説明

通信ワイヤ

本発明は、誘電率が低く、素材の費用を低く抑える改良が施された絶縁導体に関する。導体(12)は長手軸に沿って延びており、絶縁体(14、14’)は導体(12)を包囲している。絶縁体(14、14’)の少なくとも1つのチャンネル(16、16’)は、長手軸に概ね沿って延びており絶縁導体を形成する。改良が施された絶縁導体を製造する方法及び装置も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良が施されたワイヤ及び該ワイヤを製作する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データ及び他の信号を伝送する方法の一つとして、撚り線(twisted pair)を用いて伝送する方法がある。撚り線は、2つの導体からなる対を形成するために互いに撚り合わさっている少なくとも1対の絶縁された導体を備えている。この撚り線を各種の高性能伝送ケーブルにするために、当業界では周知の数多くの方法を採用することができる。撚り線が所望の“コア”に形成されると、通常は、この“コア”の上にプラスチックのジャケットが押し出し成形されて、“コア”の形状を維持して、ジャケット自身は保護層として機能する。2つ以上の撚り線のグループを束ねる場合、この束ねられたものを多対ケーブル(multi−pair cable)という。
【0003】
撚り線のワイヤ内の導体が撚り合わさっている構成のケーブルにおいて、該ケーブルには、2組の撚りが存在する。この2組の撚りは、それぞれ異なるが、相互に影響を及ぼす。1つは、撚り線を構成するワイヤの撚りである。もう1つは、撚り線の個々のワイヤにおいて、導体を形成するワイヤ素線の撚りである。この2組の撚りは、組み合わさると、撚り線を伝わるデータ信号について影響を及ぼし合う。
【0004】
多対ケーブルを使用すると、ケーブルの一端で発生した信号は、異なる撚り線ワイヤを通るとしても、理論上は同時に他端に到達する。ナノ(nano)秒単位で測定すると、ケーブルの撚り合わさったワイヤ対同士の間には、発生した信号に対する信号伝送のタイミングの違いがあり、この違いは、一般には、“ディレイスキュー”と呼ばれる。ある撚り線と他の撚り線とによって伝送された信号のディレイスキューが非常に大きく、且つ、該信号を受信した装置がその信号を適切に再度アセンブルすることができない場合、問題が生じる。このようなディレイスキューは、伝送エラーやデータの損失をもたらす結果となる。
【0005】
更に、高速データ通信においてデータのスループットが増加することに伴って、ディレースキューの問題は大きくなる可能性がある。伝送された信号を適切に再度アセンブルする際に、信号のスキューが原因で生じる遅延でさえも、信号のスループットに極めて有害な影響を及ぼす恐れがある。従って、高いデータ伝送速度を求める複雑なシステムがネットワークには配備されているので、データ伝送の改良は強く求められている。このような複雑な高速システムは、より強い信号を伝達する多対ケーブル及び最小のディレイスキューを必要としている。
【0006】
絶縁体の誘電率(DK)は、ワイヤの減衰値及び信号のスループットに影響を及ぼす。即ち、DKが減少するにつれて信号のスループットが増加し、また、DKが減少するにつれて減衰量が減少する。これは、DKがより低いと、より強い信号が、より速く、より少ない歪みで到達することを意味する。従って、DKが(1に近いような)比較的低いワイヤは、例えば2よりも大きいといった高いDKを有する絶縁導体よりも常に支持されている。
【0007】
撚り線の場合、絶縁体のDKは、撚り線のディレイスキューに影響を及ぼす。EIA/TIA568−A−1によると、一般的に許容されているディレイスキューでは、100メートルのケーブルを基準にした場合、2つの信号の到達時間の差は45(ns)以内でなければならない。この大きさのディレイスキューは、(100MHzよりも高い)高周波数の信号が伝送される場合、問題となる。これらの周波数において、20(ns)よりも小さいディレイスキューは、良好であるとみなされ、実用上、達成しなければならない値とされている。
【0008】
更に、特定の撚り線或いは多対ケーブルにおいてディレイスキューに影響を及ぼすには、絶縁導体の撚りの程度或いは撚りの長さ(lay length)を調節することくらいしかこれまでは方法がなかった。この場合、例えばインピーダンス及び減衰等の電気的な性質を適宜なものに維持するために、絶縁体の厚さ及び導体の直径の変更を含めた絶縁導体の再設計が求められていた。
【0009】
改良が施された絶縁導体に対して行った試みとしては、絶縁体の外表面にリブを使用したり、絶縁体内ではあるが外表面に近い箇所でチャンネルを形成することであった。しかし、たとえ不可能ではないにせよ、外表面に特徴のある絶縁体を製作することは困難であることから、リブを備えた絶縁体が好ましいとは言えなかった。使用される絶縁素材の性質及び使用される処理が原因で、外表面の特徴を見分けることができず、また、該特徴が適正に形成されていないことがあった。リブは、鋭利な縁を備えずに、端部が丸みのあるこぶとなっていた。この丸みのある形状は、リブの形状を適切に保持しない素材を使用して、表面の特徴を形成するための押し出しダイを使用した結果、生ずるものである。絶縁素材は、押し出しダイから出た直後に、サージングを引き起こして膨張する傾向がある。このサージングによって、リブの縁が丸くなり、外表面の特徴部の間の空間が埋め尽くされる。
【0010】
また、リブを備えた絶縁体を有する絶縁導体は、電気的な性質が劣るケーブルを提供する。リブ間の空間は汚物及び水によって汚染される恐れがある。これらの汚染物は、大きく変化し、典型的に絶縁素材よりも高いDKを有するので、絶縁導体のDKには良い影響を及ぼさない。汚染物の変化するDKによって、絶縁導体全体のDKは、その長さに沿って変化してしまい、信号速度に良い影響を及ぼさない。同様に、比較的高いDKを備える汚染物は、絶縁物の全体のDKを高くし、信号速度に良い影響を与えない。
【0011】
