説明

通気性布帛、衣服及びアウトドア製品

【課題】内部に蓄積する熱と湿気を効率よく外部に放散する通気性に優れ、しかも内部に流入する空気量が増加、又は減少する部分の少なく、常に快適な状態に保つ、ベンチュレーション機能付きの通気性布帛、該通気性布帛を使用した衣服及びアウトドア製品を提供することである。
【解決手段】上下に配置された布帛の上段布帛と下段布帛で重ね合せ部を設け、該重ね合せ部の下段布帛の端部に三次元立体織物の上端部を接続し、該三次元立体織物の下端部を上段布帛に接続して、該重ね合せ部の下段布帛の端部と上段布帛との間に第一の開口を設け、該上段布帛布の端部と下段布帛の重ね合せ部に第二の開口を設けるとともに、該下段布帛の上端部と重ね合せ部の上段布帛をスポット的に縫着して第二の開口が大きく開くことを防止するよう構成した通気性布帛、該通気性布帛を使用した衣服及びアウトドア製品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気構造を有する布帛及び該布帛を使用した衣服及びアウトドア製品に関するものである。
本発明の通気構造を有する布帛は、内部に蓄積する熱気と湿気を外部に効率よく放散することができるため、作業服、ユニフォーム、カッターシャツ、ジャンバー、運動用衣服、カジュアルウエア、ワイシャツ、学生服、スポーツウエアパンツ、カジュアルパンツ、アンダーウエア等の衣服に使用される。
また、本発明の通気構造を有する布帛は、内部に蓄積する熱気と湿気を外部に効率よく放散するとともに、雨水の侵入が防止できるため、防水加工されて通気性が乏しい布帛を使用した雨衣、ヤッケ、アノラック、ウインドブレーカー、トレーナー、ポンチョ、ブルゾン、などの衣服や、仮設用、レジャー用、オートキャンプ用、仮設建築としてのテント、トラックや乗用車などの幌、建築における幌などのアウトドア製品にも好ましく使用される。
【背景技術】
【0002】
従来の作業服やワイシャツ等の衣服は暑い時期、特にシャツを着用した場合に発汗し易く、衣服内部が蒸れて不快感が生じるとともに、発汗して蒸れた状態で冷房設備が備えられた建物内に入ると、急激に体温が低下し、体に多大な負担をかけるという問題があった。
また、防水加工されて生地自体の通気性が乏しい雨衣やアウトドア製品などでは、内部が蒸れて発汗し易く、不快感が生じるという問題があった。
上記欠点を解消した通気性ウエアとして、本願出願人は、上下に分割された複数の布片からなる通気性ウエアであって、該複数の布片のうち上段布片を下段布片に重ね合せ、該重ね合せ部に三次元立体織物を取り付けるとともに、該三次元立体織物の両端と夫々下段布片の上部及び上段布片の下部を縫製して一体化し、該重ね合せ部に三次元立体織物からなる外気の流通路を形成したベンチュレーション機能付きの通気性ウエアを提案した(特許文献1)。
かかる通気性ウエアは防水加工されて生地自体の通気性に乏しいレインウエアなどに好適である。
【0003】
上記提案は、上段布片と下段布片の重ね合せ部に通気性と遮水性に優れた三次元立体織物を配置し、かつベンチュレーション機能を付けたため、ウエア内部に流入する外気がウエア内部で発生する水蒸気を伴って外部に排出され、ウエア内部が蒸れることはないが、三次元立体織物の切断面が外気の流通路になるため、通気性が劣るというという問題があった。通気性をアップするため厚い三次元立体織物を使用すると重ね合せ部が厚くなって型崩れし易く、見栄えが悪いため商品価値が低下する恐れがあった。また、着用者が前かがみの姿勢を取った時に重ね合せ部の三次元立体織物が圧迫されて、部分的に通気量が減少する部分が発生する恐れがあった。そのため着用者の体が部分的に冷えて、体に負担をかけるという問題があった。
【0004】
本願出願人は、上記問題点を改良した通気性のウエアとして、上下に分割された布片の上段布片を下段布片に重ね合わせて、重ね合わせ部を設け、該下段布片の上端部を外側に折り返して雨水浸入防止用堰を形成し、該堰と上段布片との間に第一の開口を設け、該上段布片の端部と下段布片の重ね合せ部に第二の開口を設け、該折り返し部と上段布片の端部を連結手段で連結し、該連結手段の端部を下段布片の折り返し部と連結し、該連結手段の他端部を上段布片の端部と連結するとともに、該上段布片の端部と重ね合せ部の下段布片を細い布帛で連結して、上段布片の捲り上がりを防止するよう構成したベンチュレーション機能付きの通気性のウエアを提案した(特許文献2)。
【0005】
上記提案は、上段布片と下段布片の重ね合せ部に連結手段として三次元立体織物を配置して、該三次元立体織物の端部を下段布片の折り返し部と連結し、該三次元立体織物の他端部を上段布片の端部と連結している。そのため、特許文献1のように三次元立体織物の切断面を流路とするのではなく三次元立体織物の平面を流路としたため通気量が大幅に増加し、薄い三次元立体織物が使用できウエアの型崩れがない。更に、上段布片の端部と重ね合せ部の下段布片を細い布帛で連結することで、風の強い時に上段布片が捲き上がることが防止できる。しかし風雨が激しい時には、下段布片に形成された雨水浸入防止用堰と上段布片との間に設けられた第一の開口が、大きく開いて通気性ウエアが型崩れする恐れがあった。
また、着用者が前かがみの姿勢を取った時に第一の開口が圧迫されて閉ざされる部分が発生して、通気量が減少する部分が発生する恐れがあった。そのため、着用者の体が部分的に冷えて体に負担をかけるという問題は依然として残されたままであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 実用新案登録第3140017号公報
【特許文献2】 特開2009−299251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、上記特許文献に記載の通気性布帛を改良した、通気性に優れ、しかも内部に流入する空気量が増加、又は減少する部分の少ないベンチュレーション機能付きの通気性布帛を提供することである。
本発明の他の目的は、内部に蓄積する熱と湿気を効率よく外部に放散し、内部を常に快適な状態に保つベンチュレーション機能付きの通気性布帛を提供することである。
更に本発明の目的は、上記通気性布帛を使用した衣服及びアウトドア製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来の通気性布帛の上記問題点を徹底的に検討した結果、三次元立体織物の断面を外気の流路とするのでなく、平面を流路とすれば流路面積が格段に増加するため薄い三次元立体織物が使用できることに着目し、更に鋭意検討した結果本発明に到達したものである。
【0009】
すなわち、本発明の通気性布帛、衣服及びアウトドア製品は、
(1)上下に配置された布帛の上段布帛と下段布帛で重ね合せ部を設け、該重ね合せ部の下段布帛の端部に三次元立体織物の上端部を接続し、該三次元立体織物の下端部を上段布帛に接続して、該重ね合せ部の下段布帛の端部と上段布帛との間に第一の開口を設け、該上段布帛布の端部と下段布帛の重ね合せ部との間に第二の開口を設けるとともに、該下段布帛の上端部と重ね合せ部の上段布帛をスポット的に止着して第二の開口が大きく開くことを防止するよう構成したことを特徴とする通気性布帛である。
(2)該上段布帛の端部と重ね合せ部の下段布帛をスポット的に止着又は連結部材で連結して、上段布帛の捲き上がりを防止するよう構成した上記(1)記載の通気性布帛である。
(3)該三次元立体織物と上段布帛の先端部及び該三次元立体織物と該上段布帛の先端部から少なくとも0.5cm離れた二カ所を縫着した上記(1)記載の通気性布帛である。
(4)上記(1)記載の通気性布帛を使用した衣服である。
(5)該衣服の内側にメッシュ状布帛が取付けられた上記(4)記載の衣服である。
(6)上記(1)記載の通気性布帛を使用したアウトドア製品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の通気性布帛及び衣服は、重ね合せ部の下段布帛の端部に三次元立体織物の上端部を接続し、該三次元立体織物の下端部を上段布帛に接続し、かつ下段布帛の上端部と重ね合せ部の上段布帛をスポット的に縫着して第二の開口が大きく開くことを防止したため型崩れがなく、かつ通気性に優れ、しかも内部に流入する外気量が増加、又は減少する部分が少ないため体が部分的に冷やされることがないという効果を奏している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】 通気性布帛の表側模式図
