説明

通報装置、および通報システム

【課題】迅速に対応する必要がない人物についての通報を控えるとともに、迅速に対応する必要がある人物についての通報を確実に行うことにより、警備員等の業務が煩雑になるのを防止し、且つ迅速に対応しなければならない人物に対する対応が遅れるのを防止できる通報装置を提供する。
【解決手段】画像処理部22が、監視エリアを撮像しているカメラ1が撮像したフレーム画像を処理し、撮像されている人物の行動を解析し、その行動が予め定めた複数の検知行動のいずれかに相当するかどうかを判断する。また、常習者DB24が、画像処理部22が検知行動であると判断した人物について、検知回数を検知行動別に記憶する。そして、閾値回数を検知行動別に設定しておき、出力部25が、いずれかの検知行動が対応する閾値回数を超えた人物について通報を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、撮像装置が撮像したフレーム画像を処理し、撮像されている人物の行動を解析し、不正行為等にかかる行動を起こした人物を警備員等に通報する通報装置、および通報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラで撮像しているフレーム画像を処理し、撮像されている人物の行動を解析し、その行動が不正行為等を含む異常行動であった人物を検知するとともに、その人物を警備員等に通報することが行われている。
【0003】
また、不正行為を行っている可能性が高い人物の顔画像を撮像して保存するとともに、顔認証技術を利用して、その人物が不正行為を行っている常習者であるかどうかを判断し、常習者であれば通報することも提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−143738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、その行動が異常行動であった人物を検知する毎に、その人物を警備員等に通報する構成では、警備員等が即時に対応する必要がない人物についてまで、通報が行われる。その結果、警備員等の業務が煩雑になり、通報された人物の対応に必要な人手が無駄に増大する。
【0006】
また、特許文献1のように、常習性のある人物について通報を行う構成にすると、警備員等が即時に対応する必要がある体調不良等の人物の通報が行われない。このため、迅速に対応しなければならない人物に対する対応が遅れることがあった。
【0007】
この発明の目的は、迅速に対応する必要がない人物についての通報を控えるとともに、迅速に対応する必要がある人物についての通報を確実に行うことにより、警備員等の業務が煩雑になるのを防止し、且つ迅速に対応しなければならない人物に対する対応が遅れるのを防止できる通報装置、および通報システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の通報装置は、上述の課題を解決し、その目的を達するために、以下のように構成している。
【0009】
行動解析手段が、監視エリアを撮像している撮像装置が撮像したフレーム画像を処理し、撮像されている人物の行動を解析し、その行動が予め定めた複数の検知行動のいずれかに相当するかどうかを判断する。ここで言う検知行動とは、不正行為にかかる行動だけでなく、体調不良や、利用している機器のトラブル等による行動も含まれる。
【0010】
また、記憶手段が、行動解析手段が検知行動であると判断した人物について、検知回数を検知行動別に記憶する。そして、閾値回数を検知行動別に設定しており、通報手段が、いずれかの検知行動が対応する閾値回数を超えた人物について通報を行う。
【0011】
したがって、即時に対応する必要がない検知行動については閾値回数を多くし、即時に対応する必要がある検知行動(体調不良や、利用している機器のトラブル等による行動)については閾値回数を1回にすることによって、即時に対応する必要がない人物についての通報を控えることができるとともに、即時に対応する必要がある人物についての通報を迅速に行うことができる。これにより、警備員等の業務が煩雑になるのを防止できる。また、迅速に対応しなければならない人物に対する対応が遅れるのを防止できる。
【0012】
また、検知行動であると判断した人物の認証については、その人物の顔画像を用いた顔認証で行ってもよいし、他の方法で行ってもよい。
【0013】
また、行動解析手段が検知行動であると判断した合計回数が、合計閾値回数を超えた人物についても通報を行うようにするのが好ましい。このようにすれば、様々な種類の不正行為にかかる検知行動を行っている人物の通報が遅れるのを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、警備員等の業務が煩雑になるのを防止し、且つ迅速に対応しなければならない人物に対する対応が遅れるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】通報システムの構成を示す概略図である。
【図2】通報装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図3】通報テーブルを示す図である。
【図4】通報装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態である通報システムについて説明する。
【0017】
図1は、この発明の実施形態である通報システムの構成を示す概略図である。この通報システムは、複数のカメラ1と、通報装置2と、を備えている。各カメラ1は、割り当てられている監視エリアを撮像する。監視エリアは、例えば駅ホーム(ホームエリア)、改札口(改札エリア)、乗車券売場(券売機エリア)、柵を設置している柵エリアである。カメラ1は、監視エリアを撮像したフレーム画像を1秒間に30フレーム程度出力するビデオカメラである。各カメラ1は、監視エリアを撮像したフレーム画像を通報装置2に入力する。
【0018】
通報装置2は、カメラ1毎に、入力されているフレーム画像を処理し、撮像されている人物の行動を解析し、その行動が予め定めた検知行動のいずれかであるかどうかを判断する。また、通報装置2は、その行動が検知行動であると判断した人物について、警備員等への通報の必要性を判断し、通報が必要であると判断した場合に通報を行う。
【0019】
図2は、通報装置の主要部の構成を示すブロック図である。通報装置2は、制御部20と、画像入力部21と、画像処理部22と、記憶部23と、常習者データベース(以下、常習者DB24と言う。)、出力部25と、を備えている。制御部20は、通報装置2本体の動作を制御する。
【0020】
画像入力部21、および画像処理部22は、接続されるカメラ1毎に設けている。画像入力部21は、対応するカメラ1(接続されているカメラ1)から入力されたフレーム画像を一時的に記憶するバッファを有している。画像処理部22は、カメラ1から入力されたフレーム画像(上述のバッファに記憶しているフレーム画像)を処理し、撮像されている人物の行動を解析し、その行動が予め定めた複数の検知行動のいずれかに相当するかどうかを判断する。この検知行動には、不正行為にかかる行動だけでなく、その人物の体調不良にともなう行動や、利用機器の障害発生にともなう行動等も含まれている。
【0021】
検知行動は、カメラ1の監視エリアに応じて設定されるものもあれば、カメラ1の監視エリアに関係なく設定されるものもある。例えば、監視エリアがホームエリアであれば、人物の移動速度が高速であるときに駆け込み乗車(検知行動)と判断する。また、監視エリアが改札エリアであれば、人物の姿勢の中に、屈みや、跳びがあるときに改札不正通行(検知行動)と判断する。また、監視エリアが改札エリアや、券売機エリアであれば、人物が長時間立ち止まっていると機器トラブル(検知行動)と判断する。また、監視エリアが柵エリアであれば、人物の姿勢の中に跳びがあるときに、柵の乗り越え(検知行動)と判断する。さらに、監視エリアを限定せず、倒れ込んだり、長時間しゃがみ込んだ人物については、体調不良(検知行動)と判断する。
【0022】
なお、人物の姿勢は、シルエット画像解析や、パターンマッチング等の公知の手法を用いて行えばよい。
【0023】
記憶部23は、検知行動毎に、その閾値回数を対応付けた通報テーブル23a(図3参照)を記憶している。図3は、駆け込み乗車を5回、改札不正通行を4回、機器トラブルおよび体調不良を1回、柵の乗り越えを3回とした例である。以下の説明では、閾値回数が1回である検知行動を特定検知事象と言い、閾値回数が複数回である検知行動を常習性検知事象と言う。また、記憶部23は、この通報テーブル23aとは別に、合計閾値回数(例えば、7回)を記憶している。
【0024】
常習者DB24には、画像処理部22において、その行動が常習性検知事象にかかる検知行動であると判断された人物毎に、その人物の顔画像、この人物の顔部品(顔の輪郭、目、鼻、口等)の特徴量、常習性検知事象毎の検知回数を対応付けた常習者レコードが登録される。
【0025】
出力部25は、警備員等が所持している携帯端末等に通報メールを送信する。
【0026】
以下、この通報システムの動作について説明する。
【0027】
図4は、通報装置の動作を示すフローチャートである。通報装置2は、各画像処理部22が、接続されているカメラ1から入力されているフレーム画像を処理し、撮像されている人物の行動を解析する(s1)。通報装置2は、いずれかの画像処理部22において、その行動が検知行動であると判断された人物を検知すると(s2)、その検知行動が特定検知事象にかかる行動であるか、常習性検知事象にかかる行動であるかを判定する(s3)。
【0028】
通報装置2は、s3で特定検知事象にかかる行動であると判定すると、出力部25において、警備員等が所持している携帯端末等に通報メールを送信する(s4)。この通報メールには、その行動が特定検知事象であると判定された人物の居場所(この判定を行った画像処理部22に対応するカメラ1の監視エリア)や、カメラ1の撮像画像等が含まれている。したがって、この通報メールを受信した携帯端末を所持している警備員等は、迅速に対応できる。
【0029】
このように、警備員等が即時に対応する必要がある体調不良や、機器不良等にかかる通報については確実且つ、迅速に行われるので、迅速に対応しなければならない人物に対する警備員等の対応が遅れることがない。
【0030】
通報装置2は、s4で通報メールを送信すると、s1に戻り、上述した処理を繰り返す。
【0031】
通報装置2は、s3で特定検知事象でないと判定すると、すなわち常習性検知事象であると判定すると、カメラ1の撮像画像からその人物の顔画像を切り出し(s5)、顔部品の特徴量を抽出する(s6)。通報装置2は、s6で抽出した顔部品の特徴量を用いて、常習者DB24を検索し、該当する人物がすでに登録されているかどうかを判定する(s7)。通報装置2は、s7で常習者DB24に登録されていない(未登録者である。)と判定すると、この人物を常習者DB24に登録する(s8)。s8では、この人物の顔画像(s5で切り出した顔画像)、顔部品の特徴量(s6で抽出した顔部品の特徴量)、および今回判断した常習性検知事象の検知回数を1回にした常習者レコードを常習者DB24に登録する。
【0032】
通報装置2は、s7で常習者DB24に登録されていると判定すると、該当する常習者レコードに対して、今回判断した常習性検知事象の検知回数を1カウントアップする(s9)。通報装置2は、今回判断した常習性検知事象の検知回数が、この常習性検知事象に対応付けられている閾値回数以上であるかどうかを判定する(s10)。
【0033】
通報装置2は、s10で閾値回数以上であると判定すると、s4で通報メールを送信する。すなわち、通報装置2は、いずれかの常習性検知事象(例えば、駆け込み乗車、柵の乗り越え等)を何度も繰り返している人物(ある常習性検知事象について、検知された回数が対応付けられている閾値回数以上に達した人物)を警備員等に通報する。
【0034】
このように、駆け込み乗車、柵の乗り越え等については、その行動を検知したときに、即時に通報しないが、何度も繰り返えされ、閾値回数に達したときに、警備員等に通報する。
【0035】
また、通報装置2は、s10で閾値回数以上でないと判定しても、その人物について、常習性検知事象が検知された回数の合計が合計閾値回数以上であるかどうかを判定する(s11)。通報装置2は、s11で合計閾値回数以上であると判定すると、s4で通報メールを送信する。すなわち、通報装置2は、各常習性検知事象については閾値回数未満であっても、色々な種類の常習性検知事象を何度も繰り返している人物についても、警備員等に通報する。
【0036】
通報装置2は、s11で合計閾値回数未満であると判定すると、s1に戻り上述した処理を繰り返す。
【0037】
このように、この通報システムでは、体調不良や、機器トラブル等にかかる特定検知事象にかかる検知行動であると判断したとき、すぐに警備員等に通報する。したがって、迅速に対応しなければならない人物に対する、警備員等の対応が遅れるのを防止できる。
【0038】
また、即時に対応する必要がない人物についての通報を控えることができる。したがって、警備員等の業務が煩雑になるのを防止できる。
【0039】
さらに、特定の種類の常習性検知事象を何度も繰り返している人物や、色々な種類の常習性検知事象を何度も繰り返している人物については、警備員等に通報するので、悪質な行動をとる人物については、警備員等に通報し、捕まえることができる。
【0040】
また、駅の改札口に設置されている自動改札機にカメラを設け、当該自動改札機で、定期券の不正使用、友連れ通行、子供乗車券不正使用、無札通過等の不正行為を検出したときに、その人物の顔画像と、行われた不正行為の種類等を通報装置2に通知する構成としてもよい。この場合には、定期券の不正使用、友連れ通行、子供乗車券不正使用、無札通過等の不正行為についても、上述した常習性検知事象として設定すればよい。
【0041】
なお、上述の画像入力部21、および画像処理部22は、通報装置2側ではなく、カメラ1側に設けてもよい。この場合、カメラ1が、解析した行動が検知行動であると判断した人物の、顔画像、顔部品の特徴量、および、今回検知した検知行動の種類を通報装置2に通知する構成とすればよい。
【符号の説明】
【0042】
1…カメラ
2…通報装置
20…制御部
21…画像入力部
22…画像処理部
23…記憶部
23a…通報テーブル
24…常習者データベース(常習者DB)
25…出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視エリアを撮像している撮像装置が撮像したフレーム画像を処理し、撮像されている人物の行動を解析し、その行動が予め定めた複数の検知行動のいずれかに相当するかどうかを判断する行動解析手段と、
前記行動解析手段が前記検知行動であると判断した人物について、検知回数を前記検知行動別に記憶する記憶手段と、
閾値回数を前記検知行動別に設定し、いずれかの前記検知行動が対応する閾値回数を超えた人物について通報を行う通報手段と、を備えた通報装置。
【請求項2】
前記行動解析手段は、前記検知行動であると判断した人物の認証を、その人物の顔画像を用いて行う、請求項1に記載の通報装置。
【請求項3】
前記通報手段は、前記行動解析手段が前記検知行動であると判断した合計回数が、合計閾値回数を超えた人物についても通報を行う、請求項1、または2に記載の通報装置。
【請求項4】
監視エリア毎に、その監視エリアを撮像する複数の撮像装置と、
前記撮像装置毎に、その撮像装置が撮像したフレーム画像を処理し、撮像されている人物の行動を解析し、その行動が予め定めた複数の検知行動のいずれかに相当するかどうかを判断する行動解析手段、
前記行動解析手段が前記検知行動であると判断した人物について、検知回数を前記検知行動別に記憶する記憶手段、および、
閾値回数を前記検知行動別に設定し、いずれかの前記検知行動が対応する閾値回数を超えた人物について通報を行う通報手段、を備えた通報装置と、有する通報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−191987(P2011−191987A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57156(P2010−57156)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人情報通信研究機構「民間基盤技術研究促進制度/高度画像監視センサネットワーク技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】