リブを備えチャンネルが形成された絶縁体を有する絶縁導体もまた、物理的な性質の劣るケーブルを提供し、それによって、該ケーブルの電気的な性質も低下する。リブを備え周知のチャンネルが形成されている絶縁体の外表面の近くには限られた分量の素材しかないので、この絶縁導体の圧搾に対する強度は低く不十分である。該強度が低いので、この絶縁導体は、絶縁体に形成されたチャンネル及びリブを変形させずに、巻き付け作業を行うことすらできない恐れがある。このような絶縁導体を製造、保管、及び備え付けることは殆ど不可能なので、実用上、この絶縁導体は受け入られるものではない。
【0012】
リブ及びチャンネルを圧搾或いは絶縁体に他の物理的な応力を加えると絶縁体の特徴ある形状が変化する。この変化は、絶縁体のDKに良い影響を及ぼさない。ケーブルを形成する際に要する物理的な応力の1つに、1対の絶縁導体を撚り合わせる応力がある。このねじり応力を避けてケーブルを形成することはできない。従って、撚り線を実際に作成すると、絶縁導体の電気的な性質に致命的な欠陥を生じさせる恐れがある。
【0013】
ワイヤ及びケーブルの分野においては、ワイヤが火の中でどのように動作するのかが関心事となっている。ザ・ナショナル・ファイア・プリベンション・アソシエーション(The National Fire Prevention Association)(NFPA)は、住居及び商業用の建物に使用される素材がどのように燃焼するのかについて基準を設けている。幾つかの試験が行われ、該試験では、通常、排出される煙の量、煙の濃度、炎の広がる速さ、及び/又は絶縁導体の燃焼によって生じる熱の量が測定される。これらの試験で良好な結果を出すということは、近年の火に関する規則では安全であるとみなされる配線を行うことであると解釈できる。消費者が益々賢くなっているので、これらの試験で良好な結果を出すことはセールスポイントになる。
【0014】
フルオロポリマー(fluoropolymer)等、ワイヤの絶縁体に使用される周知の素材は、DKが小さいこと等の望ましい電気的な性質を有している。しかし、フルオロポリマーは比較的高価である。他のコンパウンドはそれほど高価ではないが、DKを最小にはしない。従って、ディレイスキューをフルオロポリマーと同じ程度に最小にすることはしない。更に、非フッ素化ポリマー(non−fluorinated polymer)は、炎を伝搬し、フルオロポリマーよりも煙を発生させるので、ワイヤを構成する際に使用される素材としては望ましい素材であるとはあまり言えない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上から、費用の点で効果的であり、クリーンな燃焼をするとともに、ディレイスキューを効果的に最小にして、且つ、伝送速度を高くするために、従来技術の限界に対処しているワイヤを提供することを課題とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のワイヤは最小の誘電率(DK)を有するように設計されている。最小のDKは、ワイヤの電気的な性質に関する際だった効果を幾つか有する。信号の減衰が減少するとともに信号のスループットは増加する。加えて、撚り線においてのディレイスキューは最小となる。この最小のディレイスキューは、以下で説明する改良が施された絶縁導体或いは隔絶されたコアを利用することによって、実現する。
【0017】
本発明のワイヤ10は、図1に示されるように第1の絶縁体14によって包囲されている導体12を有している。絶縁体14は、導体の長さの分だけ延びている少なくとも1つのチャンネル16を備えている。導体12の周囲には、多数のチャンネルが円周方向に配設される。多数のチャンネルは、絶縁体の脚18によって互いに分離されている。個々のワイヤ10は、撚り合わさって、図8に示されるような撚り線を形成することができる。複数の撚り線は、撚り合わさって、多対ケーブルを形成することができる。複数の撚り線は、ケーブルに利用することができる。若しくは、チャンネルが形成された絶縁体は、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、或いは他の種類のケーブルに使用できる。外側ジャケット20は任意でワイヤ10に使用することができる。また、撚り線或いはケーブルを覆うために外側ジャケットを使用することができる。チャンネルが形成されていない第2の絶縁体から成る更なる層を、導体を包囲するように使用するかワイヤ内の他の箇所に設けるようにしてもよい。更に、撚り線或いはケーブルはシールドを使用してもよい。
【0018】
本発明の1の概念におけるワイヤの断面が図2に示されている。ワイヤ10は絶縁体14によって包囲されている導体12を備えている。絶縁体14は、導体12の周囲に円周方向に形成されている複数のチャンネル16を備えており、該チャンネル16は脚18によって互いに離されている。導体12の外周面19はチャンネル16の一側と導体12との境界面となっている。この概念においてチャンネル16は矩形状の断面形状を概ね有している。
【0019】
本発明の他の概念のワイヤの断面が図3に示されている。絶縁体14’は、前述の図2に示されている本発明の1の概念におけるワイヤのチャンネル16とは形状が異なるチャンネル16’を複数備えている。詳しくは、チャンネル16’は、平坦な上部を備えている湾曲した壁を有している。前述の本発明の1の概念と同様に、チャンネル16’は導体12の周囲に円周方向に形成されており、脚18’によって離されている。また、この概念における絶縁体14’は、第2の複数のチャンネル22を備えることができる。第2の複数のチャンネル22の周囲は、絶縁体14’によって、包囲されている。チャンネル16’とチャンネル22とは、組み合わせて使用することが好ましい。
【0020】
チャンネルが形成されている絶縁体は、導体及び導体上で伝送される信号の双方を保護する。選択された絶縁体のDKはワイヤ10全体の電気的な性質に影響するので、絶縁体14、14’の組成は重要である。絶縁体14、14’は、介在する脚18、18’によって互いに離されている複数のチャンネル16、16’を備えて形成された押し出し成形ポリマー層であることが好ましい。チャンネル22は、また、押し出し成形されたポリマー層に形成されることが好ましい。