【図2】 通気性布帛の裏側模式図
【図3】 重ね合せ部の他の模式図
【図4】 ワイシャツの正面図
【図5】 ワイシャツの背面図
【図6】 ユニフォームの正面図
【図7】 ユニフォームの背面図
【図8】 アンダーウエアの正面図
【図9】 雨衣(上着)の正面図
【図10】 雨衣(上着)の背面図
【図11】 フードの模式図
【図12】 テントの模式図
【図13】 屋外遮蔽幕の模式図
【図14】 幌付きトラックの模式図
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【0012】
次に本発明の通気性布帛、衣服及びアウトドア製品の一実施例について図面にて説明する。図1は本発明の通気性布帛の表側模式図であり、図2は通気性布帛の裏側模式図である。
上下に連結された少なくとも二枚の布帛からなる通気性布帛1は、上段布帛2の下部と下段布帛3の上部が重ねられて、重ね合せ部4を形成している。
下段布帛3の上端部から上段布帛2の端部の間に三次元立体織物5が配置され、該三次元立体織物5の上端部が下段布帛の上端部と接合一体化されている。8は縫着ラインである。また、三次元立体編物の下端部は上段布帛と接合一体化されている。9は縫着ラインである。そして、下段布帛3の端部と上段布帛との間に第一の開口6、上段布帛2の端部と下段布帛3との間に第二の開口7が設けられている。
【0013】
接合は接着、圧着、縫着などの公知の手段が適用できるが、接着や圧着は衣服の場合製造工程が増えるため好ましくない。そのため通常縫着が適用される。三次元立体織物の厚みは、衣服、特にワイシャツ、ユニフォームなどでは、該三次元立体織物が下段布帛に密着して第二の開口を閉止させず、通気性に優れた厚み0.5〜10mmの三次元立体織物が使用される。通気性と審美性を考慮すると厚みが1〜5mmの三次元立体織物が好ましく使用される。厚み1〜5mmでは三次元立体織物の切断面から連結糸がほつれて脱落する恐れがない。厚みが5mmを超えると連結糸が脱落する恐れがあるため、メッシュで包んで脱落を防止することが好ましい。雨衣やアウトドア製品などでは、雨滴の侵入を防止するため厚み5〜15mmの厚い三次元立体織物が使用される。5mm未満では雨滴が侵入する恐れがある。15mmを超えると重ね合せ部が厚くなり審美性が低下する。通常8〜12mmが適当である。また、三次元立体織物をメッシュで包むと切断面が露出しないため審美性が向上し好ましい。10は上段布帛2の端部と重ね合せ部4の下部の下段布帛3をスポット的に止着した留め具である。留め具としてはピン、ボタン、スナップ等の公知の留め具が使用できる。また留め具の代わりに縫着してもよいし、上段布帛2の端部と下段布帛3を細幅の布帛や紐などで連結してもよい。細幅の布帛や紐などで連結すると第二の開口が開き、三次元立体織物の平面が空気の流路として有効に利用され好ましい。上段布帛2の端部と下段布帛3をスポット的に止着、又は連結することにより上段布帛の捲り上がりが防止される。また、図2に示すように下段布帛の頂部と上段布帛2がスポット的に止着されている。11は縫着部である。縫着の代わりに留め具で接合してもよいが、留め具が衣服の内側に突出して着用者に違和感を与えないよう考慮する必要がある。アウトドア製品は厚い布帛を使用するため縫着や留め具での接合が困難である。そのため、細幅の布帛や紐状体などの連結部材で下段布帛の頂部と上段布帛2を連結するのが好ましい。下段布帛3の頂部と上段布帛2をスポット的に止着又は連結部材で連結することで図2に示すように第一の開口6が大きく開くことが防止される。スポット的に止着又は連結部材で連結する間隔は型崩れせず、しかも空気の流通に影響を与えないような間隔であればよい。衣服では通常10〜15cm間隔が適当である。アウトドア製品では20〜30cm間隔が適当である。また、衣服では内側にメッシュ状布帛を取り付けると第一の開口6が外部から見えないため好ましい。
【0014】
図3(1)は重ね合せ部4の他の例であり、下段布帛の端部が3次元立体編物の上端から突出しているため上段布帛との縫着が容易となる。また内側に留め具が突出することがないため着用者の違和感が少なくなる。更に、上段布帛の型崩れを防止するため、三次元立体編物の下端部と上段布帛の端部縫着ライン9と、該縫着ライン9から少なくとも0.5cm、通常0.8〜1.5mm上部が縫着されている。12は上部縫着ラインである。図3(2)は重ね合せ部4の更に他の例であり、図に示すように下段布帛の端部を3次元立体編物の上端を挟んだ状態で折り返えして縫着している。また、上段布帛の端部も3次元立体編物の下端を挟んだ状態で折り返えして、折返し部を縫着している。このように3次元立体編物の切断面を布帛で折り返すことで3次元立体編物の切断面から連結糸が脱落しないように保護することができるとともに、審美性をアップすることができる。
8は3次元立体編物と下段布帛の縫着ライン及び9は3次元立体編物と上段布帛との縫着ラインである。
【0015】
本発明で使用する3次元立体織物は、表裏面二層の編地と、該二層の編地を連結する多数の連結糸から構成された立体編物であり、特開平10−102363号公報、特開20002−138352号公報、特開平02−74648号公報等に記載されている。
【0016】
3次元立体織物は、通常ダブルラッセル編機、ダブルトリコット編機、ダブル丸編機、Vベッドを有する横編機等で編成される。表裏面二層の編地を構成する糸としてはポリエステル系繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維などの非吸水性の繊維が用いられる。また表裏面二層の編地を連結する連結糸は上記表裏面二層の編地と同じ繊維が使用されるが、通常圧縮回復率の優れたポリエステル系繊維が用いられる。
【0017】
また、3次元立体編物は繊維メーカー各社から商品化されている。例えば、ユニチカ(株)の「キュービックアイ」、住江織物(株)の「スウィングネット」、旭化成せんい(株)の「フュージョン」、東洋紡(株)の「ブレスエアー」などが知られている。本発明では上記各社の3次元立体編物が使用できる。
【0018】
図4は、図1に示す通気性布帛1を使用した本発明の衣服の一実施例として、ワイシャツの正面図を示している。図5はワイシャツの背面図である。ワイシャツは、布地を、右前身頃a、左前身頃a’、後見頃b、前立てc、肩ヨークd、袖e、袖口f、衿g等の部材に裁断して、夫々のパーツを縫製してつくられている。hは胸ポケットである。左前身頃a’の胸ポケットhの位置にメッシュ布帛(図示せず)が縫着されている。また、図に示すようにワイシャツの左右の袖eの内側に外から見えないように重ね合せ部4が設けられ、前身頃a、a’と後見頃bの左右の縫着部にも重ね合せ部4が設けられている。更に、ワイシャツの背面の後見頃bと肩ヨークd(図1の上段布帛に相当)に重ね合せ部4が設けられている。
上記各重ね合せ部には上段布帛の端部と下段布帛がスポット的、例えば10cm間隔でスナップ等の留め具10で止着されている。上段布帛の端部と下段布帛を留め具で止着することにより、上段布帛が強風で捲り上がることが防止される。
外気は矢印で示すように左右の袖eに設けられた重ね合せ部4から侵入し、ワイシャツ内の蒸れた空気を伴って左前身頃a’の胸ポケットhの位置に縫着されたメッシュ布帛(図示せず)及び後見頃bと肩ヨークdに設けられた重ね合せ部4から外部へ排出される。ワイシャツに複数の重ね合せ部を設けることにより、高いベンチュレーション効果が実現できる。
【0019】
図6は本発明の衣服の他の例として、ユニフォームの正面図を示している。図7はユニフォームの背面図である。ユニフォームは、肩ヨークiと左右の前身頃a、a‘で重ね合せ部32が設けられている。また左右の袖ぐりから左右の見返しの端部に伸ばした左右の前身頃a、a’が左右の脇見頃j、j’が縫着され、該縫着部に重ね合せ部4が設けられている。袖口にも重ね合せ部4が設けられている。
図7に示すように、後見頃kと肩ヨークlにも重ね合せ部4が設けられている。
また、左右の袖ぐりから、すそ線に対する角度60〜80度で斜めに伸ばした後見頃が左右の脇見頃j、j’と縫着され、該縫着部に重ね合せ部4が設けられている。各重ね合せ部では、上段の布帛と下段の布帛がスポット的にスナップ等の留め具10で止着されて、上段の布帛が強風時に捲り上がらないようにしている。
