説明

通気開口を備えた衣服

本発明は、衣服、特にスポーツ活動に用いられるジャケットであって、胸領域および/または背中に通気開口が設けられており、該通気開口が、閉鎖のための手段を有しており、該手段が、調節機構を介して操作可能である形式の衣服に関する。閉鎖のための手段(8)は、開口(7)の領域内で可動な織布層(81)により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服、特にスポーツ活動に用いられる上着もしくはジャケットであって、胸領域および/または背中に通気開口が設けられており、該開口が、調節機構を介して操作可能な、閉鎖のための手段を有している衣服に関する。
【0002】
スポーツ活動時に発生する汗に基づいて、スポーツ活動に用いられる衣服には、特に汗の導出もしくは汗蒸気の導出に関して特別な要求が課されている。しかも、衣服は、屋外での活動時に、湿潤な天気において十分な保護を提供し、同時に各スポーツ選手をスポーツ活動後の急速な冷えから保護するために、防水性であることが望ましい。
【0003】
スポーツ活動に用いられる衣服を、含浸またはプラスチックコーティングされた繊維製品から製造することが知られている。含浸された材料は、通常は十分に通気性であるが、しかし条件付きでのみ防水である。プラスチックコーティングされた材料は逆である、つまりプラスチックコーティングされた材料は、通常は十分に防水であるが、しかし条件付きでのみ通気性である。さらに、衣服を積層材料から製造することが知られている。積層材料では、外側材料に気候薄膜(Klimamembran)が積層されている。この気候薄膜には、内側から、固定されていないライニング(裏地)、たいていは織布または網材料が配置される。ライニングは、外側材料および気候薄膜と共に3層積層材料の形に積層されて、つながった1つの材料を形成することができる。
【0004】
含浸された、またはプラスチックコーティングされた繊維製品から成る公知の衣服も、積層材料から成る衣服も、激しい身体活動時には通気性が低すぎるという問題を有している。特に薄膜を備えたジャケットは、ある程度の通気性を提供することができるが、これは、防水性および通気性の相互作用により引き起こされる。つまり、衣服下で分圧が形成され、この分圧が、膜の呼吸、つまり通気(Atmung)を可能にすることが望ましい。しかし、このような通気性は、著しく制限されている。調査により、衣服下の主な換気は、特にジャケットでは、スポーツ活動時にはネックに設けられた開口を通じて行われることが判った。これによって、ネックにおいて、換気および通気を主に調節する連続的な空気の流れが生じる。さらに、たとえば袖口の領域のような、衣服の別の開口によっても換気および通気が生じる。
【0005】
公知の衣服の不十分な通気活動の結果、高い空気湿分が衣服の内側で凝縮するので、凝縮された水は、衣服の内側で流れる。その結果としての衣服下における著しく高い空気湿度が飽和して、衣服の着用時の能力損失をもたらす。
【0006】
ここで本発明は解決手段を提供する。本発明の根底を成す課題は、衣服、特にスポーツ活動に用いられるジャケットであって、換気および通気の改善を生ぜしめると同時に、衣服に課された、防風性および防水性に対する要求を満たしている衣服を提供することである。
【0007】
この課題を解決するために、本発明による構成では、閉鎖のための手段が、開口の領域内で可動な織布層により形成されているようにした。
【0008】
本発明によれば、衣服、特にスポーツ活動に用いられるジャケットであって、防風性および防水性と同時に、衣服内の気候の著しい改善を可能にする衣服が提供される。このようにして、衣服内の高すぎる空気湿度による能力損失が防止されている。衣服の使用者は、強い発汗時に流入開口を開放する手段を有していて、これにより、衣服内の気候の改善を生ぜしめるために、空気交換が可能である。スポーツ活動後の冷えを防ぐために、各使用者は開口を簡単な形式で再び閉鎖することができる。
【0009】
本発明の別の実施形態および変化形は、従属請求項に記載されている。本発明の実施形態を図面に示し、以下に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ジャケットの形の衣服の前面図である。
【図2】図1に示した衣服の開口を外側から拡大して示す図である。
【図3】図2に示した開口を外側から操作位置で示す図である。
【図4】図2に示した開口を内側から閉じた位置で示す図である。
【図5】図2に示した開口を内側から部分的に閉じた位置で示す図である。
【図6】図2に示した開口を内側から開いた位置で示す図である。
【0011】
例示的な実施形態として選択された衣服は、上着もしくはジャケット1である。ジャケット1は、防風および防水の材料から製造されている。ジャケット1は、内側に内側ライニング2を備えている。内側ライニング2は、軽く形成されていて、快適な着用特性を有している。ジャケット1は、該ジャケットの前面でファスナ3によって閉鎖可能である。ジャケット1は、袖4を有している。ジャケット1は、カラー5を備えている。このカラー5には、フード6が配置されている。フード6は、ジャケット1に、たとえばファスナまたはスナップボタンによって、着脱可能に取り付けられている。
【0012】
ジャケット1には、胸領域でファスナ3の両側に、通気開口7が設けられている。これらの通気開口7は、閉鎖のための手段8を有している。これらの開口7を閉鎖する手段8は、調節機構9によって操作可能である。
【0013】
通気開口7は、外側で構造体10により覆われている。構造体10は、プラスチックから形成されていて、開口7の周囲で、ジャケット1の、防風性および防水性の材料に取り付けられている。この取付けは、縫合、接着、またはその他の取付け形式で行われ得る。本実施形態では、付加的に、取付けのためにリベット11が使用されている。構造体10は、環状に延びる縁部101を備えている。この縁部101は、ジャケット1に構造体10を上述のように取り付けるために役立つ。縁部101からは、長手方向ウェブおよび横方向ウェブ102が延びているので、構造体10は格子の形に形成されている。長手方向ウェブおよび横方向ウェブ102の間には、四角形の穴103が形成されている。構造体10の上端部および下端部には、孔の形のガイド104が構造体10に設けられている。
【0014】
通気開口7を閉鎖する手段8は、織布層81により形成されている。織布層81が、気候薄膜(Klimamembran)であると有利である。気候薄膜は、微孔性かつ空気透過性の層を有している。この層は、水蒸気透過性である。織布層81は、複数の孔を備える薄膜であっても、孔なしの薄膜あってもよい。薄膜は、水および風に対して密である。しかし、身体の湿分は、水蒸気の形で、この薄膜を通って流出するか、もしくは拡散することができ、これにより膜は通気性である、つまり水蒸気に対して透過性である。しかし、別の織布種類、たとえば含浸されるか、もしくはプラスチックコーティングされた繊維製品を使用する可能性もある。
【0015】
通気開口7を閉鎖する手段8、ひいては本実施形態における織布層81は、開口7の領域で可動に配置されている。本実施形態では、織布層81は、縁部101によって取り囲まれた領域の範囲で鉛直方向に移動可能である。水平方向の移動性も同様に可能である。しかし、鉛直方向の配向は、この機構が重力により支援されるという利点を有している。織布層81は、該織布層81の上端部に水平方向に位置調整された補強部82を備えている。
【0016】
調節機構9は、本実施形態では、編み紐91により形成されている。編み紐91は、その両端部に把持部分92を有している。編み紐91は、特に図2および図3から判るように、ガイド104を通って構造体10の裏の領域から、ジャケットの外側に進出する。調節機構9は、簡単に手段8に結合されている。本実施形態では、編み紐91は、織布層81の上端部に配置された補強部82に結合されている。
【0017】
ジャケット1の内側で、通気開口7はカバー12を備えている。カバー12は、本実施形態では、内側ライニング2と同じ材料で製造されているので、通気開口7の領域でも、肌になじみ、したがって心地よい装着快適性が得られている。カバー12は、本実施形態では、内側ライニング2に縫合されている。カバー12には、円形の穴121が設けられている。穴121は、通気開口7が開いた状態で、ジャケット内へ流入する空気の進入を可能にする。穴121の形状は、単に例示的に選択されている。もちろん別の形状も使用され得る。
【0018】
本実施形態では、織布層81は、通気開口7を外側で覆う構造体10と、通気開口7をジャケット1の内側から覆うカバー12との間に配置されている。したがって、織布層81は、本実施形態では、構造体10と、カバー12との間に案内されている。同様に、織布層81は、側方では縁部101の領域で案内されている。したがって、全体的に織布層81の信頼性のよい可動性が保証されている。
【0019】
図4から図6には、開口7を織布層81により閉鎖する場合の、種々異なる位置が示されている。図4では、通気開口7が織布層81によって完全に閉じられている。これに対して図5では、通気開口7が部分的に開放されている位置が示されている。カバー12に設けられた穴121を通じて構造体10のウェブ102および穴103が見えることが判る。図6に示した実施形態では、通気開口7が完全に開放されている。この場合、ほぼ全ての穴121を通じて構造体10、ひいてはウェブ102ならびに穴103が見える。
【0020】
ジャケット1に設けられた、織布層81の形の、通気開口7を閉鎖する手段8は、ジャケット1内の空気交換を改善する可能性を提供する。織布層81の移動により、通気開口7を通じた空気の進入が可能である。したがって、ジャケット1内の気候調整が改善される。さらに、織布層81により通気開口7を部分的に開放する可能性は、それぞれの条件に適合させて開口7を開放する可能性を提供する。これによって、ジャケット内の気候条件の調節が可能であり、このことはジャケットの快適性を公知のジャケットに比べて著しく高める。
【0021】
手段8の操作は、図3に符号Xで示されている手によって、編み紐91を単純に引っ張ることによって行われる。この場合、上側で構造体10から突出する編み紐91を引っ張ることで、開口7の閉鎖が行われ、下側で突出する編み紐91を引っ張ることで開口7の開放が行われる。
【0022】
ジャケットのために説明された本発明は、ジャケットだけに制限されるものではない。本発明は、同様にオーバオール、コート等にも適用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服、特にスポーツ活動に用いられるジャケットであって、胸領域および/または背中に通気開口が設けられており、該通気開口が、閉鎖のための手段を有しており、該手段が、調節機構を介して操作可能である形式のものにおいて、
閉鎖のための手段(8)が、開口(7)の領域内で可動な織布層(81)により形成されており、
織布層(81)が、構造体(10)と、カバー(12)との間に設けられていることを特徴とする、衣服。
【請求項2】
織布層(81)が、微孔性かつ空気透過性の材料により形成されている、請求項1記載の衣服。
【請求項3】
前記構造体(10)が格子状である、請求項1または2記載の衣服。
【請求項4】
カバー(12)が、穴(121)を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の衣服。
【請求項5】
前記調節機構が、編み紐(91)により形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の衣服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−503981(P2013−503981A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527237(P2012−527237)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005405
【国際公開番号】WO2011/026627
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(504303687)エクス−テクノロジー スイス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (23)
【氏名又は名称原語表記】X−Technology Swiss GmbH
【住所又は居所原語表記】Samstagernstrasse 45, CH−8832 Wollerau, Switzerland
【Fターム(参考)】