説明

透水性隔壁

【課題】 透水性の確保が容易で、目詰まりが発生し難い構造の透水性隔壁を提供する。
【解決手段】 外側面12a側からの地下水の取り込みが可能な多孔質の透水部12とその周囲に形成される構造壁部13とを備えた透水セグメント11である。
そして、透水部12の外側面12aが遮水性を有する袋状部材14によって覆われており、袋状部材14による被覆を解除するトリガ装置16が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側面側から地下水を取り込むことができる集水トンネルや遮水壁として使用した後に地下水の流れを回復させることが可能な地中連続壁用の透水性隔壁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に滞留した海水や地下水を取水して利用するために構築される集水トンネルが知られている(特許文献1,2等参照)。
【0003】
この集水トンネルは、円弧状の透水セグメント1を複数組み合わせて円筒形に形成されたトンネルであって、透水セグメント1には外側面側から地下水を取り込むための透水部2と、この透水部2とトンネル内部を連通させる導水管4,4とが設けられている(図7参照)。
【0004】
この透水部2は、多孔質のポーラスコンクリートで構成されており、トンネル外側面側の地下水が透水部2に浸み込んで導水管4,4を通って集水トンネルの内部に取り込まれる。
【0005】
一方、このような集水トンネルでは、設置と同時に地下水が透水部2に浸透して導水管4,4を通ってトンネル内部に流れ込むことを防ぐため、図7に示すように導水管4,4の端部に蓋部5,5を取り付け、施工中はトンネル内部に水が流れ込まないように構成されている。
【0006】
さらに、この蓋部5,5は、いずれは撤去しなければならず、撤去と同時に水がトンネル内部に流れ込むのを防ぐために、図7に示すように生分解性シート6で透水部2の外側面を覆った技術が特許文献2に開示されている。
【0007】
以上においては集水トンネルについて述べたが、地下構造物を構築する際に土留め及び遮水の目的で構築される地中連続壁は、地下水の流れを分断して地下水の上昇又は低下を引き起こし、浸水、井戸枯れ、地盤沈下などを引き起こす原因となりうるので、使用後に透水性を回復させる機能を設けることが望まれている(特許文献3など参照)。
【特許文献1】特開平11−303155号公報
【特許文献2】特開2003−268814号公報
【特許文献3】特開平10−317370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記した透水セグメント1の透水部2を覆う生分解性シート6を分解するバクテリア等の微生物は、海水下や地下深い場所ではほとんど存在しておらず、シートが分解されなければ所望する透水性を確保できないという問題がある。
【0009】
また、図7に示すように、面状に広がる透水部2で集めた地下水を、点状の導水管4,4に集めて排出させる場合は、導水管4,4を流れる地下水の流速が早くなることで透水部2に土粒子を引き込んで目詰まりを起こす場合がある。
【0010】
そこで、本発明は、透水性の確保が容易で、目詰まりが発生し難い構造の透水性隔壁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、外側面側からの地下水の取り込みが可能な多孔質の透水部とその周囲に形成される構造壁部とを備えた透水性隔壁であって、前記透水部の外側面、内側面又は内部面の少なくとも一面が遮水性を有するシート状部材によって覆われており、前記シート状部材による被覆を解除する撤去装置が備えられている透水性隔壁であることを特徴とする。
【0012】
ここで、前記シート状部材は、袋状に形成されるとともに内部に前記透水部を透過可能な充填材が充填されて膨張しており、前記撤去装置として前記シート状部材を破って前記充填材を流出させるトリガ装置が備えられるように構成することができる。
【0013】
また、前記透水部には前記内側面と前記シート状部材が配設される面とを貫通させる貫通孔が設けられており、その貫通孔の内部には前記トリガ装置として針状部材が前記シート状部材に向けて発射可能に設置されるように構成してもよい。
【0014】
また、上記したいずれかの発明において、前記透水部には前記内側面と前記シート状部材が配設される面とを貫通させる貫通孔が設けられており、前記撤去装置として前記貫通孔に前記シート状部材を引き込む引込装置が備えられるように構成することができる。
【0015】