空気は、矢印で示すように左右の前身頃と脇見頃に設けられた重ね合せ部4と袖口の重ね合せ部4から侵入し、上着内の蒸れた空気を伴って、前身頃と肩ヨークの重ね合せ部4から外部へ排出される。また、袖ぐりから斜めに伸ばした後見頃と左右の脇見頃の重ね合せ部から侵入する空気は、上着内の蒸れた空気を伴って、後身頃と肩ヨークの重ね合せ部4から外部へ排出される。上着に複数の重ね合せ部を設けることにより、高いベンチュレーション効果が実現できる。
【0020】
図8は本発明の衣服の例として、アンダーウエアの正面図を示している。図では、上中下の三枚の布帛を使用しており、上段布帛13と中段布帛14で上部重ね合せ部4が設けられている。また、中段布帛14と下段布帛15で下部重ね合せ部4が設けられている。上段布帛の端部と中段布帛及び中段布帛の端部と下段布帛はスナップ10等でスポット的に縫着されて、強風時の捲り上がりが防止されている。空気は、矢印で示すように下段重ね合せ部から侵入し、アンダーウエア内の蒸れた空気を伴って、上部重ね合せ部4から外部へ排出される。
【0021】
本発明の衣服は、衣服とアンダーウエア又はアンダーウエアと身体との密着を防止するため、衣服の内側にメッシュ状布帛を取り付けることが好ましい。該メッシュ状布帛により、衣服とアンダーウエア又はアンダーウエアと身体との間に隙間が形成され、衣服がアンダーウエア又は身体と密着することがなく、清涼感を保つことができる。また、作業服、ユニフォーム、ワイシャツなどの衣服では通常ポリエステル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、綿・麻などの天然繊維、再生繊維等の任意の繊維が用いられる。
【0022】
図9は、本発明の通気性布帛を使用した雨衣(上着)の正面図であり、図10は雨衣の背面図である。上着の左右前身頃a、a‘及び後見頃bは、上段布帛25の下端部が中間段布帛11の上端部と重ねられて、上部重ね合せ部28、また中間段布帛26の下端部が下段布帛27の上端部と重ねられて下部重ね合せ部29が設けられている。また、右前身頃aの右端部と後見頃bの右端部は右縫い合せラインに沿って縫製一体化され、右前身頃aの左端部は右中心縫い合せラインに沿って右前見返しmと縫製一体化されている。また、左前身頃a’の左端部と後見頃bの左端部は左縫い合せラインに沿って縫製一体化され、左前身頃aの右端部は左中心縫い合せラインに沿って左見返しm’と縫製一体化されている。右前見返しmと左見返しm’にスライドファスナーの支持テープが取り付けられている。
左右の前身頃a、a‘及び後見頃bにそれぞれ左右の袖e、e’が縫い合せラインに沿って縫製により取り付けられ上着が製作される。袖に設けられる上部重ね合せ部29は湿気が溜まりやすい脇の近くに設けることが好ましい。袖の先端に袖口30が設けられる。31は下部重ね合せ部である。また、重ね合せ部29の代わりに、袖の脇の下に複数の開口を設けてもよい。後見頃bも前身頃と同じであり、説明を省略する。各重ね合せ部では、上段の布帛と下段の布帛がスポット的にスナップ等の留め具10で止着されて、上段の布帛が強風時に捲り上がらないようにしている。
【0023】
図11は、雨衣の頭部に備えたフードの模式図であり、正面には開口部が設けられている。また、該開口部と対向する背面部に重ね合せ部44が設けられている。
雨衣の着用者が自転車で走行すると、運転者は正面から風圧を受けることとなる。
このため、従来の雨衣では、走行風による風圧でフードが後方に飛ばされてしまう恐れがあり、運転者は片手でフードを抑えながら運転することを余儀なくされ、これにより走行時の安全性を欠くこととなってしまう、特に、雨天時は水たまりなどが発生するため、走行中の危険度がより一層増大することとなる。また、着用者が自転車の走行中でなく歩行中であっても、正面からの強風により、フードが飛ばされてしまう事態も想定される。
本発明では、フードの背面部に少なくとも一つの重ね合せ部44を設け、フード内に侵入する風を重ね合せ部に設けられた第一及び第二の開口(図示せず)を通過させて外部へ逃がすため、フードが受ける風圧を減衰させることができ、フードが風圧で脱げる事態を回避できる。45はフードの内部に設けたメッシュ布帛である。また、着用者の耳の部分に重ね合せ部を設けるとフードを被った着用者が外部の音を聞くことができ自転車運転時の安全性を向上させることができる。
【0024】
