説明

通信システムおよび通信装置

【課題】パケットを適切に中継可能な通信システムを提供する。
【解決手段】通信システムは第1通信装置と複数の第2通信装置とを含む。パケットは、各パケットを識別するための情報であって発信元の第1通信装置が所定規則に従って順次発行する識別情報を有する。第2通信装置は処理部と記憶部を含む。記憶部には、受信済みのパケットの識別情報のうちで最新に発行された識別情報を格納される。処理部は、新たに受信したパケットの識別情報が記憶部内の識別情報に比べて新しく発行されたものであると判定した場合には、新たに受信したパケットを中継する。処理部は、新たに受信したパケットの識別情報が記憶部内の識別情報に比べて新しく発行されたものではないと判定した場合には、新たに受信したパケットを中継しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムおよび当該通信システムを構成する通信装置に係る。
【背景技術】
【0002】
従来より有線または無線による通信方式が利用されており、最近では有線通信の一つとして電力線を利用した電力線通信(Power Line Communication:PLC)が実用化されている。また、有線通信と無線通信との両方式を用いた通信システムが例えば特許文献1,2に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載された通信システムは、マスタ動作を行う無線ホストと、無線ホストと無線リンクにより通信を行う有線/無線ブリッジ装置と、有線/無線ブリッジ装置と有線リンクによりスレーブ動作の通信を行う複数のデバイスとを有している。この通信システムでは、有線/無線ブリッジ装置が無線リンクの通信帯域に応じて複数のデバイスとの転送制御を行う。
【0004】
また、特許文献2に記載された通信システムは、パーソナルコンピュータや携帯電話機等のエンド機器と、ルータやHUB等のリンク機器とを含んでいる。エンド機器およびリンク機器は、それぞれが有する通信インターフェース部によりネットワーク上の複数の有線または無線のリンクを介して各機器とデータを送受信する。
【0005】
エンド機器およびリンク機器は、リンク情報が格納されるリンクデータベースと、機器情報が格納される機器データベースと、機器間の通信経路の情報が格納される経路テーブル(リンクデータベースおよび機器データベースに基づいて作成される)とを有している。そして、エンド機器およびリンク機器は、自機とリンクできる機器を探索するリンク探索処理と、リンクした機器とリンク情報や機器情報等を交換する情報交換処理と、各機器間の通信経路の構築、切り替え、管理等を行う経路管理処理とを繰り返し実行する。
【0006】
そして、各機器は、上記の各種データベースおよび各種処理によって、通信相手の通信装置との間に確立された通信経路の通信状況をそれぞれ監視し、通信状況が変化したとき、通信相手との通信に用いる通信経路を、該通信相手の通信装置との間に確立可能な他の通信経路へ切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−217476号公報
【特許文献2】特開2007−221564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、通信システムには、伝送路上で信号(より具体的にはパケット)が衝突するのを回避するための手段、換言すれば複数の通信装置が同一の伝送路にアクセスする際の競合を回避する手段(いわゆるアクセス制御)が採用される。例えば、無線通信についてはCSMA/CA等が知られ、有線通信についてはCSMA/CD等が知られている。
【0009】
そのようなアクセス制御によれば、伝送路が使用中である場合、その伝送路が解放されるまで信号送出を待たなければならない。この際、例えば電波状態の悪化によって、待ち時間が長くなる場合がある。
【0010】
信号送出の待ち時間が長くなると、通信ネットワーク上にパケットが滞留する状況が起こりうる。そのような状況においても、各パケットを適切に伝送することが望まれている。
【0011】
かかる点に鑑み、本発明はパケットを適切に中継可能な通信システムを提供することを目的とする。また、本発明は、そのような通信システムを実現可能な通信装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る請求項1に記載の通信システムは、第1通信装置と、受信したパケットを中継する機能を有した複数の第2通信装置とを備え、前記パケットは、各パケットを識別するための情報であって発信元の前記第1通信装置が所定規則に従って順次発行する識別情報を有し、前記複数の第2通信装置のそれぞれは、受信済みのパケットの前記識別情報のうちで最新に発行された識別情報を格納するための記憶部と、処理部とを含み、前記処理部は、新たに受信したパケットの前記識別情報が、前記記憶部内に格納されている前記識別情報に比べて新しく発行されたものであるか否かを判定する判定処理を行い、前記判定処理において前記新たに受信したパケットの前記識別情報が前記記憶部内の前記識別情報に比べて新しいと判定した場合には、前記新たに受信したパケットを中継し、前記判定処理において前記新たに受信したパケットの前記識別情報が前記記憶部内の前記識別情報に比べて新しくないと判定した場合には、前記新たに受信したパケットを中継しない。
【0013】
本発明に係る請求項2に記載の通信システムは、請求項1に記載の通信システムであって、前記処理部は、前記新たに受信したパケットと、前記新たに受信したパケットの一つ前に受信したパケットとの受信間隔が、所定時間を超えていない場合には、前記判定処理を実行して前記新たに受信したパケットを中継するか否かを決定し、前記受信間隔が前記所定時間を超えている場合には、前記判定処理を実行せずに、前記新たに受信したパケットを中継する。
【0014】
本発明に係る請求項3に記載の通信システムは、請求項1または2に記載の通信システムであって、前記識別情報の発行に関する前記所定規則は、第1の整数から前記第1の整数よりも大きい第2の整数までインクリメントして順次選ばれる整数を前記識別情報として採用するという規則と、前記識別情報の値が前記第2の整数に達した場合には前記第1の整数に戻ってインクリメントを行うことによって、前記第1の整数から前記第2の整数までの整数を循環的に利用するという規則とを含み、前記処理部は、前記判定処理において、前記新たに受信したパケットの前記識別情報が所定の数値範囲内に在る場合には、前記新たに受信したパケットの前記識別情報は前記記憶部内の前記識別情報に比べて新しくないと判定し、前記第1の整数をN1とし、前記第2の整数をN2とし、前記記憶部内に格納されている前記識別情報の値をxとし、当該通信システムの構成から予め想定される前記パケットの最大滞留数の分だけ前記記憶部内の前記識別情報よりも前に発行された識別情報の値をyとした場合、前記処理部は、x>yのとき、前記所定の数値範囲としてy以上x以下の範囲を適用し、x≦yのとき、前記所定の数値範囲としてN1以上x以下の範囲と、y以上N2以下の範囲とを適用する。
【0015】
本発明に係る請求項4に記載の通信装置は、受信したパケットを中継する機能を有した通信装置であって、前記パケットは、各パケットを識別するための情報であって発信元の装置が所定規則に従って順次発行する識別情報を有し、前記通信装置は、受信済みのパケットの前記識別情報のうちで最新に発行された識別情報を格納するための記憶部と、処理部とを含み、前記処理部は、新たに受信したパケットの前記識別情報が、前記記憶部内に格納されている前記識別情報に比べて新しく発行されたものであるか否かを判定する判定処理を行い、前記判定処理において前記新たに受信したパケットの前記識別情報が前記記憶部内の前記識別情報に比べて新しいと判定した場合には、前記新たに受信したパケットを中継し、前記判定処理において前記新たに受信したパケットの前記識別情報が前記記憶部内の前記識別情報に比べて新しくないと判定した場合には、前記新たに受信したパケットを中継しない。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る請求項1に記載の通信システムおよび請求項4に記載の通信装置によれば、パケットの中継の要否を、パケットの識別情報の発行順序、換言すれば発行の新旧に基づいて決定する。このため、識別情報が同じであるか否かを判定材料にする構成に比べてより確実に、同じパケットが同じ通信装置によって再び中継されるのを回避できる。したがって、同じパケットが通信システム上を中継・転送され続けるのを防止できる。その結果、通信システムの伝送負荷を低減することができる。
【0017】
本発明に係る請求項2に記載の通信システムによれば、識別情報の発行がリセットされる場合、例えば第1通信装置の電源が再投入される場合に好適である。リセット後の識別情報は、第2通信装置が記憶部内に保有している識別情報よりも見かけ上、古くなる可能性が高いため、請求項2に記載の構成を採用しない場合には、リセット後に発信されるパケットが中継されず通信に支障が出てしまう。これに対し、請求項2に記載の通信システムによれば、例えば第1通信装置の電源再投入を所定時間以上あけて行うことにより、リセット直後から正常な通信を行うことができる。
【0018】
