説明

通信装置および通信装置の設定方法

【課題】 通信装置の設定を容易に行うことのできる技術を提供する。
【解決手段】 通信装置100は、PPPoEサーバ420に送信すべきユーザIDとパスワードが設定されていないと判断した場合に、クライアントCLからDNSリクエストを受信すると、その内容に関わらず、自分自身のLAN側IPアドレスをDNSリプライとして返信する。クライアントCLからは、このIPアドレスに対するHTTPリクエストが送信されるため、HTTPレスポンスとしてユーザ名とパスワードを入力するためのWebページを返信する。すると、クライアントCLのWebブラウザ上にこれらの情報を設定するためのページが表示されることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを介してコンピュータと通信を行う通信装置に関し、詳しくは、このような通信装置の設定に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この主の通信装置としては、例えば、複数台のコンピュータをインターネットに接続するためのルータや、無線によってLANを構築するための無線LANアクセスポイントなどがある。通常、これらの通信装置は、初回起動時に、通信を行うための所定の通信設定を行う必要がある。例えば、PPPoE(Point-to-Point Protocol Over Ethernet(Ethernetは登録商標))によってインターネットに接続を行うルータの場合には、ユーザIDやパスワードの設定が必要であり、無線LANアクセスポイントの場合には、SSIDやWEPキーなどの設定が必要である(下記特許文献1参照)。
【0003】
上述した通信装置に対する種々の設定操作は、一般的に、コンピュータにインストールされたWebブラウザによって行われることが多い。具体的には、ユーザがWebブラウザのURL入力欄に対して通信装置に予め割り当てられたIPアドレスを入力することで、通信装置から設定情報を入力するための所定のWebページがコンピュータに送信される。こうして送信されたページはWebブラウザ上に表示され、ユーザは、このWebページに対して、所定の設定情報を入力することで設定を行っている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−40651号公報
【特許文献2】特開2003−283589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通信設定が完了していない場合にWebブラウザを起動すると、通常、「サーバが見つからないか、またはDNSエラーです。」といったエラーメッセージが表示される。このような状況では、ユーザは、どのような操作をしなければならないかを理解することは困難であった。また、このエラーメッセージによって通信設定が完了していないことを理解したとしても、通信装置の設定のために、WebブラウザのURL入力欄に設定対象となる通信装置のIPアドレスを入力するという操作は、初心者等にとっては理解し難いものであった。また、ユーザは予め通信装置のIPアドレスを把握しておく必要があるため、上級者にとっても設定操作が困難な場合があった。
【0006】
本発明は、このような課題に考慮してなされたものであり、通信装置の設定を容易に行うことのできる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、通信を行うための所定の通信設定に基づきネットワークを介してコンピュータと通信を行う通信装置であって、前記通信設定が完了しているか否かを判断する判断手段と、前記判断手段により前記通信設定が完了していないと判断され、かつ、前記コンピュータから任意のサーバ名に対応するIPアドレスを検索するためのリクエストを受信した場合に、該リクエストの内容に関わらず、当該通信装置に固有のIPアドレスを返信するIPアドレス返信手段と、前記返信したIPアドレスに対するページ表示要求を前記コンピュータから受信した際に、前記通信設定に要する情報を入力するための所定のページを返信するページ返信手段と、前記返信したページに入力された情報を前記コンピュータから受信する設定情報受信手段と、前記受信した情報に基づき、前記通信設定を完了する設定手段とを備えることを要旨とする。
【0008】
本発明によれば、ユーザがコンピュータを用いてどのようなホームページを閲覧しようとしても通信設定が完了していない場合には、設定を行うためのページが表示されることになる。そのため、ユーザは速やかに通信装置に対する設定操作を行うことができる。また、本発明によれば、ユーザから通信装置のIPアドレスが指定されなくてもコンピュータ上に設定を行うためのページを表示することができるため、ユーザは容易に通信装置の設定を行うことができる。
【0009】
