説明

通信装置、その制御方法、および制御プログラム

【課題】NGNのように使用帯域によってその利用料金が異なるネットワークでデータを送信する際、ユーザ所望の使用帯域を容易に選択する。
【解決手段】画像通信装置101は、NGN108によって画像の送信を行う際、NGNの使用帯域の各々についてデータを送信するために要する通信時間を算出する。そして、画像通信装置は、NGNの使用帯域毎の単位時間あたりの利用料金を示す課金情報と通信時間とに応じて、データの送信に用いる使用帯域を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、その制御方法、および制御プログラムに関し、特に、使用帯域によってその利用料金が異なるネットワークでデータを送信する通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、回線交換式の電話回線網を、IP(Internet Protocol)をベースにしたネットワークに置き換える所謂次世代ネットワーク(NGN:Next Generation Network)が知られている。そして、NGNを用いてサービスを提供する技術が普及しつつある。
【0003】
NGNでは、ネットワーク自体に帯域補償機能およびセキュリティ機能が備えられている。このNGNはSIP(Session Initiation Protocol)を用いて電話サービス、映像通信サービス、およびデータ通信サービス等を統合的に実現するIPネットワークである。そして、NGNでは、通信毎に異なる通信料(利用料金)が設定された伝送速度を選択することが可能となる。
【0004】
ここでは、伝送容量(転送可能なビットレート)を使用帯域ということがある。つまり、使用帯域をビット/秒で表すことがある。
【0005】
一方、SIP用に確立した呼接続用チャネルと同一チャネルを使用してT.38データ転送を行うようにした通信端末装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−86724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、NGNなどのように、使用帯域、つまり、伝送速度によってその利用料金が異なるネットワークでデータなどの情報を送信する際には、ユーザはどのように使用帯域を選択すれば、送信に掛かる料金を安くできるか容易に判断することができない。つまり、ユーザにとっては、所望の使用帯域を選択するための基準が存在せず、このため、ユーザはどのようにして使用帯域を選択すればよいか分からないという問題点がある。
【0008】
従って、本発明の目的は、使用帯域によってその利用料金が異なるネットワークでデータを送信する際、ユーザ所望の使用帯域を容易に選択することのできる通信装置、その制御方法、および制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明による通信装置は、使用帯域によってその利用料金が異なるネットワークを用いてデータの送信を行う通信装置であって、前記ネットワークの使用帯域毎の、単位時間あたりの利用料金を示す課金情報を取得する取得手段と、送信するデータのサイズと前記取得手段が取得した課金情報とに応じて、前記データの送信に用いる使用帯域を決定する決定手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、NGNのように使用帯域によってその利用料金が異なるネットワークでデータなどの情報を送信する際、ユーザ所望の使用帯域を容易に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態による画像通信装置が用いられたネットワークシステムの一例を示す図である。
【図2】図1に示すNGNにおける使用帯域(伝送速度)と課金情報との関係が規定された課金テーブルの一例を示す図である。
【図3】図1に示す画像通信装置のハードウェア構成についてその一例を示すブロック図である。
【図4】図3に示す画像通信装置101で行われる送信処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【図5】図3に示す画像通信装置においてSIPセッション確立の際の処理を説明するためのシーケンス図であり、(a)はオファーSDPを含むSIP接続要求メッセージを送信してSIPセッションを確立する際のシーケンス図、(b)はオファーSDPを含まないSIP接続要求メッセージを送信してSIPセッションを確立する際のシーケンス図である。
【図6】図3に示す画像処理装置で行われる送信処理の他の例を説明するためのフローチャートである。
【図7】図3に示す通信処理装置においてITU−T勧告T.38によるファクシミリ通信を宣言する際のSDPのメディアストリームの記述の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態による通信装置の一例について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、通信装置の一つであり、マルチメディアデータの送信が可能な画像通信装置を例に挙げて説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態による画像通信装置が用いられたネットワークシステムの一例を示す図である。
【0014】
図1において、次世代ネットワーク(NGN:Next Generation Network)108には、SIP(Session Initiation Protocol)サーバ104、ホームゲートウェイ(HGW)105および106、およびメディアゲートウェイ(メディアGW)107が接続されている。そして、メディアSW107はPSTN(Public Switched Telephone Networks:公衆交換電話網)109を介して画像通信装置103に接続される。
【0015】
また、HGW105および106にはそれぞれCSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)インタフェース110および111を介して画像通信装置101および102が接続される。
【0016】
NGN108では、異なる通信料(利用料金)が設定された複数の使用帯域(つまり、伝送速度)を有し、NGN108でデータを送信する際にはユーザは所望の使用帯域を選択する。つまり、NGN108は、データ送信の際の使用帯域によってその利用料金が異なるネットワークである。以下の説明では、伝送容量又は伝送速度(転送可能なビットレート)を使用帯域ということがある。つまり、使用帯域をビット/秒で表すことがある。
【0017】
SIPサーバ104は、IP電話サービス又はIPファクシミリ通信において呼接続処理を行うため、電話番号とIPアドレスとの変換などのSIP(Session Initiation Protocol)サービスを実行する。
【0018】
HGW105および106は、それぞれNGN108と画像通信装置101および102とを中継するためのものである。HGW105および106の各々は、ITU−T勧告T.38のデジタルファクシミリ手順によるファクシミリ通信およびITU−T勧告T.30のデジタルファクシミリ手順によるファクシミリ通信(みなし音声によるT.30 ファクシミリ通信)を行うインタフェースである。
【0019】
メディアGW107は、NGN108とPSTN109を接続するため、回線業者又はネットワーク業者により設置される。メディアGW107は、例えば、音声信号およびIPパケットの間でデジタル/アナログ変換を行う。さらに、メディアGW107はPSTN109に接続された加入者端末(例えば、音声端末:図示せず)に対する発呼を制御する。
【0020】
図示の例では、画像通信装置103は、G3アナログファクシミリ装置であり、ITU−T勧告T.30のアナログファクシミリ手順によってファクシミリ通信を行う。
【0021】
図2は、図1に示すNGNにおける使用帯域(伝送速度)と課金情報との関係が規定された課金テーブルの一例を示す図である。
【0022】
図2において、使用帯域とは、NGN108を用いてデータなどの送信を行う際に確保される補償帯域、つまり、伝送速度を表す。また、課金情報とはNGN108を用いて送信を行う際の課金単位を表す。図示の例では、各使用帯域において30秒単位で(つまり、単位時間毎に)通信料(利用料金ともいう)が設定されている。
【0023】
図示のように、使用帯域(つまり、伝送速度)として64kbps、512kbps、および1Mbpsが設定され、ユーザはこれらの使用帯域からいずれかの帯域を選択することができる。使用帯域64kbps、512kbps、および1Mbpsの課金情報は、それぞれ1.0円/30秒、1.5円/30秒、および2.0円/30秒であり、従量課金が行われる。
【0024】
図3は、図1に示す画像通信装置101のハードウェア構成についてその一例を示すブロック図である。なお、画像通信装置102は画像通信装置102と同様のハードウェア構成を備えている。
【0025】
図3において、CPU201はROM202に格納された制御プログラムに応じて画像通信装置101の制御を行う。CPU201はTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)によるプロトコル処理を行って、画像データをTCP/IPフレームに組み込む際の制御を実行する。
【0026】
RAM203は、CPU201が制御プログラムを実行する際のワークメモリとして用いられる。さらに、RAM203はCPU201の制御下で画像データを送受信する際のバッファメモリとして用いられる。
【0027】
スキャナI/F(インタフェース)制御部204は、スキャナ205を制御するためのものである。スキャナ205による原稿読み取りの結果得られた画像はスキャナI/F制御部204でデジタルデータ(画像データ)に変換される。そして、この画像データはCPU201の制御下でシステムバス218を介してRAM203に転送される。RAM203に保存された画像データは、後述するように、送信されるか又は印刷に供される。
【0028】
圧縮処理部206は、MH、MR、MMR、又はJBIG方式を用いた符号化・復号化処理部であり、画像データを送信する際には、画像データを符号化してデータ圧縮する。一方、符号化された画像データを受信した際には、圧縮処理部206は当該画像データを復号化する。
【0029】
FAXモデム(FMDM)207は、ファックス送信を行う際、符号化された画像データを変調して、アナログ回線において伝送可能な音声帯域のアナログ信号に変換する。ファックス受信の際には、受信したアナログ信号を復調して符号化された画像データを出力する。
【0030】
音声入出力部(ハンドセット)208は、音声を入力するマイク(図示せず)および音声を出力するスピーカ(図示せず)を有している。スイッチ209は、アナログスイッチであって、FAXモデム207および音声入出力部208のいずれかをコーディック(CODEC)210に接続する。
【0031】
図示の例では、CODEC210は、音声信号又ははみなし音声信号として送受信されるファクシミリ信号のために、VoIP(Voice over Internet Protocol)方式による符号化/復号化を行う。さらに、CODEC210は、T.38インターネットファクシミリ信号(特に、トーン信号)を送受信するために必要な符号化/復号化を少なくともサポートするものとする。
【0032】
キー操作部211は、ダイヤルおよびファクシミリ送受信の際に操作される操作ボタンなどを備えている。ユーザはキー操作部211を用いてキー指示を行う。パネル制御部212は、オペレーションパネル213に接続され、オペレーションパネル213を制御する。オペレーションパネル213には各種情報が表示されるとともに、ユーザから指示入力を受け付ける。
【0033】
プリンタI/F制御部214は、CPU201の制御下でプリンタ215を制御する。プリンタ215は、電子写真方式又はインクジェット方式など印字方式によって印刷を行う。プリンタI/F制御部214は画像データ画像データを印刷用ラスタデータに変換して、プリンタ215に与える。そして、プリンタ215は印刷用ラスタデータに応じて印刷を行う。
【0034】
HDD(ハードディスクドライブ)216には印刷データ(画像データ)が格納されるとともに、図2で説明した課金テーブルなどか格納される。
【0035】
ネットワークI/F制御部217は、LANコントローラであり、CSMA/CDインタフェース110を介してHGW105とデータなどの送受信を行う。CPU201が送信すべきデータをネットワークI/F制御部217に転送すると、ネットワークI/F制御部217は、当該送信すべきデータにMAC(Media Access Control)フレームヘッダおよびFCS(Frame Check Sequence)などを付加して、CSMA/CDインタフェース110に送信する。
【0036】
なお、CPU201、ROM202、RAM203、スキャナI/F制御部204、圧縮処理部206、FAXモデム207,CODEC210、キー操作部211、パネル制御部212、プリンタI/F制御部214、HDD216、およびネットワークI/F制御部217は相互にシステムバス218によって接続されている。
【0037】
図4は、図3に示す画像通信装置101で行われる送信処理の一例を説明するためのフローチャートである。なお、ここでは、原稿をスキャナ205で読み取った結果得られた画像データをユーザ指定の宛先に送信する場合について説明する。
【0038】
いま、ユーザがキー操作部211又はオペレーションパネル213を用いて、原稿読み取り・データ送信設定などを行うと、CPU102はデータ送信処理を開始する。
【0039】
データ送信処理が開始されると、スキャナI/F制御部204はCPU201の制御下で原稿をスキャナ205で読み取って画像データを得る。そして、この画像データはRAM203に転送されて一時的に記憶される(ステップS401)。複数枚の原稿を読み取る際には、一枚毎に原稿を読み取って、その画像データを圧縮処理部206で圧縮して、RAM203に記憶することになる。
【0040】
