通信システムの吸気ノイズを検出して減衰させる方法及び装置
圧縮空気送達システムに結合された通信システムの吸気ノイズを検出して減衰させる方法であって、この方法には、吸気ノイズに基づき吸気ノイズモデルを生成する工程(912、1012)と、吸気ノイズを含む入力信号(802)を受信する工程と、類似尺度を得る為に入力信号とノイズモデルと比較する工程(810)と、類似尺度に基づき利得係数を決定する工程(854)と、利得係数に基づき入力信号を修正する工程(852)とがあり、修正する工程では、利得係数に基づき入力信号の吸気ノイズが減衰される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、通信システムに結合された圧縮空気送達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
消火活動などの危険な環境での活動に従事している職員同士間での良好で信頼性の高い通信は、職員自身の健康と安全を保ちながら職員たちが任務を達成するには必須である。作業環境によっては、圧縮空気送達システムを用いる必要があり、例として、自給式呼吸器(SCBA)のマスク及び空気送達システムや、自給式水中呼吸器(SCUBA)のマスク及び空気送達システムや、航空機の酸素マスクシステムなどがある。しかし、職員がこういった圧縮空気送達システムを用いていても、良好で信頼性の高い通信が保たれ職員の健康と安全が効果的に監視されることが望ましい。
【0003】
図1は、先行技術のシステム100の単純なブロック図を図示しており、システム100には、通信システム130に結合された圧縮空気送達システム110がある。圧縮空気送達システムには一般的に、SCBAマスクなどの呼吸マスク112と、エアシリンダ(図示せず)と、レギュレータ118と、レギュレータ118をエアシリンダに接続する高圧ホース120とがある。用いられている空気送達システム110のタイプに依存して、システム110はユーザを守る為に、例えば、ユーザにきれいな呼吸用空気を供給し、ユーザの肺に有害な毒素が達しないようにし、ユーザの肺を燃えている建造物の内側の過熱した空気によるやけどから保護し、ユーザの肺を水から保護し、ユーザを顔のやけど及び呼吸器のやけどから守る。なおまた、概してこういったマスクは、マスク着用者が吸い込んだときのみ空気が一般的に供給されるので、プレッシャデマンド型呼吸システムと考えられる。
【0004】
通信システム130には一般的に、従来のマイクロホン132があり、このマイクロホン132はマスク着用者の音声を録音するよう設計されており、マスクの内側や外側に取り付けられたり、マスクに取り付けられたり、マスク112の音声送信ポート部分を手に握られたりする。通信システム130には更に、マスク着用者が、自身の音声によって、例えば、他の通信ユニットと通信するために使用できる両方向無線機などの通信ユニット134がある。マスクマイクロホン装置132は、無線機134に直接的に接続されていたり、中間電子処理装置138を介して接続されていたりする。この接続は、従来の電線ケーブル(例えば136)を通じて実施することもできるし、従来の、RFや赤外線や超音波の、短距離送信/受信システムを用いて無線で実施することもできる。中間電子処理装置138は、例としてデジタル信号プロセッサとして実施すればよく、インタフェースの電子機器と、オーディオアンプと、この装置自身とマスクマイクロホンの為のバッテリ電力とを備えている場合がある。
【0005】
システム100などのシステムの使用に付随する幾つかの欠点がある。この制限を、説明を簡略化する為に、図1に図示されたシステム100のマスクから無線へのオーディオ経路を図示する図2のブロック図を参照することにより記載する。唇からの音声入力210(例えばSi(f))がマスク(例えばSCBAマスク)に入り、このマスクの音響伝達関数220(例えばMSK(f))は音響共鳴及びヌルにより特性を示される。この共鳴及びヌルは、マスクの空洞の容積及びマスク表面の内部からの音の反響によるものである。伝達関数MSK(f)により特性を示されるこの影響は、入力音声波形Si(f)を歪ませそのスペクトル成分を変える。別の音源は、呼吸の為の装置から生成されたノイズ230(例えばレギュレータの吸気ノイズ)であり、このノイズもマスクに入りMSK(f)の影響を受ける。別の伝達関数240(例えば、NPk(f))は、ノイズがマスク内で音声の場所とはわずかに異なる場所から生成されるという事実を説明する。音声とノイズS(f)とは、マイクロホンによって音響エネルギーから電気信号へと変換され、マイクロホンそのものは伝達関数250(例えばMIC(f))を有している。次にマイクロホン信号は一般的に、伝達関数260(例えばMAA(f))を持つオーディオアンプ及び他の回路を通過する。次にMAA(f)の出力信号270(例えばS0(f))は、更なる処理及び送信に向け無線機へと入力される場合がある。
【0006】
システム100などのシステムの欠点に戻ると、こういった欠点の例は、このシステムによるシステムの動作の一部としてのうるさい音響ノイズの生成に関わるものである。より具体的には、こういったノイズのせいで、特に無線機などの電子システムと併用する際に、通信の質が著しく劣化しかねない。SCBAシステムのような圧縮空気送達システムによって持ち込まれる目立つ人工音のノイズの1つが、レギュレータの吸気ノイズであり、図2にボックス230で図示されている。
【0007】
レギュレータの吸気ノイズは、マスク着用者が吸い込むたびに生ずるブロードバンドのノイズバーストとして生ずる。マスク内の負圧によってエアレギュレータのバルブが開放されるので、高圧の空気をマスクに入れることになって、シューとうるさい音が出る。このノイズは、その後に続く音声と共に、マスク通信システムのマイクロホンに拾われ、エネルギーはその音声とほぼ同じである。吸気ノイズは、一般的に吸気時にのみ生ずるので、一般に音声をかき消しはしない。しかし、吸気ノイズは、数々の問題を引き起こす恐れがある。その問題の例を以下に述べる。例えば、吸気ノイズはVOX(音声作動スイッチ)回路を起動させる恐れがあるので、無線チャネルを開放して占有し、場合によっては同一の無線チャネルの他の話し手に干渉することになる。なおまた、デジタル無線機を利用する通信システムでは、吸気ノイズはVAD(音声活動検出)アルゴリズムを起動させノイズ抑制アルゴリズムのノイズ推定の混乱を引き起こす恐れがあり、更に一連の無線信号処理をもダウンさせかねない。加えて、吸気ノイズは概して聴取者をいらいらさせる。
【0008】
システム100などのシステムの第2の欠点を以下に述べる。これらのシステムは、一般的に鼻と口を包含する又は顔全体を包含するマスクを用いている。空気システムのマスクは、ジオメトリの決まった密閉された空洞を形成しており、この空洞が音響共鳴及び反共鳴(ヌル)の特定のセットを呈示し、このセットは、マスクの容積及び内部の反響面のジオメトリの関数であり、マスク内で出される音声のスペクトルの性質を変える。より具体的には、エアマスクのオーディオ経路(図2)の特性を示す上で、このシステムで最も取り組みがいのある部分は、話し手の唇からマスクマイクロホンへの音響伝達関数(220)である。このスペクトル歪みは、取り付けられた音声通信システム、特に、原型どおりでない音声を取り扱う為に最適化がなされていないパラメトリックデジタルコーデックを用いたシステムの性能を著しく劣化させる恐れがある。マスクの音響の歪みは、特にパラメトリックデジタルコーデックを伴う場合に、通信システムの質及び了解度に影響を及ぼすことが証明されている。一般に、吸気ノイズは別にして、通話品質の大きく損ねてしまう空気システムの影響は、マスクの音響効果が低いせいであると思われる。
【0009】
図3が図示しているのは、マスクの内側のスペクトルの応答を測定した大きさ(320)、マスクマイクロホンの出力のスペクトルの応答を測定した大きさ(310)、マスクとマイクロホンとマイクロホンアンプとについて計算して組み合わせた伝達関数(330)の、それぞれの例である。この特定のデータ群は、ヘッドトルソシミュレータに取り付けたSCBAマスクを用いて得た。3Hz〜10KHzの音響加振によって、人工口シミュレータを励振する正弦波を一掃した。図3が図示しているとおり、スペクトルは、周波数が500Hzを下回る場合と4.0KHzを上回る場合には、主にマイクロホンのプリアンプバンドパスフィルタの為に著しく減衰し、50〜4.0KHzの重要な音声通過帯域領域に強いスペクトルのピーク及びノッチが多数ある。このスペクトルのピーク及びノッチは一般に、コムフィルタリングをもたらすマスク内側の反響と、空洞共振の条件とにより引き起こされる。重大なスペクトルのピーキング及びノッチングは、音声のピッチ要素とフォルマントとが通過帯域を前後する際にこれらを変調し、その結果、質は劣化し音声は歪む。このようなシステムの特性を示す伝達関数(単数又は複数)を決定し、そのような伝達関数を用いて等化システムを定義し音声の歪みを低減させることが望ましい。
【0010】
システム伝達関数を適応的に決定し送信チャネルを等化する為の実績のある技術が多数ある。システム伝達関数を決定するのに効果的な方法の1つは、ブロードバンドの基準信号を用いてシステムを励起しシステムのパラメータ群を決定することである。多くの音声伝送の環境の伝達関数を推定する際のある問題は、好適なブロードバンドの励起信号を容易に使用できないことである。共通の1つのアプローチは、長期の平均の音声スペクトルを基準として用いることである。しかし、この基準を用いる適応時間は、特に音声入力がまばらな場合に長くなるおそれがある。加えて、長期の音声スペクトルは、音声スペクトルを相当に変える可能性のある叫ぶことや精神的なストレスを伴うことの多い公共サービスの活動の場においては、人によってはかなり違ったり、個人個人でかなり違ったりする恐れがある。
【0011】
システム100などのシステムに関連する別の欠点は、マスク着用者のある一定のパラメータ群、例えば、バイオメトリクスのパラメータなどを測定する為のより効率的な方法及び装置がないことである。危険な環境で作業しており、システム100などのシステムを用いる場合のある個人のそういったパラメータの測定値は、その個人の安全性及び遂行能力を監視する為に重要である。例えば、個人の呼吸数及び空気消費量の測定値は、その個人の、作業量、生理学的な適応度、ストレスのレベル、保存されている空気供給源の消費量(即ち使用可能な作業時間)の特性を示す重要なパラメータである。呼吸を測定する従来の方法は、サーミスタセンサを用いて胸部のインピーダンスプレチスモグラフィ又は空気流の温度を測定し利用することを伴う。しかし、こういった従来の方法を用いて、消防活動などの肉体的に大変な環境で作業している個人から信頼できる測定値を得ることは、身体に取り付けられ測定値を得る為に一般的に用いられるセンサ及び人工物の移動を引き起こす可能性がある激しい身体運動のせいで、更に難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、吸気ノイズを効果的に検出し減衰させ、音声を等化させ(即ち、歪みの影響を取り除き)、通信システムに結合された圧縮空気送達システムを備えたシステムでの、ユーザに関連するパラメータ群を測定する方法及び装置に対する需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様は、通信システムに結合された図1に図示のシステム100などの圧縮空気送達システムの吸気ノイズを検出し除去する方法及び装置である。そして、本発明の本実施形態に係る方法を、本明細書ではARINA(エアレギュレータの吸気ノイズ減衰)法と呼ぶ。エアレギュレータの吸気ノイズを識別し除去するARINA法の基盤は、音声と比較した場合と他のタイプのノイズ、例えば種々の環境騒音と比較した場合に、吸気ノイズが相対的に定常だということである。ARINA法800のブロック図が図8に示されており、この図を4つのセクションに分割できる。即ち、ノイズモデル突き合わせ810、ノイズ検出830、ノイズ減衰850、ノイズモデル更新870である。
【0014】
ARINA法800の基本的な方法論は以下のようにまとめられる。方法800は、吸気ノイズのモデル化を、好ましくはデジタルフィルタ(例えば全極の線形予測符号化(LPC)デジタルフィルタ)を用いて行う。方法800は次にオーディオ入力信号(即ち、マスクマイクロホンに拾われた音声及びノイズ)をノイズモデルフィルタの逆フィルタを用いてフィルタリングし、逆ノイズモデルフィルタの出力のエネルギーを入力信号のエネルギー又は他のエネルギーの基準と比較する。入力信号とモデルとで類似したスペクトルマッチングが生ずる信号周期の間、入力信号を含むレギュレータの吸気ノイズを所望のレベルまで減衰させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ここで本発明の好適な実施形態を、添付の図面に関し、単に例として述べる。
本開示は本発明の原理の一例として考えるべきであって、本発明を図示し記載した具体的な実施形態に限定することは意図していないとの了解の下、具体的な実施形態を図に示し本明細書で詳細に述べるが、本発明は多くの異なる形の実施形態をとりうるものである。更に、本明細書で用いた用語及び言葉は、制限するものと考えられるべきではなく、むしろ単に説明的なものと考えられるべきである。更に、図に示されている各要素が、説明を簡単明瞭にする為に必ずしも一律の縮尺に従っていないことも分かるであろう。例えば、要素のうち幾つかの寸法は相対的に誇張されている。更に、適切であると考えられる場合には、対応する要素を示す為に参照数字が複数の図で繰り返されている。
【0016】
本発明の種々の態様を詳細に述べる前に、簡潔に前述したエアレギュレータの吸気ノイズについてより詳しく記述する。吸気ノイズは、人物が吸い込みレギュレータバルブが開放された際にSCBA又は他の圧縮空気送達システムのマスクに高圧の空気が入った結果、発生する。バルブの乱流が、ブロードバンドのシューという非常にうるさいノイズ音を出し、このノイズ音はSCBAマスクへと直接結合されており、その振幅はマイクロホンにおいて音声信号に匹敵する。SCBAマスクの内側で録音される一般的な吸気ノイズ400の例とその広帯域のスペクトログラム500を、それぞれ、図4と図5に示す。
【0017】
