説明

通風手段を備える安全ヘルメット

【課題】通風手段を備える安全ヘルメットを提供する。
【解決手段】本発明の安全ヘルメット1は、外側シェル2と、そのシェルの内側に位置している少なくとも1つの衝撃吸収材層3と、シェル2に設けられ、少なくともそこを通過することにより、流体的に外部環境とヘルメット1の内側を接続させる、少なくとも1つの流入口5.2と、流体的に流入口5.2に接続され、かつヘルメット内側の面した1つ以上の流出孔6を備える、1つ以上の通風ダクト5とを有し、前記ヘルメット1は、少なくとも空気を部分的に透過させ、概ね非圧縮的、または部分的に圧縮的であって、空気の流れを分散する少なくとも1つのパッド層10を有することを特徴とし、分散層は通風ダクト5の1つ以上の孔に配置されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘルメットの内側に空気を通すことにより、使用者の快適性を高める通風手段を備える安全ヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
オートバイや自動車の分野で使われる安全ヘルメットは外側シェルを備え、その内部には、転倒時において、すなわち地面や他物等との衝撃の際において、使用者の頭部を保護する衝撃吸収材層が挿入されている。
【0003】
保護層とも呼ばれる衝撃吸収材層の内面下には、ライナまたは内部パッドとも呼ばれる「快適層」が通常設けられ、この「快適層」は、使用者の頭部と保護層との直接的な接触、すなわち衝撃吸収材との直接的な接触を防止している。
【0004】
繊維または多層状の繊維でカバーされた発砲ゴムである、ヘルメットの快適層並びに、一般的には発砲ポリマー(例:発砲ポリスチレン)からなる保護層を形成する材料では、十分な通気性を提供することが難しく、使用者が発生する熱や湿気がヘルメットの内側で貯留してしまう。
【0005】
結果的に、ヘルメット内側の熱および湿気は好適には放散されず、特に夏季において、ヘルメット内側の温度上昇に伴う発汗および湿気による不快感のため、使用者の快適性は著しく損なわれてしまう。
【0006】
これらの理由から、オートバイの分野で現在用いられるヘルメットには、孔が設けられており、この孔により、外気をヘルメットの内側へ導いて、ヘルメットの内側で発生した熱と湿気とを発散させている。
【0007】
通常、これらの孔は、例えばバイザ上部のエリア、またはその横方向など、外側シェルの前側に設けられている。そして周知の解決法によれば、外側シェルの内部に通じる関連する孔を通り、もし必要なら、衝撃吸収材層にも伸びる関連する孔も通り、前述の快適層を経由して、使用者の頭部へ空気を流している。例えば、エベリット ダブリュー ベロ(Everitt W. Vero)会社の名義で出願された特許文献1は、ヘルメットのバイザの開口部の側方に孔が設けられた同様のヘルメットを開示している。しかしこれらの孔によっては、温度を、一定限度までしか下げることはできない。
【0008】
実際に、外側シェルの内側へ通じるこれらの孔においては、外側からの空気は、必要に応じて保護材の層を通ったとしても、使用者の頭部の限られた部分、すなわち、これら孔が位置する部分にしか届かないことは明らかである。他方、ヘルメット内部の快適層により、空気が使用者の頭部へ広がるのを制約される。
【0009】
勿論、外側シェルに設けられている孔の数は、安全ヘルメットの構造上の弱体化を防ぐために、制限しなくてはならない。従って、従来技術での解決法によれば、空気を流入する孔は1つしかなく、しかもこの孔は、衝撃吸収材層に設けられている経路と直接的に接続されているので、前方の入口孔を経由して流入してくる空気は、使用者の頭部の異なる部分へ到達するよう分散される。例えば、ショウエイ(Shoei)の名義で出願された特許文献2は、この種の解決法を開示している。
【0010】
しかし、安全ヘルメットの内側へ空気を通す適切な孔を有する前述したような経路があっても、空気分散の効果が高いとはいえない。実際のところ、経路は、使用者の頭部と接触した後に、快適層により妨げられてしまい、衝撃吸収材層に付着してしまう恐れがある。
【0011】