さらに、上記したいずれかの発明において、前記透水部の厚みは前記構造壁部の厚みより薄く形成されており、その厚みの差によって形成される空間に前記シート状部材が配設されるように構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
このように構成された本発明は、地下水を取り込む透水部の少なくとも一面が遮水性を有するシート状部材で覆われるとともに、その被覆を解除する撤去装置が備えられている。
【0017】
このため、透水性隔壁を構築する際は止水性が確保される一方、構築後には前記撤去装置によって被覆を解除して透水部の透水性を確保することができる。また、構造壁部は透水部の周囲に形成されるだけで透水部を通過する水の流れを阻止することがないので、断面の変化による流速の変化がほとんど生じることがなく目詰まりが発生し難い。
【0018】
また、シート状部材を袋状に形成し、その内部に充填材を充填して膨張させて透水部を被覆することによって止水性を確保し、その後、トリガ装置によってシート状部材を破って充填材を流出させてシート状部材を収縮させることで、透水部の被覆を解除することができる。
【0019】
例えば、ゴムのように伸縮率の大きな材料によってシート状部材を形成すれば、このトリガ装置によって簡単に被覆を解除することができる。
【0020】
また、このトリガ装置は、針状部材がシート状部材に向けて発射されるような簡単な構成にすることができるので、遠隔操作も可能になり、撤去作業の安全性を向上させることができる。
【0021】
さらに、透水部には貫通孔が設けられ、引込装置によってその貫通孔にシート状部材が引き込まれることによって透水部の被覆が解除されて透水性が確保される。
【0022】
このようにシート状部材は撓み易いので、引込装置などで貫通孔に取り込むことで容易に止水性を解除することができる。
【0023】
また、透水部をその周囲に形成される構造壁部よりも薄くして、その厚みの差によって形成される空間にシート状部材を配設することで、構造壁部の外側面又は内側面よりも外方に透水部やシート状部材が突出しない。
【0024】
このため、推進工法によって集水トンネルを構築する場合のように、地中で透水性隔壁が摺動する場合であっても、シート状部材が引っ掛かって剥がれることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0026】
図2は、本実施の形態による透水性隔壁としての透水セグメント11,・・・を円筒状に組み立てて構築された集水トンネル10の斜視図を示している。
【0027】
すなわち図2に示した集水トンネル10は、4個の透水セグメント11,・・・によって単位長さの円筒形が構成され、その円筒形が集水トンネル10の延伸方向に複数接続されたものである。ここで、各単位長さの円筒形の円周方向に現れる4箇所の継ぎ目は、集水トンネル10の延伸方向に連続しないように位置をずらして配置されている。
【0028】
さらに、この透水セグメント11は、ポーラスコンクリートなどの多孔質の材料で構成される透水部12と、その周囲に形成される構造壁部13とによって形成される。
【0029】
この透水部12のポーラスコンクリートには、例えば比重1.8〜2.0、空隙率15〜25%、透水係数1×10-1cm/sec、曲げ強度2.5N/mm2以上の特性を有するセメント系混合材料が使用される。
【0030】
また、この透水部12は、図1の断面図に示すように、外側面12aから内側面12bにかけて略一定の断面積に形成されているので、外側面12a側から取り込まれた地下水の流速が透水部12の内部で変化することがほとんどなく、周辺地山の砂分及び細粒分が透水部12に流入しにくい構造になっている。
【0031】
この透水部12は、例えば鉄筋コンクリートなどで成形された円弧状の構造壁部13の直方体状の開口部に、ポーラスコンクリートを設置又は組み込むことによって形成される。
【0032】
この透水部12の厚みは、図1に示すようにその周囲に形成される構造壁部13の壁厚よりも薄く、その外側面12aは構造壁部13の外側面13aより窪んで形成されており、透水部12の内側面12bと構造壁部13の内側面13bは面一に形成されている。
【0033】
この透水部12の窪みに本実施の形態のシート状部材としての袋状部材14を配設する。
【0034】
この袋状部材14は、ゴム、合成樹脂シート、ビニールシート、織布、不織布、紙などの所定の遮水性能を有するシート状部材を袋状に形成したもので、その内部には充填材15を充填できるようにしておく。
