説明

速崩壊性固形製剤

【課題】速やかに崩壊し、適度な強度を有し、口当たりの良い速崩壊性固形製剤の提供。
【解決手段】ヒドロキシプロポキシル基含量が5重量%以上7重量%未満の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの、医薬成分および糖類含有速崩壊性固形製剤製造のための使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内の唾液の存在下、少量の水の存在下または胃内において速やかに崩壊する固形製剤、とりわけ口腔内崩壊性固形製剤として有用な速崩壊性固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高齢者、小児が水なしで手軽に服用できる口腔内崩壊性固形製剤の開発が要望されており、このような製剤を開示する公知文献としては、例えば以下のようなものが知られている。
特開平9−48726には、薬物および加湿により成形可能に湿潤しかつ成形後の乾燥により該形状を維持する物質を含有する口腔内速崩壊性製剤が開示され、このような物質として、糖類、糖アルコール、水溶性高分子物質が例示されている。
特開平9−71523には、薬物、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよび滑沢剤を含有し、口腔内で崩壊性の速い錠剤が開示されている。
EP−A839526には、医薬成分、エリスリトール、結晶セルロースおよび崩壊剤を含有する固形医薬製剤が開示されている。
しかしながら、これらの公知文献には、本発明である1)医薬成分、2)糖類および3)ヒドロキシプロポキシル基含量が5重量%以上7重量%未満の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有してなる速崩壊性固形製剤についての記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−48726
【特許文献2】特開平9−71523
【特許文献3】EP−A839526
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
口腔内の唾液の存在下、少量の水の存在下または胃内において速やかに崩壊し、製剤工程および流通過程において損傷することのない適度な強度(硬度)を有し、さらに口当たりのよい速崩壊性固形製剤の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
(1)1)医薬成分、2)糖類および3)ヒドロキシプロポキシル基含量が5重量%以上7重量%未満の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有してなる速崩壊性固形製剤;
(2)口腔内速崩壊性固形製剤である前記(1)記載の製剤;
(3)錠剤である前記(1)または(2)記載の製剤;
(4)糖類が糖アルコールである前記(1)記載の製剤;
(5)糖アルコールがマンニトールまたはエリスリトールである前記(4)記載の製剤;
(6)糖類を、固形製剤100重量部に対して5〜97重量部含有する前記(1)記載の製剤;
(7)ヒドロキシプロポキシル基含量が5重量%以上7重量%未満の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを固形製剤100重量部に対して3〜50重量部含有する前記(1)記載の製剤;
(8)医薬成分がランソプラゾールである前記(1)記載の製剤;
(9)医薬成分がボグリボースである前記(1)記載の製剤;
(10)医薬成分が塩酸マニジピンである前記(1)記載の製剤;
(11)医薬成分が塩酸ピオグリタゾンである前記(1)記載の製剤;
(12)医薬成分がカンデサルタンシレキセチルである前記(1)記載の製剤;
(13)製剤が細粒を含有する前記(3)記載の製剤;
(14)医薬成分が細粒中に含有されている前記(13)記載の製剤;
(15)細粒以外の部分に、1)糖類および2)ヒドロキシプロポキシル基含量が5重量%以上7重量%未満の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有する前記(14)記載の製剤;
(16)糖類を、細粒以外の成分100重量部に対して5〜97重量部含有する前記(15)記載の製剤;
(17)ヒドロキシプロポキシル基含量が5重量%以上7重量%未満の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを細粒以外の成分100重量部に対して3〜50重量部含有す前記(15)記載の製剤;
(18)ヒドロキシプロポキシル基含量が5重量%以上7重量%未満の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの、医薬成分および糖類含有速崩壊性固形製剤製造のための使用;および
(19)ヒドロキシプロポキシル基含量が5重量%以上7重量%未満の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いることを特徴とする、医薬成分および糖類含有速崩壊性固形製剤の速崩壊性改善方法に関する。
【0006】
本発明で用いられる医薬成分としては、固形状、粉状、結晶状、油状、溶液状など何れのものでもよく、例えば滋養強壮保健薬、解熱鎮痛消炎薬、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、鎮痙薬、中枢神経作用薬、脳代謝改善剤、脳循環改善剤、抗てんかん剤、交感神経興奮剤、胃腸薬、制酸剤、抗潰瘍剤、鎮咳去痰剤、鎮吐剤、呼吸促進剤、気管支拡張剤、抗アレルギー薬、歯科口腔用薬、抗ヒスタミン剤、強心剤、不整脈用剤、利尿薬、血圧降下剤、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、高脂血症用剤、利胆剤、抗生物質、化学療法剤、糖尿病用剤、骨粗しょう症用剤、抗リウマチ薬、骨格筋弛緩薬、鎮けい剤、ホルモン剤、アルカロイド系麻薬、サルファ剤、痛風治療薬、血液凝固阻止剤、抗悪性腫瘍剤、アルツハイマー病治療薬などから選ばれた1種または2種以上の成分が用いられる。
滋養強壮保健薬としては、例えばビタミンA、ビタミンD、ビタミンE(酢酸d−α−トコフェロールなど)、ビタミンB(ジベンゾイルチアミン、フルスルチアミン塩酸塩など)、ビタミンB2(酪酸リボフラビンなど)、ビタミンB6(塩酸ピリドキシンなど)、ビタミンC(アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウムなど)、ビタミンB12(酢酸ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミンなど)のビタミン、カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラル、タンパク、アミノ酸、オリゴ糖、生薬などが挙げられる。
解熱鎮痛消炎薬としては、例えばアスピリン、アセトアミノフェン、エテンザミド、イブプロフェン、塩酸ジフェンヒドラミン、dl-マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸ジヒドロコデイン、ノスカピン、塩酸メチルエフェドリン、塩酸フェニルプロパノールアミン、カフェイン、無水カフェイン、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、トルフェナム酸、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム、フルフェナム酸、サリチルアミド、アミノピリン、ケトプロフェン、インドメタシン、ブコローム、ペンタゾシンなどが挙げられる。
向精神薬としては、例えばクロルプロマジン、レセルピンなどが挙げられる。
抗不安薬としては、例えばアルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、ジアゼパムなどが挙げられる。
抗うつ薬としては、例えばイミプラミン、塩酸マプロチリン、アンフェタミンなどが挙げられる。
催眠鎮静薬としては、例えばエスタゾラム、ニトラゼパム、ジアゼパム、ペルラピン、フェノバルビタールナトリウムなどが挙げられる。
鎮痙薬には、例えば臭化水素酸スコポラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸パパベリンなどが挙げられる。
【0007】
中枢神経作用薬としては、例えばシチコリンなどが挙げられる。
脳代謝改善剤としては、例えば塩酸メクロフェニキセートなどが挙げられる。
脳循環改善剤としては、例えばビンポセチンなどが挙げられる。
抗てんかん剤としては、例えばフェニトイン、カルバマゼピンなどが挙げられる。
交感神経興奮剤としては、例えば塩酸イソプロテレノールなどが挙げられる。
胃腸薬には、例えばジアスターゼ、含糖ペプシン、ロートエキス、セルラーゼAP3、リパーゼAP、ケイヒ油などの健胃消化剤、塩化ベルベリン、耐性乳酸菌、ビフィズス菌などの整腸剤などが挙げられる。
制酸剤としては、例えば炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、沈降炭酸カルシウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
抗潰瘍剤としては、例えばランソプラゾール、オメプラゾール、ラベプラゾール、パントプラゾール、ファモチジン、シメチジン、塩酸ラニチジンなどが挙げられる。
鎮咳去痰剤としては、例えば塩酸クロペラスチン、臭化水素酸デキストロメトルファン、テオフィリン、グァヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシン、リン酸コデインなどが挙げられる。
鎮吐剤としては、例えば塩酸ジフェニドール、メトクロプラミドなどが挙げられる。
呼吸促進剤としては、例えば酒石酸レバロルファンなどが挙げられる。
気管支拡張剤としては、例えばテオフィリン、硫酸サルブタモールなどが挙げられる。
抗アレルギー薬としては、アンレキサノクス、セラトロダストなどが挙げられる。
歯科口腔用薬としては、例えばオキシテトラサイクリン、トリアムシノロンアセトニド、塩酸クロルヘキシジン、リドカインなどが挙げられる。
抗ヒスタミン剤としては、例えば塩酸ジフェンヒドラミン、プロメタジン、塩酸イソチペンジル、dl-マレイン酸クロルフェニラミンなどが挙げられる。
強心剤としては、例えばカフェイン、ジゴキシンなどが挙げられる。
不整脈用剤としては、例えば塩酸プロカインアミド、塩酸プロプラノロール、ピンドロールなどが挙げられる。
利尿薬としては、例えばイソソルピド、フロセミド、HCTZなどのチアシド剤などが挙げられる。
【0008】
血圧降下剤としては、例えば塩酸デラプリル、カプトプリル、臭化ヘキサメトニウム、塩酸ヒドララジン、塩酸ラベタロール、塩酸マニジピン、カンデサルタンシレキセチル、メチルドパ、ロサルタン、バルサルタン、エポサルタン、イルベサルタン、タソサルタン、テルミサルタンなどが挙げられる。
血管収縮剤としては、例えば塩酸フェニレフリンなどが挙げられる。
冠血管拡張剤としては、例えば塩酸カルボクロメン、モルシドミン、塩酸ペラパミルなどが挙げられる。
末梢血管拡張薬としては、例えばシンナリジンなどが挙げられる。
高脂血症用剤としては、例えばセリバスタチンナトリウム、シンバスタチン、プラバスタチンナトリウムなどが挙げられる。
利胆剤としては、例えばデヒドロコール酸、トレピプトンなどが挙げられる。
抗生物質には、例えばセファレキシン、セファクロル、アモキシシリン、塩酸ピブメシリナム、塩酸セフォチアムヘキセチル、セファドロキシル、セフィキシム、セフジトレンピボキシル、セフテラムピボキシル、セフポドキシミプロキセチル、塩酸セフォチアム、塩酸セファゾプラン、塩酸セフメノキシム、セフスロジンナトリウムなどのセフェム系、アンピシリン、シクラシリン、スルベニシリンナトリウム、ナリジクス酸、エノキサシンなどの合成抗菌剤、カルモナムナトリウムなどのモノバクタム系、ペネム系及びカルバペネム系抗生物質などが挙げられる。
化学療法剤としては、例えばスルファメチゾール、塩酸スルファメチゾール、チアゾスルホンなどが挙げられる。
糖尿病用剤としては、例えばトルブタミド、ボグリボース、塩酸ピオグリタゾン、グリベンクラミド、トログリダゾン、マレイン酸ロジグリタゾン、アカルボース、ミグリトール、エミグリテートなどが挙げられる。
骨粗しょう症用剤としては、例えばイプリフラボンなどが挙げられる。
骨格筋弛緩薬としては、メトカルバモールなどが挙げられる。
鎮けい剤としては、塩酸メクリジン、ジメンヒドリナートなどが挙げられる。
抗リウマチ薬としては、メソトレキセート、ブシラミンなどが挙げられる。
ホルモン剤としては、例えばリオチロニンナトリウム、リン酸デキメタゾンナトリウム、プレドニゾロン、オキセンドロン、酢酸リュープロレリンなどが挙げられる。
アルカロイド系麻薬として、アヘン、塩酸モルヒネ、トコン、塩酸オキシコドン、塩酸アヘンアルカロイド、塩酸コカインなどが挙げられる。
サルファ剤としては、例えばスフファミン、スルフィソミジン、スルファメチゾールなどが挙げられる。
痛風治療薬としては、例えばアロプリノール、コルヒチンなどが挙げられる。
血液凝固阻止剤としては、例えばジクマロールが挙げられる。
抗悪性腫瘍剤としては、例えば5−フルオロウラシル、ウラシル、マイトマイシンなどが挙げられる。
アルツハイマー病治療薬としては、例えばイデベノン、ビンポセチンなどが挙げられる。
【0009】
前記した医薬成分の中でも、滋養強壮保健薬、解熱鎮痛消炎薬、催眠鎮静薬、中枢神経作用薬、胃腸薬、抗潰瘍剤、鎮咳去痰剤、抗アレルギー薬、抗不整脈薬、利尿薬、血圧降下剤、血管収縮薬、冠血管拡張薬、抗高脂血症剤、糖尿病用剤、骨粗しょう症用剤、骨格筋弛緩薬、鎮うん剤などが好適に用いられる。
本発明において、特に好適に用いられる医薬成分は、ランソプラゾールなどの抗潰瘍剤;ボグリボース、塩酸ピオグリタゾンなどの糖尿病用剤;塩酸マニジピン、カンデサルタン シレキセチルなどの血圧降下剤である。
また、これらの医薬成分は、本発明の速崩壊性固形製剤中に2種類以上配合されていてもよい。
医薬成分は、一般に医療、食品分野などで用いられる希釈剤などによって希釈されたものであってもよい。また医薬成分の苦味のマスキングを目的として処理したものを用いてもよい。
上記した医薬成分は、例えば固形製剤100重量部に対して0.01〜70重量部、好ましくは0.02〜50重量部、さらに好ましくは0.05〜30重量部用いられる。
【0010】
本発明で用いられる糖類としては、例えば砂糖、澱粉糖、乳糖、蜂蜜、糖アルコールなどが挙げられ、これらは、その2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
砂糖としては、例えば白糖、カップリングシュガー、フラクトオリゴ糖、パラチノースなどが挙げられる。
澱粉糖としては、例えばブドウ糖、麦芽糖、粉飴、水飴、果糖などが挙げられる。
乳糖としては、例えば乳糖、異性化乳糖(ラクチュロース)、還元乳糖(ラクチトール)などが挙げられる。
蜂蜜としては、一般に食用として用いられる各種蜂蜜が挙げられる。
糖アルコールとしては、例えばソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元澱粉糖化物、キシリトール、還元パラチノース、エリスリトールなどが挙げられる。ここで、エリスリトールとしては、通常ぶどう糖を原料として酵母による発酵により生産され、粒度が50メッシュ以下のものが用いられる。このようなエリスリトールは、市販品(日研化学(株)製品等)として入手することができる。
上記した糖類は、水溶性糖類であることが好ましい。ここで、水溶性糖類とは、糖類1gを水に加え、20℃において5分ごとに強く30秒間振り混ぜて約30分以内に溶かす際に、必要な水の量が30ml未満である糖類を意味する。
本発明において、糖類は、好ましくは糖アルコールであり、さらに好ましくはマンニトールまたはエリスリトールである。
十分な製剤強度および十分な速崩壊性を得るために、糖類は、細粒を含まない固形製剤の場合は、全体の製剤100重量部に対して5〜97重量部、好ましくは10〜90重量部用いられる。一方、細粒を含む固形製剤の場合は、細粒以外の部分の製剤100重量部に対して5〜97重量部、好ましくは10〜90重量部用いられる。
また、糖類がマンニトールまたはエリスリトールの場合で、細粒を含まない固形製剤の場合は、全体の製剤100重量部に対して通常、5〜90重量部、好ましくは10〜80重量部、さらに好ましくは20〜80重量部、最も好ましくは、50〜80重量部含有させるとよい。一方、細粒を含む固形製剤の場合は、細粒以外の部分の製剤100重量部に対して通常、5〜90重量部、好ましくは10〜80重量部、さらに好ましくは20〜80重量部、最も好ましくは、50〜80重量部含有させるとよい。
【0011】
本発明で用いられる「ヒドロキシプロポキシル基含量が5重量%以上7重量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」は、自体公知の方法、例えば以下に述べる特公昭57−53100に記載の方法あるいはこれに準ずる方法により製造することができる。
まず、遊離アルカリを含むアルカリセルロースとプロピレンオキサイドとを反応させることにより、遊離アルカリ含有粗製低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを得る。
具体的には、例えばウッドパルプ、コットンリーダーなどの原料パルプを10〜50%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬後、圧搾することにより、NaOH/セルロース比が約0.1〜1.2(重量比)であるアルカリセルロースとし、次にこのアルカリセルロースとプロピレンオキサイドとを、20〜90℃で2〜8時間撹拌反応させることにより、遊離アルカリ含有粗製低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを得る。ここで、プロピレンオキサイドは、目的物である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースのヒドロキシプロポキシル基含量が5重量%以上7重量%となるように使用される。
該遊離アルカリ含有粗製低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを、全アルカリ量を中和するのに要する酸の5〜80%を含む水または熱水中に分散させて、遊離アルカリ含有粗製低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの一部を溶解させる。さらに、酸を追加してアルカリの残部を中和する。
中和後、常法にしたがって脱液、乾燥、粉砕の操作を行い、所望の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを得る。
【0012】
本発明で用いられる「ヒドロキシプロポキシル基含量が5重量%以上7重量%未満の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」(以下、L−HPCと略記することがある)の粒子径は、例えば平均粒子径として、5〜60μmである。該粒子径は、好ましくは、平均粒子径として、10〜40μmである。
このような範囲のうち、粒子径の比較的大きいL−HPC(例えば平均粒子径が26〜40μmのL−HPC)を用いれば、崩壊性の優れた製剤を製造することができる。一方、粒子径の比較的小さいL−HPC(例えば平均粒子径が10〜25μmのL−HPC)を用いれば、製剤強度の優れた製剤を製造することができる。
したがって、L−HPCの粒子径は、目的とする製剤の特性に応じて適宜選択することができる。
【0013】
十分な速崩壊性および十分な製剤強度を得るために、本発明のL−HPCは、細粒を含まない固形製剤の場合は、全体の製剤100重量部に対して3〜50重量部、好ましくは5〜40重量部用いられる。一方、細粒を含む固形製剤の場合は、細粒以外の部分の製剤100重量部に対して3〜50重量部、好ましくは5〜40重量部用いられる。
このように、ヒドロキシプロポキシル基含量が5重量%以上7重量%未満の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いることにより、医薬成分および糖類含有固形製剤の速崩壊性、とくに口腔内速崩壊性を改善することができる。
本発明の速崩壊性固形製剤の剤形としては、例えば錠剤、顆粒、細粒などが挙げられ、なかでも錠剤が好ましい。また、口腔内崩壊錠および水中崩壊錠のような速崩壊錠の中でも、口腔内崩壊錠が好ましい。
【0014】
本発明の速崩壊性固形製剤は、速崩壊性(とくに口腔内速崩壊性)または製剤強度に支障のない限り、一般製剤の製造に用いられる種々の添加剤を含んでもよく、またその添加量は一般製剤の製造に用いられる量である。このような添加剤としては、例えば結合剤、酸味剤、発泡剤、人口甘味料、香料、滑沢剤、着色剤、安定化剤、賦形剤、崩壊剤などが挙げられる。
【0015】
結合剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、α化デンプン、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム末、ゼラチン、プルランなどが挙げられる。これらの結合剤は2種類以上、適宜の割合で混合して用いられてもよい。該結合剤として結晶セルロースを用いる場合、優れた口腔内速崩壊性を保持したままで、製剤強度のさらに大きい固形製剤を得ることができる。ここで、結晶セルロースとしては、α−セルロースを部分的に解重合して精製したものであればよい。また、微結晶セルロースと呼ばれているものも含まれる。結晶セルロースの具体例としては、例えばセオラスKG 801、アビセルPH 101、アビセルPH 102、アビセルPH 301、アビセルPH 302、アビセルRC−A591NF(結晶セルロース・カルメロースナトリウム)、アビセルRC−591(結晶セルロース・カルメロースナトリウム)等が挙げられる。中でも、高成形性結晶セルロースと呼ばれているセオラスKG 801が好適に用いられる。これら結晶セルロースは、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。また、これら結晶セルロースは、市販品〔旭化成(株)製〕として入手することができる。該結晶セルロースは、細粒を含まない固形製剤の場合は、全体の製剤100重量部に対して、例えば1〜50重量部、好ましくは2〜40重量部、さらに好ましくは2〜20重量部用いられる。一方、細粒を含む固形製剤の場合は、細粒以外の部分の製剤100重量部に対して、例えば1〜50重量部、好ましくは2〜40重量部、さらに好ましくは2〜20重量部用いられる。
【0016】
酸味剤としては、例えばクエン酸(無水クエン酸)、酒石酸、リンゴ酸などが挙げられる。
発泡剤としては、例えば重曹などが挙げられる。
人口甘味料としては、例えばサッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチンなどが挙げられる。
香料としては、合成物および天然物のいずれでもよく、例えばレモン、レモンライム、オレンジ、メントール、ストロベリーなどが挙げられる。
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸などが挙げられる。該滑沢剤としてポリエチレングリコールを用いる場合、医薬成分の経日的分解が抑制された安定な固形製剤を得ることができる。この際、ポリエチレングリコールは、細粒を含まない固形製剤の場合は、全体の製剤100重量部に対して、例えば0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部用いられる。一方、細粒を含む固形製剤の場合は、細粒以外の部分の製剤100重量部に対して、例えば0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部用いられる。
着色剤としては、例えば食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号などの食用色素;食用レーキ色素、ベンガラなどが挙げられる。
安定化剤としては、塩基性医薬成分の場合には塩基性物質が、酸性医薬成分の場合には酸性物質が挙げられる。
賦形剤としては、例えば乳糖、白糖、D−マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、酸化チタンなどが挙げられる。
【0017】
崩壊剤としては、例えばクロスポビドン[ISP Inc.(米国)、 BASF(ドイツ)製]、クロスカルメロースナトリウム(FMC−旭化成)、カルメロースカルシウム(五徳薬品)などスーパー崩壊剤と称される崩壊剤;ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース;カルボキシメチルスターチナトリウム(松谷化学(株));コーンスターチ等が挙げられ、中でも、クロスポビドンが好適に用いられる。これら崩壊剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
該クロスポビドンは、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)、1−ビニル−2−ピロリジノンホモポリマーと称されているものも含め、1−エテニル−2−ピロリジノンホモポリマーと称される架橋された重合物であればいずれでもよく、通常分子量1,000,000以上のクロスポビドンが用いられる。市販品として入手可能なクロスポビドンの具体例としては、例えばクロス−リンクト(架橋)ポビドン、コリドンCL[BASF(ドイツ)製]、ポリプラスドンXL、ポリプラスドンXL−10、INF−10[ISP Inc.(米国)製]、ポリビニルポリピロリドン、PVPP、1−ビニル−2−ピロリジノンホモポリマーなどが挙げられる。
これら崩壊剤は、単独使用のほかに、二種以上併用することもできる。例えばクロスポビドン単独、あるいはクロスポビドンと他の崩壊剤との併用が挙げられる。
このような崩壊剤は、細粒を含まない固形製剤の場合は、全体の製剤100重量部に対して、例えば0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部、さらに好ましくは3〜7重量部用いられる。一方、細粒を含む固形製剤の場合は、細粒以外の部分の製剤100重量部に対して、例えば0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部、さらに好ましくは3〜7重量部用いられる。
【0018】
医薬成分がランソプラゾール、オメプラゾール、ラベプラゾール、パントプラゾールなどの酸に不安定な医薬成分である場合、該医薬成分を製剤中で安定化するために塩基性無機塩を配合させることが好ましい。該塩基性無機塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよび/またはカルシウムの塩基性無機塩が挙げられ、マグネシウムおよび/またはカルシウムの塩基性無機塩が好ましい。中でも、マグネシウムの塩基性無機塩が好ましい。
ナトリウムの塩基性無機塩としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどが挙げられる。
カリウムの塩基性無機塩としては、例えば炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムカリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウムなどが挙げられる。
マグネシウムの塩基性無機塩としては、例えば重質炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、珪酸アルミン酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト〔MgAl(OH)16・CO・4HO〕および水酸化アルミナ・マグネシウム〔2.5MgO・Al・xHO〕が挙げられ、なかでも重質炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムなどが好ましい。
カルシウムの塩基性無機塩としては、例えば、沈降炭酸カルシウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。
塩基性無機塩は、好ましくはマグネシウムの塩基性無機塩であり、さらに好ましくは重質炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムである。
これらのマグネシウムおよびカルシウム等の塩基性無機塩は、その1%水溶液または懸濁液のpHが塩基性(pH7以上)を示すものであればよい。
これらの塩基性無機塩(好ましくはマグネシウム塩およびカルシウム塩など)は2種類以上、適宜の割合で混合されて用いられていてもよい。
塩基性無機塩の使用量は、塩基性無機塩の種類により適宜選択すればよく、医薬成分に対して、例えば0.3〜200重量%、好ましくは1〜100重量%、さらに好ましくは10〜50重量%、最も好ましくは20〜40重量%である。
【0019】
前述のように、本発明の速崩壊性固形製剤は、錠剤、顆粒剤、細粒剤などいずれの固形製剤であってもよい。本発明の速崩壊性固形製剤が錠剤の場合、錠剤は細粒を含んでいてもよい。細粒は医薬成分を含んでいてもよい。これらの剤は公知の方法またはその類似の方法で製造できる。
細粒は医薬成分を含む核または含まない核を含んでいてもよい。このような核としては、例えば(1)結晶セルロースと乳糖による球形造粒品[例えば、結晶セルロース(3部)と乳糖(7部)による約100〜200μmの球形造粒物(ノンパレル105(商品名)、フロイント社製);結晶セルロース(3部)と乳糖(7部)による約150〜250μmの球形造粒品(ノンパレルNP−7:3(商品名)、フロイント社製);結晶セルロース(5部)と乳糖(5部)による約150〜250μmの球形造粒品(ノンパレルNP−5:5(商品名)、フロイント社製)など]、(2)結晶セルロースの約150〜250μmの球形造粒品[アビセルSP(商品名)、旭化成(株)製)など]などが挙げられる。
前記核は、医薬成分などでコーティングされた後、さらに味・臭気のマスキング,腸溶化あるいは徐放化を目的として、自体公知の方法によってコーティングされていてもよい。このとき、核は医薬成分を含有する細粒を形成していることになる。この場合のコーティング剤としては、例えば腸溶性ポリマー(例、セルロースアセテートフタレート、酢酸フタル酸セルロース、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(Eudragit)L30D−55(商品名:レーム社製)、メタアクリル酸コポリマーS、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、コリコートMAE30DP(商品名;BASF社製)、ポリキッドPA30(商品名:三洋化成社製)など〕、カルボキシメチルエチルセルロース、セラック、メタアクリル酸共重合体〔例えば、オイドラギットNE30D(商品名)、オイドラギットRL30D(商品名)、オイドラギットRS30D(商品名)など〕、クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール、アセチル化モノグリセリド、トリアセチン、ヒマシ油等)、胃溶性ポリマー(例、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー等)、水溶性ポリマー(例、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、難溶性ポリマー(例、エチルセルロース、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS、アクリル酸エチル・メタアクリル酸メチル共重合体等)、ワックス等が挙げられる。これらは一種または二種以上混合して使用してもよい。
【0020】
また、本発明における「細粒」は、公知の造粒法により製造することもできる。
「造粒法」としては、転動造粒法(例、遠心転動造粒法)、流動造粒法(例、転動流動層造粒、流動造粒等)、撹拌造粒法などが挙げられる。このうち、流動造粒法が好ましい。特に好ましくは転動流動層造粒法である。
該転動造粒法の具体例としては、例えばフロイント社製の「CF装置」などを用いる方法が挙げられる。該転動流動層造粒法の具体例としては、例えば「スパイラフロー」、パウレック社製の「マルチプレックス」、不二パウダル社製の「ニューマルメ」などを用いる方法が挙げられる。混合液の噴霧方法は造粒装置の種類に応じて適当に選択でき、例えば、トッププレー方式、ボトムスプレー方式、タンジェンシャルスプレー方式などのいずれであってもよい。このうち、タンジェンシャルスプレー方式が好ましい。
【0021】
本発明における「細粒」は、医薬成分などを含む細粒以外の成分により、自体公知の方法またはその類似の方法を用いて被覆できる。例えば、医薬成分が酸に不安定な生理活性物質である場合は、結晶セルロースおよび乳糖を含有する核に、酸に不安定な生理活性物質を被覆する方法が用いられる。
例えば特開平5−092918号公報に記載の製造法(コーティング方法)などに記載の、結晶セルロースおよび乳糖を含有する核に、酸に不安定な生理活性物質と、必要に応じ、塩基性無機塩、結合剤、滑沢剤、賦形剤、水溶性高分子など(以下、被覆層と略記することもある)とを被覆する方法が挙げられる。例えば、核に、酸に不安定な生理活性物質および塩基性無機塩を被覆し、結合剤、滑沢剤、賦形剤、水溶性高分子などを被覆する方法が挙げられる。
【0022】
該「核」の平均粒子径は、250μm以下であればよく、好ましくは50〜250μm、より好ましくは100〜250μm、特に好ましくは100〜200μmである。このような平均粒子径を有する核としては、50号(300μm)の篩を全通し、60号(250μm)の篩に残留する粒子が全体の約5w/w%以下であり、かつ282号(53μm)の篩を通過する粒子が全体の約10w/w%以下であるような粒子が含まれる。「核」の比容は5ml/g以下、好ましくは3ml/g以下である。
該「核」としては、例えば、(1)結晶セルロースおよび乳糖の球形造粒品、(2)結晶セルロースの150〜250μmの球形造粒品(旭化成(株)製、アビセルSP)、(3)乳糖(9部)とαデンプン(1部)による50〜250μmの撹拌造粒品、(4)特開昭61−213201号公報に記載の微結晶セルロース球形顆粒を分級した250μm以下の微粒、(5)スプレーチリングや溶融造粒により球状に形成されたワックス類などの加工品、(6)オイル成分のゼラチンビーズ品などの加工品、(7)ケイ酸カルシウム、(8)デンプン、(9)キチン、セルロースおよびキトサンなどの多孔性粒子、(10)グラニュー糖、結晶乳糖、結晶セルロースまたは塩化ナトリウムなどのバルク品およびそれらの製剤加工品などが挙げられる。さらに、これらの核を、自体公知の粉砕方法あるいは造粒方法により製造し、篩過して所望の粒子径の粒子を調製してもよい。
【0023】
該「結晶セルロースおよび乳糖の球形造粒品」としては、例えば、(i)結晶セルロース(3部)と乳糖(7部)とによる100〜200μmの球形造粒品(例、ノンパレル105(70−140)(粒子径100〜200μm)、フロイント社製)、(ii)結晶セルロース(3部)と乳糖(7部)とによる150〜250μmの球形造粒品(例、ノンパレルNP−7:3、フロイント社製)、(iii)結晶セルロース(4.5部)と乳糖(5.5部)とによる100〜200μmの球形造粒品(例、ノンパレル105T(70−140)(粒子径100〜200μm)、フロイント社製)など〕、(iv)結晶セルロース(5部)と乳糖(5部)とによる150〜250μmの球形造粒品〔例、ノンパレルNP−5:5、フロイント社製)などが挙げられる。
適度の強度を保ちつつ溶解性にも優れた製剤を製造するためには、該「核」として、好ましくは結晶セルロースと乳糖による球形造粒品、より好ましくは結晶セルロースと乳糖による球形造粒品で乳糖を50重量%以上含有するものものが挙げられる。結晶セルロースを40〜50重量%および乳糖を50〜60重量%含有するものが好ましい。
本発明に用いられる核としては、結晶セルロースおよび乳糖の球形造粒品が好ましく、さらに好ましくは、結晶セルロース(4.5部)と乳糖(5.5部)とによる100〜200μmの球形造粒品である。
該「核」は、上述の医薬成分などの生理活性物質を含んでいてもよいが、該生理活性物質を含む被覆層により、その生理活性物質の放出性をコントロールできるので、核は生理活性物質を含んでいなくてもよい。
該「核」は、細粒状であってもよく、被覆のバラツキを小さくするためには、できる限り均一な球状であることが好ましい。
【0024】
該「核」に対する「被覆層」の割合は、生理活性物質の溶出性および組成物の粒度を制御できる範囲で選択でき、例えば、核100重量部に対して、通常、50〜400重量部である。
「被覆層」は複数の層で形成されていてもよく、複数の被覆層の少なくとも1つの層が生理活性物質を含有していればよい。複数の被覆層を構成する、医薬成分を有しない被覆層や下掛け用の被覆層、腸溶性被覆層など種々の被覆層の組み合わせは適宜選択されうる。
核を被覆する場合、例えば、上述の生理活性物質および水溶性高分子を混合液として使用する。該混合液は、溶液でも分散液であってもよく、水またはエタノールなどの有機溶媒、またはこれらの混液を用いて調製できる。
混合液中の水溶性高分子の濃度は、核に対する生理活性物質の結合力を保持させるとともに、作業性を低下させない程度に混合液の粘度を維持させるため、生理活性物質および添加剤の割合により異なるが、通常、0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。
【0025】
被覆層が複数の層で形成される場合、水溶性高分子の配合割合や粘度のグレードを選定したり、生理活性物質や他の添加剤の割合が変化した混合液を用いて順次被覆し、各層の生理活性物質濃度を連続的にまたは段階的に変動させてもよい。その場合、被覆層全体が水溶性高分子を0.1〜50重量%含む限り、0.1〜50重量%の配合割合を外れた混合液で被覆してもよい。さらには、公知の方法により不活性な被膜を形成し、生理活性物質を含む各層の間を遮断するよう複数からなる被覆層としてもよい。
また、2種以上の配合性の悪い生理活性物質を配合する場合、それぞれの混合液を同時にまたは別々に使用して、核を被覆してもよい。
上記被覆物を乾燥した後、篩により粒度の揃った組成物が得られる。組成物の形状は、通常、核に対応しているので、略球形の組成物を得ることもできる。篩としては、例えば50号(300μm)の丸篩が使用でき、この50号の丸篩を通過するものを選別することにより、組成物が得られる。
【0026】
前記「細粒」は、上記と同様の造粒法に従い、生理活性物質の保護あるいは腸溶性の付与を目的として、組成物を腸溶性被覆層で被覆して製造される。必要に応じてさらに、水溶性糖アルコール(好ましくはマンニトール)で被覆されてもよい。水溶性糖アルコールで被覆した場合、細粒を含有する口腔内崩壊錠の強度が向上する。
腸溶性被覆層としては、該生理活性物質を含む組成物の表面全体を、20〜70μm、好ましくは30〜50μmの厚みで覆う層であることが好ましい。従って、該組成物の粒径が小さければ小さいほど、腸溶性被覆層が細粒全体に占める重量%が大きくなる。本発明の細粒においては、腸溶性被覆層は細粒全体の30〜70重量%、好ましくは50〜70重量%である。
腸溶性被覆層は、複数の層(例、2〜3層)で形成されていてもよい。例えば、組成物に、ポリエチレングリコールを含有する腸溶性被覆層を被覆し、クエン酸トリエチルを含有する腸溶性被覆層を被覆し、さらに、ポリエチレングリコールを含有する腸溶性被覆層を被覆する方法等が挙げられる。
【0027】
本発明の速崩壊性固形製剤は、製剤分野における慣用の方法により製造される。このような方法としては、例えば医薬成分、糖類およびヒドロキシプロポキシル基含量が5重量%以上7重量%未満の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを、所望により水を加えた後、混合し、成形し、さらに所望により乾燥する方法が挙げられる。ただし、本発明の速崩壊性固形製剤は、水を用いなくとも製造することができる。
また、「細粒を含む口腔内崩壊錠」は、上記の生理活性物質から選ばれた適当な生理活性物質を用い、慣用の成形方法により適宜製造される。
好ましい「被覆された核を含む細粒を有する口腔内崩壊錠」の製造法の例としては、例えば、結晶セルロースおよび乳糖を含有する核を、生理活性物質および賦形剤で被覆し、さらに水溶性高分子を含む被覆層で被覆して組成物を得、得られた組成物をポリエチレングリコールを含有する腸溶性被覆層で被覆し、クエン酸トリエチルを含有する腸溶性被覆層で被覆し、ポリエチレングリコールを含有する腸溶性被覆層で被覆し、さらにマンニトールで被覆して細粒を得、得られた細粒と添加剤とを混合し、成形する方法等も挙げられる。
【0028】
「成形」は、例えば速崩壊性固形製剤が錠剤(特に、口腔内崩壊錠)である場合、単発錠剤機(菊水製作所製)、ロータリー式打錠機(菊水製作所製)などを用い、0.5〜3ton/cm、好ましくは1〜2ton/cmの圧力で打錠することにより行われる。
「乾燥」は、例えば真空乾燥、流動層乾燥など製剤一般の乾燥に用いられる何れの方法によってもよい。
混合は、一般に用いられる混合方法、例えば混合、練合、造粒などにより行われる。混合は、例えばバーチカルグラニュレーターVG10[パウレック社製]、万能練合機(畑鉄工所製)、流動層造粒機LAB−1、FD−3S[パウレック社製]、転動流動型コーティング造粒機MP−10、MP−400[パウレック社製]などの装置を用いて行われる。
【0029】
本明細書において「被覆」とは、被覆される対象(例、核)の表面全体を被覆する場合に限らず、部分的に被覆する場合、あるいは吸着または吸収されていている場合も含む意味に用いる。
「球状」とは、真球状に限らず、断面楕円状、なす型状、液滴状などの曲面を有する形状も含む意味に用いる。
「平均粒径」とは、特に断りのない限り、体積基準メジアン径(メジアン径:累積分布50%相当粒子径)を示す。その測定方法としては、例えばレーザー回折式粒度分布測定法が挙げられ、具体例として、レーザー回折式粒度分布測定装置HEROS RODOS(Sympatec社(ドイツ)製)を用いる方法が挙げられる。
本発明における「細粒」は、口中でのザラツキ感や違和感を感じさせないために、その平均粒径は400μm以下であるのが好ましい。さらに好ましい平均粒径は、300〜400μmである。
該「細粒」の平均粒子径ではなく、最大の粒子の大きさを規定する場合には、粒径が実質的に425μm以下、好ましくは実質的に400μm以下である。好ましい範囲は、粒径が実質的に300〜425μm、さらに好ましくは実質的に300〜400μmである。
「粒径が実質的に425μm以下である」および「粒径が実質的に400μm以下である」の「実質的に」の意味は、不可避的に混入する粒子である限り、それぞれ前記範囲を外れる粒子径の粒子を少量(5重量%以下)含んでいてもよいことを意味する。
【0030】
また、前記「生理活性物質を含む組成物」は、水溶性高分子、前述の一般製剤の製造に用いられる結合剤、滑沢剤、賦形剤などを含有していてもよい。添加量は一般製剤の製造に用いられる量である。
「水溶性高分子」としては、エタノール可溶性水溶性高分子〔例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(以下、HPCと記載することがある)などのセルロース誘導体、ポリビニルピロリドンなど〕、エタノール不溶性水溶性高分子〔例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、HPMCと記載することがある)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、グアーガムなど〕などが挙げられる。
水溶性高分子を使用する場合、エタノール可溶性の水溶性高分子とエタノール不溶性の水溶性高分子とを併用したり、粘度の異なる水溶性高分子を組み合わせて使用することにより、薬物(生理活性物質)の溶出性をコントロールできる。
【0031】
好ましい水溶性高分子としては、HPC、HPMC、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、より好ましくは、HPC、HPMCなどのセルロース誘導体が挙げられる。
該HPCは、ヒドロキシプロポキシル基を、例えば、53.4〜77.5重量%、好ましくは60〜70重量%含有する。HPCの20℃における2重量%水溶液の粘度は、通常、1〜150000cps(センチポアズ)程度である。このようなHPCとしては、日局ヒドロキシプロピルセルロースなどが使用される(以下、HPCの粘度はいずれも20℃における2重量%水溶液の値である)。
該HPMCは、メトキシ基とヒドロキシプロポキシ基が結合した混合エーテルである。HPMCのメトキシ基の含有量は、例えば、19〜30重量%、ヒドロキシプロポキシ基の含有量は、例えば、4〜12重量%である。HPMCの20℃における2重量%水溶液の粘度は、通常、1〜40000センチストークス程度である。このようなHPMCとしては、日局ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、日局ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906および日局ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910などが使用される。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは一種又は二種以上混合して使用できる。
HPCおよび/またはHPMCなどの水溶性高分子の含量は、生理活性物質を含む組成物中のその生理活性物質の溶出性をコントロールでき、また高い含有量の生理活性物質を保持させるため、通常、0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%である。
【0032】
前記「細粒」は、隠蔽剤として、例えば、酸化チタン等を含有していてもよい。
本発明の「口腔内崩壊錠」は、錠剤の直径を5〜20mm、好ましくは7〜15mm、さらに好ましくは8〜13mmにすると、服用の取り扱いが有利となる。
口腔内崩壊錠は、錠剤内部に滑沢剤を含まなくてもよい。
本発明における「細粒」を、口腔内崩壊錠以外の錠剤として用いる場合は、該錠剤の直径を約5〜10mm、好ましくは約5〜8mm、また、カプセル剤として用いる場合は、服用の取り扱いが有利となるよう、大きさを2号カプセル以下にすることが好ましい。
【0033】
かくして得られる本発明の速崩壊性固形製剤は、口腔内、水中および胃内での速やかな崩壊性あるいは溶解性、および適度な製剤強度を示す。さらに、本発明の速崩壊性固形製剤は、粉っぽさが改善され、口当たりが良い。
本発明の速崩壊性固形製剤の口腔内崩壊時間(健康な成人男子及び女子の口腔内の唾液で固形製剤が完全に崩壊するまでの時間)は、通常5〜50秒、好ましくは5〜40秒、さらに好ましくは5〜35秒である。
本発明の速崩壊性固形製剤の胃内崩壊時間(健康な成人男子及び女子の口腔内の唾液で固形製剤が完全に崩壊するまでの時間)は、通常の錠剤のような通常の剤形のものの崩壊時間よりも短い。
本発明の速崩壊性固形製剤の水中崩壊時間は、通常5〜40秒、好ましくは5〜30秒、さらに好ましくは5〜25秒である。
また、本発明の速崩壊性固形製剤の強度(錠剤硬度計による測定値)は、通常約2〜約20kg、好ましくは約4〜約15kgである。
本発明の速崩壊性固形製剤は、特に口腔内崩壊錠として有用であり、水なしで、または水とともに服用される。服用方法としては、(1)口に含みそのまま飲み込まず少量の水、または水なしで口腔内の唾液で溶解または崩壊させて服用する方法、または(2)水とともにそのまま飲み込んで服用する方法が挙げられる。また、錠剤を水で溶解または崩壊させた後、服用してもよい。
本発明の「口腔内崩壊錠」は、(a)水なしで服用する必要が多い場合、また(b)錠剤を飲み込むことが困難な患者が服用する場合、または(c)通常の錠剤なら喉に詰まらせてしまう恐れのある高齢者や子供が服用する場合などに有利に用いられる。
【0034】
本発明の速崩壊性固形製剤は、哺乳動物(例、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、サル、ヒト等)に対して、経口的に安全に投与することができる。
該速崩壊性固形製剤の投与量は、医薬成分、投与対象、疾患の種類等により異なるが、医薬成分としての投与量が有効量となる範囲から選択すればよい。
(a)の場合の例としては、解熱剤、鎮痛剤、消炎剤、抗不安剤、鎮咳去痰剤、鎮暈剤または乗物酔いの予防・治療薬等が好ましく挙げられる。
(b)の場合の例としては、高血圧、高脂血症、糖尿病、気管支喘息、脳血管障害等の疾病に対する予防・治療薬等が挙げられる。
例えば医薬成分がランソプラゾールである場合、本発明の速崩壊性固形製剤は、消化性潰瘍(例、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、ゾリンジャー・エリソン(Zollinger-Ellison)症候群等)、胃炎、逆流性食道炎等の治療および予防;H.ピロリ除菌;消化性潰瘍、急性ストレス潰瘍および出血性胃炎による上部消化管出血の抑制;侵襲ストレス(手術後に集中管理を必要とする大手術や集中治療を必要とする脳血管障害、頭部外傷、多臓器不全、広範囲熱傷から起こるストレス)による上部消化管出血の抑制;非ステロイド系抗炎症剤に起因する潰瘍の治療および予防;手術後ストレスによる胃酸過多および潰瘍の治療および予防;麻酔前投与等に有用であり、その投与量は、成人1人(60kg体重)あたり、ランソプラゾールとして0.5〜1500mg/日、好ましくは5〜150mg/日である。
【0035】
医薬成分がボグリボースである場合、本発明の速崩壊性固形製剤は、肥満症、脂肪過多症、過脂肪血症、糖尿病等の治療および予防に有用であり、その投与量は、成人1人(60kg体重)あたり、ボグリボースとして0.01〜30mg/日、好ましくは0.1〜3mg/日である。該速崩壊性固形製剤は、1日1回または2〜3回に分けて投与してもよい。
医薬成分が塩酸マニジピンである場合、本発明の速崩壊性固形製剤は、高血圧症、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)、脳および末梢の循環障害(脳梗塞、一過性脳虚血発作、腎動脈狭窄など)などの循環器系疾患等の治療および予防に有用であり、その投与量は、成人1人(60kg体重)あたり、塩酸マニジピンとして1〜200mg/日、好ましくは10〜20mg/日である。該速崩壊性固形製剤は、通常1日1回朝食後に経口投与される。
医薬成分が塩酸ピオグリタゾンである場合、本発明の速崩壊性固形製剤は、インスリン抵抗性改善薬等として有用であり、また、糖尿病等の治療および
予防に有用である。その投与量は、成人1人(60kg体重)あたり、塩酸ピオグリタゾンとして7.5〜60mg/日、好ましくは15〜45mg/日である。該速崩壊性固形製剤は、1日1回または2〜3回に分けて投与してもよい。
医薬成分がカンデサルタンシレキセチルである場合、本発明の速崩壊性固形製剤は、高血圧症、心臓病、脳卒中、腎疾患等の治療および予防に有用であり、その投与量は、成人1人(60kg体重)あたり、カンデサルタンシレキセチルとして1〜50mg/日、好ましくは2〜30mg/日である。
【発明の効果】
【0036】
本発明の速崩壊性固形製剤は、優れた崩壊性あるいは溶解性を有しているため、高齢者、小児が水なしで手軽に服用できる速崩壊性製剤、とくに口腔内速崩壊性製剤として、種々の疾病の治療、予防に用いられる。また、胃内での崩壊性も向上されている。
また、該速崩壊性固形製剤は、適度な強度を有しているため、長期間の保存安定性にも優れる。
さらに、本発明の速崩壊性固形製剤は、溶解性、粉っぽさが改善され、口当たりが良い。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、参考例、実施例および試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
なお、特記しない限り、以下の%は重量%を示す。
また、ヒドロキシプロポキシル基含量は、日本薬局方(例、第十三改正)に記載の方法にしたがって測定した。錠剤の物性(硬度および崩壊時間)は、下記試験法によって測定した。
1)硬度試験
錠剤硬度計(富山産業(株)製)を用いて測定した。試験は10回行い、その平均値を示す。
2)口腔内崩壊時間
錠剤が口腔内の唾液のみで完全に崩壊または溶解するまでの時間を測定した。
【実施例】
【0038】
参考例1
ウッドパルプを49%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬後、圧搾して、NaOH 24.1%、NaCO 1.7%、セルロース 42.9%、HO 31.8%の組成のアルカリセルロースを得た。このアルカリセルロース100重量部を反応機へ仕込み、窒素ガス置換を行った。置換後、プロピレンオキサイド5重量部を反応機へ仕込み、撹拌しながら、40℃で1時間、50℃で1時間および70℃で1時間反応して、反応品103重量部を得た。
一方、ニーダー中に65℃の熱水2.5重量部と氷酢酸0.13重量部(中和当量の約40重量%、初期中和酸)を入れ、これに上記した反応品1重量部を分散した。ついで、温度を30℃にして、反応品の一部分を溶解した後、氷酢酸0.20重量部(中和当量の残り、完全中和酸)を入れ、一部溶解、析出した部分を含む繊維状の処理品を得た。
得られた処理品を約80℃の熱水で洗浄後、脱水、乾燥して、高速回転衝撃型粉砕機で粉砕し、100メッシュふるいで篩過し、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH−33(ヒドロキシプロポキシル基含量5.8重量%、平均粒子径17.8μm)の粉末を得た。
【0039】
参考例2
参考例1と同様にして、やや平均粒径の大きな低置換度ヒドロキシプロピルセルロースLH−23(ヒドロキシプロポキシル基含量5.7重量%、平均粒子径30.8μm)の粉末を得た。
【0040】
実施例1
(1)有核散剤の製造
ノンパレル105(商品名)(粒子径100〜200μm)900gを転動流動型コーティング造粒機[パウレック社製、MP−10]に入れ、送風温度70℃、排気温度約30℃にコントロールし、タンジャンシャルスプレー方式で、供給速度22g/分で、予め調製した下記組成の散布液を噴霧しコーティングした。ついで、乾燥を10分間行った後、60号の丸篩(250μm)と100号の丸篩(150μm)で篩過し、150〜250μmの有核散剤2186gを得た。
[散布液]
ランソプラゾール 927g
炭酸マグネシウム 309g
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH−32 154.5g
(ヒドロキシプロポキシル基含量:8.8重量%)
(平均粒子径:17.57μm)
ヒドロキシプロピルセルロース(タイプSSL) 309g
精製水 3955g
(2)下掛フィルム有核散剤の製造
前記有核散剤2040gを転動流動型コーティング造粒機[パウレック社製、MP−10]に入れ、送風温度75℃、排気温度約40℃にコントロールし、予め調製した下記組成の下掛フィルム液をタンジャンシャルスプレー方式で、供給速度13g/分で噴霧し、下掛フィルム有核散剤2145gを得た。
[下掛フィルム液]
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 264g
(タイプ2910、粘度3センチストークス)
精製水 5016g
【0041】
(3)腸溶性有核散剤の製造
前記下掛フィルム有核散剤1710gを転動流動型コーティング造粒機[パウレック社製、MP−10]に入れ、送風温度70℃、排気温度約40℃にコントロールし、予め調製した下記組成の腸溶性フィルム液をタンジャンシャルスプレー方式で、供給速度19g/分で噴霧した。ついで、乾燥を7分間行った後、42号の丸篩(355μm)と80号の丸篩(177μm)を用いて篩過し、177〜355μmの腸溶性有核散剤2393gのを得た。
[腸溶性フィルム液]
オイドラギットL30D−55 5016.4g
オイドラギットNE30D 559.0g
クエン酸トリエチル 333.7g
モノステアリン酸グリセリン 106.5g
ポリソルベート80 34.8g
赤色ベンガラ 1.8g
精製水 2547.1g
【0042】
(4)マンニトールのオーバーコート腸溶性有核散剤の製造
前記腸溶性有核散剤600gを転動流動型コーティング造粒機[パウレック社製、MP−10]に入れ、送風温度65℃、排気温度約32℃にコントロールし、予め調製した下記組成のフィルム液をタンジャンシャルスプレー方式で、供給速度11g/分で噴霧した。ついで、乾燥を7分間行い、617gのオーバーコート腸溶性有核散剤を得た。
[フィルム液]
マンニトール 33g
精製水 297g
(5)マンニトール造粒末の製造
マンニトール(メルクジャパン製)800.0gを流動層造粒機[パウレック社製、LAB−1]に入れ、精製水315gを噴霧して造粒し、乾燥して727.3gの造粒末を得た。
(6)混合末の製造
前記オーバーコート腸溶性有核散剤105gと前記マンニトール造粒末97.3g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースLH−33(ヒドロキシプロポキシル基含量5.8重量%、平均粒子径17.8μm)15.0g、結晶セルロース[セオラスKG−801(商品名)、旭化成(株)製]22.5g、クロスポビドン7.5g、無水クエン酸1.5g、アスパルテーム0.45g、ステアリン酸マグネシウム0.75gを加え、袋混合し、混合末を得た。
(7)口腔内崩壊錠の製造
前記混合末250gを、ロータリー式打錠機を用いて、1錠500mg、11mmφ、15Rの杵で打錠圧1.5ton/cmで打錠した。
得られた錠剤の硬度と口腔内崩壊時間は、それぞれ5.9kg、30秒であった。
【0043】
実施例2
(1)有核散剤の製造
ノンパレル105(商品名)(粒子径100〜200μm)900gを転動流動型コーティング造粒機〔パウレック社製、MP−10特2型〕に入れ、送風温度65℃、排気温度約30℃にコントロールし、タンジャンシャルスプレー方式で、供給速度22g/分で予め調製した下記組成のバルク液を噴霧コーティングした。規定量5661gのバルク液を噴霧した時点で噴霧をとめ、そのまま乾燥を8分間行った後、42号の丸篩(350μm)と100号の丸篩(150μm)で篩過し、有核散剤2074gを得た。
[バルク液]
ランソプラゾール 1080g
炭酸マグネシウム 360g
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH−32 180g
(ヒドロキシプロポキシル基含量:8.8重量%)
ヒドロキシプロピルセルロース(タイプSSL) 360g
精製水 4680g
(2)下掛フィルム有核散剤の製造
前記有核散剤2074gを転動流動型コーティング造粒機〔パウレック社製、MP−10特2型〕に入れ、送風温度78℃、排気温度約40℃にコントロールし、予め調製した下記組成の下掛フィルム液をタンジャンシャルスプレー方式で、供給速度22g/分で噴霧した。規定量3355gのフィルム液を噴霧した時点で噴霧をとめ、そのまま乾燥を9分間行った後、42号の丸篩(350μm)と100号の丸篩(150μm)で篩過し、下掛フィルム有核散剤2555gを得た。
[下掛フィルム液]
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 252g
(タイプ2910、粘度3センチストークス)
酸化チタン(TiO) 108g
滅菌タルク〔松村産業(株)製〕 108g
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースLH−32 180g
(ヒドロキシプロポキシル基含量:8.8重量%)
マンニトール 252g
精製水 3600g
【0044】
(3)腸溶性有核散剤の製造
前記下掛フィルム有核散剤1320gを転動流動型コーティング造粒機〔パウレック社製、MP−10特2型〕に入れ、送風温度80℃、排気温度約42℃にコントロールし、予め調製した下記組成の腸溶性フィルム液(A)をタンジャンシャルスプレー方式で、供給速度22g/分で噴霧した。規定量1638gの腸溶性フィルム液を噴霧した。
[腸溶性フィルム液(A)]
オイドラギットL30D−55 1219.2g
オイドラギットNE30D 134.4g
ポリエチレングリコール6000 40.8g
モノステアリン酸グリセリン 24.0g
ポリソルベート80 7.2g
三二酸化鉄 0.24g
黄色三二酸化鉄 0.24g
無水クエン酸 0.48g
精製水 1693g

引き続き、送風温度76℃、排気温度約42℃にコントロールし、予め調製した下記組成の腸溶性フィルム液(B)をタンジャンシャルスプレー方式で、供給速度22g/分で噴霧した。規定量6552gの腸溶性フィルム液を噴霧した。
[腸溶性フィルム液(B)]
オイドラギットL30D−55 4032g
オイドラギットNE30D 447.8g
クエン酸トリエチル 269.3g
モノステアリン酸グリセリン 86.4g
ポリソルベート80 25.9g
三二酸化鉄 0.86g
黄色三二酸化鉄 0.86g
無水クエン酸 0.72g
精製水 2624g

引き続き、送風温度80℃、排気温度約42℃にコントロールし、予め調製した上記組成の腸溶性フィルム液(A)をタンジャンシャルスプレー方式で、供給速度22g/分で噴霧した。規定量819gの腸溶性フィルム液を噴霧した。
(4)マンニトールのオーバーコート腸溶性有核散剤の製造
ひきつづき転動流動型コーティング造粒機〔パウレック社製、MP−10特2型〕を用いて送風温度 85℃、排気温度約35℃にコントロールし、予め調製した下記組成のフィルム液をタンジャンシャルスプレー方式で供給速度22g/分で噴霧した。規定量882gを噴霧した時点で噴霧をとめ、そのまま乾燥を10分間行った後、35号の丸篩(420μm)と60号の丸篩(250μm)を用いて篩過し、1964gのオーバーコート腸溶性有核散剤を得た。
得られたオーバーコート腸溶性有核散剤の平均粒径は、333.7μmであった。
[フィルム液]
マンニトール 180g
精製水 1080g
(5)混合末の製造
前記マンニトールオーバーコート腸溶性有核散剤 270g、マンニトール 204.0g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースLH−33(ヒドロキシプロポキシル基含量5.8重量%)30g、結晶セルロース〔セオラスKG−801(商品名)、旭化成(株)製〕30g、クロスポビドン 15g、無水クエン酸 3g、アスパルテーム 9g、ステアリン酸マグネシウム 6gおよびフレーバー(STRAWBERRY DURAROME、日本フィルメニッヒ(株))3gを袋混合し、混合末を得た。
(6)口腔内崩壊錠の製造
前記混合末570gを、ロータリー式打錠機を用いて、1錠570mg、13mmφ、隅角平面の杵で打錠圧1.5ton/cmで打錠した。
得られた錠剤の硬度と口腔内崩壊時間は、それぞれ 2.6kg、20秒であった。
【0045】
実施例3
ボグリボース 0.6g、エリスリトール(日研化学(株)製)410.4g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH−33(ヒドロキシプロポキシル基含量5.8重量%、平均粒子径17.8μm)120.0g、セオラスKG−801(旭化成(株)製)30.0g、クロスポビドン 30g、無水クエン酸 6.0g、アスパルテーム 1.2gを流動層造粒機[パウレック社製、LAB−1]に仕込み、精製水を噴霧し造粒した。乾燥後、ステアリン酸マグネシウム 1.8gを配合し、ロータリー式打錠機を用いて、1錠300mg、10mmφ、隅角の杵で打錠圧1.0ton/cmで打錠した。
得られた錠剤の硬度と口腔内崩壊時間は、それぞれ10.7kg、26秒であった。
【0046】
実施例4
ボグリボース 0.6g、エリスリトール(日研化学(株)製)440.4g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH−33(ヒドロキシプロポキシル基含量5.8重量%、平均粒子径17.8μm)120.0g、クロスポビドン 30.0g、無水クエン酸 6.0g、アスパルテーム 1.2gを流動層造粒機[パウレック社製、LAB−1]に仕込み、精製水を噴霧し造粒した。乾燥後、ステアリン酸マグネシウム 1.8gを配合し、ロータリー式打錠機を用いて、1錠300mg、10mmφ、隅角の杵で打錠圧1.0ton/cmで打錠した。
得られた錠剤の硬度と口腔内崩壊時間は、それぞれ7.1kg、20秒であった。
【0047】
実施例5
ボグリボース 0.4g、エリスリトール(日研化学(株)製)470.6g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH−23(ヒドロキシプロポキシル基含量5.7重量%、平均粒子径30.8μm)120.0g、無水クエン酸 6.0g、アスパルテーム 1.2gを流動層造粒機[パウレック社製、LAB−1]に仕込み、精製水を噴霧し造粒した。乾燥後、ステアリン酸マグネシウム 1.8gを配合し、ロータリー式打錠機を用いて、1錠300mg、10mmφ、隅角の杵で打錠圧1.25ton/cmで打錠した。
得られた錠剤の硬度と口腔内崩壊時間は、それぞれ4.5kg、23秒であった。
【0048】
実施例6
ボグリボース 0.4g、マンニトール(メルクジャパン(株)製)470.6g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH−23(ヒドロキシプロポキシル基含量5.7重量%、平均粒子径30.8μm)120.0g、無水クエン酸 6.0g、アスパルテーム 1.2gを流動層造粒機[パウレック社製、LAB−1]に仕込み、精製水を噴霧し造粒した。乾燥後、ステアリン酸マグネシウム 1.8gを配合し、ロータリー式打錠機を用いて、1錠300mg、10mmφ、隅角の杵で打錠圧1.25ton/cmで打錠した。
得られた錠剤の硬度と口腔内崩壊時間は、それぞれ4.3kg、27秒であった。
【0049】
実施例7
塩酸マニジピン 40.0g、エリスリトール(日研化学(株)製)460.94g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH−33(ヒドロキシプロポキシル基含量5.8重量%、平均粒子径17.8μm)60.0g、クロスポビドン 30.0g、無水クエン酸 6.0g、アスパルテーム 1.2gを流動層造粒機[パウレック社製、LAB−1]に仕込み、黄色ベンガラ 0.06gを精製水 300gに溶解した溶液を噴霧し造粒した。乾燥後、ステアリン酸マグネシウム 1.8gを配合し、ロータリー式打錠機を用いて、1錠300mg、10mmφ、隅角の杵で打錠圧1.0ton/cmで打錠した。
得られた錠剤の硬度と口腔内崩壊時間は、それぞれ6.0kg、21秒であった。
【0050】
試験例1
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH−30(ヒドロキシプロポキシル基含量14.6重量%、平均粒子径17.26μm)、LH−31(ヒドロキシプロポキシル基含量11.0重量%、平均粒子径18.18μm)、LH−32(ヒドロキシプロポキシル基含量8.8重量%、平均粒子径17.57μm)およびLH−33(ヒドロキシプロポキシル基含量5.8重量%、平均粒子径17.8μm)を、女性4人に投与し、溶けやすさ、口当たりの良さを評価した。
結果を[表1]に示す。
【0051】
【表1】

[表1]から、ヒドロキシプロポキシル基含量が5.8重量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH−33は、溶解性、粉っぽさが改善され、口当たりのよいことが示された。
【0052】
試験例2
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH−30(ヒドロキシプロポキシル基含量14.6重量%、平均粒子径17.26μm)、LH−31(ヒドロキシプロポキシル基含量11.0重量%、平均粒子径18.18μm)、LH−32(ヒドロキシプロポキシル基含量8.8重量%、平均粒子径17.57μm)およびLH−33(ヒドロキシプロポキシル基含量5.8重量%、平均粒子径17.8μm)を用い、次のようにして錠剤を製造した。
エリスリトール(日研化学(株)製)398.5g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース100gを流動層造粒機[パウレック社製、LAB−1]に仕込み、精製水を噴霧し造粒した。乾燥後、ステアリン酸マグネシウム 1.5gを配合し、ロータリー式打錠機を用いて、1錠300mg、10mmφ、隅角の杵で打錠圧1.0ton/cmで打錠した。
得られた錠剤を、女性4人に投与し、溶けやすさ、口当たりの良さを評価した。
結果を[表2]に示す。
【0053】
【表2】


[表2]から、ヒドロキシプロポキシル基含量が5.8重量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH−33を用いて製造した錠剤では、溶解性、粉っぽさが改善され、口当たりのよいことが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシプロポキシル基含量が5重量%以上7重量%未満の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの、医薬成分および糖類含有速崩壊性固形製剤製造のための使用。
【請求項2】
速崩壊性固形製剤が口腔内速崩壊性固形製剤である請求項1記載の使用。
【請求項3】
速崩壊性固形製剤が錠剤である請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
糖類が糖アルコールである請求項1記載の使用。
【請求項5】
糖アルコールがマンニトールまたはエリスリトールである請求項4記載の使用。
【請求項6】
糖類を、固形製剤100重量部に対して5〜97重量部含有する請求項1記載の使用。
【請求項7】
ヒドロキシプロポキシル基含量が5重量%以上7重量%未満の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを固形製剤100重量部に対して3〜50重量部含有する請求項1記載の使用。
【請求項8】
医薬成分がランソプラゾールである請求項1記載の使用。
【請求項9】
医薬成分がボグリボースである請求項1記載の使用。
【請求項10】
医薬成分が塩酸マニジピンである請求項1記載の使用。
【請求項11】
医薬成分が塩酸ピオグリタゾンである請求項1記載の使用。
【請求項12】
医薬成分がカンデサルタンシレキセチルである請求項1記載の使用。
【請求項13】
錠剤が細粒を含有する請求項3記載の使用。
【請求項14】
医薬成分が細粒中に含有されている請求項13記載の使用。
【請求項15】
細粒以外の部分に、1)糖類および2)ヒドロキシプロポキシル基含量が5重量%以上7重量%未満の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有する請求項14記載の使用。
【請求項16】
糖類を、細粒以外の成分100重量部に対して5〜97重量部含有する請求項15記載の使用。
【請求項17】
ヒドロキシプロポキシル基含量が5重量%以上7重量%未満の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを細粒以外の成分100重量部に対して3〜50重量部含有する請求項15記載の使用。
【請求項18】
ヒドロキシプロポキシル基含量が5重量%以上7重量%未満の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いることを特徴とする、医薬成分および糖類含有速崩壊性固形製剤の速崩壊性改善方法。


【公開番号】特開2010−132709(P2010−132709A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49539(P2010−49539)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【分割の表示】特願2000−139628(P2000−139628)の分割
【原出願日】平成11年7月27日(1999.7.27)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】