図5で分かるように、ノイズスペクトルはブロードバンドであり、目立つスペクトルピークが生じているのは、約500Hz、約1700Hz、約2700Hz、約6000Hzである。ピークはマスク内の共鳴によるものであり、コムフィルタリングはマスク内部の反響によるものであり、マスクのモデル、サイズ、構成が違うと、周波数及び振幅は変動する場合がある。マスクが顔に配置されると内部全体の幾何形状は本質的に一定なので、ノイズスペクトルの特色は一般的に、マスクと着用者との特定の組み合わせでは変化しない。このことは図6で実証されており、図6には、任意のSCBAマスクを着用している同一の話し手についての、SCBAマスクマイクロホンからの3つの異なる吸気ノイズのスペクトル(610、620、630)を、重ね合わせて示す。この一貫性は別々の話し手についても別々のメーカーのマスクについても観察された。なおまた、別々の話し手が同一のマスクを着用している場合のエアレギュレータのノイズのスペクトルの類似性が高いことも観察された。
【0018】
最後に、図7には、SCBAシステムからの録音された音声710の例を図示する。図7が実証しているように、人々は普通、吸い込みながら話そうとはしないので、音声そのものに吸気ノイズ720が影響することはない。しかし、ノイズのエネルギーとスペクトルは、無線機の音声検出器とノイズ抑制回路とに問題を引き起こし聞き取る側をいらいらさせる。
【0019】
本発明の第1の態様は、通信システムに結合された図1に図示のシステム100などの圧縮空気送達システムの吸気ノイズを検出し除去する方法及び装置である。そして、本発明の本実施形態に係る方法を、本明細書ではARINA(エアレギュレータの吸気ノイズ減衰)法と呼ぶ。エアレギュレータの吸気ノイズを識別し除去するARINA法の基盤は、音声と比較した場合と他のタイプのノイズ、例えば種々の環境騒音と比較した場合に、吸気ノイズが相対的に定常だということである。ARINA法800のブロック図が図8に示されており、この図を4つのセクションに分割できる。即ち、ノイズモデル突き合わせ810、ノイズ検出830、ノイズ減衰850、ノイズモデル更新870である。
【0020】
ARINA法800の基本的な方法論は以下のようにまとめられる。方法800は、吸気ノイズのモデル化を、好ましくはデジタルフィルタ(例えば全極の線形予測符号化(LPC)デジタルフィルタ)を用いて行う。方法800は次にオーディオ入力信号(即ち、マスクマイクロホンに拾われた音声及びノイズ)をノイズモデルフィルタの逆フィルタを用いてフィルタリングし、逆ノイズモデルフィルタの出力のエネルギーを入力信号のエネルギー又は他のエネルギーの基準と比較する。入力信号とモデルとで類似したスペクトルマッチングが生ずる信号周期の間、入力信号を含むレギュレータの吸気ノイズを所望のレベルまで減衰させればよい。
【0021】
次に、図8に図示されているARINA法800の詳細を見ると、処理の第1の工程は、方法800のノイズモデル突き合わせセクション810によって入力信号802を基準ノイズモデルと連続的に比較することにより、吸気ノイズの発生を検出する工程であり、この工程は、好適な実施形態では、許容しうる実装の複雑さに依存して図9又は図10に従って実施される。しかし、当業者には、代替のスペクトルマッチング法を用いてもよいことが分かるであろう。これまでに示した図9及び図10に図示の通りのこの2つの好ましいマッチング法は、本明細書では正規化されたモデル誤差(即ちNME)法及びItakura‐Saito(即ちI‐S)歪み法と呼ぶ。どちらの方法でも、基準ノイズモデルは、デジタルフィルタによって表され(912、1012)、このデジタルフィルタは、吸気ノイズのスペクトル特性を概算する。好適な実施形態では、このモデルは、LPC係数のセットにより規定される全極型(自己回帰型)フィルタとして表される。しかし、当業者には、代替のフィルタモデル、例として既知のARMA(自己回帰移動平均)モデルを、全極型モデルの代わりに用いてもよいことが分かるだろう。
【0022】
基準ノイズモデルフィルタの係数は、吸気ノイズの少なくとも1つのデジタル化されたサンプルから導かれた自己相関係数のセットから得られる。初期のノイズサンプル及び対応する初期の自己相関係数群(872)は、ノイズをあらかじめ何回でも録音しておくことによりオフラインで得られ、本発明の実装に決定的なものではない。なおまた、実験が示しているのは、あるSCBAマスクの初期のノイズサンプルが、例えば、同一の設計の他のマスクに対してもうまく機能し、場合によっては、異なる設計のマスクに対してもうまく機能することである。自己相関係数は、サンプリングされたノイズの未加工のデータから直接的に計算することもできるし、LPCや反射係数などの他の通常用いられるスペクトルのパラメータ表現から、当業者には周知の共通の方法を用いて導くこともできる。
【0023】
好適な実施形態では、ノイズモデルの自己相関係数は以下の標準的な公式に従って計算される。
【0024】
【数1】
ここで、Riは、最大でp個の自己相関係数のうちi番目の係数であり、xnは一般的な吸気ノイズの信号サンプルセグメントのn番目のサンプルであり、サンプルは最大でN個あり、R0はセグメント全体のエネルギーを表す。自己相関関数の次数、pは、一般的に10〜20であり、好適な実施形態の値は14である。なおまた、N信号サンプルは、スペクトル推定を平滑化する為に、自己相関が行われる前にハミング窓を用いて窓掛けされると理想的である。ハミング窓は以下の数式で記述される。
【0025】
【数2】
当業者には、他の窓掛け法を用いてもよいことが分かるであろう。
【0026】
次に、ノイズモデルの自己相関係数を用いて、10次のノイズモデルのLPC係数、a1、a2、・Aapのセットを決定し、全極型線形予測モデルフィルタを次のz領域表現の伝達関数で表す。
【0027】
【数3】
ここで、z=e−jnωtはz変換の変数である。この例では、10次のLPC係数が決定された。しかし、特定の実装に基づき、異なる次数のLPC係数を選択することもできる。自己相関パラメータからLPCパラメータへの変換(工程912、工程1012)を、当業者に既知のパラメータ変換技術を幾つでも用いて行ってもよい。好適な実施形態では、自己相関パラメータからのLPCパラメータの導出を、当業者には周知のダービン法を用いて行ってもよい。
【0028】
次に、図9に図示のNMEのスペクトルマッチング法の詳細を見てみると、導いた全極型LPCノイズフィルタモデルを逆フィルタにして、逆のLPCフィルタを形成する(工程914)。
【0029】
【数4】
理想的には、マスクマイクロホンから得、音声と吸気ノイズであるS(z)とを含むローパスフィルタリングされサンプリングされたオーディオ入力信号802が、逆フィルタH(サーカムフレックス)(z)(工程914)を通過して以下の出力信号を得る。
【0030】
【数5】
次に、逆フィルタの入力信号のエネルギーEinと、逆フィルタの出力信号のエネルギーEoutとが計算され(それぞれ工程918と工程916とで)、歪み尺度Dが工程920で計算されてノイズモデルと入力信号との間の類似尺度として機能する。Dの理論上の下限は無限次元ではゼロだが、実際には、下限は入力信号により決定され、有限次元のノイズモデルにどの程度一致しているかを示すものである。この実装では、歪み尺度はEoutとEinとの比率により定義され、正規化されたモデル誤差(NME)と呼ばれて、工程920で以下のように計算される。
【0031】
【数6】
次に、ノイズモデルにどの程度一致しているかに従い入力信号のエネルギーを取り除く。好適な実施形態では、先に記載された信号のフィルタリングは時間領域の畳み込みによってなされるが、前述の式で示したように周波数領域で行うこともできる。
【0032】
ARINA法800の信号処理は一般に、セグメント化されたフレームごとになされる。好適な実施形態では、入力信号802は、ローパスフィルタリングされ、8.0KHzでサンプリングされ、サンプル80個のブロック群にバッファされ(10msec)、逆ノイズモデルフィルタを通過する(式5)。従って、入力信号802の連続した80個のサンプルセグメントに対し、あらゆるフィルタリングがなされると理想的である。次に、逆ノイズモデルフィルタの正規化されたモデル誤差(NME)は、フィルタの出力フレームのエネルギーを入力信号のフレームのエネルギーで分割することにより計算される(式6)。しかし、この計算は、時間分解能を高めるべくサブフレームベースでなされると理想的である。従って、80項目のフレームはそれぞれサブフレーム群に分割され、例えば4項目、20項目のサブフレーム群に分割されるが、必要な正確度に依存して代替のサブフレームの分割がなされる場合がある。よって、最新の16個のサブフレームの出力フィルタエネルギーEoutを平均した量を、時間的整合を図られた対応する16個のサブフレームの入力フィルタエネルギーEinの平均で分割することにより、正規化されたモデル誤差の信号(NME)の全体が平滑化される。これによって分析の遅延が増えることはないが、過渡的なドロップアウト取り除く助けとなり、また、レギュレータのノイズスペクトルを変える恐れのある他のうるさいバックグラウンドノイズの影響を取り除く助けにもなる。従ってNMEの平均値は、本発明のこの実装では、ノイズモデルと入力信号のスペクトルとの類似性の尺度として用いられる。
【0033】
好適な実施形態では、図10に図示されている、第2の、更に複雑だが更に正確なノイズモデルのマッチング法810は、Itakura‐Saito歪み法を修正したものである。2つの信号の間でのスペクトルの類似性を決定するI‐S方法は、当業者には周知である。この方法では、ノイズモデルの逆フィルタの残留エネルギーを、前述のNME法に見られるように入力信号のエネルギーと比較する代わりに、「最良の(optimal)」信号フィルタの残留エネルギーと比較する。フィルタが「最良」なのは、現在の信号のセグメントのスペクトルに最もよく一致するという意味においてである。
【0034】
最適であるようフィルタリングされた信号に対応する残留エネルギーは、工程1018〜工程1024を用いて計算される。I‐S方法では、工程1018で、入力信号802のサンプル80個の連続したバッファ2つを組み合わせて、単一のサンプル160個のセグメントにすると理想的である。サンプル160個のセグメントは、好ましくは以下に与えられる160点のハミング窓を用いて窓掛けされる。
【0035】
【数7】
窓掛けされた信号データを次に、式1に記載した方法を用いて自己相関させる。工程1018で生成されるこの自己相関係数群は、R(サーカムフレックス)iで示されており、i=0、1、2、...、pである。LPC係数の対応するセットは、工程1020で、自己相関係数から導かれ、その際、好ましくはダービンアルゴリズムを、工程1012で基準ノイズモデルのパラメータ群の生成に用いられたのと同じように用いる。工程1020で生成された信号モデルのLPC係数は、a(サーカムフレックス)iで示されており、i=1、2、...、pである。工程1022では、このLPC係数(工程1020)を以下の式9に従って自己相関させ、b(サーカムフレックス)iをもたらす。このパラメータ群を用いて、このフィルタを通過する信号の残留エネルギーEsを、工程1024で以下のように計算する。
【0036】
【数8】
【0037】
【数9】
ノイズモデルを通過する入力信号のエネルギーは、工程1012〜工程1016を用いて計算される。工程1012では、ノイズモデルのLPC係数は、前述したようにノイズモデルの自己相関係数(874)から計算される。工程1012で生成されたこのLPC係数群は、aiで示されており、i=1、2、...、pである。工程1014では、LPC係数(工程1012からの)を、以下の式11に従って自己相関させ、biをもたらす。このパラメータ群と、工程1018で計算される自己相関シーケンスとを用いて、工程1016で、基準ノイズモデルを通過する信号のエネルギーであるR(サーカムフレックス)iを式10で与えられるように計算する。
【0038】
【数10】
【0039】
【数11】
スペクトル歪みの尺度、Dは、基準ノイズモデルに対する「最良の」信号モデルであり、工程1028で以下に定義されているよう計算される。
【0040】
【数12】
信号モデルが基準ノイズモデルに似ているほど、歪み尺度は下限の1.0に近づく。この歪み尺度は、ARINA法800のノイズ検出セクション830に用いられて、吸気ノイズの存在を決定する。I‐S歪み尺度は好適な実施形態では160個のサンプルを用いて計算される。I‐S歪み尺度により決定された吸気ノイズの分類は、サンプル160個のセグメント中のサンプル80個のフレームそれぞれに関連している。なおまた、初期のノイズモデルを(例えば、初期の自己相関係数872に基づいて)生成したり、ノイズモデルを更新したりするには、前述し以下に更に詳細に記載するノイズモデル更新セクション870に従って、工程1012及び工程1014を行えばよい。
【0041】
ARINA法800のノイズ検出部830では、スペクトルマッチング810(即ち、入力信号とノイズモデルとの間の類似尺度を表すNME又はI‐S歪み尺度)から導かれた値がここで、経験的に導かれたしきい値(例えばDmin1)と比較される(工程832)。この検出しきい値の選択を、吸気ノイズの存在を検出するよう、更に、音声又は他のタイプのノイズを間違って吸気ノイズに分類してしまわないよう行う。
【0042】
なおまた、ノイズフィルタモデルの特定性と、吸気ノイズのスペクトルの変形と、ノイズモデルとのある程度の言語音の類似性とに依存して、例えば、誤検出が生ずる恐れがある。従って、本物のエアレギュレータの吸気ノイズの持続時間は、人工音声と比べるとかなり長期間に亘るので、ノイズの持続時間のしきい値テストも適用する(工程834)と理想的である。従って、検出が認可される前に、検出しきい値は連続したフレーム「K1」の所定の数(例えばフレーム4つ)を満たす必要がある。相対的な信号エネルギーと、波形のゼロ交差と、他の特徴パラメータの情報とが、検出方式に取り込まれ、音声と吸気ノイズとの弁別が改善される。従ってしきい値の基準が両方とも満たされた場合(工程832及び工程834)、スペクトルマッチングは、容認できる程度に類似していると考えられ、吸気ノイズがいま存在していると仮定される。
【0043】
ARINA法800のノイズ減衰部850では、ノイズ検出部830の出力を用いて、入力信号802が通過する出力信号の乗算器(852)をゲート制御する。吸気ノイズが検出された場合、工程854で乗算器のゲインGがある所望の減衰値「Gmin」に設定される。この減衰ゲイン値は、ノイズを完全に除去するよう0.0だったり、吸気ノイズを完全には除去せず抑制するようこれより高い値に設定されたりする。聴取者にエアレギュレータが機能していることを確信させる為に、徹底した抑制が望まれない場合がある。好適な実施形態ではGminの値は0.05である。この場合とは違って、吸気ノイズが検出されなかったら、ゲインGは、音声信号を減衰させるなどの為に、1.0に設定されると理想的である。このゲーティング/乗算方式を変形した方式を用いても良い。例えば、ゲーティングのアタックとディケイの急峻さを低減する変形した方式を用いると、吸気ノイズの直前又は直後に生ずる音声を減衰させる可能性が低くなり、それによって、音声の知覚品質が改善する。なおまた方法800から容易に分かるように、本発明の重要な利益は、レギュレータのノイズが検出されたときを除き元の信号を変えないことであり、この点は従来の連続的なノイズフィルタリング法とは違う。