本発明に係る請求項3に記載の通信システムによれば、識別情報として第1の整数から第2の整数までの整数を循環的に利用するので、識別情報の個数を減らすことができる。また、識別情報の判定に所定の数値範囲(判定用の参照範囲)を導入したことにより、循環的な採番を行う本構成においても、識別情報の発行順序を適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態に係る通信システムの構成および往路中継処理を説明する模式図である。
【図2】実施の形態に係る第1通信装置の構成を説明するブロック図である。
【図3】実施の形態に係る第2通信装置の構成を説明するブロック図である。
【図4】実施の形態に係る暗号化処理を説明する模式図である。
【図5】実施の形態に係る要求パケットを説明する模式図である。
【図6】実施の形態に係る応答パケットを説明する模式図である。
【図7】実施の形態に係る往路中継処理を説明するフローチャートである。
【図8】実施の形態に係る往路中継処理を説明するフローチャートである。
【図9】実施の形態に係る復路中継処理を説明するフローチャートである。
【図10】実施の形態に係る復路中継処理を説明する模式図である。
【図11】実施の形態に係る往路および復路の中継処理を整理して示すシーケンス図である。
【図12】実施の形態に係る中継済み判定処理の第1例を説明するフローチャートである。
【図13】実施の形態に係る中継済み判定処理の第2例を説明するフローチャートである。
【図14】実施の形態に係る中継済み判定処理の第2例を説明する模式図である。
【図15】実施の形態に係る中継済み判定処理の第2例を説明する模式図である。
【図16】実施の形態に係る中継済み判定処理の第3例を説明するフローチャートである。
【図17】実施の形態に係る電力量取得処理を説明するシーケンス図である。
【図18】実施の形態に係る電力量取得処理を説明する模式図である。
【図19】実施の形態に係るセンサ状態取得処理を説明するフローチャートである。
【図20】実施の形態に係るセンサ状態取得処理を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に本発明の実施の形態に係る通信システム1の模式図を示す。図1に示すように、通信システム1は、第1通信装置10と、複数の第2通信装置20とを含んでいる。第1通信装置10は通信システム1において中心的・基幹的な装置、いわゆる親局装置として機能する。これに対し、第2通信装置20は子局装置として、または第1通信装置10から送信された情報を他の第2通信装置20へ中継する中継局装置として機能する。
【0021】
なお、ここでは6台の第2通信装置20を例示し、これらを区別する場合は符号21〜26を用いることにする。なお、第2通信装置20の台数は6台に限定されるものではない。
【0022】
具体的な構成例は後に説明するが、第1通信装置10は電力線通信が可能に構成されており、他方、第2通信装置20は電力線通信と無線通信との両方が可能に構成されている。これにより、通信システム1では、第1通信装置10と第2通信装置20との間で電力線30を用いて情報の送受信を行う通信ネットワークが構築されるとともに、第2通信装置20どうしの間で電力線30と無線とを用いて情報の送受信を行う通信ネットワークが構築される。
【0023】
図1に例示の構成では、第1通信装置10および第2通信装置21〜23は電力線31に接続され、第2通信装置24,25は電力線32に接続され、第2通信装置26は電力線33に接続されている。これら3つの電力線31〜33は、電力線30が一般住宅等の宅内電気設備構造に用いられる単相3線式配線である場合を模式的に表わしている。すなわち、当該3線式配線において、3本の配線のうちから任意に選ばれる第1の配線と第2の配線で電力線31が構成され、第2の配線と第3の配線で電力線32が構成され、第3の配線と第1の配線で電力線33が構成される。なお、通信システム1を適応可能な電力線30は単相3線式に限定されるものではない。
【0024】
ここで、図2のブロック図に第1通信装置10の構成例を示す。なお、図2には、説明のために、電力線30等も併記している。図2に例示する構成では、第1通信装置10は、配線10aと、電力線通信部10bと、処理部10cと、記憶部10dと、ネットワーク通信部10eと、接続端子10fと、入力部10gとを含んでいる。
【0025】
配線10aは、電力線30と第1通信装置10との間を電気的に接続するものであり、電力線通信部10bに接続されている。配線10aが電力線30(図1の例では電力線31)に接続されることにより、電力線30と第1通信装置10との間に電気的接続が確立される。配線10aと電力線30との接続は例えば差込接続器(差込プラグとプラグ受け)によって可能である。
【0026】
電力線通信部10bは、電力線30を介した電力線通信を行うためのインターフェース(I/F)を含んでいる。また、電力線通信部10bは、電力線30から第1通信装置10内の各部へ電力を供給するためのインターフェースを含んで構成することも可能である。なお、上記の電力線通信インターフェースおよび電力供給インターフェースはそれぞれ例えば公知の各種インターフェース回路を適用することが可能である。
【0027】
処理部10cは、第1通信装置10の動作等に関する種々の処理を行い、また必要に応じて電力線通信部10b等を制御する。処理部10cは、電力線通信部10bと、記憶部10dと、ネットワーク通信部10eと、入力部10gとに接続されている。なお、図2には処理部10cを中心にして、いわゆるスター型の接続形態で電力線通信部10b等が接続されている場合を例示しているが、例えばバス型、リング型の接続形態を適用してもよい。
【0028】
ここでは、処理部10cによる各種処理がソフトウェアによって実現される場合を例示する。この場合、処理部10cは例えばマイクロコンピュータを含んで構成され、当該マイクロコンピュータがプログラムに記述された各処理ステップ(換言すれば手順)を実行する。これにより、マイクロコンピュータは処理ステップに対応する各種手段として機能し、または、マイクロコンピュータによって処理ステップに対応する各種機能が実現される。なお、処理部10cによって実現される各種手段または各種機能の一部または全部をハードウェアによって実現することも可能である。
【0029】
記憶部10dは、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性メモリ(EPROM(Erasable Programmable ROM)等)、ハードディスク装置等の各種記憶装置の1つまたは複数で構成されている。記憶部10dは、処理部10cが実行するプログラムを格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。
【0030】
記憶部10dは、また、各種の情報やデータ等も格納可能である。記憶部10dが格納している情報等として例えば第1通信装置10を一意に識別するための情報がある。かかる装置識別情報は、例えば後述するようにパケットの送信先として利用される。装置識別情報は、例えばMACアドレス、IPアドレス等を使用可能であるし、また、例えば通信システム1において予め設定された番号、符号等を使用可能である。ここでは、説明を分かりやすくするために、識別情報を装置番号とも呼び、第1通信装置10の装置番号を”10”と表記することにする。
【0031】
ネットワーク通信部10eは、第1通信装置10の外部に設けられているネットワーク40との通信を行うためのインターフェース、例えばイーサネット(登録商標)規格のインターフェースを含んでいる。ネットワーク通信部10eは、接続端子部10fに接続されており、当該端子部10fを介してネットワーク40に接続される。ネットワーク40は例えばいわゆるインターネット、LAN等であり、本通信システム1によって構築されるネットワークとは別個のものである。なお、図2にはネットワーク40には第1通信装置10と通信を行うセンター45を併記している。
【0032】
入力部10gは、ユーザが第1通信装置10に対して指示等を入力するためのインターフェースである。入力部10gは、例えばボタン、スイッチ、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力装置を含んで構成することが可能である。また、入力部10gは、接触型もしくは非接触型もしくは光学式の情報読み取り器(例えばカードリーダ、コードリーダ)を含んでいてもよいし、また、音声入力装置等を含んでいてもよい。
【0033】
図3のブロック図に第2通信装置20の構成例を示す。なお、図3には、説明のために、電力線30等も併記している。図3に例示する構成では、第2通信装置20は、配線20aと、電力線通信部20bと、処理部20cと、記憶部20dと、無線通信部20eと、接続端子20fと、電力測定部20gと、デバイス通信部20hと、通知部20iとを含んでいる。
【0034】
配線20aは、電力線30と第2通信装置20との間を電気的に接続するものであり、電力線通信部20bに接続されている。配線20aが電力線30(図1の例では電力線31〜33のいずれか)に接続されることにより、電力線30と第2通信装置20との間に電気的接続が確立される。配線20aと電力線30との接続は例えば差込接続器(差込プラグとプラグ受け)によって可能である。
【0035】
