説明

透湿性塗膜の形成方法

【課題】透湿性と防水性の相反する効果を有しながら、塗膜表面の耐汚染性、とりわけ汚染物質の自然除去効果に優れ、経時的な透湿効果の低下を生じない透湿性塗膜を得る。さらには耐水性、耐白華性等の塗膜物性に優れた透湿性塗膜を得る。
【解決手段】透湿性基材の表面に、pH4.0以上10.0以下の合成樹脂エマルション(A)、及び粒子径1〜200nm、pH5.0以上8.5未満の中性シリカゾル(B)を必須成分とし、前記合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対し、前記中性シリカゾル(B)を固形分換算にて0.1〜50重量部含み、形成塗膜のJIS K 5400 8.17 による水蒸気透過度が40g/m ・24H以上、且つ JIS A 6909 7.13による透水量が0.5ml以下の水性上塗材を塗装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート、モルタル、サイディングボード、ALC、押出成形板、木質合板等の、透湿性を有する各種基材の表面仕上げに適用される透湿塗膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物、土木構築物等の基材の保護、意匠性の付与および、美観性の向上のため塗装仕上げが行われている。このような塗装仕上げの中で、建築物、土木構築物等の基材の保護という観点では、基材内部への雨水の浸入を防止する防水性が重要な機能となっている。近年このような防水性の塗膜を施すことにより、外部からの雨水の浸入を遮蔽することが可能となっている。
ところが、反対に建築物内部や土木構築物内部で発生する水蒸気は、基材の保護を目的に塗装された防水性塗膜の水分遮蔽性能によって基材内部に留まり、高温時には塗膜の膨れの原因になったり、低温時には基材内部での凍結によって基材を破壊する等の問題を引き起こす場合がある。
【0003】
このような問題を改善する手法として、防水性塗膜に透湿性を付与する技術が提案されている。例えば、特公平4−5111号公報(特許文献1)には、鉄筋コンクリート造等の建築物外壁の外表面仕上方法として、特定の透水量と透湿抵抗を有する塗膜を形成する塗料を用いることが記載されている。
しかしながら、上記特許文献1では、大気中の汚染物質に対する抵抗性は何ら考慮されていない。近年、特に都心や都市近郊部においては、自動車等からの排出ガスによって大気中に汚染物質が浮遊している状況である。このような状況下では、大気中の汚染物質が塗膜表面に付着・蓄積しやすく、塗膜本来の透湿性能を阻害する場合がある。
【0004】
透湿性能を有する塗料としては、コロイダルシリカを配合した塗料が知られている。例えば、特公昭62−39627号公報(特許文献2)には、塗膜形成剤として合成樹脂エマルションとコロイダルシリカとの混合物を使用することが記載されている。
しかしながら、このような塗料によって形成される塗膜では、コロイダルシリカに含まれるナトリウム塩の影響によって、耐水性が低下したり、あるいは白華が生じる等の不具合が発生しやすい。また、汚染物質に対する抵抗性についても改善の余地がある。
【0005】
【特許文献1】特公平4−5111号公報
【特許文献2】特公昭62−39627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、透湿性と防水性の相反する効果を有しながら、塗膜表面の耐汚染性、とりわけ汚染物質の自然除去効果に優れ、経時的な透湿効果の低下を生じない透湿性塗膜を得ること、さらには耐水性、耐白華性等の塗膜物性に優れた透湿性塗膜を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために本発明者らは、鋭意検討の結果、特定組成からなる水性上塗材を用いることで、塗膜表面へ付着した汚染物質が自然に除去され、長期にわたり防水性と透湿性を維持することができ、塗膜の耐水性、耐白華性等も改善できることに想到し本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.透湿性基材の表面に、pH4.0以上10.0以下の合成樹脂エマルション(A)、及び粒子径1〜200nm、pH5.0以上8.5未満の中性シリカゾル(B)を必須成分とし、前記合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対し、前記中性シリカゾル(B)を固形分換算にて0.1〜50重量部含み、形成塗膜のJIS K 5400 8.17 による水蒸気透過度が40g/m ・24H以上、且つ JIS A 6909 7.13による透水量が0.5ml以下の水性上塗材を塗装することを特徴とする透湿性塗膜の形成方法。
2.前記水性上塗材における中性シリカゾルが、疎水化処理を施したものであることを特徴とする1.に記載の透湿性塗膜の形成方法。
