Δnの絶対値、および第2の透明基板535の屈折率nとの差Δnの絶対値Δnがいずれも、0〜0.2の範囲となるように選定される。
【0049】
このように構成された第2の透明電波吸収体500において、第1の透明基板520と透明絶縁性部材534の界面I、および透明絶縁性部材534と第2の透明基板535の界面Iでは、いずれも従来の構成に比べて、屈折率の変化が小さく抑制される。従って、第2の透明電波吸収体500においても、前述の透明電波吸収体100と同様、FSSパターンの非パターン化領域の視認性、およびぎらつきを有意に抑制することができる。
【0050】
また、第2の透明電波吸収体500の場合、導電性素子526と第2の透明基板535の間に、屈折率がnの透明絶縁性部材534が介在されることになる。
【0051】
上述の例の場合、この界面での屈折率の変化は、導電性素子の屈折率を1.81(ITOの場合)とし、第2の透明基板の屈折率を1.575(PETの場合)とすると、1.81−1.575=0.235となる。これに対して、第2の透明電波吸収体500では、同界面の屈折率の変化は、例えばn=1.60の場合、1.60−1.575=0.025となる。従って、第2の透明電波吸収体500では、第1の透明基板520の側から、非パターン化領域530を通過する光のみならず、導電性素子526を通過する光に対しても、屈折を抑制することが可能となる。従って、より一層、FSSパターンが目立たちにくい透明電波吸収体を提供することが可能となる。
【0052】
(製造方法)
次に、本発明による透明電波吸収体用の吸収層を製作する方法の一例について説明する。図9には、本発明による方法のフロー図を示す。この方法は、第1の透明基板の一方の表面上に、FSSパターンを形成するステップ(ステップS110)と、FSSパターンの非パターン化領域に、透明絶縁性部材を充填するステップと、前記第1の透明基板と、新たな第2の透明基板とを、FSSパターンを介して接合するステップと、を有する。本発明の方法では、前記透明絶縁性部材が、該透明絶縁性部材の屈折率nと、前記第1の透明基板の屈折率nとの差Δnの絶対値、および前記第2の透明基板の屈折率nとの差Δnの絶対値がいずれも、0〜0.2の範囲となるような材料で構成されるという特徴を有する。
【0053】
以下、各ステップについて、詳しく説明する。
【0054】
(FSSパターンを形成するステップ:ステップS110)
まず最初に、第1の透明基板が準備される。第1の透明基板は、前述のような透明材料で構成される。第1の透明基板の厚さは、特に限られず、例えば、50μm〜1mm(例えば100μm)の範囲である。
【0055】
次に、この第1の透明基板の第1の表面に、導電性素子の配列と非パターン化領域とからなるFSSパターンが形成される。
【0056】
FSSパターンは、例えば、第1の透明基板の第1の表面全体に、透明導電膜を成膜した後、これをパターン処理することにより形成される。透明導電膜の成膜には、CVD法、スパッタ法、スピンコート法などの従来の成膜方法が使用できる。透明導電膜は、例えば、ITOで構成される。また、透明導電膜のパターン処理は、例えば、レーザーを用いて、または適当なマスクを用いたエッチング処理により実施される。
【0057】
あるいは、適当なマスク部材を用いて、第1の透明基板の第1の表面に、直接FSSパターンを形成しても良い。また、マスク部材を使用せずに、第1の透明基板の第1の表面に、プリント印刷法により、直接FSSパターンを形成しても良い。
【0058】
パターン化された透明導電性素子の厚さは、例えば、10nm〜1μmの範囲である。また、隙間(非パターン化領域)の幅は、例えば、1μm〜200μmの範囲であっても良い。
【0059】
(非パターン化領域に、透明絶縁性部材を充填するステップ:ステップS120)
次に、FSSパターンの非パターン化領域に、透明絶縁性部材が充填される。この処理は、例えば、FSSパターンの非パターン化領域を塞ぐように、透明絶縁性部材を直接設置することにより行われる。透明絶縁性部材の充填は、例えば、透明絶縁性部材を含むペースト等をFSSパターン上に塗布した後、スピンコート処理およびその後の乾燥処理を行うことにより、実施しても良い。あるいは、適当なマスクを用いて、従来の成膜技術により、FSSパターンの非パターン化領域に、透明絶縁性部材を直接充填しても良い。
【0060】
なお、透明絶縁性部材は、必ずしもFSSパターンの非パターン化領域にのみ設置されている必要はなく、透明導電性素子の上部にも設置されても良い。後者の場合、最終的に、前述の図8に示したような構造を有する吸収層510が得られる。
【0061】
ここで、透明絶縁性部材は、その屈折率nが、前述のように、第1の透明基板の屈折率nとの差Δn(すなわちn−n)の絶対値、および後述する第2の透明基板の屈折率nとの差Δn(すなわちn−n)の絶対値Δnがいずれも、0〜0.2の範囲となるような材料から選定されることに留意する必要がある。
【0062】
(第1の透明基板と第2の透明基板とを接合するステップ:ステップS130)