また、配線20aは、電力線30と接続端子20fとの間を電気的に接続している。このため、接続端子20fに電気器等のデバイス51を接続する場合には、第2通信装置20を介して、当該装置20の外部に設けられたデバイス51へ電力を供給することが可能である。接続端子20fは例えば差込接続器のプラグ受けによって構成可能である。
【0036】
電力線通信部20bは、電力線30を介した電力線通信を行うためのインターフェースを含んでいる。また、電力線通信部20bは、電力線30から第2通信装置20内の各部へ電力を供給するためのインターフェースを含んで構成することも可能である。なお、上記各インターフェースは例えば電力線通信部10b(図2参照)のものと同様に構成可能である。
【0037】
処理部20cは、第2通信装置20の動作等に関する種々の処理を行い、また必要に応じて電力線通信部20b等を制御する。処理部20cは、電力線通信部20bと、記憶部20dと、無線通信部20eと、電力測定部20gと、デバイス通信部20hと、通知部20iとに接続されている。なお、各部間の接続は図3に例示の形態に限られるものではない。
【0038】
ここでは、処理部20cによる各種処理がソフトウェアによって実現される場合を例示する。この場合、処理部20cは、上記の処理部10c(図2参照)と同様に構成可能である。なお、処理部20cによって実現される各種手段または各種機能の一部または全部をハードウェアによって実現することも可能である。
【0039】
記憶部20dは、上記の記憶部10d(図2参照)と同様に構成可能であり、処理部20cが実行するプログラム等を格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。
【0040】
また、記憶部20dは上記の第1通信装置10の装置識別情報と同様な識別情報を格納しており、当該識別情報によってその第2通信装置20が一意に識別される。ここでは、説明を分かりやすくするために、図1に例示される6台の第2通信装置21〜26について、それぞれの装置識別情報(装置番号)を”21”〜”26”と表記し、また、これらの第2通信装置21〜26を区別しない場合は”20”と表記することにする。
【0041】
無線通信部20eは、他の第2通信装置20との間で無線通信を行うためのインターフェース、例えばZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の規格に従ったインターフェースを含んでいる。
【0042】
ここで、無線通信部20eによる無線通信が可能範囲(換言すれば無線電波の到達距離)は例えば第2通信装置20の設置場所等に影響される場合がある。かかる点について、図1には無線通信部20eによる無線通信可能範囲を破線円で模式的に例示している。例えば、第2通信装置22,23,25の無線通信可能範囲は、第2通信装置21,24,26の同範囲に比べて狭く例示されている。また、第2通信装置21,24,26の無線通信可能範囲は当該装置21,24,26を中心にした略円形範囲に例示されている。これに対し、第2通信装置22,23,25の無線通信可能範囲は図示下方側において狭く例示されている。
【0043】
また、図1の例示では、第2通信装置21の無線通信可能範囲は第2通信装置22,24の同範囲と重なっており、また、第2通信装置26の無線通信可能範囲は第2通信装置24の同範囲と重なっている。このため、無線通信可能範囲が重なっている第2通信装置20どうしは直接に無線通信が可能である。また、無線通信可能範囲が重なっている第2通信装置20を中継局として利用することにより、その先の第2通信装置20と間接的に無線通信することも可能である。
【0044】
一方、図1の例示では、第2通信装置23,25は、他の第2通信装置20と無線通信可能範囲が重なっていないので、他の通信装置20との間で無線通信は行われない。
【0045】
図3に戻り、電力測定部20gは、配線20aに対して設置されており、配線20aを流れる電力(電力量)を測定する計器を含んでいる。当該計器としては例えば公知の各種方式を適用可能である。電力測定部20gによれば、接続端子20fに接続されたデバイス51の消費電力量を測定することが可能である。
【0046】
デバイス通信部20hは、無線LAN機能を有する機器等のデバイス52との間で通信を行うためのインターフェースを含んでいる。ここでは、デバイス通信部20hが無線通信を行う場合を例示するが、有線通信を行うように構成することも可能である。なお、上記の無線通信用インターフェースとして、例えばZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の規格に従ったインターフェースを適用することが可能である。このため、デバイス通信部20hとの無線通信可能な範囲にデバイス52が設けられている場合には、当該デバイス通信部20hによって第2通信装置20とデバイス52とが無線通信で接続される。
【0047】
なお、デバイス52は複数の第2通信装置20と無線接続される場合もある。また、デバイス52が、接続端子20fに接続されて電力供給を受ける場合もある。
【0048】
デバイス通信部20hと上記無線通信部20eとは、混信を防止するために、互いに異なる規格で構成され、または同じ規格であっても異なるチャネルで無線通信を行うように構成されている。
【0049】
図3には第2通信装置20との接続形態が異なる2種類のデバイス51,52が、第2通信装置20に接続される場合を例示している。これに対し、デバイス51,52のうちの一方のみが第2通信装置20に接続されていてもよいし、または、いずれのデバイス51,52も第2通信装置20に接続されていなくてもよい。
【0050】
通知部20iは、第2通信装置20の動作状態等を当該装置20の外部に居るユーザに通知するためのインターフェースである。通知部20iは、例えば1つまたは複数の発光素子(LED等)、液晶ディスプレイ等のように視覚的に通知を行う装置を含んで構成可能である。また、視覚的に通知を行う装置に加えてもしくは代えて、警報音や音声等によって聴覚的に通知を行う装置を含めて通知部20iを構成することも可能である。
【0051】
なお、通信システム1に用いられる第2通信装置20の全てが同じ構成を有している必要はない。例えば電力測定部20gと、デバイス通信部20hと、通知部20iとのうちの1つまたは複数を有さない第2通信装置20を用いることも可能である。また、上記例示の構成に対してさらに追加要素を有する第2通信装置20を用いてもよい。
【0052】
通信装置10,20は送信すべき情報をパケットによって送信する。このとき、通信装置10,20は、送信情報に対応したパケットを生成し、当該パケットを例えば暗号鍵を用いて暗号化する(図4参照)。また、通信装置10,20は、受信したパケットを例えば暗号鍵を用いて復号化する。このため、通信装置10,20は同じ暗号鍵を保有している。暗号鍵は第1通信装置10に対して一意に、すなわち固有に設定されるものである。このため、第1通信装置10が異なる他の通信システム1との間でパケットの流入・流出が生じても、当該パケットが利用されることがない。このため、良好なセキュリティが得られる。
【0053】
暗号鍵を用いる方式として例えばAESがある。なお、暗号化/復号化の方式は種々のものを採用可能である。パケットの生成および暗号化/復号化処理は処理部10c,20cによって行われる。なお、処理部10c,20cは暗号化処理において、暗号化すべきパケットのビット数を例えばゼロ・パディングによって適宜調整する。
【0054】
図5および図6に通信システム1で用いるパケットを例示する。図5には、第1通信装置10が第2通信装置20に対して所定の要求を行う場合に用いる要求パケット100の一例を模式的に図示している。また、図6には、上記要求に対して第2通信装置20が応答を行う場合に用いる応答パケット200の一例を模式的に図示している。
【0055】
図5に例示された要求パケットは情報102,104,106,110を含んでいる。なお、図5の図示は、要求パケット100内における情報102,104,106,110の記述位置およびデータ長を限定するものではない。
【0056】
情報102は、送信先の第2通信装置20を指定するための情報であり、例えば各第2通信装置20を区別するための識別情報が記述される。なお、ここでは要求パケット100は全ての第2通信装置20へ送信されるものとし、全ての第2通信装置20を送信先とする旨の情報が送信先装置情報102に記述される。
【0057】
情報104は、要求パケット100を識別するための情報であり、ここでは要求パケット100のシーケンス番号を例示する。この場合、シーケンス番号104は例えば0(ゼロ)から始まり要求パケットを生成する度にインクリメントされる数字が対応する。
【0058】
情報106は、第2通信装置20に要求する処理に関する情報である。例えば、要求する処理に対応してコマンドが予め設定され、その要求コマンドが情報106として与えられる。
【0059】
情報110は、要求パケット100が通信システム1において辿る経路に関する情報である。具体的には当該経路は、各通信装置10,21〜26が、要求パケット100の送信(第2通信装置20が中継局として行う再送信も含む)の際に、通信装置10,21〜26の区別と通信方式の区別と組を1単位(経路単位)として、経路情報110に追記していくことにより記録される。
【0060】
なお、説明を分かりやすくするために、通信装置10,21〜26の区別を上記の装置番号”10”,”21”〜”26”で表記し、電力線通信による送信を”P”と表記し、無線通信による送信を”R”と表記し、上記2つの区別項目を”:”で繋ぐことにする。例えば第1通信装置10による電力線通信を用いた送信を示す経路単位は”10:P”と表記され、例えば第2通信装置21による無線通信を用いた送信を示す経路単位は”21:R”と表記される(図1参照)。
【0061】
また、経路単位を”/”で区切って末尾に続けることにより、経路単位の追記を表記することにする。例えば、図1の例において、要求パケット100が、第1通信装置10から電力線通信で送信され、その後、第2通信装置21から無線通信で再送信(中継)された場合、経路情報110の内容は”10:P/21:R”と表記される。また、当該要求パケット100がさらに第2通信装置24によって電力線通信で中継された場合、経路情報110の内容は”10:P/21:R/24:P”と表記される。
【0062】
なお、図1ではさらに説明を分かりやすくするために、”10:P”等の表記を囲む四角形の図示を工夫している。すなわち、実線の四角形は電力線通信による送受信を表し、破線の四角形は無線通信による送受信を表している。また、太い実線および破線の四角形はパケットの送信を表し、細い実線および破線の四角形はパケットの受信を表している。
【0063】
図6に例示された応答パケット200は情報202,204,206,208,210を含んでいる。なお、図6は、応答パケット200内における情報202,204,206,208,210の記述位置およびデータ長を示すものではない。
【0064】
情報202は、上記情報102(図5参照)と同様に、送信先装置情報が記述される。但し、応答パケット200では次に受信するべき第2通信装置20が特定され、その通信装置20の識別情報(装置番号)が送信先装置情報202に記述される。
【0065】
後述のように応答パケット200は、対応する要求パケット100の送信経路すなわち往路を遡って第1通信装置10へ送信される。このとき、応答パケット200が辿る経路すなわち復路において次の送信先となる第2通信装置20が、情報204によって指定される。情報204は、例えば、下記の経路情報210に記述された経路単位を路順に順次指し示すポインタによって実現される。
【0066】
情報206は、上記情報106(図5参照)と同様の要求コマンドに関する情報であり、要求パケット100の要求コマンド106と同じ情報が記述される。
【0067】
情報208は、応答内容に関する情報であり、後に例示する。
【0068】
情報210は、応答パケット200が辿る復路に関する情報である。当該情報210は、応答パケット200の送信起源となる第2通信装置20が、対応する要求パケット100の経路情報110に基づいて生成する。例えば要求パケット100の経路情報110をそのままコピーすることにより、または、例えば経路情報110に記述された上記経路単位を逆順にコピーすることにより、経路情報210が生成される。いずれのコピー方式によっても両経路情報110,210は同じ内容を含むことになる。
【0069】
なお、経路情報210は復路上の第2通信装置20によって情報が追記されるものではない。復路の経路情報210も、往路の経路情報110と同様の表記方法を用いることにする。
【0070】
ここで、例えば復路ポインタ204の値”0”を経路情報210中の先頭の経路単位に対応付け、復路ポインタ204の値”1”,”2”,・・・を経路情報210中の先頭から2番目、3番目、・・・の経路単位に順次対応付ける場合、復路ポインタ204の値をインクリメントまたはデクリメントすることによって、経路情報210中の経路単位を順番に辿ることが可能である。
【0071】
なお、パケット100,200を他の情報(誤り検出符号等)をさらに含めて構成してもよい。例えば誤り検出符号を含む場合には、データ誤りが生じたパケット100,200は利用しない等の措置を、処理部10c,20cによって、講じることが可能である。
【0072】
図7に、要求パケット100を受信した第2通信装置20の動作、より具体的には要求パケット100を中継する場合の処理(往路中継処理)S2のフローチャートを例示する。
【0073】
まず、第2通信装置20が要求パケット100を受信すると(ステップS20)、当該パケット100は処理部20cによって復号化される(ステップS22)。
【0074】
この受信した要求パケット100の直前の送信元は、第1通信装置10である場合もあるし、他の第2通信装置20である場合もある。また、当該要求パケット100は電力線通信部20bが受信する場合もあるし、無線通信部20eが受信する場合もある。例えば図1の例示において第2通信装置22は、第1通信装置10から電力線通信によって直接(すなわち他の第2通信装置20による中継が介在することなく)要求パケット100を受信することが可能であるし、また、第2通信装置21による中継を経て無線通信によって要求パケット100を受信することも可能である。
【0075】
そして、処理部20cは、当該要求パケット100の中継、換言すれば転送が必要であるか否かを判定する(ステップS24)。この中継要否判定ステップS24の一例を図8のフローチャートに示す。
【0076】
図8に例示される中継要否判定ステップS24では、処理部20cは、まず、中継しようとしている要求パケット100が、当該第2通信装置20によって既に中継済みであるか否かを判定する(ステップS24a)。そして、既に中継済みであると判定した場合、処理部20cは、受信した要求パケット100の中継処理を行うことなく、往路中継処理S2(図7参照)を終了する。他方、中継済みでないと判定した場合、処理部20cは下記のステップS24bを実行する。
【0077】
判定ステップS24aは、例えば要求パケット100に含まれるシーケンス番号104(図5参照)を利用することによって実行可能である。具体的には、処理部20cは、中継を行った要求パケット100のシーケンス番号104を記憶部20dに記録しておき、当該記録との照合によって、中継しようとしている要求パケット100が既に中継済みであるか否かを判定することが可能である。
【0078】
このように判定ステップS24aによれば、第2通信装置20は、シーケンス番号104が同じ要求パケット100、すなわち送信内容が同じ(ここでは要求内容が同じ)パケット100を複数回受信した場合には、2回目以降に受信した要求パケット100を中継しない。このため、送信内容が同じパケット100が通信システム1上を無限に中継・転送され続けるのを防止することができる。これにより、通信システム1の伝送負荷を低減することができる。
【0079】
ステップS24bでは、処理部20cは、受信した要求パケット100のこれまでの中継回数(中継段数)が、予め設定された最大中継回数よりも少ないか否かを判定する。換言すれば、今回中継を行うことによって最大中継回数を超えるか否かを判定する。そして、これまでの中継回数が最大中継回数よりも少ないと判定した場合、処理部20cは中継要否判定ステップS24を終えて次のステップS26を実行する。他方、これまでの中継回数が最大中継回数に達していると判定した場合、処理部20cは、受信した要求パケット100の中継処理を行うことなく、往路中継処理S2(図7参照)を終了する。
【0080】
上記の最大中継回数は、例えばプログラム中に予め記述しておくことにより、または、例えば記憶部20dに予め格納しておくことにより、ステップS24bで利用可能である。
【0081】
当該ステップS24bでの判定処理によれば、送信内容が同じ(ここでは要求内容が同じ)パケット100が通信システム1上を無限に中継・転送され続けるのを防止することができる。これにより、通信システム1の伝送負荷を低減することができる。
【0082】
なお、ステップS24a,S24bの実行順序は上記の逆であってもよい。
【0083】
ステップS24の終了後、処理部20cは、要求パケット100が無線通信によって受信されたか否かを分別する(ステップS26。図7参照)。かかる分別の結果、無線通信による受信の場合、処理部20cは電力線通信処理S28と無線通信処理S30との両方を行う。他方、無線通信による受信ではない場合、すなわち電力線通信による受信の場合、処理部20cは無線通信処理S30だけを行う。
【0084】
図7に例示の電力線通信処理S28では、処理部20cは、今回の中継を行う第2通信装置20の装置番号と、今回の中継で用いる通信方式(ここでは電力線通信)とを要求パケット100の経路情報110に追記する(ステップS28a)。そして、処理部20cは、要求パケット100を暗号化し(ステップS28b)、電力線通信部20b(図3参照)を制御して要求パケット100を送信する(ステップS28c)。
【0085】
図7に例示の無線通信処理S30では、処理部20cは、今回の中継を行う第2通信装置20の装置番号と、今回の中継で用いる通信方式(ここでは無線通信)とを要求パケット100の経路情報110に追記する(ステップS30a)。そして、処理部20cは、要求パケット100を暗号化し(ステップS30b)、無線通信部20e(図3参照)を制御して要求パケット100を送信する(ステップS30c)。
【0086】
ここで、図1に例示した範囲では、上記往路中継処理S2により、要求パケット100は次のように伝送されるものとする。なお、ここでは、異相の電力線31〜33の間では電力線通信は行われないものとする。
【0087】
第1通信装置10から送信された要求パケット100は、電力線31を介して第2通信装置21〜23によって受信され、各第2通信装置21〜23の無線通信によって再送信される(ステップS26,S30参照)。
【0088】
第2通信装置21から再送信された要求パケット100は、無線通信可能範囲が重なっている第2通信装置22,24に受信される。しかし、第2通信装置22は上記のように当該受信パケット100を既に中継しているので、第2通信装置21が中継したパケット100は再送信しない(ステップS24a参照)。他方、第2通信装置24は、無線通信で受信した当該受信パケット100を、電力線通信と無線通信とによって再送信する(ステップS26,S28,S30参照)。
【0089】
また、第2通信装置22から再送信された要求パケット100は、無線通信可能範囲が重なっている第2通信装置21に受信されるが、第2通信装置21は上記のように既に中継を行っているので、第2通信装置22が中継したパケット100の再送信は行わない(ステップS24a参照)。
【0090】
また、第2通信装置23から再送信された要求パケット100は、無線通信可能範囲が重なっている第2通信装置20が無いので、他の第2通信装置20には伝達されない。
【0091】
上記のように第2通信装置24から電力線通信によって再送信された要求パケット100は、第2通信装置25によって受信され無線通信を用いて再送信される(ステップS26,S30参照)。しかし、第2通信装置25と無線通信可能範囲が重なっている第2通信装置20が無いので、要求パケット100は第2通信装置25から先には伝達されない。
【0092】
また、第2通信装置24から無線通信によって再送信された要求パケット100は、第2通信装置26によって受信され、当該第2通信装置26から電力線通信と無線通信とによって再送信される(ステップS26,S28,S30参照)。
【0093】
次に、図9に、応答パケット200を受信した第2通信装置20の動作、より具体的には応答パケット200を中継する場合の処理(復路中継処理)S6のフローチャートを例示する。
【0094】
なお、ここでは、応答パケット200の送信起点となる第2通信装置20が、応答パケット200の生成ステップ(後述のステップS4参照)において、要求パケット100の経路情報110(図5参照)を上記のように逆順にコピーして経路情報210を初期設定し、また、復路ポインタ204(図6参照)を”0”に初期設定する場合を例示する。
【0095】
まず、第2通信装置20が他の第2通信装置20から応答パケット200を受信すると(ステップS50)、当該パケット200は処理部20cによって復号化される(ステップS52)。なお、応答パケット200の送信起点となる第2通信装置20ではステップS50,S52は行われない。
【0096】
そして、処理部20cは、復路ポインタ204をインクリメントし(ステップS54)、送信先装置情報202をセットする(ステップS56)。具体的には、処理部20cは、インクリメントされた復路ポインタ204が指し示す経路単位を分析し、当該経路単位に記述された第2通信装置20の装置番号を送信先装置情報202にセットする。そして、処理部20cは応答パケット200を暗号化する(ステップS58)。
【0097】
次に、処理部20cは、次の送信先に指定した第2通信装置20が往路において使用した通信方式を分別する(ステップS60)。具体的には、上記ステップS54でインクリメントした復路ポインタ204が指し示す経路単位を分析し、当該経路単位に記述された通信方式を分別する。
【0098】
上記ステップS60で往路は無線通信であると分別された場合、処理部20cは無線通信によって応答パケット200を送信する(ステップS62)。逆に往路は電力線通信であると分別された場合、処理部20cは電力線通信によって応答パケット200を送信する(ステップS64)。
【0099】
ここで、図10に応答パケット200の伝送例を図示する。なお、図10は、要求パケット100の上記伝送例(図1参照)に基づいて第2通信装置25から第1通信装置10へ応答パケット200が伝送される場合を説明するものであり、通信システム1の一部を抜き出して図示している。
【0100】
まず、図1の伝送例によれば、第2通信装置25が受信した要求パケット100の経路情報110には”10:P/21:R/24:P”という情報が記録されている。このため、第2通信装置25は、当該経路情報110の経路単位の並びを反転させた”24:P/21:R/10:P”という情報を応答パケット200の経路情報210に記録する(図10参照)。また、第2通信装置52は、復路ポインタ204を”0”に初期設定する(ステップS54参照)。これにより、復路ポインタ204は先頭の経路単位”24:P”を指すことになる。なお、図10では、説明を分かりやすくするために、復路ポインタ204を矢印で模式的に図示している。
【0101】
復路ポインタ204が指し示す経路単位”24:P”に基づき、第2通信装置25は、送信先に第2通信装置24をセットし(ステップS56参照)、電力線通信によって応答パケット200を送信する(ステップS60,S64参照)。
【0102】
第2通信装置24は、受信した応答パケット200の復路ポインタ204をインクリメントする(ステップS54参照)。そして、復路ポインタ204が指し示す経路単位”21:R”に基づき、第2通信装置24は、第2通信装置21へ無線通信によって応答パケット200を送信する(ステップS54,S56,S60,S62参照)。
【0103】
第2通信装置21は、受信した応答パケット200の復路ポインタ204をインクリメントする(ステップS54参照)。そして、復路ポインタ204が指し示す経路単位”10:P”に基づき、第2通信装置21は、第1通信装置10へ電力線通信によって応答パケット200を送信する(ステップS54,S58,S60,S64参照)。
【0104】
図10に例示した応答パケット200の伝送を、対応する要求パケット100の伝送とともに、図11のシーケンス図にまとめて図示する。なお、図11において、ステップS0は、第1通信装置10による要求パケット100の送信処理であり、当該パケット100の初期生成処理も含む。また、ステップS4は、第2通信装置10による応答パケット200の初期生成およびその送信処理である。
【0105】
上記のように、第2通信装置20は、第1通信装置10から送信されたパケット100を、第1通信装置10から直接に、または、他の第2通信装置20を介して、電力線通信によって受信した場合には、無線通信によって当該受信したパケット100を中継する。他方、第1通信装置10から送信されたパケット100を、他の第2通信装置20を介して、無線通信によって受信した場合には、無線通信と電力線通信との両方によってパケット100を中継する。
【0106】
このため、第1通信装置10から送信されたパケットは、複数の第2通信装置20によって次々に中継されて、各第2通信装置20へ配信される。このため、パケット配信時の通信システム1の全体構成や通信状態に応じて、動的で柔軟にネットワークが構築される。しかも、各第2通信装置20は通信システム1上のネットワーク構成やその変化を例えばデータベース等によって把握しておく必要がないので、第2通信装置20を簡易な構成とすることができ、これにより通信システム1を安価にすることができる。
【0107】
また、上記のように、要求パケット100が辿る経路(往路)を記録しておき、応答パケット200は当該記録に基づいて通信システム上を進行する。このため、応答パケット00を効率的に第1通信装置10へ送信することができる。
【0108】
さて、上記では、往路中継処理S2(図7参照)がパケットの中継の要否を判定する処置(図7中のステップS24を参照)を含み、当該処理S24が、中継対象の要求パケット100が既に中継済みであるか否かを判定する処理(図8中のステップS24aを参照)を含んでいる例を説明した。以下では、中継済み判定処理S24aの具体例を説明する。
【0109】
まず、中継済み判定処理S24aの第1例を説明する。この第1例に係る中継済み判定処理S24a1では、概説すれば、新たに受信した要求パケット100のシーケンス番号104(図5参照)が、それまでに受信した要求パケット100のシーケンス番号104のうちで最新に発行されたシーケンス番号104と同じ場合、当該新たに受信した要求パケット100を中継済みであるとして扱い、破棄する。
【0110】
上記の最新に発行されたシーケンス番号104は、記憶部20dに格納され、発行順序がさらに新しいシーケンス番号104を有した要求パケット100が受信された場合には更新される。
【0111】
図12に、第1例に係る中継済み判定処理S24a1のフローチャートを例示する。図12の例では、中継済み判定処理S24a1は、既述のステップS22,S24b(図7および図8参照)間で実行される。
【0112】
図12の例によれば、処理部20cは、新たに受信した要求パケット100のシーケンス番号104が、記憶部20d内に格納されているシーケンス番号104と同じであるか否か、換言すれば等しいか否かを判定する(ステップS24a11)。
【0113】
そして、上記の2つのシーケンス番号104が同じであると判定された場合、処理部20cは、上記の新たに受信した要求パケット100を中継することなく、往路中継処理S2(図7参照)を終了する。
【0114】
他方、上記の2つのシーケンス番号104が同じではない、すなわち異なると判定された場合、処理部20cは、記憶部20d内のシーケンス番号104を、上記の新たに受信した要求パケット100のシーケンス番号104に更新する(ステップS24a12)。その後、処理部20cは、往路中継処理S2の後続の各種処理を実行する。これにより、上記の新たに受信した要求パケット100が中継される。
【0115】
なお、シーケンス番号更新ステップS24a12は、例えば、パケット送出ステップS28,S30(図7参照)の後に実行してもよい。
【0116】
ところで、一般に、通信システムには、伝送路上で信号(より具体的にはパケット)が衝突するのを回避するための手段、換言すれば複数の通信装置が同一の伝送路にアクセスする際の競合を回避する手段(いわゆるアクセス制御)が採用される。例えば、無線通信についてはCSMA/CA等が知られ、有線通信についてはCSMA/CD等が知られている。本実施の形態1に係る通信システム1にも各種方式のアクセス制御を採用可能である。
【0117】
ここでは、そのようなアクセス制御と、上記の中継済み判定処理S24a1とが組み合わされた構成を考察する。
【0118】
例えば、図1を参照し、第1通信装置10が要求パケット100(シーケンス番号104が”120”であるとする)を発信し、当該要求パケット100が第1段目の第2通信装置21で無線中継されて第2段目の第2通信装置24へ到達したとする。なお、この時点において、第1段目の通信装置21の記憶部20dには最新のシーケンス番号104として”120”が格納されている。
【0119】
また、当該要求パケット100は、アクセス制御の下、第2段目の通信装置24において未だ中継待ちの状態にあるとする。例えば、第2段目の通信装置24がキャリアセンスを行った結果、他の第2通信装置20が伝送路(ここでは有線または無線の伝送路)を使用中であることが判明した場合、第2段目の通信装置24は、パケットの衝突を回避するために、受信した要求パケット100の送出を見合わせている状態にあるとする。なお、無線通信では、例えば電波状態の悪化によって、無線伝送路の使用時間、換言すれば中継待ちの時間が長くなる場合がある。
【0120】
このような状況下において、次の要求パケット100(シーケンス番号104が”121”であるとする)が第1通信装置10から発信され、第1段目の通信装置21で中継された場合、第1段目の通信装置21の記憶部20dに格納されている最新のシーケンス番号104は”121”に更新される。
【0121】
その後、第2段目の通信装置24が、上記の中継待ち状態が解除されて、先の要求パケット100を送出すると、当該先の要求パケット100が第1段目の通信装置21によって再び中継・転送されてしまう。
【0122】
これは、上記の中継済み判定処理S24a1(図12参照)が、比較対象のシーケンス番号104が同じであるか否かを判定するステップS24a11を採用していることに拠る。より具体的には、第1段目の通信装置21が先の要求パケット100(シーケンス番号は”120”)を再び受信した時点で、第1段目の通信装置21が保有している最新のシーケンス番号104は”121”であるため、第1段目の通信装置21は再度受信した先の要求パケット100を未だ中継していないと誤判定してしまうのである。
【0123】
このようにして同じ要求パケット100が中継・転送され続けると、通信システム1上、換言すれば通信ネットワーク上にパケットが滞留してしまう。また、パケットの滞留は、上記の中継待ち状態を増やす要因になるため、さらなるパケット滞留を招いてしまう。その結果、通信システム1の伝送負荷が増大することになる。
【0124】
上記のような誤判定は、次に説明する中継済み判定処理S24a(図8参照)の第2例によって解消可能である。この第2例に係る中継済み判定処理S24a2では、概説すれば、新たに受信した要求パケット100のシーケンス番号104と、それまでに受信した要求パケット100のシーケンス番号104のうちで最新に発行されたシーケンス番号104との発行順序、換言すれば発行の新旧を判定し、その判定結果に基づいて中継の要否を決定する。
【0125】
図13に、第2例に係る中継済み判定処理S24a2のフローチャートを例示する。図13の例では、中継済み判定処理S24a2は、既述のステップS22,S24b(図7および図8参照)間で実行される。
【0126】
図13の例によれば、処理部20cは、新たに受信した要求パケット100のシーケンス番号104が、記憶部20d内に格納されているシーケンス番号104に比べて新しく発行されたものであるか否かを判定する(ステップS24a21)。
【0127】
なお、既述の中継済み判定処理S24a1(図12参照)と同様に、各通信装置20の記憶部20cには、その通信装置20がそれまでに受信した要求パケット100のシーケンス番号104のうちで最新に発行されたシーケンス番号104が格納されている。
【0128】
そして、新たに受信した要求パケット100のシーケンス番号104が、記憶部20d内のシーケンス番号104よりも新しくない(換言すれば同じである、または、より古い)と判定された場合、処理部20cは、上記の新たに受信した要求パケット100を中継することなく、往路中継処理S2(図7参照)を終了する。
【0129】
他方、新たに受信した要求パケット100のシーケンス番号104が、記憶部20d内のシーケンス番号104よりも新しいと判定された場合、処理部20cは、既述のシーケンス番号更新ステップS24a12を実行する。その後、処理部20cは、往路中継処理S2の後続の各種処理を実行する。これにより、上記の新たに受信した要求パケット100が中継される。
【0130】
第2例に係る中継済み判定処理S24a2によれば、要求パケット100の中継の要否を、シーケンス番号104の発行順序に基づいて決定する。このため、シーケンス番号104が同じであるか否かを判定材料にする処理S24a1に比べてより確実に、同じ内容の要求パケット100が同じ通信装置20によって再び中継されるのを回避できる。したがって、同じ要求パケット100が通信システム1上を中継・転送され続けるのを防止できる。その結果、通信システム1の伝送負荷を低減することができる。
【0131】
図14および図15に、中継済み判定処理S24a2をさらに具体的に説明する模式図を示す。図14および図15の例では、シーケンス番号104が”0”から”255”までの範囲内の整数をとるものとし、当該範囲を数直線上に表している。なお、この例の場合、要求パケット100(図5参照)においてシーケンス番号104には8ビットが割り当てられる。
【0132】
ここでは、シーケンス番号104を発行する際の規則が、次の規則(a),(b)を含む場合を例示する。規則(a)は、”0”から”255”までインクリメントして(すなわち+1ずつ増加させて)順次選ばれる整数をシーケンス番号104として採用するという規則である。また、規則(b)は、シーケンス番号104が”255”に達した場合には”0”に戻ってインクリメントを続けることによって(図14および図15中の破線矢印を参照)、”0”から”255”までの整数を循環的に利用するという規則である。なお、規則(b)は上記8ビットにおいてオーバーフローが生じることに対応する。
【0133】
まず図14には、記憶部20dに格納されているシーケンス番号104が”120”である場合が例示されている。また、図14の例によれば、当該”120”を上限値とし、”120”よりも所定数Δ(ここではΔ=3が例示される)だけ前に発行された”117”を下限値とする数値範囲が設定されている。当該数値範囲は、上記のシーケンス番号判定処理S24a21(図13参照)において、判定用の参照範囲として用いられる。
【0134】
より具体的には、新たに受信した要求パケット100のシーケンス番号104の値が上記判定用参照範囲内に在る場合(ここでは上限値または下限値に等しい場合も含むものとする)、当該新たに受信した要求パケット100のシーケンス番号104は記憶部20d内のシーケンス番号104に比べて新しく発行されたものではないと判定される。その結果、新たに受信した要求パケット100は中継されない。
【0135】
ここでは、新たに受信した要求パケット100のシーケンス番号104の値が判定用参照範囲内にない場合、当該新たに受信した要求パケット100のシーケンス番号104は記憶部20d内のシーケンス番号104に比べて新しく発行されたものであると判定されるものとする。この場合、新たに受信した要求パケット100は中継される。
【0136】
判定用参照範囲の幅、すなわち上記所定数Δは、通信システム1の構成から予め想定される要求パケット100の最大滞留数に設定されている。換言すれば、上記所定数Δは、要求パケット100の滞留が発生した場合、同じ第2通信装置20によって再受信される可能性があるシーケンス番号104の個数に設定されている。
【0137】
上記所定数Δは、通信システム1のTAT(ターンアラウンドタイム)が短いほど、大きくするのが好ましい。TATが短いほど、パケットが滞留しやすくなるからである。なお、通信システム1におけるTATは、要求パケット100の発信周期に相当する。
【0138】
また、第2通信装置20を構成するMAC(Media Access Control)層における送信タイムアウト時間が長いほど、パケットが滞留しやすくなるため、上記所定数Δを大きくするのが好ましい。
【0139】
ここで上記規則(b)に従えば、判定用参照範囲は、図15に例示するように、下限値”0”の側と上限値”255”の側に分割される場合がある。図15には、記憶部20dに格納されているシーケンス番号104が”2”であり、判定用参照範囲の幅に相当する所定数Δが3である場合が例示されている。この例によれば、判定用参照範囲は、”0”以上”2”以下の範囲と、”254”以上”255”以下の範囲とによって構成される。なお、このような形態の判定用参照範囲は、上記規則(b)に従って、下限値”0”と上限値”255”とを跨いでいる(あるいは渡っている)と表現可能である。
【0140】
図14および図15の例に鑑みれば、シーケンス番号104の下限値および上限値をN1,N2とし、記憶部20d内に格納されているシーケンス番号104の値をxとし、記憶部20d内に格納されているシーケンス番号104よりも所定数Δだけ前に発行されたシーケンス番号104の値をyとした場合、次の内容が導かれる。
【0141】
すなわち、処理部20cは、x>yのとき、判定用参照範囲として、y以上x以下の範囲が適用することによって、シーケンス番号判定処理S24a21(図13参照)を実行する。他方、処理部20cは、x≦yのとき、判定用参照範囲として、N1以上x以下の範囲と、y以上N2以下の範囲とを適用することによって、シーケンス番号判定処理S24a21を実行する。
【0142】
なお、図14および図15の例ではN1=0、N2=255、Δ=3であるが、これらの数値に限定されるものではない。
【0143】
かかる構成によれば、シーケンス番号104として”0”から”255”までの整数を循環的に利用するので、シーケンス番号104の個数を減らすことができる。換言すれば、循環的な採番を利用しない場合、通信システム1の運用上必要と想定される個数のシーケンス番号104を準備しなければならず、実用性に欠ける。しかし、循環的な採番の利用によって、実用性、汎用性が向上する。
【0144】
また、上記の判定用参照範囲を導入したことにより、循環的な採番を行う構成においても、シーケンス番号104の発行順序を適切に判定することができる。
【0145】
次に、図16に、中継済み判定処理S24a(図8参照)の第3例を説明するフローチャートを示す。図16に例示の中継済み判定処理S24a3は、図13の中継済み判定処理S24a2に、ステップS24a31が追加された構成を有している。なお、図16の例では、中継済み判定処理S24a3は、既述のステップS22,S24b(図7および図8参照)間で実行される。
【0146】
図16の例によれば、処理部20cは、新たに受信した要求パケット100と、当該新たに受信した要求パケット100の一つ前に受信した要求パケット100との受信間隔が、所定時間を超えているか否かを判定する(ステップS24a31)。
【0147】
そして、要求パケット100の受信間隔が上記所定時間を経過していないと判定された場合、処理部20cは、既述のシーケンス番号判定処理S24a21を実行して、新たに受信した要求パケット100を中継するか否かを決定する。なお、要求パケット100の中継を行う場合、既述のシーケンス番号更新ステップS24a12が実行される。
【0148】
他方、要求パケット100の受信間隔が上記所定時間を経過していると判定された場合、処理部20cは、既述のシーケンス番号判定処理S24a21を実行せずに、新たに受信した要求パケット100を中継する。なお、この場合、既述のシーケンス番号更新ステップS24a12が実行される。
【0149】
なお、上記の時間経過判定ステップS24a31は、例えば、受信ステップS20と、復号化ステップS22との間で実行してもよい(図7参照)。
【0150】
かかる中継済み判定処理S24a3は、シーケンス番号104の発行がリセットされる場合、例えば第1通信装置10の電源が再投入される場合に好適である。
【0151】
より具体的には、シーケンス番号の発行処理がリセットされると、シーケンス番号104の採番は”0”から開始される。このため、リセット後のシーケンス番号104は、第2通信装置20が記憶部20d内に保有しているシーケンス番号104よりも見かけ上、古くなる可能性が高い。したがって、中継済み判定処理S24a3を採用しない場合には、リセット後に発信される要求パケット100が中継されず、通信に支障が出てしまう。なお、上記のΔが大きいほど、パケットの中継が行われない可能性が高くなる。
【0152】
これに対し、中継済み判定処理S24a3によれば、例えば第1通信装置10の電源再投入を上記の所定時間以上あけて行うことにより、リセット直後から正常な通信を行うことができる。
【0153】
上記所定時間は、通信システム1のTATよりも長い時間に設定するのが好ましい。例えば、TATが1分の場合、上記所定時間は10分以上採るのが好ましい。
【0154】
上記ではシーケンス番号104が”0”から”255”までインクリメントされる場合(上記の規則(a)を参照)を例示したが、シーケンス番号104の発行はこの例に限定されるものではない。例えば、デクリメントによってシーケンス番号104を発行するという規則を採用してもよい。また、不連続な整数(例えば偶数)を順次選んでシーケンス番号104を発行するという規則を採用してもよい。
【0155】
シーケンス番号104は、既述のように、要求パケット100を識別するための情報104の一例である。このため、各要求パケット100を識別可能であれば、識別情報104として数値以外の情報を採用して構わない。
【0156】
つまり、識別情報104は種々の規則に従って発行可能である。
【0157】
ところで、上記の中継済み判定処理S24a2,S24a3では識別情報104の発行順序を判定するため、識別情報104の発行規則を第1通信装置10と第2通信装置20が共有しなければならない。かかる点に鑑みると、連続する整数をインクリメントして(またはデクリメントして)順次得られる数値を識別情報104として採用するという規則は、簡便である。なぜならば、識別情報104の発行順序の判定を、基本的には数値の大小比較によって実行可能だからである。
【0158】
また、上記では第2通信装置20が、要求パケット100を電力線通信によって受信した場合には無線通信によって中継し、要求パケット100を無線通信によって受信した場合には無線通信と電力線通信との両方によって中継する構成(図7のステップS26,S28,S30を参照)を例示した。しかしながら、上記の中継済み判定処理S24a1,S24a2,S24a3の適用はかかる例示に限定されるものではない。すなわち、中継済み判定処理S24a1,S24a2,S24a3は、パケット送出手段が電力線通信と無線通信とのいずれであっても適用可能である。
【0159】
また、上記では要求パケット100が中継される場合を例示したが、中継対象のパケットは要求パケット100に限定されるものではない。
【0160】
次に、要求パケット100によって第1通信装置10が第2通信装置20に要求する処理の一例として、電力量取得処理を説明する。なお、電力量取得処理は、第2通信装置20の電力測定部20gによって測定される電力量を第1通信装置10へ報告させる処理である。当該電力量は、第2通信装置20の接続端子20fに接続されたデバイス51(図3参照)の動作状態に応じて変化するので、デバイスの動作に関する情報に含まれる。
【0161】
図17に電力量取得処理S10のシーケンス図を例示する。ここでは図17に例示した通信装置10,21,26について説明する。
【0162】
図17の例において、第1通信装置10の処理部10cはまず初期設定を行う(ステップS100)。この初期設定には、電力量取得処理S10に対応した要求コマンド106(図5参照)を有する要求パケット100の生成、取得結果を記述するデータテーブルのクリア等を含む。
【0163】
要求パケット100は、第1通信装置10から送信されると(ステップS0)、第2通信装置21へ到達する。
【0164】
第2通信装置21は、要求パケット100中の要求コマンド106の内容に従って電力測定部20gから消費電力量を取得し、当該取得した電力量を応答内容情報208に記録した応答パケット200を生成して第1通信装置10へ返信する(ステップS4)。第1通信装置10は、当該応答パケット200を受信すると、応答内容情報208に基づいて第1通信装置21による測定電力量を電力量データテーブルを記録する(ステップS102)。
【0165】
また、第2通信装置21は、受信した要求パケット100を中継する(ステップS2)。中継された要求パケット100が第2通信装置26へ到達すると、第2通信装置26は、第2通信装置21と同様に、応答パケット200を生成して送信する(ステップS4)。送信された応答パケット200は上記復路中継処理S6によって第1通信装置10へ到達する。第1通信装置10は、応答パケット200を受信すると、上記と同様に、電力量データテーブルの記録を行う(ステップS104)。
【0166】
通信システム1では、要求パケット100の生成・送信から、第2通信装置21,26によって報告された電力量の記録までの処理を1つの処理単位Tとして、当該処理単位Tを予め設定した複数回、繰り返す。なお、処理単位Tは周期的に実行してもよいし、非周期的に実行してもよい。
【0167】
そして、第1通信装置10は、得られた電力量情報を情報管理センター45(図2参照)へ送信する(ステップS110)。
【0168】
センター45へ送信するデータは、例えば各処理単位Tごとの全データ(図18参照)であってもよい。このとき、例えば、パケットロスト等の通信障害が発生して第2通信装置21から2回目の報告を受信できなかった場合(図18では”−1”で表記している)、当該データを未取得状態のままにしてもよいし、または、未取得回のデータを他の取得回のデータで補間してもよい。
【0169】
また、センター45へ送信するデータを、例えば全データを整理して各第2通信装置20について代表的なデータだけにすることも可能である。例えば、図18に例示するように同じ第2通信装置22から異なる電力量データが報告された場合、最新のデータや平均データを代表的なデータとして選定すればよい。
【0170】
このように処理単位Tを複数回実行することにより、換言すれば同じ要求コマンド106を含んだ要求パケット100をシーケンス番号104を変えて複数回送信することにより、通信障害等が発生した場合であっても、要求パケット100の配信を確実にすることができる。また、複数回の応答パケット200によれば、豊富な情報を収集することができるし、また、通信障害等が発生した場合であっても情報を確実に取得することができる。
【0171】
また、要求パケット100によって第1通信装置10が第2通信装置20に要求する処理の他の一例として、センサ状態取得処理を説明する。なお、センサ状態取得処理は、デバイス52の一例としての各種センサの状態、すなわち当該センサの動作に関する情報を第1通信装置10へ報告させる処理である。なお、上記各種センサは、例えば光学的センサ、機械的センサ等であり、また、例えば防犯センサ、各種機器の動作状態を検出するためのセンサ等である。
【0172】
図19にセンサ状態取得処理S12のフローチャートを例示する。図19の例において、第1通信装置10の処理部10cはまず初期設定を行う(ステップS120)。この初期設定には、センサ状態取得処理S12に対応した要求コマンド106(図5参照)を有する要求パケット100の生成、取得結果を記述するデータテーブルのクリア等を含む。
【0173】
要求パケット100は、第1通信装置10から各第2通信装置20へ送信されると、各第2通信装置20は通信可能に接続されているセンサの状態を検出する。そして、各第2通信装置20は、検出結果を応答内容情報208に記録した応答パケット200を第1通信装置10へ送信する。これにより、通信システム1に繋がるセンサがスキャンされる(ステップS122)。
【0174】
そして、第1通信装置10は、各第2通信装置20からの応答パケット200を受信し、各応答内容情報208に基づいてスキャン結果を例えばデータテーブルに集約し(図20参照)、オン状態のセンサが存在するか否かを判別する(ステップS124)。判別の結果、オン状態のセンサが存在する場合、第1通信装置10はセンター(例えば防犯センター)45へ報告し(ステップS126)、その後、上記ステップS120へ戻る。他方、オン状態のセンサが無い場合、第1通信装置10は、センター報告ステップS126を行うことなく、第1通信装置10の処理は上記ステップS120へ戻る。
【0175】
なお、上記とは逆にオフ状態のセンサが存在する場合にセンター45へ通報するように構成することも可能である。
【0176】
ここで、1台の第2通信装置20に対して複数のセンサがデバイス52として接続される場合がある(例えば無線接続の場合)。この場合、各センサごとに応答内容情報208を生成してもよいし、または、当該複数のセンサの一部もしくは全部をまとめて1つの応答内容情報208を生成することも可能である。
【0177】
また、1つのセンサがデバイス52として複数の第2通信装置20に接続される場合もある(例えば無線接続の場合)。この場合、第1通信装置10は、取得したデータのうちの最新のものを採用するのが好ましい。
【0178】
なお、上記ではデバイス52が各種センサである場合を例示したが、デバイス52が例えば各種の情報端末機であってもよい。この場合、当該情報端末機が取得・保有する情報を、第2通信装置20を介して第1通信装置10が収集することが可能である。情報端末機として、例えば、体重計や血圧計等の健康管理機器が挙げられる。
【0179】
上記では電力線通信を例示したが、電力線通信に代えてその他の有線通信を通信システム1に適用することも可能である。これに対し、電力線通信は一般的に電力線に接続される機器が発生するノイズによって通信性能が低下しやすいので、電力線通信と無線通信とを併用した上記通信システム1によればシステム全体として良好な通信が得られる。
【符号の説明】
【0180】
1 通信システム
10 第1通信装置
20,21〜26 第2通信装置
20c 処理部
20d 記憶部
100 要求パケット
104 シーケンス番号(識別情報)
S24a1〜S24a3 中継済み判定処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信装置と、
受信したパケットを中継する機能を有した複数の第2通信装置と
を備え、
前記パケットは、各パケットを識別するための情報であって発信元の前記第1通信装置が所定規則に従って順次発行する識別情報を有し、
前記複数の第2通信装置のそれぞれは、
受信済みのパケットの前記識別情報のうちで最新に発行された識別情報を格納するための記憶部と、
処理部と
を含み、
前記処理部は、
新たに受信したパケットの前記識別情報が、前記記憶部内に格納されている前記識別情報に比べて新しく発行されたものであるか否かを判定する判定処理を行い、
前記判定処理において前記新たに受信したパケットの前記識別情報が前記記憶部内の前記識別情報に比べて新しいと判定した場合には、前記新たに受信したパケットを中継し、
前記判定処理において前記新たに受信したパケットの前記識別情報が前記記憶部内の前記識別情報に比べて新しくないと判定した場合には、前記新たに受信したパケットを中継しない、
通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の通信システムであって、
前記処理部は、
前記新たに受信したパケットと、前記新たに受信したパケットの一つ前に受信したパケットとの受信間隔が、所定時間を超えていない場合には、前記判定処理を実行して前記新たに受信したパケットを中継するか否かを決定し、
前記受信間隔が前記所定時間を超えている場合には、前記判定処理を実行せずに、前記新たに受信したパケットを中継する、
通信システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の通信システムであって、
前記識別情報の発行に関する前記所定規則は、
第1の整数から前記第1の整数よりも大きい第2の整数までインクリメントして順次選ばれる整数を前記識別情報として採用するという規則と、
前記識別情報の値が前記第2の整数に達した場合には前記第1の整数に戻ってインクリメントを行うことによって、前記第1の整数から前記第2の整数までの整数を循環的に利用するという規則と
を含み、
前記処理部は、前記判定処理において、前記新たに受信したパケットの前記識別情報が所定の数値範囲内に在る場合には、前記新たに受信したパケットの前記識別情報は前記記憶部内の前記識別情報に比べて新しくないと判定し、
前記第1の整数をN1とし、前記第2の整数をN2とし、前記記憶部内に格納されている前記識別情報の値をxとし、当該通信システムの構成から予め想定される前記パケットの最大滞留数の分だけ前記記憶部内の前記識別情報よりも前に発行された識別情報の値をyとした場合、
前記処理部は、
x>yのとき、前記所定の数値範囲としてy以上x以下の範囲を適用し、
x≦yのとき、前記所定の数値範囲としてN1以上x以下の範囲と、y以上N2以下の範囲とを適用する、
通信システム。
【請求項4】
受信したパケットを中継する機能を有した通信装置であって、
前記パケットは、各パケットを識別するための情報であって発信元の装置が所定規則に従って順次発行する識別情報を有し、
前記通信装置は、
受信済みのパケットの前記識別情報のうちで最新に発行された識別情報を格納するための記憶部と、
処理部と
を含み、
前記処理部は、
新たに受信したパケットの前記識別情報が、前記記憶部内に格納されている前記識別情報に比べて新しく発行されたものであるか否かを判定する判定処理を行い、
前記判定処理において前記新たに受信したパケットの前記識別情報が前記記憶部内の前記識別情報に比べて新しいと判定した場合には、前記新たに受信したパケットを中継し、
前記判定処理において前記新たに受信したパケットの前記識別情報が前記記憶部内の前記識別情報に比べて新しくないと判定した場合には、前記新たに受信したパケットを中継しない、
通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−114448(P2011−114448A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267249(P2009−267249)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】