説明

通信装置、通信方法、およびプログラム

【課題】
通信装置内の信号受信回路の省電力化を行う。
【解決手段】
本発明による通信装置は、他の通信装置からの信号を受信する受信部と、他の通信装置に対して信号を送信する送信部と、前記受信部が第1の信号を受信した場合に第1の省電力モードまたは第2の省電力モードのいずれかを選択して、前記選択した省電力モードに切り替え、前記第1の省電力モードが選択された場合に前記受信部を停止し前記送信部から第2の信号を一定時間後に送信し、前記第2の信号の送信後に前記第2の省電力モードに切り替えるよう制御し、前記第2の省電力モードが選択された場合に前記送信部を停止するよう制御する省電力制御部と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク上で通信を行い、特に省電力モードを有する通信装置、通信方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインターネットの急速な普及に伴い、Ethernet(登録商標)による通信トラフィックが増大し続けている。同時に、Ethernet通信の高速化に伴い、通信を行う機器の消費電力も増加している。地球温暖化や資源・燃料の不足により、省電力化が大きな課題とされている昨今、Ethernet通信において省電力化を実現することは必要不可欠である。
【0003】
現在、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers)において、Ethernet通信における省電力規格EEE(Energy Efficient Ethernet)の検討が進められている。EEEとは、通信装置内にデータ疎通がなくなった場合に、通信装置を省電力モードに切り替えるという技術である。このEEEは、例えば、非特許文献1に開示されている。以下、このEEEの一般的な動作について、図10を用いて説明する。
【0004】
図10は、EEEを適用する通信装置の通信状態と、送信回路、受信回路の状態を示している。EEEを適用する通信装置は、データの疎通がない状態となったときに、省電力モードに切り替える。通信装置は、省電力モードに入るトリガとして、通信先に対して、Sleep信号を送信する(T1)。
【0005】
通信装置が省電力モードに入った後は、データを送信しないQuiet区間と、通信先とのリンクを保持するためのRefresh信号を送る区間が交互に存在する(T2、T3、T4)。Quiet区間では、送信回路の動作は停止(網掛け部分)しており、Refresh信号を送る区間では、送信回路は動作している(格子状の部分)。
【0006】
通信装置内に、外部に送信する必要があるデータが存在すると、通信先に対して、通信状態に復帰するためのWake信号を送信することで、通常動作状態へと戻る(T4〜T6)。
【0007】
以上説明したように、EEEを適用する通信装置は、Quiet区間において、送信回路の動作を停止することによって、省電力化を実現している。
【0008】
その他、通信装置の省電力モードへの切り替えに関連する技術としては、特許文献1や特許文献2等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−098494号公報
【特許文献2】特開2010−098495号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Introduction to Energy Efficient Ethernet[2010年11月5日検索]、インターネット<URL:http://www.t11.org/ftp/t11/pub/fc/pi−5/10−158v0.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述のEEEでは、送信回路の省電力化は実現できる一方で、受信回路の省電力化はできないという課題があった。この課題について、図10を用いて以下に説明する。
【0012】
図10において、通信装置が省電力モードで動作中であり、さらに、Quiet区間である場合、送信回路は停止しているものの、受信回路は停止していない。これは、通信装置が、通信先から受信するRefresh信号を受信するタイミングを把握していないため、受信回路を常時動作させておく必要があるからである。従って、上述のEEEでは、受信回路を常時動作させておく必要があり、受信回路の省電力化はできていなかった。
【0013】
