説明

通信端末

【課題】高い意匠性と優れた通信性能とを両立させることが可能な通信端末を提供すること。
【解決手段】携帯機1は、五角形平板形状の外観を有するとともに、いずれも非金属材料よりなるアッパケース11とロアケース12とにより箱状のケース10が形成され、同ケース10内に通信機能部15が収容されている。そして、いずれもクロムを主体とした金属メッキ材料よりなる上側メッキリング21と下側メッキリング22とにより形成される金属加飾部20が、前記ケース10の意匠面(五角形をなす面)の周縁に沿って設けられている。金属加飾部20は、携帯機1の先端を示唆する部分(側面10d,10eの境界線)にて連続状態が断ち切られるようにして設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機能を有する通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両や住宅用の鍵(キー)として、車両等に設けられる通信装置との間で無線通信を行うことが可能な通信端末(電子キー)が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この種の電子キーは、通常時には電池から電力を賄って車両側との間で無線通信を行うとともに、いわゆる電池切れ時には車両側から送信されてくる起動用電波から電力を賄って車両側との間で無線通信を行うようになっている。
【特許文献1】特開2005−268945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の電子キーは、その所持態様から携帯機と称されており、通信性能や耐久性はもとより高い意匠性が求められている。そこで、携帯機の表面に金属メッキ等の加飾を施すことで、貴金属製品に見られるような光輝意匠を出し、それにより高級感を醸し出すようなことが考えられる。
【0005】
しかしながら、金属加飾に用いられる例えばアルミニウムのような金属は、携帯機(電子キー)と車両側との間での通信に供される電波を遮蔽することが知られており、高い意匠性を求める余り加飾の度合を増やすと、通信性能の低下を招く虞がある。尚、通信性能を優先する余り加飾の度合を減らすと、近年の携帯電話機に代表される移動体通信機器に比べて高級感に欠けることとなる。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、高い意匠性と優れた通信性能とを両立させることが可能な通信端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、非金属材料よりなる箱状のケース内に通信機能部が収容されてなる通信端末において、前記ケースの意匠面の周縁に沿って金属加飾部が設けられ、その金属加飾部は、該通信端末の先端を示唆する部分にて連続状態が断ち切られるようにして設けられていることをその要旨としている。
【0008】
同構成によると、ケースの意匠面の周縁に沿って金属加飾部が設けられることで、通信端末に光輝意匠が出て、それにより高級感が醸し出される。そして、この金属加飾部は、ケースの意匠面の周縁において途中で連続状態が断ち切られているものの、その場所は通信端末の先端を示唆する部分であるため、意匠性が損なわれるどころか、逆に意匠的な一体感が生まれることとなり、意匠性が向上する。しかも、金属加飾部がこのように途中で断ち切られていることから、通信機能部による通信に際して金属加飾部内に渦電流が生じるといったこともない。従って、高い意匠性と優れた通信性能とを両立させることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の通信端末において、前記金属加飾部は、該通信端末の先端を示唆する部分に向かって、前記ケースの意匠面に沿った厚みが徐々に小さくなるように設定されるとともに、該通信端末の先端を示唆する部分にて連続状態が断ち切られていることをその要旨としている。
【0010】
同構成によると、金属加飾部は、通信端末の先端を示唆する部分に向かって幅狭に形成されるとともに、最終的に、通信端末の先端を示唆する部分にて連続状態が断ち切られている。このように金属加飾部を途中で断ち切るにあたり自然な形でそれが実現されているので、視覚的に違和感が生じることはなく、よって見栄えを向上できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
本発明によれば、高い意匠性と優れた通信性能とを両立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態を説明する。
図1及び図2に示すように、通信端末としての携帯機1は、車両用の鍵(電子キー)として車両ユーザが所持するものであり、車両側の通信装置2との間で無線通信を行うことが可能となっている。尚、こうした無線通信には二通りのパターンが存在する。
【0013】
まず、第1のパターンについて説明すると、この場合、図1に示すように、まず通信装置2から車外(車内)の所定領域にリクエスト信号が送信される。そして、この領域内に携帯機1が持ち込まれたとき、携帯機1によりリクエスト信号が受信されるとともに、そのリクエスト信号の応答信号として、携帯機1毎に個別に設定されたIDコードを含む信号(IDコード信号)が携帯機1から送信される。そして、このIDコード信号が通信装置2で受信されるとともに、それに含まれているIDコードが、車両側に登録されている基準IDコードと一致しているか否かの照合(IDコード照合)が車両側で実行される。そして、両IDコードが一致したとき、正規の携帯機1が利用されたものとして、ドアの解錠(エンジンの始動)が許可されるとともに、これにより携帯機1の所持者による乗車(運転)が許容される。
【0014】
尚、携帯機1は、リクエスト信号に応答してIDコード信号を送信するための電源として機能する電池を内蔵するとともに、通常時にはこの電池から電力を賄って通信装置2との間で無線通信を行うようになっている。従って、携帯機1が電池切れを起こしていないとき、それを所持して車両に近付くことでドアの解錠が電気的に許可されるとともに、それを経て車内に乗り込むと今度はエンジンの始動が電気的に許可されることとなり、よってメカニカルキーを用いることなくそれらが実現されるため極めて便利である。
【0015】
一方、携帯機1が電池切れを起こしているとき、それを所持して車両に近付いてもそれからはIDコード信号が送信されないので、ドアの解錠が電気的には許可されない。従って、この場合、車両ユーザはメカニカルキーを用いた操作によりドアの解錠を機械的に行うとともに、それを経て車内に乗り込むことになるが、この種の車両ではセキュリティレベルの向上を図るべくメカニカルキーを用いた機械的なエンジンの始動が行えないようになっている。
【0016】
そこで、こうした場合を想定して第2のパターンが設けられており、これについて説明すると、この場合、図2に示すように、まず通信装置2から車内の極めて狭い所定領域に起動用電波が送信される。そして、この領域内に携帯機1が持ち込まれたとき、携帯機1により起動用電波が受信されるとともに、それから電力を賄って前記又は別のIDコード信号が携帯機1から送信される。そして、先と同様、このIDコード信号が通信装置2で受信されるとともに、IDコード照合が車両側で実行され、両IDコードが一致したとき、正規の携帯機1が利用されたものとして、エンジンの始動が電気的に許可されるようになっている。
【0017】
そして、こうした無線通信に供される電波(リクエスト信号、起動用電波、IDコード信号)は、金属により遮蔽されることが知られており、通信領域内に金属が存在すると、それによる遮蔽を受け、結果として通信性能が低下するとともに、場合によっては通信エラーが発生する虞がある。尚、これは金属内に渦電流が生じること等によるものである。
【0018】
そして、携帯機1もこれの例外ではなく、従って本実施形態の携帯機1は、電波通信を好適に行い得る配慮がなされている。尚、電波通信を好適に行うことのみを実現するのであれば、携帯機1を樹脂材料等の非金属材料のみで構成すれば事が足りることとなる。しかし、携帯機1には通信性能や耐久性はもとより高い意匠性が求められており、その一部に金属メッキ等の加飾を施すことで光輝意匠を出し、それにより高級感を醸し出すことも重要である。そこで、本実施形態の携帯機1は、高い意匠性と優れた通信性能とを両立させるための工夫がなされている。
【0019】
即ち、図3(a),(b)に示すように、本実施形態の携帯機1は、五角形平板形状の外観を有するキーホルダとして具体化されるとともに、その基端面に設けられる小リング1aには図示しないチェーンが取り付けられ、それの端に設けられる大リングに、メカニカルキー等のキー類をまとめてたばねておくことが可能となっている。
【0020】
携帯機1は、いずれも非金属材料(本実施形態では樹脂材料)よりなるアッパケース11とロアケース12とにより箱状のケース10が形成されるとともに、同ケース10内に通信機能部15が収容されている。本実施形態において通信機能部15は、通信装置2から送信されてくる起動用電波から電力を賄ってIDコード信号を送信する、電池不要の通信部品により構成されている。
【0021】
そして、いずれもクロムを主体とした金属メッキ材料よりなる上側メッキリング21と下側メッキリング22とにより形成される金属加飾部20が、前記ケース10の意匠面(五角形をなす面)の周縁に沿って設けられている。尚、ケース10の5つの側面のうち、小リング1aが設けられる側面を10aと規定するとともに、同側面10aの隣に位置する側面を10b,10cと規定し、残りの側面を10d,10eと規定する。こうしたとき、側面10a〜10cについては全面が、側面10d,10eについては両側面の境界線付近の僅かな部分を除いて全面が、前記金属加飾部20により覆われている。
【0022】
尚、小リング1aを携帯機1の基端としたとき、側面10d,10eの境界線は携帯機1の先端ということになり、これを踏まえると、金属加飾部20は、携帯機1の先端を示唆する部分(側面10d,10eの境界線)にて連続状態が断ち切られるようにして設けられている。そして、金属加飾部20は、携帯機1の先端を示唆する部分(側面10d,10eの境界線)に向かって、ケース10の意匠面(五角形をなす面)に沿った厚みが徐々に小さくなるように設定されている。そして、同金属加飾部20は、最終的に、携帯機1の先端を示唆する部分(側面10d,10eの境界線)にて厚みがなくなり、つまりその部分にて連続状態が断ち切られている。その結果、ケース10の意匠面の周縁は、その全周が金属加飾部20により閉じられているのではなく、閉ループには近いものの完全な閉ループとはなっていない。
【0023】
そして、このように金属加飾部20が途中で断ち切られている部分の近くに前記通信機能部15が設けられている。
以上、詳述したように本実施形態によれば、次のような作用、効果を得ることができる。
【0024】
(1)ケース10の意匠面の周縁に沿って金属加飾部20が設けられることで、携帯機1に光輝意匠が出て、それにより高級感が醸し出される。そして、この金属加飾部20は、ケース10の意匠面の周縁において途中で連続状態が断ち切られているものの、その場所は携帯機1の先端を示唆する部分であるため、意匠性が損なわれるどころか、逆に意匠的な一体感が生まれることとなり、意匠性が向上する。しかも、金属加飾部20がこのように途中で断ち切られていることから、通信機能部15による通信に際して金属加飾部20内に渦電流が生じるといったこともない。従って、高い意匠性と優れた通信性能とを両立させることができる。
【0025】
(2)金属加飾部20は、携帯機1の先端を示唆する部分に向かって幅狭に形成されるとともに、最終的に、携帯機1の先端を示唆する部分にて連続状態が断ち切られている。このように金属加飾部20を途中で断ち切るにあたり自然な形でそれが実現されているので、視覚的に違和感が生じることはなく、よって見栄えを向上できる。
【0026】
(3)携帯機1が起動用電波から電力を賄って通信装置2との間で数センチメートルの距離で通信を行うような場合、それに供される電波の強度は小さく、よってこの場合、金属加飾部20が途中で断ち切られていなければ、通信性能は満足されないものと考えられる。従って、このような極近距離での通信態様に本発明の技術を適用することは有用である。
【0027】
尚、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・携帯機1のような通信端末は、必ずしも五角形平板形状の外観を有していなくてもよく、例えば、三角形平板形状等の外観を有していてもよい。或いは、滴形平板形状、ハート形平板形状等の外観を有していてもよい。つまり、通信端末の意匠面の周縁に沿った形状は、必ずしも直線のみによって形成されていなくてもよく、曲線のみによって形成されていてもよいし、或いは直線と曲線とが組み合わさって形成されていてもよい。尚、意匠面の周縁に沿った形状は、必ずしも左右対称の外観を有していなくてもよく、左右が非対称の外観を有していてもよい。
【0028】
・小リング1aとは別のものであれ、通信端末の基端をイメージさせるものを設ければ、自ずとその反対側は通信端末の先端を示唆させることとなり、よってその部分にて金属加飾部20の連続状態を断ち切るようにすれば、意匠的な一体感が生まれる。逆に、小リング1aのようなものを通信端末の先端を示唆する部分とするとともに、その部分にて金属加飾部20の連続状態を断ち切るようにしてもよい。尚、小リング1aのようなものを設けることなく、2つの側面により形成される凹の部分或いは凸の部分を通信端末の先端を示唆する部分とするとともに、その部分にて金属加飾部20の連続状態を断ち切るようにしてもよい。
【0029】
・クロム以外の金属(例えば、アルミニウム等)を主体とした材料により金属加飾部20を形成してもよい。勿論、金属メッキ以外の手法により金属加飾部20を形成してもよい。
【0030】
・樹脂材料以外の非金属材料によりケース10を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】携帯機と通信装置との間で行われる無線通信の第1のパターンを説明するための説明図。
【図2】携帯機と通信装置との間で行われる無線通信の第2のパターンを説明するための説明図。
【図3】(a)は携帯機の正面図であり、(b)は携帯機の底面図。
【符号の説明】
【0032】
1…携帯機(通信端末)、10…ケース、15…通信機能部、20…金属加飾部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非金属材料よりなる箱状のケース内に通信機能部が収容されてなる通信端末において、
前記ケースの意匠面の周縁に沿って金属加飾部が設けられ、その金属加飾部は、該通信端末の先端を示唆する部分にて連続状態が断ち切られるようにして設けられていることを特徴とする通信端末。
【請求項2】
請求項1に記載の通信端末において、
前記金属加飾部は、該通信端末の先端を示唆する部分に向かって、前記ケースの意匠面に沿った厚みが徐々に小さくなるように設定されるとともに、該通信端末の先端を示唆する部分にて連続状態が断ち切られていることを特徴とする通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−205590(P2008−205590A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36539(P2007−36539)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】