【0021】
例えば、ポリオレフィン或いはフルオロポリマー等のワイヤ及びケーブルの製造に使用される従来のポリマーを絶縁体14、14’に採用することができる。使用できるポリオレフィンとしては、ポリエチレン及びポリプロピレンがある。しかし、炎に対する優れた抵抗と低い煙の発生量とを求めている環境でケーブルを使用する場合、撚り線或いはケーブルに含まれている1以上の導体にフルオロポリマーを絶縁体として使用することが望ましい。発泡ポリマーの使用は可能であるが、ソリッドポリマー(solid polymer)は物理的な性質に優れ発泡剤を要さないことから、ソリッドポリマーが好ましい。
【0022】
更に、引っ張り強さ或いは伸び等の優れた物理的な性質が求められる場合、或いは、低いDK或いは少ない減衰等の優れた電気的な性質が求められる場合は、フルオロポリマーが好ましい。更に、フルオロポリマーは、絶縁導体の圧搾に対する強度を上げる一方で、水を含む汚染物による侵入に対して際だった抵抗を有する絶縁体を提供する。
【0023】
絶縁体14、14’の構造的な特徴は、該絶縁体14、14’を構成する化学物質と同じくらい重要である。絶縁体のチャンネル16、16’、22は、概して、その幅、深さ、直径よりも大きな値を有する長さを有する構造を備えている。チャンネル16、16’、22は、導体の一端から該導体の他端まで延びるポケットを絶縁体に形成するようなチャンネルである。チャンネル16、16’、22は、導体12によって形成される軸に平行であることが好ましい。
【0024】
空気をチャンネル内に使用することが好ましいが、空気以外の素材を使用してもよい。例えば、その他のポリマーと同様に他の気体を使用してもよい。チャンネル16、16’、22は、空気を含むことができる他の種類の絶縁体とは異なる。例えば、チャンネルが形成されている絶縁体は、独立セルエアポケットを内部に有する発泡絶縁体とは異なる。本発明は、また、糸に通されたビーズのようなエアポケットを形成するように導体に押し付けられる種類の絶縁体とは異なる。チャンネル内に含ませる素材としてどのような素材でも選択できるが、包囲する絶縁体のDKとは異なるDKを有するように選択することが好ましい。
【0025】
好ましくは、絶縁体14、14’の脚18、18’は、導体12の外周面19に当接している。このようにして、導体12の外周面19は、図1乃至図3に示されるように、チャンネルの一面を形成している。高周波数では、信号は、導体12の表面或いは表面の近くを通る。これは、“表皮効果”と呼ばれている。導体12の表面に空気が存在することによって、信号は、DKが1の素材、即ち、空気の中を通ることができる。従って、絶縁体14、14’の脚18、18’によって占められる導体12の外周面19の面積は、最小であることが好ましい。これは、チャンネル16、16’の断面積を最大にして、絶縁体14、14’に利用されている脚18、18’の大きさを最小にすることによって、実現可能である。また、チャンネル16、16’の形状は、脚18、18’の導体12との接触面積を最小にし、且つチャンネルの強度を上げるような形状を選択するようにしてもよい。
【0026】
チャンネルの断面積を最大にして、脚によって占められる導体の外周面の面積を最小にした良い例を図3に示す。この図3に示された例では、湾曲した壁を備えたチャンネル16’が利用されている。壁は湾曲して、ほぼ台形の形状のチャンネルを提供している。このほぼ台形形状のチャンネル16’は概ね矩形状のチャンネル16よりも大きな断面積を有している。更に、隣接するチャンネルの湾曲壁は協力して導体12の外周面19に当接する脚18’の大きさを最小にする。
【0027】
更に、絶縁体14の脚18、18’によって占められる導体12の外周面19の面積は、使用されるチャンネル16、16’の数を減らすことによって、最小となる。例えば、図2及び図3に図示される6つのチャンネル16、16’の代わりに、5つ或いは4つのチャンネルを使用してもよい。
【0028】
好ましくは、脚18、18’によって占められる導体12の外周面19の面積は、全体の面積の約75%よりも小さく、脚が全体の面積の約50%よりも小さい面積を占めると更に好ましい。脚が占める面積が外周面の面積の15%しかないことが適当ではあるが、脚が外周面の面積の約35%を占めている絶縁体が最も好ましい。このようにして、信号が空気中を通る場合における外周面の面積は最大になる。言い換えれば、脚によって占められる面積を最小にすることによって、表皮効果は最大となる。
【0029】
チャンネルの形状によって強度を上げる良い例はアーチ形状の使用によるものである。以下で詳細に説明するが、アーチは、絶縁導体の圧搾に対する抵抗を向上させる固有の強度を有している。アーチ形状のチャンネルは、また、経済的な効果も有している。絶縁体の強度が高いので、少量の絶縁体で圧搾に対する所望の抵抗を得ることができる。チャンネルの強度を上げるように設計された形状であれば、チャンネルの形状はアーチ以外の他の形状でもよい。
【0030】
チャンネル22は、また、絶縁体14’内で空気を含むことによって、絶縁体14’全体のDKを最小にする。更に、チャンネル22は、ワイヤ10の物理的な健全性を損なうことなく使用することができる。
【0031】
チャンネルの断面積は、ワイヤを物理的に健全である状態に維持するように選択された断面積でなければならない。即ち、どのようなチャンネルであっても、その断面積が絶縁体の断面積の約30%よりも大きくならないことが好ましい。
【0032】
チャンネルが形成された絶縁体14、14’を備えたワイヤ10を使用することによって、撚り線或いは多対ケーブルの場合において、20(ns)よりも小さいディレイスキューが容易に実現され、好ましくは15(ns)である。例えば撚りの長さ或いは導体の大きさといった他のパラメータをディレイスキューが最小になるように選択すれば、5(ns)もの小さなディレイスキューが可能である。