RAM203に記憶された画像データはシステムバス218を介して圧縮処理部206に転送される。圧縮処理部206は、例えば、画像データをJBIGで圧縮した後、圧縮画像データとしてRAM203に記憶する。続いて、CPU201は、RAM203に記憶された圧縮画像データのデータ量に応じて通信データサイズを算出する(ステップS402)。
【0041】
次に、CPU201は、HDD216(課金情報記憶手段)に記憶された課金テーブルを参照し、通信データサイズを使用帯域(伝送速度)で除算し、使用帯域毎にその通信時間を算出する(ステップS403)。なお、送信処理を開始するときに通信データサイズを使用帯域で除算する処理を行うことに代えて、通信データサイズ及び使用帯域に応じた通信時間を予めテーブルで管理しておいて、ステップS403でそのテーブルを参照するようにしてもよい。そして、CPU201は、課金テーブルから取得した課金情報を元に、通信時間に基づいて使用帯域毎の利用料金を算出する(ステップS404)。
【0042】
CPU201は、使用帯域毎の利用料金を比較して、利用料金の最も安い(最も安価な)使用帯域を決定する(ステップS405)。その後、CPU201はネットワークI/F制御部217を制御してSIPによって宛先との接続動作を開始する(ステップS406)。そして、CPU201はITU−T勧告T.38に規定のデジタルファクシミリ手順によってファクシミリ通信を行って(ステップS407)、データ通信処理を終了する。
【0043】
なお、CPU201は決定した使用帯域、送信処理中ステータス情報としてオペレーションパネル213に表示する。そして、CPU201は送信処理終了の後、決定した使用帯域を通信履歴としてオペレーションパネル213に表示するようにしてもよい。
【0044】
ここで、CPU201で実行されるステップS402〜S405の処理について具体的に説明する。
【0045】
前述のように、CPU201は、ステップS402においてRAM203に記憶された圧縮画像データのデータ量(総量)を算出して、通信データサイズを得る。ここでは、通信データサイズが2048kビット(bit)であるとする。
【0046】
図2に示す課金テーブルにおいて、使用帯域として64kbps、512kbps、および1Mbpsの一つを選択することができる。通信データサイズが2048kitである場合、使用帯域が64kbpsでは、通信時間は32秒となる。使用帯域が512kbpsでは、通信時間は4秒となり、使用帯域が1Mbpsでは、通信時間は2秒となる。
【0047】
続いて、課金テーブルの課金情報を参照すると、使用帯域が64kbpsでは、通話料は2.0円となる。そして、使用帯域が512kbpsでは、通話料は1.5円となり、使用帯域が1Mbpsでは、通話料は2.0円となる。この結果、CPU201は通信料が最も安い使用帯域は512kbpsであると決定する。
【0048】
一方、通信データサイズが1536kbitであると、同様にして、使用帯域が64kbpsでは、通信時間は24秒となる。使用帯域が512kbpsでは、通信時間は3秒となり、使用帯域が1Mbpsでは、通信時間は1.5秒となる。そして、使用帯域が64kbpsでは、通話料は1.0円となる。使用帯域が512kbpsでは、通話料は1.5円となり、使用帯域が1Mbpsでは、通話料は2.0円となる。この結果、CPU201は通信料が最も安い使用帯域は64kbpsであると決定する。
【0049】
なお、図2に示す課金テーブルでは、課金情報が30秒毎に増加する従量課金であるので、30秒以内で通信が完了するか否かに応じて決定される使用帯域が異なることになる。
【0050】
続いて、前述のステップS406およびS407で説明したSIPについて詳細に説明する。
【0051】
図5は、図3に示す画像通信装置101および102においてSIPセッション確立の際の処理を説明するためのシーケンス図である。そして、図5(a)はオファーSDPを含むSIP接続要求メッセージを送信してSIPセッションを確立する際のシーケンス図であり、図5(b)はオファーSDPを含まないSIP接続要求メッセージを送信してSIPセッションを確立する際のシーケンス図である。
【0052】
ここでは、図1に示す画像通信装置102が宛先(宛先通信装置)を画像通信装置101としてデータ通信を行う場合について説明する。
【0053】
SIPセッションでは、まず、送信側の装置(送信装置)がSIPセッション確立要求(INVITE)を着信側の装置(受信装置)に送信する。受信装置においてはINVITEを受けるとその成功応答を送信装置に返信する。送信装置は成功応答を受信すると、受信装置に了解を送信する。この手順によってSIPセッションが確立される。
【0054】
この際、SIPセッションにおいて用いるメディアについては、送信装置と受信装置着信とが互いに希望するメディアを受信するためのポート番号などを記述したSDP(SessionDescription Protocol)を交換(SDPネゴシエーション)して決定する。
【0055】
図5(a)において、画像通信装置102は、宛先である画像通信装置101に対してSIP接続要求メッセージ(INVITE)を送信する(ステップS501)。このSIP接続要求メッセージには、SIPセッションで利用したいメディア情報および受信ポート番号を記述したSDPが含まれている。
【0056】
図示の例では、SDPにおいて、m=image(画像) 9000 TCPと記述されているので、メディア種別がimageで、TCPのポート番号9000を用いてデータ通信を行うSIPセッションを確立することが要求される。
【0057】
画像通信装置101は、SIP接続要求メッセージを受信すると、当該SIP接続要求メッセージに含まれるオファーSDPを調べる。そして、SDPに自装置で対応可能なメディア種別が記述されていれば、画像通信装置101は応答メッセージである200 OKメッセージを送信する(ステップS502)。
【0058】
この200 OKメッセージには、画像通信装置101が受け入れるメディア種別と受信ポート番号とが記述されたSDPが含まれる。図示の例では、SDPにおいて、m=image 9000 TCPと記述されている。従って、画像通信装置101は、メディア種別がimageで、TCPのポート番号9000を受信ポートとしてデータ通信を行うSIPセッションを確立することに同意していることになる。
【0059】
画像通信装置102は、200 OKメッセージを受信すると、200 OKメッセージを受信したことを示す了解(ACK:Acknowledge)メッセージを送信する(ステップS503)。これによって、画像通信装置102と画像通信装置101との間で同意したメディア種別でデータ通信を行うためのSIPセッションが確立する。
【0060】
図5(b)において、画像通信装置102は、画像通信装置101に対して、SIP接続要求メッセージ(INVITE)を送信する(ステップS504)。このSIP接続要求メッセージには、前述のオファーSDPは含まれていない。
【0061】
画像通信装置101は、SIP接続要求メッセージを受信すると、オファーSDPが含まれているか否かについてチェックする。ここでは、SIP接続要求メッセージにオファーSDPが含まれていないので、画像通信装置101は自装置が対応可能なメディア種別と受信ポート番号とを記述したオファーSDPを含めて200 OKメッセージを画像通信装置102に送信する(ステップS505)。
【0062】
図示の例では、SDPにおいて、m=image 9000 TCPおよびm=audio(音声) 5004 UDP(User Datagram Protocol)が記述されている。つまり、画像通信装置101では、メディア種別がimageでTCPのポート番号9000を利用したデータ通信とメディア種別がaudioでUDPのポート番号5004を利用したデータ通信との片方又は両方を行うSIPセッションを確立することを要求していることになる。
【0063】
画像通信装置102は、200 OKメッセージを受信すると、200 OKに含まれるオファーSDPを調べる。そして、SDPにおいて、自装置で対応可能なメディア種別が記述されていれば、画像通信装置101は200 OKメッセージを受信したことを示すACKメッセージを、画像通信装置101に送信する(ステップS506)。
【0064】
このACKメッセージに、画像通信装置102が受け入れるメディア種別および受信ポート番号を記述したSDPが含まれる。図示の例では、SDPにおいて、m=image 9000 TCPと記述されているので、画像通信装置102はメディア種別がimageでTCPのポート番号9000を受信ポートとしてデータ通信を行うSIPセッションを確立することに同意していることになる。
【0065】
これによって、画像通信装置102と画像通信装置101との間で同意したメディア種別でデータ通信を行うためのSIPセッションが確立される。
【0066】
ところで、CPU201で決定された使用帯域が64kbps又は512kbpsである場合、例えば、SDPにb=AS:64又はb=AS:512のような記述を行うようにしてもよい。
【0067】
このようにして、SIPメッセージには、m行/a行(後述する)/b行と呼ぶSDP情報が格納され、メディアの種別(音声,映像,データ)、通信方式(双方向又は片方向)、その他各種パラメータ(後述する)が記述される。
【0068】
SIPにおいては、図1に示すSIPサーバ104を介して画像通信装置102と画像通信装置101との間で、両者が同意したメディア種別でデータ通信を行うSIPセッションを確立される呼制御処理が行われる。この際、SIPサーバ104はSIPメッセージからSDP情報を読み取って、呼制御処理と並行して、NGN108の使用帯域を決定する処理を行う。
【0069】
上述の例では、CPU201は使用帯域を決定する際、通信料が最も安い使用帯域を選択するようにしたが、この際には、送信側である画像通信装置が、決定した使用帯域以上、つまり、伝送速度以上の送信能力を備えていることが望ましい。この条件が満たされる場合に、CPU201で決定されたNGNの使用帯域を十分に生かした画像通信を行うことができる。
【0070】
従って、送信側である画像通信装置の送信能力を十分に生かすためには、例えば、HDD216に予め記憶して、CPU201が使用帯域を決定する際、送信能力を上回る使用帯域を対象外として考慮しないようにしてもよい。
【0071】
また、着信側である画像通信装置の受信能力についても、送信側である画像通信装置で予め把握して、同様にHDD216に記憶するようにしてもよい。そして、CPU201が使用帯域を決定する際、着信側である画像通信装置の送信能力を上回る使用帯域を対象外として考慮しないようにしてもよい。
【0072】
さらに、上述の例では、CPU201で決定される使用帯域はその通信料が最も安い使用帯域であるが、ユーザの使用環境に応じて使用帯域を制限するようにしてもよい。例えば、原稿の種類および枚数によっては、ほとんど選択されることが稀な使用帯域がある場合には当該使用帯域を対象外として考慮しないようにしてもよい。さらには、ユーザが通信料よりも通信時間を優先させる指定を行った場合には、CPU201は当該指定に応じて使用帯域の選択を行うようにする。
【0073】
具体的には、白黒画像データを送信する際には、1Mbpsの使用帯域を選択することは稀であるため、当該使用帯域を選択の対象外にする。また、カラー画像データを送信する際には、通信時間を優先するため指定が行われると、CPU201は64kbpsの使用帯域を選択の対象外とするようしてもよい。
【0074】
なお、図2に示す課金テーブルでは、3種類の使用帯域が登録されているが、使用帯域はこの3種類に限らず、複数の使用帯域を登録するようにすればよい。
【0075】
図6は、図3に示す画像処理装置101で行われる送信処理の他の例を説明するためのフローチャートである。なお、図6に示すフローチャートにおいて、図4に示すステップと同一のステップについては同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0076】
ステップS406において、図5で説明したようにして、SIPセッションの確立が行われる(相手先との接続)。続いて、CPU201は当該データ通信がITU−T勧告T.38に規定のファクシミリ通信であるか否かを判定する(ステップS601)。なお、ここでは、SDPにおいて、m=imageで9000 TCPである場合に、当該データ通信はITU−T勧告T.38によるファクシミリ通信を指定していることになる。
【0077】
ファクシミリ通信であると判定すると(ステップS601において、YES)、CPU201はSDPにおけるメディアストリーム記述を拡張表現したより詳細なパラメータ情報(送信パラメータ情報ともいう)を取得する(ステップS602)。
【0078】
図7は、図3に示す通信処理装置101においてITU−T勧告T.38によるファクシミリ通信を宣言する際のSDPのメディアストリームの記述の一例を示す図である。
【0079】
前述のように、SDPにおいて、m=image 9000 TCPと記述すると、メディア種別がimage(画像)でTCPのポート番号9000を受信ポートとしてデータ通信を行うSIPセッションの確立が宣言される。
【0080】
さらに、ここでは、次の構文によって画像通信に用いる画像通信制御パラメータが宣言される。つまり、ここでは、”a=iso_a4 iso_b4 400 mr b/w 1m”によって画像通信に用いる画像通信制御パラメータが宣言される。
【0081】
図示の例では、”iso_a4”および”iso_b4”はそれぞれA4サイズおよびB4の記録紙サイズであることを意味する。この構文は送信又は受信画像の原稿サイズの宣言にも用いることもできるが、その場合には、サイズは通常1種類のみが指定する。
【0082】
さらに、”400”は送信又は受信画像の解像度が400dpiであることを意味し、”mr”は処理可能な画像圧縮方式がMRであることを意味する。さらに、”b/w”は白黒画像であることを意味し、”1m”は送信又は受信速度が1Mbpsであることを意味する。
【0083】
このようにして、送信側の通信処理装置と着信側の通信処理装置との同意によってSIPセッションが確立され、さらに、画像通信制御パラメータを取得する。そして、CPU201はRAM203に格納した圧縮画像データが画像通信制御パラメータに整合するか否かを判定する(ステップS603)。
【0084】
圧縮画像データが画像通信制御パラメータに整合しないと判定すると(ステップS603において、NO)、CPU201は当該圧縮画像データの再構成を行う(ステップS604)。ここで、圧縮画像データの再構成とは、圧縮画像データを画像制御パラメータに整合させるための画像処理である。つまり、CPU201は、画像制御パラメータに応じて圧縮画像データの画像処理を行う。
【0085】
例えば、画像制御パラメータが白黒画像を指定している際、圧縮画像データがカラー画像データであれば、CPU201は圧縮画像データを白黒画像データに変換する。画像制御パラメータで指定された解像度が圧縮画像データの解像度と異なると、CPU201は圧縮画像データ解像度を変更する。さらに、画像制御パラメータで指定された圧縮方式が圧縮画像データの圧縮方式と異なると、CPU201は圧縮画像データの圧縮方式を変更する。
【0086】
続いて、前述のようにして決定した使用帯域よりも受信側通信処理装置の受信能力(つまり、受信伝送速度)が低いと、CPU201は当該受信能力に適合する使用帯域に変更する(ステップS605)。つまり、前述のようにして決定した使用帯域を用いても、その伝送速度でファクシミリ通信を行うことができないため、CPU201は使用帯域を受信能力に適合する使用帯域に変更することになる。その後、CPU201はネットワークI/F処理部217を制御して、T.38によるファクシミリ通信を行って(ステップS606)、送信処理を終了する。
【0087】
なお、圧縮画像データの再構成を行った場合には、発信側の画像通信装置における送信能力が、前述のようにして決定した使用帯域よりも低くなることがある。この場合にも、CPU201は送信能力に適合するように使用帯域を変更する。また、圧縮画像データが画像通信制御パラメータに整合すると判定すると(ステップS603において、YES)、CPU201はステップS605の処理に進んで、必要に応じて使用帯域を変更する。
【0088】
ステップS601において、ファクシミリ通信でないと判定すると(ステップS601において、NO)、つまり、imageによるSIPセッションの確立ができないと、CPU201は音声(audio)によるSIPセッションを確立することができるか否かを判定する(ステップS607)。
【0089】
例えば、図5(b)のステップS505で説明したSDPにおいて、m=audio、5004 UDPが記述されていると、当該audioはみなし音声によるT.30に規定のファクシミリ通信を意味する。このため、audio、つまり、みなし音声によるT.30に規定のファクシミリ通信が可能であると判定すると(ステップS607において、YES)、CPU201はaudioでSIPセッションの確立を行う。つまり、CPU201はみなし音声でSIPセッションの確立を行うことになる(ステップS608)。
【0090】
次に、みなし音声でファクシミリ通信を行う場合には、CPU201はRAM203に格納された圧縮画像データの再構成を行う(ステップS609)。ここでは、CPU201は圧縮画像データ圧縮処理部206で復号化した後、CODEC210でみなし音声とする。つまり、CPU201はVoIP方式の符号化処理を行うことになる。
【0091】
圧縮画像データの再構成を行った後、CPU201はネットワークI/F処理部217を制御して、みなし音声によるT.30に規定のファクシミリ通信を行う(ステップSS610)。そして、CPU201は送信処理を終了する。
【0092】
みなし音声によるT.30に規定のファクシミリ通信ができないと判定すると(ステップS607において、NO)、CPU201は送信処理を終了する。
【0093】
このように、本発明の実施の形態では、NGNのように使用帯域によってその利用料金が異なるネットワークでデータ送信を行う際において、その利用料金および通信時間を考慮して所望の使用帯域を容易に選択することができる。その結果、通信時間を考慮しつつ、通信費の適正化を図ることができる。
【0094】
上述の説明から明らかなように、図3に示す例では、CPU201が取得手段および決定手段として機能する。さらに、CPU201およびネットワークI/F制御部217などはセッション確立手段として機能し、CPU201はパラメータ取得手段および構成変更手段としても機能する。
【0095】
なお、上述の実施の形態では、通信装置の一例として、画像通信装置を例に挙げて説明したが、NGNのように使用帯域によってその利用料金が異なるネットワークを用いて情報などのデータ送信を行う通信機器であれば、同様にして本発明を適用することができる。
【0096】
以上、本発明について実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【0097】
例えば、上記の実施の形態の機能を制御方法として、この制御方法を通信装置に実行させるようにすればよい。また、上述の実施の形態の機能を有するプログラムを制御プログラムとして、この制御プログラムを通信装置が備えるコンピュータに実行させるようにしてもよい。なお、制御プログラムは、例えば、コンピュータに読み取り可能な記録媒体に記録される。
【0098】
この際、制御方法および制御プログラムの各々は、少なくとも取得ステップおよび決定ステップを有することになる。
【0099】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記録媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0100】
101〜103画像通信装置
104 SIPサーバ
105,106 ホームゲートウェイ(HGW)
107 メディアゲートウェイ(メディアGW)
108 次世代ネットワーク(NGN)
109 公衆交換電話網(PSTN)
110,111 CSMA/CDインタフェース
201 CPU
206 圧縮処理部
217 ネットワークI/F制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用帯域によってその利用料金が異なるネットワークを用いてデータの送信を行う通信装置であって、
前記ネットワークの使用帯域毎の、単位時間あたりの利用料金を示す課金情報を取得する取得手段と、
送信するデータのサイズと前記取得手段が取得した課金情報とに応じて、前記データの送信に用いる使用帯域を決定する決定手段とを有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記ネットワークの使用帯域の各々について、前記データのサイズに基づいて当該データを送信するために要する通信時間を算出し、当該算出した通信時間と前記課金情報とに応じて、前記使用帯域の決定を行うことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記通信時間と前記課金情報とに応じて前記データを送信するために要する利用料金を算出し、当該算出した利用料金に基づき前記データの送信に用いる使用帯域を決定することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記決定手段は、前記利用料金が最も安価な使用帯域を、前記データの送信に用いる使用帯域として決定することを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記決定手段によって前記使用帯域が決定された後、宛先通信装置とのセッションを確立するセッション確立手段と、
前記セッション確立によって前記宛先通信装置から前記データの送信に関する送信パラメータ情報を取得するパラメータ取得手段と、
前記送信パラメータ情報に応じて前記データの構成を変更する構成変更手段とを有し、
前記構成変更手段によって前記データの構成が変更されると、前記決定手段は、当該変更に応じて前記使用帯域を変更するか否かを判定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記セッション確立手段は、SIPによってセッション確立を行うことを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記ネットワークは、次世代ネットワーク(NGN:Next Generation Network)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
使用帯域によってその利用料金が異なるネットワークを用いてデータの送信を行う通信装置の制御方法であって、
前記ネットワークの使用帯域毎の、単位時間あたりの利用料金を示す課金情報を取得する取得ステップと、
送信するデータのサイズと前記取得ステップで取得した課金情報とに応じて、前記データの送信に用いる使用帯域を決定する決定ステップとを有することを特徴とする制御方法。
【請求項9】
使用帯域によってその利用料金が異なるネットワークを用いてデータの送信を行う通信装置で用いられる制御プログラムであって、
前記通信装置が備えるコンピュータに、
前記ネットワークの使用帯域毎の、単位時間あたりの利用料金を示す課金情報を取得する取得ステップと、
送信するデータのサイズと前記取得ステップで取得した課金情報とに応じて、前記データの送信に用いる使用帯域を決定する決定ステップとを実行させることを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−115704(P2013−115704A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261755(P2011−261755)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】