説明

通電性中底および帯電防止性靴。

【目的】 異物感が無くクッション性が良好な帯電防止性靴の中底として有用な通電性中底、および帯電防止性靴を提供すること第一目的とし、さらに電気抵抗の比較的高い靴底と組み合わせて使用するときに有用な通電性中底、および帯電防止性靴を提供すること第二目的とする。
【構成】 通電性中底1は、弾性層2の上面側に上面側通電性層3、下面側に下面側通電性層4が配置される中底であって、弾性層は絶縁性であり、中底の周縁部に施された縁縫い5の導電糸6により、両通電性層が導通されることを特徴とする。
帯電防止性靴11は、甲皮下縁部が周縁部に縫合された上記通電性中底の下面側通電性層に、射出または注入により成形される通電性靴底10が直に接合してなることを特徴とする。また、別の態様の帯電防止性靴11は、下面側通電性層が接着性のもので通電性靴底10を直に接合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッション性が良好で、甲皮下縁部に縫合されるとともに通電性靴底と組み合わせて使用される通電性中底、および前記通電性中底を有する帯電防止性靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体に静電気を蓄積させないために種々の帯電防止性靴が提案されている。
【0003】
帯電防止性靴の開発のポイントは、人体から靴底の接地面までの通電経路を形成するにあたって、製造コストの上昇を抑えるとともに履き心地を通常の靴と同等程度までに引き上げることである。
【0004】
一般に、靴底は、発泡倍率を上げてクッション性を向上させると、耐磨耗性、引張強度などの物性が不足するため、適度の硬さの材料にて作製される。このことは、通常の靴底においても通電性の靴底においても同様である。そのため、靴へのクッション性の付与は、靴底の上面に、弾性体を有する中敷きあるいは中底を装着することによってなされる。しかしながら、弾性を有するとともに通電性を有する材料は高価である。
したがってクッション性に富む帯電防止性靴の費用対性能比率は、絶縁性弾性体を用い、これに如何にして通電経路を形成するかによるところが大きいことになる。
特許文献1には、厚み3mmの天然ゴムスポンジの上面及び下面にカーボン繊維を10mm間隔で織り込んだポリエステル製織布を貼着し、この貼着体の踏付部において上面及び下面を連絡するように銅を蒸着したポリエステル糸を二本、間隔5mmで縫着して得た靴中敷きが開示されている。
【特許文献1】実開平3−102906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の考案において、10mm間隔でカーボン繊維を織り込んだ布帛の使用は、カーボン繊維の使用量が少ないためにコスト面で有利であり、また、踏付部において、上面、下面の導通を図ることは、人体と靴底と間の通電経路を形成するには好適である。しかしながら、導電糸を上面と下面とに連絡することは、使用者に異物感を抱かせるものである。
また、靴底部分の電気抵抗を低く設定すると、感電防止、製造コスト、物性の面で不利になることがあるが、逆に電気抵抗を高く設定した場合では、靴底が全面から静電気を流すようにされていないと、極端に静電気放出性が悪化することがある。例えば、特許文献1のように、下面の織布が10mm間隔のストライプ状の通電経路を有するような場合は、この通電経路と接地面とを比較的短い距離で結んでいるあたりでは静電気を多く流すが、それ以外の部分では静電気をほとんど流さない部分があり、静電気の放出が十分になされないことがある。
本発明は、異物感が無くクッション性が良好な帯電防止性靴の中底として有用な通電性中底、および帯電防止性靴を提供すること第一目的とし、さらに電気抵抗の比較的高い靴底と組み合わせて使用するときに有用な通電性中底、および帯電防止性靴を提供すること第二目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の通電性中底は、弾性層の上面側に上面側通電性層、下面側に下面側通電性層が配置される中底であって、弾性層は絶縁性であり、中底の周縁部に施された縁縫いの導電糸により、両通電性層が導通されることを特徴とする。
【0007】
また、発明者らは、帯電防止性靴において、接足面側は、人体による湿気の上昇があるために特許文献1に記載のあるようなカーボン繊維を10mm間隔で織り込んだポリエステル製織布で形成すれば、靴下を履いた人体であっても人体が発する湿気により、靴下を履いた人体とこのカーボン繊維との間に生じる電気抵抗は数MΩ以下であり、実用上問題視するような静電気放出性の低下はないとのとの知見を得た。
【0008】
すなわち、好ましい態様の通電性中底は、上面側通電性層として、導電糸が少なくとも一本または適当な間隔で織り込まれるか編み込まれて作られる布帛を用い、前記導電糸が少なくとも第一趾中足骨頭ないし第二趾中足骨骨頭あたりを通るようにされており、下面側通電性層として、網状、膜状又はシート状の通電性のものを用いる。
【0009】
本発明の帯電防止性靴は、上記の通電性中底を用いた帯電防止性靴であって、甲皮下縁部が周縁部に縫合された通電性中底の下面側通電性層に、射出または注入により成形される通電性靴底が直に接合してなることを特徴とする。
【0010】
本発明のもう一つの態様の帯電防止性靴は、上記の通電性中底を用いた帯電防止性靴であって、甲皮下縁部が周縁部に縫合された通電性中底の下面側通電性層に、通電性靴底が直に接合してなり、下面側通電性層は、弾性層の下面側に通電性靴底を接着する導電性接着剤が固化した層であることを特徴とする。
【0011】
好ましい態様の帯電防止性靴は、通電性中底の下面側通電性層の単位面積あたりの電気抵抗が1MΩ以下であり、通電性靴底の体積固有抵抗率が100M〜10000MΩ・cmである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の通電性中底は、弾性体として絶縁性のものを用いているので製造コスト面で有利なことはもちろん、周縁部が縁縫いによりしっかりしているので中底の周縁部と甲皮の下縁部との縫合が行いやすいという効果を奏する。また、この通電性中底は、上面側通電性層と下面側通電性層との導通が、中底の周縁部に施された導電糸によって行われるので、異物感が無くクッション性が良好である。
好ましい態様の通電性中底は、布帛に用いた導電糸により足から通電性中底自体へ静電気を流す経路を形成するものであり、その上、下面側通電性層が、網状、膜状又はシート状の通電性のものであるので下面側通電性層から通電性靴底への静電気の流れを下面側通電性層全面にわたり均等にすることができ、通電性靴底の静電気放出性能を良好に引き出す。
【0013】
本発明の帯電防止性靴は、中底として下面側通電性層全面から静電気を均等に流すものを用いていることにより、通電性靴底は全面にわたって上面から接地面へほぼ均等に静電気を流すことができるものであり、静電気放出性が良好である。
また、好ましい態様の帯電防止性靴は、下面側通電性層の単位面積あたりの電気抵抗が1MΩ以下であるので静電気放出の水準からすれば導電性であり、そのため、いっそう下面側通電性層から通電性靴底への静電気の流れを下面側通電性層全面にわたり均等にすることができるとともに、通電性靴底の体積固有抵抗率が100M〜10000MΩ・cmであることにより、通電性靴底の厚さ及び靴底意匠にもよるが、通電性靴底の電気抵抗(通電性靴底の上面と接地面との間)が概ね1M〜200MΩとなるので、いっそう静電気放出性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明を図面に基づいて説明する。
本発明の通電性中底1を、上面側(接足面側)からみた斜視図を図1に示し、下面側(接地面側)からみた斜視図を図2に示す。通電性中底1は、弾性層2の上面側と下面側とに、通電性層3、4が接合されるとともに、中底の周縁部に導電糸6によって縁縫い5(縁かがり縫い)が施されている。
【0015】
上面側通電性層3は、編布、織布、不織布などの布帛が、中底形状とされたときに内側と周縁部との間に静電気を流す通電経路が付与された通電性ものである。この通電経路の付与は、布帛を構成する繊維や糸に導電性のものを用いても良いし、布帛に導電処理したものでも良い。導電処理としては、無電解メッキ処理、導電ポリマー処理、金属蒸着処理、導電性物質の含浸処理などが挙げられる。
その中で、上面側通電性層は、製造コスト、風合いなどの理由で以下のような布帛が好ましい。好ましい布帛は、導電糸7が少なくとも一本織り込まれるか編み込まれて作られた布帛であり、導電糸が第一趾中足骨骨頭ないし第二趾中足骨骨頭あたりを通るようにされており、好ましくは踵骨あたりも通るようにされている。以上のような部位は足圧が大きくかかる部位なので、この部位に導電糸が通るようにされていると足から通電性中底へ静電気を流しやすい。また、この布帛は導電糸が5mm間隔以上で織り込まれるか編み込まれたものが好ましい。導電糸の間隔が小さいと布帛自体の製造コストが高くなる。この布帛は、編布のときは、よこ編又はたて編の糸として導電糸を挿入して編成されたものであり、織布のときは、たて糸及びよこ糸の少なくともいずれかの糸として導電糸を挿入して織成されたものである。また、この布帛が織布のときは、挿入した導電糸7が一方の表面に現れる度合いを増やした綾織や朱子織にして、導電糸7が多く現れる側を弾性層の反対側とし、縁縫い5の導電糸6と導通しやすいようにすることが好ましい。
なお、この布帛の導電糸以外の糸としては、ポリエステル、ナイロンのフィラメント糸や紡績糸、ポリエステル、ナイロンのステープルとレーヨンのステープルや綿などの混紡糸などが使用できる。
以上のように、好ましい上面側通電性層3は、導電糸7が布帛自体を構成する糸として用いられ、さらに導電糸の使用量が少なくされているので、導電糸による異物感がないとともに材料コスト面で有利である。
【0016】
布帛を構成する導電糸7及び縁縫い5に用いる導電糸6は、例えば、金属繊維、炭素繊維、無電解メッキ処理繊維などを含有する糸、カーボンや導電性金属化合物を含有する糸などが挙げられる。布帛に用いる導電糸7は、10cm長さ間の電気抵抗において1KΩ以下が好ましく、100Ω以下がより好ましい。この程度以下の電気抵抗のものは静電気放出の水準からすれば導電性であり、上記布帛に織り込まれるか編み込まれた導電糸7は、人体のいずれかの部分との間の電気抵抗が小さくなったところから大量に静電気を流すことができる。すなわち、上面側通電性層3と人体とは、部分的にでもその間の電気抵抗が小さくなれば静電気は十分に流れるため、導電糸7が少なくとも一本織り込まれるか編み込まれて作られた布帛でよい。
また、縁縫いに用いる導電糸6は、10cm長さ間の電気抵抗において10KΩ以下が好ましく、1KΩ以下がより好ましい。縁縫い用の導電糸6の電気抵抗の方が高くてもよい理由は、導通させようとする距離が短いからである。
【0017】
下面側通電性層4は、中底形状とされたときに、内側と周縁部との間に静電気を流す通電性のもの、具体的には網状、膜状又はシート状の通電性のものであり、上面側通電性層と同様な材料が使用できる他、金属箔や金網、導電性接着剤の固化により形成された膜のような層であってもよい。導電性接着剤の固化による場合は、縁縫い5を施した後の導電糸6の上に導電性接着剤を塗布して下面側通電性層を形成してもよい。これらの中で、下面側通電性層としては、布帛に導電性接着剤を含浸して固化させたシート状ものが、材料コスト、製造工程での他の部材との接合性などの理由で好適である。導電性接着剤は、カーボンなどの導電性物質をバインダー物質に分散させたものである。
下面側通電性層4を、メッシュ布や金網などの網状の通電性のもので形成する場合は、通電性靴底10の厚さにもよるが、この靴底10の厚さが10〜25mm程度であれば目開きが5mm以下とすることで通電性靴底10の静電気放出性能を良好に引き出すことができる。
この下面側通電性層4は、単位面積あたりの電気抵抗において1MΩ以下が好ましく、100KΩ以下がより好ましい。この程度以下の電気抵抗であることにより、下面側通電性層4から通電性靴底10への静電気の流れを下面側通電性層全面にわたりほぼ均等にすることができる。
なお、本発明のいう単位面積あたりの電気抵抗は、図6に示すように金属クリップで端部をクリップした正方形の通電性層の両端に(例えば幅1cm、長さ1cmの通電性シートの両端に)、抵抗値に応じて適当な電圧を加えたときに流れる電流値から算出する。
【0018】
弾性層2は、ポリウレタン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体などの合成樹脂製発泡体をシート状に成形した絶縁性弾性体が好適であり、また、繊維材で形成したウェブ、不織布、パイル生地なども使用できる。弾性体の厚さは、中底を甲皮に縫合する必要があるので2〜6mmとすると良い。
【0019】
中底の周縁部に施す縁縫い5は、直線縫い、複列縫い、千鳥縫いなどの縫い方でよいが、JISL0120に説明されている縁かがり縫いが好適である。縁かがり縫いは、例えば図3に示すように中底の端面に糸のループが現れるようにされているものであり、糸により弾性層が歪む程度の張力で縫いを施すと良い。その際、導電糸7が織り込まれるか編み込まれたて作られた布帛を上面側通電性層3として用いる場合は、導電糸6の送り部分Lが存在する側を、上面側通電性層側と一致させることにより、縁かがり縫いの導電糸6と布帛の導電糸7との導通が確実なものとなる。縁縫いを、縁かがり縫いによって行えば、中底の周縁部がよりしっかりして、甲皮の下縁部との縫合がいっそう行いやすい。
【0020】
通電性中底1においては、上面側通電性層3の第一ないし第二趾中足骨骨頭あたりの導電糸7と、ちょうどこの位置の下側面に相当する位置の下面側通電性層4との間の電気抵抗が1MΩ以下であることが好ましく、100KΩ以下がより好ましい。この電気抵抗が1MΩ以下が好ましい理由は、本発明がより効果を発揮するのは、靴底の電気抵抗(靴底の上面と接地面との間)が概ね1MΩ以上のものであり、靴底の電気抵抗と同程度であれば靴底の静電気放出を阻害する要因とはならないと考えられるからである。
【0021】
通電性靴底10は、中底周縁部を甲皮下縁部に縫合して袋状にした図4に示すような甲材9を靴型(ラストモールド)に被せ、これと底型(ボトムモールド)などに組み合わせて靴底成形空間を形成し、この空間に通電性靴底材料を射出又は注入することにより、成形されると同時に中底及び甲皮下縁部に直に接合する方式による靴底であってもよいし、中底周縁部を甲皮下縁部に縫合して袋状にした甲材9を靴型に被せ、中底の下面に導電性接着剤を塗布し、ここに通電性靴底を直に接合する方式による靴底であってもよい。後者の方式で用いる導電性接着剤は、固化することにより本発明でいう下面側通電性層4となる。
なお、中底周縁部と甲皮下縁部との縫合は、両者を合掌状に重ねるとともに両者の端面を揃えて縫合する方式が作業性がよい。また、中底周縁部と甲皮周縁部との縫合には、糸として導電性のものを用いる必要はない。
【0022】
通電性靴底の材料は、導電性金属化合物、カーボン、界面活性剤などを混入したゴム、合成樹脂が使用できる。通電性靴底を構成する材料の体積固有抵抗率(JISK6911)は100M〜10000MΩ・cmであることが好ましい。体積固有抵抗率が100MΩ・cm未満であると製造コスト、物性の面で不利であり、10000MΩ・cm超であると靴底の上面と接地面との間の電気抵抗が200MΩ程度以上となることがあり、ひいては帯電防止性靴の静電気放出性が極端に悪化することがある。
【実施例】
【0023】
(実施例1)・・通電性中底Aの作製
上面側通電性層3として、導電糸7をたて糸として10mm間隔で朱子織にて織り込んで導電糸が表面に現れる度合いを高めた朱子織布を準備した。導電糸7は導電性繊維とポリエステルフィラメント糸を撚糸した10cm長さ間の電気抵抗が100Ωのものである。弾性層2として、厚さ3.5mm、比重0.2のエチレン酢酸ビニル重合体の発泡体からなる絶縁性の弾性体を準備した。下面側通電性層4として、カーボン含有の導電性接着剤を平織布に含浸・固化させた単位面積あたりの電気抵抗が15KΩのカーボン含有平織布を準備した。これらの上面側通電性層、弾性層、下面側通電性層をこの順で接着剤にて接合して三層構造のシートを作製し、これを靴に合った形状に裁断したのち、10cm長さ間の電気抵抗が6KΩの導電糸6でその周縁部に図3に示す縁かがり縫い5を施して靴サイズ26cm用の通電性中底Aを作製した。
この通電性中底の第二趾中足骨骨頭あたりの導電糸7と、この導電糸の位置の下面側に相当する位置の下面側通電性層との間の電気抵抗は50KΩであった。
【0024】
(実施例2)・・通電性中底Bの作製
下面側通電性層として、カーボン含有平織布の単位面積あたりの電気抵抗が200KΩのものを用いた以外は、実施例1と同様にして通電性中底Bを作製した。
この通電性中底の第二趾中足骨骨頭あたりの導電糸7と、この導電糸の位置の下面側に相当する位置の下面側通電性層との間の電気抵抗は700KΩであった。
【0025】
(実施例3)・・帯電防止性靴Aの作製
実施例1の通電性中底Aを用いて、この中底Aに甲皮下縁部を縫合して袋状の甲材を作製し、これを靴型に被せて射出成形法による体積固有抵抗率が2050MΩ・cmの通電性靴底を通電性中底Aの下面に直に接合して帯電防止性靴Aを作製した。
なお、靴底材料としては、四級アンモニウム塩を混合した発泡倍率2倍程度のポリウレタン原料を用い、靴底は平均厚さ15mmに成形した。この帯電防止性靴AのJIST8103に準拠して測定した電気抵抗は30MΩであった。
【0026】
(実施例4)・・帯電防止性靴Bの作製
通電性中底Aを通電性中底Bに変更した以外は、実施例3と同様にして帯電防止性靴を作製した。この帯電防止性靴のJIST8103による電気抵抗は30MΩであった。
【0027】
(実施例5)・・帯電防止性靴Cの作製
下面側通電性層として、通電性中底Aにおけるカーボン含有平織布を変更して、カーボンを含有しない平織布を用いた以外は、実施例1と同様にして中底を作製し、この中底に甲皮下縁部を縫合して袋状の甲材を作製し、これを靴型に被せてから中底の下面の平織布及び縁かがり縫いの導電糸の露出部分に導電性接着剤を塗布したのち、別途作製の体積固有抵抗率が500MΩ・cmのカーボン含有のゴム製靴底を接合して帯電防止性靴Cを作製した。この帯電防止性靴のJIST8103による電気抵抗は5MΩであった。
また、この帯電防止性靴の靴底部分を削り取って、導電性接着剤の固化した膜状の部分(下面側通電性層)の単位面積あたりの電気抵抗を測定したところ50KΩであった。
【0028】
(実施例6)・・通電性中底Dの作製
下面側通電性層として、通電性中底Aにおけるカーボン含有平織布を変更して、上面側通電性層と同じ朱子織布を用いた以外は、実施例1と同様にして通電性中底Dを作製した。
この通電性中底の第二趾中足骨骨頭あたりの導電糸と、この導電糸の位置の下面側に相当する位置の下面側通電性層との間の電気抵抗は200KΩであった。
【0029】
(実施例7)・・帯電防止性靴Dの作製
通電性中底Dを用いて、実施例3と同様にして帯電防止性靴Dを作製した。この帯電防止性靴のJIST8103による電気抵抗は90MΩであり、この値は実施例3の3倍であり、やや靴底の静電気放出性能を引き出せないものであった。
【0030】
(実施例8)・・通電性中底Eの作製