【0033】
また、絶縁体14、14’のDKが低いと、ケーブルジャケットと組み合わせて使用した場合、有効である。ジャケットで覆われたプレナムケーブル(plenum cable)は、基本的に、耐火PVC(FRPVC)を外側ジャケット用に使用している。FRPVCは、ジャケットで覆われたケーブルの減衰値及びインピーダンスに良い影響を与えない比較的高いDKを有しているが、高価なものではない。DKが低い絶縁体14、14’は、FRPVCジャケットの持っている欠点を相殺するのに役立っている。実用的には、ジャケットで覆われたケーブルには、ジャケットで覆われていないケーブルのような減衰値及びインピーダンスを与えることができる。
【0034】
実際、絶縁体14、14’によって提供される低いDKによって、導体上における信号の速度が上昇し、その結果、信号のスループットが大きくなる。100メートルの撚り線に対して、少なくとも450(ns)の信号のスループットが得られ、約400(ns)の信号の速度が可能となる。しかし、信号の速度が増加するにつれて、データ伝送の際にエラーが起こることを防ぐためにディレイスキューを最小にしなければならない。
【0035】
更に、チャンネルが形成された絶縁体のDKはチャンネルの断面積に比例するので、撚り線の信号の速度もチャンネルの断面積に比例する。従って、撚り線の信号の速度は容易に調節できる。撚りの長さ、導体の直径、及び絶縁体の厚さを変更する必要はない。むしろ、撚り線の他の物理的及び電気的な性質とのバランスをとって所望の信号の速度を得るように、チャンネルの断面積を調節することができる。これは、特に、多対ケーブルに有効である。該ケーブルのディレイスキューは、最も速い撚り線と最も遅い撚り線との信号の速度の差として考えることができる。最も遅い撚り線の絶縁体のチャンネルの断面積を大きくすることによって、その信号の速度を増加させることができ、その結果、最も速い撚り線の信号の速度に近づけることができる。最も速い信号の速度に近づくほど、ディレースキューは小さくなる。
【0036】
チャンネルが形成されていない絶縁体と比較すると、チャンネルが形成されている絶縁体は損失率が小さい。損失率は、ワイヤの長さに渡り絶縁体によって吸収されるエネルギーの量を反映しており、信号の速度と強さとに関係している。損出率が大きくなると、信号の速度及び強さは低下する。表皮効果は、ワイヤの信号が導体の表面近くを通ることを意味している。また、この表皮効果は絶縁体の損失率が最も低くて信号の速度が最も速い場合にも起こる。導体からの距離が大きくなると、損失率は大きくなり、信号の速度は低下し始める。チャンネルのない絶縁導体において、損失率の差は公称である。絶縁体にチャンネルを形成すると、信号が通過する媒体のDKが低いために絶縁体の損失率は劇的に低下する。従って、チャンネルを中に形成することによって、チャンネル内の信号の速度が、絶縁体の残りの部分における信号の速度とは際だって異なる、即ち、絶縁体の残りの部分における信号の速度よりも際だって高い状況が生まれる。事実上、約10%よりも大きい差を有する2つの信号速度を提供する絶縁導体が形成される。
【0037】
導体12の外周面19に隣接してチャンネル16、16’を形成すると、絶縁導体の物理的な特性が損なうことはないので、絶縁導体の電気的な性質が維持される。絶縁導体の外表面は損傷を受けていないので、汚染物がチャンネル内でひっかかることはない。その結果、絶縁体のDKはケーブルの長さに渡って変化することはなく、DKは汚染物に悪影響を受けることはない。
【0038】
導体の近くにチャンネルを形成することによって、絶縁導体の圧搾に対する抵抗が損なうことはない。即ち、チャンネルが簡単に潰れないように、絶縁体が十分に適宜配設されている。更に、絶縁体は、また、ねじれ応力が絶縁導体に加えられたときにチャンネルの形状が際だって歪むことを防ぐ。その結果、通常の作業、即ち、製造、保管、及び取り付けが本発明の絶縁導体の物理的な性質に悪影響を与えることななく、ひいては、該絶縁導体の電気的な性質にも悪影響を与えることはない。
【0039】
ワイヤ10の電気的な性質に対する所望の効果とは別に、絶縁体14、14’は、経済的な効果及び防火の効果も有している。絶縁体14、14’のチャンネル16、16’は、ワイヤ10を製造するための材料費を削減する。絶縁体14、14’に使用される絶縁素材の量は、チャンネルが形成されていない絶縁体と比較すると、際だって少なく、充填ガスの費用もかからない。言い換えれば、チャンネルが形成されていない絶縁体と比較して、より長い絶縁体14、14’を所定量の素材から製造することができる。チャンネル16、16’、22の数及び断面積が最終的に材料費の削減の度合を決定する。
【0040】
絶縁体14、14’に使用される素材の分量が削減されることによって、ワイヤ10の燃料負荷も削減される。絶縁体14、14’は、その単位長さ当たりの絶縁素材が比較的少ないため、分解による副産物が少ない。燃料負荷が少ないと、燃焼の際に発生する熱量、炎の広がる速さ、及び放たれる煙の量は、全て、際だって減少し、ザ・ナショナル・ファイア・プリベンション・アソシエーション(NFPA) NFPA255、259及び262等の関連するファイヤ・セーフティ・コード(fire safety code)の条件を満たす可能性は飛躍的に上昇する。放出される煙の量及び炎の広がる速さの比較は、比較の対象となるワイヤに対してアンダーライターズ・ラボラトリ(UL)UL910・スタイナー・トンネル・燃焼試験(Underwriters Laboratory(UL)UL910 Steiner Tunnel burn test)を行うことによって実現可能である。スタイナー・トンネル燃焼試験は、NFPA255及び262基準の根拠となっている。全ての場合において、空気を含んでいるチャンネルが形成されている絶縁体を備えるワイヤによって発生する煙は、チャンネルが形成されていない絶縁体を備えるワイヤによって発生する煙よりも少なくとも10%少ない。同様に、炎の広がる速さにおいても、チャンネルが形成されている絶縁体を備えるワイヤは、チャンネルが形成されていない絶縁体を備えるワイヤよりも、少なくとも10%低い。
