説明

通信システム、接続装置および通信方法

【課題】IP網を介して端末間で通信するシステムにおいて可用性及び信頼性を高める。
【解決手段】本実施形態に係る通信システムにおいて、接続装置2は、無線基地局装置4との間でPIAFSにより無線通信を行う無線モジュール21を備え、IP網5への接続回線の障害を検出し、回線に障害が検出された場合に発呼端末から着信端末へのデータを無線モジュールに分配し、終端装置6をダミー着信先として無線基地局装置に通知する。無線基地局装置は、位置登録装置7に対しダミー着信先に基づいて終端装置に関する位置情報の取得を要求する。IP交換機11は、PIAFSのデータを終端装置の位置情報に基づいてIP網を介して終端装置へ転送する。終端装置は、PIAFSを終端し、位置登録装置に対し着信端末の位置情報の取得を要求し、終端したデータを着信端末の位置情報に基づいてIP網を介して着信側のIP交換機12へ転送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、IP(Internet Protocol)網を介して端末間で通信を行う通信システム、接続装置および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IP網で接続される構成であり、端末−端末間で通信を行っている時に、例えばIP網につながるある回線で障害が発生した場合、その回線に収容されている端末との通信が出来なくなるという問題が発生する。このような問題を回避するサービスの一つとして、3G回線を利用した“Group−VPN Plus ワイヤレスバックアップタイプ”が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−261978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、IP網につながる回線で障害が発生、またはIP網内のあるサブネット(ブロードキャストパケットが到達できるネットワーク空間)において障害が発生すると当該IP網を利用した通信が出来なくなるという問題がある。
【0005】
本実施形態の目的は、IP網を介して端末間で通信を行うシステムにおいて可用性及び信頼性を高めることができる通信システム、接続装置および通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る通信システムの第1の態様は、発呼端末をIP網に接続する接続装置と、前記IP網に接続されるIP交換機と、前記IP交換機に接続される無線基地局装置と、前記IP網に収容される端末の位置登録を行う位置登録装置と、前記IP網に接続され、PIAFSプロトコルを終端する終端装置とを具備する通信システムであって、前記接続装置は、前記無線基地局装置との間でPIAFSプロトコルにより無線通信を行う無線モジュールと、前記IP網への接続回線の障害を検出する検出手段と、前記回線に障害が検出された場合に前記発呼端末から着信端末へのデータを前記無線モジュールに分配する分配手段と、前記終端装置をダミー着信先として前記無線基地局装置に通知する通知手段とを備え、前記無線基地局装置は、前記位置登録装置に対し前記ダミー着信先に基づいて前記終端装置の位置情報を取得する要求を送信する要求手段を備え、前記IP交換機は、前記PIAFSプロトコルのデータを前記終端装置の位置情報に基づいて前記IP網を介して前記終端装置へ転送する転送手段を備え、前記終端装置は、前記PIAFSプロトコルを終端する終端手段と、前記位置登録装置に対し前記着信端末に関する位置情報を取得する要求を送信する要求手段と、前記終端手段により得られたデータを前記着信端末に関する位置情報に基づいて前記IP網を介して着信側のIP交換機へ転送する転送手段とを備える。
【0007】
本実施形態に係る通信システムの第2の態様は、発呼端末をIP網に接続する接続装置と、前記IP網に接続されるIP交換機と、前記IP交換機に接続される無線基地局装置と、前記IP網に収容される端末の位置登録を行う位置登録装置とを具備する通信システムであって、前記接続装置は、前記無線基地局装置との間でPIAFSプロトコルにより無線通信を行う無線モジュールと、前記IP網への接続回線の障害を検出する検出手段と、前記回線に障害が検出された場合に前記発呼端末から着信端末へのデータを前記無線モジュールに分配する分配手段とを備え、前記無線基地局装置は、前記位置登録装置に対し前記着信端末に関する位置情報を取得する要求を送信する要求手段を備え、前記IP交換機は、前記無線基地局装置を介して受信されたPIAFSプロトコルを終端する終端手段と、前記終端手段により得られたデータを前記位置情報に基づいて前記IP網を介して着信側のIP交換機へ転送する転送手段とを備える。
【0008】
本実施形態に係る接続装置の第1の態様は、発呼端末をIP網に接続する接続装置と、前記IP網に接続されるIP交換機と、前記IP交換機に接続される無線基地局装置と、前記IP網に収容される端末の位置登録を行う位置登録装置と、前記IP網に接続され、PIAFSプロトコルを終端する終端装置とを具備し、前記無線基地局装置は、前記位置登録装置に対し前記ダミー着信先に基づいて前記終端装置の位置情報を取得する要求を送信する要求手段を備え、前記IP交換機は、前記PIAFSプロトコルのデータを前記終端装置の位置情報に基づいて前記IP網を介して前記終端装置へ転送する転送手段を備え、前記終端装置は、前記PIAFSプロトコルを終端する終端手段と、前記位置登録装置に対し前記着信端末に関する位置情報を取得する要求を送信する要求手段と、前記終端手段により得られたデータを前記着信端末に関する位置情報に基づいて前記IP網を介して着信側のIP交換機へ転送する転送手段とを備える通信システムに用いられる前記接続装置であって、前記無線基地局装置との間でPIAFSプロトコルにより無線通信を行う無線モジュールと、前記IP網への接続回線の障害を検出する検出手段と、前記回線に障害が検出された場合に前記発呼端末から着信端末へのデータを前記無線モジュールに分配する分配手段と、前記終端装置をダミー着信先として前記無線基地局装置に通知する通知手段とを備える。
【0009】
本実施形態に係る接続装置の第2の態様は、発呼端末をIP網に接続する接続装置と、前記IP網に接続されるIP交換機と、前記IP交換機に接続される無線基地局装置と、前記IP網に収容される端末の位置登録を行う位置登録装置とを具備し、前記無線基地局装置は、前記位置登録装置に対し前記着信端末に関する位置情報を取得する要求を送信する要求手段を備え、前記IP交換機は、前記無線基地局装置を介して受信されたPIAFSプロトコルを終端する終端手段と、前記終端手段により得られたデータを前記位置情報に基づいて前記IP網を介して着信側のIP交換機へ転送する転送手段とを備える通信システムに用いられる前記接続装置であって、前記無線基地局装置との間でPIAFSプロトコルにより無線通信を行う無線モジュールと、前記IP網への接続回線の障害を検出する検出手段と、前記回線に障害が検出された場合に前記発呼端末から着信端末へのデータを前記無線モジュールに分配する分配手段とを備える。
【0010】
本実施形態に係る通信方法の第1の態様は、発呼端末をIP網に接続する接続装置と、前記IP網に接続されるIP交換機と、前記IP交換機に接続される無線基地局装置と、前記IP網に収容される端末の位置登録を行う位置登録装置と、前記IP網に接続され、PIAFSプロトコルを終端する終端装置とを具備する通信システムに用いられる通信方法であって、前記接続装置において、前記無線基地局装置との間でPIAFSプロトコルにより無線通信を行うことと、前記IP網への接続回線の障害を検出することと、前記回線に障害が検出された場合に前記発呼端末から着信端末へのデータを前記無線モジュールに分配することと、前記終端装置をダミー着信先として前記無線基地局装置に通知することとを有し、前記無線基地局装置において、前記位置登録装置に対し前記ダミー着信先に基づいて前記終端装置の位置情報を取得する要求を送信することを有し、前記IP交換機において、前記PIAFSプロトコルのデータを前記終端装置の位置情報に基づいて前記IP網を介して前記終端装置へ転送することを有し、前記終端装置において、前記PIAFSプロトコルを終端することと、前記位置登録装置に対し前記着信端末に関する位置情報を取得する要求を送信することと、前記終端手段により得られたデータを前記着信端末に関する位置情報に基づいて前記IP網を介して着信側のIP交換機へ転送することとを有するものである。
【0011】
本実施形態に係る通信方法の第2の態様は、発呼端末をIP網に接続する接続装置と、前記IP網に接続されるIP交換機と、前記IP交換機に接続される無線基地局装置と、前記IP網に収容される端末の位置登録を行う位置登録装置とを具備する通信システムに用いられる通信方法であって、前記接続装置において、前記無線基地局装置との間でPIAFSプロトコルにより無線通信を行うことと、前記IP網への接続回線の障害を検出することと、前記回線に障害が検出された場合に前記発呼端末から着信端末へのデータを前記無線モジュールに分配することとを有し、前記無線基地局装置において、前記位置登録装置に対し前記着信端末に関する位置情報を取得する要求を送信することを有し、前記IP交換機において、前記無線基地局装置を介して受信されたPIAFSプロトコルを終端することと、前記終端手段により得られたデータを前記位置情報に基づいて前記IP網を介して着信側のIP交換機へ転送することとを有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る通信システムを示す全体図。
【図2】図1の通信システムの構成を示す機能ブロック図。
【図3】通常時に端末間で通信を行うときのプロトコルスタックの一例を示す図。
【図4】障害発生時に端末間で通信を行うときのプロトコルスタックの一例を示す図。
【図5】呼設定手順からデータ転送手順に至る処理シーケンスを示すシーケンス図。
【図6】第2実施形態に係る通信システムの構成を示す機能ブロック図。
【図7】障害発生時に端末間で通信を行うときのプロトコルスタックの一例を示す図。
【図8】呼設定手順からデータ転送手順に至る処理シーケンスを示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る通信システム、接続装置および通信方法を説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る通信システムを示す全体図である。
【0015】
IP(Internet Protocol)網5は、IPパケットを伝送するネットワーク網であり、レイヤ2であるデータリンク層、およびレイヤ1である物理層の種別は問わない。また、IP網5内のルータ(L3SW)の数は任意とする。
【0016】
IP交換機11、12及び接続装置2は、ISDN(Integrated Services Digital Network)回線L2とIP回線L1の相互接続を実現する機能を有しており、ISDN回線L2とIP回線L1が接続される。接続装置2にはさらに無線モジュール21が搭載され、後述するPHS(Personal Handyphone System)無線基地局装置4と無線で接続することができる。
【0017】
ターミナルアダプタ(TA)T1,T2,T3は、ISDN回線L2を終端する。パケット端末31,32,33は、パケット発呼、およびパケット着呼機能を有しており、相互にパケット通信が可能である。各パケット端末はTAと接続される。
【0018】
位置登録装置7は、IP網5に接続され、着呼ユーザ(端末)の位置登録機能を有し、着呼ユーザが存在する位置情報(ページングエリア)の提供を行う。また、必要に応じて認証シーケンスが実行され、パケット発呼、およびパケット着呼が発生した場合に、発呼ユーザ、または着呼ユーザが正規ユーザであるかを判定する。なお、図1の例では、位置登録装置7は、IP回線L1で接続されているが、IP回線L1の代わりにISDN回線L2などで接続される形態も可とする。
【0019】
PIAFS終端装置6は、IP網5に接続され、PIAFS(PHS Internet Access Forum Standard)を終端する機能を有する。
【0020】
PHS無線基地局装置4は、IP交換機11とISDN回線L2で接続される。なお、図1の例では、ISDN回線L2で接続されているが、IP回線L1を用いて接続される形態も可とする。
【0021】
図2は、図1の通信システムの構成を示す機能ブロック図である。ただし、ターミナルアダプタT1,T2,T3の機能は一般的な機能のみのため説明は省略する。なお、ここでは、パケット端末33とパケット端末32との間で通信を行う構成について説明する。
【0022】
パケット端末32,33は、ターミナルアダプタT1,T2,T3と接続するためのレイヤ1終端部301、およびLAPD(Link Access Procedure on the D-channel)を転送するレイヤ2終端部302を備える。また、パケット端末32は、X.31終端部303を備え、パケット端末33は、X.25終端部304を備える。X.25およびX.31は呼設定及びデータ転送に用いるプロトコルである。LAPDはISDN回線のDチャネル上でX.25パケットおよびX.31パケットを転送するために用いるプロトコルである。
【0023】
IP交換機11は、ターミナルアダプタT1およびIP網5と接続するためのレイヤ1終端部101、ISDN回線L2上でLAPDを転送し、IP回線L1上でLAPB(Link Access Procedure, Balanced)を転送するレイヤ2終端部102、IP網5を介して呼設定を行う呼設定部103、IP網5を介してデータを転送するためのメディア転送部104、および位置登録装置7との通信を実現するための位置登録装置接続部105、および位置登録装置7から送信される位置情報取得結果(着ユーザの位置情報)を読みとるための位置情報読み取り部106を備える。LAPBはIP網5上でX.25パケットを転送するために用いるプロトコルである。
【0024】
IP交換機12は、IP交換機11と同様にレイヤ1終端部101、レイヤ2終端部102、呼設定部103、およびメディア転送部104を備え、さらにX.25パケットを終端するX.25終端部107およびX.31パケットを終端するX.31終端部108を備える。
【0025】
接続装置2は、上記IP交換機11,12と同様に、レイヤ1終端部201、レイヤ2終端部202および呼設定部203を備える。さらに、接続装置2は、IP網5への接続回線の障害を監視するIP網障害監視部204、IP網5又は無線に対し信号を分配する信号分配部205、着信先の情報をPIAFS終端装置6に通知するための着信先通知部206、およびPIAFS終端装置6のIPアドレスを求めるためのダミー着番号管理部207を備える。
【0026】
また、接続装置2には無線モジュール21が搭載され、無線モジュール21にはPHS無線基地局装置4と接続するための無線接続部211、およびPIAFSを終端するPIAFS終端部212、および前記信号分配部と信号を送受信するための信号送受信部21が備えられる。
【0027】
PIAFS終端装置6は、PIAFS終端部601、IP網5と接続するためのレイヤ1終端部602、IP網5を介して呼設定を行う呼設定部603、IP網5を介してデータを転送するためのメディア転送部604、位置登録装置7との通信を実現するための位置登録装置接続部605、およびIP交換機12とのリンク確立が完了したことを通知するためのリンク確立通知部606を備える。
【0028】
PHS無線基地局装置4は、IP交換機11と接続するためのレイヤ1終端部401、接続装置1に搭載された無線モジュール21と無線で通信するための無線接続部402、および着信先の位置情報を位置登録装置7から取得するための位置情報取得部403を備える。
【0029】
位置登録装置7は、ユーザが使用するパケット端末の位置情報を登録し保持するための位置登録部701と位置登録データベース(位置登録DB)702とを備える。本実施形態では、位置登録DB702には、位置登録情報としてパケット端末と接続できるIP交換機のIPアドレスが保持される。また、位置登録装置7は、発呼ユーザの正当性を確認するため、IP交換機11またはPIAFS終端装置6からの認証要求を受け付け、認証データベースに格納されているユーザ情報を基にユーザが正規ユーザを判定し結果を送信元に返送するための認証機能を備えることもできる。なお、認証データベースを備える場合は、後述する位置情報取得要求シーケンスは認証シーケンスと同じ手順であるため、「認証要求/認証応答」に「位置情報取得要求/位置情報取得応答」を含めるようにしてもよい。
【0030】
図3は、IP網5を経由してパケット端末33とパケット端末32との間で通信を行うときのプロトコルスタックの一例を示したものである。
図3に示す呼設定とは、X.25プロトコルの呼設定手順を用いる時のプロトコルスタックを示している。IP網5上ではX.25プロトコルをSIP(Session Initiation Protocol)に変換する。なお、この例ではIP網5上の呼設定手順としてSIPを利用しているが必ずしもSIPを利用する必要はなく、形態に応じてH.323など別の呼設定手順を利用してもよい。また、図3に示すデータ転送とは、X.25プロトコルのデータ転送手順を用いる時のプロトコルスタックを示している。
【0031】
この例の場合、接続装置2がつながるIP回線L1、またはサブネット内でIP障害が発生するとパケット端末32と一切通信が出来なくなる。
【0032】
図4は、無線モジュールの無線接続部を利用してパケット端末33とパケット端末32との間で通信を行うときのプロトコルスタックの一例を示したものである。
図4に示す呼設定1(接続装置2−PIAFS終端装置6)とは、PHSにおける通常の発呼をサポートするためのプロトコルスタックであり、接続装置2がパケット端末33からX.25プロトコルの発呼要求を受信した時に動作させればよい。この呼設定1により、無線リンクの形成、及びIP交換機11とPIAFS終端装置間のリンクが形成され、無線モジュール21から送信されたデータはPHS無線基地局装置4を経由し、PIAFS終端装置6まで到達することができるようになる。
【0033】
図4に示す呼設定2(PIAFS終端装置6−IP交換機12)とは、PIAFS終端装置6とIP交換機12との間でリンクを形成するための呼設定手順を用いるときのプロトコルスタックを示している。この例では、呼設定プロトコルとしてSIPを用いているが、H.323などを利用してもよい。
【0034】
図4に示すX.25プロトコル転送とは、X.25プロトコルの呼設定手順、及びデータ転送手順を用いる時のプロトコルスタックを示しており、PIAFS終端装置6ではLAPB以上のレイヤを意識する必要はなく、接続装置2から受信したPIAFSデータを、UDP/IP上に載せてIP交換機12に送出すればよい。つまり、PIAFS終端装置6ではLAPB以上のレイヤはカプセル化されたデータであり、PIAFS終端装置6はその中身を知る必要はない。
【0035】
図3、図4で示した通り、本実施形態では接続装置2においてIP網5を利用してIP交換機12と接続する代わりに、接続装置2でPIAFSを用いることで接続装置2につながるIP回線、またはサブネットワークを利用することなく、IP交換機12との通信を実現している。また、PIAFS終端装置6では、PIAFSより上位レイヤを意識することなく、IP交換機12、またはIP交換機11に対してデータを転送するだけでよく、必要以上のプロトコルを分散配置する必要はない。
【0036】
図5に、図4のプロトコルスタックを用いて、呼設定手順からデータ転送手順に至る処理シーケンスを示す。なお、このシーケンスは簡略化されたものであり、実シーケンスは各プロトコル仕様を満たすものとする。
【0037】
予め、パケット端末33と接続装置2との間、PHS無線基地局装置4とIP交換機11との間、およびIP交換機12とパケット端末32との間は、LAPDによるリンクが確立されているものとする。
【0038】
パケット端末33から発呼要求(X.25)を受信すると(S1a)、接続装置2は、IP網5との接続判定を行う(S1b)。判定方法は、IP網障害監視部204がPINGによる疎通確認や、IP網5からパケットを受信しない状態が継続しているケースなどから判定すればよい。ここでIP網5への送信が出来ないと判定した場合、接続装置2は無線モジュール21の無線接続部211を利用し、PHS無線基地局装置4と無線リンクを確立する(S1c)。
【0039】
無線リンク確立が完了すると、PHS無線基地局装置4は位置登録装置7に対し、接続すべきPIAFS終端装置6のIPアドレスを取得するために位置情報取得要求を送信する(S1d)。この位置情報取得要求には、接続すべきPIAFS終端装置6のIPアドレスを求めるためにダミーの着番号が設定される。なお、ダミーの着番号は、ダミー着番号管理部207により予め設定されており、一つ以上設定することが可能とし、ラウンドロビンや、発番号の形態により使用するダミーの着番号を使い分けることが可能である。
【0040】
位置登録装置7は、位置情報取得要求に設定されたダミーの着番号から、位置情報取得結果と、PIAFS終端装置6のIPアドレスを求め、位置情報取得応答にそれらの情報を設定しIP交換機11に返信する(S1e)。IP交換機11では位置登録装置7から受信した位置情報取得応答を読み取ることで、PIAFS終端装置6のIPアドレスを記憶する。また、IP交換機11から位置情報取得応答を受信すると(S1f)、PHS無線基地局装置4は、リンク確立を開始させ、最終的にPHS無線基地局装置4とPIAFS終端装置6間のリンクを確立させる(S1g)。このときのプロトコルスタックの詳細は、上記図4の呼設定1に示したものである。この後、接続装置2とPIAFS終端装置6間でPIAFSによるリンク確立を行う(S1h)。
【0041】
PIAFSによるリンク確立が完了後、接続装置2はパケット端末32が接続されているIP交換機12のIPアドレスを取得するために、発呼要求(X.25)に設定された着信先であるパケット端末32の着番号をPIAFS終端装置6に通知する(S1i)。当該メッセージを受信したPIAFS終端装置6は、受信した着番号を位置情報取得要求に設定し送信する(S1j)。位置登録装置7では、位置情報取得要求に設定された着番号から、位置情報取得結果と、IP交換機12のIPアドレスを求め、位置情報取得応答にそれらの情報を設定し返信する(S1k)。PIAFS終端装置6で位置登録装置7から受信した位置情報取得応答を読み取ることで、IP交換機12のIPアドレスを記憶する。これによりさらにPIAFS終端装置6とIP交換機12との間でリンクを確立することができる(S1l)。
【0042】
PIAFS終端装置6とIP交換機12との間のリンク確立が完了した後(S1m)、X.25の呼設定手順が行われ(S1n,S1o,S1p)、最終的にパケット端末33とパケット端末32間でリンクを確立することが出来る(S1q)。リンク確立後はX.25のデータ転送手順により相互データ通信が可能となる(S1r,S1s)。
【0043】
以上述べたように、上記第1実施形態によれば、接続装置2に無線モジュール21が搭載され、IP交換機11にPHS無線基地局装置4が接続されている構成において、接続装置2とIP網とが接続される回線で障害が発生した場合に、無線モジュール2とPHS無線基地局装置4との間で無線通信を行うようにする。このようにすることで、障害の発生した回線を迂回してIP網とのデータ通信を継続させることができるため、可用性及び信頼性を向上させることが出来る。
【0044】
また、PIAFS終端装置6ではPIAFSから上位のレイヤを意識する必要がないので、プロトコルの分散配置をする必要がない。
【0045】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る通信システムの構成を示す機能ブロック図である。上記図1と異なる点は、図6ではPIAFS終端装置6を無くし、PIAFS終端部109をIP交換機11に設けたことと、接続装置2において着信先通知部206とダミー着番号管理部207を無くしたことにある。なお、図1と同一構成には同一符号を付し、説明を省略する。
【0046】
図7は、無線モジュールの無線接続部を利用してパケット端末33とパケット端末32との間で通信を行うときのプロトコルスタックの一例を示したものである。この場合、呼設定1において接続装置2とIP交換機12との間のリンクを確立することができるため、図4のプロトコルスタックと比べて呼設定1の手順を簡略化することができる。
【0047】
図8に、図7のプロトコルスタックを用いて、呼設定手順からデータ転送手順に至る処理シーケンスを示す。なお、このシーケンスは簡略化されたものであり、実シーケンスは各プロトコル仕様を満たすものとする。ここで、無線リンクが確立するまでの処理(S2a〜S2c)は、図5の処理(S1a〜S1c)の説明と同様であるため省略する。
【0048】
無線リンク確立が完了したPHS無線基地局装置4は、位置登録装置7に対し、接続すべきIP交換機12のIPアドレスを取得するために位置情報取得要求を送信する(S2d)。位置情報取得要求には、接続すべきIP交換機12のIPアドレスを求めるためのパラメータとして発呼要求(X.25)に設定された着番号が設定される。着番号は着呼ユーザの正当性確認にも用いられる。
【0049】
位置登録装置7は、位置情報取得要求に設定された着番号から、位置情報取得結果と、IP交換機12のIPアドレスを求め、位置情報取得応答にそれらの情報を設定し返信する(S2e)。IP交換機11では位置登録装置7から受信した位置情報取得応答を読み取ることで、IP交換機12のIPアドレスを記憶する。また、IP交換機11から位置情報取得応答を受信すると(S2f)、PHS無線基地局装置4はQ.931によるリンク確立を開始させ、最終的にPHS無線基地局装置4とIP交換機12の間のリンクを確立させる(S2g)。このときのプロトコルスタックの詳細は、上記図7の呼設定1に示したものである。この後、接続装置2とPHS無線基地局装置4との間でPIAFSによるリンク確立を行う(S2h)。
【0050】
接続装置2とPHS無線基地局装置4との間のリンク確立が完了した後、X.25の呼設定手順が行われ(S2i,S2j,S2k)、最終的にパケット端末33とパケット端末32との間でリンクを確立することが出来る(S2l)。リンク確立後はX.25のデータ転送手順により相互データ通信が可能となる(S2m,S2n)。
【0051】
なお、上記第2の実施形態では、PIAFS終端部109をIP交換機11で実施した場合の例を示したが、PIAFS終端部601をIP交換機12に設けて、PIAFSの終端をIP交換機12で行うようにすることもできる。この場合のプロトコルスタックおよび基本的な処理シーケンスは図7、図9と同様にすればよい。
【0052】
以上述べたように上記第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、障害の発生した回線を迂回してIP網とのデータ通信を継続させることができるため、可用性及び信頼性を向上させることが出来ることが可能となる。また、第2実施形態では、PIAFS終端機能をIP交換機11に設けることで、図4のプロトコルスタックと比べて呼設定1の手順を簡略化することができ、装置数を削減し、システム規模を縮小できる。
【0053】
なお、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
11,12…IP交換機、2…接続装置、21…無線モジュール、31,32,33…パケット端末、4…PHS無線基地局装置、5…IP網、6…PIAFS終端装置、7…位置登録装置、T1,T2,T3…ターミナルアダプタ、L1…IP回線、L2…ISDN回線、101…レイヤ1終端部、102…レイヤ2終端部、103…呼設定部、104…メディア転送部、105…位置登録装置接続部、106…位置情報読み取り部、107…X.25終端部、108…X.31終端部、109…PIAFS終端部、201…レイヤ1終端部、202…レイヤ2終端部、203…障害監視部、204…信号分配部、205…呼設定部、206…着信先通知部、207…ダミー着番号管理部、211…無線接続部、212…PIAFS終端部、213…信号送受信部、301…レイヤ1終端部、302…レイヤ2終端部、303…X.31終端部、304…X.25終端部、401…レイヤ1終端部、402…無線接続部、403…位置情報取得部、601…PIAFS終端部、602…レイヤ1終端部、603…呼設定部、604…メディア転送部、605…位置登録装置接続部、606…リンク確立通知部、701…位置登録部、702…位置登録データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発呼端末をIP網に接続する接続装置と、前記IP網に接続されるIP交換機と、前記IP交換機に接続される無線基地局装置と、前記IP網に収容される端末の位置登録を行う位置登録装置と、前記IP網に接続され、PIAFSプロトコルを終端する終端装置とを具備する通信システムであって、
前記接続装置は、
前記無線基地局装置との間でPIAFSプロトコルにより無線通信を行う無線モジュールと、
前記IP網への接続回線の障害を検出する検出手段と、
前記回線に障害が検出された場合に前記発呼端末から着信端末へのデータを前記無線モジュールに分配する分配手段と、
前記終端装置をダミー着信先として前記無線基地局装置に通知する通知手段とを備え、
前記無線基地局装置は、
前記位置登録装置に対し前記ダミー着信先に基づいて前記終端装置の位置情報を取得する要求を送信する要求手段を備え、
前記IP交換機は、
前記PIAFSプロトコルのデータを前記終端装置の位置情報に基づいて前記IP網を介して前記終端装置へ転送する転送手段を備え、
前記終端装置は、
前記PIAFSプロトコルを終端する終端手段と、
前記位置登録装置に対し前記着信端末に関する位置情報を取得する要求を送信する要求手段と、
前記終端手段により得られたデータを前記着信端末に関する位置情報に基づいて前記IP網を介して着信側のIP交換機へ転送する転送手段と
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
発呼端末をIP網に接続する接続装置と、前記IP網に接続されるIP交換機と、前記IP交換機に接続される無線基地局装置と、前記IP網に収容される端末の位置登録を行う位置登録装置とを具備する通信システムであって、
前記接続装置は、
前記無線基地局装置との間でPIAFSプロトコルにより無線通信を行う無線モジュールと、
前記IP網への接続回線の障害を検出する検出手段と、
前記回線に障害が検出された場合に前記発呼端末から着信端末へのデータを前記無線モジュールに分配する分配手段とを備え、
前記無線基地局装置は、
前記位置登録装置に対し前記着信端末に関する位置情報を取得する要求を送信する要求手段を備え、
前記IP交換機は、
前記無線基地局装置を介して受信されたPIAFSプロトコルを終端する終端手段と、
前記終端手段により得られたデータを前記位置情報に基づいて前記IP網を介して着信側のIP交換機へ転送する転送手段と
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項3】
発呼端末をIP網に接続する接続装置と、前記IP網に接続されるIP交換機と、前記IP交換機に接続される無線基地局装置と、前記IP網に収容される端末の位置登録を行う位置登録装置と、前記IP網に接続され、PIAFSプロトコルを終端する終端装置とを具備し、前記無線基地局装置は、前記位置登録装置に対し前記ダミー着信先に基づいて前記終端装置の位置情報を取得する要求を送信する要求手段を備え、前記IP交換機は、前記PIAFSプロトコルのデータを前記終端装置の位置情報に基づいて前記IP網を介して前記終端装置へ転送する転送手段を備え、前記終端装置は、前記PIAFSプロトコルを終端する終端手段と、前記位置登録装置に対し前記着信端末に関する位置情報を取得する要求を送信する要求手段と、前記終端手段により得られたデータを前記着信端末に関する位置情報に基づいて前記IP網を介して着信側のIP交換機へ転送する転送手段とを備える通信システムに用いられる前記接続装置であって、
前記無線基地局装置との間でPIAFSプロトコルにより無線通信を行う無線モジュールと、
前記IP網への接続回線の障害を検出する検出手段と、
前記回線に障害が検出された場合に前記発呼端末から着信端末へのデータを前記無線モジュールに分配する分配手段と、
前記終端装置をダミー着信先として前記無線基地局装置に通知する通知手段と
を備えることを特徴とする接続装置。
【請求項4】
発呼端末をIP網に接続する接続装置と、前記IP網に接続されるIP交換機と、前記IP交換機に接続される無線基地局装置と、前記IP網に収容される端末の位置登録を行う位置登録装置とを具備し、前記無線基地局装置は、前記位置登録装置に対し前記着信端末に関する位置情報を取得する要求を送信する要求手段を備え、前記IP交換機は、前記無線基地局装置を介して受信されたPIAFSプロトコルを終端する終端手段と、前記終端手段により得られたデータを前記位置情報に基づいて前記IP網を介して着信側のIP交換機へ転送する転送手段とを備える通信システムに用いられる前記接続装置であって、
前記無線基地局装置との間でPIAFSプロトコルにより無線通信を行う無線モジュールと、
前記IP網への接続回線の障害を検出する検出手段と、
前記回線に障害が検出された場合に前記発呼端末から着信端末へのデータを前記無線モジュールに分配する分配手段と
を備えることを特徴とする接続装置。
【請求項5】
発呼端末をIP網に接続する接続装置と、前記IP網に接続されるIP交換機と、前記IP交換機に接続される無線基地局装置と、前記IP網に収容される端末の位置登録を行う位置登録装置と、前記IP網に接続され、PIAFSプロトコルを終端する終端装置とを具備する通信システムに用いられる通信方法であって、
前記接続装置において、
前記無線基地局装置との間でPIAFSプロトコルにより無線通信を行うことと、
前記IP網への接続回線の障害を検出することと、
前記回線に障害が検出された場合に前記発呼端末から着信端末へのデータを前記無線モジュールに分配することと、
前記終端装置をダミー着信先として前記無線基地局装置に通知することとを有し、
前記無線基地局装置において、
前記位置登録装置に対し前記ダミー着信先に基づいて前記終端装置の位置情報を取得する要求を送信することを有し、
前記IP交換機において、
前記PIAFSプロトコルのデータを前記終端装置の位置情報に基づいて前記IP網を介して前記終端装置へ転送することを有し、
前記終端装置において、
前記PIAFSプロトコルを終端することと、
前記位置登録装置に対し前記着信端末に関する位置情報を取得する要求を送信することと、
前記終端手段により得られたデータを前記着信端末に関する位置情報に基づいて前記IP網を介して着信側のIP交換機へ転送することと
を有することを特徴とする通信方法。
【請求項6】
発呼端末をIP網に接続する接続装置と、前記IP網に接続されるIP交換機と、前記IP交換機に接続される無線基地局装置と、前記IP網に収容される端末の位置登録を行う位置登録装置とを具備する通信システムに用いられる通信方法であって、
前記接続装置において、
前記無線基地局装置との間でPIAFSプロトコルにより無線通信を行うことと、
前記IP網への接続回線の障害を検出することと、
前記回線に障害が検出された場合に前記発呼端末から着信端末へのデータを前記無線モジュールに分配することとを有し、
前記無線基地局装置において、
前記位置登録装置に対し前記着信端末に関する位置情報を取得する要求を送信することを有し、
前記IP交換機において、
前記無線基地局装置を介して受信されたPIAFSプロトコルを終端することと、
前記終端手段により得られたデータを前記位置情報に基づいて前記IP網を介して着信側のIP交換機へ転送することと
を有することを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−138859(P2012−138859A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291306(P2010−291306)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】