ヘルメット内側の通気性を更に高めるため、空気分散ダクトがヘルメットの内側に設けられている。このダクトは、外部環境とつながる入口へ接続され、衝撃吸収材層またはその下側に伸び、かつ使用者の頭部の異なる部分へ到達するよう、複数の孔が設けられている。
【0012】
この種の通風システムは、ホンダ(Honda)社の名義で出願された特許文献3に開示されたヘルメットの内側に適用されており、弾性材で作られたダクトが、衝撃吸収材層と、使用者の頭部に接触する快適層との間に配置されている。通風ダクトは、前方の入口と後方の出口を経て、外部環境へ接続されている。このダクトに沿って、ヘルメットの内部に面する複数の孔が設けてられている。これら孔は、快適層に設けられている孔に対応して配置されている。
【0013】
この解決法には幾つかの欠点がある。ダクトの流出孔は、空気の流れを妨げないために、快適層に設けられている孔と正確に対応するよう配置しなければならない。
【0014】
また、使用者がヘルメットを装着した時に、使用者の頭部が、快適層、特に関連する繊維あるいは発砲ゴムを圧迫し、ダクトに設けられた孔の近くにおいて、孔から出てくる空気の流れを妨げてしまう。そのため、空気の流れは、孔の場所に限定されてしまい、ヘルメット内側の通風、および発生する熱を十分に分散させることはできない。
【0015】
実際に、快適層により、空気が孔から出てくることが妨げられ、かつ使用者の頭部により、孔の近くにある快適層は圧迫されるため、空気はうまく分配されず、使用者の頭部の広範囲には届かない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】英国特許公報1456824
【特許文献2】ヨーロッパ特許公報0571065
【特許文献3】米国特許公報4519099
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、空気が、特に使用者の頭部の広い範囲に届くように、改良された内部通風手段を備えるヘルメットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的は、請求項1に係る安全ヘルメットにより達成される。本発明のその他の詳細な特徴については、従属請求項に記載してある。
【0019】
本発明に係る安全ヘルメットは、外側シェルと、この外側シェルの内側に設けられた少なくとも1つの衝撃吸収材層と、外側シェルに配置され、そこを通過することにより、外部環境とヘルメットの内側とを流体的に接続させる入口と、その入口と流体的に接続され、ヘルメットの内側に面した1つ以上の流出孔を備える1つ以上の通風ダクトを有し、少なくとも空気を部分的に通過させ、概ね非圧縮的または部分的に圧縮可能であって、空気の流れを分散する少なくとも1つのパッド層を有し、この分散層は、通風ダクトの1つ以上の孔の下側に配置されていることを特徴としている。
【0020】
分散層により、通風ダクトの流出孔から出てくる空気の分散を高めることができるので、ヘルメットの内側の通風性は高められ、その結果、使用者がヘルメットを着用した際に、圧迫されることなく、内側の熱の消散は高められる。
【0021】
空気の流れを分散するこの層は、3次元の繊維からなるのが好ましく、一般には、この層を空気を一斉に通過させる、概ね非圧縮性の繊維で作られる。
【0022】
この素材により、通風ダクトに設けた孔から出てくる空気の分散を均等にして、現在市場に出ているヘルメットに搭載された通風システムと比べて、より広範なエリアに空気を分散させるようにするのが好ましい。
【0023】
その他の異なる実施可能な形態によれば、前述の分散層は、少なくとも1つの流出孔の近くに位置しているか、またはより広範なエリアに伸びており、かつこの空気を分散する層は、衝撃吸収材層の内側の概ね下方に伸びている。
【0024】
実施可能な形態によれば、通風ダクトまたはヘルメットのダクトは、おおむね管状で、ヘルメットの他の部品とは別に形成してもよく、また、例えば、適当な形状で、底部において閉じられ、かつ少なくとも1つの流出孔を備える、ヘルメットの層に設けた通路を通して、衝撃吸収材層に部分的に直接設けてもよいことに留意しなければならない。
【0025】