3.透湿性基材の表面に、形成塗膜のJIS K 5400 8.17による水蒸気透過度が40g/m ・24H以上の下塗材を塗装した後、1.または2.に記載の水性上塗材を塗装することを特徴とする透湿性塗膜の形成方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、透湿性と防水性という相反する効果を有しながら、塗膜表面の耐汚染性、とりわけ汚染物質の自然除去効果が非常に優れるため、経時的な透湿効果の低下を生じない透湿性塗膜を得ることができる。さらに、本発明では、耐水性、耐白華性等の塗膜物性に優れた透湿性塗膜を得ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の透湿性基材は、コンクリート、モルタル、ALC板、石膏ボード、石綿スレート板、合板、木材、発泡フォーム等の水分をその内部に含有する気孔を有する基材であり、金属板、ガラス板、プラスチック板等の通気性を全く有さないものは除外する。
【0011】
本発明では、このよう透湿性基材に対し、形成塗膜のJIS K 5400 8.17 による水蒸気透過度が40g/m ・24H以上、且つ JIS A 6909 7.13による透水量が0.5ml以下の特定組成の水性上塗材を塗装する。
【0012】
本発明における形成塗膜の透湿性は、JIS K 5400(1990) 8.17「水蒸気透過度」に基づいて測定するものである。水蒸気透過度が40g/m ・24H未満の場合、建築物内部や土木構造物内部で発生する水蒸気は塗膜裏面に局在化し、その結果、塗膜の膨れの原因となり、一方、冬季には基材内部での凍結による基材破壊を引き起こすおそれがある。水蒸気透過度の上限は特に限定されないが、水蒸気透過度が大きすぎると防水性が低下するおそれがあるため、通常は500g/m ・24H以下程度とすることが望ましい。
【0013】
また、形成塗膜の透水量は、JIS A 6909(2000) 7.13「透水試験B法」に基づいて測定するものである。透水量が0.5mlを超える場合、建築物、土木構造物等の基材内部へ降雨による水分が浸透し、その結果、例えば、コンクリート下地では、中性化による強度低下や鉄筋の発錆の原因となり、さらに、過剰な水分の浸透による塗膜の剥離等の異常が生じ、基材の保護効果が機能しえない。
【0014】
本発明における水性上塗材は、pHが4.0以上10.0以下である合成樹脂エマルション(A)(以下「(A)成分」という)、及び粒子径が1〜200nmであり、pHが5.0以上8.5未満である中性シリカゾル(B)(以下「(B)成分」という)を必須成分とするものである。本発明では、このような組成の水性上塗材を使用することにより、耐汚染性、耐水性、耐白華性等に優れた塗膜を形成することができる。
【0015】
このうち、(A)成分は結合剤として作用するものである。
(A)成分のpHは通常4.0以上10.0以下、好ましくは5.0以上9.5以下、より好ましくは6.0以上9.0以下、さらに好ましくは7.0以上8.5以下である。このようなpHの(A)成分を使用することにより、後述の(B)成分を混合した際に良好な安定性を確保することができる。すなわち、1液型の水性上塗材を設計することが可能となり、塗装時の作業効率等を高めることができる。pHが上記範囲外である場合は、(A)成分と(B)成分とを混合した際に、凝集物が発生したり、短時間で塗料粘度が上昇したりする。極端な場合には、塗料がゲル化してしまうおそれもある。
【0016】
(A)成分としては、pHが上記範囲内であれば、各種合成樹脂エマルションを使用することができる。具体的には、例えば、アクリル樹脂系エマルション、アクリルシリコン樹脂系エマルション、フッ素樹脂系エマルション、ウレタン樹脂系エマルション等が挙げられる。
【0017】
〔アクリル樹脂系エマルション〕
アクリル樹脂系エマルションとしては、アクリル系単量体、およびアクリル系単量体と共重合可能な他の単量体とをラジカル共重合により得られるものが使用できる。
【0018】
アクリル系単量体は、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート(メチルアクリレートまたはメチルメタアクリレートのいずれかであることを示す。以下において同じ。)、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリル系単量体;(メタ)アクリル酸などのエチレン性不飽和カルボン酸;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有(メタ)アクリル系単量体;(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド含有(メタ)アクリル系単量体;アクリロニトリルなどのニトリル基含有(メタ)アクリル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体等を例示できる。
【0019】
アクリル系単量体と共重合可能な他の単量体としては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル単量体;マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などのスルホン酸含有ビニル単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレンなどの塩素含有単量体;ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテルなどの水酸基含有アルキルビニルエーテル;エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテルジエチレングリコールモノアリルエーテルなどのアルキレングリコールモノアリルエーテル;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどのビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル;エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテルなどのアリルエーテル等を例示できる。
【0020】
合成樹脂エマルションとして、アクリル樹脂系エマルションを用いた場合は、耐久性、コスト面、樹脂設計の自由度の高さなどが優れている点で有利である。
【0021】
〔アクリルシリコン樹脂系エマルション〕
アクリルシリコン樹脂系エマルションとしては、珪素含有アクリル系単量体、および珪素含有アクリル系単量体と共重合可能な他の単量体とをラジカル共重合により得られるものが使用できる。
【0022】
珪素含有アクリル系単量体としては、特に限定されないが、たとえば、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの加水分解性シリル基含有ビニル系単量体等を例示できる。
【0023】
珪素含有アクリル系単量体と共重合可能な他の単量体としては、たとえば、前述のアクリル樹脂系エマルションで使用される単量体等を、特に限定されず使用できる。
【0024】
合成樹脂エマルションとして、アクリルシリコン樹脂系エマルションを用いた場合は、耐候性、耐黄変性、耐久性、耐薬品性、耐汚染性などが優れている点で有利である。
【0025】
〔フッ素樹脂系エマルション〕
フッ素樹脂系エマルションとしては、フッ素含有単量体、およびフッ素含有単量体と共重合可能な他の単量体とをラジカル共重合により得られるものが使用できる。
【0026】
フッ素含有単量体としては、たとえば、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンなどのフルオロオレフィン;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのフッ素含有(メタ)アクリレート等が例示される。
【0027】
フッ素含有単量体と共重合可能な他の単量体としては、たとえば、前述のアクリル樹脂系エマルションで使用される単量体等を、特に限定されず使用できる。
【0028】
合成樹脂エマルションとして、フッ素樹脂系エマルションを用いた場合は、耐候性、耐黄変性、耐久性、耐薬品性、耐汚染性などが優れている点で有利である。
【0029】
〔ウレタン樹脂系エマルション〕
ウレタン樹脂系エマルションとは、塗膜形成後の塗膜中にウレタン結合を持つようになるエマルションを総称する。即ち、塗膜形成前からウレタン結合を有するものでもよいし、塗膜形成後の反応によりウレタン架橋を形成するものでもよい。エマルションの形態としては、1液型でもよいし、2液型であってもよい。
1液型としては、ウレタン結合を有する重合性単量体を他の共重合可能な単量体と共重合する方法、ウレタン結合を有する水性樹脂の存在下に重合性不飽和単量体を重合する方法、反応基を有する水性ウレタン樹脂と、該反応基と反応することのできる基を含むエマルションとを混合する方法等が挙げられる。
2液型としては、水分散性イソシアネートと水酸基含有エマルションとの組み合わせ等が挙げられる。
【0030】
合成樹脂エマルションとして、ウレタン樹脂系エマルションを用いた場合は、耐久性、耐溶剤性、耐薬品性、耐汚染性などが優れている点で有利である。
【0031】
〔その他の架橋反応型エマルション〕
合成樹脂エマルションの中で、前記の水酸基とイソシアネート化合物による架橋反応以外に、カルボニル基とヒドラジド基、カルボン酸と金属イオン、エポキシ基とアミン、エポキシ基とカルボキシル基、カルボン酸とアジリジン、カルボン酸とカルボジイミド、カルボン酸とオキサゾリン、アセトアセテートとケチミンなどを利用した架橋反応を形成するエマルションを使用することも可能である。架橋反応型エマルションは、1液タイプであっても、2成分以上の多成分タイプであってもよい。
【0032】
合成樹脂エマルションとして、架橋反応型エマルションを用いた場合は、耐久性、耐溶剤性、耐薬品性、耐汚染性などが優れており、有利である。
【0033】
