造形複合装置
【課題】 立体物の複製は大きなスペースが必要で、手間や配線の煩雑さが問題であった。
【解決手段】 造形時に台座となる台部は移動可能となっており、蓄積部にて粉末状形成材料を蓄積しているので、ならし部は上記蓄積部から上記台部上に供給された上記粉末状形成材料を上記台部上でならす。
一方、スキャナー部は、上記台部上のスキャン対象を立体スキャン可能であり、このスキャナー部の立体スキャンによって生成したスキャンデータに基づいて制御部が造形データを生成し、同造形データに基づき、上記噴出部によって上記ならされた粉末状形成材料に結合材を噴出させることで造形を行わせる。
【解決手段】 造形時に台座となる台部は移動可能となっており、蓄積部にて粉末状形成材料を蓄積しているので、ならし部は上記蓄積部から上記台部上に供給された上記粉末状形成材料を上記台部上でならす。
一方、スキャナー部は、上記台部上のスキャン対象を立体スキャン可能であり、このスキャナー部の立体スキャンによって生成したスキャンデータに基づいて制御部が造形データを生成し、同造形データに基づき、上記噴出部によって上記ならされた粉末状形成材料に結合材を噴出させることで造形を行わせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元の造形複合装置に関し、特に、3次元の立体スキャナーと3次元の造形装置を兼ね備えた造形複合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体物の造形技術として幾つかの手法が知られている。具体的には、いわゆる光造形法(特許文献1参照)、選択的レーザー焼結法(特許文献2参照)、溶融堆積法(特許文献3参照)、粉末結合法(特許文献4参照)、シート積層法(特許文献5参照)、インクジェットによる材料の直接吐出による造形法(特許文献6参照)等の積層型の造形法が知られている。
【0003】
また、測定対象となる立体物を3次元測定して3次元モデルデータを出力可能な3次元測定器(3次元デジタイザ)が知られている。
また、測定対象物を測定する装置や、コンピューターや、立体物の造形のための装置といった複数の装置からなるシステムによって、立体物のコピーを実現する技術が知られている(特許文献7,8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008‐195069号公報
【特許文献2】特表2010‐510104号公報
【特許文献3】特表2009‐525207号公報
【特許文献4】特表2002‐507940号公報
【特許文献5】特開2001‐301060号公報
【特許文献6】特表2003‐535712号公報
【特許文献7】特開2004‐69403号公報
【特許文献8】特開2006‐250906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のように、測定対象物を測定する装置や立体物の造形のための装置が分離した構成においては、各装置が占有スペースを必要としたり、装置間におけるコンピューターを介したデータ転送などの手間や配線の煩雑さがあった。このような各装置による多くのスペースの占有や手間などは、立体物の複製(コピー)を家庭やオフィス等で手軽に実現したいユーザに対する障害となっていた。
【0006】
また、粉末結合法の場合は粉末状形成材料を造形する各層ごとに吐出し、表面をなだらかにしなければならない。従来は、この過程をコンパクトな構成で実現することができなかった。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、立体物の複製を従来よりも小さなスペースで且つ容易に実行することが可能な3次元の造形複合装置を提供する。また、粉末結合法を採用するにあたり構成が簡易な造形複合装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、造形時に台座となる台部は移動可能となっており、蓄積部にて粉末状形成材料を蓄積しているので、ならし部は上記蓄積部から上記台部上に供給された上記粉末状形成材料を上記台部上でならす。
一方、スキャナー部は、上記台部上のスキャン対象を立体スキャン可能であり、このスキャナー部の立体スキャンによって生成したスキャンデータに基づいて制御部が造形データを生成し、同造形データに基づき、上記噴出部によって上記ならされた粉末状形成材料に結合材を噴出させることで造形を行わせる。
【0008】
一例として、上記台部は略鉛直方向に配向された筒体の中と外で当該筒体の配向方向に沿って移動可能とし、上記台部が上記筒体の外で上方に位置する状態で、上記スキャナー部は上記台部上に載置されたスキャン対象を立体スキャンする。また、上記台部が上記筒体の中に入ると、上記筒体の開口面と当該筒体の内部に位置する上記台座と当該筒体の内周面とで囲まれた空間が形成される。この空間に上記粉末状形成材料を収容した上で、上記ならし部は当該筒体の開口面で粉末状形成材料をならす。この状態で、上記噴出部は、上記筒体の開口面に位置する粉末状形成材料に上記結合材を噴出することで造形を行える。
【0009】