【0035】
この袋状部材14に充填される充填材15には、透水部12を目詰まりすることなく透過できる水、粘性の低い液体、気体、地下水によって溶解するゲル状物質などが使用される。
【0036】
本実施の形態では、後述するトリガ装置16で充填材15が充填されて膨張した袋状部材14を破裂させることによって、透水部12の被覆を解除することになるので、袋状部材14は伸縮率の大きいゴム等を使用して形成するのが好ましい。
【0037】
そして、透水部12には、内側面12bから外側面12aに貫通する貫通孔17を設け、この貫通孔17に袋状部材14による外側面12aの被覆を解除する撤去装置としてのトリガ装置16を設置する。
【0038】
このトリガ装置16は、貫通孔17の内部に先鋭部を袋状部材14に向けて収容された針状部材16aと、その針状部材16aを発射させる発射装置とから主に構成される。
【0039】
この発射装置は、貫通孔17の孔口に架け渡されて透水部12に固定される取付板16dと、その取付板16dに一端が固定されて針状部材16aとの間に介在されるバネ材16cと、針状部材16aの底面から垂れ下がって取付板16dの穴(図示せず)を通った連結材16eを把持する把持部16eとから構成される。
【0040】
この把持部16eは、ワイヤ状の連結材16bの把持、開放が行えるように構成されており、バネ材16cが縮んだ位置で連結材16bを把持させておき、遠隔操作によって把持部16eを開放させると、バネ材16cによって付勢された針状部材16aが袋状部材14に向けて発射される。
【0041】
次に、集水トンネル10の構築方法を説明するとともに、この実施の形態の作用について説明する。
【0042】
まず、立坑(図示せず)内部から地中に向けてシールド掘削機又は掘進機(図示せず)などを発進させて地中に掘削孔を形成し、その内部に透水セグメント11,・・・を組み立てて、図2に示すような集水トンネル10を構築する。
【0043】
この際、透水セグメント11の透水部12の外側面12aに配設される袋状部材14は、充填材15が充填されて膨張し、窪みに嵌った状態になっている。
【0044】
このように、透水部12の外側面12aが袋状部材14によって被覆されて露出されない状態であれば、地下水が内側面12b側に流れ込むことがなく止水性を確保することができる。
【0045】
そして、すべての透水セグメント11,・・・の設置が完了した後に、遠隔操作によってトリガ装置16の把持部16eを開放させると、図1(b)に示すように針状部材16aが発射されて袋状部材14に穴が開き、内部に充填された充填材15が流れ出す。
【0046】
この充填材15は、透水部12の外側面12aから流れ込んで内側面12b側に排出される。
【0047】
また、充填材15が流れ出した袋状部材14は収縮して小さくなるので、外側面12aの隙間の無い被覆が解除されて、地下水が外側面12aから流れ込むようになる。
【0048】
このように本実施の形態の構成によれば、トリガ装置16の針状部材16aによって充填材15が充填された袋状部材14を破るだけで、容易に透水部12の止水構造が解除されて透水性を確保することができる。
【0049】
また、透水性が確保された透水部12の透過断面は、外側面12aから内側面12bまでほぼ均質に形成されているので、地下水が透水部12を透過する流速が断面によって変化することがほとんどなく目詰まりが発生し難い。
【0050】
また、収縮した袋状部材14は、外側面12a上の地下水の流れによって貫通孔17に流れ込む可能性が高いので、所望する透水性を確保することができる。
【0051】
さらに、充填材15による膨張量を大きくしておけば、充填材15が流出した後の収縮した袋状部材14の面積は少なくとも膨張量分は小さくなるので、破れた残骸によって透水部12が遮蔽される面積を小さくすることができる。
【0052】
また、袋状部材14が外側面12a上に残ったとしても、透水部12を透過する流速が遅くなるだけなので、土粒子が透水部12に流れ込んで目詰まりし易くなることはない。
【0053】
また、透水部12をその周囲に形成される構造壁部13よりも薄くして、その窪みに袋状部材14を配設することで、構造壁部13の外側面13aより外方に袋状部材14が突出しない。
【0054】
このため、推進工法によって集水トンネル10を構築する場合のように、地中で透水セグメント11が摺動する場合であっても、袋状部材14が引っ掛かって剥がれることがない。
【実施例1】
【0055】
以下、実施例1について図3を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0056】
前記実施の形態では、撤去装置としてトリガ装置16について説明したが、実施例1では、撤去装置として引込装置23を使用する場合について説明する。
【0057】
この実施例1で使用する透水セグメント21に配設されるシート状部材22は、袋状に形成されている必要はなく、ゴム、合成樹脂シート、ビニールシート、織布、不織布、紙などの所定の遮水性能を有するものが使用できる。
【0058】
なお、膨張によって固定させることができないシート状部材22を透水部12の外側面12aに固定させるために、後述する引込装置23の引込力によって引き剥がしが可能な程度の弱い接着力で、外側面12aにシート状部材22を接着させておくことができる。
【0059】
そして、透水部12には、内側面12bから外側面12aに貫通する貫通孔17を設け、この貫通孔17にシート状部材22を引き込む引込装置23が撤去装置として設けられている。
【0060】
この引込装置23は、一端をシート状部材22に連結させるワイヤ状の連結材23aと、貫通孔17の孔口に架け渡されて透水部12に固定される取付板23bと、その取付板23bの穴(図示せず)を通った連結材23aを巻き取る巻取器23cとから構成される。
【0061】
この巻取器23は、遠隔操作でワイヤ状の連結材23aを巻き取ることによって、その端部に連結されたシート状部材22が撓んで貫通孔17に引き込まれる。
【0062】
このように構成された実施例1の透水セグメント21は、止水性を確保するために透水部12の外側面12aを被覆させていたシート状部材22を、貫通孔17に引き込むことによって確実に外側面12aから撤去することができる。
【0063】
このため、透水部12の平面積に相当する透水性を確実に確保することができる。
【0064】
また、巻取器23cは、容易に遠隔操作が可能になるように構成できるので、潜水作業を伴わず安全に撤去作業をおこなうことができる。
【0065】
さらに、シート状部材22を袋状に形成し、その内部に充填材15を充填しておき、その充填材15を前記実施の形態で示したようなトリガ装置16を使って流出させることによって収縮させて引き込みを容易にすることができる。
【0066】
また、このような引込装置23を併用する場合は、伸縮率の小さいシート状部材によって袋状部材14を形成しても確実に透水性を確保することができる。
【0067】
さらに、前記実施の形態の連結材16bの端部を本実施例1の巻取器23cに連結することで、トリガ装置16と引込装置23を一体化した撤去装置とすることもできる。
【0068】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【実施例2】
【0069】
以下、実施例2について図4を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0070】
前記実施の形態ではシート状部材として袋状部材14を使用し、前記実施例1では主に袋状でないシート状部材22を使用して説明したが、実施例2のシート状部材32はいずれの形態であってもよく、また、撤去装置も上記したいずれの形態であってもよいので説明を省略する。
【0071】
この実施例2では、前記実施の形態及び実施例1とは異なる位置にシート状部材32を配設した、透水性隔壁としての透水セグメント31について説明する。
【0072】
この実施例2では、透水部33とその周囲に形成される構造壁部13の壁厚が等しく、透水部33の外側面33a及び内側面33bが構造壁部13の外側面13a及び内側面13bと面一に形成される。
【0073】
そして、透水部33の外側面33aの平面積より一回り平面積が大きなシート状部材32によって外側面33aを被覆する。
【0074】
このように構成された実施例2の透水セグメント31は、透水部33と構造壁部13の境界まで覆うことができるような大きなシート状部材32によって被覆するので、確実に止水をおこなうことができる。
【0075】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は実施例1と略同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0076】
以下、実施例3について図5を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0077】
この実施例3では、前記実施例2と同様に、シート状部材42の設置位置を変えた構成について説明する。
【0078】
この実施例3の透水部43は、外側透水部431と内側透水部432が厚さ方向に隙間を開けて形成されており、その隙間にシート状部材42が配設される。
【0079】
すなわち、外側透水部431の外側面43aと構造壁部13の外側面13aとが面一に形成され、内側透水部432の内側面43bと構造壁部13の内側面13bが面一に形成される。
【0080】
そして、外側透水部431の内部面43cと内側透水部432の内部面43cとの間にシート状部材42を介在させて、内部面43,43をシート状部材42で被覆して透水部43を止水構造とする。
【0081】
このように構成された実施例3の透水セグメント41は、透水部43の内部に遮水用のシート状部材42が収容されているので、外力によってシート状部材42が引き剥がされることがなく、確実に止水性を確保することができる。
【0082】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例4】
【0083】
以下、実施例4について図6を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0084】
この実施例4で使用するシート状部材54は袋状であってもなくてもよく、撤去装置も上記したいずれの形態であってもよいので説明を省略する。
【0085】
この実施例4では、透水性隔壁として地中連続壁51に本発明を適用した場合について説明する。
【0086】
この地中連続壁51は、地下構造物を構築する際に土留め及び遮水の目的で構築されるが、地下水の流れを分断して上流側では地下水を上昇させ、下流側では地下水を低下させる場合がある。
【0087】
そこで、掘削工事などに使用する場合は止水性を確保し、使用後に地下水を透過させて地下水の流れを回復させることが可能な地中連続壁51を本発明を適用して構築する。
【0088】
この地中連続壁51の構築に使用する鉄筋籠の所定の位置には、ポーラスコンクリートによって成形された透水部52を設けておくとともに、その外側面52aと内側面52bを被覆するシート状部材54,54をそれぞれ取り付けておく。
【0089】
そして、地中に掘削した掘削溝に鉄筋籠を建て込んだ後に、コンクリートを掘削溝に流し込んで地中連続壁51を完成させる。
【0090】
このようにして構築された地中連続壁51は、シート状部材54と構造壁部53とによって地下水を遮断して所定の止水性が確保できるとともに、使用後に上記したいずれかの撤去装置でシート状部材54を撤去することによって所定の透水性を確保することができる。
【0091】
また、コンクリート打設時には、透水部52の外側面52a及び内側面52bがシート状部材54,54によって被覆されているので、コンクリートが回り込んで目詰まりを起こさせることがない。
【0092】
なお、この実施例4では、透水部52の両側にシート部材54を配設した例について説明したが、これに限定されるものではなく、前記実施の形態のように外側面側にのみシート部材54を配設したり、実施例3のように透水部の内部にシート部材54を配設したりする構造とすることができる。
【0093】
また、その他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0094】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0095】
例えば、前記実施の形態では、発射装置をバネ材16cを用いて構成したが、これに限定されるものではなく、例えば取付板16dと針状部材16aの底面との間に水膨潤性ゴムを介在させ、集水トンネル10の内部に水を充填することによってその水膨潤性ゴムに水を供給して膨張させて針状部材16aを袋状部材14に向けて移動させてもよい。
【0096】
また、前記実施の形態では、袋状部材14の撤去装置として針状部材16aを使用したトリガ装置16について説明したが、これに限定されるものではなく、例えばトリガ装置として起爆剤を使用し、袋状部材14の内部で爆発させることによって袋状部材14を破裂させて透水部12の被覆を解除してもよい。
【0097】
また、前記した撤去装置としてのトリガ装置16及び引込装置23は、遠隔操作が可能に構成されているが、これに限定されるものではなく、人力によって作動する撤去装置を使用することもできる。
【0098】
さらに、前記実施の形態又は実施例では、構造壁部13を鉄筋コンクリートで形成したが、これに限定されるものではなく、鋼板や形鋼などを組み合わせて鋼製の壁部を形成することもできる。また、構造壁部13の開口部の形状も直方体状に限定されるものではない。
【0099】
また、前記実施の形態又は実施例では、透水部12,33,43,52をポーラスコンクリートによって構成したが、これに限定されるものではなく、地下水が透過可能な孔を備えた多孔質部材であれば例えば連続気泡部材などであってもよい。
【0100】
さらに、前記実施の形態及び実施例では、透水性隔壁として複数の透水セグメントを組み合わせて集水トンネル10の外殻を形成したが、これに限定されるものではなく、管径が小さい場合などは円筒形の透水性推進管を透水性隔壁として使用して集水トンネルを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の最良の実施の形態の透水性隔壁の構成を説明する断面図であって、(a)は止水性を確保した状態を示した図であり、(b)は透水性を確保した状態を示した図である。
【図2】本発明の最良の実施の形態の集水トンネルの構成を説明する斜視図である。
【図3】実施例1の透水性隔壁の構成を説明する断面図であって、(a)は止水性を確保した状態を示した図であり、(b)は透水性を確保した状態を示した図である。
【図4】実施例2のシート状部材の設置位置を説明する断面図である。
【図5】実施例3のシート状部材を透水部の内部に設置した構成を説明する断面図である。
【図6】実施例4のシート状部材を地中連続壁に配設した構成を説明する斜視図である。
【図7】従来の生分解性シートを配置した集水トンネルの構成を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0102】
11 透水セグメント(透水性隔壁)
12 透水部
12a 外側面
12b 内側面
13 構造壁部
14 袋状部材(シート状部材)
15 充填材
16 トリガ装置(撤去装置)
16a 針状部材
17 貫通孔
21,31,41 透水セグメント(透水性隔壁)
22,32,42 シート状部材
23 引込装置(撤去装置)
33,43 透水部
33a,43a 外側面
33b,43b 内側面
43c 内部面
51 地中連続壁(透水性隔壁)
52 透水部
52a 外側面
52b 内側面
53 構造壁部
54 シート状部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側面側からの地下水の取り込みが可能な多孔質の透水部とその周囲に形成される構造壁部とを備えた透水性隔壁であって、
前記透水部の外側面、内側面又は内部面の少なくとも一面が遮水性を有するシート状部材によって覆われており、前記シート状部材による被覆を解除する撤去装置が備えられていることを特徴とする透水性隔壁。
【請求項2】
前記シート状部材は、袋状に形成されるとともに内部に前記透水部を透過可能な充填材が充填されて膨張しており、前記撤去装置として前記シート状部材を破って前記充填材を流出させるトリガ装置が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の透水性隔壁。
【請求項3】
前記透水部には前記内側面と前記シート状部材が配設される面とを貫通させる貫通孔が設けられており、その貫通孔の内部には前記トリガ装置として針状部材が前記シート状部材に向けて発射可能に設置されていることを特徴とする請求項2に記載の透水性隔壁。
【請求項4】
前記透水部には前記内側面と前記シート状部材が配設される面とを貫通させる貫通孔が設けられており、前記撤去装置として前記貫通孔に前記シート状部材を引き込む引込装置が備えられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の透水性隔壁。
【請求項5】
前記透水部の厚みは前記構造壁部の厚みより薄く形成されており、その厚みの差によって形成される空間に前記シート状部材が配設されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の透水性隔壁。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−77598(P2007−77598A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263677(P2005−263677)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(303004716)マテラス青梅工業株式会社 (15)
【出願人】(598055079)有限会社ジオテック (4)