説明

通信システム、通信変換方法および通信変換プログラム

【課題】通信速度や最大データサイズが相違するトークンバス方式のネットワークとイーサネット方式のネットワークとを簡易に接続する。
【解決手段】通信変換装置10は、第一ネットワーク(トークンバス方式)用の第一フレームと第二ネットワーク(イーサネット方式)用の第二フレームとを相互に変換するフレーム変換部12と、第二ネットワーク側から受信した連続する第二フレームのうち少なくとも最初・最後の第二フレームを第一ネットワーク側への送信対象として選定する送信対象選定部14と、第一ネットワーク側から受信した第一フレームのデータサイズが第二フレームの最大データサイズを超える場合に、第一フレームを複数のフレームに分割するフレーム分割部15と、第二ネットワーク側から分割送信された第二フレームのデータを合成し、一つの第一フレームのデータにまとめるフレーム合成部16と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、通信変換方法および通信変換プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生産プロセスを管理するシステムでは、発信機能を有する各種のデバイス(例えばセンサやバルブ等)をプラントに設置し、デバイスから発信される信号をシステムに取り込むことで、各種の生産プロセスを管理する。このようなプロセス管理システムでは、高い信頼性の下でデバイスを管理する必要がある。したがって、従来のプロセス管理システムでは、比較的信頼性の高いトークンバス方式のネットワークにデバイスを接続して管理していた(下記特許文献1参照)。近年、イーサネット(登録商標)方式のネットワークの信頼性が向上してきたことで、イーサネット方式のネットワークにデバイスを接続するプロセス管理システムも構築されている。
【0003】
ところで、従来構築したトークンバス方式のプロセス管理システムの一式全てを、イーサネット方式のプロセス管理システムに再構築しようとすると、多大なコストを要してしまう。したがって、既に構築されているトークンバス方式のプロセス管理システムをそのまま残しつつ、イーサネット方式のプロセス管理システムを付加することが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−247057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トークンバス方式のネットワークとイーサネット方式のネットワークとを接続する場合には、それぞれのネットワークの通信速度および最大データサイズ等が異なるため、単純には接続できず、これらの問題を解決しなければ両ネットワークを接続したプロセス管理システムを実現することができない。
【0006】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、通信速度や最大データサイズが相違するトークンバス方式のネットワークとイーサネット方式のネットワークとを簡易に接続することができる通信システム、通信変換方法および通信変換プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る通信システムは、トークンバス方式の第一ネットワーク、イーサネット方式の第二ネットワーク、および前記第一ネットワークと前記第二ネットワークとの間の通信を仲介する通信変換装置を備える通信システムであって、前記第一ネットワークおよび前記第二ネットワークに接続する各ノードは、トークンを意味するように生成された通信フレームを受信したときに、他のノード宛てのデータを格納した通信フレームを送信する権利が付与され、前記通信変換装置は、前記第一ネットワーク用の通信フレームである第一フレームと前記第二ネットワーク用の通信フレームである第二フレームとを相互に変換するフレーム変換部と、前記第二ネットワーク側から受信した前記第二フレームを前記第一ネットワーク側に連続して送信することになる場合に、連続する前記第二フレームのうち、少なくとも最初および最後の前記第二フレームを前記第一ネットワーク側への送信対象として選定する送信対象選定部と、前記第一ネットワーク側から受信した前記第一フレームのデータサイズが、前記第二フレームの最大データサイズを超える場合に、前記第一フレームを複数のフレームに分割するフレーム分割部と、前記第二ネットワーク側から分割して送信されてきた前記第二フレームのデータを合成し、一つの前記第一フレームのデータにまとめるフレーム合成部と、を備える。
【0008】
本発明に係る通信変換方法は、トークンバス方式の第一ネットワーク、イーサネット方式の第二ネットワーク、および前記第一ネットワークと前記第二ネットワークとの間の通信を仲介する通信変換装置を備える通信システムにおける通信変換方法であって、前記第一ネットワークおよび前記第二ネットワークに接続する各ノードが、トークンを意味するように生成された通信フレームを受信したときに、他のノード宛てのデータを格納した通信フレームを送信する権利を付与され、前記通信変換装置が、前記第一ネットワーク用の通信フレームである第一フレームと前記第二ネットワーク用の通信フレームである第二フレームとを相互に変換するフレーム変換ステップと、前記第二ネットワーク側から受信した前記第二フレームを前記第一ネットワーク側に連続して送信することになる場合に、連続する前記第二フレームのうち、少なくとも最初および最後の前記第二フレームを前記第一ネットワーク側への送信対象として選定する送信対象選定ステップと、前記第一ネットワーク側から受信した前記第一フレームのデータサイズが、前記第二フレームの最大データサイズを超える場合に、前記第一フレームを複数のフレームに分割するフレーム分割ステップと、前記第二ネットワーク側から分割して送信されてきた前記第二フレームのデータを合成し、一つの前記第一フレームのデータにまとめるフレーム合成ステップと、を含む。
【0009】
本発明に係る通信変換プログラムは、上記通信変換方法に含まれる各ステップをコンピュータに実行させる。
【0010】
かかる構成を採用することで、第二ネットワーク側から第一ネットワーク側に連続して送信されることになる第二通信フレームのうち、最初および最後の第二通信フレーム以外の中間の第二通信フレームを間引くことができるため、比較的通信速度の遅い第一ネットワーク側への通信フレームが滞留することを抑制できる。また、第一ネットワーク側から受信した第一通信フレームのデータサイズが第二通信フレームの最大データサイズを超える場合であっても、第二通信フレームの最大データサイズ以下の複数のフレームに第一通信フレームを分割することができる。つまり、第二ネットワーク側に送信する分割フレームのデータサイズを、第二通信フレームの最大データサイズ以下に抑えることができるため、データを漏れなく送信することが可能となる。
【0011】
また、上記通信変換装置は、前記第二ネットワーク側から受信した前記第二フレームのうち、前記第一ネットワーク側のノードを宛先とする前記第二フレームを前記第一ネットワーク側への送信対象として抽出する送信対象抽出部を、さらに備えることとしてもよい。
【0012】
これにより、第二ネットワーク側から受信した第二フレームのうち、第一ネットワークのノード宛以外の第二通信フレームを、変換および送信の対象から除外することができるため、比較的通信速度の遅い第一ネットワーク側への通信フレームが滞留することを抑制できる。
【0013】
また、上記フレーム変換部は、相手先のネットワークで必要となるデータを予め定めたデータ項目に設定することで、前記第一フレームと前記第二フレームとを変換することとしてもよい。
【0014】
これにより、フレーム変換後の第一通信フレームまたは第二通信フレームを受信したノードは、予め定めたデータ項目に格納されているデータを用いてノードに設定された所定の処理を実行することができる。
【0015】
また、上記送信対象選定部は、前記第一フレームおよび前記第二フレームを受信してから送信するまでの間、格納するバッファ領域に空きがある場合に、連続する前記第二フレームのうち、最初および最後の前記第二フレーム以外の第二フレームを前記第一ネットワーク側への送信対象として選定することとしてもよい。
【0016】
これにより、バッファ領域に余裕があるときには、中間の第二通信フレームを変換して変換後の第一通信フレームを第一ネットワーク側に送信させることができ、バッファ領域に余裕がないときには、中間の第二通信フレームを破棄させることが可能となる。
【0017】
また、上記送信対象選定部は、連続する前記第二フレームのうち、少なくとも前記トークンを意味するように生成された通信フレーム以外の前記第二フレームについては、前記第一ネットワーク側への送信対象として選定することとしてもよい。
【0018】
また、上記フレーム分割部は、前記第二フレームの最大データサイズと同じサイズの一または複数のフレームと、前記第一フレームのデータサイズを前記第二フレームの最大データサイズで除算したときの剰余と同じサイズのフレームとに、分割することとしてもよい。
【0019】
これにより、分割後のフレームのデータサイズに規則性を持たせることができるため、分割フレームを受信した第二ネットワーク側で行う分割フレームの合成処理を簡易にすることができる。
【0020】
また、上記フレーム分割部は、分割後の各フレームに含まれる分割フラグをオンにし、分割後の各フレームに対して分割順に通し番号を付与することとしてもよい。
【0021】
これにより、第二通信フレームを受信した第二ネットワーク側では、分割フラグがオンであるフレーム群が分割されたフレーム群であることを認識することができ、そのフレーム群を分割通し番号順に合成することで、元のデータを容易に復元することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、通信速度や最大データサイズが相違するトークンバス方式のネットワークとイーサネット方式のネットワークとを簡易に接続することができる通信システム、通信変換方法および通信変換プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態における通信システムの構成を例示する図である。
【図2】図1に示す通信変換装置の機能構成を例示する図である。
【図3】トークン通信フレームおよびイーサネット通信フレームのデータ構成を例示する図である。
【図4】第一ネットワーク側への送信対象を選定する際の一例を説明するための図である。
【図5】第一ネットワーク側への送信対象を選定する際の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態について説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0025】
図1を参照して、実施形態における通信システムの構成について説明する。図1に示すように、通信システム1は、トークンバス方式の通信ネットワークである第一ネットワーク20と、イーサネット方式の通信ネットワークである第二ネットワーク30と、通信変換装置10と、を備える。通信システム1としては、例えば、生産プロセスを管理するプロセス管理システムが該当する。なお、本実施形態における第一ネットワーク20の通信速度は“5”Mbpsであり、第二ネットワーク30の通信速度は“100”Mbpsであるとする。また、本実施形態における第一ネットワーク20の通信フレームの最大データサイズは“4090”Byteであり、第二ネットワーク30の通信フレームの最大データサイズは“1500”Byteであるとする。
【0026】
通信変換装置10は、第一ネットワーク20に接続するノード21と第二ネットワーク30に接続するノード31との間で行う通信を仲介する。ノード21およびノード31としては、例えば、流量センサ、圧力センサおよび温度センサ等の各種センサや、流量制御弁および圧力制御弁等の各種バルブ、ポンプおよびファン等の各種アクチュエータ、コントローラ等の各種制御装置が該当する。
【0027】
第一ネットワーク20のノード21は、トークン(ネットワーク上を周回する送信権)を受信したときに、他のノード宛てのデータを格納した通信フレームを送信する権利が付与される。第二ネットワーク30のノード31は、トークンの代替としてトークンを意味するように生成された通信フレーム(以下、「トークンフレーム」という。)を受信したときに、他のノード宛てのデータを格納した通信フレームを送信する権利が付与される。例えば、各通信フレームに、該通信フレームがトークンを意味するか否かを示すフラグ(以下、「トークンフラグ」という。)を設け、このトークンフラグにオンが設定されている通信フレームを、トークンフレームとすることができる。トークンフレームのトークンフラグ以外のデータについては、任意にデータを設定することができる。
【0028】
図2を参照して、通信変換装置10の機能構成について説明する。図2に示すように、通信変換装置10は、フレーム通信部11と、フレーム変換部12と、送信対象抽出部13と、送信対象選定部14と、フレーム分割部15と、フレーム合成部16と、を有する。これら各部の機能は、ハードウェアロジックを構成することで実現する。これにより、通信変換等の処理を高速化することができる。
【0029】
フレーム通信部11は、第一ネットワーク20用の通信フレームであるトークン通信フレームを用いて、第一ネットワーク20のノード21と通信を行う。フレーム通信部11は、第二ネットワーク30用の通信フレームであるイーサネット通信フレームを用いて、第二ネットワーク30のノード31と通信を行う。
【0030】
フレーム変換部12は、トークン通信フレームとイーサネット通信フレームとを相互に変換する。図3を参照してトークン通信フレームおよびイーサネット通信フレームのデータ構成について説明する。
【0031】
図3に示すように、トークン通信フレームは、データ項目として、例えば、プリアンブル項目a1と、SFD(Start of Frame Delimiters)項目a2と、宛先アドレス項目a3と、送信元アドレス項目a4と、情報データ項目a5と、FCS(Frame Check Sequence)項目a6と、EFD(End of Frame Delimiters)項目a7とを有する。一方、イーサネット通信フレームは、データ項目として、例えば、プリアンブル項目b1と、SFD項目b2と、宛先アドレス項目b3と、送信元アドレス項目b4と、フレーム長項目b5、情報データ項目b6と、FCS項目b7とを有する。
【0032】
図2に示すフレーム変換部12は、相手先のネットワークでの処理で必要となるデータを予め定められたデータ項目に設定することで、トークン通信フレームとイーサネット通信フレームとを相互に変換する。変換の手順について、図3を参照して具体的に説明する。
【0033】
まず、フレーム変換部12が、トークン通信フレームをイーサネット通信フレームに変換する手順について説明する。
【0034】
最初に、フレーム通信部11によってトークン通信フレームが受信されると、フレーム変換部12は、トークン通信フレームの宛先アドレス項目a3、送信元アドレス項目a4、情報データ項目a5およびFCS項目a6に格納されているデータを、受信バッファに格納する。
【0035】
なお、受信バッファは、外部から受信したデータを他の外部に送信するまで通信変換装置10内に一時的に格納するためのバッファ領域である。
【0036】
続いて、フレーム変換部12は、受信バッファに格納されている宛先アドレス項目、送信元アドレス項目、情報データ項目およびFCS項目の各データをイーサネット通信フレームの情報データ項目b6に格納することで、イーサネット通信フレームを生成する。
【0037】
このように変換することで、フレーム変換後のイーサネット通信フレームを受信したノード31は、情報データ項目b6に格納されている宛先アドレス項目、送信元アドレス項目、情報データ項目およびFCS項目に対応する各データを用いてノード31に設定された所定の処理を実行することができる。
【0038】
次に、フレーム変換部12が、イーサネット通信フレームをトークン通信フレームに変換する手順について説明する。
【0039】
最初に、フレーム通信部11によってイーサネット通信フレームが受信され、後述する送信対象抽出部13によって第一ネットワーク20のノード21宛のイーサネット通信フレームのみが抽出される。続いて、フレーム変換部12は、抽出されたイーサネット通信フレームの情報データ項目b6に格納されているデータを、受信バッファに格納する。
【0040】
続いて、フレーム変換部12は、受信バッファに格納されている情報データ項目のデータを、トークン通信フレームの宛先アドレス項目a3、送信元アドレス項目a4、情報データ項目a5およびFCS項目a6により構成されるデータ領域に格納することで、トークン通信フレームを生成する。なお、イーサネット通信フレームの情報データ項目b6に格納されるデータは、トークン通信フレームの宛先アドレス項目a3、送信元アドレス項目a4、情報データ項目a5およびFCS項目a6にそれぞれ対応可能なように配列構成されている。
【0041】
このように変換することで、フレーム変換後のトークン通信フレームを受信したノード21は、宛先アドレス項目a3、送信元アドレス項目a4、情報データ項目a5およびFCS項目a6に格納されている各データを用いてノード21に設定された所定の処理を実行することができる。
【0042】
図2に示す送信対象抽出部13は、フレーム通信部11によって受信されたイーサネット通信フレームのうち、第一ネットワーク20のノード21を宛先とするイーサネット通信フレームのみを第一ネットワーク20への送信対象として抽出し、フレーム変換部12に出力する。一方、送信対象抽出部13は、第一ネットワーク20のノード21を宛先としないイーサネット通信フレームについては破棄する。
【0043】
これにより、第一ネットワーク20のノード21宛以外のイーサネット通信フレームを、変換および送信の対象から除外することができるため、第二ネットワーク30に比べて通信速度の遅い第一ネットワーク20側への通信フレームが滞留してしまうことを抑制できる。
【0044】
送信対象選定部14は、フレーム通信部11によって受信されたイーサネット通信フレームを第一ネットワーク20側に連続して送信することになる場合に、連続するイーサネット通信フレームを間引くことで、第二ネットワーク30側から第一ネットワーク20側への送信対象を限定する。ただし、間引く対象は、イーサネット通信フレームのうちトークンフレームのみとする。トークンフレーム以外のイーサネット通信フレームについては、間引くことなく第一ネットワーク20側に送信する。
【0045】
上記連続して送信する場合とは、第一ネットワーク20側から第二ネットワーク30側への通信を間に挟むことなく、連続して第二ネットワーク30側から第一ネットワーク20側への送信が発生する状況をいう。第一ネットワーク20側から第二ネットワーク30側への通信を間に挟まない場合であっても、第二ネットワーク30側から第一ネットワーク20側への送信の間隔が所定時間以上空く場合には、連続発生の対象から除外することができる。この場合の所定時間は、第二ネットワーク30側から第一ネットワーク20側への通信フレームの滞留状況を勘案して任意に設定することができる。
【0046】
送信対象選定部14が行う選定の条件について、以下に説明する。
【0047】
(1)連続するイーサネット通信フレームのうち、最初および最後のイーサネット通信フレームは、第一ネットワーク20側への送信対象として必ず選定する。
【0048】
ここで、イーサネット通信フレームが連続する場合としては、トークンフレームを第二ネットワーク30のノード31間で送受信している状態が該当する。この場合、最初および最後以外の中間のイーサネット通信フレームは、第一ネットワーク20側では不要なデータとなる。したがって、中間のイーサネット通信フレームは、第一ネットワーク20側に送信する必要はない。一方、最後のイーサネット通信フレームは、第一ネットワーク20のノード21宛のトークンフレームとなる。したがって、トークン通信を成立させるために、最後のイーサネット通信フレームは、第一ネットワーク20側に送信する必要がある。
【0049】
(2)連続するイーサネット通信フレームのうち、最初および最後以外の中間のイーサネット通信フレームは、受信バッファに格納可能な空きが有るときには、第一ネットワーク20側への送信対象として選定する。一方、受信バッファに格納可能な空きが無いときには、そのときに受信された中間のイーサネット通信フレームを破棄する。
【0050】
これにより、受信バッファに余裕があるときには、中間のイーサネット通信フレームを変換して変換後のトークン通信フレームを第一ネットワーク20側に送信させることができ、受信バッファに余裕がないときには、中間のイーサネット通信フレームを破棄させることが可能となる。
【0051】
図4および図5を参照して、送信対象の選定について具体的に説明する。図4および図5に示すトークン通信フレームおよびイーサネット通信フレームは、紙面左側から右側に向けて時系列に推移した状態で表されている。図4および図5に示す各通信フレームのうち、ハッチングされていない通信フレームは、間引きされて破棄される通信フレームを表す。
【0052】
図4には、通信変換装置10が第一ネットワーク20側に連続して送信することになるイーサネット通信フレームとして、三つのイーサネット通信フレームe1〜e3が例示されている。この場合には、連続する三つのイーサネット通信フレームe1〜e3のうち、最初のイーサネット通信フレームe1と、最後のイーサネット通信フレームe3とが、第一ネットワーク20側への送信対象として選択される。また、イーサネット通信フレームe2を受信したときには、トークン通信フレームが受信バッファに格納されており、受信バッファに空きが無いため、イーサネット通信フレームe2は間引きされて破棄されることになる。
【0053】
図5には、通信変換装置10が第一ネットワーク20側に連続して送信することになるイーサネット通信フレームとして、六つのイーサネット通信フレームe1〜e6が例示されている。この場合には、連続する六つのイーサネット通信フレームe1〜e6のうち、最初のイーサネット通信フレームe1と、最後のイーサネット通信フレームe6とが、第一ネットワーク20側への送信対象として選択される。また、中間のイーサネット通信フレームe2〜e5のうち、イーサネット通信フレームe4を受信したときには、トークン通信フレームが受信バッファに格納されておらず、受信バッファに空きが有るため、イーサネット通信フレームe4は、第一ネットワーク20側への送信対象として選択される。この場合には、イーサネット通信フレームe2、e3、e5が間引かれて破棄されることになる。
【0054】
このように、第二ネットワーク30側から第一ネットワーク20側に連続して送信されることになるイーサネット通信フレームを変換および送信の対象から効率良く除外することができるため、比較的通信速度の遅い第一ネットワーク20側への通信フレームが滞留することを抑制できる。
【0055】
図2に示すフレーム分割部15は、第一ネットワーク20側から受信したトークン通信フレームのデータサイズが、イーサネット通信フレームの最大データサイズを超える場合に、トークン通信フレームを複数のフレームに分割する。具体的に、フレーム分割部15は、イーサネット通信フレームの最大データサイズと同じサイズの一または複数のフレームと、トークン通信フレームのデータサイズをイーサネット通信フレームの最大データサイズで除算したときの剰余と同じサイズのフレームとに、分割する。
【0056】
例えば、イーサネット通信フレームの最大データサイズが“1500”バイトであり、トークン通信フレームのデータサイズが“4090”バイトである場合、フレーム分割部15は、“4090”バイトのトークン通信フレームを、“1500”バイトのフレーム二つと、“1090”バイトのフレーム一つとに分割する。すなわち、この場合には三つのトークン通信フレームに分割する。
【0057】
これにより、トークン通信フレームのデータサイズがイーサネット通信フレームの最大データサイズを超える場合であっても、イーサネット通信フレームの最大データサイズ以下の複数のフレームにトークン通信フレームを分割することができる。つまり、第二ネットワーク30側に送信する分割フレームのデータサイズを、イーサネット通信フレームの最大データサイズ以下に抑えることができるため、データを漏れなく送信することが可能となる。
【0058】
また、上述のように分割することで、分割フレームのデータサイズに規則性を持たせることができるため、分割フレームを受信した第二ネットワーク30側で行う分割フレームの合成処理を簡易にすることができる。
【0059】
フレーム分割部15は、分割後の各フレームの分割フラグをオンにし、分割後の各フレームに対して分割順に通し番号を付与する。この場合には、各通信フレームに分割フラグおよび分割通し番号用のデータ領域を予め設けておくことになる。
【0060】
これにより、イーサネット通信フレームを受信した第二ネットワーク30側では、分割フラグがオンであるフレーム群が分割されたフレーム群であることを認識することができ、そのフレーム群を分割通し番号順に合成することで、元のデータを容易に復元することが可能となる。
【0061】
具体的に、第二ネットワーク30側のノード31は、受信したイーサネット通信フレームの分割フラグを参照することで、受信したイーサネット通信フレームが分割フレームの一部であるか否かを判定することができる。すなわち、分割フラグがオンである場合には、受信したイーサネット通信フレームが分割フレームの一部であると判定することができる。
【0062】
また、第二ネットワーク30側のノード31は、各分割フレームの分割通し番号を参照することで、分割フレームが送信エラーにより欠落しているか否かを判定することができる。例えば所定時間以内に、分割通し番号が付与された全ての分割フレームを受信できない場合には、送信エラーが発生したと判定し、判定対象の分割フレーム群を破棄することができる。破棄したデータは、第一ネットワーク20側でリトライ送信すればよい。
【0063】
フレーム合成部16は、第二ネットワーク30側から分割して送信されてきたイーサネット通信フレームの情報データを合成し、一つのトークン通信フレームの情報データにまとめる。
【0064】
上述してきたように、本実施形態における通信システム1によれば、送信対象選定部14を有することで、第二ネットワーク30側から第一ネットワーク20側に連続して送信されることになるイーサネット通信フレームのうち、最初および最後のイーサネット通信フレーム以外の中間のイーサネット通信フレームを間引くことができるため、比較的通信速度の遅い第一ネットワーク20側への通信フレームが滞留することを抑制できる。
【0065】
また、フレーム分割部15を有することで、第一ネットワーク20側から受信したトークン通信フレームのデータサイズがイーサネット通信フレームの最大データサイズを超える場合であっても、イーサネット通信フレームの最大データサイズ以下の複数のフレームにトークン通信フレームを分割することができる。つまり、第二ネットワーク30側に送信する分割フレームのデータサイズを、イーサネット通信フレームの最大データサイズ以下に抑えることができるため、データを漏れなく送信することが可能となる。
【0066】
また、送信対象抽出部13を有することで、フレーム通信部11によって受信されたイーサネット通信フレームのうち、第一ネットワーク20のノード21宛以外のイーサネット通信フレームを、変換および送信の対象から除外することができるため、比較的通信速度の遅い第一ネットワーク20側への通信フレームが滞留することを抑制できる。
【0067】
また、フレーム変換部12を有することで、フレーム変換後のトークン通信フレームまたはイーサネット通信フレームを受信した各ノード21、31は、予め定めたデータ項目に格納されているデータを用いて各ノード21、31にそれぞれ設定された所定の処理を実行することができる。
【0068】
それゆえに、本実施形態における通信システム1によれば、通信速度や最大データサイズが相違するトークンバス方式のネットワークとイーサネット方式のネットワークとを簡易に接続することが可能となる。
【0069】
なお、上述した実施形態では、通信変換装置10の各部の機能を、ハードウェアロジックにより実現しているが、これに限定されず、ソフトウェアにより実現することもできる。この場合、通信変換装置10は、物理的に、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、通信インターフェースとを含めて構成する。メモリには、CPUで処理されるプログラムやデータを記憶するROM(Read Only Memory)、主として制御処理のための各種作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等の要素が含まれる。これらの要素は、互いにバスを介して接続される。CPUが、ROMに記憶されたプログラムを実行し、通信インターフェースを介して受信されたデータや、RAMに展開されたデータを処理することで、通信変換装置10の各部の機能を実現することができる。
【0070】
また、上述した実施形態では、一つの通信変換装置10が、フレーム通信部11と、フレーム変換部12と、送信対象抽出部13と、送信対象選定部14と、フレーム分割部15とを有しているが、これに限定されない。これらの各部を複数の装置に分散して備えることとしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…通信システム
10…通信変換装置
11…フレーム通信部
12…フレーム変換部
13…送信対象抽出部
14…送信対象選定部
15…フレーム分割部
20…第一ネットワーク(トークンバス)
21…ノード
30…第二ネットワーク(イーサネット)
31…ノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トークンバス方式の第一ネットワーク、イーサネット方式の第二ネットワーク、および前記第一ネットワークと前記第二ネットワークとの間の通信を仲介する通信変換装置を備える通信システムであって、
前記第一ネットワークおよび前記第二ネットワークに接続する各ノードは、トークンを意味するように生成された通信フレームを受信したときに、他のノード宛てのデータを格納した通信フレームを送信する権利が付与され、
前記通信変換装置は、
前記第一ネットワーク用の通信フレームである第一フレームと前記第二ネットワーク用の通信フレームである第二フレームとを相互に変換するフレーム変換部と、
前記第二ネットワーク側から受信した前記第二フレームを前記第一ネットワーク側に連続して送信することになる場合に、連続する前記第二フレームのうち、少なくとも最初および最後の前記第二フレームを前記第一ネットワーク側への送信対象として選定する送信対象選定部と、
前記第一ネットワーク側から受信した前記第一フレームのデータサイズが、前記第二フレームの最大データサイズを超える場合に、前記第一フレームを複数のフレームに分割するフレーム分割部と、
前記第二ネットワーク側から分割して送信されてきた前記第二フレームのデータを合成し、一つの前記第一フレームのデータにまとめるフレーム合成部と、を備える、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記通信変換装置は、前記第二ネットワーク側から受信した前記第二フレームのうち、前記第一ネットワーク側のノードを宛先とする前記第二フレームを前記第一ネットワーク側への送信対象として抽出する送信対象抽出部を、さらに備える、
ことを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
前記フレーム変換部は、相手先のネットワークで必要となるデータを予め定めたデータ項目に設定することで、前記第一フレームと前記第二フレームとを変換する、
ことを特徴とする請求項1または2記載の通信システム。
【請求項4】
前記送信対象選定部は、前記第一フレームおよび前記第二フレームを受信してから送信するまでの間、格納するバッファ領域に空きがある場合に、連続する前記第二フレームのうち、最初および最後の前記第二フレーム以外の第二フレームを前記第一ネットワーク側への送信対象として選定する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記送信対象選定部は、連続する前記第二フレームのうち、少なくとも前記トークンを意味するように生成された通信フレーム以外の前記第二フレームについては、前記第一ネットワーク側への送信対象として選定する、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記フレーム分割部は、前記第二フレームの最大データサイズと同じサイズの一または複数のフレームと、前記第一フレームのデータサイズを前記第二フレームの最大データサイズで除算したときの剰余と同じサイズのフレームとに、分割する、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項7】
前記フレーム分割部は、分割後の各フレームに含まれる分割フラグをオンにし、分割後の各フレームに対して分割順に通し番号を付与する、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項8】
トークンバス方式の第一ネットワーク、イーサネット方式の第二ネットワーク、および前記第一ネットワークと前記第二ネットワークとの間の通信を仲介する通信変換装置を備える通信システムにおける通信変換方法であって、
前記第一ネットワークおよび前記第二ネットワークに接続する各ノードが、トークンを意味するように生成された通信フレームを受信したときに、他のノード宛てのデータを格納した通信フレームを送信する権利を付与され、
前記通信変換装置が、
前記第一ネットワーク用の通信フレームである第一フレームと前記第二ネットワーク用の通信フレームである第二フレームとを相互に変換するフレーム変換ステップと、
前記第二ネットワーク側から受信した前記第二フレームを前記第一ネットワーク側に連続して送信することになる場合に、連続する前記第二フレームのうち、少なくとも最初および最後の前記第二フレームを前記第一ネットワーク側への送信対象として選定する送信対象選定ステップと、
前記第一ネットワーク側から受信した前記第一フレームのデータサイズが、前記第二フレームの最大データサイズを超える場合に、前記第一フレームを複数のフレームに分割するフレーム分割ステップと、
前記第二ネットワーク側から分割して送信されてきた前記第二フレームのデータを合成し、一つの前記第一フレームのデータにまとめるフレーム合成ステップと、を含む、
ことを特徴とする通信変換方法。
【請求項9】
請求項8に記載の各ステップをコンピュータに実行させるための通信変換プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate