説明

通気性カーペット

【課題】その厚さ方向に通る空気の流速が小さくなったり、通気孔に目詰まりが生じたり、或いは見栄えが悪くなるのを防止することができる通気性カーペットを提供する。
【解決手段】複数のパイル34で構成されるパイル層36と、通気孔38を有するバッキング層32とを備え、通気孔38の近傍にある複数のパイル34の基部が、通気孔38の内周面に固着されるようにした。
【効果】通気性カーペットにおける、その厚さ方向に通る空気の流速が小さくなったり、通気孔に目詰まりが生じたり、見栄えが悪くなるのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その厚さ方向に空気が通るための通気孔を有する通気性カーペットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の通気性カーペットとしては、例えば、図6に示すようなものがあった(第1の従来の通気性カーペット)。同図は、従来の通気性カーペット2が載置された通気性支持床4の一部を示す部分拡大断面図である。同図に示すように、通気性支持床4には、複数の通気孔6が形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記従来の通気性カーペット2は、カーペット層12とバッキング層10とで構成される2層構造になっている。この通気性カーペット2のカーペット層12は、例えば、厚さ方向に通気性を有するシート材に、実質的にカーペットを構成するパイル(パイル繊維)を植毛したような状態のカーペットにより構成され、このようなカーペット層12の上記シート材がバッキング層10の上面に、部分的に塗布される接着剤により貼付けられている。これにより通気性カーペット2は、その厚さ方向に通気性を有するようにしていた。
【0004】
通気性カーペット2のバッキング層10は、粉砕して形成された異形の、粒径2mmから5mm位の多数のウレタンゴムのチップを周りから押し固めて、予めそのチップの表面に塗布しておいたウレタン樹脂系のバインダーを加熱溶融させ、その溶融したバインダーを介して互いにチップ同士を付着させることにより、異形のチップ間に空隙ができるように形成したものである。
【0005】
このような通気性カーペット2と、この通気性カーペット2が載置された通気性支持床4によれば、これらが敷設された部屋において、この通気性支持床4の下側の空間に連通する不図示のエアーダクト等を設置することにより、この不図示のエアーダクト等から送り出される温度等が調整された空気を、通気性支持床4の通気孔6及び通気性カーペット2のバッキング層10の異形のチップ間とカーペット層12の細い通気孔を通って、通気性カーペット2上の室内空間に空気を供給するような、室内空間の空調を行うことができるようになっていた。
【0006】
また、図7は、上記第1の従来の通気性カーペット2とは異なる別の通気性カーペット16(第2の従来の通気性カーペット)と、この通気性カーペット16が載置された通気性支持床18の一部を示す部分拡大断面図である。同図に示すように、通気性支持床18には、やはり複数の通気孔20が形成されている。
【0007】
また、上記第2の従来の通気性カーペット16は、ループパイル23(パイル繊維)等により構成されたパイル層24と、そのループパイル23の基部を保持するバッキング層22とで構成される、2層構造になっている。パイル層24のループパイル23のそれぞれは、そのバッキング層22の上側に略逆U字状に露出している長さ部分における両端部それぞれの延長部分が、バッキング層22の表層部に植え込まれることにより、ループ形状に起毛するようになっている。
【0008】
このループパイル23のそれぞれにおけるバッキング層22の上側に露出する長さ部分の両下端部のそれぞれを、基部と呼ぶこととする。ループパイル23の両下端部の基部のそれぞれは、その下側延長上のバッキング層22に植え込まれている長さ部分を介して、互いに隣り合うループパイル23の基部とバッキング層22内で繋がっている。
【0009】
このような通気性カーペット16は、そのパイル層24とバッキング層22の両方を貫通して連通する、水平断面が丸孔形状の複数の通気孔26が、水平面において互いに略等間隔をおいて配置されて形成されている。
【0010】
このような通気性カーペット16と、この通気性カーペット16が上面に載置された通気性支持床18によれば、上記した第1の従来の通気性カーペット2と通気性支持床4との組み合わせと同様に、これらが敷設された部屋において、この通気性支持床18の下側の空間に連通する不図示のエアーダクト等を設置することにより、この不図示のエアーダクト等から送り出される温度等が調整された空気を、通気性支持床18の通気孔20及び通気性カーペット16の通気孔26を通して、やはり通気性カーペット16上の室内空間に空気を供給するような、室内空間の空調を行うことができるようになっていた。
【特許文献1】特公平8−29124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記第1の従来の通気性カーペット2においては、バッキング層10における互いに付着したチップ間の微細な空隙を空気が通るようになっているため、この通気性カーペット2をその厚さ方向に空気が通る際の抵抗が大きいので、空調を行う場合の時間当りの空気流量が少ない(流速が小さい)ため、通気性カーペット2上の室内温度が設定温度に達するまでに長い時間がかかるという問題があった。
【0012】
また、上記従来の通気性カーペット2においては、バッキング層10のチップ間の空隙は目が細かいわずかなものであるため、小さなゴミでも目詰まりしたり、重量物を載せた際につぶれてしまったりするという問題があった。
【0013】
また、上記第2の従来の通気性カーペット16においては、複数の通気孔26をパンチング加工により形成していたので、バッキング層22の表層部に設けられているパイル層24のループパイル23が切断されてほつれ易いと共に、通気孔26が目立って通気性カーペット16の見栄えが悪くなるという問題があった。
【0014】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、その厚さ方向に通る空気の流速が小さくなったり、通気孔に目詰まりが生じたり、或いは見栄えが悪くなるのを防止することができる通気性カーペットを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明による通気性カーペットは、
複数のパイルで構成されるパイル層と、通気孔を有するバッキング層とを備え、前記通気孔の近傍にある前記複数のパイルの基部が、前記通気孔の内周面に固着されていることを特徴とするものである。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明による通気性カーペットは、
複数のパイルで構成されるパイル層と、通気孔を有するバッキング層とを備え、前記通気孔の近傍にある前記複数のパイルの基部同士が固着されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
このような本発明の通気性カーペットによれば、
複数のパイルで構成されるパイル層と、通気孔を有するバッキング層とを備え、前記通気孔の近傍にある前記複数のパイルの基部が、前記通気孔の内周面に固着されていることにより、
その厚さ方向に通る空気の流速が小さくなったり、通気孔に目詰まりが生じたり、或いは見栄えが悪くなるのを防止することができる。
【0018】
また、本発明の通気性カーペットによれば、
複数のパイルで構成されるパイル層と、通気孔を有するバッキング層とを備え、前記通気孔の近傍にある前記複数のパイルの基部同士が固着されていることにより、
やはり、その厚さ方向に通る空気の流速が小さくなったり、通気孔に目詰まりが生じたり、或いは見栄えが悪くなるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る通気性カーペットを実施するための最良の形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
図1から図5は、本発明の一実施の形態に係る通気性カーペット30について説明するために参照する図である。
【0020】
本実施の形態に係る通気性カーペット30は、図1に示すように、塩化ビニール等により形成されたバッキング層32と、パイル層36とを備えた2層構造に構成されている。通気性カーペット30のパイル層36は、バッキング層32から起毛する化学繊維素材の複数のループパイル34により構成されている。
【0021】
複数のループパイル34のそれぞれは、そのバッキング層32の外側に露出している長さ部分の両端部それぞれの延長部分が、バッキング層32に植え込まれていることにより、ループ状に起毛している。
【0022】
このループパイル34のそれぞれにおけるバッキング層32の上側に略逆U字状に露出する長さ部分の両下端部のそれぞれを、基部と呼ぶこととする。ループパイル34の両下端部の基部のそれぞれは、その下側に延長するバッキング層32に植え込まれている長さ部分を介して、互いに隣り合うループパイル34の基部とバッキング層32内で繋がっている。
【0023】
また、通気性カーペット30のバッキング層32には、その厚さ方向に貫通する複数の通気孔38が、水平面内において互いに略等間隔をおいて形成されている。通気性カーペット30は、その通気孔38の近傍にある複数のループパイル34の基部、すなわち、通気孔38の開口領域内に入り込む複数のループパイル34の基部のそれぞれが、この通気孔38の内部の深さ方向に入り込み、その内周面に固着されている。
【0024】
このようなループパイル34の基部の固着構造は、例えば、図2から図5に示すように、以下の手順により形成される。
【0025】
まず、通気孔38が形成される前の通気性カーペット30は、図2に示すように、そのバッキング層32が上側に配置されると共にパイル層36が下側に配置された状態、すなわち通気性カーペット30を裏返した状態で、不図示の作業テーブル上に載置されて固定される。
【0026】
そして、この通気性カーペット30におけるバッキング層32のパイル層36とは反対側の面には、その上方から下降して近付いてくる錐(きり)状の工具40の先端部が、その鉛直方向に伸びる中心軸線回りに回転しながら、図3に示すように、バッキング層32にほぼ垂直に押し当てられる。
【0027】
工具40は、その中心軸線回りに回転していることにより、その先端部が、通気性カーペット30のバッキング層32の上面と互いに擦れ合って摩擦熱を生じるようになる。工具40は、その中心軸線回りの回転を継続しつつ、更に下降していくことにより、バッキング層32との間に発生する摩擦熱を吸収して温度上昇しながら、図4に示すように、バッキング層32を貫通することにより、通気孔38を形成する。
【0028】
工具40は、その先端部がバッキング層32を貫通したところで下降を停止する。この段階において、工具40の先端部には、通気孔38の近傍にあるループパイル34の基部が接触している。これにより、この工具40の先端部に接触するループパイル34の基部は、工具40が保有する熱が伝わって、工具40に接触した部分が少し溶けた状態となって粘着性を生じるようになる。
【0029】
工具40は、このような状態から引き上げられ、図5に示すように、通気性カーペット30のバッキング層32から引き抜かれる。このとき、この工具40の先端部に接触して粘着していたループパイル34の基部は、工具40の先端部と一緒に通気孔38の中に引き込まれて、通気孔38の内周面に付着し、そのまま固着される。
【0030】
これにより、通気性カーペット30は、図1に示すように、そのバッキング層32に形成された通気孔38の近傍にあるループパイル34の基部のそれぞれが、通気孔38の内周面に固着するようになっている。
【0031】
このような本実施の形態に係る通気性カーペット30によれば、複数の通気孔38が形成されることにより、この通気性カーペット30の厚さ方向に通る空気の流速が小さくなったり、この通気孔38に目詰まりが生じるのを防止することができる。
【0032】
また、本実施の形態に係る通気性カーペット30によれば、通気孔38の近傍にあるループパイル34の基部が通気孔38の中に引き込まれて、通気孔38の内周面に固着されていることにより、図1に示すように、通気孔38が形成されたパイル層36の表層部分の状態が、通気孔38が形成されていない他の領域部分のパイル層36の状態とほぼ同様の状態に維持されるので、通気性カーペット30のループパイル34を図1中の上方から見たときでも通気孔38が目立たなくなり、通気性カーペット30の見栄えが悪くなるのを防止することができる。
【0033】
また、本実施の形態に係る通気性カーペット30によれば、その通気孔38の近傍にあるループパイル34の基部が、通気孔38の内周面に固着されているので、通気孔38の近傍にあるループパイル34が通気孔38の開口時の工具40によりに切断されても、ループパイル34がほつれてしまうのを防止することができる。
【0034】
なお、本実施の形態に係る通気性カーペット30は、そのバッキング層32の通気孔38が形成される過程において、錐状の工具40がバッキング層32との摩擦により熱を保有するようになっていたが、この工具40を保持する不図示の装置等に、工具40を直接加熱するヒーターや、工具40が熱くなり過ぎるのを防止する冷却装置等を設けることにより、工具40を適温に保つようになっていてもよい。
【0035】
また、本実施の形態に係る通気性カーペット30は、通気孔38の近傍のループパイル34の基部が通気孔38の内周面に固着されるようになっていたが、通気孔38の近傍の少し溶けた状態となったループパイル34の基部同士が互いにからみ合って固着するようになっていてもよい。或いは、通気性カーペット30は、その通気孔38の近傍のループパイル34の基部が、通気孔38の内周面に固着されるものと、ループパイル34の基部同士が互いに固着するものとが混在するようになっていてもよい。
【0036】
また、通気孔38の近傍のループパイル34の基部同士が互いに固着するようにしたり、或いは、通気孔38の内周面に固着するものと基部同士が互いに固着するものとが混在するようにしたりするには、例えば、上記した通気孔38の形成過程において、工具40の温度を適宜調整したり、図5に示すように、工具40を通気性カーペット30から引き抜くときの速度や、工具40の回転速度等を適宜調整したりするようにしてもよい。
【0037】
また、本実施の形態に係る通気性カーペット30は、そのパイル層36のループパイル34の基部が、バッキング層32内に埋込まれて延長する長さ部分を介して互いに隣り合うループパイル34の基部と繋がるように構成されていたが、そのように繋がっていなくてもよい。
【0038】
また、本実施の形態に係る通気性カーペット30は、そのパイル層36がループパイル34だけで構成されていたが、パイル層36は、ループパイル34の他にも、ループ状になっていない、例えば直線状等のパイルを含んで構成されていてもよい。このようなループ状になっていないパイルは、その長さ方向の一方の端部(基部)の延長部分がバッキング層32に植え込まれて構成されていることはいうまでもない。
【0039】
また、本実施の形態に係る通気性カーペット30は、そのパイル層36のループパイル34に化学繊維素材が用いられていたが、天然素材やその他の素材が用いられていてもよい。
【0040】
また、本実施の形態に係る通気性カーペット30は、その平面形状が特に限定されるものではないが、正方形又は長方形等のタイル状に形成し、通気性支持床の上面に並べて配置するようになっていてもよい。
【0041】
また、本実施の形態に係る通気性カーペット30は、特に特定の用途については記載されていなかったが、通気性カーペット30は例えば、前記通気性支持床4,18としての、フリーアクセスフロアパネルの上に敷設されるように用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施の形態に係る通気性カーペット30を示す部分拡大断面図である。
【図2】図1に示す通気性カーペット30の製造工程の一部を示す部分拡大断面図である。
【図3】図1に示す通気性カーペット30の製造工程の一部を示す部分拡大断面図である。
【図4】図1に示す通気性カーペット30の製造工程の一部を示す部分拡大断面図である。
【図5】図1に示す通気性カーペット30の製造工程の一部を示す部分拡大断面図である。
【図6】第1の従来の通気性カーペット2、及び通気性支持床4を示す部分拡大断面図である。
【図7】第2の従来の通気性カーペット16、及び通気性支持床18を示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0043】
2 通気性カーペット
4 通気性支持床
6 通気孔
10 バッキング層
12 カーペット層
16 通気性カーペット
18 通気性支持床
20 通気孔
22 バッキング層
23 ループパイル
24 カーペット層
26 通気孔
30 通気性カーペット
32 バッキング層
34 ループパイル
36 パイル層
38 通気孔
40 工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパイルで構成されるパイル層と、通気孔を有するバッキング層とを備え、前記通気孔の近傍にある前記複数のパイルの基部が、前記通気孔の内周面に固着されていることを特徴とする通気性カーペット。
【請求項2】
複数のパイルで構成されるパイル層と、通気孔を有するバッキング層とを備え、前記通気孔の近傍にある前記複数のパイルの基部同士が固着されていることを特徴とする通気性カーペット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−148804(P2010−148804A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332530(P2008−332530)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000233239)日立機材株式会社 (225)
【Fターム(参考)】