実施可能な形態によれば、本発明に係るヘルメットは、2つ以上の通風ダクトを備え、各ダクトは、少なくとも1つの管部を有し、これらのダクトは、ヘルメットの他の部品とは別に形成された後、ヘルメットの内側に挿入され、ヘルメットに対して容易に着脱できる1つの部品を形成するため、小さなシェル状とされている。
【0026】
更に、衝撃吸収材層は、ダクトの少なくとも一部を収容するくぼみにより、ヘルメットに設置された通風ダクト、またはダクトを衝撃吸収材層の下側から突出させないように、少なくとも一部をその中に収容するように形成されている。
【0027】
本発明の別の局面によれば、ヘルメットは、1つ以上の通風ダクトの下側に配置されている、一般にはライナと呼ばれる快適層を有している。この快適層は、通風ダクトの1つ以上の孔にある、少なくとも1つのスロットを有しているのがよく、これにより、ヘルメットの内側の孔から出てくる空気の通過を容易にする。また、空気の流れを分散する層を、快適層が設けられている1つ以上のスロットに対応して設けるのが好ましい。
【0028】
このように、快適層をヘルメットに設けた際に、ヘルメットの内側の孔から出てくる空気の通過を容易にするため、スロットが、通風ダクトにおける各流出孔のところに設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】通風ダクトを含む面における、本発明の安全ヘルメットの縦断側面図である。
【図2】本発明に係る安全ヘルメットの縦断正面図である。
【図3】本発明に係る安全ヘルメットに取付け可能な1つの部品とされている2つの通風ダクトの斜視図である。
【図4】外側シェルおよび衝撃吸収材層を備える、本発明に係る安全ヘルメットの下面図である。
【図5】2つの通風ダクトをもって、1つの部品を形成するようにした図4に係るヘルメットの下面図である。
【図6】図3に示す通風ダクトに、空気の流れを分散する層を設けた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、添付の図面を参照しながら、単なる非限定的な例としての、本発明のいくつかの好適な実施形態について説明する。
【0031】
添付の図面からわかる通り、本発明に係る、例えばオートバイ用に適している安全ヘルメット1は、保護層としても知られている衝撃吸収材層3を内部に配置した外側シェル2を備えており、衝撃吸収材層3によって、地面や異物等と衝突した場合、使用者の頭部を保護するようになっている。
【0032】
例えばポリカーボネートからなる外側シェル2は、周知の通り、使用者の頭部を保護する部分と、少なくとも1つのバイザと連結するようになっている少なくとも1つの部分とを有している。
【0033】
保護層3は、例えば発泡性ポリスチレン(EPS)のような、膨張性の材料で作られており、必要に応じて、衝撃を効果的に吸収するようになっている。
【0034】
図1および図2にヘルメット1の断面が示されている、本発明の特定の実施形態において、衝撃吸収材層3には、取外し可能で、かつ一体化しうる上部挿入体3.1が設けられている。以後、上部挿入体3.1の有無に関係なく、衝撃吸収材層3についてのみ説明する。
【0035】
また添付の図面において、シェル2は部分的に示されており、バイザ、顎保護具、顎紐等、オートバイ用のヘルメットに通常取り付けられている構成要素は、省略されている。これらの構成要素については、異なる製品を選ぶことが可能であり、またいかなる場合においても、これらの要素は、本発明の範囲に含まれないので、ここでの説明は省略する。
【0036】
外から来る空気を捉えて、ヘルメット1の内側に送るようにするため、本発明に係るヘルメット1では、シェル2に、空気が流入する少なくとも1つの入口孔4が設けられ、この入口孔4により、外部環境とヘルメット1の内部とは流体的に接続されている(図1)。
【0037】
図1の縦断面図に示す通り、このヘルメットは、少なくとも1つの入口孔4を有しており、この入口孔4は、シェル2と衝撃吸収材層3を貫通している。
【0038】
しかしながら、本発明の別の実施形態として、少なくとも1つの入口孔4を、ヘルメット1のシェル2のみを通るようにして設けることも可能である。例えば、下層である衝撃吸収材層3が無い状態で、入口孔4を設けることもある。