次に、第2の透明基板が準備される。第2の透明基板は、前述の第1の透明基板と同じ材質であっても、異なっていても良い。また、第2の透明基板の厚さは、特に限られないが、例えば、100μm〜10mmの範囲であっても良い。
【0063】
次に、第1の透明基板と、第2の透明基板とが、FSSパターンを介して対向するようにして接合される。このため、第1の透明基板と第2の透明基板との間に、別途、接着剤が設置されても良い。あるいは、接着性を有する透明絶縁性部材を使用することにより、第1の透明基板と第2の透明基板とを接合しても良い。
【0064】
以上の工程を経て、本発明による吸収層を製作することができる。
【0065】
なお、前述の製造方法は、一例であって、本発明による吸収層の製作方法は、これに限られるものではない。例えば、上記ステップS120〜S130において、第2の透明基板の表面の一部または全体に、予め透明絶縁性部材(またはそのペースト等)を設置しておき、この第2の基板を第1の基板と接合させた際に、第2の透明基板の側から、非パターン化領域に透明絶縁性部材が充填されるようにしても良い。非パターン化領域(すなわち隙間)の深さは、通常、最大でも100nm程度しかないため、このような方法においても、非パターン化領域に透明絶縁性部材を十分に充填することができる。
【0066】
その他、様々な方法により、非パターン化領域に透明絶縁性部材を充填することができることは、当業者には明らかである。
【実施例】
【0067】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0068】
(実施例1)
厚さが100μmのPET製の第1の基板(縦50mm×横50mm)の一方の表面に、該表面全体を覆うように、公知のスパッタリング法により、厚さ約80nmのITO膜を設置した。なお第1の基板の屈折率は、1.575であった。その後、YAGレーザを用いて、ITO膜をパターン化した。これにより、ITO素子の一辺の寸法Lが20mmで、非パターン化領域の幅gが100μmの二次元繰り返しパターンを得た(図2参照)。
【0069】
次に、厚さが1.8mmのガラス製の第2の基板(縦50mm×横50mm)の一方の表面に、厚さ25μmの粘着剤(リンテック(株)製)を接着した。第2の基板の屈折率は、1.52であり、この粘着剤シートの屈折率は、1.54であった。
【0070】
さらに、前述のパターンを表面に有するPET製の第1の基板上に、前述の粘着剤シートを貼り付けた第2の基板を配置した。この際には、粘着剤シートが第1の基板と接するようにして、第1の基板に対して第2の基板を配置した。次に、両者を押し付け、接合した。これにより、非パターン化領域に、粘着剤が充填された吸収層のサンプル(以下、「実施例1のサンプル」と称する)が得られた。なお、この実施例1のサンプルの断面構造は、図8に示した構造と実質的に等しく、すなわち、各パターン化ITO素子の表面は、粘着剤により被覆されていた。
【0071】
(比較例1)
実施例1と同様の方法により、一方の表面にITOのパターンを有するPET製の第1の基板を調製した。次に、この第1の基板上に、厚さが1.8mmのガラス製の第2の基板を設置し、両者を接合した。なお、接合は、ポリイミドテープで4辺を固定し、さらに、30分間オートクレーブで0.95MPaの圧力を加えることにより実施した。
【0072】
これにより、非パターン化領域に空気が充填された吸収層のサンプル(以下、「比較例1のサンプル」と称する)を得た。
【0073】
(比較例2)
実施例1と同様の方法により、一方の表面にITOのパターンを有するPET製の第1の基板を調製した。また、厚さが1.8mmのガラス製の第2の基板(縦50mm×横50mm)を調製した。
【0074】
次に、従来のCVD法で、第1の基板上に膜厚が約100μmのSiN膜を成膜した。これにより、第1の基板の非パターン化領域およびITO上部に、屈折率が1.8のSiN材料が設置された。
【0075】
さらにその上部に、第2の基板を設置し、各部材を接合した。
【0076】
これにより、非パターン化領域に、SiNが充填された吸収層のサンプル(以下、「比較例2のサンプル」と称する)が得られた。
【0077】
(比較例3)
実施例1と同様の方法により、一方の表面にITOのパターンを有するPET製の第1の基板を調製した。また、厚さが1.8mmのガラス製の第2の基板(縦50mm×横50mm)を調製した。
【0078】
次に、従来のCVD法で、第1の基板上に膜厚が約100μmのZnO膜を成膜した。これにより、第1の基板の非パターン化領域およびITO上部に、屈折率が1.8のZrO材料が設置された。
【0079】
さらにその上部に、第2の基板を設置し、各部材を接合した。
【0080】
これにより、非パターン化領域に、ZnOが充填された吸収層のサンプル(以下、「比較例3のサンプル」と称する)が得られた。
【0081】
実施例1および比較例1〜3のサンプルに対して、以下の評価を行った。
(目視評価)
前述の各サンプルを用いて、5人の観察者により、各吸収層サンプルの目視評価を行った。
【0082】
最初に、FSSパターンの視認性について評価した。これは、サンプルから30cmの距離だけ離れた状態で、観察者が各サンプルを観察し、FSSパターンが認められるか否かを評価することにより実施した。評価は、FSSパターンが認められないサンプルを○とし、認められるサンプルを×とし、どちらとも言えないものを△として、3段階で行った。
【0083】
評価結果を表1にまとめて示す。
【0084】
【表1】

この結果から、実施例1のサンプルでは、比較例1〜3のサンプルに比べて、FSSパターンが認められにくい傾向にあることがわかった。
【0085】
次に、各サンプルのぎらつき性について評価した。これは、サンプルから30cmの距離だけ離れた状態で、観察者が各サンプルを観察し、ぎらつきの程度を評価することにより実施した。評価は、ぎらつきの少ないサンプルを○とし、ぎらつきの激しいサンプルを×とし、その中間の程度のものを△として、3段階で行った。
【0086】
評価結果を表2にまとめて示す。
【0087】
【表2】

この結果から、実施例1のサンプルでは、比較例1〜3のサンプルに比べて、ぎらつきが軽減されていることがわかった。
(ヘイズ測定)
次に、実施例1および比較例1のサンプルを用いて、ヘイズ測定を行った。ここで、「ヘイズ(値)」とは、サンプルを通過する透過光のうち、前方散乱によって、入射光から所定の角度(例えば2.5゜)以上逸れた透過光を意味し、この数値の大小により、サンプルのぎらつきを定量的に評価することができる(すなわち、ヘイズ値が大きいほど、ぎらつきは、大きくなる)。本願では、ヘイズ値は、JISK7136(2000)「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」に準拠し、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH5000W)を用いて、以下の式

H=(Td/Ti)×100 式(1)

から算出した。なお、Hは、ヘイズ値であり、Tdは、拡散透過率、Tiは、全光線透過率である。測定は、各サンプルの第1の基板の側を光源側にした場合と、第2の基板の側を光源側にした場合の両方で1回ずつ実施し、得られた結果の平均をヘイズ値とした。
【0088】
測定の結果、実施例1および比較例1のサンプルのヘイズ値は、それぞれ、0.34%および0.77%であった。この結果から、実施例1のサンプルでは、比較例1のサンプルに比べて、ぎらつきが抑制されていることがわかった。
【0089】
(視感反射性の評価)
次に、実施例1および比較例2、3のサンプルを用いて、視感反射性の評価を実施した。視感反射性の評価は、以下の方法により行った。
【0090】
なお、視感反射率は、分光反射率測定器(島津製作所製UV−3100)を用いて分光反射率を測定し、JIS−R3106に準拠して算出した。一般に、視感反射の値が10%以下であれば、吸収層のぎらつきは、有意に抑制されていると言える。
【0091】
測定の結果、実施例1の視感反射の値は、8%であった。一方、比較例2および3のサンプルでは、視感反射の値は、それぞれ、11%および13%であった。この結果から、実施例1のサンプルでは、比較例2、3のサンプルに比べて、ぎらつきが有意に抑えられることがわかった。
【0092】
(光学顕微鏡による評価)
図5には、実施例1の光学顕微鏡写真の一例を示す。また、図6には、比較例1の光学顕微鏡写真の一例を示す。これらの写真は、FSSの上面(すなわち、図2と同様の視認方向)から撮影されたものである(なお、第2の基板は、省略されている)。
【0093】
図6に示すように、比較例1の場合、2つの導電性素子の間に、黒っぽい線状の非パターン化領域330が明りょうに認められる。これに対して、実施例1の場合、導電性素子同士の間に存在する非パターン化領域には、透明導電性部材が設置されており、図6に比べて、被パターン化領域がより不明瞭になっている。すなわち、本発明による吸収層では、FSSパターンの視認性が有意に低下していることがわかる。
【0094】
このように、いずれの評価法においても、本発明による吸収層サンプルでは、比較例1〜3の吸収層サンプルに比べて、ぎらつきが抑えられるとともに、FSSパターンが目立ちにくく、視認されにくいことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、透明電波吸収体、特に透明電波吸収体のFSSの構造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明による透明電波吸収体の模式的な断面図の一例である。
【図2】本発明による透明電波吸収体の吸収層の上面図の一例である。
【図3】従来の透明電波吸収体の模式的な断面図の一例である。
【図4】従来の透明電波吸収体の吸収層の模式的な拡大断面図の一例である。
【図5】本発明による吸収層のFSSパターン部分の顕微鏡写真である。
【図6】従来の吸収層のFSSパターン部分の顕微鏡写真である。
【図7】吸収層のFSSにおける別のFSSパターンを示した図である。
【図8】本発明による第2の透明電波吸収体の模式的な断面図の一例である。
【図9】本発明による透明電波吸収体を製作する際のフローを示した図である。
【符号の説明】
【0097】
100 本発明による透明電波吸収体
120 第1の透明基板
125 FSS
126 導電性素子
126A 第1の導電性素子
127A 第2の導電性素子
127' 第1の矩形部分
127'' 第2の矩形部分
127''' 正方形部分
128、128A FSSパターン
130、130A 非パターン化領域
131 透明絶縁性部材
135 第2の透明基板
140 反射層
145 反射膜
150 第3の透明基板
160 空間
170 スペーサ
300 従来の透明電波吸収体
310 吸収層
320 第1の透明基板
325 FSS
326 導電性素子
330 非パターン化領域
332 隙間
335 第2の透明基板
340 反射層
345 反射膜
350 第3の透明基板
360 空間
370 スペーサ
410 光
410A 光の第1の部分
500 本発明による第2の電波吸収体
510 吸収層
520 第1の透明基板
525 FSS
526 導電性素子
530 非パターン化領域
534 透明絶縁性部材
535 第2の透明基板
540 反射層
545 反射膜
550 第3の透明基板
560 空間
570 スペーサ
、I 界面
、I 界面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の透明基板上に、透明導電性素子と、該透明導電性素子の周囲の非パターン化領域とで構成されたFSSパターンを有し、該FSSパターンの上に第2の透明基板を設置することにより構成された、透明電波吸収体用の吸収層であって、
前記非パターン化領域には、透明絶縁性部材が充填され、
該透明絶縁性部材は、該透明絶縁性部材の屈折率nと、前記第1の透明基板の屈折率nとの差Δnの絶対値、および前記第2の透明基板の屈折率nとの差Δnの絶対値がいずれも、0〜0.2の範囲となるような材料で構成されることを特徴とする、透明電波吸収体用の吸収層。
【請求項2】
さらに、前記透明導電性素子と前記第2の透明基板の間に、前記透明絶縁性部材が設置されていることを特徴とする請求項1に記載の吸収層。
【請求項3】
前記導電性素子は、ITO(インジウムスズ酸化物)で構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の吸収層。
【請求項4】
前記透明絶縁性部材は、屈折率nが1.375〜1.775の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の吸収層。
【請求項5】
前記透明絶縁性部材は、樹脂で構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の吸収層。
【請求項6】
吸収層と反射層とを間隔を介して配置することにより構成された透明電波吸収体であって、
前記吸収層は、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の吸収層であることを特徴とする透明電波吸収体。
【請求項7】
(A)第1の屈折率を有する第1の透明基板を準備するステップと、
(B)前記第1の透明基板の表面上に、透明導電膜を形成するステップと、
(C)前記透明導電膜の一部を除去することにより、前記第1の透明基板の露出部が形成されるステップと、
(D)前記露出部を、前記第1の屈折率との差が0.2以内である第2の屈折率を有する透明絶縁性部材で被覆するステップと、
(E)前記透明導電膜および前記透明絶縁性部材上に、前記第2の屈折率との差が0.2以内である第3の屈折率を有する第2の透明基板を設けるステップと
を備えたことを特徴とする透明電波吸収体用の吸収層を製作する方法。
【請求項8】
第1の透明基板上に、透明導電性素子と、該透明導電性素子の周囲の非パターン化領域とで構成されたパターンを有するFSSを有し、該FSSの上に第2の透明基板を有する、透明電波吸収体用の吸収層を製作する方法であって、
(A)前記第1の透明基板の一方の表面上に、前記透明導電性素子のパターンを形成するステップと、
(B)前記第2の透明基板の一方の表面上に、透明絶縁性部材を設置するステップであって、前記透明絶縁性部材は、該透明絶縁性部材の屈折率nと、前記第1の透明基板の屈折率nとの差Δnの絶対値、および前記第2の透明基板の屈折率nとの差Δnの絶対値がいずれも、0〜0.2の範囲となるような材料で構成される、ステップと、
(C)前記第1の透明基板の前記一方の表面と、前記第2の透明基板の前記一方の表面とが対向するようにして、前記第1および第2の透明基板を接合するステップであって、これにより、少なくとも前記非パターン化領域に、前記透明絶縁性部材が充填されるステップと、
を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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