(A)成分は、上述の条件を満たす限り、公知の方法で製造することができる。例えば、水性媒体中での乳化重合、懸濁重合、分散重合、溶液重合、酸化還元重合等で製造することができ、必要に応じ、多段階重合で製造することもできる。この際に、必要に応じ、乳化剤、開始剤、分散剤、連鎖移動剤、緩衝剤等またはその他の添加剤等を適宜使用することができる。
【0034】
水性上塗材における(B)成分は、粒子径が1〜200nmであり、pHが5.0以上8.5未満である中性シリカゾルである。
【0035】
(B)成分を構成する粒子は、シリケートの加水分解縮合によって形成されるものであり、シリカを主成分とするため硬度が高く、かつその粒子表面にシラノール基(Si−OH)を有する化合物である。本発明では、このような(B)成分粒子の硬度と表面官能基の相乗的作用によって、優れた耐汚染性、透湿性、耐水性、耐白華性等を発揮することができる。
【0036】
(B)成分の粒子径は、1次粒子径として通常1〜200nm、好ましくは5〜100nm、より好ましくは10〜50nm、さらに好ましくは20〜40nmである。粒子径が大きすぎる場合は、塗膜の鮮映性が損われる等、形成塗膜の外観に悪影響を及ぼすおそれがある。粒子径が小さすぎる場合は、耐汚染性等において十分な効果が得られないおそれがある。(B)成分の平均1次粒子径は、5〜100nm、より好ましくは10〜50nm、さらに好ましくは20〜40nmである。本発明では、平均1次粒子径が異なる2種以上の中性シリカゾル(B)を使用することによって、耐汚染効果を高めることもできる。なお、(B)成分の粒子径は、光散乱法によって測定される値である。
【0037】
(B)成分のpHは5.0以上8.5未満であることが必要であり、6.0以上8.5未満であることが好ましく、6.5以上8.0以下であることがより好ましく、7.0以上8.0以下であることがさらに好ましい。(B)成分がこのようなpHに調製されたものであれば、その粒子表面のシラノール基によって、耐汚染性等において優れた効果が発揮される。pHが上記範囲外である場合は、耐汚染性が不十分となり、また透湿性、耐水性、耐候性等の点においても不利となる。
【0038】
本発明における(B)成分と類似するものとしてコロイダルシリカが挙げられる。通常のコロイダルシリカは、pHが2〜4の酸性タイプ、pHが9〜11のアルカリ性タイプに大別される。これらコロイダルシリカの粒子表面では、いずれもSi−OHが解離した状態となっている。具体的に、酸性タイプのコロイダルシリカの粒子表面はSi−O・Hとなっている。アルカリ性タイプのコロイダルシリカは、粒子表面がSi−O・NaであるNa型と、Si−O・NHであるNH型に分類される。
【0039】
これに対し、本発明における(B)成分は、粒子表面においてSi−OHの大半が解離せずに残存した状態となっているものであり、上記コロイダルシリカとは別異の化合物である。本発明では、この(B)成分の粒子表面特性によって、優れた耐汚染性、耐水性、耐白華性等が発揮されるものと推測される。
【0040】
(B)成分としては、電気伝導度が3mS/cm以下(好ましくは2mS/cm以下、さらに好ましくは1mS/cm以下)のものが好適である。なお、ここに言う電気伝導度は、「Model SC82パーソナルSCメータ SC8221−J」(横河電機社製)を用いて測定される値である(測定温度25℃)。
【0041】
このような(B)成分を使用することによって、形成塗膜の耐水性、耐白華性、耐汚染性等をより高めることができる。
【0042】
(B)成分は、シリケート化合物を原料として製造することができる。シリケート化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等、あるいはこれらの縮合物等が挙げられる。この他、ジメトキシジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物を併せて使用することもできる。製造時には触媒等を使用することもできる。また、製造過程あるいは製造後に、触媒等に含まれる金属をイオン交換処理等によって除去することもできる。
【0043】
(B)成分の媒体としては、水及び/または水溶性溶剤が使用できる。水溶性溶剤としては、例えば、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類等が挙げられる。本発明では、特に媒体が水のみからなることが望ましい。このような(B)成分を使用することにより、塗料の低揮発性有機溶剤(低VOC)化を図ることができる。また、(A)成分と混合した際の凝集物発生を抑制することもできる。
【0044】
(B)成分の固形分は、通常5〜50重量%であり、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは15〜30重量%である。(B)成分の固形分がこのような範囲内であれば、(B)成分自体の安定性、さらには(A)成分と(B)成分を混合したときの安定性を確保することができる。固形分が大きすぎる場合は、(B)成分自体が不安定化したり、(A)成分との混合時に水性上塗材が不安定化したりするおそれがある。固形分が小さすぎる場合は、耐汚染性、透湿性等において十分な効果を得るために、多量の(B)成分を混合しなければならず、塗料設計上、実用的ではない。
【0045】
水性上塗材における(B)成分としては、疎水化処理を施した中性シリカゾル(以下「(B−1)成分」という)が好適である。このような(B−1)成分は、塗膜表面への配向性に優れるため、耐汚染性、透湿性等の塗膜物性をいっそう高めることができる。
【0046】
疎水化処理は、アルコキシル基、水酸基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物(以下「(p)成分」という)と、前記中性シリカゾルとの複合化によって行うことが望ましい。
【0047】
(p)成分としては、中性シリカゾルの疎水化効果を有する化合物であれば限定なく使用可能であるが、例えば下記の化合物が例示される。
【0048】
1)アルコキシシラン化合物;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメチルシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリプロポキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等。
【0049】
2)アルコール類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、n−ヘキシルアルコール、2−エチル−1−ヘキサノール、n−ヘプタノール、イソヘプチルアルコール、n−オクタノール、2−オクタノール、n−ノナノール、n−デカノール、n−ウンデシルアルコール、n−ドデシルアルコール、1−3ブタンジオール、1−5ペンタンジオール、ジアセトンアルコール等。
【0050】
3)グリコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等。
【0051】
4)グルコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等。
【0052】
5)フッ素アルコール類;トリフルオロエタノール、ペンタフルオロプロパノール、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール 、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール、ノナフルオロ−t−ブチルアルコール、1,1,3,3−テトラフルオロイソプロパノール、1,1−ビス(トリフルオロメチル)エタノール、1,1,1,3,3,4,4,4−オクタフルオロ−2−ブタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1,1−ビス(トリフルオロメチル)プロパノール、2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)−1−トリルエタノール等。
【0053】
上記に例示された化合物の中でも、(p)成分としては、特にフッ素アルコールが好適である。
【0054】
(p)成分は、中性シリカゾルの固形分100重量部に対し、0.01〜50重量部(好ましくは0.02〜30重量部、さらに好ましくは0.05〜10重量部)の比率で混合することが望ましい。このような比率であれば、耐汚染性、透湿性等を十分に高めることができる。
【0055】
(p)成分を中性シリカゾルに混合する際には、必要に応じ(p)成分を水や水溶性溶剤等で希釈しておいてもよい。(p)成分と中性シリカゾル(B)とを混合して疎水化処理する際には、必要に応じて触媒を使用することもできる。
【0056】
(p)成分によって中性シリカゾルを疎水化処理する場合、(p)成分にシランカップリング剤を混合して得られたものと、中性シリカゾルとの複合化によって疎水化処理を行うこともできる。また、中性シリカゾルをシランカップリング剤で処理した後に(p)成分を混合することによって疎水化処理することもできる。このような場合、シランカップリング剤としては、(p)成分と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤が使用できる。例えば(p)成分がフッ素アルコールである場合には、アミノ基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤等が使用できる。
【0057】
中性シリカゾル(B)と(p)成分との混合・処理時の温度は、下限が10℃以上であり、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上に設定することが望ましく、上限は200℃以下程度、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下に設定することが望ましい。このような温度設定によって、(p)成分と中性シリカゾルとの反応性が高まり、耐汚染効果発現の点においても好ましいものとなる。加温時間は特に限定されないが、通常1〜24時間程度である。
