説明

通信装置および視聴管理支援方法

【課題】マルチキャスト配信されるデジタルコンテンツの視聴状況を容易に把握するための具体的な方法はこれまで十分に提案されてこなかった。
【解決手段】OLT装置16は、視聴者側の再生装置22から送信されたメッセージであり、デジタルコンテンツが配信されるマルチキャストグループへの参加メッセージをスヌープし、そのデジタルコンテンツの転送先情報に、視聴者の装置に関する情報を記録する転送情報更新部36と、マルチキャスト配信されたデジタルコンテンツを受け付け、転送先情報にしたがって、そのデジタルコンテンツを再生装置22へ転送する転送処理部32と、再生装置22から新規の参加メッセージが受け付けられた場合、視聴者がデジタルコンテンツの視聴を開始したことを示す情報を視聴管理サーバ24へ通知する視聴状況通知部38とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、データ処理技術に関し、特に、動画像等のデジタルコンテンツを視聴者へ中継する通信装置、およびデジタルコンテンツの視聴状況の管理を支援する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ライブ映像等のリアルタイムのストリーミングデータをインターネットや通信キャリア網上で多数の視聴者に同時に配信するサービスが提供されることがある。このような放送型アプリケーションでは、VoD(Video on Demand)等のデータ蓄積型に用いられるサーバ対1ユーザ型のユニキャスト通信よりも、サーバ対多数ユーザ型のマルチキャスト通信が望ましいことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−228292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、一般的なテレビ放送と同様にマルチキャスト配信中のデジタルコンテンツの視聴状況を把握したい場合があるが、マルチキャスト配信されるデジタルコンテンツの視聴状況を容易に把握するための具体的な方法はこれまで十分に提案されてこなかったと考えた。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、マルチキャスト配信されるデジタルコンテンツの視聴状況の管理を支援する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の通信装置は、視聴者の装置から送信されたメッセージであって、デジタルコンテンツが配信されるマルチキャストグループへの参加メッセージをスヌープし、デジタルコンテンツの転送先を示す情報に、視聴者の装置に関する情報を記録する転送情報更新部と、マルチキャスト配信されたデジタルコンテンツを受け付け、転送先を示す情報にしたがって、デジタルコンテンツを視聴者の装置へ転送する転送部と、視聴者の装置から新規の参加メッセージが受け付けられた場合、視聴者がデジタルコンテンツの視聴を開始したことを示す情報を、デジタルコンテンツの視聴状況を管理する所定の視聴管理装置へ通知する視聴状況通知部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様は、視聴管理支援方法である。この方法は、通信装置により実行される方法であって、視聴者の装置から送信されたメッセージであって、デジタルコンテンツが配信されるマルチキャストグループへの参加メッセージをスヌープし、デジタルコンテンツの転送先を示す情報に、視聴者の装置に関する情報を記録するステップと、マルチキャスト配信されたデジタルコンテンツを受け付け、転送先を示す情報にしたがって、デジタルコンテンツを視聴者の装置へ転送するステップと、視聴者の装置から新規の参加メッセージが受け付けられた場合、視聴者がデジタルコンテンツの視聴を開始したことを示す情報を、デジタルコンテンツの視聴状況を管理する所定の視聴管理装置へ通知するステップと、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システム、プログラム、プログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マルチキャスト配信されるデジタルコンテンツの視聴状況の管理を支援して、視聴状況の把握を容易なものにできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態のコンテンツ配信システムの構成を示す図である。
【図2】図1のOLT装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】転送情報の構成を示す図である。
【図4】視聴開始メッセージの構成を示す図である。
【図5】視聴終了メッセージの構成を示す図である。
【図6】コンテンツ配信システムにおける各装置の相互作用の一例を示すシーケンス図である。
【図7】OLT装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】図7のS16の視聴参加処理を詳細に示すフローチャートである。
【図9】図7のS20の視聴離脱処理を詳細に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態の構成を説明する前にまず概要を説明する。
これまでのマルチキャスト通信では、配信対象となるライブ映像等のリアルタイムのストリーミングデータ(以下、単に「デジタルコンテンツ」と呼ぶ。)に対する、視聴者の視聴状況をリアルタイムに把握することは容易ではなかった。例えば、配信対象のデジタルコンテンツを暗号化して視聴者側の装置へ配信し、視聴者側の装置において、デジタルコンテンツを復号するための鍵を配信側のサーバから定期的に取得させることで、視聴状況を把握する方法も考えられる。しかしこの方法では、配信側および視聴者側の双方の装置がこの方法に対応する機能を備える必要があり、デジタルコンテンツの視聴状況を容易に把握できるとは言い難い。
【0012】
また近年、マルチキャスト通信における網負荷を低減するために、IGMP/MLD(Internet Group Management Protocol/Multicast Listener Discover)プロキシを実装した通信装置(レイヤ2スイッチ等)が設置されることがある。この場合、実際にはプロキシの配下に多数のユーザが存在しても、プロキシ単位に集約されて、配信装置側では1ユーザとして認識されることになる。したがって、個々の視聴者の視聴状況を把握することは一層困難なものになることがある。
【0013】
ここで、GE−PON(Gigabit Ethernet-Passive Optical Network)システムでマルチキャスト配信を行う場合、上位(配信装置側)網の負荷を低減するために、GE−PONのOLT装置にIGMP/MLDプロキシが実装されることがある。本実施の形態では、IGMPプロキシが実装されたOLT装置において、視聴者側の装置から送信されたIGMPメッセージをスヌープ(すなわち参照)し、そのIGMPメッセージが示す視聴状況を外部の視聴状況管理装置へ通知する技術を提案する。これにより、マルチキャスト配信されるデジタルコンテンツの視聴状況の管理を支援して、視聴状況の把握を容易にする。
【0014】
以下では、GE−PONのOLT装置にIGMPプロキシが実装され、IPv4マルチキャストにおけるグループ管理がなされることとするが、OLT装置にMLDプロキシが実装されて、IPv6マルチキャストにおけるグループ管理がなされてもよいことはもちろんである。この場合も、OLT装置にIGMPプロキシが実装された場合と同様の構成により、デジタルコンテンツの視聴状況の管理を支援できることは当業者には理解されるところである。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態のコンテンツ配信システムの構成を示す。コンテンツ配信システム100における配信サーバ10は、所定のデジタルコンテンツをマルチキャスト配信する情報処理装置である。具体的には、配信サーバ10は、IGMPにしたがって、デジタルコンテンツの種類ごとにマルチキャストによる配信先を示すマルチキャストグループを管理する。そして、マルチキャストグループに参加している装置の情報(例えばOLT装置16のIPアドレス等)をMC対応ルータ14へ送信する。
【0016】
また、配信サーバ10は、配信対象のデジタルコンテンツのデータを、そのデジタルコンテンツのマルチキャストグループに対して予め定められたマルチキャストアドレス、すなわちマルチキャストグループアドレスを指定したパケット(以下、「マルチキャストパケット」とも呼ぶ。)へ設定する。そして、マルチキャストパケットを通信網12へ送信する。例えば、マルチキャスト対象のライブ映像の進行に応じて、そのマルチキャストパケットを逐次送信する。
【0017】
通信網12は、LAN・WAN・インターネット等、公知の通信手段の組み合わせにより構成され、マルチキャスト通信に対応したルータであるMC対応ルータ14を含む。MC対応ルータ14は、マルチキャストグループの情報(マルチキャストグループの参加装置を示す情報等)を配信サーバ10から受け付けて保持する。MC対応ルータ14は、マルチキャストグループの情報にしたがって、配信サーバ10から送信されたマルチキャストパケットを、そのマルチキャストグループアドレスに対応するマルチキャストグループの参加装置(例えばOLT装置16)へ転送する。
【0018】
OLT装置16と、ONU装置20で総称されるONU装置20a、ONU装置20b、ONU装置20cとは、光カプラ18を介して接続されてGE−PONシステムを構成する。このGE−PONシステムは、通信キャリアの局舎に設置されたOLT装置16に接続された1本の光ファイバを光カプラ18(光スプリッタ)により分岐し、複数の加入者宅に設置された複数のONU装置20と接続し、複数のユーザで1本の光ファイバを共有する光伝送システムである。
【0019】
OLT装置16は、視聴管理サーバ24とも接続される。またONU装置20a〜20cは、再生装置22a〜22c(総称する場合「再生装置22」と呼ぶ。)とも接続される。再生装置22は、デジタルコンテンツを再生してディスプレイやスピーカー等へ出力する情報処理装置である。例えば、ウェブブラウザや各種の再生アプリケーションがインストールされたPCであってもよい。
【0020】
視聴管理サーバ24は、デジタルコンテンツの視聴状況を示すデータ(以下、「視聴状況データ」とも呼ぶ。)をOLT装置16から受け付けて管理する情報処理装置である。例えば、視聴管理サーバ24は、視聴状況データを集計して、デジタルコンテンツの視聴者数、視聴率、単位時間ごとの視聴者数の増減等を算出し、その結果を所定の管理者の端末へ通知し、もしくは所定の記憶領域へ記録してもよい。また、視聴管理サーバ24は、デジタルコンテンツに対する各視聴者の視聴状況に応じて、各視聴者への課金およびその額を算出する装置であってもよい。
【0021】
なお図1では不図示であるが、コンテンツ配信システム100は、典型的には、PONシステム(すなわち1つのOLT装置16と複数のONU装置20および再生装置22の組み合わせ)を複数備える。そして、各PONシステムのOLT装置16が、配信サーバ10および視聴管理サーバ24と接続される。
【0022】
また本実施の形態では、視聴管理サーバ24はSNMP(Simple Network Management Protocol)のマネージャ機能を有し、OLT装置16はSNMPのエージェント機能を有することとする。OLT装置16は、デジタルコンテンツの視聴状況を、視聴状況の変化をトリガとして視聴管理サーバ24へ通知する際、視聴状況データを含むSNMPのTrapメッセージを視聴管理サーバ24へ送信する。
【0023】
図2は、図1のOLT装置16の機能構成を示すブロック図である。OLT装置16は、転送情報保持部30と、転送処理部32と、プロキシ処理部34と、転送情報更新部36と、視聴状況通知部38とを含む。なお、GE−PONのOLT装置としての機能(光伝送の終端機能等)は公知技術であるため図2では省略している。
【0024】
本明細書のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリ、HDDをはじめとする素子や電子回路、機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ブロック図においては、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0025】
転送情報保持部30は、OLT装置16と接続された複数のONU装置20のうち、配信サーバ10から配信されたマルチキャストパケットを転送すべきONU装置20を示す情報(以下、「転送情報」とも呼ぶ。)を保持する記憶領域である。図3は、転送情報の構成を示す。MCグループアドレスフィールドには、マルチキャストグループアドレスが設定される。要求元IPアドレスフィールドには、マルチキャストグループへの参加を要求した、言い換えればマルチキャスト配信されるデジタルコンテンツの提供を要求した再生装置22のIPアドレスが設定される。ONU番号フィールドには、マルチキャストグループへの参加を要求した再生装置22と接続されたONU装置20の識別番号が格納される。このように転送情報保持部30は、マルチキャストグループアドレスと、要求元IPアドレスと、ONU番号とを対応付けて保持する。
【0026】
図2に戻り、転送処理部32は、配信サーバ10から配信されたマルチキャストパケットを受け付ける。そして、転送情報保持部30に保持された転送情報にしたがって、そのマルチキャストパケットで指定されたマルチキャストグループアドレスと対応づけられた再生装置22に対して、そのマルチキャストパケットを送信する。言い換えれば、マルチキャストパケットで指定されたマルチキャストグループに参加している再生装置22に対して、そのマルチキャストパケットを転送する。
【0027】
例えば、転送処理部32は、ONU装置20a〜ONU装置20cのIPアドレスとMACアドレスとの対応関係を定めたMACアドレステーブルを保持する。そして、転送情報を参照して、マルチキャストパケットで指定されたマルチキャストグループアドレスと対応づけられた要求元IPアドレスを特定し、MACアドレステーブルを参照して、その要求元IPアドレスと対応づけられたMACアドレスを特定する。転送処理部32は、特定したMACアドレスを宛先アドレスとして設定したMACフレームを再生装置22へ送信する。
【0028】
プロキシ処理部34は、IGMPプロキシ機能を提供する。具体的には、プロキシ処理部34は、特定のマルチキャストグループへの参加を要求するデータ(以下、「参加メッセージ」とも呼ぶ。)を再生装置22から受け付けて終端する。この参加メッセージは、IGMPで規定されたJoinフレームであり、マルチキャストグループアドレスおよび要求元IPアドレス(すなわち再生装置22のIPアドレス)が指定される。プロキシ処理部34は、再生装置22のIPアドレスに代えてOLT装置16のIPアドレスを指定した参加メッセージを配信サーバ10へ送信する。
【0029】
プロキシ処理部34は、特定のマルチキャストグループからの離脱を要求するデータ(以下、「離脱メッセージ」とも呼ぶ。)を再生装置22から受け付けて終端する。この離脱メッセージは、IGMPで規定されたLeaveフレームであり、マルチキャストグループアドレスおよび要求元IPアドレス(すなわち再生装置22のIPアドレス)が指定される。プロキシ処理部34は、再生装置22のIPアドレスに代えてOLT装置16のIPアドレスを指定した離脱メッセージを配信サーバ10へ送信する。
【0030】
プロキシ処理部34は、定期的に、デジタルコンテンツ全般の配信要求の有無を確認するための問い合わせ電文である汎用クエリ(General Query)を再生装置22a〜再生装置22cのそれぞれに対して送信する。また、いずれかの再生装置から離脱メッセージを受け付けた際に、離脱対象となるマルチキャストグループ、言い換えれば、視聴を終了するデジタルコンテンツについての配信要求の有無を確認するための問い合わせ電文である特定クエリ(Specific Query)を、再生装置22a〜再生装置22cのそれぞれに対して送信する。
【0031】
転送情報更新部36は、プロキシ処理部34において参加メッセージが受け付けられたことを検出すると、その参加メッセージをスヌープして、転送情報保持部30の転送情報を更新する。具体的には、その参加メッセージで指定されたマルチキャストグループアドレスおよび要求元IPアドレスと、その参加メッセージを中継したONU装置20の識別番号とを対応づけた新たなレコードを転送情報へ追加する。
【0032】
また転送情報更新部36は、プロキシ処理部34において離脱メッセージが受け付けられたことを検出すると、その離脱メッセージをスヌープして、転送情報保持部30の転送情報を更新する。具体的には、その離脱メッセージで指定されたマルチキャストグループアドレスおよび要求元IPアドレスと、その離脱メッセージを中継したONU装置20の識別番号とを対応づけた転送情報の既存レコードを無効な状態とする。例えば、当該レコードに対して無効であることを示す所定のフラグを設定してもよく、当該レコードを削除してもよい。
【0033】
視聴状況通知部38は、転送情報保持部30の転送情報に新規のレコードが追加されたことを検出すると、追加された転送情報にしたがって、視聴者がデジタルコンテンツの視聴を開始したことを示す情報(以下、「視聴開始メッセージ」とも呼ぶ。)を視聴管理サーバ24へ送信する。また視聴状況通知部38は、転送情報保持部30の転送情報における既存のレコードが無効な状態に更新されたことを検出すると、無効とされた転送情報にしたがって、デジタルコンテンツの視聴が終了したことを示す情報(以下、「視聴終了メッセージ」とも呼ぶ。)を視聴管理サーバ24へ送信する。視聴状況通知部38は、転送情報の更新を検出するために、転送情報を定期的に監視してもよく、転送情報を更新した旨の通知を転送情報更新部36から受け付けてもよい。
【0034】
図4は、視聴開始メッセージの構成を示す。視聴開始メッセージのMCグループアドレスフィールド、要求元IPアドレスフィールド、およびONU番号フィールドには、転送情報に追加された新規レコードと同じ情報が設定される。参加時刻フィールドには、視聴者がデジタルコンテンツの視聴を開始した日時を示す情報が設定される。例えば、プロキシ処理部34において参加メッセージが受け付けられた日時が設定されてもよく、転送情報更新部36において参加メッセージに応じて転送情報の更新がなされた日時が設定されてもよい。装置IDフィールドにはOLT装置16の識別情報が設定される。例えばOLT装置16のIPアドレスが設定されてもよい。
【0035】
図5は、視聴終了メッセージの構成を示す。視聴終了メッセージのMCグループアドレスフィールド、要求元IPアドレスフィールド、およびONU番号フィールドには、転送情報において無効にされた既存レコードと同じ情報が設定される。離脱時刻フィールドには、視聴者がデジタルコンテンツの視聴を終了した日時を示す情報が設定される。例えば、プロキシ処理部34において離脱メッセージが受け付けられた日時が設定されてもよく、転送情報更新部36において離脱メッセージに応じて転送情報の更新がなされた日時が設定されてもよい。装置IDフィールドにはOLT装置16の識別情報が設定される。
【0036】
変形例として、視聴状況通知部38は、視聴開始メッセージおよび視聴終了メッセージに対して、図4や図5では図示しない視聴者の各種属性情報、例えば氏名・住所・年齢・職業等をさらに設定してもよい。これらの視聴者の属性情報は、要求元IPアドレスと対応づけてOLT装置16が予め保持してもよく、再生装置22からの参加(離脱)メッセージに含まれてもよい。
【0037】
図2に戻り、デジタルコンテンツの転送状態に応じた処理について付言する。プロキシ処理部34は、ある再生装置22(仮に再生装置22aとする)から参加メッセージを受け付けた際、転送情報保持部30の転送情報を参照して、その参加メッセージで指定されたマルチキャストグループアドレスのデジタルコンテンツ(以下、「指定コンテンツ」とも呼ぶ。)の転送状態を判定する。
【0038】
以下において「第1の転送状態」は、指定されたマルチキャストグループアドレスの転送情報が存在しない場合であり、いずれの再生装置22にも指定コンテンツを未転送の状態であることとする。「第2の転送状態」は、指定されたマルチキャストグループアドレスで、他の要求元IPアドレスの転送情報が存在する場合であり、再生装置22aに対しては指定コンテンツを未転送であるものの、再生装置22bと再生装置22cの少なくとも一方に対しては指定コンテンツを転送中の状態であることとする。「第3の転送状態」は、指定されたマルチキャストグループアドレスで、再生装置22aのIPアドレスの転送情報が存在する場合であり、既に再生装置22aに対して指定コンテンツを転送中の状態であることとする。
【0039】
プロキシ処理部34は、第1の転送状態である場合に参加メッセージを配信サーバ10へ送信する。その一方、第2もしくは第3の転送状態である場合、OLT装置16において指定コンテンツを既に受信しているため、言い換えれば、指定されたマルチキャストグループにOLT装置16が既に参加しているため、参加メッセージの送信を抑制する。また、転送情報更新部36は、第1もしくは第2の転送状態である場合に新たな転送情報を転送情報保持部30に記録する。その一方、第3の転送状態である場合は、再生装置22aへの転送情報を既に記録済であるため、新たな転送情報の記録を抑制する。
【0040】
視聴状況通知部38は、第1もしくは第2の転送状態である場合に視聴開始メッセージを視聴管理サーバ24へ送信する。その一方、第3の転送状態である場合は視聴開始メッセージの送信を抑制する。転送情報更新部36および視聴状況通知部38は、プロキシ処理部34と同様に自身で転送状態を判定してもよく、また転送状態の判定結果をプロキシ処理部34から取得してもよい。
【0041】
またプロキシ処理部34は、ある再生装置22(仮に再生装置22aとする)から参加メッセージを受け付けた際、転送情報保持部30の転送情報を参照して、その離脱メッセージにおける指定コンテンツの転送状態を判定する。
【0042】
以下において「第4の転送状態」は、指定されたマルチキャストグループアドレスの転送情報が再生装置22aについてのみ存在する場合であり、再生装置22bおよび再生装置22cには指定コンテンツを未転送の状態であることとする。「第5の転送状態」は、指定されたマルチキャストグループアドレスの転送情報が再生装置22bまたは再生装置22cについても存在する場合であり、再生装置22a以外に、再生装置22bと再生装置22cの少なくとも一方に対して指定コンテンツを転送中の状態であることとする。
【0043】
プロキシ処理部34は、第4の転送状態である場合に離脱メッセージを配信サーバ10へ送信する。その一方、第5の転送状態である場合、OLT装置16において指定コンテンツの受信を継続するため、言い換えれば、指定されたマルチキャストグループに対するOLT装置16の参加を継続するため、離脱メッセージの送信を抑制する。また転送情報更新部36は転送状態にかかわらず転送情報の無効化処理を実行し、視聴状況通知部38は転送状態にかかわらず視聴終了メッセージを視聴管理サーバ24へ送信する。
【0044】
以上の構成による動作を以下説明する。
図6は、コンテンツ配信システム100における各装置の相互作用の一例を示すシーケンス図である。再生装置22aは、特定のデジタルコンテンツの配信要求をユーザから受け付けると、そのデジタルコンテンツに対応づけられたマルチキャストグループアドレス(ここではグループZ)を指定したJoinフレームをOLT装置16へ送信する(S10)。例えば、配信サーバ10が再生装置22に提供するウェブページであり、デジタルコンテンツを選択するためのウェブページのデータにマルチキャストグループアドレスが含まれ、再生装置22はそのマルチキャストグループアドレスをJoinフレームへ設定してもよい。
【0045】
OLT装置16は、再生装置22aから送信されたJoinフレームを終端し、自装置のIPアドレスを指定したJoinフレームを配信サーバ10へ送信する(S12)。それとともにOLT装置16は、そのJoinフレームが新規参加であるか否かを判定する。新規参加である場合、そのJoinフレームにもとづく視聴開始メッセージ(マルチキャストグループアドレスZ/再生装置22aのIPアドレス/参加時刻・・・)をSNMPのTrapメッセージとして視聴管理サーバ24へ送信する(S14)。
【0046】
OLT装置16は、PON配下に接続された再生装置22a〜再生装置22cのそれぞれに対して定期的に汎用クエリを送信する(S16)。再生装置22a〜再生装置22cのそれぞれは、デジタルコンテンツの配信を要求する場合、汎用クエリに対して応答する。ここでは、再生装置22aがOLT装置16へJoinフレームを返す(S18)。この場合、OLT装置16は視聴継続と判定し、視聴管理サーバ24に対する新たな通知を抑制する。
【0047】
新たに再生装置22bからマルチキャストグループZへのJoinフレームが送信される(S20)。OLT装置16は、当該グループZに対しては既に参加済であるため、配信サーバ10に対するJoinフレームの送信を抑制する。その一方で、そのJoinフレームにもとづく視聴開始メッセージ(マルチキャストグループアドレスZ/再生装置22bのIPアドレス/参加時刻・・・)を視聴管理サーバ24へ送信する(S22)。
【0048】
新たに再生装置22cからマルチキャストグループY(Zとは別のコンテンツ)へのJoinフレームが送信される(S24)。OLT装置16は、当該グループYには未参加であるため、自装置のIPアドレスを指定したJoinフレームを配信サーバ10へ送信する(S26)。それとともに、視聴開始メッセージ(マルチキャストグループアドレスY/再生装置22cのIPアドレス/参加時刻・・・)をSNMPのTrapメッセージとして視聴管理サーバ24へ送信する(S28)。
【0049】
再生装置22aにおいてデジタルコンテンツの視聴を終了する操作がユーザによりなされると、再生装置22aからマルチキャストグループZに対するLeaveフレームが送信される(S30)。OLT装置16は、当該グループZのデジタルコンテンツを再生装置22bに対して転送中であるため、配信サーバ10に対するLeaveフレームの送信を抑制する。その一方で、そのLeaveフレームにもとづく視聴終了メッセージ(マルチキャストグループアドレスZ/再生装置22aのIPアドレス/離脱時刻・・・)をSNMPのTrapメッセージとして視聴管理サーバ24へ送信する(S32)。またOLT装置16は、配信要求確認のためにマルチキャストグループアドレスZを指定した特定クエリをPON配下へ送信する(S34)。この場合、再生装置22bの視聴者は視聴を継続するため、再生装置22bはJoinフレームを応答する(S36)。
【0050】
図7は、OLT装置16の動作を示すフローチャートである。OLT装置16のプロキシ処理部34は、先の汎用クエリの送信から一定時間が経過したことを検出すると(S10のY)、PON配下のONU装置20のそれぞれに対して新たな汎用クエリを送信する(S12)。一定時間が未経過であれば(S10のN)、S12はスキップされる。再生装置22から送信されたマルチキャストグループに対する参加メッセージをプロキシ処理部34が受け付けると(S14のY)、視聴参加処理が実行される(S16)。参加メッセージを受け付けなければ(S14のN)、S16はスキップされる。
【0051】
再生装置22から送信されたマルチキャストグループに対する離脱メッセージをプロキシ処理部34が受け付けると(S18のY)、視聴離脱処理が実行される(S20)。そして、プロキシ処理部34は、離脱メッセージで指定されたマルチキャストグループを指定した特定クエリを、PON配下のONU装置20のそれぞれに対して送信する(S22)。離脱メッセージを受け付けなければ(S18のN)、S20およびS22はスキップされる。配信サーバ10からマルチキャスト配信されたデジタルコンテンツのデータを受け付けると(S24のY)、視聴状況通知部38は、転送情報保持部30に保持された転送情報にしたがって、そのデジタルコンテンツのデータを再生装置22へ転送する(S26)。マルチキャスト配信されたデジタルコンテンツのデータを受け付けなければ(S24のN)、S26はスキップされる。
【0052】
図8は、図7のS16の視聴参加処理を詳細に示すフローチャートである。再生装置22から送信された参加メッセージが、その再生装置22の視聴者における新規の参加メッセージであった場合(S30のY)、転送情報更新部36は、その視聴者にデジタルコンテンツを転送するための新たな転送情報を転送情報保持部30へ追加する(S32)。再生装置22から送信された参加メッセージで指定されたマルチキャストグループ(以下、「参加要求グループ」とも呼ぶ。)に対してOLT装置16が未参加であれば(S34のN)、プロキシ処理部34は、参加要求グループに対してOLT装置16を登録するための参加メッセージを配信サーバ10へ送信する(S36)。参加要求グループに対して既に参加している場合(S34のY)、S36はスキップされる。
【0053】
視聴状況通知部38は、再生装置22からの参加メッセージにもとづく視聴開始メッセージを視聴管理サーバ24へ送信する(S38)。再生装置22から送信された参加メッセージがその再生装置22の視聴者における新規の参加メッセージでない場合、言い換えれば、その再生装置22から指定グループが同じ参加メッセージを既に受け付け済の場合、さらに言い換えれば、その再生装置22へ指定グループのデジタルコンテンツを既に転送中の場合(S30のN)、S32以降はスキップされて本図のフローを終了する。
【0054】
図9は、図7のS20の視聴離脱処理を詳細に示すフローチャートである。転送情報更新部36は、離脱メッセージを送信した再生装置22の視聴者にデジタルコンテンツを転送するための既存の転送情報を転送情報保持部30から削除する(S40)。離脱メッセージで指定されたマルチキャストグループ(以下、「離脱要求グループ」とも呼ぶ。)の視聴者数が0になる場合、言い換えれば、離脱要求グループを指定する転送情報が存在しなくなる場合(S42のY)、プロキシ処理部34は、離脱要求グループからOLT装置16を除外するための離脱メッセージを配信サーバ10へ送信する(S44)。離脱要求グループの視聴者数が1以上残る場合、言い換えれば、離脱要求グループを指定する転送情報が残存する場合(S42のN)、S44はスキップされる。視聴状況通知部38は、再生装置22からの離脱メッセージにもとづく視聴終了メッセージを視聴管理サーバ24へ送信する(S46)。
【0055】
本実施の形態のコンテンツ配信システム100によれば、配信サーバ10と再生装置22間で送受されるIGMPメッセージを、両装置の間でデータを中継するOLT装置16がスヌープして、そのIGMPメッセージにより示される視聴状況を視聴管理サーバ24へ逐次通知する。これにより、デジタルコンテンツの配信側および再生側の双方に影響を与えることなく、マルチキャスト配信されるデジタルコンテンツのリアルタイムの視聴状況を視聴管理サーバ24において容易に把握し、管理することができる。
【0056】
また、IGMPプロキシが実装されたGE−PONのOLT装置16が視聴状況通知機能を備えることにより、デジタルコンテンツのマルチキャスト配信における網負荷の低減と、個々の視聴者(再生装置22)における視聴状況の特定とを両立することができる。また、PON配下の複数の再生装置に対するデジタルコンテンツの転送状態を加味して、IGMPメッセージの送信有無、視聴状況の通知有無を決定することにより、IGMPメッセージの送信と視聴状況の通知の双方を適切なタイミングで実行することができる。
【0057】
また、ユーザ宅(加入者宅)に一番近い局内に設置されるOLT装置16が視聴状況通知機能を備えることにより、上位網のルータに影響されることなく、視聴管理を行うことができる。具体的には、IGMPプロキシよりも上位(配信サーバ10)側の装置では、各ユーザの視聴状況を把握することが困難である。したがって本実施の形態で示すように、マルチキャスト網(すなわち通信網12)の複雑なルーティング方式に影響されずに直接、JoinフレームやLeaveフレームをユーザ側から受信し、スヌープすることが可能なOLT装置16において視聴状況を管理するための機能(本実施例では視聴状況通知機能)を実装することが好適であると言える。
【0058】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0059】
上記実施の形態では、視聴者側の再生装置からのIGMPメッセージをスヌープし、デジタルコンテンツの視聴状況を視聴管理サーバへ通知する通信装置の一例としてGE−PONのOLT装置を示した。変形例として、この通信装置はOLT装置に限らず、IGMPスヌープを実行するブリッジやレイヤ2スイッチであってもよい。
【0060】
上記実施の形態では、再生装置22から送信された離脱メッセージを明示的に受け付けた場合に、OLT装置16は、離脱メッセージを配信サーバ10へ送信し、転送情報保持部30の転送情報を更新し、視聴終了メッセージを視聴管理サーバ24へ送信した。変形例として、汎用クエリに対する再生装置22からの応答フレームを受け付けないことをもって、図7のS20の視聴離脱処理を実行してもよい。この場合、転送情報更新部36は、プロキシ処理部34において特定の再生装置22からの応答フレームを受け付けないことを検出すると、その再生装置22が指定された転送情報を無効化してもよい。また、特定クエリに対する再生装置22からの応答フレームを受け付けない場合も同様に視聴離脱処理を実行してよい。この場合、転送情報更新部36は、特定クエリで指定したマルチキャストグループが指定され、かつ、プロキシ処理部34において応答フレームを受け付けない再生装置22が指定された転送情報を無効化してもよい。
【0061】
上述した実施の形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0062】
請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連係によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0063】
10 配信サーバ、 14 MC対応ルータ、 16 OLT装置、 20,22,24 視聴管理サーバ、 30 転送情報保持部、 32 転送処理部、 34 プロキシ処理部、 36 転送情報更新部、 38 視聴状況通知部、 100 コンテンツ配信システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視聴者の装置から送信されたメッセージであって、デジタルコンテンツが配信されるマルチキャストグループへの参加メッセージをスヌープし、前記デジタルコンテンツの転送先を示す情報に、前記視聴者の装置に関する情報を記録する転送情報更新部と、
マルチキャスト配信された前記デジタルコンテンツを受け付け、前記転送先を示す情報にしたがって、前記デジタルコンテンツを前記視聴者の装置へ転送する転送部と、
前記視聴者の装置から新規の参加メッセージが受け付けられた場合、前記視聴者が前記デジタルコンテンツの視聴を開始したことを示す情報を、前記デジタルコンテンツの視聴状況を管理する所定の視聴管理装置へ通知する視聴状況通知部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記転送情報更新部は、前記視聴者の装置が前記マルチキャストグループから離脱する旨が検出された場合、前記転送先を示す情報に記録された前記視聴者の装置に関する情報を無効な状態に更新し、
前記視聴状況通知部は、前記マルチキャストグループから離脱する旨が検出された場合、前記視聴者が前記デジタルコンテンツの視聴を終了したことを示す情報を前記視聴管理装置へ通知することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記視聴者の装置から参加メッセージを受け付けて終端し、本通信装置をマルチキャストグループへの参加者として指定した参加メッセージをマルチキャスト配信元の装置へ送信するプロキシ部をさらに備え、
前記プロキシ部は、前記視聴者の装置から新規の参加メッセージを受け付けた場合、既に前記デジタルコンテンツを他の視聴者の装置へ転送中であれば、前記マルチキャスト配信元の装置へ参加メッセージを送信することを抑制し、
前記視聴状況通知部は、前記視聴者の装置から新規の参加メッセージが受け付けられた場合、既に前記デジタルコンテンツを別の視聴者の装置へ転送中であっても、前記視聴者が前記デジタルコンテンツの視聴を開始したことを示す情報を前記視聴管理装置へ通知することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
複数の視聴者の装置としての複数のONU(Optical Network Unit)装置と接続されてPON(Passive Optical Network)を構成するOLT(Optical Line Terminal)装置であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の通信装置。
【請求項5】
通信装置により実行される方法であって、
視聴者の装置から送信されたメッセージであって、デジタルコンテンツが配信されるマルチキャストグループへの参加メッセージをスヌープし、前記デジタルコンテンツの転送先を示す情報に、前記視聴者の装置に関する情報を記録するステップと、
マルチキャスト配信された前記デジタルコンテンツを受け付け、前記転送先を示す情報にしたがって、前記デジタルコンテンツを前記視聴者の装置へ転送するステップと、
前記視聴者の装置から新規の参加メッセージが受け付けられた場合、前記視聴者が前記デジタルコンテンツの視聴を開始したことを示す情報を、前記デジタルコンテンツの視聴状況を管理する所定の視聴管理装置へ通知するステップと、
を備えることを特徴とする視聴管理支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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