【0041】
本発明の好適実施例は、フルオロポリマーで形成されている絶縁体14、14’を備えたワイヤ10であり、該絶縁体の厚さは約0.010よりも小さく、絶縁導体は、約0.042インチよりも小さい値の直径を有する。また、ワイヤ全体のDKは、好ましくは、約2.0よりも小さく、チャンネルの断面積は少なくとも2.0×10−5平方インチである。
【0042】
本発明の好適な実施例のワイヤに対して各種の試験を行った。水の侵入の試験において、チャンネルが形成されているある長さの絶縁導体を90℃に加熱された水の中に入れて、30日間水中に保持した。このような悪条件下においても、チャンネルに水が侵入したことを示す証拠はなかった。ねじり試験において、12インチの長さを有するチャンネルが形成された絶縁導体を、該導体の軸を中心に、180°ねじった。このときのチャンネルは、ねじっていないときの断面積の95%よりも大きい断面積を保持した。2つの絶縁導体を互いに撚り合わせた場合でも類似した結果が得られた。圧搾に対する強度の試験において、ある長さのチャンネルが形成された絶縁導体のDKの測定を圧搾する前と圧搾した後に行った。絶縁導体のDKは圧搾の前後で0.01未満の変化しかなかった。
【0043】
絶縁体は、典型的に、単一色の素材で形成されるが、多彩な色の素材が望ましい場合もある。例えば、ストライプ柄の彩色が施された素材を絶縁体中に含ませてもよい。該ストライプは、幾つかの絶縁導体を識別できるように、視覚的に表示する役割を主に担っている。絶縁素材は、典型的に、複数のストライプの色のみが互いに異なるだけで他は同じであるが、必ずしもそうである必要はない。ストライプはチャンネルに干渉しないことが好ましい。
【0044】
許容可能な導体12の例としては、均質導線及び互いに撚り合わせた複数の導体が含まれる。導体12は、銅、アルミニウム、銅でクラッディングされた鋼、及びめっきされた銅で形成されていてもよい。銅は導体の素材としては最適であることが分かっている。加えて、導体は、光ファイバケーブルが製造されるように、ガラス或いはプラスチックファイバでもよい。
【0045】
ワイヤは、図7に示されるような導体72を備えることができる。該導体72は、その外周面76に1或いはそれ以上のチャンネル74を有している。本発明のこの特定の概念において、チャンネルが形成されている導体72は、絶縁体78によって包囲されており、絶縁され且つチャンネルが形成された導体80を形成する。撚り線を形成するために個々の絶縁導体を互いに撚り合わせることができる。次いで、多対ケーブルを形成するために、複数の撚り線を互いに撚り合わせることができる。複数の撚り線をケーブルに利用することができる。
【0046】
必ずしもそうなっているわけではないが、1つ或いはそれ以上のチャンネル74は、概して、ワイヤの長手軸に平行に延びている。導体72の外周面76に複数のチャンネル74が配列した状態で、連続する隆起部82及びトラフ(trough)84が導体に形成されている。
【0047】
必ずしもそうなっているわけではないが、図7から分かるように、チャンネルが形成されている導体72は、チャンネルが形成されている絶縁体78と組み合わさることができる。チャンネルが形成されている絶縁体78の脚86は、チャンネルが形成されている導体72と隆起部82にて接触することが好ましい。脚86と隆起部82とが一直線上に整列することによって、絶縁体78のチャンネル88と導体のチャンネル74とを効果的に組み合わせて、際だってより大きなチャンネルを形成する。このより大きなチャンネルを形成した結果として、相乗的な効果が得られ、チャンネルが形成された絶縁体或いはチャンネルが形成された導体のいずれかによって向上したワイヤの性能を上回る性能をワイヤが有することになる。
【0048】
チャンネルが形成されている導体には、滑らかな導体よりも際だって優れた効果が2つある。第1に、導体の直径が大きくならずに、導体の表面積が大きくなる。信号が導体の外周面或いはその近くを通る表皮効果があるので、表面積が大きくなることは重要である。導体の表面積を大きくすることによって、信号はより大きな領域上を通ることができる一方、導体の大きさは変わらない。滑らかな導体と比較して、チャンネルが形成されている導体にはより多くの信号が通ることができる。言い換えれば、チャンネルが形成された導体は、滑らかな導体よりも、データを伝送する容量が大きい。第2に、導体のチャンネル内に空気或いは低いDKを有するその他の素材を使用することによって、チャンネルが形成された導体を備えているワイヤの有効なDKが低減する。チャンネルが形成されている絶縁体について前述したように、ワイヤ全体のDKが低くなることは幾つかの理由で有益である。その理由には、信号の速度が上がること、並びに減衰量及びディレイスキューが減少することが含まれる。更に、DKの低い素材、例えば空気を導体のチャンネル内に使用すると、信号が進行する表皮効果を向上させることもできる。即ち、信号は、より少ない減衰量で、より速く進行する。滑らかな導体に対してチャンネルが形成されている導体の優れた2つの効果を合わせることで、より大きい容量を有し、信号の速度が速いワイヤが形成される。
【0049】
チャンネルが形成された導体は、所定量の素材から製造できる導体の長さが、チャンネルが形成されていない即ち滑らかな導体と比べて長いために、素材の費用の低減を図ることができる等その他の付加的な効果が滑らかな導体に対して優れている。素材の費用の削減の程度は、最終的に、チャンネルの数及びチャンネルの断面積によって決まる。
【0050】
従来の方法によるホイルシールド(foil shield)と同様に、外側ジャケット20は、互いに撚り合わせたワイヤの対の上に形成される。外側ジャケットを形成するために用いられるよく知られた手法は、例えば、射出成形及び押し出し成形である。好ましくは、ジャケットは、フルオロポリマー、ポリ塩化ビニル(PVC)、或いは通信ケーブルへの使用に適したPVCの等価物等のプラスチック素材から成っている。
【0051】
上述の如く、本発明のワイヤは、最小のDKを有するように設計されている。最小のDKを備えているワイヤは、チャンネルが形成された絶縁体及び導体を使用する他に、改良を施した隔絶されたコアを利用することによって実現できる。絶縁体及び導体のように、ワイヤは、図6に示されるような、チャンネル52を備えている外側ジャケット50を備えることができる。この特定の概念を有する本発明において、チャンネルが形成されたジャケット50は、コアエレメント(core element)54を包囲して隔絶されたコア56を形成している。コアエレメントは、少なくとも1つの絶縁導体であり、典型的には、複数の撚り線を備えている。更に、コアエレメントは、前述のように、セパレータ、シールド、絶縁体及び導体のいかなる組み合わせを備えていてもよい。例えば、図6は、互いに撚り合わせられた4つの撚り線58、60、62、64を備えた隔絶コア56を示している。4つの撚り線はチャンネルが形成されたジャケット50によって包囲されている。
【0052】
チャンネルが形成された絶縁体の化学物質及び構造によって得られる効果に関する上述の記載は、チャンネルが形成されたジャケットに対しても全体的に概ね当てはめることができる。すなわち、DKの低い絶縁体が望ましいのと同じ理由でDKが低いジャケットが望ましい。ジャケットのDKが低いことは、チャンネルが形成された絶縁体の場合と同様に、物理的及び電気的な性質並びに伝送の特性における効果をワイヤに与える。例えば、ジャケットのチャンネルは、ジャケットの全体のDKを低下させて、ジャケットで覆われたワイヤにおいて、全体として、信号の速度を上げ、減衰を小さくする。同様に、ジャケットの損出率は、チャンネルを利用することによって、際だって低下し、もって、コアエレメントの近くでの信号の速度を上げる。コアエレメントから離れた箇所における信号の速度は、コアエレメントの近くにおける信号の速度と同程度に上がることはない。従って、ワイヤは、互いに異なる2つの信号速度を効果的に提供する。該2つの信号速度は、内側信号速度及び外側信号速度である。信号速度の差は際だっている。例えば、内側信号速度は外側信号速度よりも高く、その差は約2%よりも大きい。好ましくは、信号速度の差は、約5%、10%程度或いはそれ以上である。言い換えれば、チャンネルが形成されているジャケットはDKを2つ以上有することができ、もって、該ジャケットは、それぞれ異なるDKを有する複数の部分を有し、これら複数の部分は同心の関係にある。従って、ジャケットは、それぞれ異なる信号速度を提供する。速度差はジャケットにおいて観ることができる他に、チャンネルが形成された絶縁体の内側部分と外側部分との間でも観ることができる。
【0053】
ジャケット或いは絶縁体の損出率は、内側部分及び外側部分の素材の複合密度を選択することによって、調節可能である。複合密度は、その名称が示すように、所定の体積の素材に対する絶縁体或いはジャケットである素材の重量である。より低い複合密度を有する素材は、より高い複合密度を有する場合と比べて、損出率が低い。例えば、空気を含んでいるチャンネルが形成されているジャケットは、チャンネルが形成されていないジャケットよりも複合密度が非常に小さい。チャンネルが形成されているジャケットにおいて、ジャケットの素材の重要な部分は、はるかに軽量な空気に置き換えられているので、ジャケットの複合密度を低減し、ジャケットの損出率を下げる。ジャケット又は絶縁体のチャンネル以外の手段を用いて複合密度に差をつけることもできる。
【0054】
チャンネルが形成された絶縁体と同様に、ワイヤが物理的に健全な状態であることを維持しながら、ジャケットのチャンネルの断面積を最大にして、コアエレメント上におけるジャケットの脚が占める領域を最小にすることが望ましい。チャンネルが形成されていないジャケットと比較して、チャンネルが形成されているジャケットには防火の効果及び経済的な効果もある。
【0055】
良好にバランスのとれた性質を備えているワイヤにおいて、チャンネルが形成されたジャケットは複数のチャンネルを有しているが、その複数のチャンネルのうち、断面積の大きさがジャケットの断面積の約30%よりも大きいチャンネルは1つもない。更に、好ましいチャンネルの断面積は、少なくとも2.0X10−5平方インチである。ある有効なワイヤの隔絶されたコアの直径は、約0.25インチよりも小さく、好ましいチャンネルが形成されたジャケットの厚さは約0.030インチよりも小さい。
【0056】
本発明の好適な概念において、ワイヤはチャンネルを有する1又はそれ以上の部品を備えており、もって、該ワイヤはチャンネルが形成された導体、チャンネルが形成された絶縁体、或いはチャンネルが形成されたジャケットを備える。最も好ましい形態としては、導体、絶縁体、ジャケットの3つ全てにチャンネルが形成されている形態を含め、チャンネルが形成された部品を組み合わせてワイヤを形成することである。チャンネルが形成された部品を組み合わせて使用した場合、チャンネルのない比較対象となる大きさのワイヤよりも際だって小さいDKを有するワイヤが形成される。
【0057】
本発明は、また、チャンネルが形成された絶縁体を備えているワイヤを製造する方法及び装置を備えている。絶縁体は、他にも適当な製造方法があるが、従来の押し出し成形法を用いて導体上に押し出されることが好ましい。典型的な絶縁体押し出し装置において、絶縁素材は、押出機のクロスヘッドに到達する際、完全な固体でもなく完全な液体でもない、プラスチックの状態にある。クロスヘッドは、押し出された絶縁体の物理的な特徴及び内径を画成するチップを備えている。クロスヘッドは、また、押し出された絶縁体の外径を画成するダイを備えている。チップ及びダイは協力して、導体の周囲に絶縁材料を配置するのに貢献する。周知のチップ及びダイの組み合わせでは、純然たるシリンダであるチップによって、どの断面においても厚みが比較的均等になっている絶縁材料しか提供できない。周知のチップ及びダイを組み合わせは、厚みが均等で一貫した絶縁体を提供することを目的としている。本発明では、チップは、例えばチャンネルのような内側に物理的な特徴を備えている絶縁体を提供している。他方、ダイは、外径が比較的に一定である絶縁体を提供する。本発明のチップとダイの組み合わせによって、幾つかの厚みを有する絶縁体が提供される。