【0039】
通常、この入口孔4は、バイザが係合する場所の上側において、シェルの前部に設けられるが、車両の前進中に、ヘルメット1の内側に外の空気を流入しうるようにする限り、この入口孔4を、シェル2の上面または側面に設けることもある。
【0040】
また本発明に係るヘルメット1は、少なくとも1つの入口孔4と流体的に接続された少なくとも1つの通風ダクト5を有しており、この通風ダクト5は、ヘルメット1の内側を伸びて、少なくとも一部は、前述した衝撃吸収材層3の下側に位置しており、この入口から入ってくる空気の流れを、通風ダクト5の下面に設けた1つ以上の流出孔6へ、すなわち、シェル2の内側へ導くようになっている。
【0041】
これら流出孔6は、ヘルメット1の内側に面しており、通風ダクト5からヘルメット内側へ、特に使用者の頭部の方へ、空気を通過させるようになっている。
【0042】
すなわち通風ダクト5は、ヘルメット1のシェル2に設けられ、かつそこを通って入口孔4と接続されている流入孔5.2と、通風ダクト5の下面に沿って、すなわち、ヘルメット1の内側に向かう複数の流出孔6とを有する。
【0043】
本発明の別の実施形態によれば、図示はしていないが、各ダクト5の流入孔5.2は、ヘルメット1のシェル2に設けられた入口孔4へ別々に接続されている。
【0044】
図示のように、ヘルメット1が少なくとも2つの通風ダクト5を有する場合には、これらの流入孔5.2は、流体的に1つ以上の入口孔4へ接続されている。
【0045】
ダクト5の長さおよび形態、そして関連する流出孔6の形状および配置により、空気の流れを使用者頭部の異なる場所へ送ることが可能になる。これらが頭部の上方へ伸びていること、場合よっては、ヘルメット1の後方まで届いていることが好ましい。
【0046】
さらに、設計段階において、通風ダクト5の長さ、横方向のサイズ、およびその上にある流出孔6の数は変更可能であるので、その他の特徴と合わせて、空気を内側へ送るための、流体の動的パフォーマンスを異なるものにすることができる事は明らかである。
【0047】
特に流出孔6の直径により、ヘルメットの内側の異なる場所において、入ってくる空気の流れを変えるように調整することができる。この点に関して、流出孔6の直径は、通風ダクト5の長手方向に沿って、変えることが好ましい。空気が入ってくる入口孔4に一番近いダクト5に沿って位置している流入孔6は、入口孔4からより遠い場所にある通風ダクト5に沿って連続して位置する孔と比べて、その直径が小さく、各流出孔6から出てくる空気の流れは概ね一定となっている。
【0048】
ここで図示されている本発明の特定の実施形態において、ヘルメット1は、複数の流出孔6を備える2つの通風ダクト5を有し、これら流出孔6は、各ダクト5の下面に沿って、すなわち、外側シェル2の内側に面している通風ダクト5の表面に沿って設けられている。
【0049】
通常、これらの通風ダクト5は、少なくとも1つの管状部を有しており、適宜の周知の製造方法により、ヘルメットの材質とは別の変形可能な材質で、例えば1つの部品として、または2つ以上の部品を組み合わせて、製造することが好ましい。
【0050】
本発明の1つの局面によれば、ヘルメット1に設けられている通風ダクト5は、変形可能で衝撃を吸収しうるように、弾性材料、または便宜の柔軟な材料(例えばポリ塩化ビニル、ラテックス、シリコン等)からなる、別々の管で構成されている。
【0051】
本発明の別の可能な実施形態によれば、ここには示していないが、通風ダクト5の少なくとも一部分を、例えば、表面の底部において閉じられている衝撃吸収材層3の内側で掘削された通路(ヘルメット1の内側に向かって)により、あるいは1つ以上の流出孔6が設けられた同様の補完的な部分により、衝撃吸収材層3の内側に位置させることができる。
【0052】
ヘルメット1の他の構成要素に対して、ダクト5が別々に設けられる場合において、衝撃吸収材層3の内側に、通風ダクト5の管部の少なくとも一部を収容するようにしてもよい。
【0053】
この場合、衝撃吸収材層3には、その下面において、ヘルメット1の内側で不格好に突出することがない通風ダクト5の少なくとも一部を収容する、凹入くぼみ7が設けられている。
【0054】
通風ダクト5を収容するくぼみ7を示す図4に示すように、これらのくぼみ7は、そのくぼみ7に収容される通風ダクト5の形状に幾何学的に対応するように、形成されている。
【0055】
実際にダクト5は所定の形状としておくことが好ましく、ヘルメット1の内側に配置したとき、特に衝撃吸収層3に設けられたくぼみ7に配置したとき、この形状を保持するようになっている。ここでは図示していないが、本発明の更なる実施形態においては、通風ダクト5の形状を変更可能として、衝撃吸収材層3上にあるくぼみ7の形状に適合するような形状とされることができる。
【0056】
ここで述べるヘルメット1において、対応するくぼみ7の内部に設置されている通風ダクト5は、衝撃吸収材層3の下面3.2から突出することはなく、そして流出孔6が設けられているダクトの表面は、そこから突出することがないよう、衝撃吸収材層3の下面3.2と同じか、またはそれより低いことが好ましい。
【0057】
ここに図示する本発明の一実施形態において、少なくとも1つの管部を有する通風ダクト5は、1つの部品をこれらダクト5の間において形成可能な、例えばプレートのような1つ以上の連結要素5.1により、相対的に制約可能である。これにより、ヘルメット1の内側からダクトを設置および除去する作業は容易となっている。
【0058】
それ故、別々の部品として得られる管で構成される場合において、2つ以上のダクト5の管部またはダクト5自身は、1つの部品を構成するようにすることができる。図3の透視図は、ここに図示したヘルメットの2つの通風ダクト5を示しており、この通風ダクト5は、弾力的な材料からなる管で構成され、2つの連結要素5.1で相互に結合することにより、小さなシェルのような1つの部品とされている。
【0059】
図3に示すように、ここで述べるヘルメット1の2つの通風ダクト5は、シェル2の後部に届くように十分に長い管状に形成され、空気の流れる方向へ別々に伸びている。一方、2つの連結要素5.1はフラットな要素で構成され、ダクト5の軸線に対して概ね横方向を向き、かつ同図に示すように、その内側に空気が通るようにはなっていない。
【0060】
しかしながら、別の実施形態によれば、2つ以上の通風ダクト5の間にある連結要素5.1は、その中に空気を通すように構成され、かつ流出孔6が設けられている。
【0061】
衝撃吸収材層3との連結が容易になるよう、タブ5.3が、通風ダクト5の周辺に設けられていることに留意されたい。
【0062】
図4および図5は、使用者がヘルメットを被せるための開口部を示すヘルメット1の底面図であり、それぞれ、内部に通風ダクト5がない場合、およびある場合における、シェル2と衝撃吸収材層3を示している。
【0063】
図5は、通風ダクト5が少なくとも1つの管部を有するヘルメット1の底面図であり、各通風ダクト5は、相互に連係して1つの部品とされ、衝撃吸収材層3に設けた凹入部7の中部に収容されている。
【0064】
本発明に係るヘルメット1は、少なくとも空気の一部を透過させるようになっており、概ね非圧縮性または部分的に圧縮性であって、通風ダクト5に設けられた流出孔6から出てくる空気の流れを分散するパッド層10を有している。このパッド層10は、通風ダクト5の流出孔6の少なくとも下側に配置され、流出孔6から出てくる空気を良好に分散させ、かつヘルメット内部の通風性を改善させて、内部の熱および湿気の分散を高めるようになっている。
【0065】
流出孔6から出てくる空気の流れを分散させるパッド層10は、3次元の繊維(3D繊維)からなっていることが好ましい。
【0066】
公知のように、3次元の繊維とは、異なる繊維ファイバが、3つの直交軸まわりに配置して織られた、特殊なタイプの繊維であり、このような繊維は、十分な非圧縮性を有し、かつ流体に対して透過性であるので、繊維が部分的に圧縮されても、空気を通すことを可能にする。
【0067】
これ以降、「十分な圧縮性」または「部分的な圧縮性」とは、流体に対する透過性を失うまで圧縮することではなく、繊維またはパッド層10の性質、すなわち、ファイバ間または要素間に、この繊維またはパッド層10が圧縮された場合でも、流体が通過しうる少なくとも自由なスペースもたせることが可能な性質を意味するものである。
【0068】
上述した通り、この材料により、通風ダクト5に設置された流出孔6から出てくる空気を均等に分散することができ、従って、現在市場に出まわっているヘルメットに搭載されている通風システムと比べて、より広範なエリアに空気を分散させることができる。
【0069】
さらに、非圧縮性を有するパッド層10の実質的な表面、特にパッド層が構成されている3次元の繊維は、通風ダクト5の流出孔に、使用者の頭部が直接的に接触するのを防止するので、頭部に対する空気の流れが遮断されることはなくなる。
【0070】
本発明の可能な実施形態によれば、パッド層10は、通風ダクト5に設けられた1つ以上の流出孔6の近くにのみ配置されている。
【0071】
また、空気の流れを分散するパッド層10は、広い表面に広がっており、かつ衝撃吸収材層3の内側全面の下側に概ね広がっていることが好ましい。
【0072】
ここで示す通り、ヘルメット1が、前述した連結要素5.1で相互に組み合わされている2つの通風ダクト5を備えている場合においては、空気の流れを分散するパッド層10は、通風ダクト5および関連する連結要素5.1の内側に配置してもよい。
【0073】
1つの部品を形成するよう相互に制約された通風ダクト5を形成する2つの管部を示している図6に示す(図3の実施形態においては)、パッド層10は、通風ダクト5および連結要素5.1で形成されたこの1つの部品の下側に配置され、かつこの部品に対して固定(例えば、接着または縫製)されていることが好ましい。
【0074】
このようにして、管状の通風ダクト5で構成されている集合体は、連結要素5.1、および空気の流れを分散する、透過性で非圧縮的なパッド層10により、ヘルメット1の他の要素からとは別体として構成され、かつ衝撃吸収材層3の下側において、外側シェル2の内側に容易に組み立てられる。この場合、前述の凹入部7が設置されているので、簡易に接着するか、または部材を並置するだけで、管状のダクト5を配置することができる。
【0075】
図6は、ダクト5と連結要素5.1によって定められるエリアを十分に覆うように伸びて、空気の流れを分散するパッド層10を示している。しかし、別の実施形態として、空気の流れを分散する、互いに分離した複数の領域を有するパッド層10とすることもでき、この場合、各々の領域は、通風ダクト5に、すなわち、関連する流出孔6に制約される。
【0076】
本発明の別の局面によれば、ヘルメット1は、周知の通り、ライナと呼ばれる快適層を有しており、使用者の頭と接触して、ヘルメット着用時おける快適さを高めるようになっている。
【0077】
添付の図面に示していないが、繊維または繊維で覆われた発砲ゴムで構成された快適層を、ヘルメット1の、通風ダクト5の下に配置することにより、特にこの快適層が、発砲ゴム等ではなく、適度な厚さの簡易な繊維で構成されている際には、空気の流れを分散するパッド層10を、通風ダクト5と快適層の間に配置することができる。
【0078】
事実、快適層が簡単な繊維で構成されている場合は、ヘルメット1を装着した際の快適性は向上するが、ヘルメット1の内側における空気の流れを完全には配分することはできない可能性がある。
【0079】
本発明の別の実施形態においては、ヘルメット1の内側の流出孔6から出てくる空気の通過を容易にするために、快適層には、通風ダクト5の1つ以上の流出孔6に配置された、1つ以上のスロット(すなわち、この快適層の内側にある、適切な場所の開口部を通る)を代わりに設けてもよい。
【0080】
この場合、空気の流れを分散するパッド層10は、快適層にあるスロットにのみ配置されることが好ましいので、この快適層は、好ましくは3次元繊維から作られたパッド層10により覆われた、空気の流れを分散する流出孔6をほぼ取り囲むことになる。
【0081】
当業者に明らかなように、この解決方法によれば、流出孔6から出てくる空気の流れは、いかなる不透過的な障害物により邪魔されないので、ヘルメット1の内側において、空気の流れは最適に分散され、また、快適層(この場合、繊維で覆われた発砲ゴムを備えた)が、ヘルメット1の内面の大部分に渡って伸びているので、ヘルメット1の装着感がきわめて快適になる。
