説明

通信制御方法

【課題】RFIDタグとリーダ/ライタとから構成された通信システムにおいて、RFIDタグからのデータの読み取りエラーを防止する。
【解決手段】情報を記録する機能および、外部と無線通信する機能を備えたRFIDタグ20と、このRFIDタグ20への情報書き込みおよびそこからの情報読取りを無線通信によって行うリーダ/ライタ60とから構成され、RFIDタグ20として、FM変調方式およびAM変調方式の双方によって送信可能なものが用いられた通信システムにおいて、ある情報をRFIDタグ20からリーダ/ライタ60に送信する際に、RFIDタグ20の通信方式をFM変調方式およびAM変調方式の一方の変調方式により送信を行い、その変調方式で送信された信号をリーダ/ライタ60が復号できなかった場合、RFIDタグ20の通信方式をFM変調方式およびAM変調方式の他方の変調方式により、その情報に関する送信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信制御方法、特に詳細には、RFIDタグと、このRFIDタグへの情報書き込みおよびそこからの情報読取りを無線通信によって行うリーダ/ライタとから構成された通信システムにおける通信制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1や2に示されているように、情報を記録する機能およびその情報に関して外部と無線通信する機能を備えたRFIDタグと、このRFIDタグへの情報書き込みおよびそこからの情報読取りを無線通信によって行うリーダ/ライタとから構成された通信システムが公知となっている。近時この種の通信システムは、駅の自動改札システムや商品管理システム等に広範に適用されている。さらにこの種の通信システムは、例えば特許文献3に示されるように、各種装置を構成する部品や消耗品等の管理にも適用されつつある。
【0003】
上記のRFIDタグ並びにリーダ/ライタからなる通信システムにおいては、一般に、通信方式としてFM変調方式やAM変調方式が採用されている。例えば、この種の通信システムの一規格を定めているISO15693−2の場合、RFIDタグからリーダ/ライタへの送信にはFM変調方式およびAM変調方式の双方が利用可能とされている。
【0004】
同規格によれば、FM変調方式の場合は、周波数423.75kHzの副搬送波8パルスと周波数484.28kHzの副搬送波9パルスとの組合せを用いて、1ビットを表すようにしている。すなわち、それらの副搬送波がその順に送られる場合は「0」を、それらの副搬送波がそれと逆の順に送られる場合は「1」を表すようにしている。なお、それらの副搬送波は一般に双副搬送波と称されている。
【0005】
他方、AM変調方式の場合は、所定期間に一定周波数のパルス状副搬送波が立ち上がる状態と立ち上がらない状態との組合せを用いて、1ビットを表すようにしている。すなわち、それらの状態がその順に設定される場合は「0」を、それらの状態が上記と逆の順に設定される場合は「1」を表すようにしている。なお、その一定周波数の副搬送波は、一般に単一副搬送波と称されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−200749号公報
【特許文献2】特開2008−033905号公報
【特許文献3】特開2009−234599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のようなRFIDタグを用いた通信システムにおいては、RFIDタグからリーダ/ライタへの通信にエラーが生じることを完全に防止するのは極めて困難となっている。従来、そのような通信エラーの発生を抑えるために、RFIDタグ側で変調方式の最適化を行ったり、信号キャンセルを行ったりして通信の安定化を図ることが考えられている。しかし、リーダ/ライタ側では、RFIDタグとの間の送受信を単純制御して、受信信号をそのまま復号化しているため、RFIDタグから応答信号が返って来ているにも関わらず復号化でエラーを起こし、その結果、RFIDタグからのデータを読み取ることができない、という事態を招いていた。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、RFIDタグとリーダ/ライタとから構成された通信システムにおいて、RFIDタグからのデータの読み取りエラーを極力抑えることができる通信制御方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による第1の通信制御方法は、
前述したように、情報を記録する機能および外部と無線通信する機能を備えたRFIDタグと、このRFIDタグへの情報書き込みおよびそこからの情報読取りを無線通信によって行うリーダ/ライタとから構成され、
前記RFIDタグとして、FM変調方式およびAM変調方式の双方によって送信可能なものが用いられた通信システムにおいて、
ある情報をRFIDタグからリーダ/ライタに送信する際に、RFIDタグの通信方式をFM変調方式およびAM変調方式の一方の変調方式により送信を行い、
その変調方式で送信された信号をリーダ/ライタが復号できなかった場合、RFIDタグの通信方式をFM変調方式およびAM変調方式の他方の変調方式により、その情報に関する送信を行うことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明による第2の通信制御方法は、
同じく上述の通りのRFIDタグとリーダ/ライタとから構成され、
前記RFIDタグとして、FM変調方式およびAM変調方式の双方によって送信可能なものが用いられた通信システムにおいて、
ある情報をRFIDタグからリーダ/ライタに送信するのに先行して、RFIDタグの通信方式をFM変調方式あるいはAM変調方式に設定して試験送信を行い、
そのときリーダ/ライタが受信した信号の最小振幅が所定の閾値未満の場合、閾値以上の場合でそれぞれRFIDタグの通信方式をFM変調方式、AM変調方式に設定して、その情報に関する送信を行うことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明による第3の通信制御方法は、
同じく上述の通りのRFIDタグとリーダ/ライタとから構成され、
前記RFIDタグとして、FM変調方式およびAM変調方式の双方によって送信可能なものが用いられた通信システムにおいて、
ある情報をRFIDタグからリーダ/ライタに送信する際に、RFIDタグの通信方式をFM変調方式に設定した送信と、AM変調方式に設定した送信の双方を行い、
FM変調方式およびAM変調方式の一方により送信されてリーダ/ライタが受信した信号のうちリーダ/ライタが復号不可能な部分を、FM変調方式およびAM変調方式の他方により送信されてリーダ/ライタが受信した信号によって補間してから、それらの信号を復号することを特徴とするものである。
【0012】
なお、この第3の通信制御方法はそのまま単独で実施することもできるし、あるいは上記第1の通信制御方法でもエラーが発生する場合は引き続きこの第3の通信制御方法を実施する、というように第1の通信制御方法と併せて実施することもできる。
【0013】
本発明による第4の通信制御方法は、上述のように第1の通信制御方法と第3の通信制御方法と併せて実施するようにしたものであり、具体的には、
同じく上述の通りのRFIDタグとリーダ/ライタとから構成され、
前記RFIDタグとして、FM変調方式およびAM変調方式の双方によって送信可能なものが用いられた通信システムにおいて、
ある情報をRFIDタグからリーダ/ライタに送信する際に、RFIDタグの通信方式をFM変調方式およびAM変調方式の一方の変調方式により送信を行い、
その変調方式で送信された信号をリーダ/ライタが復号できなかった場合、RFIDタグの通信方式をFM変調方式およびAM変調方式の他方の変調方式により、その情報に関する送信を行い、
この他方の変調方式により送信された信号をリーダ/ライタが復号できなかった場合、前記双方の変調方式のうち一方の変調方式により送信されてリーダ/ライタが受信した信号のうちリーダ/ライタが復号不可能な部分を、前記双方の変調方式のうち他方の変調方式により送信されてリーダ/ライタが受信した信号によって補間してから、それらの信号を復号することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明による第5の通信制御方法は、
同じく上述の通りのRFIDタグとリーダ/ライタとから構成され、
前記RFIDタグとして、FM変調方式およびAM変調方式の双方によって送信可能なものが用いられた通信システムにおいて、
ある情報をRFIDタグからリーダ/ライタに送信する際に、RFIDタグの通信方式をFM変調方式に設定した送信と、AM変調方式に設定した送信の双方を行い、
FM変調方式およびAM変調方式の一方により送信されてリーダ/ライタが受信、復号した信号において復号されなかった部分を、FM変調方式およびAM変調方式の他方により送信されてリーダ/ライタが受信、復号した信号部分によって補間することを特徴とするものである。
【0015】
なお、この第5の通信制御方法はそのまま単独で実施することもできるし、あるいは上記第1の通信制御方法でもエラーが発生する場合は引き続きこの第5の通信制御方法を実施する、というように第1の通信制御方法と併せて実施することもできる。
【0016】
本発明による第6の通信制御方法は、上述のように第1の通信制御方法と第5の通信制御方法と併せて実施するようにしたものであり、具体的には、
同じく上述の通りのRFIDタグとリーダ/ライタとから構成され、
前記RFIDタグとして、FM変調方式およびAM変調方式の双方によって送信可能なものが用いられた通信システムにおいて、
ある情報をRFIDタグからリーダ/ライタに送信する際に、RFIDタグの通信方式をFM変調方式およびAM変調方式の一方の変調方式により送信を行い、
その変調方式で送信された信号をリーダ/ライタが復号できなかった場合、RFIDタグの通信方式をFM変調方式およびAM変調方式の他方の変調方式により、その情報に関する送信を行い、
この他方の変調方式により送信された信号をリーダ/ライタが復号できなかった場合、前記双方の変調方式のうち一方の変調方式により送信されてリーダ/ライタが受信、復号した信号において復号されなかった部分を、前記双方の変調方式のうち他方の変調方式により送信されてリーダ/ライタが受信、復号した信号部分によって補間することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明者の研究によると、RFIDタグ並びにリーダ/ライタからなる従来の通信システムにおいて、RFIDタグからのデータの読み取りにエラーが生じる大きな原因は、以下の点にあることが分かった。
【0018】
先に述べた双副搬送波を用いるFM変調方式では、リーダ/ライタが副搬送波の周期に基づいて復号を行うので、遠距離での通信に有利であるが、通信距離が短い場合はRFIDタグからの応答信号の周期が乱れることから、復号時にエラーが発生しやすくなっている。なお、このようにRFIDタグからの応答信号の周期が乱れるのは、リーダ/ライタの送信電力を遠距離通信が安定する一定の値にしておくと、近距離通信の場合はこの送信電力が必要以上に大きくなり過ぎることに起因している。それに対して単一副搬送波を用いるAM変調方式では、リーダ/ライタが副搬送波の振幅に基づいて復号を行うので、近距離での通信に有利であるが、通信距離が長い場合はRFIDタグからの応答信号の振幅が小さくなることから、復号時にエラーが発生しやすくなっている。
【0019】
従来の通信システムにおいては、前述の通りISO15693−2規格に準拠する場合等は、RFIDタグからリーダ/ライタへの送信にはFM変調方式およびAM変調方式の双方が利用可能とされているが、実際にシステムが稼働する際には、それらの方式の一方が選択利用される。そこで、上に述べたFM変調方式およびAM変調方式の各特性のため、前者が選択された場合は近距離通信時にエラーが生じやすく、また後者が選択された場合は遠距離通信時にエラーが生じやすくなるのである。
【0020】
以上の知見に基づいて本発明による第1の通信制御方法においては、ある情報をRFIDタグからリーダ/ライタに送信する際に、RFIDタグの通信方式をFM変調方式およびAM変調方式の一方の変調方式により送信を行い、その変調方式送信された信号をリーダ/ライタが復号できなかった場合、RFIDタグの通信方式をFM変調方式およびAM変調方式の他方の変調方式により、その情報に関する送信を行うようにしたので、FM変調方式では読み取りエラーが発生しやすい近距離通信時にはAM変調方式を採用して、また反対にAM変調方式では読み取りエラーが発生しやすい遠距離通信時にはFM変調方式を採用して送信可能となり、そこで、読み取りエラーの発生が極力抑えられるようになる。
【0021】
また、上述の知見に基づいて本発明による第2の通信制御方法においては、ある情報をRFIDタグからリーダ/ライタに送信するのに先行して、RFIDタグの通信方式をFM変調方式あるいはAM変調方式に設定して試験送信を行い、そのときリーダ/ライタが受信した信号の最小振幅が所定の閾値未満の場合(この場合は遠距離通信である確率が高い)、閾値以上の場合(この場合は近距離通信である確率が高い)でそれぞれRFIDタグの通信方式をFM変調方式、AM変調方式に設定して、その情報に関する送信を行うようにしたので、遠距離通信時にはFM変調方式を採用して、近距離通信時にはAM変調方式を採用して送信可能となり、そこでこの方法においても読み取りエラーの発生が極力抑えられるようになる。
【0022】
また、上述の知見に基づいて本発明による第3の通信制御方法においては、ある情報をRFIDタグからリーダ/ライタに送信する際に、RFIDタグの通信方式をFM変調方式に設定した送信と、AM変調方式に設定した送信の双方を行い、FM変調方式およびAM変調方式の一方により送信されてリーダ/ライタが受信した信号のうちリーダ/ライタが復号不可能な部分を、FM変調方式およびAM変調方式の他方により送信されてリーダ/ライタが受信した信号によって補間してから、それらの信号を復号するようにしたので、最終的に、読み取りエラーが極力抑えられた復号データが得られるようになる。
【0023】
また本発明による第4の通信制御方法は、先に述べた通り、上記第3の通信制御方法を第1の通信制御方法と併せて実施するようにしたものであるので、この第4の通信制御方法によれば、第1の通信制御方法を実施しても読み取りエラーが発生してしまう場合に、その読み取りエラーが極力抑えられた復号データを得ることが可能になる。
【0024】
また、上述の知見に基づいて本発明による第5の通信制御方法においては、ある情報をRFIDタグからリーダ/ライタに送信する際に、RFIDタグの通信方式をFM変調方式に設定した送信と、AM変調方式に設定した送信の双方を行い、FM変調方式およびAM変調方式の一方により送信されてリーダ/ライタが受信、復号した信号において復号されなかった部分を、FM変調方式およびAM変調方式の他方により送信されてリーダ/ライタが受信、復号した信号部分によって補間するようにしたので、この場合も最終的に、読み取りエラーが極力抑えられた復号データが得られるようになる。
【0025】
また本発明による第6の通信制御方法は、先に述べた通り、上記第5の通信制御方法を第1の通信制御方法と併せて実施するようにしたものであるので、この第6の通信制御方法によれば、第1の通信制御方法を実施しても読み取りエラーが発生してしまう場合に、その読み取りエラーが極力抑えられた復号データを得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の方法を実施する通信システムの一例を示すブロック図
【図2】上記通信システムを用いる孔版印刷装置を示す斜視図
【図3】上記孔版印刷装置に用いられるインクボトルを示す斜視図
【図4】上記通信システムにおける副搬送波の状態と、副搬送波によって送られるデータとを示すグラフ
【図5】従来の通信制御方法の一例における処理の流れを示すフローチャート
【図6】本発明の第1実施形態による通信制御方法における処理の流れを示すフローチャート
【図7A】本発明の第2実施形態による通信制御方法における処理の流れを示すフローチャート
【図7B】上記第2実施形態による通信制御方法における処理の流れを示すフローチャート
【図8】双副搬送波のみを用いた場合のデータ読み取りエラーの発生状況を示すグラフ
【図9】単一副搬送波のみを用いた場合のデータ読み取りエラーの発生状況を示すグラフ
【図10】本発明による通信制御方法を適用した場合のデータ読み取りエラーの発生状況を示すグラフ
【図11】従来技術における通信の成否状況を示す図
【図12】本発明による通信制御方法を適用した場合の通信の成否状況を示す図
【図13】本発明による通信制御方法を適用した場合の副搬送波の波形を示すグラフ
【図14】本発明の第3実施形態による通信制御方法における処理の流れを示すフローチャート
【図15A】本発明の第4実施形態による通信制御方法における処理の流れを示すフローチャート
【図15B】本発明の第4実施形態による通信制御方法における処理の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施形態による通信制御方法を実施する通信システムの基本構成を示すブロック図である。また図2は、この通信システムが採用された装置の一例である孔版印刷装置1を示す斜視図、そして図3はこの孔版印刷装置1に用いられるインクボトル2を示す斜視図である。
【0028】
なお、この孔版印刷装置1の印刷に関わる基本的構成やその動作は本発明とは直接関係が無いので、それらについての説明は省略する。
【0029】
まず図2を参照して、孔版印刷装置1の上記通信システムに関連する部分の構成を説明する。孔版印刷装置1の中央部のインクボトル挿入口には概略円柱状のインクボトル2が挿入され、そして詳細図示を省く製版部には、概略円柱状に巻回されたマスター(孔版原紙)3が挿入されるようになっている。
【0030】
インクボトル2は図3に拡大して示すように、円筒状の樹脂からなる容器本体10、この容器本体10の端面10aに固定されたRFIDタグ(ICタグ)20、および端面10aに貼付されたシール40から構成されている。このシール40は、読出阻止部41と、この読出阻止部41から連続的に延出した延長部42と、読出阻止部41から延長部42とは反対側に連続して延出した剥離部43とで構成されている。容器本体10の端面10aの中央部に形成された突部には、容器本体10内に充填されたインクが吐出する開口(図示せず)が設けられている。シール40は、この開口を延長部42が覆い、そして読出阻止部41がRFIDタグ20を覆う状態にして端面10aに貼付されている。剥離部43の先端部は、接着層を持たないで端面10aから浮いた非貼付部とされている。
【0031】
このインクボトル2を上記インクボトル挿入口に装着する際には、使用者が剥離部43の非貼付部を持って剥離を開始することにより、シール40は、剥離部43、読出阻止部41および延長部42の順に容器本体10から剥離される。こうして上記開口が露出することにより、インクボトル2が使用可能状態になる。また、RFIDタグ20も露出することにより、後述する無線通信が可能になる。
【0032】
上記RFIDタグ20は、そこに充填されたインクに関する識別データ、例えばインクの色、粘度、大豆インクであるか否か等のインク種類のデータを記録したものである。このRFIDタグ20は図1に示すリーダ/ライタ60とともに、それら両者間でデータを無線通信する通信システムを構成している。この無線通信により、RFIDタグ20に記録されているデータがリーダ/ライタ60に読み取られ、またリーダ/ライタ60からRFIDタグ20にデータが書き込まれる。
【0033】
一方マスター3にも、その識別データを記録したRFIDタグ30が貼付されており、そのデータは、孔版印刷装置1の本体側に設けられたリーダ/ライタによって無線通信で読み取られるようになっている。なお図1中の74は、後述するRFIDタグ20用の非接触通信I/F64と同様の非接触通信I/Fである。このRFIDタグ30とリーダ/ライタとからなる通信システムに本発明の通信制御方法を適用することも可能であるが、その場合は、RFIDタグ20とリーダ/ライタ60とからなる通信システムにおける通信制御方法と同様の処理を行えばよいので、詳しい説明は省略する。
【0034】
図1に示すリーダ/ライタ60は、ディジタル信号処理部61と、このディジタル信号処理部61に接続された送信部62と、同じくディジタル信号処理部61に接続された受信部63と、これら送信部62並びに受信部63に接続された非接触通信I/F(インターフェイス)64とから構成されている。ディジタル信号処理部61は、孔版印刷装置1の全体的な動作を制御するホストコンピュータ50に接続されている。
【0035】
非接触通信I/F64は整合回路やアンテナ等から構成されたもので、RFIDタグ20との間で無線通信を果たす。この非接触通信I/F64は図2に示すように、孔版印刷装置1内の所定位置にインクボトル2が装着されたとき、該インクボトル2に固定されているRFIDタグ20と整合する位置に配設されている。なお、非接触通信I/F64をそのような位置に配設する他、該非接触通信I/F64を構成するアンテナのみをその位置に配設しておくようにしてもよい。
【0036】
上記RFIDタグ20、送信部62並びに受信部63としては、公知の手段からなるものを適用することができる。それら公知の手段については、例えば特開2005−260468号公報に詳しい記載がなされている。
【0037】
上に説明した図1の通信システムは、一例として前記ISO15693−2に準拠して通信を行うものであり、リーダ/ライタ60は例えば周波数13.56MHzの搬送波を直接負荷変調するASK(振幅偏移変調)方式により、RFIDタグ20にコマンドを送信可能とされている。なお、この場合の変調度は10%あるいは100%に設定される。一方RFIDタグ20は、リーダ/ライタ60に応答信号を送信する際には、リーダ/ライタ60からの指示に基づいて、双副搬送波を用いるFM変調方式および単一副搬送波を用いるAM変調方式の一方を選択的に適用するように形成されている。
【0038】
なお上記コマンドは、例えばコマンドの最初を示すSOF、RFIDタグ20が適用する副搬送波の選択、伝送速度の選択、拡張フラグの設定等を示すフラグ、具体的にRFIDタグ20の10ページ目のデータをリロードする等の指令を示すコマンド、CRC(巡回冗長検査)バイト、およびコマンドの最後を示すEOFから構成されている。
【0039】
以下、RFIDタグ20が適用する上記2つの変調方式について図4を参照して詳しく説明する。RFIDタグ20は、リーダ/ライタ60からの指示に応答するに当たり、該リーダ/ライタ60にFM変調方式によりデータを送信する際には、図4(1)に示す双副搬送波を出力させる。なお、実際に出力される副搬送波は、例えば後述する図13に示すように正弦波状のものであるが、同図の(1)〜(4)では説明の明瞭化のために、パルス波形として示す。
【0040】
このFM変調方式においては、周波数423.75kHzの副搬送波8パルスと周波数484.28kHzの副搬送波9パルスとの組合せを用いて、1ビットを表すようにしている。すなわち、それらの副搬送波がその順に送られる場合は「0」を、それらの副搬送波がそれと逆の順に送られる場合は「1」を表すようにしており、図4(1)の例は「1」、「0」、「1」、「0」を示している。
【0041】
またRFIDタグ20は、リーダ/ライタ60からの指示に応答するに当たり、該リーダ/ライタ60にAM変調方式によりデータを送信する際には、図4(2)に示す単一副搬送波を出力させる。AM変調方式においては、所定期間に一定周波数のパルス状副搬送波が立ち上がる状態と立ち上がらない状態との組合せを用いて、1ビットを表すようにしている。すなわち、それらの状態がその順に設定される場合は「0」を、それらの状態が上記と逆の順に設定される場合は「1」を表すようにしており、図4(2)の例は「1」、「0」、「1」、「0」を示している。
【0042】
リーダ/ライタ60からRFIDタグ20に送られる情報は、前述のASK方式を適用して、非接触通信I/F64から電波に変換されて出力される。情報を担持しているこの電波はRFIDタグ20に受信され、該RFIDタグ20はその情報に関連した応答信号をリーダ/ライタ60に無線送信する。このときRFIDタグ20は、前述した通りリーダ/ライタ60からの指示に基づいて、FM変調方式あるいはAM変調方式によってリーダ/ライタ60に信号を送るように形成されている。
【0043】
このようにRFIDタグ20が送信する際のFM変調方式、AM変調方式による副搬送波の波形例をそれぞれ、前述の通り図4(1)、(2)に示す。これらに示す例では、副搬送波に乱れが無いので、リーダ/ライタ60はそれらの応答信号を正常に複号して、RFIDタグ20から送られて来る情報を正しく読み取ることができる。
【0044】
しかし、ここで図4(3)、(4)に示すように、RFIDタグ20から送信されて来る応答信号の副搬送波が乱れることが有る。同図(3)に示す例では、図中楕円で示す部分において、双副搬送波の周期が所定値より短くなったり長くなったりしている。前述した通り、このような不具合は、FM変調方式を採用した場合にRFIDタグ20がリーダ/ライタ60から比較的近くに位置していると発生しやすい。他方、同図(4)に示す例では、図中楕円で示す部分において、単一副搬送波の振幅が所定値より小さくなっている。前述した通り、このような不具合は、AM変調方式を採用した場合にRFIDタグ20がリーダ/ライタ60から比較的遠くに位置していると発生しやすい。
【0045】
以下、上述のような不具合が発生しても、RFIDタグ20から送られて来る情報を正しく読取り可能にした点について説明する。ここで、その処理を説明する前に、従来なされていた通信制御方法について図5を参照して説明する。なおこの説明を分かりやすいものとするために、図5の処理も、図1に示した基本構成を有する通信システムにおいてなされるものとして説明する。
【0046】
図5の処理の場合、処理が開始すると図1のディジタル信号処理部61はホストコンピュータ50からのコマンドを受け(ステップS1)、RFIDタグ20にそのコマンドを送信する(ステップS2)。先に述べた通りこの送信は、ASK方式に固定して行われる。また、RFIDタグ20の返信において、FM変調方式とAM変調方式とは択一的に選択されるので、ここでは一例として前者のFM変調方式が選択されるものとする。その場合は上記コマンドに、RFIDタグ20からリーダ/ライタ60への送信(返信)をFM変調方式によって行う旨の指示が含まれる。
【0047】
上記コマンドを受けたRFIDタグ20からは、このコマンドの指示に従ってFM変調方式によってリーダ/ライタ60に応答信号が送信されるが、ディジタル信号処理部61は次にこの返信されたデータを受け取れたか否かを判定する(ステップS3)。データを受け取れた場合、ディジタル信号処理部61は次に、そのデータが復号可能であるか否かを判定する(ステップS4)。データが全て復号可能であった場合、ディジタル信号処理部61は次に、そのデータを復号してホストコンピュータ50に送り(ステップS5)、そこで一連の処理が終了する。
【0048】
一方、上記ステップS3において、RFIDタグ20から返信されたデータを受け取れなかったと判定された場合、処理の流れはステップS2に戻され、ステップS3の判定処理が繰り返される。この処理が5回繰り返されても依然として上記データが受け取れなかったと判定された場合、ディジタル信号処理部61は読取りエラーを示す信号をホストコンピュータ50に送り(ステップS6)、一連の処理が終了する。そのようになった場合も、ホストコンピュータ50は孔版印刷装置1の操作パネルに「インク情報が認識できません」等の表示を出力させ、その不具合への対処を促す。
【0049】
また、上記ステップS4において、RFIDタグ20からのデータが全て複号可能ではなく、一部でも復号不可能であると判定された場合、処理の流れはステップS2に戻され、ステップS3を通してステップS4の判定処理が繰り返される。この処理が5回繰り返されても依然として上記データが復号不可能であると判定された場合、ディジタル信号処理部61は読取りエラーを示す信号をホストコンピュータ50に送り(ステップS6)、一連の処理が終了する。その場合も、ホストコンピュータ50は孔版印刷装置1の操作パネルに「インク情報が認識できません」等の表示を出力させ、その不具合への対処を促す。
【0050】
次に、本実施形態においてディジタル信号処理部61が行う処理の流れを示す図6を参照して、この処理について説明する。この図6におけるステップS1〜S6の処理は、ステップS4の処理が少し異なる以外、基本的に図5におけるステップS1〜S6の処理と同じである。すなわち本実施形態では、ステップS4において、RFIDタグ20からのデータが一部でも復号不可能であると判定された場合、処理の流れはステップS2に戻され、ステップS3を通してステップS4の判定処理が繰り返される。この処理が3回繰り返されても依然として上記データが一部でも復号不可能であると判定された場合、処理の流れはステップS11に移る。
【0051】
ディジタル信号処理部61はこのステップS11において、RFIDタグ20の送信における変調方式を、今までのFM変調方式ではなく、別の単一副搬送波によるAM変調方式に設定する旨のコマンドをRFIDタグ20に送信する。上記コマンドを受けたRFIDタグ20からは、このコマンドに対する応答信号が、変更指定されたAM変調方式によってリーダ/ライタ60に送信され、ディジタル信号処理部61はこのAM変調方式で送信されたデータを受け取れたか否かを判定する(ステップS12)。データを受け取れた場合、ディジタル信号処理部61は次に、そのデータが復号可能であるか否かを判定する(ステップS13)。データが全て復号可能であった場合、ディジタル信号処理部61は次に、そのデータを複号してホストコンピュータ50に送り(ステップS5)、そこで一連の処理が終了する。
【0052】
一方、上記ステップS12において、RFIDタグ20から返信されたデータを受け取れなかったと判定された場合、処理の流れはステップS11に戻され、ステップS12の判定処理が繰り返される。この処理が3回繰り返されても依然として上記データが受け取れなかったと判定された場合、ディジタル信号処理部61は読取りエラーを示す信号をホストコンピュータ50に送り(ステップS14)、一連の処理が終了する。そのようになった場合、ホストコンピュータ50は孔版印刷装置1の操作パネルに「インク情報が認識できません」等の表示を出力させ、その不具合への対処を促す。
【0053】
また、上記ステップS13において、RFIDタグ20からのデータが一部でも復号不可能であると判定された場合、処理の流れはステップS11に戻され、ステップS12を通してステップS13の判定処理が繰り返される。この処理が3回繰り返されても依然として上記データが一部でも復号不可能であると判定された場合、ディジタル信号処理部61は読取りエラーを示す信号をホストコンピュータ50に送り(ステップS14)、一連の処理が終了する。その場合も、ホストコンピュータ50は孔版印刷装置1の操作パネルに「インク情報が認識できません」等の表示を出力させ、その不具合への対処を促す。
【0054】
以上説明した通り本実施形態においては、RFIDタグ20からのFM変調方式による応答信号をリーダ/ライタ60が一部でも復号できなかった場合(これは近距離通信時に起こりやすい)は、通信方式を近距離通信が安定するAM変調方式に切り替えて再度通信するようにしたので、読み取りエラーの発生が極力抑えられるようになる。
【0055】
図13は、上述のような変調方式の切り替えが行われたときの、副搬送波の実際の波形を示している。この図13において、上部に「1回」、「2回」、「3回」として示す波形は、図6のステップS4でのNO判定が3回繰り返された際の、双副搬送波による変調状態を模式的に示している。そして「4回」として示す波形は、図6のステップS4でのNO判定が4回目に至り、そこで新たに適用された単一副搬送波による変調状態を模式的に示している。
【0056】
この単一副搬送波による変調が適用されたときの該単一副搬送波の波形が、その下に示されている。本例では、まず先頭部分にパルス無し+24パルス+パルス無し+8パルスの部分が有り、これはISO15693−2で規定された、コマンドの最初を示すSOFである。それに続いて、8パルス+パルス無しの部分が3つ有るが、これらは先に図4(2)を参照して説明した通り、データ「0」を示している。
【0057】
なお、本実施形態におけるのとは反対に、RFIDタグ20からまずAM変調方式を適用して送信を行い、リーダ/ライタ60がRFIDタグ20からの応答信号を復号できなかった場合(これは遠距離通信時に起こりやすい)は、RFIDタグ20の通信方式を遠距離通信が安定するFM変調方式に切り替えて再度送信するようにしてもよい。そうする場合も、読み取りエラーの発生が極力抑えられるようになる。
【0058】
次に、本発明の第2の実施形態による通信制御方法について、その処理の流れを示す図7Aおよび7Bを参照して説明する。この図7Aおよび7BにおけるステップS1〜S6およびS11〜S13の処理は、ステップS13の処理が少し異なる等の点以外、基本的に図6におけるステップS1〜S6およびS11〜S13の処理と同じである。すなわち本実施形態では、ステップS13において、RFIDタグ20からのデータが復号不可能であると判定されることが3回繰り返されると、処理の流れはステップS20に移る。また本実施形態では、ステップS3とS4との間、およびステップS12とS13との間にそれぞれ、RFIDタグ20から受信したデータをリーダ/ライタ60の内部メモリに保存するステップS25、S26が設けられる。
【0059】
ディジタル信号処理部61は上記ステップS20において、双副搬送波によるFM変調方式を適用して得た応答信号のデータと、単一副搬送波によるAM変調方式を適用して得た応答信号のデータを上記内部メモリから読み出し、次にステップS21においてそれらのデータを照合する。次にディジタル信号処理部61はステップS22において、それらのデータのうち正常と考えられるデータを抽出して、それらのデータを1ビットずつ互いに補間処理する。次にディジタル信号処理部61はステップS23において、それらの補間処理されたデータが全て復号可能であるか否か判定する。復号可能であると判定された場合、ディジタル信号処理部61は次にデータを復号してホストコンピュータ50に送り(ステップS5)、そこで一連の処理が終了する。
【0060】
一方、ステップS23において、補間処理されたデータが一部でも復号不可能であると判定された場合、ディジタル信号処理部61は読取りエラーを示す信号をホストコンピュータ50に送り(ステップS14)、一連の処理が終了する。その場合も、ホストコンピュータ50は孔版印刷装置1の操作パネルに「インク情報が認識できません」等の表示を出力させ、その不具合への対処を促す。
【0061】
なお前述した図4には、上記補間によるデータ作成を分かりやすく示してある。すなわち、同図(3)の例では双副搬送波による受信データが1ビット目において復号不可能となっており、また同図(4)の例では単一副搬送波による受信データが3ビット目において復号不可能となっている。そこで、上記1ビット目は単一副搬送波による受信データで補間し、上記3ビット目は双副搬送波による受信データで補間し、その後に復号すれば、最終的に同図(5)に示すように欠落の無いデータが得られることになる。
【0062】
なお、以上述べた補間処理は、特に図6に示した処理と組み合わせて行う他、図6に示した処理と組み合わせることなく、独自に行うようにしても構わない。
【0063】
また、この実施形態では、AM変調方式およびFM変調方式の一方により送信された複号前の信号が複号可能であるかどうかを判定し、複号不可能な部分をAM変調方式およびFM変調方式の他方により送信された複号前の信号で補間し、その後に復号処理するようにしているが、補間処理と復号処理とをその逆の順序で実行してもよい。すなわち、AM変調方式およびFM変調方式の一方により送信されて複号済みの信号において復号されなかった部分を、AM変調方式およびFM変調方式の他方により送信されて複号された信号部分で補間処理するようにしてもよい。
【0064】
次に図8〜10を参照して、本発明による効果を実際に計測した結果について説明する。これらの図8〜10は、図1に示した構成におけるリーダ/ライタ60の送受信軸(送信波の波面法線)に対するRFIDタグ20の送受信軸のズレ量を横軸に取り、そしてリーダ/ライタ60とRFIDタグ20との間の距離(通信距離)を縦軸に取り、それらのズレ量および距離で通信がなされたときの通信の成否をグラフ化して示すものである。上記横軸および縦軸の数値の単位はmmであり、横軸の符号はズレの方向を示している。また通信が成功した領域は斜線を付し、通信が失敗した領域は斜線を付けないで示してある。
【0065】
これらの図の中で図8、9および10は各々、双副搬送波によるFM変調方式のみを適用した場合、単一副搬送波によるAM変調方式のみを適用した場合、および図6の処理を適用した場合の測定結果を示している。図8の場合は、通信距離が比較的長くても通信が成功する反面、通信距離が比較的短くて上記ズレ量も小さい場合において、通信が失敗することが多いことが分かる。それに対して図9の場合は、通信距離が比較的短くて上記ズレ量も小さい場合は通信が成功する反面、通信距離が長くなると通信が失敗することが多いことが分かる。
【0066】
図10に示した本発明適用の場合は、上記図8、9の各場合における通信失敗を防止して、広い領域において正常な通信が確保されている。
【0067】
次に図11および12を参照して、上記とは別の見地から本発明による効果を確かめた結果について説明する。これらの図11および12はそれぞれ、図1に示した構成におけるリーダ/ライタ60の送受信軸(送信波の波面法線)に対するRFIDタグ20の送受信軸のズレ量を縦軸に取り、そしてリーダ/ライタ60とRFIDタグ20との間の距離(通信距離)を横軸に取り、それらの各ズレ量および距離で10回通信を行ったときの通信成功の回数を数値で示すものである。なお、この成功回数が6回以下の場合は、特にその数値にアミを掛けて示してある。上記横軸および縦軸の数値の単位はmmで、0.1mm刻みで各長さを示してあるが、横軸全部および縦軸の上半分は、小数点以下を切り捨て表示している。
【0068】
これらの図11および12は各々、双副搬送波によるFM変調方式のみを採用した場合、図6の処理を適用した場合の測定結果を示している。図11の場合は、通信距離が比較的短くて上記ズレ量も小さい場合において、通信成功回数が少なくなっていることが分かる。それに対して図12の場合は、全ての領域において通信が10回とも成功している。
【0069】
次に、本発明の第3の実施形態による通信制御方法について、その処理の流れを示す図14を参照して説明する。この図14における各処理も、図1に示した基本構成を有する通信システムにおいて、ディジタル信号処理部61によりなされるものである。
【0070】
本実施形態の場合、処理が開始するとディジタル信号処理部61はホストコンピュータ50からの試験通信コマンドを受け(ステップS31)、RFIDタグ20にそのコマンドを送信する(ステップS32)。なおこの送信も、前述したASK方式によってなされる。このコマンドを受けるとRFIDタグ20は所定の応答信号をリーダ/ライタ60に試験送信する。上記コマンドには、RFIDタグ20の試験送信を一例として双副搬送波を用いるFM変調方式によって行う旨の指令が含まれており、RFIDタグ20はそれに従って送信を行う。なおこの試験送信は、単一副搬送波を用いるAM変調方式によってなされても構わない。
【0071】
次にディジタル信号処理部61は、上記応答信号の最小振幅Aminを確認し(ステップS33)、次にその最小振幅Aminと所定の振幅閾値Arefとを比較する(ステップS34)。この比較によりAmin<Aref、つまり最小振幅Aminが振幅閾値Aref未満であると判定された場合、ディジタル信号処理部61は次にRFIDタグ20に、所要の情報返信を指令するコマンドを送信する(ステップS35)。なおこのコマンドには、RFIDタグ20からリーダ/ライタ60への送信を、双副搬送波を用いるFM変調方式によって行う旨の指示が含まれる。
【0072】
上記コマンドを受けたRFIDタグ20からは、このコマンドの指示に従ってFM変調方式によってリーダ/ライタ60に応答信号が送信されるが、ディジタル信号処理部61は次にこの返信されたデータを受け取れたか否かを判定する(ステップS36)。データを受け取れた場合、ディジタル信号処理部61は次に、そのデータが復号可能であるか否かを判定する(ステップS37)。データが全て復号可能であった場合、ディジタル信号処理部61は次に、そのデータを復号してホストコンピュータ50に送り(ステップS38)、そこで一連の処理が終了する。
【0073】
それに対して、上記ステップS36において、RFIDタグ20から返信されたデータをリーダ/ライタ60が受け取れなかったと判定された場合、並びにステップS37において、データが一部でも復号できないと判定された場合、ディジタル信号処理部61は次に読取りエラーを示す信号をホストコンピュータ50に送り(ステップS39)、一連の処理が終了する。そのようになった場合、ホストコンピュータ50は孔版印刷装置1の操作パネルに「インク情報が認識できません」等の表示を出力させ、その不具合への対処を促す。
【0074】
一方、前記ステップS34においてAmin≧Aref、つまり最小振幅Aminが振幅閾値Aref以上であると判定された場合、ディジタル信号処理部61は次にステップS45において、RFIDタグ20に所要の情報返信を指令するコマンドを送信する。なおこのコマンドには、RFIDタグ20からリーダ/ライタ60への送信を、単一副搬送波を用いるAM変調方式によって行う旨の指示が含まれる。
【0075】
上記コマンドを受けたRFIDタグ20からは、このコマンドの指示に従ってAM変調方式によってリーダ/ライタ60に応答信号が送信されるが、ディジタル信号処理部61は次にこの返信されたデータを受け取れたか否かを判定する(ステップS46)。データを受け取れた場合、ディジタル信号処理部61は次に、そのデータが復号可能であるか否かを判定する(ステップS47)。データが全て復号可能であった場合、ディジタル信号処理部61は次に、そのデータを復号してホストコンピュータ50に送り(ステップS48)、そこで一連の処理が終了する。
【0076】
それに対して、上記ステップS46において、RFIDタグ20から返信されたデータを受け取れなかったと判定された場合、並びにステップS47において、データが一部でも復号できないと判定された場合、ディジタル信号処理部61は次に読取りエラーを示す信号をホストコンピュータ50に送り(ステップS49)、一連の処理が終了する。そのようになった場合も、ホストコンピュータ50は孔版印刷装置1の操作パネルに「インク情報が認識できません」等の表示を出力させ、その不具合への対処を促す。
【0077】
上に述べたように最小振幅Amin<振幅閾値Arefとなるのは、一般にRFIDタグ20がリーダ/ライタ60から比較的遠くに位置している場合と考えられ、他方、最小振幅Amin≧振幅閾値Arefとなるのは、一般にRFIDタグ20がリーダ/ライタ60から比較的近くに位置している場合と考えられる。そこで本実施形態のように、前者の場合にはRFIDタグ20からリーダ/ライタ60への送信に遠距離通信が安定するFM変調方式を適用し、後者の場合にはRFIDタグ20からリーダ/ライタ60への送信に近距離通信が安定するAM変調方式を適用すれば、読み取りエラーの発生が極力抑えられるようになる。
【0078】
次に、本発明の第4の実施形態による通信制御方法について、その処理の流れを示す図15Aおよび15Bを参照して説明する。なお、ここに示されている処理も、図1に示した基本構成を有する通信システムにおいて、ディジタル信号処理部61によりなされるものである。
【0079】
本実施形態の場合、処理が開始するとディジタル信号処理部61はホストコンピュータ50からのコマンドを受け(ステップS51)、RFIDタグ20にそのコマンドを送信する(ステップS52)。なおこの送信も、前述したASK方式によってなされる。また上記コマンドには、RFIDタグ20からリーダ/ライタ60への送信をFM変調方式によって行う旨の指示が含まれる。このコマンドを受けるとRFIDタグ20は所定の応答信号をリーダ/ライタ60に送信する。RFIDタグ20は上記コマンドに従ってこの送信を、双副搬送波を用いるFM変調方式によって行う。
【0080】
上記コマンドを受けたRFIDタグ20からは、指示通りのFM変調方式によってリーダ/ライタ60に応答信号が送信されるが、ディジタル信号処理部61はこの返信されたデータを受け取れたか否かを判定する(ステップS53)。データを受け取れなかったと判定された場合、処理の流れはステップS52に戻され、コマンド送信およびステップS53の判定処理が繰り返される。この処理が5回繰り返されても依然として上記データが受け取れなかったと判定された場合、ディジタル信号処理部61は読取りエラーを示す信号をホストコンピュータ50に送り(ステップS58)、一連の処理が終了する。そのようになった場合、ホストコンピュータ50は孔版印刷装置1の操作パネルに「インク情報が認識できません」等の表示を出力させ、その不具合への対処を促す。
【0081】
上記ステップS53において、データを受け取れたと判定された場合、ディジタル信号処理部61は次にステップS54において、その受け取れたデータを内部メモリに保存させる。次にディジタル信号処理部61はステップS55において、RFIDタグ20に再び上記コマンドを送信する。ただしこのときのコマンドには、RFIDタグ20の送信を、単一副搬送波を用いるAM変調方式によって行う旨の指令が含まれており、RFIDタグ20はそれに従って送信を行う。
【0082】
上記コマンドを受けたRFIDタグ20からは、AM変調方式によってリーダ/ライタ60に応答信号が送信されるが、ディジタル信号処理部61はこの返信されたデータを受け取れたか否かを判定する(ステップS56)。データを受け取れなかったと判定された場合、処理の流れはステップS55に戻され、コマンド送信およびステップS56の判定処理が繰り返される。この処理が5回繰り返されても依然として上記データが受け取れなかったと判定された場合、ディジタル信号処理部61は読取りエラーを示す信号をホストコンピュータ50に送り(ステップS58)、一連の処理が終了する。そのようになった場合も、ホストコンピュータ50は孔版印刷装置1の操作パネルに「インク情報が認識できません」等の表示を出力させ、その不具合への対処を促す。
【0083】
上記ステップS56において、データを受け取れたと判定された場合、ディジタル信号処理部61は次にステップS57において、その受け取れたデータを内部メモリに保存させる。次にディジタル信号処理部61はステップS59において、双副搬送波を用いるFM変調方式を適用して得た応答信号のデータと、単一副搬送波を用いるAM変調方式を適用して得た応答信号のデータを上記内部メモリから読み出し、次にステップS60においてそれらのデータを照合する。
【0084】
次にディジタル信号処理部61はステップS61において、それらのデータのうち正常と考えられるデータを抽出して、それらのデータを1ビットずつ互いに補間処理する。次にディジタル信号処理部61はステップS62において、それらの補間処理されたデータが全て復号可能であるか否かを判定する。復号可能であると判定された場合、ディジタル信号処理部61は次にデータを復号してホストコンピュータ50に送り(ステップS63)、そこで一連の処理が終了する。
【0085】
一方、ステップS62において、補間処理されたデータが一部でも復号不可能であると判定された場合、処理の流れはステップS52に戻され、それ以降の処理が繰り返される。この処理が3回繰り返されても依然として上記補間処理されたデータが一部でも復号不可能と判定された場合、ディジタル信号処理部61は読取りエラーを示す信号をホストコンピュータ50に送り(ステップS64)、一連の処理が終了する。その場合も、ホストコンピュータ50は孔版印刷装置1の操作パネルに「インク情報が認識できません」等の表示を出力させ、その不具合への対処を促す。
【0086】
上に述べた通りの処理を行うことにより、FM変調方式およびAM変調方式の一方によりRFIDタグ20から送信されてリーダ/ライタ60が受信した信号のうちリーダ/ライタ60が復号不可能な部分が、FM変調方式およびAM変調方式の他方により送信されてリーダ/ライタ60が受信した信号によって補間されるので、最終的に、読み取りエラーが極力抑えられた復号データが得られるようになる。
【0087】
なおこの実施形態では、補間処理を行った後に復号処理するようにしているが、補間処理と復号処理とをその逆の順序で実行してもよい。すなわち、AM変調方式およびFM変調方式の一方により送信されて複号済みの信号において復号されなかった部分を、AM変調方式およびFM変調方式の他方により送信されて複号された信号部分で補間処理するようにしてもよい。
【0088】
また、以上で述べた補間処理は、特に図6に示した処理と組合わせて行う他、図6に示した処理を組み合わせることなく独自で行うようにしても構わない。
【符号の説明】
【0089】
1 孔版印刷装置
2 インクボトル
3 マスター
20、30 RFIDタグ
50 ホストコンピュータ
60 リーダ/ライタ
61 ディジタル信号処理部
62 送信部
63 受信部
64、74 非接触通信I/F

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記録する機能および外部と無線通信する機能を備えたRFIDタグと、このRFIDタグへの情報書き込みおよびそこからの情報読取りを無線通信によって行うリーダ/ライタとから構成され、
前記RFIDタグとして、FM変調方式およびAM変調方式の双方によって送信可能なものが用いられた通信システムにおいて、
ある情報をRFIDタグからリーダ/ライタに送信する際に、RFIDタグの通信方式をFM変調方式およびAM変調方式の一方の変調方式により送信を行い、
その変調方式で送信された信号をリーダ/ライタが復号できなかった場合、RFIDタグの通信方式をFM変調方式およびAM変調方式の他方の変調方式により、その情報に関する送信を行うことを特徴とする通信制御方法。
【請求項2】
情報を記録する機能および外部と無線通信する機能を備えたRFIDタグと、このRFIDタグへの情報書き込みおよびそこからの情報読取りを無線通信によって行うリーダ/ライタとから構成され、
前記RFIDタグとして、FM変調方式およびAM変調方式の双方によって送信可能なものが用いられた通信システムにおいて、
ある情報をRFIDタグからリーダ/ライタに送信するのに先行して、RFIDタグの通信方式をFM変調方式あるいはAM変調方式に設定して試験送信を行い、
そのときリーダ/ライタが受信した信号の最小振幅が所定の閾値未満の場合、閾値以上の場合でそれぞれRFIDタグの通信方式をFM変調方式、AM変調方式に設定して、その情報に関する送信を行うことを特徴とする通信制御方法。
【請求項3】
情報を記録する機能および外部と無線通信する機能を備えたRFIDタグと、このRFIDタグへの情報書き込みおよびそこからの情報読取りを無線通信によって行うリーダ/ライタとから構成され、
前記RFIDタグとして、FM変調方式およびAM変調方式の双方によって送信可能なものが用いられた通信システムにおいて、
ある情報をRFIDタグからリーダ/ライタに送信する際に、RFIDタグの通信方式をFM変調方式に設定した送信と、AM変調方式に設定した送信の双方を行い、
FM変調方式およびAM変調方式の一方により送信されてリーダ/ライタが受信した信号のうちリーダ/ライタが復号不可能な部分を、FM変調方式およびAM変調方式の他方により送信されてリーダ/ライタが受信した信号によって補間してから、それらの信号を復号することを特徴とする通信制御方法。
【請求項4】
情報を記録する機能および外部と無線通信する機能を備えたRFIDタグと、このRFIDタグへの情報書き込みおよびそこからの情報読取りを無線通信によって行うリーダ/ライタとから構成され、
前記RFIDタグとして、FM変調方式およびAM変調方式の双方によって送信可能なものが用いられた通信システムにおいて、
ある情報をRFIDタグからリーダ/ライタに送信する際に、RFIDタグの通信方式をFM変調方式およびAM変調方式の一方の変調方式により送信を行い、
その変調方式で送信された信号をリーダ/ライタが復号できなかった場合、RFIDタグの通信方式をFM変調方式およびAM変調方式の他方の変調方式により、その情報に関する送信を行い、
この他方の変調方式により送信された信号をリーダ/ライタが復号できなかった場合、前記双方の変調方式のうち一方の変調方式により送信されてリーダ/ライタが受信した信号のうちリーダ/ライタが復号不可能な部分を、前記双方の変調方式のうち他方の変調方式により送信されてリーダ/ライタが受信した信号によって補間してから、それらの信号を復号することを特徴とする通信制御方法。
【請求項5】
情報を記録する機能および外部と無線通信する機能を備えたRFIDタグと、このRFIDタグへの情報書き込みおよびそこからの情報読取りを無線通信によって行うリーダ/ライタとから構成され、
前記RFIDタグとして、FM変調方式およびAM変調方式の双方によって送信可能なものが用いられた通信システムにおいて、
ある情報をRFIDタグからリーダ/ライタに送信する際に、RFIDタグの通信方式をFM変調方式に設定した送信と、AM変調方式に設定した送信の双方を行い、
FM変調方式およびAM変調方式の一方により送信されてリーダ/ライタが受信、復号した信号において復号されなかった部分を、FM変調方式およびAM変調方式の他方により送信されてリーダ/ライタが受信、復号した信号部分によって補間することを特徴とする通信制御方法。
【請求項6】
情報を記録する機能および外部と無線通信する機能を備えたRFIDタグと、このRFIDタグへの情報書き込みおよびそこからの情報読取りを無線通信によって行うリーダ/ライタとから構成され、
前記RFIDタグとして、FM変調方式およびAM変調方式の双方によって送信可能なものが用いられた通信システムにおいて、
ある情報をRFIDタグからリーダ/ライタに送信する際に、RFIDタグの通信方式をFM変調方式およびAM変調方式の一方の変調方式により送信を行い、
その変調方式で送信された信号をリーダ/ライタが復号できなかった場合、RFIDタグの通信方式をFM変調方式およびAM変調方式の他方の変調方式により、その情報に関する送信を行い、
この他方の変調方式により送信された信号をリーダ/ライタが復号できなかった場合、前記双方の変調方式のうち一方の変調方式により送信されてリーダ/ライタが受信、復号した信号において復号されなかった部分を、前記双方の変調方式のうち他方の変調方式により送信されてリーダ/ライタが受信、復号した信号部分によって補間することを特徴とする通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図11】
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【図12】
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