【0044】
ARINA法800の重要な要素は、検出の目的でノイズモデルを周期的に更新できることである。例えば、経時的に、顔に付けたエアマスクの動きによって、音響伝達関数に対するそのエアマスクの影響が変化する。更に、エアマスクを着用する人が違ったり使用するマスクが違ったりすることは、初期の基準ノイズモデルのスペクトルが実際の吸気ノイズスペクトルから外れるかもしれないことを意味する。元の基準ノイズモデルを周期的に更新することで、現在の正確な基準ノイズモデルを保つことができる。それに応じて、ARINA法800のノイズモデル更新セクション870を用いてノイズモデルを更新する。
【0045】
ノイズモデル更新セクション870はノイズ検出セクション830の出力を用いて、レギュレータの吸気ノイズの基準LPCフィルタモデルを更新するときを決定する。例えば、ノイズ検出セクション830からの出力を、工程876で、経験的に決定された第2のしきい値(例えばDmin2)と比較し、ノイズモデルを更新するかどうかを決定することがある。しきい値を満足している場合、吸気ノイズとして検出された連続した多数のサブフレームが数えられ(工程878)、各サブフレームの信号サンプル群がバッファに保存される。工程880で、連続したノイズのサブフレームの数がしきいの数「K2」(例えば、好適な実施形態では、サブフレーム8個、サンプル160個)を超えたとき、ノイズモデルを更新するという判断がなされる。ノイズのないサブフレームが検出されたとき(例えば、工程832、工程834、工程876のいずれかで)、ノイズのフレームの数は工程884でゼロにリセットされ、ノイズのフレームの数は工程878で更新される。よって、現在検出されている吸気ノイズを表す、「K2」の連続した信号のサブフレームの自己相関係数は、工程882で、既に提示した式1及び式2を用いて計算される。
【0046】
この新しい自己相関係数群を用いて、工程874でノイズモデルの自己相関係数を更新する。理想的には、工程882で計算された自己相関係数を、工程874で以前のノイズモデルの自己相関係数によって平均し、これを、例えば以下のような単純な重み付けの式を用いて行う。
【0047】
【数13】
ここで、RiREFは現在の基準ノイズモデルの自己相関係数、RiNEWは現在検出されている吸気ノイズのサンプルの自己相関係数、αは重み係数で1.0〜0.0であり、初期の基準モデルをどのくらい速く更新するかを決定する。この重み係数を、吸気ノイズのスペクトル特性の変化がどのくらい速いかに依存して調整でき、この速さは、前に言及した通り、通例ゆっくりである。そしてノイズモデルの逆フィルタのLPC係数の新しいセットは、更新されたモデルの自己相関から、工程912及び工程1012で再計算される。ノイズモデルの調整には、誤検出のせいでノイズモデルから大きく逸脱しないよう、制約がある場合がある。加えて、必要ならばシステムを初期のモデルの状態にリセットできるよう、初期の基準ノイズモデルの係数(872)を保存する。ノイズモデル更新セクション870を参照することによる方法800の前述の適応能力によって、システムを特定のマスク及びレギュレータの特性に適応させることができ、最良の検出性能がもたらされる。
【0048】
ARINA法800の利点には、音声信号そのものは処理アルゴリズムの影響を、従来の連続的なフィルタリングを用いるアルゴリズムの場合のように取り返しがつかないほどには受けないということがある。付加的な利点は、本明細書で用いたLPCのモデル化は、単純で、リアルタイムでたやすく適応でき、回りくどくなく、コンピュータ的に効率的なことである。当業者には、以上の利点が本発明のARINAの実施形態に関連する利点のすべてを含むことを意図しておらず、その代表例としての役割を果たすことのみを意図していることが分かるであろう。
【0049】
本発明の第2の態様は、通信システムに結合された図1に図示のシステム100などの圧縮空気送達システムでの音声信号を等化する方法及び装置である。そして、本発明の本実施形態に係る方法を、本明細書ではAMSE(エアマスク音声等化)法と呼ぶ。AMSE法の等化の基盤は、音声と比較した場合にも、他のタイプのノイズ、例えば種々の環境騒音と比較した場合にも、吸気ノイズが相対的に定常だということである。レギュレータのノイズにも音声信号にもマスクの同一の共鳴条件が影響を及ぼすので、音声とノイズとの音源の位置の違いによって音響反射によるピーク及びヌルはノイズと音声とでわずかに異なるものの、ノイズを等化することによって、音声信号の等化に適したイコライザもが得られるはずである。
【0050】
AMSE法は、あらゆるマスクのタイプの圧縮空気呼吸装置(例えばSCBA)に存在するブロードバンドのエアレギュレータの吸気ノイズを用いて、マスクの空洞及び構造によって生じた音響共鳴のスペクトルピーク及びスペクトルヌル(即ち、スペクトルの大きさの音響伝達関数)を推定する。スペクトルについてのこの知識を用いて、リアルタイムで補償デジタル逆フィルタを構築し、このフィルタを適用してスペクトル的に歪んだ音声信号を等化し、マスクなしの場合に出る歪みのない音声を近似する出力信号を生み出す。この作用によって、マスクマイクロホンから得られるオーディオの質が改善され、通信の了解度を改善できる。
【0051】
次にAMSE法の詳細を見ると、方法1100のブロック図が図11に示されており、4つのセクションに分割できる。即ち、ノイズモデル突き合わせ1110、ノイズ検出1130、マスク音声等化1150、ノイズモデル更新1170である。AMSE法のノイズモデル突き合わせセクションと、ノイズ検出セクションと、ノイズモデル更新セクションとは、これまでに詳細に述べたARINA法の対応する各セクションと理想的には同一である。従って、簡潔にする為に、この3つのセクションの詳細な記述は本明細書では繰り返さないが、AMSE法1100のマスク音声等化セクション1150(破線の区域内)については以下に詳細に述べる。
【0052】
AMSE法1100の音声等化セクション1150を用いて、吸気ノイズの基準自己相関係数を利用し、上の式3を用いて工程1152でノイズのn次のLPCモデルを生成する。工程1152で生成されたLPCモデルは、マスクの伝達関数、例えば図2のMSK(f)の特性を示し、吸気ノイズについてもノイズ経路達関数NP(f)を含んでいる。好ましくは14次のモデルが好適だが、どの次数のモデルも利用できる。当業者には、代替のフィルタモデル、例として既知のARMA(自己回帰移動平均)モデルを、全極型モデルの代わりに用いてもよいことが分かるだろう。なおまた、フィルタリング動作を、本発明の好適な実施形態に関してこれまでに述べた時間領域のフィルタリング動作とは対照的に、周波数領域で実施してもよい。
【0053】
LPCモデルの係数を好ましくは逆フィルタで用い(式4に従って)、この逆フィルタを工程1156で音声信号が通過する。音声信号が逆フィルタを通過することにより、入力信号が効果的に等化され、それによって、図2のマスク伝達関数MSK(f)により引き起こされたスペクトル歪み(ピーク及びノッチ)が取り除かれる。工程1158では、等化された信号に対し、好適な固定されたポストフィルタを用いたポストフィルタリングを行うと理想的であり、吸気ノイズが少しでもある部分をすべて補正する、又は、指定された音質を音声信号にもたらして次に続く特殊なコーデック又は無線機の要求に最もよく合わせる。このポストフィルタリングは更に、図2のノイズ経路達関数NP(f)を補償するよう用いられる場合もある。
【0054】
エアレギュレータのノイズに対するAMSE法800のイコライザの効果は、次数の違う2つの等化フィルタについて図12に示されている。具体的には、図12は、等化前の吸気ノイズバーストのスペクトル表現1210を図示している。更に図示されているのは、14次等化フィルタ(1220)を用いた等化後の吸気ノイズのスペクトルと20次等化フィルタ(1230)を用いた等化後の吸気ノイズのスペクトルである。見ての通り、スペクトルのピーキングは、20次等化フィルタによって極めて良好に平坦化され、14次等化フィルタを用いた場合は一応満足できる程度に良好である。なおまた、このフィルタ群によって等化されたマスク音声の聞き取りテストが示したのは、等化されていない音声と比べると、等化フィルタを用いることにより音声の質が著しく改善されたことである。加えて、この2種類のフィルタ次数の間では音声の知覚品質に大差がないことが分かった。
【0055】
AMSEのアルゴリズムのアプローチの利点は、1)このアプローチが、エアマスクシステムに固有な、規則的でスペクトル的に安定したブロードバンドのレギュレータノイズを、マスクの音響共鳴の性質を決定する為の励起源として用いていること、2)システム伝達関数のモデル化が、単純で定評ある効率的な技術を用いてリアルタイムで達成されること、3)等化が、同一の効率的な技術を用いてリアルタイムで達成されること、4)システム伝達関数のモデルが、変化する状況にリアルタイムで連続的に適応できることである。当業者には、以上の利点が本発明のAMSEの実施形態に関連する利点のすべてを含むことを意図しておらず、その代表例として役立つことのみを意図していることが分かるであろう。
【0056】
本発明の第3の態様は、吸気ノイズの持続時間及び周波数を決定し、通信システムに結合された図1に図示のシステム100などの圧縮空気送達システムの呼吸数及び空気使用量を決定する方法及び装置である。そして、本発明の本実施形態に係る方法を、本明細書ではINRRA(吸気ノイズ呼吸数分析器)法と呼ぶ。INRRA法は本質的に、人物の呼吸音を測定する代わりに、エアレギュレータが出した音を監視することにより呼吸を測定する間接的な方法である。INRRA法の基盤は、SCBAなどの圧縮空気呼吸装置の空気流が一方向だということである。空気はシステムには空気源及びレギュレータからのみ入ることができ、排気バルブを通ってのみ出られる。吸気バルブと排気バルブとは同時に開放できない。従って、レギュレータの吸気バルブの動きはユーザの呼吸サイクルに直接関係している。
【0057】
レギュレータの吸気バルブが開放していることの指標の1つは、レギュレータの吸気ノイズである。吸気ノイズは、高い圧力の空気がSCBA又は他の圧縮空気送達システムのマスクに入った結果である。マスクは気密性があるので、人物が吸い込んだときに、マスク内にわずかな負圧が生まれ、この負圧によってレギュレータバルブが開放され圧縮されたタンクの空気が入る。バルブの乱気流は、ブロードバンドのシューといううるさいノイズ音を出し、この音はSCBAマスクへと直接結合されており、マイクロホンに拾われる恐れがあり、吸気のたびに生じる。既に説明されたように、ノイズは急峻でその振幅は吸気の持続時間に亘り非常に一定しており、開始時と終了時の時間分解能は非常に良好である。任意のマスクタイプと着用者とについて、吸気ノイズのスペクトル特性は非常に安定しており、対照的に、直接の人間の息の音は、開いている口の大きさ、声道の状態、肺の空気流などの係数によってかなり異なる。INRRAはエアレギュレータの吸気ノイズの安定性を呼吸の数の尺度として利用する。
【0058】
INRRAはマッチドフィルタリング方式を用い、吸気ノイズの存在をそのスペクトル特性全体によって識別する。加えて、INRRAには、必ず起こるノイズのスペクトル特性の変化に適応する能力があるので、吸気ノイズと他の音とを最も良好に区別できる。吸気ごとの開始を計算することにより、吸気ノイズの発生(occurances)から瞬間の呼吸数とその時間平均とをたやすく計算できる。加えて、吸気ノイズごとの終了を測定し持続時間を計算し、更に、予想できるマスクレギュレータの流量についてのある情報が提供されることにより、システムは空気流の体積の推定を行うことができる。これは、吸気ノイズを録音するマイクロホンからの信号のみを用いてなされてもよい。
【0059】
INRRA法1300のブロック図が図13に示されており、これは5つのセクションに分割できる。即ち、ノイズモデル突き合わせ1310、ノイズ検出1330、吸気定義1350、パラメータ推定1370、ノイズモデル更新1390である。INRRA法のノイズモデル突き合わせセクションと、ノイズ検出セクションと、ノイズモデル更新セクションとは、これまでに詳細に述べたARINA法の対応する各セクションと理想的には同一である。従って、簡潔にする為に、この3つのセクションの詳細な記述は本明細書では繰り返さないが、INRRA法1300の吸気定義1350及びパラメータ推定1370の各セクションについては、以下に詳細に述べる。
【0060】
まず、吸気定義1350について述べる。INRRA法1300のセクション1350の目的は、少なくとも1つの係数に基づき、吸気ノイズの特性を示すことであり、例えば、この場合は、終了点のセットと、吸気に対応する1つ以上の完全な吸気ノイズバーストの持続時間とに基づいている。吸気ノイズ検出セクション1330の判断を用いて、工程1352で好ましくは2値信号のINMmを生成し、ここでm=0、1、2、...、M−1であり、INMmは、吸気ノイズがあるかないかを時間インデックスmの関数として、1とゼロの値を用いて表す。この2値信号は、長さMのサンプルの回転バッファに保存されており、Mは、少なくとも2回の吸気ノイズバースト、又は予想されるもっとも遅い呼吸速度の息の期間を包含する2値信号の十分なサンプルを保存するのに十分大きい。好適な実施形態では、これは約15秒になる。この2値信号とMの値との時間分解能は、前述の吸気ノイズ検出セクション1330で用いた最短のサブフレーム時間により決定され、吸気ノイズモデル突き合わせセクションに依存し、スペクトルマッチング法のどれが工程1310で用いられるかに依存して、サンプル20個(2.5msec)又はサンプル80個(10msec)のどちらかである。
【0061】
1330の吸気ノイズ検出器出力が常に完璧ではないので、吸気ノイズの検出中に検出ミスが生じ、ノイズの本当の開始時間と持続期間に関し不明確になる場合がある。従って、工程1352により生成された2値の吸気ノイズの信号は、工程1354で周知の移動平均型のフィルタ又は他の好適なフィルタを用いて一体化される。このフィルタは、短い持続時間の検出ミスをなくして、呼吸気に対応する完全な吸気ノイズバーストを定義する更に正確な信号を生み出す。工程1354で生成されたこの信号から、ノイズバーストごとに、少なくとも1つの係数、例えば、正確な開始時間Si、終了時間Ei、息の持続期間Diなどを、工程1356で処理フレームの持続時間の精度内で決定することができる。2値信号INMmで表される吸気ノイズバーストの開始時間及び終了時間は、信号バッファ内の相対的なインデックスを確認することで得られる。持続時間Diは単一の吸気ノイズバーストについて以下のように定義される。