下面側通電性層として、通電性中底Aにおけるカーボン含有平織布を変更して、目開き2mmのメッシュ布の無電解メッキ処理品(単位面積あたりの電気抵抗は10Ω以下)を用いた以外は、実施例1と同様にして通電性中底Eを作製した。
この通電性中底の第二趾中足骨骨頭あたりの導電糸7と、この導電糸の位置の下面側に相当する位置の下面側通電性層との間の電気抵抗は10Ω以下であった。
【0031】
(実施例9)・・帯電防止性靴Eの作製
通電性中底Eを用いて、実施例3と同様にして帯電防止性靴Dを作製した。この帯電防止性靴のJIST8103による電気抵抗は30MΩであった。
なお、以上において、導電糸、下面側通電性層に関する部分の電気抵抗の測定は、1KΩ未満は印加電圧3V、1KΩ以上は印加電圧9Vで行った。
【0032】
実施例3、4、5、7、9の帯電防止性靴は、縁かがり縫いした中底を用いたので、製造過程において中底周縁部と甲皮下縁部との縫合が行いやすいものであった。また、これらの帯電防止性靴は異物感が無く良好なクッション性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の通電性中底を説明するために一部を切り欠いた上面側斜視説明図。
【図2】本発明の通電性中底の下面側斜視説明図。
【図3】縁かがり縫いの説明図。
【図4】通電性中底と甲皮との縫合の態様の説明図。
【図5】本発明の帯電防止性靴を説明するために半分を切り欠いた側面説明図。
【図6】電気抵抗測定の説明図。
【符号の説明】
【0034】
1・・・通電性中底、2・・・弾性層、3・・・上面側通電性層、4・・・下面側通電性層、5・・・縁縫い(縁かがり縫い)、6・・・導電糸、7・・・導電糸、8・・・甲皮、9・・・甲材、10・・・通電性靴底、11・・・帯電防止性靴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性層の上面側に上面側通電性層、下面側に下面側通電性層が配置される中底であって、
弾性層は絶縁性であり、
中底の周縁部に施された縁縫いの導電糸により、両通電性層が導通されることを特徴とする通電性中底。
【請求項2】
上面側通電性層は、導電糸が少なくとも一本または適当な間隔で織り込まれるか編み込まれて作られる布帛であるとともに、導電糸が少なくとも第一趾中足骨頭ないし第二趾中足骨骨頭あたりを通るようにされており、
下面側通電性層は、網状、膜状又はシート状の通電性のものであることを特徴とする請求項1に記載の通電性中底。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の通電性中底を有する帯電防止性靴であって、
甲皮下縁部が周縁部に縫合された通電性中底の下面側通電性層に、射出または注入により成形される通電性靴底が直に接合してなることを特徴とする帯電防止性靴。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の通電性中底を有する帯電防止性靴であって、
甲皮下縁部が周縁部に縫合された通電性中底の下面側通電性層に、通電性靴底が直に接合してなり、
下面側通電性層は、弾性層の下面側に通電性靴底を接着する導電性接着剤が固化した層であることを特徴とする帯電防止性靴。
【請求項5】
通電性中底の下面側通電性層の単位面積あたりの電気抵抗が1MΩ以下であり、通電性靴底の体積固有抵抗率が100M〜10000MΩ・cmであることを特徴とする請求項3又は4に記載の帯電防止性靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−282881(P2007−282881A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114117(P2006−114117)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】