【0082】
複数の流出孔6に対応して配置された複数のスロットを備え、かつ空気の流れを分散するパッド層10を内側に配置したことにより、パッド層のために好ましく使われる、3次元の繊維が有する剛性による不快感が、著しく和らげられることに留意しなければならない。
【0083】
この快適層に設けられている各スロットは、対応する流出孔と同じ直径、あるいは流出孔より大きい直径を有していることが好ましく、これにより、使用者がヘルメット着用した際に起こり得る、快適層の圧縮によって、通風ダクト5の流出孔6から出てくる空気の流れを、例え部分的にも、妨げることはない。
【0084】
幾つかの可能な実施形態によれば、前述のスロットの有無に関係なく、快適層を衝撃吸収材層3の内側全体に渡って伸びる複数の部品として構成することも可能であるが、通常は、1つの部品として形成される。
【0085】
この点に関して、通風ダクト5は、快適層、またはその幾つかの部分に対する支持部材としても作用していることに留意しなければならない。
【0086】
特に図3に示す実施形態において、すなわち2つ以上の通風ダクト5が連結要素5.1により相互に制約される場合において、前述の透過的かつ概ね非圧縮的なパッド層の他に、加圧することにより形成された1つの部品を、快適層またはその一部分を支持するように使用することができる。
【0087】
更に、本発明に係るヘルメットは、流体的に外部環境とヘルメットの内部とを接続する、1つ以上の流入口(図示せず)を付加してもよく、この流入口は、公知の通風システムを用いて通常は使用され、例えば、衝撃吸収材層において直接的に得られる空気の流れを運ぶよう、通路に接続してもよい。
【0088】
更に、このヘルメットでは、空気を抽出するための1つ以上の通風孔4.1をシェル2の後部に設け、この通風孔4.1により、流体的にヘルメットの内部と外部環境とを接続させるようになっている。
【0089】
空気を排出するための、オプショナルのこの通風孔4.1は、衝撃吸収材層3において直接得られる空気を運ぶ経路として、従来の通風システムに流体的に接続してもよく、また、ヘルメット1の内側の通風効果を更に高めるために、通風ダクト5の後部に接続してもよい。
【0090】
また、空気の流れを分散するパッド層10は、ヘルメットの内側と外部環境とを更に流体的に接続させるために、ヘルメットのシェル2の後部の下縁まで伸長させてもよく、これにより、通風を効率的に高めることができる。
【0091】
更に、ヘルメットのシェル2に設けられた入口孔4と通風孔4.1は、そこを通過することにより、外部環境とヘルメット内部とを流体的に接続させ、かつ必要に応じて、空気の流れを変化させ、例えば回転デフレクタのような、入口孔4と通風孔4.1の関係位置を変化させることができる、従来技術に準じた、空気の流れを調節する手段(ここでは示していない)を設けてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0092】
1 ヘルメット
2 外側シェル
3 衝撃吸収材層
3.1 上部挿入体
3.2 下面
4 入口孔
4.1 通風孔
5 通風ダクト
5.1 連結要素
5.2 流入孔
5.3 タブ
6 流出孔
7 凹入部
10 パッド層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの外側シェル2と、前記外側シェル2の内側に位置する少なくとも1つの衝撃吸収材層3と、前記外側シェル2に設けられ、少なくともそこを通過する少なくとも1つの入口孔4、ヘルメットの内側に面する1つ以上の流出孔6を備える少なくとも1つの通風ダクト5を有し、前記少なくとも1つの入口孔4に流体的に接続されている、前記少なくとも1つの通風ダクト5は、前記少なくとも1つの入口孔4から、前記1つ以上の流出孔6へ空気を送るようになっている安全ヘルメット1であって、少なくとも空気を部分的に透過し、概ね非圧縮的、または部分的に圧縮的であって、空気の流れを分散させる少なくとも1つのパッド層10を有し、空気の流れを分散する前記少なくとも1つのパッド層10は、少なくとも1つ以上の流出孔6の下側に配置されていることを特徴とする安全ヘルメット(1)。
【請求項2】
前記パッド層10は、3次元の繊維で作られていることを特徴とする請求項1に記載のヘルメット。
【請求項3】
空気の流れを分散する前記パッド層10は、概ね前記衝撃吸収材層3の内側全面の下側に伸びていることを特徴とする請求項1または2に記載のヘルメット。
【請求項4】
前記少なくとも1つの通風ダクト5の下側に位置し、使用者の頭部と接触して、空気の流れを分散しうるパッド層を有し、流れを分散しうる前記パッド層10は、前記少なくとも1つの通風ダクト5と前記快適層との間に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のヘルメット。
【請求項5】
前記少なくとも1つの通風ダクト5の下側に位置し、使用者の頭部と接触しうるパッド層10を有し、このパッド層10は、ヘルメットの内側の1つ以上の孔から出てくる空気の通過を容易にするため、前記通風ダクト5における1つ以上の流出孔6と連通する少なくとも1つの流入孔を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のヘルメット。
【請求項6】
前記パッド層に設けられている前記少なくとも1つの流入孔は、前記少なくとも1つの通風ダクト5に設けられている対応する流出孔の直径よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載のヘルメット。
【請求項7】
前記少なくとも1つの通風ダクト5は、少なくとも1つの管部を有し、前記衝撃吸収材層3は、その内側において、少なくとも部分的に、前記少なくとも1つの通風ダクト5にある、前記少なくとも1つの管部を収容するよう形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のヘルメット。
【請求項8】
前記衝撃吸収材層3は、通風ダクト5にある管部に対応する形状を有する、少なくとも1つの凹入部7を有し、前記通風ダクト5は、同凹入部7の内側に収容されていることを特徴とする請求項7に記載のヘルメット。
【請求項9】
前記少なくとも1つの通風ダクト5の少なくとも一部分は、前記衝撃吸収材層3に直接接触して設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のヘルメット。
【請求項10】
少なくとも2つ以上の通風ダクト5を有し、各通風ダクト5は、少なくとも1つの管部を有するヘルメットであり、前記2つ以上の通風ダクト5にある前記各管部は、1つの部品を形成するよう、相互に関連付けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のヘルメット。
【請求項11】
空気の流れを分散するための前記パッド層10は、少なくとも1つ以上の流出孔6において、前記2つ以上のダクトと関係づけられていることを特徴とする請求項10に記載のヘルメット。
【請求項12】
前記シェル2に設けられた、少なくともそこを通過する少なくとも1つの付加的な空気流入口を有し、外部環境とヘルメットの内部を流体的に接続することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のヘルメット。
【請求項13】
前記少なくとも1つの通風ダクト5の内側に空気の流れを調節する手段を有し、前記手段は前記少なくとも1つの入口孔4と通風孔4.1に配置され、その幅を変更しうることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のヘルメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−47406(P2013−47406A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−170871(P2012−170871)
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【出願人】(502336829)ノラングループ ソチエタ ペル アツィオーニ (7)
【Fターム(参考)】