【0058】
図2に示される絶縁体14は、図4に示されるような押し出しチップ30を使用して得られる。チップ30は、押し出し成形の際に導体が通ることができる穴32を備えている。チップ30のランド34は多数の溝36を備えている。押し出し成形の過程において、チップ30は、ダイと組んで、その後で導体12に適用することができる絶縁体14を形成する。特に、この実施例において、ランド34の溝36は、絶縁体14の脚18を形成し、もって、脚18は導体12(或いはチャンネルのない絶縁体の層)と接触する。ランド34の溝36の間にある突出部38は、絶縁素材を効果的に遮断し、もって、絶縁素材が押し出される際に、絶縁素材にチャンネル16を形成する。
【0059】
図3に示される絶縁体14’は、図5に示されるような押し出しチップを使用して得られる。チップ30’は、押し出し成形の際に導体が通ることができる穴32を備えている。図4のチップのように、チップ30’のランド34は、突出部38’によって離されている多数の溝36’を備えている。この実施例において、溝36’は凹状となっている。突出部38’は平坦な頂部を有している。ランド34の溝36’及び突出部38’は協力して絶縁体の凸状の脚18’及び平坦な頂部を有するチャンネル16’を形成する。更に、チップ30’は、また、ランド34から離隔した多数のロッド40を備えている。ロッド40は、突出部38’と同様な作用をし、絶縁素材を効果的に遮断して、もって、図3から分かるように、絶縁体14’によって包囲された長いチャンネル22を形成する。
【0060】
ワイヤ10は、上述のように費用、重量及び大きさが低減し、向上した性能を備えてる他に、更なる効果を提供している。本発明のワイヤは、当業界では周知のワイヤと比較した場合、温度に対する抵抗が高いことが分かった。ワイヤは、高温の環境にて使用されるか又は導体自身が動作中に際だった熱を発生する状況下においては、高い性能を発揮する。これらの状況は、ほとんどの通信ワイヤにとっては希な状況ではあるが、内燃機関の環境下や絶縁体が必要とされる高電流が流れる状況下にて使用されるワイヤのようなその他の種類のワイヤには重要な問題である。空気等の気体を含んでいるチャンネルを使用することによって、導体の熱の散逸を高める一方でワイヤ全体の熱抵抗を向上させる。
【0061】
更に、本発明の更なる効果としては、ワイヤの可撓性が向上していることであり、ワイヤは、よじれたり潜在的な損傷を受けることなく大きく撓むことができる。また、絶縁体と導体との間に形成され気体で充満されているチャンネルが存在していることによって、はく離性が向上する。従って、ワイヤをワイヤナット等の結合部品に取り付ける際に絶縁体の下にある導体を露出させるために絶縁体をワイヤの端部から離す作業をより簡単に行うことができる。
【0062】
本発明を上記実施例と関連させて説明した。この説明は図面を介して行われたものであるが、この図面に本発明が限定されないことは理解されたい。また、添付の特許請求の範囲は、従来技術に抵触しない程度に、広く解釈されるべきものであることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】階段状に切断された本発明に係わるワイヤの斜視図
【図2】本発明に係わるワイヤの断面図
【図3】本発明に係わる他のワイヤの断面図
【図4】本発明に係わるワイヤを製造するための押し出しチップの斜視図
【図5】本発明に係わるワイヤを製造するための他の押し出しチップの斜視図
【図6】本発明に係わるチャネルが形成されたジャケットを備えているワイヤの断面図
【図7】本発明に係わるチャネルが形成された導体を備えているワイヤの断面図
【図8】撚り合わされたワイヤの対の断面図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤであって、
長手軸に沿って延びている導体と、
前記導体を包囲している絶縁体と、
前記長手軸に概ね沿って延びている少なくとも1つの第1のチャンネルと、
から成り、絶縁導体を形成しており、
前記導体の外周面は前記少なくとも1つの第1のチャンネルの一側を形成しており、前記チャンネルは気体を含んでいることを特徴とするワイヤ。
【請求項2】
前記少なくとも第1のチャンネルの少なくとも一部は前記絶縁体にあることを特徴とする請求項1のワイヤ。
【請求項3】
前記少なくとも第1のチャンネルの少なくとも一部は前記導体にあることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ。
【請求項4】
前記導体の外周面は前記少なくとも1つの第1のチャンネルの一側を形成していることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ。
【請求項5】
前記気体は前記導体に接していることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ。
【請求項6】
前記気体は、前記絶縁体の誘電率とは異なる誘電率を有していることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1のチャンネルは空気を含んでることを特徴とする請求項6に記載のワイヤ。
【請求項8】
前記気体は独立セル気体ポケットとは関連していないことを特徴とする請求項1に記載のワイヤ。
【請求項9】
前記気体の誘電率はおよそ1であることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ。
【請求項10】
前記絶縁導体の全体の誘電率はおよそ2.0よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のワイヤ。
【請求項11】
前記絶縁体は複数の第1のチャンネルを備えていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ。
【請求項12】
前記複数の第1のチャンネルのうち、断面積が前記絶縁体の断面積の約30%よりも大きいチャンネルはないことを特徴とする請求項11に記載のワイヤ。
【請求項13】
前記絶縁体は、前記少なくとも1つの第1のチャンネルから離されている少なくとも1つの第2のチャンネルを完全に包囲していることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ。
【請求項14】
前記ワイヤは、更に、前記絶縁体を包囲している外側ジャケットから成ることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ。
【請求項15】
2つの絶縁導体は互いに撚り合わさって撚り線を形成することを特徴とする請求項1に記載のワイヤ。
【請求項16】
前記撚り線のうちの第1の撚り線のチャンネルの断面積は、前記撚り線のうちの第2の撚り線のチャンネルとは異なり、両者間におけるディレイスキューを小さくしていることを特徴とする請求項15に記載のワイヤ。
【請求項17】
前記絶縁導体間において、ディレイスキューは15(ns)以下であることを特徴とする請求項16に記載のワイヤ。
【請求項18】
前記導体は銅製の均質導線であることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ。
【請求項19】
前記ワイヤは、更に、前記導体と前記絶縁体との間にある第2の絶縁体から成り、前記第2の絶縁体の外周面は前記少なくとも1つの第1のチャンネルの一側を形成していることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ。
【請求項20】
前記絶縁導体は、NFPA255、NFPA259、NFPA262或いはこれらの組み合わせからなるグループから選択された試験に合格していることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ。
【請求項21】
前記絶縁導体は、UL910・スタイナー・トンネル試験に従って燃焼した際、発生した煙が、絶縁体にチャンネルを備えていない絶縁導体と比較して、少なくとも10%少ないことを特徴とする請求項1に記載のワイヤ。
【請求項22】
前記絶縁導体は、UL910・スタイナー・トンネル試験に従って燃焼した際、炎の広がる速度が、絶縁体にチャンネルを備えていない絶縁導体と比較して、少なくとも10%遅いことを特徴とする請求項1に記載のワイヤ。
【請求項23】
前記少なくとも1つの第1のチャンネルの形状は、矩形と、台形と、アーチ形状とから成るグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ。
【請求項24】
絶縁導体であって、
長さを有する導体と、
前記導体を包囲し、前記導体と実質的に同じ長さを有する絶縁体と、
から成り、
前記絶縁体は、概ね前記導体の長さ分だけ延びている少なくとも1つの第1のチャンネルを備えており、前記導体の外周面は前記少なくとも1つの第1のチャンネルの一側を形成し、前記チャンネル材は、前記導体と接している気体を含んでいることを特徴とする絶縁導体。
【請求項25】
複数の撚り線を備えており、データ及びその他の信号を伝送する通信ワイヤであって、
各撚り線には、長手軸に沿って延びている導体と、前記導体を包囲している絶縁体と、前記長手軸に概ね沿って延びており前記絶縁体に形成されている少なくとも1つの第1のチャンネルと、が備えられて、絶縁導体を形成しており、前記導体の外周面は前記少なくとも1つの第1のチャンネルの一側を形成しており、
前記撚り線のうちの第1の撚り線のチャンネルの断面積は、前記撚り線のうちの第2の撚り線のチャンネルとは異なり、両者間のディレイスキューを小さくすることを特徴とする通信ワイヤ。
【請求項26】
長手軸に沿って延びており、前記長手軸に概ね沿って延びている少なくとも1つの第1のチャンネルを備えている部品から成るワイヤであって、
前記部品は、導体、絶縁体、ジャケット或いはそれらの組み合わせから選択され、気体を含んでいるチャンネルが形成されている部品を形成し、
前記チャンネルが形成されている部品が絶縁体から成るという条件であるとき、導体の外周面は前記少なくとも1つの第1のチャンネルの一側を形成していることを特徴とするワイヤ。
【請求項27】
前記チャンネルが形成されている部品は、少なくともチャンネルが形成されているジャケットを備えていることを特徴とする請求項26に記載のワイヤ。
【請求項28】
前記ワイヤは、更に、前記長手軸に沿って延びているコアエレメントから成り、前記チャンネルが形成されているジャケットは前記コアエレメントを包囲して隔絶されたコアを形成することを特徴とする請求項27に記載のワイヤ。
【請求項29】
前記コアエレメントは、銅製の導体と、光ファイバ導体と、絶縁導体と、撚り線と、絶縁体と、シールドと、セパレータと、これらの組み合わせとから成るグループから選択されることを特徴とする請求項28に記載のワイヤ。
【請求項30】
前記コアエレメントは、チャンネルが形成されている絶縁体、チャンネルが形成されている導体、或いはこれらの組み合わせを備えていることを特徴とする請求項28に記載のワイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−500756(P2006−500756A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501968(P2005−501968)
【出願日】平成15年9月8日(2003.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2003/028040
【国際公開番号】WO2004/029993
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(505101363)クローン・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】