本発明の目的は、上述した課題を解決することが可能な、通信装置、通信方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による通信装置は、他の通信装置からの信号を受信する受信部と、他の通信装置に対して信号を送信する送信部と、前記受信部が第1の信号を受信した場合に第1の省電力モードまたは第2の省電力モードのいずれかを選択して、前記選択した省電力モードに切り替え、前記第1の省電力モードが選択された場合に前記受信部を停止し前記送信部から第2の信号を一定時間後に送信し、前記第2の信号の送信後に前記第2の省電力モードに切り替えるよう制御し、前記第2の省電力モードが選択された場合に前記送信部を停止するよう制御する省電力制御部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明による通信方法は、他の通信装置からの信号を受信する受信部と、他の通信装置に対して信号を送信する送信部とを備える通信装置で実行される通信方法であって、第1の信号を受信した場合に第1の省電力モードまたは第2の省電力モードのいずれかを選択して、前記選択した省電力モードに切り替えるステップと、前記第1の省電力モードが選択された場合に前記受信部を停止し前記送信部から第2の信号を一定時間後に送信し、前記第2の信号の送信後に前記第2の省電力モードに切り替えるよう制御するステップと、前記第2の省電力モードが選択された場合に前記送信部を停止するよう制御するステップと、を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明によるプログラムは、他の通信装置からの信号を受信する受信部と、他の通信装置に対して信号を送信する送信部とを備える通信装置で実行されるプログラムであって、第1の信号を受信した場合に第1の省電力モードまたは第2の省電力モードのいずれかを選択して、前記選択した省電力モードに切り替える処理と、前記第1の省電力モードが選択された場合に前記受信部を停止し前記送信部から第2の信号を一定時間後に送信し、前記第2の信号の送信後に前記第2の省電力モードに切り替えるよう制御する処理と、前記第2の省電力モードが選択された場合に前記送信部を停止するよう制御する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、通信装置内の信号受信回路の省電力化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態による通信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第2の実施形態による通信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第2の実施形態による通信装置の接続関係を示すブロック図である。
【図4】第2の実施形態によるMACアドレス記憶テーブルを示す図である。
【図5】第2の実施形態の動作概要を示す図である。
【図6】第2の実施形態の通常動作時のフローチャートである。
【図7】第2の実施形態の省電力モード1のフローチャートである。
【図8】第2の実施形態の省電力モード2のフローチャートである。
【図9】第2の実施形態の動作を示すシーケンスチャートである。
【図10】背景技術の動作概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
<第1の実施形態>
(構成・動作)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態による通信装置1000の構成を示したブロック図である。
【0021】
図1によれば、通信装置1000は、送信部1003、受信部1004、省電力制御部1005を含んで構成されている。
【0022】
送信部1003は、通信装置1000が接続し、通信を行う他の通信装置(図では非表示)に対して信号を送信する。
【0023】
受信部1004は、他の通信装置からの信号を受信する。
【0024】
省電力制御部1005は、受信部1004が、第1の信号を受信した場合に、第1の省電力モードまたは第2の省電力モードのうち、いずれかを選択する。その後、省電力制御部1005は、選択した省電力モードに切り替えるよう制御を行う。
【0025】
省電力モード1が選択された場合には、省電力制御部1005は、受信部1004を停止する。受信部1004の停止後、省電力制御部1005は、送信部1003から第2の信号を一定時間後に送信するよう制御を行う。
【0026】
一方、省電力モード2が選択された場合には、省電力制御部1005は、送信部1003を停止するよう制御を行う。
【0027】
(効果)
以上説明した通り、第1の実施形態によれば、通信装置は、受信部を停止する第1の省電力モードと、一定時間後に第2の信号を送信する第2の省電力モードとを選択して実行する。
【0028】
上記の動作により、第1の省電力モードを実行中の間には、信号の受信は行わないため、通信装置の受信部を停止しておくことが可能となる。従って、第1の実施形態によれば、通信装置の受信部の省電力化が可能となる。
【0029】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0030】
(構成)
図2は、第2の実施形態による通信装置100の構成を示したブロック図である。
【0031】
図2によれば、通信装置100は、RJ−45コネクタ101、トランス102、送信回路部103、受信回路部104、省電力制御部105、MAC(Media Access Control)アドレス比較部106を含み構成されている。さらに、通信装置100は、MACアドレス記憶部107、タイマー108、データ転送制御部109を含んで構成される。
【0032】
この通信装置100は、図3に示す通り、Ethernetケーブル300を介して、他の通信装置200と接続しているものとする。以降、通信装置200は、通信装置100と同様の構成であるとして説明する。なお、図3では、通信装置100と接続している通信装置は1個であるが、2個以上であっても良い。
【0033】
以下、図2を用いて、通信装置100の各機能について説明する。まず、RJ−45コネクタ101には、Ethernetケーブルが接続される。通信装置100が行うデータの送受信は、RJ−45コネクタ101およびトランス102を介して行われる。RJ−45コネクタ101およびトランス102は、それぞれ一般的なものであるので、詳細な説明は省略する。
【0034】
送信回路部103は、通信装置100の外部宛にデータを送信する。受信回路部104は、通信装置100宛に送られてきたデータを受信する。
【0035】
省電力制御部105は、通信装置100の通常状態から省電力モードへの切り替え、または省電力モードから通常状態への復帰等の動作制御を行う。省電力制御部105の動作については、後に詳しく説明する。
【0036】
MACアドレス比較部106は、通信装置100のMACアドレスと、通信装置100の通信先のMACアドレスとの比較を行う。また、MACアドレス記憶部107は、通信装置100のMACアドレスと、通信装置100の通信先のMACアドレスとを記憶する。より具体的には、図4に示すMACアドレス記憶テーブル110のような形式で、各通信装置のMACアドレスを記憶している。記憶したMACアドレスは、MACアドレス比較部106で用いられる。
【0037】
タイマー108は、省電力制御のための状態管理を行う時間を計測する。このタイマー108には、一般的なものを用いて時間を計測できれば良いので、詳細な説明は省略する。
【0038】
データ転送制御部109は、通信制御を行うために必要な機能を備えている。例えば、通信装置100が一般的なルータであるとすると、データ転送制御部109は、ネットワークプロセッサ、MAC、送受信バッファ等の制御プログラムを格納することが考えられる。さらに、ネットワークプロセッサによる処理データを格納するためのメモリ等を備えていても良い。ただし、データ転送制御部109の機能は、上述の例に限られるものではなく、通信制御を行うことが可能であれば、どのような構成を採用しても構わない。
【0039】
(動作概要)
以下、第2の実施形態の動作の概要について、図5を参照して詳細に説明する。
【0040】
図5は、背景技術の項で説明した図10と同様、通信装置100および通信装置200の通信状態と、送信回路、受信回路の状態を示している。以下、時系列に沿って、通信装置100および通信装置200の動作概要について説明する。
【0041】
通信装置100および通信装置200は、それぞれ自装置内に送受信データの疎通がないことを検出する。その後、各々の通信先に対して、互いにSleep信号を送信する。このSleep信号とは、通信装置が省電力モードに切り替わるためのトリガとなる信号である。なお、同様の役割を果たすデータまたは信号等であれば、どのようなものを用いても構わない。
【0042】
通信装置100および通信装置200は、通信先からのSleep信号を受信すると、設定された基準に従って、省電力モード1または省電力モード2のどちらを実行するかを決定する(T1)。
【0043】
ここで、省電力モード1とは、受信回路を停止するモードである。また、省電力モード1では、通信装置が通常状態から省電力モード1に切り替わった後、一定時間が経過した後にRefresh信号を送信する。また、Refresh信号の送信後には、省電力モード1から後述する省電力モード2に切り替わる。つまり、省電力モード1では、信号の送信は行うが、信号の受信は行わない。ここで、Refresh信号とは、通信装置100と通信装置200とのリンクを保持することを目的として送信される信号である。なお、同様の役割を果たすデータまたは信号等であれば、どのようなものを用いても構わない。
【0044】
続いて、省電力モード2とは、送信回路を停止するモードである。つまり、通信装置が通常状態から省電力モードに切り替わった後、一定時間の間、一切の信号を送信しない。ただし、省電力モード2では、信号の送信は行わないが、Refresh信号の受信は行う。
【0045】
図5の例では、通信装置100が省電力モード1、通信装置200が省電力モード2を最初に実行することを選択している。
【0046】
T1からT2の間、通信装置100は、省電力モード1を実行する。通信装置100は、省電力モード1に切り替わった時刻T1から一定時間経過後にRefresh信号を送信する。図5の例では、一定時間をTaとして設定している。ここで、通信装置100の送信回路は、時間Taが経過し、Refresh信号を送るタイミングとなるまでは、停止状態となっている。また、省電力モード1の間は、通信装置100は信号を受信することがないため、受信回路はT1からT2の間は停止状態となっている。
【0047】
一方、T1からT2の間、通信装置200は、省電力モード2を実行する。ここで、通信装置200は、T1からT2の間、信号を送ることがないため、送信回路は停止状態となっている。受信回路については、通信装置100からRefresh信号を受信するために動作状態となっている。
【0048】
通信装置100は、時刻T2でRefresh信号を送信した後、省電力モード2を実行する。一方、時刻T2でRefresh信号を受信した通信装置200は、省電力モード1を実行する。
【0049】
以降、通信装置100と通信装置200は、上記のように省電力モード1と省電力モード2とを交互に実行することを繰り返す。図5の例では、時刻T5において、通信装置100に送信すべきデータが検出されるまで、上記の動作が繰り返される。
【0050】
時刻T5において、通信装置100に送信すべきデータが検出されると、通信装置100は、Wake信号を通信装置200に対して送信する。通信装置100は、Wake信号を送信した後、時刻T6で通常状態に復帰する。通信装置200は、時刻T6でのWake信号の受信を契機に、通常動作に復帰する。ここで、このWake信号は、各通信装置が省電力モードから通常状態に復帰するための信号である。なお、同様の役割を果たすデータまたは信号等であれば、どのようなものを用いても構わない。
【0051】
(動作詳細)
次に、第2の実施形態の動作詳細について説明する。まず、図2、図6、図7、図8を用いて、通信装置100の動作について説明する。
【0052】
図6は、通信装置100の通常時の動作を示すフローチャートである。まず、省電力制御部105は、送信回路部103および受信回路部104をモニタし、送受信データの疎通があるかどうかを確認する(ステップS1)。
【0053】
ステップS1において、送受信データの疎通が検出された場合には、データの送受信を継続して行う(ステップS1:Yes)。一方、送受信データの疎通がない場合には、省電力制御部105は、送信回路部103に対して、Sleep信号を送信するよう制御または指示を行う。制御または指示に応じて、送信回路部103が、Sleep信号を通信先である通信装置200に対して送信する(ステップS2)。
【0054】
続いて、省電力制御部105は、通信装置200がSleep信号を受信したかどうかを確認する(ステップS3)。より具体的には、省電力制御部105は、受信回路部104をモニタし、通信装置200からの応答があるかどうかを確認する。省電力制御部105が、通信装置200からの応答を確認できない場合には、通常状態に戻り、データの送受信を継続する(ステップS3:No)。省電力制御部105が、通信装置200からの応答を確認した場合には、省電力モードへの切り替えを行う(ステップS3:Yes)。
【0055】
省電力制御部105は、省電力モードへの切り替えにあたり、省電力モード1または省電力モード2のどちらを最初に実行するかを選択する。この選択基準としては、どのようなものを用いても構わない。例えば、第2の実施形態においては、通信装置100自身のMACアドレスと、通信先である通信装置200のMACアドレスの大小を比較している(ステップS4)。
【0056】
通信装置100は、通信装置100自身のMACアドレスと、通信先の通信装置200のMACアドレスとを、MACアドレス記憶部107に記憶している。より具体的には、図4に示すようなMACアドレス記憶テーブル110に記憶することが一例として考えられる。図4の例では、通信装置100のMACアドレスである「00:00:00:00:00:02」と、通信装置200のMACアドレスである「00:00:00:00:00:01」とが記憶されている。
【0057】
省電力制御部105は、MACアドレス記憶テーブル110を参照することによって、通信装置100と通信装置200のMACアドレスの大小を比較する。図6では、通信装置100自身のMACアドレスが通信装置200のMACアドレスよりも大きい場合に、省電力モード1に切り替える(ステップS5−1)。一方、通信装置100自身のMACアドレスが通信装置200のMACアドレスよりも小さい場合には、省電力モード2に切り替える(ステップS5−2)。
【0058】
図4の例では、通信装置100のMACアドレスの方が、通信装置200のMACアドレスよりも大きいため、省電力制御部105は、通信装置100を省電力モード1へと切り替える。ここでは、MACアドレスを比較する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、IP(Internet Protocol)アドレスをMACアドレスの替わりに用いることも可能である。また、通信装置同士が持つ固有値を比較する方法に限らず、様々な選択基準を用いることも可能である。
【0059】
次に、通信装置100が、省電力モード1を実行する場合の動作について、図7を用いて説明する。まず、省電力制御部105は、データ転送制御部109をモニタし、送信するデータがあるかどうかを確認する(ステップS11)。
【0060】
送信するデータが見つかった場合には、送信回路部103は、通信装置200に対してWake信号を送信する(ステップS15)。その後、省電力制御部105は、通信装置100の動作状態を通常状態に切り替えて、省電力モード1を終了する(ステップS16)。また、送信するデータが見つからなかった場合には、設定された時間Taの間、省電力制御部105は、信号の送受信を行わず、データ転送制御部109のモニタを継続する(ステップS12)。
【0061】
時間Taが経過した場合、省電力制御部105は、送信回路部103に対して、Refresh信号を送信するよう制御または指示を行う。制御または指示に応じて、送信回路部103は、通信装置200に対してRefresh信号を送信する(ステップS13)。省電力制御部105は、Refresh信号の送信を契機に、通信装置100の動作を省電力モード2に切り替える(ステップS14)。
【0062】
さらに、通信装置100が、省電力モード2を実行する場合の動作について、図8を用いて説明する。まず、省電力制御部105は、受信回路部104をモニタし、Wake信号を受信したかどうかを確認する(ステップS21)。
【0063】
受信回路部104が、Wake信号を受信している場合には、省電力制御部105は、通信装置100の動作を通常状態に切り替えて、省電力モード2を終了する(ステップS26)。
【0064】
受信回路部104がWake信号を受信していない場合には、省電力制御部105は、さらに、受信回路部104がRefresh信号を受信しているかどうかを確認する(ステップS22)。
【0065】
ここで、受信回路部104がRefresh信号を受信している場合には、省電力制御部105は通信装置100の動作を省電力モード1に切り替えて、省電力モード2の動作を終了する(ステップS25)。
【0066】
受信回路部104がRefresh信号を受信していない場合には、設定された時間Tbの経過を待つ(ステップS23)。
【0067】
時間Tbの経過までにWake信号またはRefresh信号を受信しない場合には、通信装置200との接続がリンクダウンしたものと判定し、省電力モード2を終了する(ステップS24)。
【0068】
最後に、通信装置100と通信装置200双方の動作の流れについて、図9を用いて説明する。
【0069】
まず、通信装置100は、送受信データの疎通がないことを検出する(ステップS31)。送受信データの疎通がない場合には、通信装置100は、通信装置200に対して、Sleep信号を送信する(ステップS32)。
【0070】
通信装置200は、通信装置100からのSleep信号を受信する(ステップS33)。通信装置200は、Sleep信号の受信を契機に、Sleep信号またはSleep信号への応答を通信装置100へ送信する(ステップS34)。
【0071】
通信装置100は、通信装置200からのSleep信号を受信する(ステップS35)。その後、通信装置100および通信装置200は、それぞれ、省電力モード1または2のどちらかを選択する(ステップS36−1、ステップS36−2)。図9の例では、上述のMACアドレスの大小を比較する方法で選択している。
【0072】
続いて、通信装置100と通信装置200は、各々が選択した省電力モードへの切り替えを行う(ステップS37−1、ステップS37−2)。図9では、通信装置100は省電力モード1に、通信装置200は省電力モード2に、それぞれ切り替えている。
【0073】
通信装置100は、省電力モード1を実行し、一定時間(Ta)経過後、Refresh信号を通信装置200に対して送信する(ステップS38)。通信装置100は、Refresh信号を送信した後、省電力モード2に切り替える。(ステップS40−1)。通信装置200は、通信装置100からRefresh信号を受信する(ステップS39)。通信装置200は、Refresh信号の受信を契機に、省電力モード1に切り替える(ステップS40−2)。
【0074】
続いて、通信装置200は、Refresh信号を通信装置100に対して送信する(ステップS41)。通信装置100は、通信装置200からのRefresh信号を受信する(ステップS42)。通信装置100は、一定時間(Tb)内に送信するデータを検出(ステップS43)した場合に、Wake信号を通信装置200に対して送信する(ステップS44)。通信装置200は、通信装置100からのWake信号を受信する(ステップS45)。
【0075】
通信装置100は、Wake信号の送信を契機に、動作を通常状態に切り替える(ステップS46−1)。同様に、通信装置200は、Wake信号の受信を契機に、動作を通常状態に切り替える(ステップS46−2)。
【0076】
(効果)
以上説明した通り、第2の実施形態によれば、通信装置は、受信回路を停止する省電力モード1と、一定時間後にRefresh信号を送信する省電力モード2とを、選択して実行する。
【0077】
上記の動作により、省電力モード1の実行中の間には、信号の受信は行わないため、通信装置の受信回路を停止しておくことが可能となる。従って、第2の実施形態によれば、通信装置の受信回路の省電力化が可能となる。
【0078】
また、省電力モード2を実行中の間には、一定時間経過まではRefresh信号を送信しないため、上述のEEEと同様に、送信回路の省電力化を行うことが可能である。
【0079】
また、一般的に、EEEに対応していないEthernet通信を行う通信装置は、Quiet区間を無信号状態と判断し、リンクダウンとして認識してしまう。このため、EEEを適用するかどうかは、あらかじめ通信を行う装置間でオートネゴシエーション等により決めておく必要がある。そのため、EEEはオートネゴシエーションを行わない通信装置の速度固定モードには対応していなかった。
【0080】
しかしながら、第2の実施形態による通信装置は、省電力モードに切り替わる際に、Sleep信号の受信を検出している。これによって、通信先の通信装置が省電力モードに対応しているかどうかを確認することが可能である。従って、オートネゴシエーションを行わない速度固定モードにおいても、通信装置を省電力モードに移行させることが可能となる。
【0081】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0082】
(付記1)
他の通信装置からの信号を受信する受信部と、
他の通信装置に対して信号を送信する送信部と、
前記受信部が第1の信号を受信した場合に第1の省電力モードまたは第2の省電力モードのいずれかを選択して、前記選択した省電力モードに切り替え、
前記第1の省電力モードが選択された場合に前記受信部を停止し前記送信部から第2の信号を一定時間後に送信し、前記第2の信号の送信後に前記第2の省電力モードに切り替えるよう制御し、
前記第2の省電力モードが選択された場合に前記送信部を停止するよう制御する省電力制御部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【0083】
(付記2)
前記省電力制御部は、
自通信装置のMACアドレスと、前記第1の信号の送信元通信装置のMACアドレスとを比較した結果に基づき、前記第1の省電力モードまたは前記第2の省電力モードのいずれかを選択することを特徴とする付記1に記載の通信装置。
【0084】
(付記3)
前記省電力制御部は、自通信装置のIPアドレスと、前記第1の信号の送信元通信装置のIPアドレスとを比較して、前記第1の省電力モードまたは前記第2の省電力モードのいずれかを選択することを特徴とする付記1に記載の通信装置。
【0085】
(付記4)
前記省電力制御部は、
前記省電力制御部が前記第2の省電力モードを実行している場合、前記受信部の前記第2の信号の受信を契機に、前記第1の省電力モードに切り替えることを特徴とする付記1から3のいずれか1つに記載の通信装置。
【0086】
(付記5)
前記通信装置は、さらに、
前記受信部および前記送信部の通信状況の監視を行い、前記受信部および前記送信部においてデータの疎通がない場合に、前記省電力制御部に対して通知を行う監視部を備え、
前記省電力制御部は、前記通知を受信した場合に、前記送信部から前記第1の信号を他の通信装置に対して送信するよう制御することを特徴とする付記1から4のいずれかに記載の通信装置。
【0087】
(付記6)
前記省電力制御部は、前記監視部が、前記受信部または前記送信部においてデータを検知した場合に、前記送信部から第3の信号を送信するよう制御し、前記第3の信号の送信を契機に前記第1の省電力モードまたは前記第2の省電力モードから通常動作に切り替えることを特徴とする付記5に記載の通信装置。
【0088】
(付記7)
他の通信装置からの信号を受信する受信部と、他の通信装置に対して信号を送信する送信部とを備える通信装置で実行される通信方法であって、
第1の信号を受信した場合に第1の省電力モードまたは第2の省電力モードのいずれかを選択して、前記選択した省電力モードに切り替えるステップと、
前記第1の省電力モードが選択された場合に前記受信部を停止し前記送信部から第2の信号を一定時間後に送信し、前記第2の信号の送信後に前記第2の省電力モードに切り替えるよう制御するステップと、
前記第2の省電力モードが選択された場合に前記送信部を停止するよう制御するステップと、
を含むことを特徴とする通信方法。
【0089】
(付記8)
前記通信方法は、さらに、
前記通信装置のMACアドレスと、前記第1の信号の送信元通信装置のMACアドレスとを比較した結果に基づき、前記第1の省電力モードまたは前記第2の省電力モードのいずれかを選択するステップを含むことを特徴とする付記7に記載の通信方法。
【0090】
(付記9)
前記通信方法は、さらに、
前記通信方法を実行する通信装置のIPアドレスと、前記第1の信号の送信元通信装置のIPアドレスとを比較して、前記第1の省電力モードまたは前記第2の省電力モードのいずれかを選択するステップを含むことを特徴とする付記7に記載の通信方法。
【0091】
(付記10)
前記通信方法は、さらに、
前記受信部および前記送信部の通信状況の監視を行うステップと、
前記受信部および前記送信部においてデータの疎通がない場合に、前記第1の信号を他の通信装置に対して送信するステップと、
を含むことを特徴とする付記7から9のいずれか1つに記載の通信方法。
【0092】
(付記11)
前記通信方法は、さらに、
前記受信部または前記送信部の監視においてデータを検知した場合に、第3の信号を他の通信装置に送信するステップと、
前記第3の信号の送信を契機に前記第1の省電力モードまたは前記第2の省電力モードから通常動作に切り替えるステップと、
を含むことを特徴とする付記10に記載の通信方法。
【0093】
(付記12)
他の通信装置からの信号を受信する受信部と、他の通信装置に対して信号を送信する送信部とを備える通信装置で実行されるプログラムであって、
第1の信号を受信した場合に第1の省電力モードまたは第2の省電力モードのいずれかを選択して、前記選択した省電力モードに切り替える処理と、
前記第1の省電力モードが選択された場合に前記受信部を停止し前記送信部から第2の信号を一定時間後に送信し、前記第2の信号の送信後に前記第2の省電力モードに切り替えるよう制御する処理と、
前記第2の省電力モードが選択された場合に前記送信部を停止するよう制御する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【0094】
(付記13)
前記プログラムは、さらに、
前記通信装置のMACアドレスと、前記第1の信号の送信元通信装置のMACアドレスとを比較した結果に基づき、前記第1の省電力モードまたは前記第2の省電力モードのいずれかを選択する処理を含むことを特徴とする付記12に記載のプログラム。
【0095】
(付記14)
前記プログラムは、さらに、
前記プログラムを実行する通信装置のIPアドレスと、前記第1の信号の送信元通信装置のIPアドレスとを比較して、前記第1の省電力モードまたは前記第2の省電力モードのいずれかを選択する処理を含むことを特徴とする付記12に記載のプログラム。
【0096】
(付記15)
前記プログラムは、さらに、
前記受信部および前記送信部の通信状況の監視を行う処理と、
前記受信部および前記送信部においてデータの疎通がない場合に、前記第1の信号を他の通信装置に対して送信する処理と、
を含むことを特徴とする付記12から14のいずれか1つに記載のプログラム。
【0097】
(付記16)
前記プログラムは、さらに、
前記受信部または前記送信部の監視においてデータを検知した場合に、第3の信号を他の通信装置に送信する処理と、
前記第3の信号の送信を契機に前記第1の省電力モードまたは前記第2の省電力モードから通常動作に切り替える処理と、
を含むことを特徴とする付記15に記載のプログラム。
【符号の説明】
【0098】
100、200、1000 通信装置
101 RJ−45コネクタ
102 トランス
103 送信回路部
104 受信回路部
1003 送信部
1004 受信部
105、1005 省電力制御部
106 MACアドレス比較部
107 MACアドレス記憶部
108 タイマー
109 データ転送制御部
110 MACアドレス記憶テーブル
300 Ethernetケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の通信装置からの信号を受信する受信部と、
他の通信装置に対して信号を送信する送信部と、
前記受信部が第1の信号を受信した場合に第1の省電力モードまたは第2の省電力モードのいずれかを選択して、前記選択した省電力モードに切り替え、
前記第1の省電力モードが選択された場合に前記受信部を停止し前記送信部から第2の信号を一定時間後に送信し、前記第2の信号の送信後に前記第2の省電力モードに切り替えるよう制御し、
前記第2の省電力モードが選択された場合に前記送信部を停止するよう制御する省電力制御部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記省電力制御部は、
自通信装置のMACアドレスと、前記第1の信号の送信元通信装置のMACアドレスとを比較した結果に基づき、前記第1の省電力モードまたは前記第2の省電力モードのいずれかを選択することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記省電力制御部は、自通信装置のIPアドレスと、前記第1の信号の送信元通信装置のIPアドレスとを比較して、前記第1の省電力モードまたは前記第2の省電力モードのいずれかを選択することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記省電力制御部は、
前記省電力制御部が前記第2の省電力モードを実行している場合、前記受信部の前記第2の信号の受信を契機に、前記第1の省電力モードに切り替えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信装置は、さらに、
前記受信部および前記送信部の通信状況の監視を行い、前記受信部および前記送信部においてデータの疎通がない場合に、前記省電力制御部に対して通知を行う監視部を備え、
前記省電力制御部は、前記通知を受信した場合に、前記送信部から前記第1の信号を他の通信装置に対して送信するよう制御することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の通信装置。
【請求項6】
前記省電力制御部は、前記監視部が、前記受信部または前記送信部においてデータを検知した場合に、前記送信部から第3の信号を送信するよう制御し、前記第3の信号の送信を契機に前記第1の省電力モードまたは前記第2の省電力モードから通常動作に切り替えることを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
他の通信装置からの信号を受信する受信部と、他の通信装置に対して信号を送信する送信部とを備える通信装置で実行される通信方法であって、
第1の信号を受信した場合に第1の省電力モードまたは第2の省電力モードのいずれかを選択して、前記選択した省電力モードに切り替えるステップと、
前記第1の省電力モードが選択された場合に前記受信部を停止し前記送信部から第2の信号を一定時間後に送信し、前記第2の信号の送信後に前記第2の省電力モードに切り替えるよう制御するステップと、
前記第2の省電力モードが選択された場合に前記送信部を停止するよう制御するステップと、
を含むことを特徴とする通信方法。
【請求項8】
前記通信方法は、さらに、
前記通信装置のMACアドレスと、前記第1の信号の送信元通信装置のMACアドレスとを比較した結果に基づき、前記第1の省電力モードまたは前記第2の省電力モードのいずれかを選択するステップを含むことを特徴とする請求項7に記載の通信方法。
【請求項9】
前記通信方法は、さらに、
前記通信方法を実行する通信装置のIPアドレスと、前記第1の信号の送信元通信装置のIPアドレスとを比較して、前記第1の省電力モードまたは前記第2の省電力モードのいずれかを選択するステップを含むことを特徴とする請求項7に記載の通信方法。
【請求項10】
他の通信装置からの信号を受信する受信部と、他の通信装置に対して信号を送信する送信部とを備える通信装置で実行されるプログラムであって、
第1の信号を受信した場合に第1の省電力モードまたは第2の省電力モードのいずれかを選択して、前記選択した省電力モードに切り替える処理と、
前記第1の省電力モードが選択された場合に前記受信部を停止し前記送信部から第2の信号を一定時間後に送信し、前記第2の信号の送信後に前記第2の省電力モードに切り替えるよう制御する処理と、
前記第2の省電力モードが選択された場合に前記送信部を停止するよう制御する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−114604(P2012−114604A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260756(P2010−260756)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】