雨衣では通気性及び浸水性のないナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、それらを併用したもの等を用いることができる。さらに裏面をウレタンコーティング、ウレタンラミネートあるいはアクリルコーティングで防水加工を施した布帛が使用される。
【0025】
図12は、キャンプ用の簡易設営テントの模式図であり、4本の支柱53と各支柱間に通気性布帛54が張設されて4つの屋根面を形成している。また、4つの屋根面の内の一つには出入口55が設けられ、屋根の上下部に重ね合せ部56が設けられる。上部重ね合せ部は屋根近くにの頂部に設けることが好ましい。図14は、幌付トラックの一実施例を示す模式図である。トラックの荷台に複数の幌枠57が設けられ、該幌枠57に幌58が張設されている。また、幌の上下に重ね合せ部59設けられている。
【0026】
図13は、屋外で使用される幕の模式図であり、屋外における着替えやシャワー用として使用される屋外用遮蔽幕である。該遮蔽幕は4本のパイプ状支柱48を連結パイプ49で連結し、その周囲を通気性布帛50で囲んでいる。重ね合せ部51は遮蔽幕の上下部に設けられている。人の出入りは、スライドファスナー52を開閉することで行う。
該テント、幌、遮蔽幕の下部に設けられた重ね合せ部の第二の通気口(図示せず)から外気を吸い込み、上部に設けられた重ね合せ部の第二の通気口(図示せず)から内部の暖かく湿った空気を新鮮な空気とともに排出するベンチュレーション効果で通気性が向上し、内部を快適に保つことができる。
【0027】
また、本発明の通気構造を有する布帛は、図11に示すフードと同様に強風時に受ける風圧を外部に効率よく放散して風圧を減衰させるため、露天での設営に使用される幔幕、陣幕、工事現場で使用される養生幕、広告宣伝用の横断幕、懸垂幕・垂れ幕などにも使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の通気性布帛は、型崩れがなく、かつ通気性に優れ、しかも内部に流入する外気量が増加、又は減少する部分が少ないため、作業服、ユニフォーム、カッターシャツ、ジャンバー、ワイシャツ、学生服等の衣服に使用される。
また、本発明の通気構造を有する布帛は、内部に蓄積する熱気と湿気を外部に効率よく放散するとともに、雨水の侵入が防止できるため、防水加工されて通気性が乏しい布帛を使用した雨衣、ヤッケ、アノラックなどの衣服や、各種テント、トラックや乗用車などの幌などのアウトドア製品に使用される。本発明の通気構造を有する布帛は、図11に示すフードと同様に強風時に受ける風圧を外部に効率よく放散して風圧を減衰させるため、露天での設営に使用される幔幕、陣幕、工事現場で使用される養生幕、広告宣伝用の横断幕、懸垂幕・垂れ幕などにも使用することができる。1
【符号の説明】
【0029】
1;通気性布帛 2:上段布帛
3:下段布帛 4:重ね合せ部
5:三次元立体織物 6:第一の開口
7:第二の開口 10:留め具
11:縫着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に配置された布帛の上段布帛と下段布帛で重ね合せ部を設け、該重ね合せ部の下段布帛の端部に三次元立体織物の上端部を接続し、該三次元立体織物の下端部を上段布帛に接続して、該重ね合せ部の下段布帛の端部と上段布帛との間に第一の開口を設け、該上段布帛布の端部と下段布帛の重ね合せ部に第二の開口を設けるとともに、該下段布帛の上端部と重ね合せ部の上段布帛をスポット的に縫着して第二の開口が大きく開くことを防止するよう構成したことを特徴とする通気性布帛。
【請求項2】
該上段布帛の端部と重ね合せ部の下段布帛をスポット的に止着又は連結部材で連結して、上段布帛の捲き上がりを防止するよう構成した請求項1記載の通気性布帛。
【請求項3】
該三次元立体織物と上段布帛の先端部及び該三次元立体織物と該上段布帛の先端部から少なくとも0.5cm離れた二カ所を縫着した請求項1記載の通気性布帛。
【請求項4】
請求項1記載の通気性布帛を使用した衣服。
【請求項5】
該衣服の内側にメッシュ状布帛が取付けられた請求項4記載の衣服。
【請求項6】
請求項1記載の通気性布帛を使用したアウトドア製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate