説明

通信システムおよび送信装置

【課題】異なる伝送路を介して通信を行う通信装置のコストを低減することが可能な技術を提供する。
【解決手段】通信システム1に含まれる送信装置10は、複数のサブキャリアで構成されるOFDM信号を用いて、無線伝送路を介した無線通信を行う第1通信手段と、OFDM信号を用いて、有線伝送路を介した有線通信を行う第2通信手段とを有し、当該第2通信手段は、第1通信手段の一部を共用している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、異なる伝送路を介した2つの通信方式で通信を行う通信装置が存在する。
【0003】
例えば、特許文献1には、有線通信および無線通信を用いて、通信先へと情報を伝送する通信装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−278417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、異なる伝送路を介して通信可能な通信装置は、各通信方式で通信を実現するために、通信方式ごとに個別の構成を有している。
【0006】
しかし、このような通信装置では、通信方式ごとに個別の構成を有しているため、通信装置のコストが高くなる。
【0007】
そこで、本発明は、異なる伝送路を介して通信を行う通信装置のコストを低減することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る通信システムの第1の態様は、第1通信装置と、前記第1通信装置と通信を行う第2通信装置とを備え、前記第1通信装置は、複数のサブキャリアで構成されるOFDM信号を用いて、第1伝送路を介した通信を行う第1通信手段と、前記OFDM信号を用いて、前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を介した通信を行う第2通信手段とを有し、前記第2通信手段は、前記第1通信手段の一部を共用し、前記第2通信装置は、前記第1伝送路を介した通信によって前記第1通信装置から送信された信号を受信して、前記複数のサブキャリアそれぞれについての伝送路情報を取得する取得手段と、前記伝送路情報に基づいて、前記複数のサブキャリアのうち、送信信号の伝送に用いない不使用サブキャリアを決定する決定手段と、前記決定手段の決定結果を前記第1通信装置に通知する通知手段とを有し、前記第1通信装置の前記第1通信手段は、前記決定結果に基づいて、前記不使用サブキャリアに送信信号を含めないOFDMシンボルを生成する生成手段と、前記第1伝送路を介した通信によって前記OFDMシンボルを送信する送信手段とを有する。
【0009】
また、本発明に係る通信システムの第2の態様は、上記第1の態様であって、前記第2通信手段は、前記第1通信手段における前記生成手段を共用する。
【0010】
また、本発明に係る通信システムの第3の態様は、上記第1の態様または上記第2の態様であって、前記第2通信手段は、前記第1通信手段における前記生成手段と、前記第1通信手段における前記送信手段の一部とを共用する。
【0011】
また、本発明に係る通信システムの第4の態様は、上記第1の態様から上記第3の態様のいずれかであって、前記第1伝送路を介した通信および前記第2伝送路を介した通信のいずれか一方は、電力線通信であり、他方は、無線通信である。
【0012】
また、本発明に係る送信装置は、複数のサブキャリアで構成されるOFDM信号を用いて、第1伝送路を介した通信を行う第1通信手段と、前記OFDM信号を用いて、前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を介した通信を行う第2通信手段とを備え、前記第2通信手段は、前記第1通信手段の一部を共用し、前記第1通信手段は、通信先から通知される前記第1伝送路の状態を反映した情報に基づいて、前記複数のサブキャリアのうち、送信信号の伝送に用いない不使用サブキャリアに送信信号を含めないOFDMシンボルを生成する生成手段と、前記第1伝送路を介した通信によって前記OFDMシンボルを送信する送信手段とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、異なる伝送路を介して通信を行う通信装置において、当該通信装置のコストを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る通信システムのブロック図である。
【図2】第2通信装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】サブキャリア番号「−N」番のサブキャリアから「+N」番のサブキャリアによって構成されるOFDM信号を概念的に示す図である。
【図4】データ配置パターンの記憶態様を示す図である。
【図5】第3通信装置の機能構成を示すブロック図である。
【図6】送信装置の機能構成を示すブロック図である。
【図7】OFDM信号を構成する複数のサブキャリアに乗せる各信号をOFDMシンボル単位で示す概略図である。
【図8】OFDM信号を構成する複数のサブキャリアに乗せる各信号をOFDMシンボル単位で示す概略図である。
【図9】通信システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
<1.実施形態>
[1−1.通信システム]
図1は、本実施形態に係る通信システム1のブロック図である。図1に示されるように、通信システム1は、第1通信装置10と、第2通信装置20と、第3通信装置30とを含んでいる。
【0017】
通信システム1における第1通信装置10は、第2通信装置20および第3通信装置30と、それぞれ異なる伝送路を介して通信可能に構成されている。
【0018】
具体的には、第1通信装置10は、無線伝送路(電波伝送路)を介した無線通信を実現する第1通信手段と、有線伝送路31を介した有線通信を実現する第2通信手段とを有している。第1通信装置10は、第2通信装置20とは第1通信手段を用いて無線通信を行い、第3通信装置30とは第2通信手段を用いて有線通信を行う。すなわち、通信システム1では、第1通信装置10が有する情報(「伝送データ」、または「送信データ」とも称する)は、第2通信装置20へは無線通信によって伝送され、第3通信装置30へは有線通信によって伝送されることになる。
【0019】
なお、本実施形態では、第1通信装置10と第3通信装置30との間では、電力線を有線伝送路31として用いる電力線通信(PLC:power line communication)が行われる場合を例示する。
【0020】
また、第1通信装置10と第2通信装置20との通信、および第1通信装置10と第3通信装置30との通信はいずれも、周波数軸上で互いに直交する複数のサブキャリアを合成して得られるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を用いて行われる。
【0021】
またここでは、第1通信装置10が、第2通信装置20および第3通信装置30に対して伝送データを送信する送信機として機能し、第2通信装置20および第3通信装置30が伝送データを受信する受信機として機能する場合を説明するが、第1通信装置10、第2通信装置20および第3通信装置30はいずれも、送受信機能を有している。なお、以下では、第1通信装置10を「送信装置」とも称し、第2通信装置20および第3通信装置30を「受信装置」とも称する。
【0022】
通信システム1では、送信装置10と受信装置20,30との間の通信を確立する際、送信装置10は、送信装置10の存在を通知するビーコン信号等の報知信号を送信する。当該報知信号には、マルチパス干渉によって生じるフェージングの影響を受信側において取り除くために用いられるパイロット信号が組み込まれている。
【0023】
受信装置20,30は、報知信号を受信すると、パイロット信号を用いて伝送路推定を行う。そして、受信装置20,30は、伝送路推定の結果に基づいて、OFDM信号を構成する複数のサブキャリアのうち、どのサブキャリアを用いて通信を行うかについての通信態様を決定する。
【0024】
送信装置10は、受信装置20,30において決定された通信態様に従って、データの伝送を行う。
【0025】
このように、通信システム1では、各伝送路の状態(環境)に応じた通信態様で、通信を行うように構成されている。
【0026】
なお、本実施形態では、送信装置10から受信装置20,30に伝送される伝送データに関する信号をデータ信号(「送信データ信号」または「伝送データ信号」とも称する)と称し、データ信号は、パイロット信号とは区別して用いる。また、データ信号とパイロット信号とを含んだ表現として、送信信号を用いる。
【0027】
[1−2.受信装置]
次に、通信システム1を構成する第2通信装置20および第3通信装置30の機能について、この順序で説明する。図2は、第2通信装置20の機能構成を示すブロック図である。図3は、サブキャリア番号「−N」番のサブキャリアから「+N」番のサブキャリアによって構成されるOFDM信号LSを概念的に示す図である。図4は、データ配置パターンの記憶態様を示す図である。
【0028】
図2に示されるように、受信装置20は、アンテナAN1に接続された受信部201と、FFT(高速フーリエ変換)部202と、分離器203と、等化器204と、除算部205と、伝送路推定部206と、制御部207と、送信部208とを備えている。
【0029】
アンテナAN1から受信されたOFDM信号(「受信OFDM信号」とも称する)は、受信部201に入力される。受信部201では、受信OFDM信号に対して周波数変換処理、フィルタ処理、AD変換処理等が施される。受信部201から出力されたデジタル形式のベースバンド(基底帯域)の受信OFDM信号は、FFT部202に入力される。
【0030】
FFT部202は、入力されたOFDMシンボル単位の受信OFDM信号に高速フーリエ変換を施して、時間領域の信号を周波数領域の信号に変換する。FFT部202から出力されるOFDM復調信号は、分離器203に入力される。
【0031】
分離器203は、OFDM復調信号を、データ信号を含む復調信号(単に「受信データ信号」とも称する)とパイロット信号を含む復調信号(単に「受信パイロット信号」とも称する)とに分離する機能を有している。そして、分離器203は、受信データ信号を等化器204に出力するとともに、受信パイロット信号を除算部205に出力する。例えば、受信OFDM信号が報知信号であった場合、当該報知信号に含まれる受信パイロット信号が分離器203によって抽出され、除算部205に出力されることになる。
【0032】
除算部205は、メモリ等の記憶部に格納されているパイロットデータと受信パイロット信号とに基づいて伝送路特性(「伝送路応答」とも称する)を算出する。パイロットデータは、パイロット信号(基準信号)の配置位置と当該パイロット信号の複素振幅とを含むデータである。除算部205は、受信パイロット信号を、既知の複素振幅を持つパイロット信号で除算することにより、パイロット信号を伝送したサブキャリアについての伝送路特性(パイロット信号の伝送路特性)を算出する。除算部205において算出される、パイロット信号を伝送したサブキャリアについての伝送路特性は、伝送路推定部206および制御部207に出力される。
【0033】
伝送路推定部206は、除算部205から入力された伝送路特性を、OFDMシンボル方向およびキャリア方向に補間することにより、各データ信号を伝送するサブキャリアそれぞれについて伝送路特性(データ信号の伝送路特性)を推定する。具体的には、OFDM信号を構成するサブキャリアにおける、パイロット信号の配置位置はパイロットデータにより既知であるため、伝送路推定部206は、パイロット信号の伝送路特性を補間処理することによって、各データ信号の伝送路特性を算出する。
【0034】
なお、データ信号の伝送路特性は、パイロット信号を伝送するサブキャリア以外の他のサブキャリアについての伝送路特性である。このため、受信OFDM信号が報知信号であった場合は、伝送路推定部206では、実際にはデータ信号の乗っていないサブキャリアの伝送路特性が算出されることになる。
【0035】
伝送路推定部206において算出された各データ信号の伝送路特性(「推定伝送路特性」とも称する)は、等化器204および制御部207に出力される。
【0036】
等化器204は、受信データ信号を、当該受信データ信号に対応する推定伝送路特性で除算する等化処理を行う。等化器204から出力される等化処理後の受信データ信号には、デマッピング処理等の復号処理が施される。
【0037】
制御部207は、マイクロコンピュータとして構成され、主にCPU71、RAM72およびROM73等を備えている。制御部207は、ROM73に格納されたプログラムを読み出し、当該プログラムをCPU71で実行することによって、配置パターン決定部74を機能的に実現する。
【0038】
配置パターン決定部74は、除算部205から入力されるパイロット信号の伝送路特性および伝送路推定部206から入力されるデータ信号の伝送路特性に基づいて、送信装置10において用いる、サブキャリアへのデータの配置パターン(サブキャリアの使用パターン)を決定する。
【0039】
具体的には、配置パターン決定部74は、入力されたパイロット信号およびデータ信号の伝送路特性をそれぞれ正規化する。これにより、OFDM信号を構成する各サブキャリアそれぞれについての伝送路特性が正規化されることになる。そして、配置パターン決定部74は、正規化後の各伝送路特性を予め設定された所定の閾値と比較して、データの伝送に適さないサブキャリアを特定する。すなわち、配置パターン決定部74は、正規化後の伝送路特性が所定の閾値より小さい場合は、当該伝送路特性に対応するサブキャリアを、データの伝送に適さないサブキャリア(「不適サブキャリア」とも称する)と判断する。
【0040】
不適サブキャリアの特定が終了すると、配置パターン決定部74は、不適サブキャリアの特定結果に基づいて、OFDM信号を構成する各サブキャリアへの送信信号の配置パターンを決定する。配置パターンの決定は、ROM73に予め格納されている複数のデータ配置パターンの中から、最適なデータ配置パターンを決定することにより行われる。
【0041】
具体的には、不適サブキャリアと判定されたサブキャリア番号には「0」とマーキングし(印をつけ)、それ以外のサブキャリアには「1」とマーキングすることにより、理想の配置パターン(理想配置パターン)を取得する。そして、取得された理想配置パターンと格納されている複数のデータ配置パターンとの差の絶対値の和が最も小さいものを、最適なデータ配置パターンとして決定する。
【0042】
例えば、図3に示されるように、OFDM信号LSを構成する複数のサブキャリアのうち、区間LKに存在するサブキャリアが不適サブキャリアであった場合、区間LKに含まれるサブキャリアをデータの伝送に用いないようなデータ配置パターンが選択されることになる。
【0043】
また、ROM73におけるデータ配置パターンの記憶態様としては、例えば、図4に示されるように、サブキャリアをデータの伝送に用いるか否かを示すフラグをサブキャリア番号ごとに対応付けて記憶する態様を採用することができる。図4では、複数のデータ配置パターンPT1〜PT5が例示されている。図4の各データ配置パターンPT1〜PT5においては、データの伝送に用いる使用サブキャリア(「伝送用サブキャリア」とも称する)はフラグ「1」で示され、データの伝送に用いない不使用サブキャリア(「非伝送用サブキャリア」とも称する)はフラグ「0」で示されている。
【0044】
このように、受信装置20では、配置パターン決定部74(図2参照)において、データ配置パターンが決定されると、決定されたデータ配置パターンは、配置パターン情報として送信部208を介して、送信装置10に伝送される。
【0045】
なお、配置パターン決定部74によって決定されるデータ配置パターンには、データの伝送に用いない不使用サブキャリアに関する情報が含まれていることから、配置パターン決定部74は、不使用サブキャリアを決定する決定手段として機能しているとも表現することができる。そして、当該決定手段によって決定された決定結果は、配置パターン情報として送信装置10に通知される。また、配置パターン情報は、伝送路の状態を反映した情報であるとも表現できる。
【0046】
次に、第3通信装置30の機能について説明する。図5は、第3通信装置30の機能構成を示すブロック図である。
【0047】
第3通信装置30は、第2通信装置20とほぼ同様の構成および機能を有しているため、第2通信装置20と共通する部分については図5において同じ符号を付し、ここでの詳細な説明を省略する。
【0048】
図5に示されるように、受信装置30は、PLCモデム301と、A/D変換部304と、FFT(高速フーリエ変換)部202と、分離器203と、等化器204と、除算部205と、伝送路推定部206と、制御部207と、D/A変換部305とを備えている。
【0049】
PLCモデム301は、アナログアンプ等を含むPLCアナログフロントエンド302と、有線伝送路31としての電力線への結合回路303とで構成されている。PLCモデム301は、受信したPLC信号を復調して、受信信号を取得し、当該受信信号をA/D変換部304に出力する機能を有している。また、PLCモデム301は、D/A変換部305を介して入力される信号に基づいてPLC信号を生成し、当該PLC信号を有線伝送路31としての電力線に重畳させる機能を有している。
【0050】
このような構成を有する受信装置30は、報知信号をPLCモデム301を介して受信すると、受信装置20と同様に、除算部205および伝送路推定部206において、OFDM信号を構成する各サブキャリアそれぞれについての伝送路特性を取得する。そして、受信装置30は、受信装置20と同様に、配置パターン決定部74において、伝送路特性に基づいてデータ配置パターンを決定する。決定されたデータ配置パターンは、配置パターン情報として、D/A変換部305およびPLCモデム301を介して送信装置10に伝送されることになる。
【0051】
[1−3.送信装置]
次に、通信システム1を構成する送信装置(第1通信装置)10の機能について説明する。図6は、送信装置10の機能構成を示すブロック図である。図7および図8は、OFDM信号を構成する複数のサブキャリアに乗せる各信号をOFDMシンボル単位で示す概略図である。
【0052】
図6に示されるように、送信装置10は、スクランブラ111と、符号化部112と、インターリーブ部(インターリーバ)113と、マッピング部114と、パイロット信号生成部115と、多重器116と、受信部117と、制御部118と、IFFT(逆高速フーリエ変換)部119と、D/A変換部120と、送信部121と、PLCモデム122と、A/D変換部125とを備えている。
【0053】
具体的には、スクランブラ111は、入力される送信データに対して、攪拌して順序を並び替えるスクランブル処理を施す。スクランブラ111においてスクランブル処理が施された送信データは、符号化部112に入力される。
【0054】
符号化部112は、スクランブル処理が施された送信データに対して、誤り訂正のための冗長符号化を行う。冗長符号化には、例えば、拘束長k=7、符号化率1/2を原符号とする畳み込み符号が用いられる。符号化部112から出力される送信データのビット列は、インターリーブ部113に入力される。
【0055】
インターリーブ部113では、誤りが1つのシンボルに偏らないようにするため、送信データのビット列を並び替えるビット・インターリーブが行われる。インターリーブ部113から出力される送信データは、マッピング部114に入力される。
【0056】
マッピング部114では、所定の変調方式(例えば、QPSK、16QAM)に従って、送信データがシンボルごとにI/Q平面上にマッピング(対応づけ)される。
【0057】
なお、ここでのシンボル(Symbol)は、変調方式ごとに定まる、搬送波(サブキャリア)に乗せるひと区切りのデータの構成単位を表し、例えば、QPSKでは、1シンボルで送信されるデータは2ビットである。また本実施形態では、シンボルとOFDMシンボルとは区別して用いられている。
【0058】
パイロット信号生成部115は、パイロット信号を生成して多重器116に出力する。
【0059】
多重器116は、マッピング部114から出力されるデータシンボルと、パイロット信号生成部115から出力されるパイロット信号(パイロットシンボル)とを用いて、OFDMシンボルを生成する。
【0060】
多重器116で生成されるOFDMシンボルには、OFDM信号を構成する各サブキャリアに乗せるデータシンボルおよびパイロットシンボルが含まれている。例えば、図7のOFDMシンボルSYは、サブキャリア番号−7番から+7番までの15個の連続して並ぶサブキャリアに乗せる各シンボルによって構成されている。より詳細には、OFDMシンボルSY1には、−7番および+1番のサブキャリアに乗せるパイロットシンボルと他の13個のデータシンボルとが含まれている。また、OFDMシンボルSY2には、−5番および+3番のサブキャリアに乗せるパイロットシンボルと他の13個のデータシンボルとが含まれている。
【0061】
このように、多重器116は、データシンボルおよびパイロットシンボルによって構成される、OFDMシンボルSYを順次に生成する。
【0062】
さらに、本実施形態の多重器116は、送信装置10の制御部118によって設定されたデータの配置パターンに従って、OFDMシンボルSYを生成する。
【0063】
具体的には、送信装置10の制御部118は、マイクロコンピュータとして構成され、主にCPU81、RAM82およびROM83等を備えている。制御部118は、ROM83に格納されたプログラムを読み出し、当該プログラムをCPU81で実行することによって、多重器制御部84を機能的に実現する。
【0064】
多重器制御部84は、受信装置20(または受信装置30)から送信された配置パターン情報に基づいて、ROM83から当該配置パターン情報に示されるデータ配置パターンを読み出し、読み出したデータ配置パターンに従ってデータシンボルおよびパイロットシンボルを多重器116に配置させる。なお、送信装置10では、受信装置20から送信された配置パターン情報は受信部117およびA/D変換部125を介して取得され、受信装置30から送信された配置パターン情報はPLCモデム122およびA/D変換部125を介して取得される。
【0065】
多重器116は、多重器制御部84からの制御信号に応じて動作し、データ配置パターンに従ってデータシンボルおよびパイロットシンボルを配置したOFDMシンボルSYを生成する。
【0066】
例えば、受信装置20(または受信装置30)によって指定されたデータ配置パターンが、サブキャリア番号+3番から+5番までのサブキャリアを、データの伝送に用いない不使用サブキャリアとするものである場合を想定する。この場合、図8に示されるように、送信装置10の多重器116は、サブキャリア番号+3番から+5番のサブキャリアに送信信号を含めないOFDMシンボルSYを生成することになる。
【0067】
このように、多重器116は、データ配置パターンに従ってシンボル信号を配置したOFDMシンボルを生成する。多重器116で生成されたOFDMシンボルSYは、IFFT部119に入力される(図6参照)。
【0068】
IFFT部119は、多重器116から入力されるOFDMシンボルに逆高速フーリエ変換を施して、周波数領域の信号を時間領域の信号に変換する。
【0069】
IFFT部119から出力される時間領域の信号は、ベースバンドのOFDM信号(ベースバンドOFDM信号)としてD/A変換部120に入力される。D/A変換部120は、デジタル形式のベースバンドOFDM信号をアナログ形式のベースバンドOFDM信号に変換し、送信部121またはPLCモデム122に出力する。
【0070】
送信部121は、ベースバンドOFDM信号に対して、周波数変換処理等を施し、搬送帯域のOFDM信号を生成する。送信部121において生成された搬送帯域のOFDM信号は、アンテナAN2を介して送信される。
【0071】
また、PLCモデム122は、有線伝送路31としての電力線への結合回路123と、PLCアナログフロントエンド124とで構成され、受信装置30のPLCモデム301と同様の機能を有している。D/A変換部120から入力されたベースバンドOFDM信号は、PLCモデム122によってPLC信号に変換され、有線伝送路31としての電力線を介して送信される。
【0072】
このように、送信装置10は、受信装置20(または受信装置30)から送られてきた配置パターン情報に基づいて、データの伝送に用いない不使用サブキャリアを特定し、当該不使用サブキャリアを用いることなくデータの伝送を行う。
【0073】
上述のような構成を有する送信装置10は、配置パターン情報に基づいて、伝送用サブキャリアに送信信号を含める(割り当てる)OFDMシンボルを生成する生成手段(OFDMシンボル生成手段)11(図6参照)と、生成されたOFDMシンボルを生成された順番で連続して送信する送信手段12とで構成されているとも表現できる。
【0074】
このように表現した場合、OFDMシンボル生成手段11には、スクランブラ111、符号化部112、インターリーブ部113、マッピング部114、パイロット信号生成部115、多重器116、および多重器制御部84が含まれる。また、送信手段12には、IFFT部119、D/A変換部120、送信部121およびPLCモデム122が含まれる。なお、正確には、送信装置10と第2通信装置20との間で通信を行う場合は、送信手段12には、IFFT部119、D/A変換部120、および送信部121が含まれ、送信装置10と第3通信装置30との間で通信を行う場合は、送信手段12には、IFFT部119、D/A変換部120、およびPLCモデム122が含まれることになる。
【0075】
また、上述のように、送信装置10は、無線伝送路を介した無線通信を実現する第1通信手段と、有線伝送路を介した有線通信を実現する第2通信手段とを有しているが、送信装置10の各構成要素のうち、第1通信手段および第2通信手段の各構成要素は次の通りである。すなわち、送信装置10の各構成要素のうち、スクランブラ111と、符号化部112と、インターリーブ部113と、マッピング部114と、パイロット信号生成部115と、多重器116と、制御部118と、IFFT部119と、D/A変換部120と、送信部121とが、第1通信手段の構成要素である。また、送信装置10の各構成要素のうち、スクランブラ111と、符号化部112と、インターリーブ部113と、マッピング部114と、パイロット信号生成部115と、多重器116と、制御部118と、IFFT部119と、D/A変換部120と、PLCモデム122とが、第2通信手段の構成要素である。
【0076】
第1通信手段の構成要素と第2通信手段の構成要素とを比較すると、送信装置10では、第1通信手段は、第2通信手段の一部を共用していることが分かる。共用部分の構成要素については、図6においてハッチングが施されている。すなわち、第1通信手段と第2通信手段との共用部分は、OFDMシンボル生成手段11と、送信手段12の一部である。共用部分となる送信手段12の当該一部は、IFFT部119およびD/A変換部120である。
【0077】
[1−4.動作]
次に、通信システム1の動作について説明する。なお、送信装置10と受信装置20との間の通信動作と、送信装置10と受信装置30との間の通信動作とは、ほぼ同様であるため、ここでは、送信装置10と受信装置20との間の通信動作を、通信システム1の動作として詳述する。図9は、通信システム1の動作を示すフローチャートである。なお、図9では、左側に送信装置10の動作、右側に受信装置20の動作がそれぞれ記載されている。
【0078】
図9に示されるように、通信システム1では、まず、ステップSP11において、送信装置10からビーコン信号等の報知信号が受信装置20に送信される。
【0079】
ステップSP12では、受信装置20において報知信号が受信される。
【0080】
ステップSP13では、受信装置20の伝送路推定部206等によって、報知信号を用いた伝送路推定等が行われる。これにより、ステップSP13では、OFDM信号を構成する各サブキャリアそれぞれについての伝送路特性が取得されることになる。
【0081】
ステップSP14では、受信装置20の配置パターン決定部74によって、OFDM信号を構成する各サブキャリアへの送信信号の配置パターンを示すデータ配置パターンが決定される。
【0082】
ステップSP15では、受信装置20は、決定されたデータ配置パターンを配置パターン情報として送信する。
【0083】
ステップSP16では、送信装置10において配置パターン情報が受信される。
【0084】
ステップSP17では、送信装置10は、受信された配置パターン情報に基づいて、データ配置パターンを特定する。そして、送信装置10は、当該データ配置パターンに従って、不使用サブキャリアに送信信号を含めないOFDMシンボルを生成し、当該OFDMシンボルを用いてデータの伝送を行う。
【0085】
ステップSP18では、受信装置20は、送信装置10から送信された信号を受信し、データを受信する。
【0086】
ステップSP19では、受信装置20は、データの受信が完了したことを示す確認信号を送信装置10に対して送信する。
【0087】
ステップSP20では、送信装置10が当該確認信号を受信して、通信システム1における一連のデータ伝送処理が終了する。
【0088】
以上のように、本実施形態の通信システム1に含まれる送信装置10は、複数のサブキャリアで構成されるOFDM信号を用いて、第1伝送路を介した通信を行う第1通信手段と、OFDM信号を用いて、第1伝送路とは異なる第2伝送路を介した通信を行う第2通信手段とを有し、当該第2通信手段は、第1通信手段の一部を共用している。
【0089】
このように、通信手段の一部を共用することによれば、通信手段ごとに個別に構成する場合に比べて、通信装置10のコストを低減することができるとともに、通信装置10内の回路規模を小さくすることができる。
【0090】
また、通信システム1は、送信装置10と通信を行う受信装置20を含み、受信装置20は、無線伝送路を介した通信によって送信装置10から送信された信号を受信して、複数のサブキャリアそれぞれについての伝送路特性(伝送路情報)を取得する取得手段(除算部205および伝送路推定部206)と、伝送路情報に基づいて、複数のサブキャリアのうち、送信信号の伝送に用いない不使用サブキャリアを決定する決定手段(配置パターン決定部74)と、当該決定手段の決定結果を送信装置10に通知する通知手段とを有している。そして、送信装置10の第1通信手段は、受信装置20から通知された決定結果に基づいて、不使用サブキャリアに送信信号を含めないOFDMシンボルを生成する生成手段11と、無線伝送路を介した通信によって当該OFDMシンボルを送信する送信手段12とを有している。
【0091】
また、通信システム1は、送信装置10と通信を行う受信装置30を含み、受信装置30は、有線伝送路を介した通信によって送信装置10から送信された信号を受信して、複数のサブキャリアそれぞれについての伝送路情報を取得する取得手段(除算部205および伝送路推定部206)と、伝送路情報に基づいて、複数のサブキャリアのうち、送信信号の伝送に用いない不使用サブキャリアを決定する決定手段(配置パターン決定部74)と、当該決定手段の決定結果を送信装置10に通知する通知手段とを有している。そして、送信装置10の第1通信手段は、受信装置30から通知された決定結果に基づいて、不使用サブキャリアに送信信号を含めないOFDMシンボルを生成する生成手段11と、有線伝送路を介した通信によって当該OFDMシンボルを送信する送信手段12とを有している。
【0092】
このような通信システム1によれば、データの伝送に不適なサブキャリアに送信信号を乗せる可能性を低減することができるので、信頼性の高い通信を実現することができる。
【0093】
また特に、電力線通信では、使用する電気デバイス(電気機器)の種類に応じて、伝送路に与える影響が異なるため、使用する電気デバイスの種類ごとに、不適サブキャリアの発生パターンが異なる。このため、データの伝送に不適なサブキャリアに送信信号を乗せる可能性を低減する機能は、電力線通信を行う通信システム1において特に有効となる。
【0094】
<2.変形例>
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は、上記に説明した内容に限定されるものではない。
【0095】
例えば、上記実施形態では、送信装置10と受信装置20,30との間の通信を確立する際に、伝送路の状態に基づいて不使用サブキャリアを特定し、当該不使用サブキャリアを用いることなくデータの伝送を行う場合を例示したがこれに限定されない。具体的には、送信装置10と受信装置20,30との間の通信確立後において、伝送路の状態に基づいて不使用サブキャリアを特定し、当該不使用サブキャリアを用いることなくデータの伝送を行ってもよい。すなわち、通信中に、不使用サブキャリアを動的に変更する態様としてもよく、このような態様とした場合、伝送路の推定には、報知信号の代わりに送信信号を含んだ通常の信号が用いられることになる。
【符号の説明】
【0096】
1 通信システム
10 送信装置(第1通信装置)
11 OFDMシンボル生成手段(生成手段)
12 送信手段
20 受信装置(第2通信装置)
30 受信装置(第3通信装置)
31 有線伝送路
74 配置パターン決定部
84 多重器制御部
116 多重器
205 除算部
206 伝送路推定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信装置と、
前記第1通信装置と通信を行う第2通信装置と、
を備え、
前記第1通信装置は、
複数のサブキャリアで構成されるOFDM信号を用いて、第1伝送路を介した通信を行う第1通信手段と、
前記OFDM信号を用いて、前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を介した通信を行う第2通信手段と、
を有し、
前記第2通信手段は、前記第1通信手段の一部を共用し、
前記第2通信装置は、
前記第1伝送路を介した通信によって前記第1通信装置から送信された信号を受信して、前記複数のサブキャリアそれぞれについての伝送路情報を取得する取得手段と、
前記伝送路情報に基づいて、前記複数のサブキャリアのうち、送信信号の伝送に用いない不使用サブキャリアを決定する決定手段と、
前記決定手段の決定結果を前記第1通信装置に通知する通知手段と、
を有し、
前記第1通信装置の前記第1通信手段は、
前記決定結果に基づいて、前記不使用サブキャリアに送信信号を含めないOFDMシンボルを生成する生成手段と、
前記第1伝送路を介した通信によって前記OFDMシンボルを送信する送信手段と、
を有する通信システム。
【請求項2】
前記第2通信手段は、前記第1通信手段における前記生成手段を共用する請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記第2通信手段は、前記第1通信手段における前記生成手段と、前記第1通信手段における前記送信手段の一部とを共用する請求項1または請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記第1伝送路を介した通信および前記第2伝送路を介した通信のいずれか一方は、電力線通信であり、他方は、無線通信である請求項1から請求項3のいずれかに記載の通信システム。
【請求項5】
複数のサブキャリアで構成されるOFDM信号を用いて、第1伝送路を介した通信を行う第1通信手段と、
前記OFDM信号を用いて、前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を介した通信を行う第2通信手段と、
を備え、
前記第2通信手段は、前記第1通信手段の一部を共用し、
前記第1通信手段は、
通信先から通知される前記第1伝送路の状態を反映した情報に基づいて、前記複数のサブキャリアのうち、送信信号の伝送に用いない不使用サブキャリアに送信信号を含めないOFDMシンボルを生成する生成手段と、
前記第1伝送路を介した通信によって前記OFDMシンボルを送信する送信手段と、
を有する送信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−169966(P2012−169966A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30591(P2011−30591)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】