説明

透湿防水ブロック、タイルの飛散・落下防止方法

【課題】
オフィスやマンションなどのビルあるいは戸建住宅の外壁用ブロック、タイルが万が一破砕しても、破砕したブロック、タイルの飛散・落下を防ぐ好適な飛散防止施工方法を提供する。
【解決手段】
透湿、防水性能を有する陶磁器からなるブロック、タイル1の裏面にフライマー2を塗工し、次いで目付30〜300g/m2のスパンボンド法による合繊長繊維不織布4に、目付50〜100g/m2、融点70〜230℃の熱接着性不織布3を積層した補強シートを熱接着性不織布側を介して加熱・積層し、この補強シートを備えた透湿防水ブロック、タイルを所定の部位に嵌め込むとか、固定具により固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透湿防水性能を有するブロック、タイルなどの外装材が破砕しても、飛散・落下することのないようにする同ブロック、タイルなどの外装材の飛散・落下防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
旧来、住宅の外装材は檜,杉,松などの羽目板を貼り合わせる工法が汎用されていたが、近年は、外部からの火災の伝播の防止などのため磁器,陶器などからなるブロック、タイルなどを貼り合わせる工法が増えてきている。しかしながら、これらの外装材は硬く、重いために万が一、落下した場合には下を通行する人々を直撃し怪我などを引き起こす可能性があり、その対策が重要となっている
そこで、従来、ブロック、タイル等の外装材は、これを外壁などに貼り付け施工するに当たっては、先ず貼り付け施工を行い、後に接着剤によりモルタルなどの劣化あるいは衝撃によりタイル等が破損した際に破砕したブロック、タイル片が落下しないよう接着することが行われ、その際の強固に接着させる方法としてホットメルト樹脂テープを高周波誘導加熱装置によって付着させるホットメルト接着工法が特許文献1により開示されている。また特許文献2,3にはタイル等と下地のモルタル等の接着をより強固に行うためにその中間に耐アルカリ性に勝れたポリオレフィン系繊維からなる不織布を介在させることにより接着用モルタルを充分に不織布に含浸させ、下地のモルタルとの接着性の向上並びにタイル等との接着を強固に行うとか、不織布に縦・横・斜めにエポキシ樹脂を含浸させた繊維を配し、ブロック、タイル等をエポキシ樹脂で強固に接着させようとする方法も開示されている。
【0003】
しかしながら、これらのブロック、タイルなどに対する施工方法では通気性を確保することが困難であり、家屋内の結露を防止することが出来ないという問題があった。また一方、接着成形部材の裏面に繊維強化プラスチックを接着剤にて固定する方法が特許文献4に開示されているがこれも同様な問題を有している。
【0004】
そこで、最近の住宅においては結露防止、保温性の対策として戸建住宅、マンションなどの外壁に通気性が求められるようになり、新たに通気性を有する陶磁器製のブロック、タイルが開発されてきた。しかしながら、これらのブロック、タイルは衝撃あるいは押圧に対して脆い傾向にあり、台風などの強風時に飛来した木片,小石などの衝撃によりブロック、タイルなどが破砕し飛散する可能性が高く、その防止対策が必須の課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−235421号公報
【特許文献2】特開2008−69528号公報
【特許文献3】特開2001−181954号公報
【特許文献4】特開2008−038456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の如き実状に対処し、通気性と共に特にブロック、タイルの破砕による飛散防止に着目し、有効な補強シートを見出すことによりオフィスやマンションなどのビルあるいは戸建て住宅の外壁用ブロックやタイルが万が一破砕しても飛散・落下を防ぐことができる具体的な施工方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、上記目的に適合する本発明ブロック、タイルの飛散・落下防止方法は透湿防水性能を有する陶磁器からなるブロック、タイルの裏面にプライマーを塗工し、スパンボンド法による合繊長繊維不織布に熱接着性不織布を積層した補強シートを熱接着性不織布面を介して加熱,積層し、固定せしめることにある。
【0008】
ここで、スパンボンド法における合繊長繊維不織布としては目付が30〜300g/m2の不織布が好適であり、熱接着性不織布は目付が50〜100g/m2で、融点が70〜230℃の範囲のものが好適である。
【0009】
かかる補強シートを備えた透湿,防水ブロック・タイルを所定の部位に嵌め込むとか、固定具により固定することにより、万が一、ブロック、タイルなどが破砕しても補強シートに強固に固定されているために破砕したブロック、タイルの飛散,落下を防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は以上のように合繊長繊維不織布に熱接着性不織布を積層し、補強シートとして透湿、防水ブロック、タイルなどに固定せしめた方法であり、万一、ブロック、タイルなどが破砕しても補強シートにより強固に固定されているため破砕片が飛散,落下することはなく、頗る安全性の高い外装材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明におけるブロック、タイルの平面図である。
【図2】本発明におけるブロック、タイルの補強シート積層態様を示す図1A−A横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、更に本発明方法の具体的形態について詳述する。本発明は上述の如く衝撃などにより破砕しやすい透湿防水性能を有する陶磁器製ブロック、タイルなどが仮に破砕しても飛散・落下することをなくすべく、該ブロック、タイルの裏面にポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などのプライマー処理を行った後に、その裏面に機械的強さ(引張強さ、引裂強さなど)の強い不織布である熱可塑性樹脂をスパンボンド方法にて形成した合繊長繊維不織布と、通気性を有する熱接着性不織布を積層した補強シートを熱接着性不織布を介して全面接着することにより、構成全体の通気性を損なうことなく飛散・落下を防止するものである。
【0013】
図1,図2は上記補強シートによるブロック、タイルの補強態様を示し、図中1は陶磁器製タイル、2はプライマー、3は熱接着性不織布、4は合繊長繊維不織布であり、タイル1裏面にプライマー2、熱接着性不織布3を介して合繊長繊維不織布4が接着されて本発明方法による施工が行われている。
【0014】
透湿防水性能を有する陶磁器製ブロック・タイルは通常、裏面の平滑性が劣り、接着性が悪いために裏面のプライマーを塗布する必要がある。プライマーとしては接着力の強い汎用のポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが使用可能であり、塗布量は樹脂不揮発分でもって20〜150g/m2、好ましくは30〜100g/m2であり、更に好ましくは40〜75g/m2である。プライマーとして使用される溶剤系樹脂あるいはホットメルトタイプの樹脂の融点は、20〜200℃であり、好ましくは80〜180℃であり、より好ましくは100〜150℃である。 陶磁器製ブロック、タイルの裏面にプライマーを塗布することなく補強シートを接着させようとする場合は、プライマー処理された陶磁器製ブロック、タイルを張り合わせの直前に200〜220℃×3〜5分間予熱を行った後、直ちに補強シートを積層、加圧することにより飛散・落下防止用補強シートとすることが可能であるが、200℃以上の高温での予熱処理は陶磁器製ブロック、タイルに塗布されている撥水剤が分解・昇華する可能性があり、陶磁器製ブロック、タイルの性能低下を招くこととなり好ましくない。
【0015】
透湿防水性能を有する陶磁器製ブロック、タイルなどに接着・固定するための補強シートとしては織物、編物、不織布、ネットなどがあるが、熱接着性不織布との貼り合わせの容易さ、機械的強さ、通気性、価格などを考慮するとスパンボンド法による長繊維不織布が最も好ましい素材である。フラッシュ紡糸法による長繊維不織布は機械的強さに優れているが通気性に乏しく、本用途には使用困難である。またニードルパンチ法による短繊維不織布は通気性に優れるが、機械的強さに劣り、補強用には使用できない。
【0016】
補強シートに使用されるスパンボンド法により形成される不織布用の熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリオレフィン樹脂などが使用可能であるが、特に機械的強さに優れたポリエステル樹脂が好適である。また、難燃性,帯電防止性、防かび性などが要求される場合には、溶融紡糸する前の樹脂にこれらの機能剤をブレンドしておけばこれらの要求の性能が付与される。別法としては補強用不織布を通常の樹脂加工工程にて、各種の機能性剤を含浸、コーティング、スプレー加工などにて付与すれば要求の機能を付与することが可能である。
【0017】
スパンボンド法による不織布のタイプとしては、エンボスロールなどによる熱圧着タイプ、ニードルパンチタイプあるいはニードルパンチ加工後に樹脂加工されたタイプが使用可能であるが、後者のタイプは揮発性有機物の発生の可能性があり、エンボスなどによる熱圧着タイプもしくはニードルパンチタイプが好適である。該不織布の目付範囲としては、30〜300g/m2であるが、好ましくは40〜200g/m2、更に好ましくは50〜150g/m2である。
【0018】
熱接着性の不織布としては、低融点の熱可塑性樹脂を使用したスパンボンド法による長繊維不織布とか低融点繊維を50%以上含有するサーマルボンドタイプの不織布を使用することができる。しかし、スパンボンド法長繊維不織布との積層のしやすさなどを考慮すると熱接着性不織布もまたスパンボンド法によるものが好適である。しかし、別法としては、低融点繊維を50重量%以上混綿したサーマルボンド不織布もまた使用可能である。
【0019】
低融点繊維の混綿率が50重量%以下になると接着力が低下し、破砕したブロック・タイルを固着する力が乏しく好ましくない。どちらの製法による不織布においても使用しうる熱可塑性樹脂としては、変性ポリエステル樹脂、変性ナイロン樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂などが可能であり、融点の範囲としては70〜230℃、好ましくは80〜200℃、更に好ましくは100〜150℃である。該不織布の目付範囲としては、10〜100g/m2であるが、好ましくは20〜70g/m2、更に好ましくは30〜50g/m2である。
【0020】
補強用長繊維不織布ならびに熱接着性不織布は、当然透湿防水ブロック、タイルと同じく通気性は必須であり、通気量としてはJISL−1913 6.8.1 フラジール形法にて30cc/cm2/sec以上が必要であり、好ましくは50cc/cm2/sec以上、更に好ましくは100cc/cm2/sec以上が好適である。
【0021】
長繊維不織布と熱接着性不織布の貼り合わせ方法としては、熱接着性不織布の融点よりも0〜20℃高い温度に設定されたカレンダーロール、エンボスロール、熱プレートなどの工程にて連続的に押圧・接着・ロールアップするのが好適である。補強用の長繊維不織布の目付・密度が小さい場合は、該不織布上に直接スパンボンド法による熱接着性不織布を形成せしめることも可能である。
【0022】
裏面にプライマーが塗工された透湿、防水性能を有するブロック、タイルと、スパンボンド法による長繊維不織布と前記熱接着性不織布との積層不織布を貼り合わせる汎用の方法としては、ブロック、タイルを敷き並べた上に裁断した積層不織布あるいはロールアップしたものから連続的に引き出し加熱ゾーン、例えばコンベア式連続熱風循環乾燥機を通過直後にクッション性を有するロールあるいはプレス機にて圧着し、固定する方法が知られている。加熱条件としては、180〜200℃×90〜150秒が常用される。
【0023】
以上はブロック、タイルについて説明して来たが、同様な外装材についても適用可能であることは勿論である。以下、更に実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではないことは云うまでもない。
【実施例】
【0024】
実施例1
目付70g/m2、厚さ0.5mmのニードルパンチタイプのポリエステルスパンボンドに目付30g/m2、融点110℃の変性ポリアミドからなる熱接着性くもの巣状不織布を積層し、115℃に加熱したカレンダーロール間を通過させ複合不織布を得た。該不織布の通気量は132cc/cm2/secであった。30cm×60cmの陶器製透湿防水ブロックにポリアミド系プライマーを不揮発分で40g/m2塗布乾燥したものの上に、同じく30cm×60cmに裁断したスパンボンド法による長繊維不織布と、熱接着性不織布の積層による複合不織布の熱接着性不織布側を介して重ね合わせた後、180℃に加熱したホットプレス機にて90秒間プレスを行った。
実施例2
目付70g/m2、厚さ0.5mmのニードルパンチタイプのポリエステルスパンボンドに目付30g/m2の融点110℃の変性ポリアミドからなる熱接着性のくもの巣状不織布を積層し、115℃に加熱したカレンダーロール間を通過させ複合不織布を得た。該不織布の通気性は132cc/cm2/secであった。30cm×60cmの陶器性透湿防水ブロックにポリアミド系プライマーを不揮発分で40g/m2塗布乾燥したものの上に、同じく30cm×60cmに裁断した前記複合不織布の熱接着性不織布側を重ね合わせた後、180℃に加熱したホットプレス機にて90秒間プレスを行った。
実施例3
目付50g/m2、厚さ0.3mmのエンボスタイプのポリエステルスパンボンドに目付30g/m2の融点110℃の変性ポリアミドからなる熱接着性のくもの巣状不織布を積層し、115℃に加熱したカレンダーロール間を通過させ複合不織布を得た。該不織布の通気量は52cc/cm2/secであった。30cm×60cmの陶器製透湿防水ブロックにポリアミド系プライマーを不揮発分で40g/m2塗布、乾燥したものの上に同じく30cm×60cmに裁断した前記複合不織布の熱接着性不織布側を重ね合わせた後、180℃に加熱したホットプレス機にて90秒間プレスを行った。
比較例1
目付70g/m2、厚さ0.5mmのニードルパンチタイプのポリエステルスパンボンドに溶剤系ウレタン樹脂を不揮発分で200g/m2塗布−乾燥を行った。該不織布の通気量は38cc/cm2/secであった。30cm×60cmの陶器製透湿防水ブロックに、同じく30cm×60cmに裁断した上記塗工不織布の接着剤側を重ね合わせた後、120℃に加熱したホットプレス機にて20秒間プレスを行った。
比較例2
目付70g/m2、厚さ0.5mmのニードルパンチタイプのポリエステルスパンボンドに目付30g/m2の融点110℃の変性ポリアミドからなる熱接着性くもの巣状を積層し、115℃に加熱したカレンダーロール間を通過させ複合不織布を得た。該不織布の通気量は151cc/cm2/secであった。プライマー処理が行われていない30cm×60cmの陶磁器製透湿防水ブロックの上に、同じく30cm×60cmに裁断した上記複合不織布の熱接着性不織布側を重ね合わせた後、180℃に加熱したホットプレス機にて90秒間プレスを行った。
【0025】
次に以上の各実施例,比較例により得られた複合不織布が加熱、固定された透湿防水ブロックについて、夫々破砕状況を確認した。結果を下記表1に示す。表中の不織布の厚さ,目付,通気量,剥離強さは夫々、下記により行った。
【0026】
厚さ:JIS L1913 6.1に準じた。
【0027】
目付:JIS L1913 6.2に準じた。
【0028】
通気量:JIS L1913 6.8.1に準じた。
【0029】
剥離強さ:株式会社イマダ製プッシュ−プルゲージで補強シート−ブロック間の剥離強 さを幅2.5cmで測定し最大値を表示した。
【0030】
衝撃下の飛散・落下物:JIS A5759 6.6.1に準じ、衝撃を加えた後の直径1cm以上の落下物の個数を計測した。
【0031】
【表1】

【0032】
上記表より本発明方法により補強された透湿防水ブロックは他の方法によるものに比し通気性があり、かつ剥離強さがあって遙かに飛散、落下が少なく、所期の目的が達成されることが確認された。
【符号の説明】
【0033】
1:陶磁器製タイル
2:プライマー
3:熱接着製不織布
4:合繊長繊維不織布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透湿防水性能を有する陶磁器からなるブロック、タイルの裏面にプライマーを塗工し、次いでスパンボンド法による合繊長繊維不織布に、熱接着性不織布を積層した補強シートを熱接着性不織布を介して加熱・積層固定することにより、ブロック、タイルなどが破砕しても補強シートに強固に固定され飛散・落下を防止せしめることを特徴とする透湿防水ブロック、タイルの飛散・落下防止方法。
【請求項2】
スパンボンド法による合繊長繊維不織布の目付が、30〜300g/m2であり、熱接着性不織布の目付が、10〜100g/m2で、融点が70〜230℃である請求項1記載の透湿防水ブロック、タイルの飛散・落下防止方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−23870(P2013−23870A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158549(P2011−158549)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(391021570)呉羽テック株式会社 (57)
【Fターム(参考)】