説明

通信権利貸借サーバ装置及びコンピュータプログラム

【課題】各ユーザが有する通信権利を貸借することを支援することを図る。
【解決手段】通信権利貸借サーバ装置1は、通信権利の借り手2から受信した借用要求に応じて、通信権利の貸し手3が登録されたデータベースから、前記借用要求に合う貸し手の無線通信端末を選択し(S2、S3)、前記選択した貸し手と前記借り手との間の通信権利の貸借の合意を示す通知を受信すると、前記選択した貸し手の無線通信端末の通信帯域の上限値を減少させ且つ前記借り手の無線通信端末の通信帯域の上限値を増加させる指示を該当する無線基地局に送信する(S6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信権利貸借サーバ装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話端末やデータ通信カードが普及すると共に通信インフラが整備されたことによって、場所や時間に制約されずに通信サービスを利用することができるようになってきている。また、より高速、大容量の通信を可能にする通信方式を採用した通信サービスが実現されるようになるにつれて、高品質な音楽や映像を楽しむために、サイズが大きいファイルをダウンロードしたり、ストリーミング配信サービスを利用したりするユーザが増加している。一方、通信速度が増加しても配信されるコンテンツのサイズも大きくなっているので、通信速度がn倍になればコンテンツダウンロードに要する時間が1/n倍になるとは限らない。したがって、より高速にコンテンツをダウンロードしたいという要求はある。
【0003】
特許文献1には、高速なコンテンツダウンロードを実現するための従来技術が開示されている。この従来技術では、複数のユーザ端末がダウンロードネットワークを構成し、各ユーザ端末が対象となるコンテンツを部分毎にダウンロードし、各ユーザ端末が部分毎にダウンロードしたデータを無線LANなどの近距離無線通信を用いて共有し統合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−132613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来技術では、同じコンテンツをダウンロードする複数のユーザが近距離無線通信の可能な範囲内に存在する場合にしか適用することができない。例えば、有名なアーティストの楽曲や人気の高いコンテンツであれば、近距離通信が可能な範囲内に該コンテンツを必要とするユーザが複数存在し、ダウンロードネットワークを形成できる可能性があるが、マイナーなコンテンツの場合にはダウンロードネットワークを形成できるユーザが存在しない可能性が高い。
【0006】
また、上述した従来技術では、コンテンツを配信するサーバは、一つのコンテンツを部分毎に異なるユーザ端末へ送信する機能を特別に備える必要がある。したがって、一般のコンテンツ配信サーバからのコンテンツダウンロードには適用することができない。また、流通や再生に制限が加えられた著作権保護コンテンツを扱う場合についても、特別な仕組みが必要となる。さらに、有料コンテンツに対する課金をどうするのかという問題もある。
【0007】
そこで、各ユーザが有する「通信帯域を利用する権利(通信権利)」を貸借することができれば、一ユーザが利用できる通信帯域の上限値を一時的に拡大することができるので、コンテンツをダウンロードしたいユーザが単独で高速ダウンロードを行うことができる。また、一般のコンテンツ配信サーバであっても問題がない。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、各ユーザが有する通信権利を貸借することを支援することができる通信権利貸借サーバ装置及びコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る通信権利貸借サーバ装置は、通信権利の貸し手の無線通信端末が登録されたデータベースと、通信権利の借り手の無線通信端末から受信した借用要求に応じて、前記データベースから前記借用要求に合う貸し手の無線通信端末を選択する制御部と、を備え、前記制御部は、前記選択した貸し手と前記借り手との間の通信権利の貸借の合意を示す通知を受信すると、前記選択した貸し手の無線通信端末の通信帯域の上限値を減少させ且つ前記借り手の無線通信端末の通信帯域の上限値を増加させる指示を該当する無線基地局に送信する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る通信権利貸借サーバ装置において、前記データベースは、前記貸し手の無線通信端末の位置情報と各無線基地局の位置情報とを格納し、前記制御部は、前記借り手の無線通信端末から受信した位置情報と前記各無線基地局の位置情報と前記貸し手の無線通信端末の位置情報とに基づいて、前記借り手の無線通信端末が接続する無線基地局に接続する貸し手の無線通信端末を選択する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る通信権利貸借サーバ装置において、前記データベースは、前記貸し手の無線通信端末の貸与許可期間を示す情報を格納し、前記制御部は、前記借り手の無線通信端末から受信した借用期間の情報と前記貸し手の無線通信端末の貸与許可期間の情報とに基づいて、前記借用期間を満足する貸与許可期間の貸し手の無線通信端末を選択する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る通信権利貸借サーバ装置において、前記制御部は、前記選択した貸し手の無線通信端末から受信した通信権利返還要求に応じて、前記貸与許可期間内であっても、前記選択した貸し手の無線通信端末の通信帯域の上限値と前記借り手の無線通信端末の通信帯域の上限値とを元に戻す指示を該当する無線基地局に送信する、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る通信権利貸借サーバ装置において、前記データベースは、前記無線基地局における一端末当り帯域上限値の情報を格納し、前記制御部は、前記借り手の無線通信端末から受信した必要帯域の情報と前記一端末当り帯域上限値の情報とに基づいて、前記必要帯域に対し複数の貸し手の無線通信端末が必要である場合に複数の貸し手の無線通信端末を選択する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る通信権利貸借サーバ装置において、前記制御部は、少なくとも前記必要帯域を満足するだけの台数の貸し手の無線通信端末を選択する、ことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る通信権利貸借サーバ装置において、前記制御部は、前記借り手の無線通信端末から受信した借用期間の情報に基づいて、前記借用期間が終了した時に、前記選択した貸し手の無線通信端末の通信帯域の上限値と前記借り手の無線通信端末の通信帯域の上限値とを元に戻す指示を該当する無線基地局に送信する、ことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る通信権利貸借サーバ装置において、前記データベースは、前記貸し手の無線通信端末の貸与する割合を示す情報を格納し、前記制御部は、前記割合で、前記選択した貸し手の無線通信端末の通信帯域の上限値を減少させて借り手の無線通信端末の通信帯域の上限値を増加させるように、該当する無線基地局へ指示する、ことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る通信権利貸借サーバ装置において、前記制御部は、前記借り手の無線通信端末に対して前記選択した貸し手の無線通信端末を紹介し、前記借り手の無線通信端末から、前記選択した貸し手との間の通信権利の貸借の合意を示す通知を受信する、ことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る通信権利貸借サーバ装置において、前記制御部は、前記選択した貸し手の無線通信端末に対して前記借り手との間の通信権利の貸借の合意を伺う交渉メッセージを送信し、該応答メッセージを受信する、ことを特徴とする。
【0019】
本発明に係るコンピュータプログラムは、通信権利の借り手の無線通信端末から受信した借用要求に応じて、通信権利の貸し手の無線通信端末が登録されたデータベースから、前記借用要求に合う貸し手の無線通信端末を選択するステップと、前記選択した貸し手と前記借り手との間の通信権利の貸借の合意を示す通知を受信すると、前記選択した貸し手の無線通信端末の通信帯域の上限値を減少させ且つ前記借り手の無線通信端末の通信帯域の上限値を増加させる指示を該当する無線基地局に送信するステップと、をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであることを特徴とする。
これにより、前述の通信権利貸借サーバ装置がコンピュータを利用して実現できるようになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、各ユーザが有する通信権利を貸借することを支援することができる。これにより、一ユーザが利用できる通信帯域の上限値を一時的に拡大することができるので、コンテンツをダウンロードしたいユーザが単独で高速ダウンロードを行うことができる。また、一般のコンテンツ配信サーバであっても問題がない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る通信権利貸借システムの概略構成図である。
【図2】図1に示す通信権利貸借サーバ装置1の構成図である。
【図3】図2に示すデータベース13の構成例である。
【図4】本発明の一実施形態に係る通信権利貸借処理の流れを示すシーケンスチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る貸与許可メッセージ100の構成例である。
【図6】本発明の一実施形態に係る借用要求メッセージ200の構成例である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る通信権利貸借処理の流れを示すシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る通信権利貸借システムの概略構成図である。図1において、通信権利貸借サーバ装置1は、通信回線を介して、ユーザの無線通信端末2、3とデータを送受することができる。又、通信権利貸借サーバ装置1は、通信回線を介して、ネットワーク側の装置(無線基地局4、通信中継装置5、Webサーバ6)とデータを送受することができる。
【0023】
無線通信端末2、3は、無線基地局4を有する無線通信システムに属する。無線通信端末2、3は、無線基地局4と接続してデータを送受することができる。各無線通信端末2、3に対しては、無線基地局4を介して利用できる通信帯域の上限値が定められている。本実施形態では、ユーザ間で通信権利を貸借することによって、一無線通信端末に対する通信帯域の上限値を一時的に拡大することができるようにする。
【0024】
以下、説明の便宜上、通信権利を借りる方のユーザの無線通信端末のことを借り手2と称し、通信権利を貸す方のユーザの無線通信端末のことを貸し手3と称する。又、貸し手3が複数の場合、第N番目の貸し手3のことを貸し手#N_3と称する。但し、Nは自然数である。
【0025】
図2は、図1に示す通信権利貸借サーバ装置1の構成図である。図2において、通信権利貸借サーバ装置1は、通信部11と制御部12とデータベース13を有する。通信部11は、通信回線を介して、借り手2、貸し手3、無線基地局4、通信中継装置5及びWebサーバ6とデータを送受する。制御部12は、通信権利貸借サービスに係る制御を行う。データベース13は、通信権利貸借サービスに係るデータを格納する。
【0026】
図3は、図2に示すデータベース13の構成例である。図3において、データベース13は、貸与許可端末リストと基地局リストを有する。貸与許可端末リストは、通信権利を貸すことを許可する無線通信端末(貸し手3)の情報を有する。基地局リストは、通信権利貸借サービスの対象である無線基地局4の情報を有する。
【0027】
次に、図4を参照して、本実施形態に係る通信権利貸借システムの動作を説明する。図4は、本実施形態に係る通信権利貸借処理の流れを示すシーケンスチャートである。
【0028】
(ステップS1)貸し手3は、通信権利貸借サーバ装置1に対し、貸与許可メッセージを送信する。図5は貸与許可メッセージ100の構成例である。貸与許可メッセージ100は、貸し手3の識別子(端末ID)と、貸し手3の位置を示す情報と、通信権利の貸与を開始する日時を示す情報と、通信権利の貸与を終了する日時を示す情報とを有する。
【0029】
通信権利貸借サーバ装置1において、制御部12は、通信部11が受信した貸与許可メッセージ100内の情報をデータベース13内の貸与許可端末リストへ書き込む。
【0030】
貸与許可メッセージの送信方法としては、例えば電子メールやWebブラウザなどで電子データとして通信権利貸借サーバ装置1へ送信する方法が挙げられる。なお、貸し手3のユーザが貸与許可メッセージを書面で通信権利貸借サーバ装置1の運用者へ送り、該運用者が書面の内容をデータベース13へ登録するようにしてもよい。
【0031】
(ステップS2)借り手2は、通信権利貸借サーバ装置1に対し、借用要求メッセージを送信する。図6は借用要求メッセージ200の構成例である。借用要求メッセージ200は、借り手2が必要とする通信帯域の情報と、借り手2の位置を示す情報と、通信権利の借用を開始する日時を示す情報と、通信権利の借用を終了する日時を示す情報とを有する。
【0032】
(ステップS3)通信権利貸借サーバ装置1において、制御部12は、通信部11が受信した借用要求メッセージ200内の情報に基づいて、データベース13内の貸与許可端末リストから、借り手2の要求に合う貸し手3を選択する。そして、制御部12は、選択結果である貸し手3の端末IDを記載した交渉権通知メッセージを通信部11により借り手2へ送信する。
【0033】
ここで、貸し手3の選択方法を説明する。まず、借用要求メッセージ200内の位置情報と、データベース13内の基地局リストの位置情報とに基づいて、借り手2が接続する無線基地局4(以下、接続基地局4と称する)を判断する。次いで、その接続基地局4の位置情報と、貸与許可端末リストの位置情報とに基づいて、接続基地局4に接続する貸し手3であって貸与済フラグが設定されていない貸し手3を抽出する。次いで、この抽出した貸し手3の中から、貸し手3の貸与開始日時及び貸与終了日時と借り手2の借用開始日時及び借用終了日時とに基づいて、借り手2の借用期間を満足する貸し手3を抽出する。この抽出された貸し手3が選択結果である。
【0034】
なお、接続基地局4の一端末当り帯域上限値と借り手2の必要帯域とに基づいて、借り手2の必要帯域に対し複数の貸し手3が必要である場合において、複数の貸し手3を選択することができるときには、複数の貸し手3を選択結果に含め、できれば少なくとも借り手2の必要帯域を満足するだけの台数の貸し手3を選択結果に含める。
【0035】
(ステップS4)借り手2は、通信権利貸借サーバ装置1から受信した交渉権通知メッセージ内の端末IDの貸し手3に対し、交渉メッセージを送信する。交渉メッセージは、通信権利の借用の承諾を得るためのものである。貸し手3のユーザは、受信した交渉メッセージを参照し、通信権利の借用を承諾する場合には借り手2へ承諾メッセージを返信し、通信権利の借用を承諾しない場合には借り手2へ非承諾メッセージを返信する。
【0036】
なお、貸し手3が、自己の貸与許可期間内に受信した交渉メッセージに対しては承諾メッセージを、自己の貸与許可期間外に受信した交渉メッセージに対しては非承諾メッセージを、それぞれ自動的に借り手2へ返信するようにしてもよい。
【0037】
(ステップS5)借り手2は、受信した承諾メッセージを送信した貸し手3の端末IDと自己(借り手2)の端末IDとを記載した交渉完了通知メッセージを、通信権利貸借サーバ装置1へ送信する。通信権利貸借サーバ装置1において、制御部12は、通信部11が受信した交渉完了通知メッセージ内の端末IDの貸し手3に対し、データベース13内の貸与許可端末リストの貸与済フラグの欄に、該交渉完了通知メッセージ内の借り手2の端末IDを書き込む。これにより、当該貸し手3の貸与済フラグが設定されたことになる。
【0038】
(ステップS6)通信権利貸借サーバ装置1において、制御部12は、接続基地局4に対し、交渉完了通知メッセージ内の借り手2の端末ID及び貸し手3の端末IDを記載した帯域上限値変更指示メッセージ(通信権利の貸与開始)を通信部11により送信する。接続基地局4は、受信した帯域上限値変更指示メッセージ内の貸し手3の端末IDに対して通信帯域の上限値を減少させると共に、該帯域上限値変更指示メッセージ内の借り手2の端末IDに対して通信帯域の上限値を増加させる。貸し手3に対する通信帯域の減少量は、予め定められる。借り手2に対する通信帯域の増加量は、貸し手3に対する通信帯域の減少量の合計である。接続基地局4は、借り手2の変更後の通信帯域の上限値を通信権利貸借サーバ装置1へ通知する。
【0039】
(ステップS7)通信権利貸借サーバ装置1において、制御部12は、借り手2に対し、変更後の通信帯域の上限値を記載した帯域上限値変更指示メッセージ(通信権利の借用開始)を通信部11により送信する。これにより、借り手2は、受信した帯域上限値変更指示メッセージ内の変更後の通信帯域の上限値に基づいて、通信速度を増加させることができる。
【0040】
(ステップS8)借り手2は、所望の通信処理が完了した後に、自己(借り手2)の端末IDを記載した通信権利返却メッセージを通信権利貸借サーバ装置1へ送信する(図示せず)。通信権利貸借サーバ装置1において、制御部12は、通信部11が受信した通信権利返却メッセージ内の借り手2の端末IDを検索キーに用いて、データベース13内の貸与許可端末リストの貸与済フラグを検索し、該借り手2の端末IDが貸与済フラグに設定されている貸し手3の端末IDを抽出する。そして、制御部12は、接続基地局4に対し、抽出した貸し手3の端末ID及び借り手2の端末IDを記載した帯域上限値変更指示メッセージ(通信権利の貸与終了)を通信部11により送信する。これにより、接続基地局4は、受信した帯域上限値変更指示メッセージ内の貸し手3の端末ID及び借り手2の端末IDに対して、通信帯域の上限値を元に戻す。又、通信権利貸借サーバ装置1において、制御部12は、データベース13内の貸与許可端末リストにおいて、当該借り手2の端末IDが設定されている貸し手3の貸与済フラグの欄から該借り手2の端末IDを消去する。これにより、これにより、当該貸し手3の貸与済フラグが非設定にされたことになる。
【0041】
(ステップS9)通信権利貸借サーバ装置1において、制御部12は、借り手2に対し、帯域上限値変更指示メッセージ(通信権利の借用終了)を通信部11により送信する。これにより、借り手2は、変更前の元の通信帯域の上限値に基づいて、通信速度を調整する。
【0042】
なお、ステップS6において、通信権利貸借サーバ装置1は、必要に応じて、通信中継装置5やWebサーバ6に対し、帯域上限値変更指示メッセージ(通信権利の貸与開始)を送信する。これにより、通信中継装置5やWebサーバ6は、受信した帯域上限値変更指示メッセージ内の貸し手3の端末IDに対して通信帯域の上限値を減少させると共に、該帯域上限値変更指示メッセージ内の借り手2の端末IDに対して通信帯域の上限値を増加させる。この場合、通信権利貸借サーバ装置1は、ステップS8において、通信中継装置5やWebサーバ6に対し、帯域上限値変更指示メッセージ(通信権利の貸与終了)を送信する。これにより、通信中継装置5やWebサーバ6は、受信した帯域上限値変更指示メッセージ内の貸し手3の端末ID及び借り手2の端末IDに対して、通信帯域の上限値を元に戻す。
【0043】
上述したように本実施形態によれば、各ユーザが有する通信権利を貸借することを支援することができる。これにより、一ユーザが利用できる通信帯域の上限値を一時的に拡大することができるので、コンテンツをダウンロードしたいユーザが単独で高速ダウンロードを行うことができる。また、一般のコンテンツ配信サーバであっても問題がない。
【0044】
なお、通信権利貸借サーバ装置1が借り手2の借用期間を管理し、借り手2の借用期間が終了した時にステップS8(通信権利の貸与終了処理)及びステップS9(通信権利の借用終了処理)を行うようにしてもよい。
【0045】
又、貸し手3が貸与許可期間内に通信権利の返還を要求することができるようにしてもよい。通信権利貸借サーバ装置1は、貸し手3から通信権利返還要求メッセージを受信した場合には、速やかに、ステップS8(通信権利の貸与終了処理)及びステップS9(通信権利の借用終了処理)を行う。これにより、貸し手3の通信の要求に対して不利益を与えないように配慮することができる。
【0046】
又、貸し手3が通信権利を貸与する割合を指定できるようにしてもよい。この場合、通信権利貸借サーバ装置1は、貸し手3から指定された割合をデータベース13内の貸与許可端末リストに記載し、該割合で貸し手3の通信帯域上限値を減少させて借り手2の通信帯域上限値を増加させるように無線基地局4等へ指示する。
【0047】
なお、本実施形態では、貸し手3と借り手2の通信帯域の上限値を変更することによって、通信権利の貸借を実現している。1xEV−DOなどの無線通信システムでは、無線基地局配下にある各無線通信端末における電波受信品質に基づいて、例えばプロポーショナルフェアネス方式により無線通信端末に対する時分割多重スロットの割り当てを行う。プロポーショナルフェアネス方式では、無線基地局配下に1台の無線通信端末しか存在しない場合には1台の無線通信端末が全スロットを占有(通信帯域の上限値を最大化)できるが、無線基地局配下に存在する無線通信端末の数が多くなれば1台の無線通信端末に割り当てできるスロット(通信帯域の上限値)は少なくなる。そこで、本実施形態では、借り手2に対して貸し手3に割り当てるスロット分を振り向けることで、借り手2に割当できるスロット数(通信帯域の上限値)を増やし、借り手2の通信速度を増加させることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、貸し手3に対して通信権利の借用の承諾を得るステップ(図4のS4)については、図7のステップS4aに示すように通信権利貸借サーバ装置1が行うようにしてもよい。図7において、ステップS4aでは、通信権利貸借サーバ装置1が貸し手3に対し、交渉メッセージを送信する。貸し手3は、通信権利の借用を承諾する場合には通信権利貸借サーバ装置1へ承諾メッセージを返信し、通信権利の借用を承諾しない場合には通信権利貸借サーバ装置1へ非承諾メッセージを返信する。通信権利貸借サーバ装置1は、受信した承諾メッセージを送信した貸し手3を、通信権利を貸与するものとする。
【0049】
また、図4又は図7に示す各ステップを実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、通信権利貸借処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disk)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0050】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0051】
1…通信権利貸借サーバ装置、2…無線通信端末(借り手)、3…無線通信端末(貸し手)、4…無線基地局、5…通信中継装置、6…Webサーバ、11…通信部、12…制御部、13…データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信権利の貸し手の無線通信端末が登録されたデータベースと、
通信権利の借り手の無線通信端末から受信した借用要求に応じて、前記データベースから前記借用要求に合う貸し手の無線通信端末を選択する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記選択した貸し手と前記借り手との間の通信権利の貸借の合意を示す通知を受信すると、前記選択した貸し手の無線通信端末の通信帯域の上限値を減少させ且つ前記借り手の無線通信端末の通信帯域の上限値を増加させる指示を該当する無線基地局に送信する、
ことを特徴とする通信権利貸借サーバ装置。
【請求項2】
前記データベースは、前記貸し手の無線通信端末の位置情報と各無線基地局の位置情報とを格納し、
前記制御部は、前記借り手の無線通信端末から受信した位置情報と前記各無線基地局の位置情報と前記貸し手の無線通信端末の位置情報とに基づいて、前記借り手の無線通信端末が接続する無線基地局に接続する貸し手の無線通信端末を選択する、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信権利貸借サーバ装置。
【請求項3】
前記データベースは、前記貸し手の無線通信端末の貸与許可期間を示す情報を格納し、
前記制御部は、前記借り手の無線通信端末から受信した借用期間の情報と前記貸し手の無線通信端末の貸与許可期間の情報とに基づいて、前記借用期間を満足する貸与許可期間の貸し手の無線通信端末を選択する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信権利貸借サーバ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記選択した貸し手の無線通信端末から受信した通信権利返還要求に応じて、前記貸与許可期間内であっても、前記選択した貸し手の無線通信端末の通信帯域の上限値と前記借り手の無線通信端末の通信帯域の上限値とを元に戻す指示を該当する無線基地局に送信する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の通信権利貸借サーバ装置。
【請求項5】
前記データベースは、前記無線基地局における一端末当り帯域上限値の情報を格納し、
前記制御部は、前記借り手の無線通信端末から受信した必要帯域の情報と前記一端末当り帯域上限値の情報とに基づいて、前記必要帯域に対し複数の貸し手の無線通信端末が必要である場合に複数の貸し手の無線通信端末を選択する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の通信権利貸借サーバ装置。
【請求項6】
前記制御部は、少なくとも前記必要帯域を満足するだけの台数の貸し手の無線通信端末を選択する、
ことを特徴とする請求項5に記載の通信権利貸借サーバ装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記借り手の無線通信端末から受信した借用期間の情報に基づいて、前記借用期間が終了した時に、前記選択した貸し手の無線通信端末の通信帯域の上限値と前記借り手の無線通信端末の通信帯域の上限値とを元に戻す指示を該当する無線基地局に送信する、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の通信権利貸借サーバ装置。
【請求項8】
前記データベースは、前記貸し手の無線通信端末の貸与する割合を示す情報を格納し、
前記制御部は、前記割合で、前記選択した貸し手の無線通信端末の通信帯域の上限値を減少させて借り手の無線通信端末の通信帯域の上限値を増加させるように、該当する無線基地局へ指示する、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の通信権利貸借サーバ装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記借り手の無線通信端末に対して前記選択した貸し手の無線通信端末を紹介し、前記借り手の無線通信端末から、前記選択した貸し手との間の通信権利の貸借の合意を示す通知を受信する、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の通信権利貸借サーバ装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記選択した貸し手の無線通信端末に対して前記借り手との間の通信権利の貸借の合意を伺う交渉メッセージを送信し、該応答メッセージを受信する、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の通信権利貸借サーバ装置。
【請求項11】
通信権利の借り手の無線通信端末から受信した借用要求に応じて、通信権利の貸し手の無線通信端末が登録されたデータベースから、前記借用要求に合う貸し手の無線通信端末を選択するステップと、
前記選択した貸し手と前記借り手との間の通信権利の貸借の合意を示す通知を受信すると、前記選択した貸し手の無線通信端末の通信帯域の上限値を減少させ且つ前記借り手の無線通信端末の通信帯域の上限値を増加させる指示を該当する無線基地局に送信するステップと、
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−244402(P2012−244402A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112396(P2011−112396)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】