【0062】
【数14】
ここで、iは、長さM及び期間T秒の2値信号バッファにあるIT個の吸気ノイズバーストのうちのi番目を示す。これらの吸気ノイズバーストの係数の値については、ノイズバースト又は息ごとにパラメータのセット1つが、有限の回転バッファに保存されると理想的である。INRRAのアルゴリズムのセクションである1310と、1330と、1352と、1354とによって処理されたSCBAマスクマイクロホンの音声の結果の幾つかを、図14〜図17に示す。この結果群は、SCBAを着用した男性の話し手の音声が基となっており、静かな室内で録音された。図14は、ノイズバースト1410と混ざり合っている入力音声1420を示す。図15は、吸気ノイズモデル突き合わせセクション1310のスペクトル歪み尺度Dの出力の時間対振幅の表示1500を示す。図16は、吸気ノイズ検出器1330の2値出力の時間対振幅の表示1600を示す。図17は、息定義アルゴリズム1350の移動平均フィルタ要素1354の出力の時間対振幅の表示1700を示し、移動平均フィルタ要素1354は、未加工の検出器の出力を一体化し、吸気ごとの持続時間を正確に定義する。
【0063】
パラメータ推定1370のセクションは、吸気定義セクション1350による吸気ノイズの特性係数に基づき推定されるパラメータの例を説明する。決定されうるパラメータの例の2つは、ユーザの呼吸数及び近似の吸気される空気流量である。呼吸数は、連続する吸気ノイズバーストの順次的な開始時間の情報Siを用いて簡単に決定すればよく、情報Siは吸気定義セクションで決定すればよい。例えば、毎分の「瞬間の(instantaneous)」呼吸数は以下のように計算される。
【0064】
【数15】
ここで、Siは2つの連続したノイズバースト(吸気)の開始時間を秒で示したものである。それに応じて平均の呼吸数は以下のように計算される。
【0065】
【数16】
ここで、ITは、指定された期間T内に検出された連続する息(吸気ノイズバースト)の数である。
【0066】
吸気の間の近似の空気流の体積の推定は、吸気定義セクションにより決定された息の持続時間と、初期のエアタンク充填圧力及びレギュレータの平均の流量に関するある付加的な情報とからなされ、この情報は、例えばオフラインで決定される。吸気バルブが開放されているとき、空気供給タンクの圧力がエアレギュレータの最小の入力圧力レベルを上回ったままであれば、エアレギュレータによって、ある体積の空気がほぼ一定の圧力(周囲の空気/水の圧力の関数)でフェイスマスクに入る。なおまた、マスクレギュレータの吸気バルブが開放されている間、マスクへの気流速度はほぼ一定である。従って、供給用タンクから取り除かれ呼吸者に送達された空気の量は、吸気バルブが開放されている時間に比例する。バルブが開放されている時間は、吸気ノイズごとの持続時間から測定できる。
【0067】
充填されたときの供給タンクの初期の空気の量は、タンク容量V0と、充填圧力P0と、ガス温度T0と、一般ガス定数Rと、単位モルのガスの質量Nmとの関数であり、周知の理想気体の状態方程式、PV=NmRTから計算できる。初期の充填圧力及びタンクのシリンダ容積は既知なので、タンクのガスの温度とマスクのガスの温度とが同一であると仮定すると、このマスクの圧力で息をするのに使用可能な空気の体積は、以下のように与えられる。
【0068】
【数17】
よって、吸気イベントiの間にユーザに送達される空気の近似の体積は次のようになる。
【0069】
【数18】
ここで、IViは空気の体積、Diは吸気ノイズから決定される吸気イベントの持続時間、KRは特定のエアレギュレータの気流速度に関する校正係数である。KRは個々のシステムについて経験的に導かれてもよいし、場合によってはメーカーのデータから決定されてもよい。個々の吸気量IViと、時間Tまでに用いられた近似の合計空気量VTは、以下のように定義される。
【0070】
【数19】
ここで、ITは時間Tまでの吸気の総数である。従って、残りのタンクの供給空気は以下のようになる。
【0071】
【数20】
INRRA法の利点の中には、最小の音声帯域に亘る息のノイズを拾うマイクロホン信号を使用することができ、特別なセンサはいらないということがある。別の利点は、呼吸の検出が、スペクトル特性の安定したエアレギュレータが出すノイズの検出に基づいており、人によって異なる人間の息のノイズの検出には基づいていないことである。更なる利点は、呼吸の検出が、他のタイプの息の音響分析器のように特殊な周波数を検査することに固定されてはいないことである。なおまた、このシステムは環境の変化にもユーザ及び圧縮空気呼吸マスクシステムの違いにも自動的に適応する。従って、INRRA法は、瞬間の又は平均の呼吸数及び近似の空気使用容量のデータを連続的に提供することができ、このデータは、システム100の外部に、例えば、無線のデータチャネルを介してモニタへと自動的に送ることのできる貴重な情報である。当業者には、以上の利点が本発明のINRRAの実施形態に関連する利点のすべてを含むことを意図しておらず、その代表例としての役割を果たすことのみを意図していることが分かるであろう。
【0072】
本発明に係る3つの方法(ARINA、AMSE及びINRRA)はすべて、メモリデバイス(前述のシステム100に従うシステムに設けられている)に保存されたソフトウェアアルゴリズムとして実施されると好ましく、この方法群の工程は、例えばシステム100のDSP138などの好適な処理装置で実施される。本発明の自己相関及びLPCフィルタリングの方法に対応するアルゴリズムは、プロセッサ時間のほとんどを占めるだろう。しかし、このアルゴリズム群、即ち、ARINA法とAMSE法とINRRA法とに対応するアルゴリズム全部を、代案として、ハードウェアの狭い設置面積で効率的に実施すればよい。なおまた、AMSE法はARINA法の方法論を多く用いているので、本発明の別の実施形態では、この方法群を効率的に組み合わせればよい。
【0073】
本発明はその具体的な実施形態を併用して記載されたが、付加的な利点及び修正に当業者は容易に気がつく。従って、本発明は、その広範な態様において、図示し記述した、特殊な詳細にも、代表的な装置にも、説明に役立つ実例にも限定されていない。前述の説明に照らせば、種々の変更や修正や変形は当業者には明白であろう。例えば、吸気ノイズを識別し減衰させる方法を前述したが、本発明について呈示した方法論を、呼気ノイズなどの他のタイプのノイズや、以上の方法を用いて効率的に検出されやすく静止しているものと擬似されるスペクトル特性を持つ他のタイプのノイズなどに適用してもよい。従って、当然のことながら、本発明は前述の説明に限定されておらず、このような変更や修正や変形のすべてを、添付の請求項の精神及び範囲に従って含む。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】通信システムに結合された呼吸用圧縮空気送達システムを備えた先行技術のシステムの単純なブロック図。
【図2】図1に図示のシステムのマスクから無線へのオーディオ経路。
【図3】マスクの内側のスペクトルの応答を測定した大きさと、マスクマイクロホンの出力のスペクトルの応答を測定した大きさと、マスクとマイクロホンとマイクロホンアンプとについて計算して組み合わせた伝達関数の、それぞれの例の図。
【図4】SCBAエアレギュレータにより生成された吸気ノイズの例の図。
【図5】図4に図示した吸気ノイズの長期にわたる振幅スペクトルの図。
【図6】任意のSCBAマスクを着用している単一の話し手により生成された吸気ノイズの4つの重なり合うスペクトルの図。
【図7】音声と混ざり合った吸気ノイズバーストを示す、SCBAのマイクロホンからのオーディオ出力。
【図8】本発明の一実施形態に従って吸気ノイズを検出し除去する方法の単純なブロック図。
【図9】図8の方法で用いたスペクトルマッチング装置の一実施形態の単純なブロック図。
【図10】図8の方法で用いたスペクトルマッチング装置の別の実施形態の単純なブロック図。
【図11】本発明の別の実施形態に従って音声信号を等化する方法の単純なブロック図。
【図12】等化前の吸気ノイズスペクトルを、本発明に従い14次及び20次のLPC逆フィルタの等化後のスペクトルと比べた図。
【図13】バイオメトリクスのパラメータ群の測定に使用する為の本発明の別の実施形態に従って、吸気ノイズの周波数の持続時間を決定し、呼吸数及び空気使用量を決定する方法の単純なブロック図。
【図14】音声及び空気調整用吸気ノイズを含むマイクロホン入力からの信号の図。
【図15】図13に図示の方法により決定された図14に図示された信号の正規化されたモデル誤差の平均の図。
【図16】図13に図示の方法で生成された、吸気ノイズ検出器の出力信号の図。
【図17】図13に図示の方法で生成された、一体化された吸気の検出器の出力の図。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、通信システムに結合された圧縮空気送達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
消火活動などの危険な環境での活動に従事している職員同士間での良好で信頼性の高い通信は、職員自身の健康と安全を保ちながら職員たちが任務を達成するには必須である。作業環境によっては、圧縮空気送達システムを用いる必要があり、例として、自給式呼吸器(SCBA)のマスク及び空気送達システムや、自給式水中呼吸器(SCUBA)のマスク及び空気送達システムや、航空機の酸素マスクシステムなどがある。しかし、職員がこういった圧縮空気送達システムを用いていても、良好で信頼性の高い通信が保たれ職員の健康と安全が効果的に監視されることが望ましい。
【0003】
図1は、先行技術のシステム100の単純なブロック図を図示しており、システム100には、通信システム130に結合された圧縮空気送達システム110がある。圧縮空気送達システムには一般的に、SCBAマスクなどの呼吸マスク112と、エアシリンダ(図示せず)と、レギュレータ118と、レギュレータ118をエアシリンダに接続する高圧ホース120とがある。用いられている空気送達システム110のタイプに依存して、システム110はユーザを守る為に、例えば、ユーザにきれいな呼吸用空気を供給し、ユーザの肺に有害な毒素が達しないようにし、ユーザの肺を燃えている建造物の内側の過熱した空気によるやけどから保護し、ユーザの肺を水から保護し、ユーザを顔のやけど及び呼吸器のやけどから守る。なおまた、概してこういったマスクは、マスク着用者が吸い込んだときのみ空気が一般的に供給されるので、プレッシャデマンド型呼吸システムと考えられる。
【0004】
通信システム130には一般的に、従来のマイクロホン132があり、このマイクロホン132はマスク着用者の音声を録音するよう設計されており、マスクの内側や外側に取り付けられたり、マスクに取り付けられたり、マスク112の音声送信ポート部分を手に握られたりする。通信システム130には更に、マスク着用者が、自身の音声によって、例えば、他の通信ユニットと通信するために使用できる両方向無線機などの通信ユニット134がある。マスクマイクロホン装置132は、無線機134に直接的に接続されていたり、中間電子処理装置138を介して接続されていたりする。この接続は、従来の電線ケーブル(例えば136)を通じて実施することもできるし、従来の、RFや赤外線や超音波の、短距離送信/受信システムを用いて無線で実施することもできる。中間電子処理装置138は、例としてデジタル信号プロセッサとして実施すればよく、インタフェースの電子機器と、オーディオアンプと、この装置自身とマスクマイクロホンの為のバッテリ電力とを備えている場合がある。
【0005】
システム100などのシステムの使用に付随する幾つかの欠点がある。この制限を、説明を簡略化する為に、図1に図示されたシステム100のマスクから無線へのオーディオ経路を図示する図2のブロック図を参照することにより記載する。唇からの音声入力210(例えばSi(f))がマスク(例えばSCBAマスク)に入り、このマスクの音響伝達関数220(例えばMSK(f))は音響共鳴及びヌルにより特性を示される。この共鳴及びヌルは、マスクの空洞の容積及びマスク表面の内部からの音の反響によるものである。伝達関数MSK(f)により特性を示されるこの影響は、入力音声波形Si(f)を歪ませそのスペクトル成分を変える。別の音源は、呼吸の為の装置から生成されたノイズ230(例えばレギュレータの吸気ノイズ)であり、このノイズもマスクに入りMSK(f)の影響を受ける。別の伝達関数240(例えば、NPk(f))は、ノイズがマスク内で音声の場所とはわずかに異なる場所から生成されるという事実を説明する。音声とノイズS(f)とは、マイクロホンによって音響エネルギーから電気信号へと変換され、マイクロホンそのものは伝達関数250(例えばMIC(f))を有している。次にマイクロホン信号は一般的に、伝達関数260(例えばMAA(f))を持つオーディオアンプ及び他の回路を通過する。次にMAA(f)の出力信号270(例えばS0(f))は、更なる処理及び送信に向け無線機へと入力される場合がある。
【0006】
システム100などのシステムの欠点に戻ると、こういった欠点の例は、このシステムによるシステムの動作の一部としてのうるさい音響ノイズの生成に関わるものである。より具体的には、こういったノイズのせいで、特に無線機などの電子システムと併用する際に、通信の質が著しく劣化しかねない。SCBAシステムのような圧縮空気送達システムによって持ち込まれる目立つ人工音のノイズの1つが、レギュレータの吸気ノイズであり、図2にボックス230で図示されている。
【0007】
レギュレータの吸気ノイズは、マスク着用者が吸い込むたびに生ずるブロードバンドのノイズバーストとして生ずる。マスク内の負圧によってエアレギュレータのバルブが開放されるので、高圧の空気をマスクに入れることになって、シューとうるさい音が出る。このノイズは、その後に続く音声と共に、マスク通信システムのマイクロホンに拾われ、エネルギーはその音声とほぼ同じである。吸気ノイズは、一般的に吸気時にのみ生ずるので、一般に音声をかき消しはしない。しかし、吸気ノイズは、数々の問題を引き起こす恐れがある。その問題の例を以下に述べる。例えば、吸気ノイズはVOX(音声作動スイッチ)回路を起動させる恐れがあるので、無線チャネルを開放して占有し、場合によっては同一の無線チャネルの他の話し手に干渉することになる。なおまた、デジタル無線機を利用する通信システムでは、吸気ノイズはVAD(音声活動検出)アルゴリズムを起動させノイズ抑制アルゴリズムのノイズ推定の混乱を引き起こす恐れがあり、更に一連の無線信号処理をもダウンさせかねない。加えて、吸気ノイズは概して聴取者をいらいらさせる。
【0008】
システム100などのシステムの第2の欠点を以下に述べる。これらのシステムは、一般的に鼻と口を包含する又は顔全体を包含するマスクを用いている。空気システムのマスクは、ジオメトリの決まった密閉された空洞を形成しており、この空洞が音響共鳴及び反共鳴(ヌル)の特定のセットを呈示し、このセットは、マスクの容積及び内部の反響面のジオメトリの関数であり、マスク内で出される音声のスペクトルの性質を変える。より具体的には、エアマスクのオーディオ経路(図2)の特性を示す上で、このシステムで最も取り組みがいのある部分は、話し手の唇からマスクマイクロホンへの音響伝達関数(220)である。このスペクトル歪みは、取り付けられた音声通信システム、特に、原型どおりでない音声を取り扱う為に最適化がなされていないパラメトリックデジタルコーデックを用いたシステムの性能を著しく劣化させる恐れがある。マスクの音響の歪みは、特にパラメトリックデジタルコーデックを伴う場合に、通信システムの質及び了解度に影響を及ぼすことが証明されている。一般に、吸気ノイズは別にして、通話品質の大きく損ねてしまう空気システムの影響は、マスクの音響効果が低いせいであると思われる。
【0009】
図3が図示しているのは、マスクの内側のスペクトルの応答を測定した大きさ(320)、マスクマイクロホンの出力のスペクトルの応答を測定した大きさ(310)、マスクとマイクロホンとマイクロホンアンプとについて計算して組み合わせた伝達関数(330)の、それぞれの例である。この特定のデータ群は、ヘッドトルソシミュレータに取り付けたSCBAマスクを用いて得た。3Hz〜10KHzの音響加振によって、人工口シミュレータを励振する正弦波を一掃した。図3が図示しているとおり、スペクトルは、周波数が500Hzを下回る場合と4.0KHzを上回る場合には、主にマイクロホンのプリアンプバンドパスフィルタの為に著しく減衰し、50〜4.0KHzの重要な音声通過帯域領域に強いスペクトルのピーク及びノッチが多数ある。このスペクトルのピーク及びノッチは一般に、コムフィルタリングをもたらすマスク内側の反響と、空洞共振の条件とにより引き起こされる。重大なスペクトルのピーキング及びノッチングは、音声のピッチ要素とフォルマントとが通過帯域を前後する際にこれらを変調し、その結果、質は劣化し音声は歪む。このようなシステムの特性を示す伝達関数(単数又は複数)を決定し、そのような伝達関数を用いて等化システムを定義し音声の歪みを低減させることが望ましい。
【0010】
システム伝達関数を適応的に決定し送信チャネルを等化する為の実績のある技術が多数ある。システム伝達関数を決定するのに効果的な方法の1つは、ブロードバンドの基準信号を用いてシステムを励起しシステムのパラメータ群を決定することである。多くの音声伝送の環境の伝達関数を推定する際のある問題は、好適なブロードバンドの励起信号を容易に使用できないことである。共通の1つのアプローチは、長期の平均の音声スペクトルを基準として用いることである。しかし、この基準を用いる適応時間は、特に音声入力がまばらな場合に長くなるおそれがある。加えて、長期の音声スペクトルは、音声スペクトルを相当に変える可能性のある叫ぶことや精神的なストレスを伴うことの多い公共サービスの活動の場においては、人によってはかなり違ったり、個人個人でかなり違ったりする恐れがある。
【0011】
システム100などのシステムに関連する別の欠点は、マスク着用者のある一定のパラメータ群、例えば、バイオメトリクスのパラメータなどを測定する為のより効率的な方法及び装置がないことである。危険な環境で作業しており、システム100などのシステムを用いる場合のある個人のそういったパラメータの測定値は、その個人の安全性及び遂行能力を監視する為に重要である。例えば、個人の呼吸数及び空気消費量の測定値は、その個人の、作業量、生理学的な適応度、ストレスのレベル、保存されている空気供給源の消費量(即ち使用可能な作業時間)の特性を示す重要なパラメータである。呼吸を測定する従来の方法は、サーミスタセンサを用いて胸部のインピーダンスプレチスモグラフィ又は空気流の温度を測定し利用することを伴う。しかし、こういった従来の方法を用いて、消防活動などの肉体的に大変な環境で作業している個人から信頼できる測定値を得ることは、身体に取り付けられ測定値を得る為に一般的に用いられるセンサ及び人工物の移動を引き起こす可能性がある激しい身体運動のせいで、更に難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、吸気ノイズを効果的に検出し減衰させ、音声を等化させ(即ち、歪みの影響を取り除き)、通信システムに結合された圧縮空気送達システムを備えたシステムでの、ユーザに関連するパラメータ群を測定する方法及び装置に対する需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様は、通信システムに結合された図1に図示のシステム100などの圧縮空気送達システムの吸気ノイズを検出し除去する方法及び装置である。そして、本発明の本実施形態に係る方法を、本明細書ではARINA(エアレギュレータの吸気ノイズ減衰)法と呼ぶ。エアレギュレータの吸気ノイズを識別し除去するARINA法の基盤は、音声と比較した場合と他のタイプのノイズ、例えば種々の環境騒音と比較した場合に、吸気ノイズが相対的に定常だということである。ARINA法800のブロック図が図8に示されており、この図を4つのセクションに分割できる。即ち、ノイズモデル突き合わせ810、ノイズ検出830、ノイズ減衰850、ノイズモデル更新870である。
【0014】
ARINA法800の基本的な方法論は以下のようにまとめられる。方法800は、吸気ノイズのモデル化を、好ましくはデジタルフィルタ(例えば全極の線形予測符号化(LPC)デジタルフィルタ)を用いて行う。方法800は次にオーディオ入力信号(即ち、マスクマイクロホンに拾われた音声及びノイズ)をノイズモデルフィルタの逆フィルタを用いてフィルタリングし、逆ノイズモデルフィルタの出力のエネルギーを入力信号のエネルギー又は他のエネルギーの基準と比較する。入力信号とモデルとで類似したスペクトルマッチングが生ずる信号周期の間、入力信号を含むレギュレータの吸気ノイズを所望のレベルまで減衰させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ここで本発明の好適な実施形態を、添付の図面に関し、単に例として述べる。
本開示は本発明の原理の一例として考えるべきであって、本発明を図示し記載した具体的な実施形態に限定することは意図していないとの了解の下、具体的な実施形態を図に示し本明細書で詳細に述べるが、本発明は多くの異なる形の実施形態をとりうるものである。更に、本明細書で用いた用語及び言葉は、制限するものと考えられるべきではなく、むしろ単に説明的なものと考えられるべきである。更に、図に示されている各要素が、説明を簡単明瞭にする為に必ずしも一律の縮尺に従っていないことも分かるであろう。例えば、要素のうち幾つかの寸法は相対的に誇張されている。更に、適切であると考えられる場合には、対応する要素を示す為に参照数字が複数の図で繰り返されている。
【0016】
本発明の種々の態様を詳細に述べる前に、簡潔に前述したエアレギュレータの吸気ノイズについてより詳しく記述する。吸気ノイズは、人物が吸い込みレギュレータバルブが開放された際にSCBA又は他の圧縮空気送達システムのマスクに高圧の空気が入った結果、発生する。バルブの乱流が、ブロードバンドのシューという非常にうるさいノイズ音を出し、このノイズ音はSCBAマスクへと直接結合されており、その振幅はマイクロホンにおいて音声信号に匹敵する。SCBAマスクの内側で録音される一般的な吸気ノイズ400の例とその広帯域のスペクトログラム500を、それぞれ、図4と図5に示す。
【0017】
図5で分かるように、ノイズスペクトルはブロードバンドであり、目立つスペクトルピークが生じているのは、約500Hz、約1700Hz、約2700Hz、約6000Hzである。ピークはマスク内の共鳴によるものであり、コムフィルタリングはマスク内部の反響によるものであり、マスクのモデル、サイズ、構成が違うと、周波数及び振幅は変動する場合がある。マスクが顔に配置されると内部全体の幾何形状は本質的に一定なので、ノイズスペクトルの特色は一般的に、マスクと着用者との特定の組み合わせでは変化しない。このことは図6で実証されており、図6には、任意のSCBAマスクを着用している同一の話し手についての、SCBAマスクマイクロホンからの3つの異なる吸気ノイズのスペクトル(610、620、630)を、重ね合わせて示す。この一貫性は別々の話し手についても別々のメーカーのマスクについても観察された。なおまた、別々の話し手が同一のマスクを着用している場合のエアレギュレータのノイズのスペクトルの類似性が高いことも観察された。
【0018】
最後に、図7には、SCBAシステムからの録音された音声710の例を図示する。図7が実証しているように、人々は普通、吸い込みながら話そうとはしないので、音声そのものに吸気ノイズ720が影響することはない。しかし、ノイズのエネルギーとスペクトルは、無線機の音声検出器とノイズ抑制回路とに問題を引き起こし聞き取る側をいらいらさせる。
【0019】
本発明の第1の態様は、通信システムに結合された図1に図示のシステム100などの圧縮空気送達システムの吸気ノイズを検出し除去する方法及び装置である。そして、本発明の本実施形態に係る方法を、本明細書ではARINA(エアレギュレータの吸気ノイズ減衰)法と呼ぶ。エアレギュレータの吸気ノイズを識別し除去するARINA法の基盤は、音声と比較した場合と他のタイプのノイズ、例えば種々の環境騒音と比較した場合に、吸気ノイズが相対的に定常だということである。ARINA法800のブロック図が図8に示されており、この図を4つのセクションに分割できる。即ち、ノイズモデル突き合わせ810、ノイズ検出830、ノイズ減衰850、ノイズモデル更新870である。
【0020】
ARINA法800の基本的な方法論は以下のようにまとめられる。方法800は、吸気ノイズのモデル化を、好ましくはデジタルフィルタ(例えば全極の線形予測符号化(LPC)デジタルフィルタ)を用いて行う。方法800は次にオーディオ入力信号(即ち、マスクマイクロホンに拾われた音声及びノイズ)をノイズモデルフィルタの逆フィルタを用いてフィルタリングし、逆ノイズモデルフィルタの出力のエネルギーを入力信号のエネルギー又は他のエネルギーの基準と比較する。入力信号とモデルとで類似したスペクトルマッチングが生ずる信号周期の間、入力信号を含むレギュレータの吸気ノイズを所望のレベルまで減衰させればよい。
【0021】
次に、図8に図示されているARINA法800の詳細を見ると、処理の第1の工程は、方法800のノイズモデル突き合わせセクション810によって入力信号802を基準ノイズモデルと連続的に比較することにより、吸気ノイズの発生を検出する工程であり、この工程は、好適な実施形態では、許容しうる実装の複雑さに依存して図9又は図10に従って実施される。しかし、当業者には、代替のスペクトルマッチング法を用いてもよいことが分かるであろう。これまでに示した図9及び図10に図示の通りのこの2つの好ましいマッチング法は、本明細書では正規化されたモデル誤差(即ちNME)法及びItakura‐Saito(即ちI‐S)歪み法と呼ぶ。どちらの方法でも、基準ノイズモデルは、デジタルフィルタによって表され(912、1012)、このデジタルフィルタは、吸気ノイズのスペクトル特性を概算する。好適な実施形態では、このモデルは、LPC係数のセットにより規定される全極型(自己回帰型)フィルタとして表される。しかし、当業者には、代替のフィルタモデル、例として既知のARMA(自己回帰移動平均)モデルを、全極型モデルの代わりに用いてもよいことが分かるだろう。
【0022】
基準ノイズモデルフィルタの係数は、吸気ノイズの少なくとも1つのデジタル化されたサンプルから導かれた自己相関係数のセットから得られる。初期のノイズサンプル及び対応する初期の自己相関係数群(872)は、ノイズをあらかじめ何回でも録音しておくことによりオフラインで得られ、本発明の実装に決定的なものではない。なおまた、実験が示しているのは、あるSCBAマスクの初期のノイズサンプルが、例えば、同一の設計の他のマスクに対してもうまく機能し、場合によっては、異なる設計のマスクに対してもうまく機能することである。自己相関係数は、サンプリングされたノイズの未加工のデータから直接的に計算することもできるし、LPCや反射係数などの他の通常用いられるスペクトルのパラメータ表現から、当業者には周知の共通の方法を用いて導くこともできる。
【0023】
好適な実施形態では、ノイズモデルの自己相関係数は以下の標準的な公式に従って計算される。
【0024】
【数1】
ここで、Riは、最大でp個の自己相関係数のうちi番目の係数であり、xnは一般的な吸気ノイズの信号サンプルセグメントのn番目のサンプルであり、サンプルは最大でN個あり、R0はセグメント全体のエネルギーを表す。自己相関関数の次数、pは、一般的に10〜20であり、好適な実施形態の値は14である。なおまた、N信号サンプルは、スペクトル推定を平滑化する為に、自己相関が行われる前にハミング窓を用いて窓掛けされると理想的である。ハミング窓は以下の数式で記述される。
【0025】
【数2】
当業者には、他の窓掛け法を用いてもよいことが分かるであろう。
【0026】
次に、ノイズモデルの自己相関係数を用いて、10次のノイズモデルのLPC係数、a1、a2、・Aapのセットを決定し、全極型線形予測モデルフィルタを次のz領域表現の伝達関数で表す。
【0027】
【数3】
ここで、z=e−jnωtはz変換の変数である。この例では、10次のLPC係数が決定された。しかし、特定の実装に基づき、異なる次数のLPC係数を選択することもできる。自己相関パラメータからLPCパラメータへの変換(工程912、工程1012)を、当業者に既知のパラメータ変換技術を幾つでも用いて行ってもよい。好適な実施形態では、自己相関パラメータからのLPCパラメータの導出を、当業者には周知のダービン法を用いて行ってもよい。
【0028】
次に、図9に図示のNMEのスペクトルマッチング法の詳細を見てみると、導いた全極型LPCノイズフィルタモデルを逆フィルタにして、逆のLPCフィルタを形成する(工程914)。
【0029】
【数4】
理想的には、マスクマイクロホンから得、音声と吸気ノイズであるS(z)とを含むローパスフィルタリングされサンプリングされたオーディオ入力信号802が、逆フィルタH(サーカムフレックス)(z)(工程914)を通過して以下の出力信号を得る。
【0030】
【数5】
次に、逆フィルタの入力信号のエネルギーEinと、逆フィルタの出力信号のエネルギーEoutとが計算され(それぞれ工程918と工程916とで)、歪み尺度Dが工程920で計算されてノイズモデルと入力信号との間の類似尺度として機能する。Dの理論上の下限は無限次元ではゼロだが、実際には、下限は入力信号により決定され、有限次元のノイズモデルにどの程度一致しているかを示すものである。この実装では、歪み尺度はEoutとEinとの比率により定義され、正規化されたモデル誤差(NME)と呼ばれて、工程920で以下のように計算される。
【0031】
【数6】
次に、ノイズモデルにどの程度一致しているかに従い入力信号のエネルギーを取り除く。好適な実施形態では、先に記載された信号のフィルタリングは時間領域の畳み込みによってなされるが、前述の式で示したように周波数領域で行うこともできる。
【0032】
ARINA法800の信号処理は一般に、セグメント化されたフレームごとになされる。好適な実施形態では、入力信号802は、ローパスフィルタリングされ、8.0KHzでサンプリングされ、サンプル80個のブロック群にバッファされ(10msec)、逆ノイズモデルフィルタを通過する(式5)。従って、入力信号802の連続した80個のサンプルセグメントに対し、あらゆるフィルタリングがなされると理想的である。次に、逆ノイズモデルフィルタの正規化されたモデル誤差(NME)は、フィルタの出力フレームのエネルギーを入力信号のフレームのエネルギーで分割することにより計算される(式6)。しかし、この計算は、時間分解能を高めるべくサブフレームベースでなされると理想的である。従って、80項目のフレームはそれぞれサブフレーム群に分割され、例えば4項目、20項目のサブフレーム群に分割されるが、必要な正確度に依存して代替のサブフレームの分割がなされる場合がある。よって、最新の16個のサブフレームの出力フィルタエネルギーEoutを平均した量を、時間的整合を図られた対応する16個のサブフレームの入力フィルタエネルギーEinの平均で分割することにより、正規化されたモデル誤差の信号(NME)の全体が平滑化される。これによって分析の遅延が増えることはないが、過渡的なドロップアウト取り除く助けとなり、また、レギュレータのノイズスペクトルを変える恐れのある他のうるさいバックグラウンドノイズの影響を取り除く助けにもなる。従ってNMEの平均値は、本発明のこの実装では、ノイズモデルと入力信号のスペクトルとの類似性の尺度として用いられる。
【0033】
好適な実施形態では、図10に図示されている、第2の、更に複雑だが更に正確なノイズモデルのマッチング法810は、Itakura‐Saito歪み法を修正したものである。2つの信号の間でのスペクトルの類似性を決定するI‐S方法は、当業者には周知である。この方法では、ノイズモデルの逆フィルタの残留エネルギーを、前述のNME法に見られるように入力信号のエネルギーと比較する代わりに、「最良の(optimal)」信号フィルタの残留エネルギーと比較する。フィルタが「最良」なのは、現在の信号のセグメントのスペクトルに最もよく一致するという意味においてである。
【0034】
最適であるようフィルタリングされた信号に対応する残留エネルギーは、工程1018〜工程1024を用いて計算される。I‐S方法では、工程1018で、入力信号802のサンプル80個の連続したバッファ2つを組み合わせて、単一のサンプル160個のセグメントにすると理想的である。サンプル160個のセグメントは、好ましくは以下に与えられる160点のハミング窓を用いて窓掛けされる。
【0035】
【数7】
窓掛けされた信号データを次に、式1に記載した方法を用いて自己相関させる。工程1018で生成されるこの自己相関係数群は、R(サーカムフレックス)iで示されており、i=0、1、2、...、pである。LPC係数の対応するセットは、工程1020で、自己相関係数から導かれ、その際、好ましくはダービンアルゴリズムを、工程1012で基準ノイズモデルのパラメータ群の生成に用いられたのと同じように用いる。工程1020で生成された信号モデルのLPC係数は、a(サーカムフレックス)iで示されており、i=1、2、...、pである。工程1022では、このLPC係数(工程1020)を以下の式9に従って自己相関させ、b(サーカムフレックス)iをもたらす。このパラメータ群を用いて、このフィルタを通過する信号の残留エネルギーEsを、工程1024で以下のように計算する。
【0036】
【数8】
【0037】
【数9】
ノイズモデルを通過する入力信号のエネルギーは、工程1012〜工程1016を用いて計算される。工程1012では、ノイズモデルのLPC係数は、前述したようにノイズモデルの自己相関係数(874)から計算される。工程1012で生成されたこのLPC係数群は、aiで示されており、i=1、2、...、pである。工程1014では、LPC係数(工程1012からの)を、以下の式11に従って自己相関させ、biをもたらす。このパラメータ群と、工程1018で計算される自己相関シーケンスとを用いて、工程1016で、基準ノイズモデルを通過する信号のエネルギーであるR(サーカムフレックス)iを式10で与えられるように計算する。
【0038】
【数10】
【0039】
【数11】
スペクトル歪みの尺度、Dは、基準ノイズモデルに対する「最良の」信号モデルであり、工程1028で以下に定義されているよう計算される。
【0040】
【数12】
信号モデルが基準ノイズモデルに似ているほど、歪み尺度は下限の1.0に近づく。この歪み尺度は、ARINA法800のノイズ検出セクション830に用いられて、吸気ノイズの存在を決定する。I‐S歪み尺度は好適な実施形態では160個のサンプルを用いて計算される。I‐S歪み尺度により決定された吸気ノイズの分類は、サンプル160個のセグメント中のサンプル80個のフレームそれぞれに関連している。なおまた、初期のノイズモデルを(例えば、初期の自己相関係数872に基づいて)生成したり、ノイズモデルを更新したりするには、前述し以下に更に詳細に記載するノイズモデル更新セクション870に従って、工程1012及び工程1014を行えばよい。
【0041】
ARINA法800のノイズ検出部830では、スペクトルマッチング810(即ち、入力信号とノイズモデルとの間の類似尺度を表すNME又はI‐S歪み尺度)から導かれた値がここで、経験的に導かれたしきい値(例えばDmin1)と比較される(工程832)。この検出しきい値の選択を、吸気ノイズの存在を検出するよう、更に、音声又は他のタイプのノイズを間違って吸気ノイズに分類してしまわないよう行う。
【0042】
なおまた、ノイズフィルタモデルの特定性と、吸気ノイズのスペクトルの変形と、ノイズモデルとのある程度の言語音の類似性とに依存して、例えば、誤検出が生ずる恐れがある。従って、本物のエアレギュレータの吸気ノイズの持続時間は、人工音声と比べるとかなり長期間に亘るので、ノイズの持続時間のしきい値テストも適用する(工程834)と理想的である。従って、検出が認可される前に、検出しきい値は連続したフレーム「K1」の所定の数(例えばフレーム4つ)を満たす必要がある。相対的な信号エネルギーと、波形のゼロ交差と、他の特徴パラメータの情報とが、検出方式に取り込まれ、音声と吸気ノイズとの弁別が改善される。従ってしきい値の基準が両方とも満たされた場合(工程832及び工程834)、スペクトルマッチングは、容認できる程度に類似していると考えられ、吸気ノイズがいま存在していると仮定される。
【0043】
ARINA法800のノイズ減衰部850では、ノイズ検出部830の出力を用いて、入力信号802が通過する出力信号の乗算器(852)をゲート制御する。吸気ノイズが検出された場合、工程854で乗算器のゲインGがある所望の減衰値「Gmin」に設定される。この減衰ゲイン値は、ノイズを完全に除去するよう0.0だったり、吸気ノイズを完全には除去せず抑制するようこれより高い値に設定されたりする。聴取者にエアレギュレータが機能していることを確信させる為に、徹底した抑制が望まれない場合がある。好適な実施形態ではGminの値は0.05である。この場合とは違って、吸気ノイズが検出されなかったら、ゲインGは、音声信号を減衰させるなどの為に、1.0に設定されると理想的である。このゲーティング/乗算方式を変形した方式を用いても良い。例えば、ゲーティングのアタックとディケイの急峻さを低減する変形した方式を用いると、吸気ノイズの直前又は直後に生ずる音声を減衰させる可能性が低くなり、それによって、音声の知覚品質が改善する。なおまた方法800から容易に分かるように、本発明の重要な利益は、レギュレータのノイズが検出されたときを除き元の信号を変えないことであり、この点は従来の連続的なノイズフィルタリング法とは違う。
【0044】
ARINA法800の重要な要素は、検出の目的でノイズモデルを周期的に更新できることである。例えば、経時的に、顔に付けたエアマスクの動きによって、音響伝達関数に対するそのエアマスクの影響が変化する。更に、エアマスクを着用する人が違ったり使用するマスクが違ったりすることは、初期の基準ノイズモデルのスペクトルが実際の吸気ノイズスペクトルから外れるかもしれないことを意味する。元の基準ノイズモデルを周期的に更新することで、現在の正確な基準ノイズモデルを保つことができる。それに応じて、ARINA法800のノイズモデル更新セクション870を用いてノイズモデルを更新する。
【0045】
ノイズモデル更新セクション870はノイズ検出セクション830の出力を用いて、レギュレータの吸気ノイズの基準LPCフィルタモデルを更新するときを決定する。例えば、ノイズ検出セクション830からの出力を、工程876で、経験的に決定された第2のしきい値(例えばDmin2)と比較し、ノイズモデルを更新するかどうかを決定することがある。しきい値を満足している場合、吸気ノイズとして検出された連続した多数のサブフレームが数えられ(工程878)、各サブフレームの信号サンプル群がバッファに保存される。工程880で、連続したノイズのサブフレームの数がしきいの数「K2」(例えば、好適な実施形態では、サブフレーム8個、サンプル160個)を超えたとき、ノイズモデルを更新するという判断がなされる。ノイズのないサブフレームが検出されたとき(例えば、工程832、工程834、工程876のいずれかで)、ノイズのフレームの数は工程884でゼロにリセットされ、ノイズのフレームの数は工程878で更新される。よって、現在検出されている吸気ノイズを表す、「K2」の連続した信号のサブフレームの自己相関係数は、工程882で、既に提示した式1及び式2を用いて計算される。
【0046】
この新しい自己相関係数群を用いて、工程874でノイズモデルの自己相関係数を更新する。理想的には、工程882で計算された自己相関係数を、工程874で以前のノイズモデルの自己相関係数によって平均し、これを、例えば以下のような単純な重み付けの式を用いて行う。
【0047】
【数13】
ここで、RiREFは現在の基準ノイズモデルの自己相関係数、RiNEWは現在検出されている吸気ノイズのサンプルの自己相関係数、αは重み係数で1.0〜0.0であり、初期の基準モデルをどのくらい速く更新するかを決定する。この重み係数を、吸気ノイズのスペクトル特性の変化がどのくらい速いかに依存して調整でき、この速さは、前に言及した通り、通例ゆっくりである。そしてノイズモデルの逆フィルタのLPC係数の新しいセットは、更新されたモデルの自己相関から、工程912及び工程1012で再計算される。ノイズモデルの調整には、誤検出のせいでノイズモデルから大きく逸脱しないよう、制約がある場合がある。加えて、必要ならばシステムを初期のモデルの状態にリセットできるよう、初期の基準ノイズモデルの係数(872)を保存する。ノイズモデル更新セクション870を参照することによる方法800の前述の適応能力によって、システムを特定のマスク及びレギュレータの特性に適応させることができ、最良の検出性能がもたらされる。
【0048】
ARINA法800の利点には、音声信号そのものは処理アルゴリズムの影響を、従来の連続的なフィルタリングを用いるアルゴリズムの場合のように取り返しがつかないほどには受けないということがある。付加的な利点は、本明細書で用いたLPCのモデル化は、単純で、リアルタイムでたやすく適応でき、回りくどくなく、コンピュータ的に効率的なことである。当業者には、以上の利点が本発明のARINAの実施形態に関連する利点のすべてを含むことを意図しておらず、その代表例としての役割を果たすことのみを意図していることが分かるであろう。
【0049】
本発明の第2の態様は、通信システムに結合された図1に図示のシステム100などの圧縮空気送達システムでの音声信号を等化する方法及び装置である。そして、本発明の本実施形態に係る方法を、本明細書ではAMSE(エアマスク音声等化)法と呼ぶ。AMSE法の等化の基盤は、音声と比較した場合にも、他のタイプのノイズ、例えば種々の環境騒音と比較した場合にも、吸気ノイズが相対的に定常だということである。レギュレータのノイズにも音声信号にもマスクの同一の共鳴条件が影響を及ぼすので、音声とノイズとの音源の位置の違いによって音響反射によるピーク及びヌルはノイズと音声とでわずかに異なるものの、ノイズを等化することによって、音声信号の等化に適したイコライザもが得られるはずである。
【0050】
AMSE法は、あらゆるマスクのタイプの圧縮空気呼吸装置(例えばSCBA)に存在するブロードバンドのエアレギュレータの吸気ノイズを用いて、マスクの空洞及び構造によって生じた音響共鳴のスペクトルピーク及びスペクトルヌル(即ち、スペクトルの大きさの音響伝達関数)を推定する。スペクトルについてのこの知識を用いて、リアルタイムで補償デジタル逆フィルタを構築し、このフィルタを適用してスペクトル的に歪んだ音声信号を等化し、マスクなしの場合に出る歪みのない音声を近似する出力信号を生み出す。この作用によって、マスクマイクロホンから得られるオーディオの質が改善され、通信の了解度を改善できる。
【0051】
次にAMSE法の詳細を見ると、方法1100のブロック図が図11に示されており、4つのセクションに分割できる。即ち、ノイズモデル突き合わせ1110、ノイズ検出1130、マスク音声等化1150、ノイズモデル更新1170である。AMSE法のノイズモデル突き合わせセクションと、ノイズ検出セクションと、ノイズモデル更新セクションとは、これまでに詳細に述べたARINA法の対応する各セクションと理想的には同一である。従って、簡潔にする為に、この3つのセクションの詳細な記述は本明細書では繰り返さないが、AMSE法1100のマスク音声等化セクション1150(破線の区域内)については以下に詳細に述べる。
【0052】
AMSE法1100の音声等化セクション1150を用いて、吸気ノイズの基準自己相関係数を利用し、上の式3を用いて工程1152でノイズのn次のLPCモデルを生成する。工程1152で生成されたLPCモデルは、マスクの伝達関数、例えば図2のMSK(f)の特性を示し、吸気ノイズについてもノイズ経路達関数NP(f)を含んでいる。好ましくは14次のモデルが好適だが、どの次数のモデルも利用できる。当業者には、代替のフィルタモデル、例として既知のARMA(自己回帰移動平均)モデルを、全極型モデルの代わりに用いてもよいことが分かるだろう。なおまた、フィルタリング動作を、本発明の好適な実施形態に関してこれまでに述べた時間領域のフィルタリング動作とは対照的に、周波数領域で実施してもよい。
【0053】
LPCモデルの係数を好ましくは逆フィルタで用い(式4に従って)、この逆フィルタを工程1156で音声信号が通過する。音声信号が逆フィルタを通過することにより、入力信号が効果的に等化され、それによって、図2のマスク伝達関数MSK(f)により引き起こされたスペクトル歪み(ピーク及びノッチ)が取り除かれる。工程1158では、等化された信号に対し、好適な固定されたポストフィルタを用いたポストフィルタリングを行うと理想的であり、吸気ノイズが少しでもある部分をすべて補正する、又は、指定された音質を音声信号にもたらして次に続く特殊なコーデック又は無線機の要求に最もよく合わせる。このポストフィルタリングは更に、図2のノイズ経路達関数NP(f)を補償するよう用いられる場合もある。
【0054】
エアレギュレータのノイズに対するAMSE法800のイコライザの効果は、次数の違う2つの等化フィルタについて図12に示されている。具体的には、図12は、等化前の吸気ノイズバーストのスペクトル表現1210を図示している。更に図示されているのは、14次等化フィルタ(1220)を用いた等化後の吸気ノイズのスペクトルと20次等化フィルタ(1230)を用いた等化後の吸気ノイズのスペクトルである。見ての通り、スペクトルのピーキングは、20次等化フィルタによって極めて良好に平坦化され、14次等化フィルタを用いた場合は一応満足できる程度に良好である。なおまた、このフィルタ群によって等化されたマスク音声の聞き取りテストが示したのは、等化されていない音声と比べると、等化フィルタを用いることにより音声の質が著しく改善されたことである。加えて、この2種類のフィルタ次数の間では音声の知覚品質に大差がないことが分かった。
【0055】
AMSEのアルゴリズムのアプローチの利点は、1)このアプローチが、エアマスクシステムに固有な、規則的でスペクトル的に安定したブロードバンドのレギュレータノイズを、マスクの音響共鳴の性質を決定する為の励起源として用いていること、2)システム伝達関数のモデル化が、単純で定評ある効率的な技術を用いてリアルタイムで達成されること、3)等化が、同一の効率的な技術を用いてリアルタイムで達成されること、4)システム伝達関数のモデルが、変化する状況にリアルタイムで連続的に適応できることである。当業者には、以上の利点が本発明のAMSEの実施形態に関連する利点のすべてを含むことを意図しておらず、その代表例として役立つことのみを意図していることが分かるであろう。
【0056】
本発明の第3の態様は、吸気ノイズの持続時間及び周波数を決定し、通信システムに結合された図1に図示のシステム100などの圧縮空気送達システムの呼吸数及び空気使用量を決定する方法及び装置である。そして、本発明の本実施形態に係る方法を、本明細書ではINRRA(吸気ノイズ呼吸数分析器)法と呼ぶ。INRRA法は本質的に、人物の呼吸音を測定する代わりに、エアレギュレータが出した音を監視することにより呼吸を測定する間接的な方法である。INRRA法の基盤は、SCBAなどの圧縮空気呼吸装置の空気流が一方向だということである。空気はシステムには空気源及びレギュレータからのみ入ることができ、排気バルブを通ってのみ出られる。吸気バルブと排気バルブとは同時に開放できない。従って、レギュレータの吸気バルブの動きはユーザの呼吸サイクルに直接関係している。
【0057】
レギュレータの吸気バルブが開放していることの指標の1つは、レギュレータの吸気ノイズである。吸気ノイズは、高い圧力の空気がSCBA又は他の圧縮空気送達システムのマスクに入った結果である。マスクは気密性があるので、人物が吸い込んだときに、マスク内にわずかな負圧が生まれ、この負圧によってレギュレータバルブが開放され圧縮されたタンクの空気が入る。バルブの乱気流は、ブロードバンドのシューといううるさいノイズ音を出し、この音はSCBAマスクへと直接結合されており、マイクロホンに拾われる恐れがあり、吸気のたびに生じる。既に説明されたように、ノイズは急峻でその振幅は吸気の持続時間に亘り非常に一定しており、開始時と終了時の時間分解能は非常に良好である。任意のマスクタイプと着用者とについて、吸気ノイズのスペクトル特性は非常に安定しており、対照的に、直接の人間の息の音は、開いている口の大きさ、声道の状態、肺の空気流などの係数によってかなり異なる。INRRAはエアレギュレータの吸気ノイズの安定性を呼吸の数の尺度として利用する。
【0058】
INRRAはマッチドフィルタリング方式を用い、吸気ノイズの存在をそのスペクトル特性全体によって識別する。加えて、INRRAには、必ず起こるノイズのスペクトル特性の変化に適応する能力があるので、吸気ノイズと他の音とを最も良好に区別できる。吸気ごとの開始を計算することにより、吸気ノイズの発生(occurances)から瞬間の呼吸数とその時間平均とをたやすく計算できる。加えて、吸気ノイズごとの終了を測定し持続時間を計算し、更に、予想できるマスクレギュレータの流量についてのある情報が提供されることにより、システムは空気流の体積の推定を行うことができる。これは、吸気ノイズを録音するマイクロホンからの信号のみを用いてなされてもよい。
【0059】
INRRA法1300のブロック図が図13に示されており、これは5つのセクションに分割できる。即ち、ノイズモデル突き合わせ1310、ノイズ検出1330、吸気定義1350、パラメータ推定1370、ノイズモデル更新1390である。INRRA法のノイズモデル突き合わせセクションと、ノイズ検出セクションと、ノイズモデル更新セクションとは、これまでに詳細に述べたARINA法の対応する各セクションと理想的には同一である。従って、簡潔にする為に、この3つのセクションの詳細な記述は本明細書では繰り返さないが、INRRA法1300の吸気定義1350及びパラメータ推定1370の各セクションについては、以下に詳細に述べる。
【0060】
まず、吸気定義1350について述べる。INRRA法1300のセクション1350の目的は、少なくとも1つの係数に基づき、吸気ノイズの特性を示すことであり、例えば、この場合は、終了点のセットと、吸気に対応する1つ以上の完全な吸気ノイズバーストの持続時間とに基づいている。吸気ノイズ検出セクション1330の判断を用いて、工程1352で好ましくは2値信号のINMmを生成し、ここでm=0、1、2、...、M−1であり、INMmは、吸気ノイズがあるかないかを時間インデックスmの関数として、1とゼロの値を用いて表す。この2値信号は、長さMのサンプルの回転バッファに保存されており、Mは、少なくとも2回の吸気ノイズバースト、又は予想されるもっとも遅い呼吸速度の息の期間を包含する2値信号の十分なサンプルを保存するのに十分大きい。好適な実施形態では、これは約15秒になる。この2値信号とMの値との時間分解能は、前述の吸気ノイズ検出セクション1330で用いた最短のサブフレーム時間により決定され、吸気ノイズモデル突き合わせセクションに依存し、スペクトルマッチング法のどれが工程1310で用いられるかに依存して、サンプル20個(2.5msec)又はサンプル80個(10msec)のどちらかである。
【0061】
1330の吸気ノイズ検出器出力が常に完璧ではないので、吸気ノイズの検出中に検出ミスが生じ、ノイズの本当の開始時間と持続期間に関し不明確になる場合がある。従って、工程1352により生成された2値の吸気ノイズの信号は、工程1354で周知の移動平均型のフィルタ又は他の好適なフィルタを用いて一体化される。このフィルタは、短い持続時間の検出ミスをなくして、呼吸気に対応する完全な吸気ノイズバーストを定義する更に正確な信号を生み出す。工程1354で生成されたこの信号から、ノイズバーストごとに、少なくとも1つの係数、例えば、正確な開始時間Si、終了時間Ei、息の持続期間Diなどを、工程1356で処理フレームの持続時間の精度内で決定することができる。2値信号INMmで表される吸気ノイズバーストの開始時間及び終了時間は、信号バッファ内の相対的なインデックスを確認することで得られる。持続時間Diは単一の吸気ノイズバーストについて以下のように定義される。
【0062】
【数14】
ここで、iは、長さM及び期間T秒の2値信号バッファにあるIT個の吸気ノイズバーストのうちのi番目を示す。これらの吸気ノイズバーストの係数の値については、ノイズバースト又は息ごとにパラメータのセット1つが、有限の回転バッファに保存されると理想的である。INRRAのアルゴリズムのセクションである1310と、1330と、1352と、1354とによって処理されたSCBAマスクマイクロホンの音声の結果の幾つかを、図14〜図17に示す。この結果群は、SCBAを着用した男性の話し手の音声が基となっており、静かな室内で録音された。図14は、ノイズバースト1410と混ざり合っている入力音声1420を示す。図15は、吸気ノイズモデル突き合わせセクション1310のスペクトル歪み尺度Dの出力の時間対振幅の表示1500を示す。図16は、吸気ノイズ検出器1330の2値出力の時間対振幅の表示1600を示す。図17は、息定義アルゴリズム1350の移動平均フィルタ要素1354の出力の時間対振幅の表示1700を示し、移動平均フィルタ要素1354は、未加工の検出器の出力を一体化し、吸気ごとの持続時間を正確に定義する。
【0063】
パラメータ推定1370のセクションは、吸気定義セクション1350による吸気ノイズの特性係数に基づき推定されるパラメータの例を説明する。決定されうるパラメータの例の2つは、ユーザの呼吸数及び近似の吸気される空気流量である。呼吸数は、連続する吸気ノイズバーストの順次的な開始時間の情報Siを用いて簡単に決定すればよく、情報Siは吸気定義セクションで決定すればよい。例えば、毎分の「瞬間の(instantaneous)」呼吸数は以下のように計算される。
【0064】
【数15】
ここで、Siは2つの連続したノイズバースト(吸気)の開始時間を秒で示したものである。それに応じて平均の呼吸数は以下のように計算される。
【0065】
【数16】
ここで、ITは、指定された期間T内に検出された連続する息(吸気ノイズバースト)の数である。
【0066】
吸気の間の近似の空気流の体積の推定は、吸気定義セクションにより決定された息の持続時間と、初期のエアタンク充填圧力及びレギュレータの平均の流量に関するある付加的な情報とからなされ、この情報は、例えばオフラインで決定される。吸気バルブが開放されているとき、空気供給タンクの圧力がエアレギュレータの最小の入力圧力レベルを上回ったままであれば、エアレギュレータによって、ある体積の空気がほぼ一定の圧力(周囲の空気/水の圧力の関数)でフェイスマスクに入る。なおまた、マスクレギュレータの吸気バルブが開放されている間、マスクへの気流速度はほぼ一定である。従って、供給用タンクから取り除かれ呼吸者に送達された空気の量は、吸気バルブが開放されている時間に比例する。バルブが開放されている時間は、吸気ノイズごとの持続時間から測定できる。
【0067】
充填されたときの供給タンクの初期の空気の量は、タンク容量V0と、充填圧力P0と、ガス温度T0と、一般ガス定数Rと、単位モルのガスの質量Nmとの関数であり、周知の理想気体の状態方程式、PV=NmRTから計算できる。初期の充填圧力及びタンクのシリンダ容積は既知なので、タンクのガスの温度とマスクのガスの温度とが同一であると仮定すると、このマスクの圧力で息をするのに使用可能な空気の体積は、以下のように与えられる。
【0068】
【数17】
よって、吸気イベントiの間にユーザに送達される空気の近似の体積は次のようになる。
【0069】
【数18】
ここで、IViは空気の体積、Diは吸気ノイズから決定される吸気イベントの持続時間、KRは特定のエアレギュレータの気流速度に関する校正係数である。KRは個々のシステムについて経験的に導かれてもよいし、場合によってはメーカーのデータから決定されてもよい。個々の吸気量IViと、時間Tまでに用いられた近似の合計空気量VTは、以下のように定義される。
【0070】
【数19】
ここで、ITは時間Tまでの吸気の総数である。従って、残りのタンクの供給空気は以下のようになる。
【0071】
【数20】
INRRA法の利点の中には、最小の音声帯域に亘る息のノイズを拾うマイクロホン信号を使用することができ、特別なセンサはいらないということがある。別の利点は、呼吸の検出が、スペクトル特性の安定したエアレギュレータが出すノイズの検出に基づいており、人によって異なる人間の息のノイズの検出には基づいていないことである。更なる利点は、呼吸の検出が、他のタイプの息の音響分析器のように特殊な周波数を検査することに固定されてはいないことである。なおまた、このシステムは環境の変化にもユーザ及び圧縮空気呼吸マスクシステムの違いにも自動的に適応する。従って、INRRA法は、瞬間の又は平均の呼吸数及び近似の空気使用容量のデータを連続的に提供することができ、このデータは、システム100の外部に、例えば、無線のデータチャネルを介してモニタへと自動的に送ることのできる貴重な情報である。当業者には、以上の利点が本発明のINRRAの実施形態に関連する利点のすべてを含むことを意図しておらず、その代表例としての役割を果たすことのみを意図していることが分かるであろう。
【0072】
本発明に係る3つの方法(ARINA、AMSE及びINRRA)はすべて、メモリデバイス(前述のシステム100に従うシステムに設けられている)に保存されたソフトウェアアルゴリズムとして実施されると好ましく、この方法群の工程は、例えばシステム100のDSP138などの好適な処理装置で実施される。本発明の自己相関及びLPCフィルタリングの方法に対応するアルゴリズムは、プロセッサ時間のほとんどを占めるだろう。しかし、このアルゴリズム群、即ち、ARINA法とAMSE法とINRRA法とに対応するアルゴリズム全部を、代案として、ハードウェアの狭い設置面積で効率的に実施すればよい。なおまた、AMSE法はARINA法の方法論を多く用いているので、本発明の別の実施形態では、この方法群を効率的に組み合わせればよい。
【0073】
本発明はその具体的な実施形態を併用して記載されたが、付加的な利点及び修正に当業者は容易に気がつく。従って、本発明は、その広範な態様において、図示し記述した、特殊な詳細にも、代表的な装置にも、説明に役立つ実例にも限定されていない。前述の説明に照らせば、種々の変更や修正や変形は当業者には明白であろう。例えば、吸気ノイズを識別し減衰させる方法を前述したが、本発明について呈示した方法論を、呼気ノイズなどの他のタイプのノイズや、以上の方法を用いて効率的に検出されやすく静止しているものと擬似されるスペクトル特性を持つ他のタイプのノイズなどに適用してもよい。従って、当然のことながら、本発明は前述の説明に限定されておらず、このような変更や修正や変形のすべてを、添付の請求項の精神及び範囲に従って含む。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】通信システムに結合された呼吸用圧縮空気送達システムを備えた先行技術のシステムの単純なブロック図。
【図2】図1に図示のシステムのマスクから無線へのオーディオ経路。
【図3】マスクの内側のスペクトルの応答を測定した大きさと、マスクマイクロホンの出力のスペクトルの応答を測定した大きさと、マスクとマイクロホンとマイクロホンアンプとについて計算して組み合わせた伝達関数の、それぞれの例の図。
【図4】SCBAエアレギュレータにより生成された吸気ノイズの例の図。
【図5】図4に図示した吸気ノイズの長期にわたる振幅スペクトルの図。
【図6】任意のSCBAマスクを着用している単一の話し手により生成された吸気ノイズの4つの重なり合うスペクトルの図。
【図7】音声と混ざり合った吸気ノイズバーストを示す、SCBAのマイクロホンからのオーディオ出力。
【図8】本発明の一実施形態に従って吸気ノイズを検出し除去する方法の単純なブロック図。
【図9】図8の方法で用いたスペクトルマッチング装置の一実施形態の単純なブロック図。
【図10】図8の方法で用いたスペクトルマッチング装置の別の実施形態の単純なブロック図。
【図11】本発明の別の実施形態に従って音声信号を等化する方法の単純なブロック図。
【図12】等化前の吸気ノイズスペクトルを、本発明に従い14次及び20次のLPC逆フィルタの等化後のスペクトルと比べた図。
【図13】バイオメトリクスのパラメータ群の測定に使用する為の本発明の別の実施形態に従って、吸気ノイズの周波数の持続時間を決定し、呼吸数及び空気使用量を決定する方法の単純なブロック図。
【図14】音声及び空気調整用吸気ノイズを含むマイクロホン入力からの信号の図。
【図15】図13に図示の方法により決定された図14に図示された信号の正規化されたモデル誤差の平均の図。
【図16】図13に図示の方法で生成された、吸気ノイズ検出器の出力信号の図。
【図17】図13に図示の方法で生成された、一体化された吸気の検出器の出力の図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気送達システムに結合された通信システムにおいて吸気ノイズを検出して減衰させる方法であって、前記方法が、
吸気ノイズに基づき吸気ノイズモデルを生成する工程と、
吸気ノイズを含む入力信号を受信する工程と、
類似尺度を得る為に前記入力信号と前記ノイズモデルとを比較する工程と、
前記類似尺度に基づき利得係数を決定する工程と、
前記利得係数に基づいて前記入力信号を修正する工程と、を含み、同修正する工程では、前記利得係数に基づき前記入力信号中の吸気ノイズを減衰する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記吸気ノイズモデルを生成する前記工程が、
前記吸気ノイズの少なくとも1つのデジタル化されたサンプルを生成する為に前記吸気ノイズをサンプリングする工程と、
前記少なくとも1つのデジタル化されたサンプルに窓掛けする工程と、
前記少なくとも1つのデジタル化され窓掛けされたサンプルから自己相関係数のセットを決定する工程と、
自己相関係数の前記セットに基づき線形予測符号化(LPC)係数のセットを生成する工程と、
LPC係数の前記セットからLPCフィルタを生成する工程と、
を含む方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記ノイズモデルがデジタルフィルタとして表され、類似尺度を得る為に前記入力信号を前記ノイズモデルと比較する前記工程が、
前記入力信号と前記ノイズモデルとに基づき第1のエネルギーを計算する工程と、
前記入力信号に基づき第2のエネルギーを計算する工程と、
前記第1のエネルギー及び前記第2のエネルギーの関数として前記類似尺度を計算する工程と、
を含む方法。
【請求項4】
前記類似尺度が前記第1のエネルギーの前記第2のエネルギーに対する比率である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であって、前記第2のエネルギーを計算する前記工程が、
前記入力信号の少なくとも1つのデジタル化されたサンプルを生成する為に前記入力信号をサンプリングする工程と、
前記少なくとも1つのデジタル化されたサンプルから自己相関係数の第1のセットを生成する工程と、
自己相関係数の前記第1のセットに基づき線形予測符号化(LPC)係数のセットを生成する工程と、
LPC係数の前記セットに基づき自己相関係数の第2のセットを生成する工程と、
自己相関係数の前記第1のセット及び前記第2のセットの関数として前記第2のエネルギーを計算する工程と、
を含む方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、利得係数を決定する前記工程が、
前記入力信号中の吸気ノイズを検出する為に前記類似尺度を少なくとも1つのしきい値と比較する工程と、
前記類似尺度と前記少なくとも1つのしきい値との比較結果に基づいて前記利得係数を選択する工程とを含み、選択する前記工程では、前記入力信号中に前記吸気ノイズが検出されたとき前記利得係数を1未満になるよう選択する、方法。
【請求項7】
前記ノイズモデルを更新する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記入力信号の前記吸気ノイズを検出する為に前記類似尺度を少なくとも1つのしきい値と比較する前記工程を更に含み、前記工程では、前記検出された吸気ノイズに基づくノイズモデルが更新される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記ノイズモデルが、自己相関係数の第1のセットから生成されたLPC係数のセットに基づく線形予測符号化(LPC)フィルタであり、前記ノイズモデルを更新する工程が、
前記検出された吸気ノイズの少なくとも1つのデジタル化されたサンプルを生成する為に検出された吸気ノイズをサンプリングする工程と、
前記少なくとも1つのデジタル化されたサンプルに窓掛けする工程と、
前記少なくとも1つのデジタル化され窓掛けされたサンプルから自己相関係数の第2のセットを決定する工程と、
自己相関係数の前記第1のセット及び前記第2のセットの関数として自己相関係数の前記第1のセットを更新する工程と、
前記更新された自己相関係数のセットに基づきLPC係数の前記セットを更新する工程と、
前記更新されたLPC係数のセットに基づき前記LPCフィルタを更新する工程と、を更に含む、
方法。
【請求項10】
圧縮空気送達システムに結合された通信システムの吸気ノイズを検出して減衰させる装置であって、
処理要素と、
前記処理要素に結合されコンピュータプログラムを保存する記憶素子と、を備え、前記コンピュータプログラムは、前記処理装置に対し、
吸気ノイズに基づき吸気ノイズモデルを生成する工程と、
吸気ノイズを含む入力信号を受信する工程と、
類似尺度を得る為に前記入力信号と前記ノイズモデルとを比較する工程と、
前記類似尺度に基づき利得係数を決定する工程と、
前記利得係数に基づいて前記入力信号を修正する工程と、を行うよう指示する為のものであり、修正する前記工程では、前記利得係数に基づき前記入力信号の前記吸気ノイズが減衰される、
方法。
【請求項1】
圧縮空気送達システムに結合された通信システムにおいて吸気ノイズを検出して減衰させる方法であって、前記方法が、
吸気ノイズに基づき吸気ノイズモデルを生成する工程と、
吸気ノイズを含む入力信号を受信する工程と、
類似尺度を得る為に前記入力信号と前記ノイズモデルとを比較する工程と、
前記類似尺度に基づき利得係数を決定する工程と、
前記利得係数に基づいて前記入力信号を修正する工程と、を含み、同修正する工程では、前記利得係数に基づき前記入力信号中の吸気ノイズを減衰する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記吸気ノイズモデルを生成する前記工程が、
前記吸気ノイズの少なくとも1つのデジタル化されたサンプルを生成する為に前記吸気ノイズをサンプリングする工程と、
前記少なくとも1つのデジタル化されたサンプルに窓掛けする工程と、
前記少なくとも1つのデジタル化され窓掛けされたサンプルから自己相関係数のセットを決定する工程と、
自己相関係数の前記セットに基づき線形予測符号化(LPC)係数のセットを生成する工程と、
LPC係数の前記セットからLPCフィルタを生成する工程と、
を含む方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記ノイズモデルがデジタルフィルタとして表され、類似尺度を得る為に前記入力信号を前記ノイズモデルと比較する前記工程が、
前記入力信号と前記ノイズモデルとに基づき第1のエネルギーを計算する工程と、
前記入力信号に基づき第2のエネルギーを計算する工程と、
前記第1のエネルギー及び前記第2のエネルギーの関数として前記類似尺度を計算する工程と、
を含む方法。
【請求項4】
前記類似尺度が前記第1のエネルギーの前記第2のエネルギーに対する比率である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であって、前記第2のエネルギーを計算する前記工程が、
前記入力信号の少なくとも1つのデジタル化されたサンプルを生成する為に前記入力信号をサンプリングする工程と、
前記少なくとも1つのデジタル化されたサンプルから自己相関係数の第1のセットを生成する工程と、
自己相関係数の前記第1のセットに基づき線形予測符号化(LPC)係数のセットを生成する工程と、
LPC係数の前記セットに基づき自己相関係数の第2のセットを生成する工程と、
自己相関係数の前記第1のセット及び前記第2のセットの関数として前記第2のエネルギーを計算する工程と、
を含む方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、利得係数を決定する前記工程が、
前記入力信号中の吸気ノイズを検出する為に前記類似尺度を少なくとも1つのしきい値と比較する工程と、
前記類似尺度と前記少なくとも1つのしきい値との比較結果に基づいて前記利得係数を選択する工程とを含み、選択する前記工程では、前記入力信号中に前記吸気ノイズが検出されたとき前記利得係数を1未満になるよう選択する、方法。
【請求項7】
前記ノイズモデルを更新する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記入力信号の前記吸気ノイズを検出する為に前記類似尺度を少なくとも1つのしきい値と比較する前記工程を更に含み、前記工程では、前記検出された吸気ノイズに基づくノイズモデルが更新される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記ノイズモデルが、自己相関係数の第1のセットから生成されたLPC係数のセットに基づく線形予測符号化(LPC)フィルタであり、前記ノイズモデルを更新する工程が、
前記検出された吸気ノイズの少なくとも1つのデジタル化されたサンプルを生成する為に検出された吸気ノイズをサンプリングする工程と、
前記少なくとも1つのデジタル化されたサンプルに窓掛けする工程と、
前記少なくとも1つのデジタル化され窓掛けされたサンプルから自己相関係数の第2のセットを決定する工程と、
自己相関係数の前記第1のセット及び前記第2のセットの関数として自己相関係数の前記第1のセットを更新する工程と、
前記更新された自己相関係数のセットに基づきLPC係数の前記セットを更新する工程と、
前記更新されたLPC係数のセットに基づき前記LPCフィルタを更新する工程と、を更に含む、
方法。
【請求項10】
圧縮空気送達システムに結合された通信システムの吸気ノイズを検出して減衰させる装置であって、
処理要素と、
前記処理要素に結合されコンピュータプログラムを保存する記憶素子と、を備え、前記コンピュータプログラムは、前記処理装置に対し、
吸気ノイズに基づき吸気ノイズモデルを生成する工程と、
吸気ノイズを含む入力信号を受信する工程と、
類似尺度を得る為に前記入力信号と前記ノイズモデルとを比較する工程と、
前記類似尺度に基づき利得係数を決定する工程と、
前記利得係数に基づいて前記入力信号を修正する工程と、を行うよう指示する為のものであり、修正する前記工程では、前記利得係数に基づき前記入力信号の前記吸気ノイズが減衰される、
方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2008−505356(P2008−505356A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519236(P2007−519236)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/019837
【国際公開番号】WO2006/007291
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(390009597)モトローラ・インコーポレイテッド (649)
【氏名又は名称原語表記】MOTOROLA INCORPORATED
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/019837
【国際公開番号】WO2006/007291
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(390009597)モトローラ・インコーポレイテッド (649)
【氏名又は名称原語表記】MOTOROLA INCORPORATED
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