本発明の通信装置は、例えば、前記ネットワークと第2のネットワーク間における通信を中継する装置として構成することができる。この場合、前記判断手段は、前記通信設定として、前記第2のネットワークに接続された所定のサーバから前記第2のネットワークに対する通信に必要な第2のIPアドレスを取得するために用いる情報が設定されていない場合に、設定が完了していないと判断する手段を備えるものとすることができる。所定のサーバとは、例えば、PPPoEサーバであり、第2のIPアドレスを取得するために用いる情報としては、このPPPoEサーバに対して送信すべきユーザIDやパスワードなどが挙げられる。このような構成であれば、インターネットやWANなどの第2のネットワークに接続するために必要な設定をコンピュータ側から容易に行うことができる。
【0010】
また、本発明の通信装置を無線LANアクセスポイントとして構成した場合には、前記判断手段は、前記通信設定として、無線ネットワークを介した通信に用いるSSID、WEPキー、無線チャンネルのうち、少なくとも1つが設定されていない場合に、設定が完了していないと判断する手段を備えるものとしてもよい。こうすることにより、無線通信おけるセキュリティを高めるための設定や無線の干渉を抑制するための設定を行うことができる。
【0011】
上述した種々の構成において、前記IPアドレス返信手段は、前記リクエストをDNSリクエストによって受信し、前記固有のIPアドレスをDNSリプライによって返信する手段を備えるものとしてもよい。こうすることにより、Webブラウザの一般的な通信手順に即して、通信装置に固有のIPアドレスをコンピュータ側に送信することができる。
【0012】
本発明において、上述した種々の態様は、適宜、組み合わせたり、一部を省略したりして適用することができる。また、本発明は、通信装置の設定方法や、通信装置の設定を行うためのコンピュータプログラムなどとしても構成することができる。いずれの構成においても上述した種々の態様を適用可能である。コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録するものとしてもよく、記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、メモリカード、ハードディスク等の種々の媒体を利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について実施例に基づき次の順序で説明する。
A.第1実施例:
(A1)インターネット接続システム:
(A2)通信装置の概略構成:
(A3)初期設定処理:
(A4)変形例:
B.第2実施例:
【0014】
A.第1実施例:
(A1)インターネット接続システム:
図1は、本発明の実施例としての通信装置100を含むインターネット接続システム900を示す説明図である。通信装置100は、無線LANアクセスポイント機能を備えたブロードバンドルータとして構成されており、LAN側に接続された複数のクライアントコンピュータCL(以下、「クライアントCL」と記載する。)をインターネット500に接続する機能を備えている。
【0015】
通信装置100のWAN側のポートには、ADSLモデム200が接続されており、このADSLモデム200は電話回線300を介してインターネット接続サービスを提供するインターネットサービスプロバイダ400(以下、「ISP400」と記載する。)に接続されている。ADSLモデム200は、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)規格に基づき、電話回線300を介してISP400側のネットワークと通信装置100とをブリッジ接続する。
【0016】
ISP400内のネットワークには、通信装置100からの要求に応じてグローバルIPアドレスを割り当てるためサーバが設置されている。このようなサーバとしては、DHCPサーバ410とPPPoE420サーバの2種類があり、これらのうち、どちらのタイプのサーバが設けられているかはISP400毎に異なっている。
【0017】
PPPoEサーバ420は、ユーザIDとパスワードに基づくPAP(Password Authentication Protocol)認証あるいはCHAP(Challenge Handshake Authentication Protocol)認証を行った上で、グローバルIPアドレスを通信装置100に割り当てる。従って、PPPoEサーバ420が設置されたISP400に対して通信装置100を接続する場合には、通信装置100に対して、これらの情報(ユーザIDおよびパスワード)を設定する必要がある。一方、DHCPサーバ410では、このような認証は行われない。そのため、DHCPサーバ410が設置されたISP400に接続する場合には、通信装置100に対して、「DHCPサーバを使用する」という設定以外の特別な設定を行う必要はない。なお、後述する初期設定処理によれば、本実施例では、このような「DHCPサーバを使用する」という設定も省略することができる。
【0018】
図1に示したように、本実施例のインターネット接続システム900は、ADSLモデム200と電話回線300とを用いて通信装置100をISP400に接続するものとした。しかし、例えば、ADSLモデムに200換えてONU(Optical Network Unit)を、電話回線300に換えて光ファイバを適用してもよい。
【0019】
(A2)通信装置の概略構成:
図2は、通信装置100の概略構成を示すブロック図である。図示するように、通信装置100は、LAN側通信回路110とWAN側通信回路120と制御回路130とを備えている。
【0020】
LAN側通信回路110は、複数のLANポート111〜113と無線通信回路114とを備えており、LANポート111〜113に有線接続されたクライアントCLや、無線によって接続されたクライアントCLに対する通信制御を行う。無線通信回路114は、無線LANの標準規格であるIEEE802.11a/b/gに基づき無線通信を行う。
【0021】
LAN側通信回路110には、LAN側のネットワークで用いられる固有のIPアドレス(LAN側IPアドレス)が予め割り当てられている。このIPアドレスは、例えば、デフォルトゲートウェイやDNS(Domain Name Server)の所在を表すIPアドレスとして各クライアントCLに設定されるアドレスである。本実施例では、このIPアドレスとして、「192.168.0.1」と工場出荷状態において設定されているものとする。もちろん、このアドレスは、設定により適宜変更可能である。
【0022】
WAN側通信回路120は、ADSLモデム200を接続するためのWANポート121を備えており、ISP400内のネットワークやインターネット500に対する通信制御を行う。
【0023】
WAN側通信回路120には、WAN側のネットワークで用いられる固有のIPアドレス(WAN側IPアドレス)として、グローバルIPアドレスが割り当てられる。このグローバルIPアドレスは、通信装置100からの要求に応じてISP400側のネットワークに存在するDHCPサーバ410やPPPoEサーバ420から割り当てられるIPアドレスである。このグローバルIPアドレスがWAN側通信回路120に割り当てられることにより、通信装置100は、クライアントCLとインターネット500との通信を中継することが可能になる。
【0024】
制御回路130は、上述したLAN側通信回路110とWAN側通信回路120とを制御するための回路であり、LAN側のネットワークとWAN側のネットワークとの通信を中継するためのルータ機能や、クライアントCLのIPアドレスやTCP/UDPポート番号の変換を行うことで複数のクライアントCLをインターネット500に同時に接続するIPマスカレード機能、LAN側のクライアントCLからの要求に応じて、これらのクライアントCLにIPアドレスを割り当てるDHCPサーバ機能、クライアントCLから送信されるDNSリクエストに応じてサーバ名の名前解決を行うDNSプロキシ機能などを備えている。
【0025】
制御回路130は、CPU131とフラッシュROM132とRAM133とを備えており、上述した各機能は、フラッシュROM132に格納された制御プログラムをCPU131が実行することでソフトウェア的に実現される。RAM133は、かかるプログラムの実行に際し、ワークエリアとして用いられる。フラッシュROM132は、通信装置100の種々の設定パラメータを記憶する用途にも用いられる。なお、フラッシュROM132に記憶させた情報は、図示していないリセットスイッチの操作により、容易に工場出荷状態に戻すことができる。
【0026】
制御回路130は、上述した機能以外にも、クライアントCL上のWebブラウザを介してユーザから通信に関する設定操作を受けるための機能を備えている。かかる機能もソフトウェア的に実現される機能であり、図の下部に示すように、判断手段150と、IPアドレス返信手段151と、ページ返信手段152と、設定情報受信手段153と、設定手段154とによって構成される。
【0027】
判断手段150は、PPPoEサーバ420からグローバルIPアドレスを取得するための設定が既に完了しているか否かを判断するための手段である。この判断は、PPPoEサーバ420での認証に用いられるユーザIDとパスワードがフラッシュROM132に記録されているか否かに基づき行われる。
【0028】
IPアドレス返信手段151は、判断手段150によって設定が完了していないと判断され、かつ、いずれかのクライアントCLからDNSリクエストによって任意のサーバ名(ドメイン名)を受信した場合に、そのリクエストの内容に関わらず、DNSリプライとして当該通信装置100に固有のLAN側IPアドレスをクライアントCLに返信する手段である。
【0029】
ページ返信手段152は、DNSリプライによって返信したIPアドレスに対するページ表示要求をHTTPリクエストによってクライアントCLから受信した際に、ユーザIDとパスワードを入力するための欄が設けられたWebページをクライアントCLに返信するための手段である。このWebページはHTML(HyperText Markup Language)によって記述されており、予めフラッシュROM132に記録されている。
【0030】
設定情報受信手段153は、Webページに入力されたユーザIDとパスワードをクライアントCLから受信する手段である。この設定情報受信手段153によって受信したユーザIDとパスワードは、設定手段154によってフラッシュROM132に記録される。こうしてフラッシュROM132にユーザIDとパスワードとが記録されることにより、PPPoEサーバ420からグローバルIPアドレスを取得するための通信設定が完了することになる。
【0031】
(A3)初期設定処理:
次に、以上のように構成された通信装置100の電源投入時にCPU131が実行する初期設定処理について説明する。この処理は、通信装置100をインターネット500に接続するための処理である。
【0032】
図3および図4は、かかる初期設定処理のフローチャートである。図の右側には、クライアントCL側で実行される処理を示している。まず、CPU131は、WAN側通信回路120を用いてDHCPサーバ410に対してグローバルIPアドレスの取得を要求する(ステップS100)。かかる要求は、DHCPディスカバーと呼ばれるメッセージをWAN側にブロードキャストすることで行う。このメッセージには、WAN側通信回路130に固有のMACアドレスが含まれる。
【0033】
上述したMACアドレス宛にDHCPサーバ410からグローバルIPアドレスが返信されると、CPU131はこれを受信し、グローバルIPアドレスの取得に成功したと判断する(ステップS110:Yes)。そして、このグローバルIPアドレスをWAN側IPアドレスとして設定する(ステップS140)。ISP400にDHCPサーバ410が設置されている場合には、以上の工程により、初期設定処理は終了する。こうして、WAN側IPアドレスが設定されれば、通信装置100は、TCP/IPプロトコルに基づきインターネット500にアクセス可能となり、クライアントCLからのインターネット500に対する通信を中継することが可能になる。
【0034】
一方、DHCPサーバ410から反応がなく、所定の時間(例えば、10秒)が経過した場合には、CPU131は、グローバルIPアドレスの取得に失敗したと判断する(ステップS110:No)。このような場合には、ISP400側にDHCPサーバ410が存在しないものとみなすことができるため、CPU131は、次に、PPPoEサーバ420からグローバルIPアドレスを取得するための処理を行う。
【0035】
上述したように、PPPoEサーバ420からグローバルIPアドレスを取得するためには、ユーザIDとパスワードとをPPPoEサーバ420に対して送信することになる。そこで、まず、CPU131は、ユーザIDとパスワードの設定が既に完了しているか否かを判定する(ステップ120)。かかる判定はフラッシュROM132にこれらの情報が既に記憶されているか否かに基づき行う。既に記憶されている場合には、通信設定が完了していると判断し(ステップS120:Yes)、PPPoEサーバ140にグローバルIPアドレスを要求する(ステップS130)。
【0036】
CPU131は、具体的には、次のような手順によりPPPoEサーバ420に対してグローバルIPアドレスを要求する。まず、WAN側通信回路130を用いてPADIパケットと呼ばれるパケットをWAN側にブロードキャストし、PPPoEサーバ420からの応答を待つ。かかるPADIパケットには、WAN側通信回路120に固有のMACアドレスが含まれる。そして、PPPoEサーバ420からこのMACアドレス宛に応答があれば、これを受信し、ユーザIDとパスワードを送信する。そうすると、PPPoEサーバ420側でこれらの情報に基づく認証処理が行われる。かかる認証が成功した場合には、PPPoEサーバ420から通信装置100に対してグローバルIPアドレスが送信される。このような手順により、CPU131は、PPPoEサーバ420からグローバルIPアドレスを取得することができる。
【0037】
上述した手順によりPPPoEサーバ140からグローバルIPアドレスを取得すると、CPU131は、取得したグローバルIPアドレスをWAN側IPアドレスとして設定し(ステップS140)、本初期設定処理を終了する。
【0038】
上記ステップS120において、フラッシュROM132にユーザIDとパスワードとが記憶されておらず、通信設定が完了していないと判断した場合には(ステップS120:No)、CPU131は、これらの情報をクライアントCLから入力するために以下に説明する一連の処理を行う。
【0039】
まず、CPU131は、クライアントCLから、DNSリクエストを受信したかどうかを判断する(ステップS150)。受信されない場合には(ステップS150:No)、本ステップをループして実行することにより受信するまで待機を行う。
【0040】
クライアントCL側では、Webブラウザが起動されると(ステップS500)、Webブラウザに対して予め設定されたホームページアドレスのURL(例えば、"http://www.XXXX.jp/index.html")に含まれるサーバ名("www.XXXX.jp"の部分)がDNSリクエストとして送信される(ステップS510)。DNSリクエストとは、サーバ名に対応するIPアドレスを検索するためリクエストである。上述したホームページアドレスには、クライアントCLが、初めてインターネット500に接続を試みる場合には、WebブラウザメーカのURLが設定されていることが多い。
【0041】
通信装置100のCPU131は、こうしてクライアントCLから送信されたDNSリクエストを受信したと判断すると(ステップS150:Yes)、このDNSリクエストの内容に関わらず、通信装置100のLAN側通信回路110に固有のIPアドレス(「192.168.0.1」)をDNSリプライとして返信する(ステップS160)。
【0042】
「192.168.0.1」というIPアドレスは、プライベートIPアドレスであるため、上述した「www.XXXX.jp」に対応する本来のIPアドレスとは異なるものである。つまり、通信装置100は、PPPoE通信に必要なユーザIDとパスワードの設定が完了していないと判断した場合には、クライアントCLからどのようなDNSリクエストを受信したとしても、そのリクエストに対応した本来のIPアドレスは返信せず、DNSリプライを自分自身のIPアドレスに偽装して返信するのである。
【0043】
クライアントCLのWebブラウザは、こうして偽装されたDNSリプライを受信すると(ステップS520)、上述したサーバ名「www.XXXX.jp」に対応するIPアドレスは「192.168.0.1」であると判断し、このIPアドレスに対してHTTPリクエストを送信する(ステップS530)。この時、通信装置100のCPU131は、クライアントCLからHTTPリクエストを受信するまで待機を行っている(ステップS170)。
【0044】
ここで、説明を図4に移す。上記ステップS170において、CPU131がHTTPリクエストを受信したと判断すると、CPU131は、次にユーザIDとパスワードを入力させるためのWebページをHTTPレスポンスによってクライアントCLに送信する(ステップS180)。クライアントCLは、このWebページを受信すると、Webブラウザ上にかかるWebページの表示を行う(ステップS540)。ユーザは、こうしてクライアントCLのWebブラウザ上に表示されたWebページを用いて、ISP400から予め通知されたユーザIDとパスワードの入力を行う。ユーザIDとパスワードは、予め郵便などの手段によってISP400からユーザに通知されている情報である。
【0045】
ユーザIDとパスワードの入力後、Webページに設けられた「OK」ボタンがユーザによって押されると、クライアントCLのWebブラウザは、これらの情報をHTTPリクエストとして通信装置100に送信する(ステップS550)。通信装置100のCPU131は、このユーザIDとパスワードとを受信したと判断すると(ステップS190)、受信した情報を、フラッシュROM132に記録する(ステップS200)。以上の処理により、PPPoEサーバ420からグローバルIPアドレスを取得するための通信設定が完了したことになる。
【0046】
次に、CPU131は、フラッシュROM132からユーザIDとパスワードを読み出し、これらの情報を用いてPPPoEサーバ420にグローバルIPアドレスの取得を要求する(ステップS210)。CPU131は、かかる要求によりグローバルIPアドレスを取得すると、取得したグローバルIPアドレスをWAN側IPアドレスとして設定する(ステップS220)。こうして、WAN側IPアドレスが設定されれば、通信装置100は、TCP/IPプロトコルに基づきインターネット500にアクセス可能となり、クライアントCLからのインターネット500に対する通信を中継することが可能になる。
【0047】
最後に、CPU131は、上記ステップ150においてDNSリクエストとして受信したサーバ名に対応する本来のIPアドレスを、ISP400側に用意されたDNSサーバに照会する。そして、この本来のIPアドレスにリダイレクトするためのWebページをステップS190で受信したHTTPリクエストに対するHTTPレスポンスとして返信する(ステップS230)。クライアントCLは、このHTTPレスポンスによって受信したWebページに記述されているリダイレクトの指示に基づき、本来のWebページにアクセスする(ステップS560)。こうすることで、クライアントCLのWebブラウザ上には、ユーザIDとパスワードを入力するためのWebページの後に、Webブラウザに予め設定されたホームページアドレスに対応する正規のWebページが表示されることになる。
【0048】
以上、通信装置100の電源投入時に実行される初期設定処理について説明した。通信装置100は、かかる初期設定処理が完了した後にクライアントCLからDNSリクエストを受信した場合には、偽装したDNSリプライを返信することなく、正当なDNSリプライを返信する。正当なDNSリプライとして返信するIPアドレスは、ISP400側に設けられたDNSサーバに照会することで得ることができる。こうすることで、クライアントCLのWebブラウザは、通信装置100を介して、インターネット500上の任意のホームページを表示することができる。
【0049】
以上で説明した本実施例の通信装置100によれば、まず、PPPoEサーバ420よりも先に、DHCPサーバ410に対してグローバルIPアドレスの取得を試みることになる。そのため、ISP400側にDHCPサーバ410が設置されていれば、ユーザは、ユーザIDやパスワードなどの設定を何ら行うことなく、インターネット500に対する接続を確立することができる。
【0050】
また、DHCPサーバ410が存在せず、PPPoEサーバ420からグローバルIPアドレスを取得する場合であっても、ユーザIDとパスワードを入力するためのWebページは、これらの設定が完了してない場合にのみ表示される。従って、一旦これらの情報が設定されてフラッシュROM132に記録されていれば、通信装置100が再起動された場合などであっても、再度煩雑な設定操作を行う必要がない。
【0051】
また、ユーザIDとパスワードが設定されていない場合には、ユーザがどのようなホームページを閲覧しようとも、これらの情報を設定するためのWebページがクライアントCLのWebブラウザ上に表示される。従って、ユーザは、速やかに設定操作を行うことができる。また、従来のように、WebブラウザのURL入力欄に通信装置100のIPアドレスを入力しなくても設定ページが表示されるため、ユーザは、予め通信装置100のLAN側IPアドレスを把握する必要がなく、容易に設定を行うことが可能になる。
【0052】
なお、上述した初期設定処理のステップS190においてクライアントCLから受信したユーザ名とパスワードが誤っている場合には、ステップS210において、グローバルIPアドレスがPPPoEサーバ420から取得できないことになる。このような場合には、通信装置100は、上記初期設定処理をステップS100から再度実行するものとしてもよい。また、上記ステップS180に処理を戻って実行するものとしてもよい。このようにすることで、再度、クライアントCLのWebブラウザに対してユーザIDとパスワードを入力させるWebページを表示させることができる。
【0053】
また、本実施例の上記ステップS110では、グローバルIPアドレスの取得に成功した場合には、ISP400側にDHCPサーバ410が設置されていることがわかり、失敗した場合には、PPPoEサーバ420が設置されていることがわかる。つまり、ISP400側にDHCPサーバ410とPPPoEサーバ420のどちらが設置されているかを判別することができる。従って、かかる判別の結果をフラッシュROM132に記憶させれば、電源が再投入された場合に、DHCPサーバ410とPPPoEサーバ420のどちらにグローバルIPアドレスを要求すればよいかを容易に判別することができる。かかる判別の結果、ISP400にPPPoEサーバ420が設置されていることがわかれば、上述したステップS100〜S110を省略するものとしてもよい。こうすることにより、迅速にインターネット500への接続を確立することができる。
【0054】
(A4)変形例:
上記実施例の初期設定処理では、最初に、DHCPサーバ410にアクセスしてからPPPoEサーバ420にアクセスを行うものとして説明した。しかし、逆に、最初にPPPoEサーバ420にアクセスしてからDHCPサーバ410にアクセスするものとしてもよい。
【0055】
図5は、このような場合における初期設定処理のフローチャートである。まず、CPU131は、PPPoEサーバ420に接続を試みる(ステップS101)。所定の時間(例えば、10秒)が経過し、PPPoEサーバ420から反応がなかった場合には、PPPoEサーバ420への接続が失敗したと判断する(ステップS102:No)。このような場合には、ISP400側にPPPoEサーバ420が設置されていないものとみなすことができるため、CPU131は、次に、DHCPサーバ410に対してIPアドレスを要求する(ステップS103)。そして、DHCPサーバ410からグローバルIPアドレスが取得されれば、取得したグローバルIPアドレスをWAN側IPアドレスとして設定する(ステップS140)。
【0056】
一方、上記ステップS101において、PPPoEサーバ420への接続が成功した場合には(ステップS102:Yes)、以降、上記実施例で説明した処理と同様の処理(ステップS120〜)を実行することで、PPPoEサーバ420からグローバルIPアドレスを取得することができる。
【0057】
このような変形例によっても、実施例と同様に、容易に通信装置100の設定を行うことが可能になる。しかし、本変形例のようにDHCPサーバ410よりも先にPPPoEサーバ420に対してアクセスする場合には、図1に示したADSLモデム200がブリッジタイプのモデムではなく、PPPoEブリッジ機能とDHCPサーバ機能を備えたルータタイプのADSLモデム(以下、このようなADSLモデムを「PPPoEモデム」と記載する)の場合に特に効果的である。
【0058】
例えば、PPPoEモデムを介して、先にDHCPサーバからグローバルIPアドレスを取得しようとすると、実際には、PPPoEモデムのDHCPサーバ機能によってIPアドレスが取得されることとなる。つまり、通信装置100のWAN側IPアドレスには、ISP400側から割り当てられたグローバルIPアドレスではなく、PPPoEモデムから割り当てられたプライベートIPアドレスが設定されることになる。このような場合に、PPPoEモデムとインターネット500との接続が確立していない場合には、クライアントCLから、インターネット500への接続ができないことになる。
【0059】
しかし、本変形例のようにDHCPサーバ410よりも先にPPPoEサーバ420に対するアクセスを先に行えば、ISP400側にPPPoEサーバが設置されている場合には、PPPoEモデムのPPPoEブリッジ機能の働きにより、正常にISP400側からグローバルIPアドレスを取得できる。従って、PPPoEモデムの設定に関係なく、クライアントCLをインターネット500に接続することができるのである。
【0060】
ISP400側にPPPoEサーバでなく、DHCPサーバが設置されている場合には、PPPoEモデムは、通常、このDHCPサーバからグローバルIPアドレスの割り当てを受けている。そのため、通信装置100は、PPPoEサーバ410に対する接続が失敗したとしても、PPPoEモデムのDHCPサーバ機能によってIPアドレスの割り当てを受けることができる。つまり、本変形例によれば、ADSLモデム200が、ブリッジタイプのモデムではなく、PPPoEブリッジ機能とDHCPサーバ機能とを備えたルータタイプのADSLモデムの場合であっても、容易にインターネットへの接続を行うことが可能になるのである。
【0061】
B.第2実施例:
上述した第1実施例では、通信設定として、PPPoEサーバ420による認証に必要なユーザIDとパスワードの設定を行う場合について説明した。しかし、本発明は、このような場合に限られず適用可能である。そこで、本第2実施例では、通信設定として、無線通信に用いるWEPキーの設定を行う場合について説明する。WEPキーとは、無線信号を暗号化するための鍵情報である。
【0062】
図6は、通信装置100のCPU131が実行するWEPキー設定処理のフローチャートである。かかる処理は、通信装置100の起動時に実行される。なお、図の右側には、クライアントCL側で実行される処理を示している。
【0063】
まず、CPU131は、WEPキーが既に設定されているか否かを判断する(ステップS600)。かかる判断は、フラッシュROM132にWEPキーが記憶されているか否かに基づき行う。WEPキーが記憶されている場合には、既に通信設定が完了していると判断して(ステップS600:Yes)、本処理を終了する。一方、WEPキーが記憶されていない場合には、未だ通信設定が完了していないと判断し(ステップS600:No)、クライアントCLからのDNSリクエストの送信があるまで待機する(ステップS610)。
【0064】
以降の処理(ステップS620〜S670)は、第1実施例に対して、ユーザから入力を行う情報がWEPキーであることが相違するのみであり、第1実施例で説明した処理(図3および図4のステップS160〜S200,S230)と基本的に同様の処理を実行する。また、クライアントCL側で実行される処理(ステップS700〜S760)も、第1実施例で説明した処理(図3および図4のステップS500〜S560)と同様である。従って、詳細な説明は省略する。これらの処理によって、通信装置100は、クライアントCLのWebブラウザからWEPキーを受信し、フラッシュROM132に記憶させることができる。本処理を終了した以降には、このWEPキーを用いることで、クライアントCLと暗号化を施した通信を行うことができる。
【0065】
以上で説明した第2実施例によれば、ユーザは、容易にWEPキーの設定を行うことができるので、セキュリティを向上させた通信を行うことが可能となる。なお、ここでは、WEPキーの設定を行う場合について説明したが、その他にも、例えば、SSIDが工場出荷状態から変更されていない場合に、通信設定が行われていないと判断し、新たなSSIDの入力を求めるためのWebページをクライアントCLに表示させるものとしてもよい。また、通信装置100が、無線の混信や干渉を検出した場合に、通信設定が完了していないと判断し、無線チャンネルの変更を求めるためのWebページを表示させるものとしてもよい。
【0066】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明はこうした形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、ソフトウェアによって実現した機能はハードウェアによって実現するものとしてもよい。また、クライアントCL側では、Webブラウザが起動され、かかるWebブラウザからDNSリクエストが送信されるものとして説明したが、FTPクライアントソフトウェアやGOPHERクライアントソフトウェア、TELNETクライアントソフトウェア等の起動により、これらのソフトウェアからDNSリクエストが送信されるものとしてもよい。このような場合には、HTTPプロトコルではなく、それぞれのプロトコルに応じてパスワードやユーザIDを入力するためのユーザインタフェースを提供するものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】インターネット接続システム900を示す説明図である。
【図2】通信装置100の概略構成を示すブロック図である。
【図3】初期設定処理のフローチャートである。
【図4】初期設定処理のフローチャートである。
【図5】変形例における初期設定処理のフローチャートである。
【図6】WEPキー設定処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
100...通信装置
110...LAN側通信回路
111〜113...LANポート
114...無線通信回路
120...WAN側通信回路
130...制御回路
131...CPU
132...フラッシュROM
133...RAM
150...判断手段
151...IPアドレス返信手段
152...ページ返信手段
153...設定情報受信手段
154...設定手段
200...ADSLモデム
300...電話回線
400...インターネットサービスプロバイダ
410...DHCPサーバ
420...PPPoEサーバ
500...インターネット
900...インターネット接続システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信を行うための所定の通信設定に基づきネットワークを介してコンピュータと通信を行う通信装置であって、
前記通信設定が完了しているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記通信設定が完了していないと判断され、かつ、前記コンピュータから任意のサーバ名に対応するIPアドレスを検索するためのリクエストを受信した場合に、該リクエストの内容に関わらず、当該通信装置に固有のIPアドレスを返信するIPアドレス返信手段と、
前記返信したIPアドレスに対するページ表示要求を前記コンピュータから受信した際に、前記通信設定に要する情報を入力するための所定のページを返信するページ返信手段と、
前記返信したページに入力された情報を前記コンピュータから受信する設定情報受信手段と、
前記受信した情報に基づき、前記通信設定を完了する設定手段と
を備える通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置であって、
当該通信装置は、前記ネットワークと第2のネットワーク間における通信を中継する装置であり、
前記判断手段は、前記通信設定として、前記第2のネットワークに接続された所定のサーバから前記第2のネットワークに対する通信に必要な第2のIPアドレスを取得するために用いる情報が設定されていない場合に、設定が完了していないと判断する手段を備える
通信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の通信装置であって、
前記所定のサーバとは、PPPoEサーバであり、
前記第2のIPアドレスを取得するために用いる情報とは、前記PPPoEサーバに対して送信すべきユーザIDおよびパスワードである
通信装置。
【請求項4】
請求項1に記載の通信装置であって、
前記ネットワークは、無線ネットワークであり、
前記判断手段は、前記通信設定として、前記無線ネットワークを介した通信に用いるSSID、WEPキー、無線チャンネルのうち、少なくとも1つが設定されていない場合に、設定が完了していないと判断する手段を備える
通信装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の通信装置であって、
前記IPアドレス返信手段は、前記リクエストをDNSリクエストによって受信し、前記固有のIPアドレスをDNSリプライによって返信する手段を備える
通信装置。
【請求項6】
通信を行うための所定の通信設定に基づきネットワークを介してコンピュータと通信を行う通信装置の設定方法であって、
前記通信装置が、前記通信設定が完了しているか否かを判断し、
前記判断の結果、前記通信設定が完了していないと判断され、かつ、前記コンピュータから任意のサーバ名に対応するIPアドレスを検索するためのリクエストを受信した場合に、該リクエストの内容に関わらず、該通信装置に固有のIPアドレスを返信し、
前記返信したIPアドレスに対するページ表示要求を前記コンピュータから受信した際に、前記通信設定に要する情報を入力するための所定のページを返信し、
前記返信したページに入力された情報を前記コンピュータから受信し、
前記受信した情報に基づき、前記通信設定を完了する
設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−20017(P2006−20017A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195230(P2004−195230)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(390040187)株式会社バッファロー (378)
【Fターム(参考)】