【0058】
本発明では、ポリオキシアルキレン基含有化合物を複合化した中性シリカゾルを使用することによって、耐汚染性を高めることもできる。ポリオキシアルキレン基含有化合物(以下「(q)成分」という)としては、アルコキシル基、水酸基から選ばれる少なくとも1種の官能基と、ポリオキシアルキレン基とを有する化合物が好適である。
【0059】
このような(q)成分としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレン−プロピレングリコール、ポリオキシエチレン−テトラメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシエチレンジグリコール酸、ポリオキシエチレングリコールビニルエーテル、ポリオキシエチレングリコールアリルエーテル、ポリオキシエチレングリコールジアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。(q)成分の平均分子量は、通常150〜2000程度であればよい。
【0060】
中性シリカゾルに(q)成分を複合化するには、中性シリカゾルと(q)成分を混合し、必要に応じ加温すればよい。(q)成分の混合比率は、中性シリカゾルの固形分100重量部に対し、0.01〜50重量部(好ましくは0.02〜30重量部、さらに好ましくは0.05〜10重量部)の比率とすることが望ましい。加温時の温度は、下限を10℃以上(好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上)、上限を200℃以下(好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下)に設定すればよい。加温時間は特に限定されないが、通常1〜24時間程度である。
【0061】
水性上塗材における(B)成分としては、疎水化処理を施すとともに上記ポリオキシアルキレン基含有化合物(q)を複合化した中性シリカゾルが特に好適である。このような中性シリカゾルを使用すれば、形成塗膜の耐汚染性をいっそう高めることができる。
【0062】
(B)成分として、平均1次粒子径が異なる2種以上の中性シリカゾルを使用する場合は、少なくとも1種が疎水化処理を施したものであることが望ましい。さらには、少なくとも1種が、疎水化処理を施すとともに上記(q)成分を複合化したものであることがより望ましい。
【0063】
本発明の水性上塗材における(B)成分の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、固形分換算で通常0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜15重量部である。このような混合比率であれば、本発明の効果を十分に発揮することができる。(B)成分が少なすぎる場合は、十分な耐汚染性、透湿性を得ることができない。(B)成分が多すぎる場合は、塗膜にひび割れが生じやすくなる。
【0064】
本発明の水性上塗材では、上述の成分に加え、顔料を含むこともできる。顔料としては、一般的に塗料に配合可能な着色顔料、体質顔料等が使用できる。このような顔料の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、通常5〜1000重量部、好ましくは10〜500重量部である。
【0065】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。また、アルミニウム顔料、パール顔料等を使用することもできる。
体質顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、含水微粉珪酸、タルク、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ粉、水酸化アルミニウム等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。水性上塗材における体質顔料の粒子径は、通常50μm以下、好ましくは0.5μm以上30μm以下である。
【0066】
本発明の水性上塗材には、本発明の効果を著しく損なわない範囲内であれば、通常塗料に使用可能な各種成分を混合することができる。このような成分としては、例えば、造膜助剤、可塑剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、消泡剤、分散剤、増粘剤、レベリング剤、湿潤剤、pH調整剤、吸着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、触媒、架橋剤等が挙げられる。
【0067】
本発明の水性上塗材の塗装方法としては、スプレー塗り、ローラー塗り、ハケ塗り等の種々の方法を採用することができる。工場内で塗装を行う場合は、ロールコーター、フローコーター等を使用することもできる。水性上塗材の塗付量は、水蒸気透過性及び透水量が本発明の規定を逸脱しない範囲内であればよいが、通常は0.1〜0.5kg/m程度である。塗付時には水等で希釈することによって、塗料の粘性を適宜調製することもできる。希釈割合は、通常0〜20重量%程度である。水性上塗材を塗装した後の乾燥は通常、常温で行えばよい。
【0068】
本発明では、コンクリート、モルタル等の透湿性を有する基材に対し、上述の水性上塗材を直接塗装することができるが、各種下塗材を塗装した基材に塗装することも可能である。この場合、下塗材としては、形成塗膜のJIS K 5400(1990) 8.17による水蒸気透過度が40g/m ・24H以上であることが必須である。
【0069】
下塗材としては、水蒸気透過度が上述の条件を満たし、かつ基材と水性上塗材に対し良好な密着性を有するものであれば、特に限定されず、公知または市販のものが使用できる。下塗材における結合剤としては、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等が使用できる。これらは、架橋反応性を有するものであってもよい。また、これら樹脂は、有機溶剤を媒体とする溶剤系樹脂であってもよいし、水を媒体とする水性樹脂であってもよい。
【0070】
本発明における下塗材としては、特に、水を媒体とする水性下塗材が好適である。このような水性下塗材は、環境問題、省資源、労働安全衛生等の点において好ましいものである。水性下塗材は、通常、合成樹脂エマルションを結合剤とし、必要に応じてその他の成分を適宜配合することによって得ることができる。下塗材において配合可能な成分としては、例えば、着色顔料、体質顔料、防錆顔料、繊維類、造膜助剤、可塑剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、消泡剤、分散剤、増粘剤、レベリング剤、湿潤剤、pH調整剤、吸着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、触媒、架橋剤等が挙げられる。
【0071】
本発明では、下塗材として浸透性吸水防止材を用いることもできる。浸透性吸水防止材は、コンクリート、モルタル等の基材の中に深く浸透して撥水層を形成し、外部からの水や炭酸ガス等の浸入を遮断することで基材の中性化による強度低下を防止し、さらに基材内部に存在する鉄骨あるいは鉄筋の腐食を抑制する効果を発揮する。また、基材内部のカルシウム成分の移行よる基材表層でのエフロレッセンス発生を防止する効果も有する。本発明では、このような浸透性吸水防止材と上述の水性上塗材との積層により、塗膜の耐久性、防水性、耐白華性等の物性をいっそう高めることができ、塗装によるむらや濡れ色の発生を防止することもできる。なお、コンクリート等の素材の質感を維持しようとする場合は、浸透性吸水防止材及び水性上塗材として、クリヤー性を有する材料を使用すればよい。
【0072】
下塗材の塗装においては、例えば、刷毛塗り、スプレー塗装、ローラー塗装等を用いればよい。また、ロールコーター、フローコーター等を使用することもできる。下塗材の塗付量は、水蒸気透過度が本発明の範囲内になるように適宜設定すればよいが、通常は0.05kg/m〜0.4kg/m程度である。下塗材の乾燥は通常、常温で行えばよい。下塗材乾燥後、上述の水性上塗材を塗装することができる。
【実施例】
【0073】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0074】
表1に示す配合に従い、常法により下記の各原料を均一に混合して上塗材A〜Kを製造した。
【0075】
・樹脂:アクリル樹脂エマルション(メチルメタクリレート−シクロヘキシルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)−メタクリル酸共重合体、pH7.3、固形分50重量%、最低造膜温度28℃)
・着色顔料:酸化チタン(平均粒子径0.3μm)
・分散剤A:スチレン−マレイン酸共重合物
・分散剤B:ポリオキシアルキレン系化合物
・造膜助剤:プロピレングリコールモノブチルエーテル
・増粘剤:ポリウレタン系増粘剤
・消泡剤:シリコーン系消泡剤
・低汚染化剤A:中性シリカゾル(pH7.6、固形分20重量%、平均1次粒子径27nm、電気伝導度0.6mS/cm)
・低汚染化剤B:合成例1参照
・低汚染化剤C:合成例2参照
・低汚染化剤D:合成例3参照
・低汚染化剤E:合成例4参照
・低汚染化剤F:合成例5参照
・低汚染化剤G:中性シリカゾル(pH7.8、固形分12重量%、平均1次粒子径12nm、電気伝導度0.3mS/cm)
・低汚染化剤H:塩基性コロイダルシリカ(pH9.5、固形分20重量%、平均1次粒子径20nm、電気伝導度1.7mS/cm)
【0076】
(合成例1)
還流冷却器と攪拌羽根を備えた反応容器に、低汚染化剤Aを500重量部仕込み、攪拌しながらトリフルオロエタノール0.3重量部を徐々に滴下した。次いで、80℃まで昇温して24時間攪拌を継続した後、室温まで放冷し、低汚染化剤Bを得た。
【0077】
(合成例2)
還流冷却器と攪拌羽根を備えた反応容器に、低汚染化剤Aを500重量部仕込み、攪拌しながらテトラメトキシシラン1.0重量部を徐々に滴下した。次いで、80℃まで昇温して24時間攪拌を継続した後、室温まで放冷し、低汚染化剤Cを得た。
【0078】
(合成例3)
還流冷却器と攪拌羽根を備えた反応容器に、低汚染化剤Aを500重量部仕込み、攪拌しながらメチルトリメトキシシラン1.0重量部を徐々に滴下した。次いで、80℃まで昇温して24時間攪拌を継続した後、室温まで放冷し、低汚染化剤Dを得た。
【0079】
(合成例4)
還流冷却器と攪拌羽根を備えた反応容器に、低汚染化剤Aを500重量部仕込み、攪拌しながらトリフルオロエタノール0.3重量部を徐々に滴下した後、メトキシポリエチレングリコール0.15重量部を徐々に滴下した。次いで、80℃まで昇温して24時間攪拌を継続した後、室温まで放冷し、低汚染化剤Eを得た。
【0080】
(合成例5)
還流冷却器と攪拌羽根を備えた反応容器に、低汚染化剤Aを500重量部仕込み、攪拌しながら、トリフルオロエタノール0.3重量部とγ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.3重量部との混合溶液を徐々に滴下した。次いで、80℃まで昇温して24時間攪拌を継続した後、室温まで放冷し、低汚染化剤Fを得た。
【0081】
【表1】

【0082】
1.透湿性試験
下塗材、および上塗材をそれぞれ0.20kg/m、0.30kg/mの塗付量でわ紙にスプレー塗装し、温度23℃・相対湿度50%下(以下「標準状態」という)で7日間乾燥させた後、直径約70mmの円形に6枚切り取り試験体とした。3枚は初期値とし、JIS K 5400 8.17「水蒸気透過度」の方法により透湿性試験を行った。残りの3枚は、JIS K 5400 8.10 耐汚染性試験に準じ、塗膜全面に15重量%カーボンブラック水分散ペーストを均一に噴霧し、50℃の恒温室中に2時間放置した。その後、ソニケーターを用いて、10分間超音波洗浄を行い標準状態で3日間放置後、前述同様に透湿性試験を行い評価した。評価基準は水蒸気透過度が40g/m ・24h以上のものを○、20g/m ・24h以上40g/m ・24h未満のものを△、20g/m ・24h未満のものを×、とした。
【0083】
2.透水性試験
300×300×6mmのスレート板に、下塗材、および上塗材をそれぞれ0.20kg/m、0.30kg/mの塗付量でスプレー塗装し、標準状態で7日間乾燥させたものを試験体とした。その後、JIS A6909 7.13 透水量に準じて試験を行った。
【0084】
3.耐水性
150×70×6mmのスレート板に、下塗材、および上塗材をそれぞれ0.20kg/m、0.30kg/mの塗付量でスプレー塗装し、標準状態で7日間乾燥させたものを試験体とした。作製した試験板の鏡面光沢度を測定した後、試験板を23℃の水に7日間浸漬し、再度鏡面光沢度を測定した。評価は、鏡面光沢度の保持率が90%以上のものを○、80%以上90%未満のものを△、80%以下のものを×、とした。
【0085】
下塗材と上塗材との組み合わせ、および試験結果を表2に示す。なお、下塗材としてはヘキシルトリエトキシシランを主成分とする水性エマルション型浸透性吸水防止材(以下「下塗材A」という)を使用した。この下塗材Aの塗付量0.20kg/mにおける水蒸気透過度は94g/m ・24Hであった。
【0086】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透湿性基材の表面に、pH4.0以上10.0以下の合成樹脂エマルション(A)、及び粒子径1〜200nm、pH5.0以上8.5未満の中性シリカゾル(B)を必須成分とし、前記合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対し、前記中性シリカゾル(B)を固形分換算にて0.1〜50重量部含み、形成塗膜のJIS K 5400 8.17 による水蒸気透過度が40g/m ・24H以上、且つ JIS A 6909 7.13による透水量が0.5ml以下の水性上塗材を塗装することを特徴とする透湿性塗膜の形成方法。
【請求項2】
前記水性上塗材における中性シリカゾルが、疎水化処理を施したものであることを特徴とする請求項1に記載の透湿性塗膜の形成方法。
【請求項3】
透湿性基材の表面に、形成塗膜のJIS K 5400 8.17による水蒸気透過度が40g/m ・24H以上の下塗材を塗装した後、請求項1または請求項2に記載の水性上塗材を塗装することを特徴とする透湿性塗膜の形成方法。

【公開番号】特開2006−102584(P2006−102584A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289930(P2004−289930)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】