説明

速度計

【課題】 歩幅に基づかずに歩行速度を計測できるようにすること。
【解決手段】 検出回路101は使用者の脚部に装着して使用され、加速度センサ部106〜108は歩行によって生じる加速度に対応するレベルの加速度信号を出力し、歩行パルス検出部121は歩行パルス信号を出力する。処理部103は、前記加速度信号及び歩行パルス信号に基づいて、前記使用者の歩行速度、加速度信号及び歩行ピッチの関係式を算出して記憶部105に記憶する。そして、処理部103は、前記加速度信号及び歩行パルス信号を受信し、前記加速度信号、歩行ピッチ、記憶部105に記憶した前記関係式を用いて前記使用者の歩行速度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の移動速度を計測する速度計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、歩数計測用のセンサとして加速度センサが使用されており、前記加速度センサから出力される上下振動或いは着地衝撃による信号から、歩数を求め、予め決められた所定の歩幅を掛け、移動距離や移動速度を求める技術は古くから公知である。
しかしながら、歩数を正確に求めることは比較的容易だが、正確な歩幅の設定が困難である。
【0003】
歩幅を正確に求める(設定する)ために、次のような技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、歩数×歩幅で求める移動距離の精度を高めるため、ピッチに応じて歩幅を調整するようにした発明が開示されている。
また、特許文献2には、加速度と歩幅の相関を利用し、加速度から正確な歩幅を求め、それに歩数を掛けて移動距離を求めるようにした発明が開示されている。
【0004】
このように、特許文献1、2記載の発明においては、歩幅に基づいて速度を算出するように構成している。
しかしながら、「ピッチと歩幅」、「加速度と歩幅」いずれもある程度の相関はあるが、条件が限定されたり、相関が弱かったりと、歩幅について十分な精度が得られない。したがって、歩幅に基づいて正確な速度を求めることは困難という問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開平7−333000号公報
【特許文献2】特開平9−152355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、歩幅に基づかずに移動速度を計測できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、使用者の脚部に装着して使用され、前記使用者の移動によって生じる加速度に対応するレベルの加速度信号を出力する加速度センサ手段と、前記使用者の移動速度、加速度信号及び移動ピッチの関係式を算出する関係式算出手段と、少なくとも前記関係式を記憶する記憶手段と、前記加速度信号に基づいて前記使用者の移動ピッチを算出するピッチ算出手段と、計測モードにおいて前記加速度センサ手段から加速度信号を受信し、前記加速度信号、前記ピッチ算出手段が算出した移動ピッチ、前記記憶手段に記憶した前記関係式を用いて前記使用者の移動速度を算出する速度算出手段とを備えて成ることを特徴とする速度計が提供される。
【0008】
関係式算出手段は、前記使用者の移動速度、加速度信号及び移動ピッチの関係式を算出する。記憶手段は、少なくとも前記関係式を記憶する。ピッチ算出手段は、加速度センサ手段からの加速度信号に基づいて使用者の移動ピッチを算出する。速度算出手段は、計測モードにおいて前記加速度センサ手段から加速度信号を受信し、前記加速度信号、前記ピッチ算出手段が算出した移動ピッチ、前記記憶手段に記憶した前記関係式を用いて前記使用者の移動速度を算出する。
【0009】
ここで、前記関係式算出手段は、前記使用者が予め定めた所定速度及び所定移動ピッチで移動することによって得られる前記加速度信号のレベルと、前記移動速度及びピッチとの関係に基づいて前記関係式を算出するように構成してもよい。
また、前記関係式算出手段は、前記予備モードにおいて、前記使用者が予め定めた所定速度及び所定移動ピッチで複数回移動することによって得られる前記加速度信号レベルの平均値と、前記移動速度及びピッチとの関係に基づいて前記関係式を算出するように構成してもよい。
【0010】
また、前記関係式はY=aX+bZ+c(但し、Yは平均移動速度、Xは加速度信号レベルの平均値、Zは移動ピッチ、a、b及びcは定数)であり、前記関係式算出手段は、3回の計測結果に基づいて前記定数a、b、cを算出するように構成してもよい。
また、前記加速度センサ手段は、相互に感度軸が異なる複数の加速度センサを含むように構成してもよい。
【0011】
また、少なくとも前記加速度センサ手段は前記使用者の足部に装着して使用されるように構成してもよい。
また、前記速度を表示する表示手段を有し、前記表示手段は腕に装着して使用されるように構成してもよい。
また、前記加速度センサ手段からの加速度信号に基づいて歩数を算出する歩数算出手段を備えて成るように構成してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、歩幅に基づかずに移動速度を計測することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
先ず、本発明の実施の形態に係る速度計において、速度計測を行うための基本概念を説明する。本実施の形態に係る速度計において、使用者の歩行速度を計測するために加速度センサを使用している。
図7は、本実施の形態に使用する加速度センサの装着部位を示す図である。
【0014】
少なくとも加速度センサ703は、使用者701の脚部(つま先から大腿部までの身体部位)702に装着して使用する。図7には加速度センサ703を足部705の甲に装着した状態を示している。
加速度センサ703からの加速度信号に基づいて算出した歩行速度は、無線送信等によって、手首に装着した表示部704により表示する。
【0015】
図8は、歩行ピッチと、加速度センサから出力される加速度信号の所定時間(例えば60秒)の平均値(平均加速度)との関係を示す特性図である。図8には、使用者701が加速度センサ703を足部705の甲に装着した状態(図7参照)で、異なる3種類の速度で歩行した例を示している。特性801〜803は、各々、歩行速度が4km/h、5km/h、6km/hで歩行した場合の特性である。
【0016】
図8から解るように、歩行ピッチが変化した場合でも、平均加速度と歩行速度には高い相関関係がある。
本実施の形態に係る速度計は、加速度センサから出力される加速度の、所定時間における平均値と使用者の移動速度に高い相関があり、この相関は、加速度センサの装着部位を脚部に限定すれば歩行ピッチに依存しないという知見に基づいて成されたものである。
尚、図8の特性は、加速度センサ703を使用者701の足部705の甲に装着した状態で計測したものであるが、つま先から大腿部に至る脚部702のいずれの部位に、直接的に、あるいは、衣服や靴等に装着することによって間接的に装着しても同様の結果が得られると考えられる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る速度計について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る速度計のブロック図である。
図1において、速度計は、使用者の歩行を検出して、その加速度に対応するレベルの加速度信号を出力する検出部101、操作スイッチ等によって構成され速度計測開始操作等の各種操作を行う入力部102、検出部101からの加速度信号に基づいて歩行速度の算出処理等を行う処理部103、計測した歩行速度や歩数等を表示する表示部104、記憶部105、発振部120、歩行パルス検出部121及びスピーカ122を備えている。
【0018】
検出部101は、相互に感度軸が異なる(本実施の形態では相互に90度異なる)加速度センサ109、111、113を有する複数(本実施の形態では3つ)の加速度センサ部106〜108を備えている。
加速度センサ部106は、X軸方向の感度軸を有し加速度に応じた信号レベルのアナログ形式の加速度信号を出力する加速度センサ109、加速度センサ109からの加速度信号をサンプリングすることによってアナログ/デジタル(A/D)変換して、対応する信号レベルのデジタル形式加速度信号を出力する加速度レベル検出部110を備えている。
【0019】
加速度センサ部107は、Y軸方向の感度軸を有し加速度に応じた信号レベルのアナログ形式の加速度信号を出力する加速度センサ111、加速度センサ111からの加速度信号をアナログ/デジタル(A/D)変換して、対応する信号レベルのデジタル形式加速度信号を出力する加速度レベル検出部112を備えている。
【0020】
同様に、加速度センサ部108は、Z軸方向の感度軸を有し加速度に応じた信号レベルのアナログ形式の加速度信号を出力する加速度センサ113、加速度センサ113からの加速度信号をアナログ/デジタル(A/D)変換して、対応する信号レベルのデジタル形式加速度信号を出力する加速度レベル検出部114を備えている。
また、加速度センサ113の出力部には、加速度センサ113からの加速度信号に基づいて、歩行に対応する歩行パルス信号を出力する歩行パルス検出部121が接続されている。
【0021】
処理部103は、中央処理装置(CPU)によって構成されている。
記憶部105は、処理部103が実行するプログラムを記憶したROMおよび処理部103がプログラムを実行する際に作業領域等として使用されるRAMから構成される。記憶部105のRAMには、検出部101からの加速度信号に基づいて速度算出を行うための速度演算式の記憶領域115、速度データの記憶領域116、特定速度時の加速度データ1、2、3の記憶領域117、118、119が設けられている。また、図示していないが、歩数やピッチ等のデータを記憶するデータ記憶領域が設けられている。
【0022】
発振部120は、計時動作の基準となる時計信号を生成する。処理部103は、入力部102の操作に応じて、発振部120からの時計信号を基に歩行時間等の時間計測をすることができる。
表示部104は処理部103と有線によって接続するように構成できるが、図7で説明したように、無線によって処理部103と接続するように構成してもよい。
スピーカ122は、処理部103の制御の下、予備モードにおいて所定周波数でピッチ音を出力したり、予備モードや計測モードにおいて警報音を出力する等の報音動作を行う。
【0023】
ここで、検出部101、表示部104、記憶部105、スピーカ122は、各々、加速度センサ手段、表示手段、記憶手段、報音手段を構成している。処理部103は関係式算出手段、速度算出手段を構成している。また、処理部103及び歩行パルス検出部121は、歩数算出手段、ピッチ算出手段を構成している。
【0024】
加速度センサ手段は、使用者の脚部に装着して使用され、歩行によって生じる加速度に対応するレベルの加速度信号を出力することができる。
関係式算出手段は、予備モードにおいて前記使用者の歩行速度、前記加速度信号及び歩行ピッチの関係式を算出することができる。記憶手段は少なくとも前記関係式を記憶することができる。
【0025】
ピッチ算出手段は、前記加速度信号に基づいて前記使用者の歩行ピッチを算出することができる。
速度算出手段は、計測モードにおいて前記加速度センサ手段からの加速度信号を受信し、前記加速度信号、前記ピッチ算出手段が算出した歩行ピッチ、前記記憶手段に記憶した前記関係式を用いて前記使用者の歩行速度を算出することができる。
表示手段は前記速度を表示できると共に、歩数及び/又はピッチも表示でき、例えば、腕に装着して使用するように構成できる。
報音手段は、予備モードにおいて所定周波数でピッチ音を出力することができる。
【0026】
図2及び図3は、平均速度、平均加速度信号レベル及び歩行ピッチの関係式に使用する定数を求めるモード(予備モード)の処理を示すフローチャートである。この処理は、主として処理部103が記憶部105のROMに記憶したプログラムを記憶部105のRAMにロードして実行することによって行われる。
また、図4及び図5は、前記予備モードにおいて表示部104の表示内容を示す図である。
以下、図1〜図5を用いて、予備モードの動作を説明する。
【0027】
先ず使用者は、少なくとも加速度センサ109、111、113を自己の足部の甲に装着し、入力部102を操作することによって予備モードの動作を開始させる。
処理部103は、入力部102による予備モード開始操作に応答して、表示部104が図4(a)の表示を行うように制御する。
使用者は、表示部104の表示を見て、入力部102のボタンを押して予備モードでの計測スタートを入力する。
【0028】
処理部103は、予備モードでの計測スタートを検出すると(ステップS201)、スピーカ122がピッチ値1(例えばピッチ110歩/分に相当する110回/分)に対応する周波数のピッチ音1を報音開始するように制御する(ステップS202)。同時に、処理部103は、発振部120からの時計信号に基づいて計時動作を開始する(ステップS203)。
【0029】
使用者は、スピーカ122から出力される前記ピッチ音1に合わせて、平均速度1である4km/hで歩行を開始する。
また、予備モード開始にともない、各加速度センサ109、111、113も歩行検出動作を開始して、加速度に応じた信号レベルのアナログ形式加速度信号を出力する。
処理部103は、前記計測スタートを検出して計測を開始すると、表示部104を図4(b)の計測中表示に切り換えるように制御する。
【0030】
処理部103は、所定周期で生じるように設定したサンプリングタイミングが到来すると(ステップS204)、各加速度センサ109、111、113からの加速度信号を、対応する加速度レベル検出部110、112、114がサンプリングして出力するように制御する。各加速度レベル検出部110、112、114は、対応する加速度センサ109、111、113からの加速度信号をデジタル信号形式の加速度信号に変換して出力する。
【0031】
処理部103は、各加速度レベル検出部110、112、114からのデジタル形式加速度信号を検出し、加速度レベルを計測する(ステップS205)。このとき、加速度レベル検出部110、112、114から出力される加速度信号のレベルをXA、YA、ZAとすると、加速度レベルは次式により算出する。
加速度レベル=√(XA+YA+ZA
尚、本実施の形態では、3つの加速度センサ109、111、113を用いているため、加速度レベルを前記式によって算出したが、用いる加速度センサの数や条件等に応じて、適宜適切な式を用いて算出することができる。
【0032】
次に、処理部103は、その内部カウンタ(図示せず)の計数値に1加算する(ステップ206)。前記カウンタの計数値は、1つの加速度レベル検出部からの加速度信号を計測した数に相当する。
次に処理部103は、記憶部105に記憶していた加速度レベルの積算値に、今回計測した加速度レベルを積算して、新たな加速度レベルの積算値を記憶部105に保存する(ステップS207)。
【0033】
処理部103は、使用者が入力部102から計測ストップ指示を入力しない限り、処理ステップS203に戻って前記処理を繰り返す(ステップS208)。
使用者は、1分間歩行した時点で、入力部102を操作して計測ストップ指示を入力する。処理部103は、処理ステップS208において、使用者が入力部102から計測ストップ指示を入力したと判断すると、計時動作を終了する(ステップS209)。同時に処理部103は、表示部104を図4(c)の計測終了表示に切り換えるように制御する。
【0034】
次に処理部103は、計測した時間及び加速度レベル積算値に基づいて単位時間当たりの平均加速度レベル1を算出する(ステップS210)。このとき、処理部103は下記式によって平均加速度レベル1を算出する。
平均加速度レベル1=加速度レベル積算値/カウンタの計数値
次に処理部103は、算出した平均加速度レベル1、平均速度1及びピッチ値1を対応付け、これを特定速度時加速度データ1として記憶部105の記憶領域117に記憶し、第1回目の計測処理を終了する(ステップS211)。
【0035】
続いて処理部103は、表示部104が図5(a)の表示を行うように制御する。
使用者は、表示部104の表示を見て、入力部102のボタンを押して予備モードでの第2回目の計測スタートを入力し、ピッチ値2に対応する周波数(例えば、第1回目と同じピッチ110歩/分に相当する110回/分)のピッチ音2を報音開始するように制御する(ステップS202)。同時に、処理部103は、発振部120からの時計信号に基づいて計時動作を開始する(ステップS203)。
【0036】
使用者は、スピーカ122から出力される前記ピッチ音2に合わせて、平均速度2である6km/hで歩行を開始する。
処理部103は、予備モードでの第2回目の計測スタートを検出すると、第1回目の計測と同様の処理を行い、下記式によって単位時間当たりの平均加速度レベル2を算出する。
次に処理部103は、算出した平均加速度レベル2、平均速度2及びピッチ値2を対応付け、これを特定速度時加速度データ2として記憶部105の記憶領域118に記憶し、第2回目の計測処理を終了する(ステップS201〜S211)。
平均加速度レベル2=加速度レベル積算値/カウンタの計数値
【0037】
第2回目と同様にして、第3回目の計測を行う(ステップS201〜S211)。第3回目の場合、表示部104には図5(a)〜(c)と同じ表示がなされるが、ピッチ音は、ピッチ値1、2とは異なるピッチ値3に対応する周波数(例えば、ピッチ130歩/分に相当する130回/分)のピッチ音3を出力する(ステップS202)。尚、歩行速度は
第2回目と同じ速度である。
【0038】
処理部103は、予備モードでの第3回目の計測スタートを検出すると、第2回目の計測と同様の処理を行い、下記式によって単位時間当たりの平均加速度レベル3を算出する。
次に処理部103は、算出した平均加速度レベル3、平均速度3及びピッチ値3を対応付け、これを特定速度時加速度データ3として記憶部105の記憶領域119に記憶し、第3回目の計測処理を終了する。
平均加速度レベル3=加速度レベル積算値/カウンタの計数値
【0039】
続いて処理部103は、記憶部105に記憶した特定速度時加速度データ1〜3を参照して(図3のステップS301〜S303)、下記速度演算式の定数a、b、cを算出し、速度演算式を決定する(ステップS304)。
平均速度=a×平均加速度レベル+b×ピッチ値+c
このようにして平均速度、平均加速度レベル及びピッチ値の関係式が求められるため、以後、処理部103は、前記速度演算式を用いて、検出部101からの加速度信号に基づいて、当該使用者の平均歩行速度を算出することが可能になる。
【0040】
処理部103は、前記速度演算式を記憶部105の記憶領域115に格納して記憶する(ステップS305)。尚、定数a、b、cのみを記憶部105に記憶し、前記定数を用いて所定の演算処理を行い、結果として前記速度演算式と同じ演算を行うようにしてもよい。このように、少なくとも使用者の歩行速度、加速度信号及び歩行ピッチの関係式に用いる定数を記憶部105に記憶するように構成することができる。
【0041】
図6は、前記の如くして決定した速度演算式を用いて歩行速度を計測するモード(計測モード)の処理を示すフローチャートである。この処理は、主として処理部103が記憶部105のROMに記憶したプログラムを記憶部105のRAMにロードして実行することによって行われる。
【0042】
先ず使用者は、予備モードと同様に、少なくとも加速度センサ109、111、113を自己の足部の甲に装着し、入力部102を操作することによって計測モードの動作を開始させると共に歩行開始する。
処理部103は、入力部102による計測開始指示を検出すると(ステップS601)、計測動作を開始する。
【0043】
これにより、各加速度センサ109、111、113が動作開始して、歩行によって生じる加速度に応じた信号レベルのアナログ形式加速度信号を出力する。
処理部103は、入力部102による計測終了(ストップ)指示を検出した場合には処理を終了するが(ステップS602)、前記指示を検出しない場合には、サンプリングタイミングが到来したか否かを判断する(ステップS603)。
処理部103は、処理ステップS603において、サンプリングタイミングが到来していないと判断すると、歩行パルス検出部121が歩行を検出して対応する歩行パルス信号を出力したか否かを判断する(ステップS615)。
【0044】
処理部103は、歩行パルス検出部121が歩行パルス信号を出力したと判断した場合には、処理部103内部の歩数を計数する歩数カウンタ(図示せず)の計数値に1加算し、処理ステップS602へ戻る(ステップS616)。
処理部103は処理ステップS615において、歩行パルス検出部121が歩行パルス信号を出力していないと判断した場合には、そのまま処理ステップS602へ戻る。
【0045】
一方、処理部103は、処理ステップS603においてサンプリングタイミングが到来したと判断すると、各加速度センサ109、111、113からの加速度信号を対応する加速度レベル検出部110、112、114がサンプリングして出力するように制御する。
処理部103は、各加速度レベル検出部110、112、114からのデジタル形式加速度信号を検出し、処理ステップS205と同様にして、加速度レベルを計測する(ステップS604)。尚、用いる加速度センサの数や条件等に応じて、適宜適切な式を用いて算出することができることは前記同様である。
【0046】
次に処理部103は、記憶部105に記憶していた加速度レベルの積算値に、今回計測した加速度レベルを積算して、新たな加速度レベルの積算値を記憶部105に保存する(ステップS605)。
次に、処理部103は、その内部カウンタの計数値に1加算する(ステップ606)。前記カウンタの計数値は、1つの加速度レベル検出部からの加速度信号を計測した数に相当する。
【0047】
処理部103は、平均加速度計測タイミングが発生したと判断すると(ステップS607)、記憶部105に記憶した加速度レベル積算値及び前記カウンタの計数値に基づいて単位時間当たりの平均加速度レベルを算出する(ステップS608)。平均加速度計測タイミングは、前記カウンタの計数値が所定値になる毎に発生するように構成できる。
次に、処理部103は、前記カウンタをリセットして計数値を零にする(ステップS609)。
【0048】
次に、処理部103は、歩行パルス検出部121からの歩行パルス信号に基づいて単位時間当たりのピッチ値を算出した後(ステップS610)、前記歩数カウンタの計数値を零にリセットする(ステップS611)。
続いて処理部103は、前記速度演算式を参照し(ステップS612)、前記速度演算式に前記平均加速度レベル及びピッチ値を代入することによって、平均速度を算出する(ステップS613)。
【0049】
処理部103は、算出した平均速度の情報を表示部104に出力し(ステップS614)、前記速度を表示するように表示部104を制御する。これにより、表示部104には、使用者の平均速度が表示される。また、処理部103は、入力部102からの指示に応答して、検出部101からの歩行信号に基づいて(換言すれば、歩行パルス検出部121の歩行パルス信号に基づいて)算出したピッチや歩数を、表示部104に表示するよう制御する。これにより、表示部104には、歩数、ピッチ等が表示される。
【0050】
以上述べたように、本実施の形態に係る速度計においては、検出回路101は使用者の足部に装着して使用され、歩行によって生じる加速度に対応するレベルの加速度信号を出力する。処理部103は、予備モードにおいて、前記使用者の歩行速度、検出回路101からの加速度信号及び歩行ピッチの関係式を算出して記憶部105に記憶する。また、処理部103は、計測モードにおいて、検出回路101からの加速度信号及び歩行パルス信号を受信し、前記加速度信号、記憶部105に記憶した前記関係式を用いて前記使用者の歩行速度を算出する。
【0051】
したがって、歩幅に基づかずに歩行速度を計測することが可能になる。
また、歩行時に発生する加速度信号に基づいて歩行速度を算出するため、歩数と歩幅設定値をもとに歩行速度を演算する従来の速度計よりも高い精度で歩行速度を計測することが可能である。
また、使用者が歩幅を予め設定する必要はなく、また、歩行時の歩行状態(意図的な歩幅変更)に影響されない精度の高い速度計を実現することが可能になる。
【0052】
尚、本実施の形態では、歩行速度の例で説明したが、歩行に限らず、走行等、使用者が移動する移動速度の測定に適用可能である。
また、速度計全体を一体構成する必要はなく、使用者の利便性を考慮して、加速度センサを搭載した送信部と、表示部を搭載した受信部とを別々の装置としてシステム構成することも可能である。この場合、送信部から受信部へデータを送信する方式として無線通信方式の利用も可能である。
【0053】
また、送信データの種類によって、処理部の処理内容をそれぞれ送信部と受信部に適宜分割して搭載することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
使用者の脚部に装着し、前記使用者の移動速度を計測する速度計に利用可能である。また、心電計や歩数計等の他の機器と組み合わせた速度計としても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態に係る速度計のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る速度計の処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係る速度計の処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態に係る速度計の表示内容を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る速度計の表示内容を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る速度計の処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態に使用する加速度センサの装着部位を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態におけるピッチ−平均加速度の関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0056】
101・・・検出部
102・・・入力部
103・・・処理部
104・・・表示部
105・・・記憶部
106〜108・・・加速度センサ部
109、111、113・・・加速度センサ
110、112、114・・・加速度レベル検出部
115〜119・・・記憶領域
120・・・発振部
121・・・歩行パルス検出部
122・・・スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の脚部に装着して使用され、前記使用者の移動によって生じる加速度に対応するレベルの加速度信号を出力する加速度センサ手段と、
前記加速度センサ手段を用いて前記使用者の移動速度、加速度信号及び移動ピッチの関係式を算出する関係式算出手段と、
少なくとも前記関係式を記憶する記憶手段と、
前記加速度信号に基づいて前記使用者の移動ピッチを算出するピッチ算出手段と、
前記加速度センサ手段から加速度信号を受信し、前記加速度信号、前記ピッチ算出手段が算出した移動ピッチ、前記記憶手段に記憶した前記関係式を用いて前記使用者の移動速度を算出する速度算出手段とを備えて成ることを特徴とする速度計。
【請求項2】
前記関係式算出手段は、前記使用者が予め定めた所定速度及び所定移動ピッチで移動することによって得られる前記加速度信号のレベルと、前記移動速度及びピッチとの関係に基づいて前記関係式を算出することを特徴とする請求項1記載の速度計。
【請求項3】
前記関係式算出手段は、前記使用者が予め定めた所定速度及び所定移動ピッチで複数回移動することによって得られる前記加速度信号レベルの平均値と、前記移動速度及びピッチとの関係に基づいて前記関係式を算出することを特徴とする請求項1又は2記載の速度計。
【請求項4】
前記関係式はY=aX+bZ+c(但し、Yは平均移動速度、Xは加速度信号レベルの平均値、Zは移動ピッチ、a、b及びcは定数)であり、前記関係式算出手段は、3回の計測結果に基づいて前記定数a、b、cを算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の速度計。
【請求項5】
前記加速度センサ手段は、相互に感度軸が異なる複数の加速度センサを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の速度計。
【請求項6】
少なくとも前記加速度センサ手段は前記使用者の足部に装着して使用されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の速度計。
【請求項7】
前記速度を表示する表示手段を有し、前記表示手段は腕に装着して使用されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載の速度計。
【請求項8】
前記加速度センサ手段からの加速度信号に基づいて歩数を算出する歩数算出手段を備えて成ることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一に記載の速度計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−292295(P2008−292295A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137965(P2007−137965)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】