粉末状形成材料を台部に供給する手法として、上記蓄積部を、上面に開口を有するようにして上記筒体に隣接して設け、下方から上記粉末状形成材料を押し上げるようにして開口より上方に押し出せるようにする。そして、上記ならし部は、この蓄積部の開口で押し出される上記粉末状形成材料を、隣接する上記筒体の側に掻き出すように運ぶ。もともと台部の上の粉末状形成材料の表面をならすのであるから、隣接する蓄積部で下方から押し上げられる粉末状形成材料を隣の台部の側に掻き出す動作も行える。
【0010】
粉末状形成材料を有効利用するべく、上記蓄積部は、上記筒体に隣接して同筒体の外でならした粉末状形成材料を回収する回収部を備えるようにしてもよい。このようにすれば、筒体の外に運ばれるならされた粉末状形成材料の余分は回収部にて回収され、回収した粉末状形成材料を再利用することができる。
なお、上記台部の縁部には、下方に向かって上記筒体の内面に略一致して摺動可能な内壁を形成してもよい。台部は筒体の外の上方に移動することがあり、このときに内壁があることで筒体内に粉末状形成材料が入り込むのを防止できる。
【0011】
スキャナー部の設置位置として、上記台部が所定の高さから天井の側に向けて上下動可能であるときに、天井がある形態においては、上記スキャナー部は、台部の可動範囲における中央よりも低い位置に備えるとよい。
天井があるときは、台部にスキャン対象を載置したときに、上方へは少ししか移動できない。従って、高さ分だけは下方へ移動しながら立体スキャンすることになる。台部の上のスキャン空間における低い位置にスキャナー部があれば、台部が下がる移動に際し、低い位置のスキャナー部を越えるようにスキャン対象をおろしていく。そして、その可動範囲を最も有効に利用して同台部上のスキャン対象の高さ分をスキャンできるようになる。
【0012】
逆に天井が開口している形態においては、上記台部が所定の高さから天井の側に向けて上下動可能であるときに、上記スキャナー部は、台部の上のスキャン空間における中央よりも高い位置に備える。
天井がないので、台部が上方へ移動して立体スキャンを行うことが可能であり、台部の上のスキャン空間における高い位置にスキャナー部があれば、その位置を越えるようにスキャン対象を上げていく際に立体スキャンを行える。
【0013】
以上のスキャンと造形は台部を共用し、また、スキャン空間と造形空間を共用している。さらに、制御系も共通の動作を共通の機構でまかなうことができ、コンパクトな複合装置を提供できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、立体物の複製を従来よりも小さなスペースで且つ容易に実行することが可能な3次元の造形複合装置を提供できる。また、構成も簡易な造形複合装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】造形装置の外観例を示した斜視図である。
【図2】造形装置の構成を概略的に示した図である。
【図3】プラットフォームの構成例を示した図である。
【図4】天井がある場合のスキャナー部の設置位置を示す概略図である。
【図5】天井がない場合のスキャナー部の設置位置を示す概略図である。
【図6】支持部と移動部と造形ヘッドを概略的に示す斜視図である。
【図7】支持部と移動部と造形ヘッドを概略的に示す平面図である。
【図8】蓄積部とならし部による粉末状形成材料の掻き出しの過程を示す概略図である。
【図9】蓄積部とならし部による粉末状形成材料の掻き出しの過程を示す概略図である。
【図10】蓄積部とならし部による粉末状形成材料の掻き出しの過程を示す概略図である。
【図11】ならし部による余分な粉末状形成材料を回収部へ送る過程を示す概略図である。
【図12】造形処理を模式的に示す概略図である。
【図13】造形データをネットワークを介して取得する状況を示す概略図である。
【図14】造形処理の手順を示すフローチャートである。
【図15】造形処理の要部の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
1.複合機の構成
図1は、本実施形態にかかる3次元の造形複合装置を適用した3次元複合機10の外観例を斜視図により示している。3次元複合機10は、装置全体を覆う筺体11の前面上部側に扉12を有している。また、筺体11の内部には、処理用空間としてのチャンバー13が形成されている。ユーザは、扉12を開けることで、チャンバー13内にアクセス可能であり、チャンバー13内に測定対象物Mとしての立体物を載置したり、載置した測定対象物Mを取り出したり、チャンバー13内で造形された立体物(造形物R)を取り出したりすることができる。3次元複合機10は、筺体11表面の所定位置に、ユーザに対する表示部としての表示装置11a(液晶パネル等)や、ユーザからの操作を受け付ける操作受付部11bとしてのスイッチやボタンやタッチパネル等を適宜備える。
【0017】
図2は、3次元複合機10の構成を概略的に示している。3次元複合機10は、チャンバー13内に載置された測定対象物Mを3次元測定(立体スキャン)して3次元モデルデータを取得可能な測定部(スキャナー部)20と、与えられた3次元モデルデータに基づいてチャンバー13内に造形物Rを造形可能な造形部30と、測定部20と造形部30とを制御する制御部40とを含む。ここで言う与えられた3次元モデルデータとは、外部から3次元複合機10に接続されたコンピューターや記憶媒体(メモリーカード等)から3次元複合機10が読み込む3次元モデルデータと、測定部20によって取得される3次元モデルデータとの両方を含む意味である。つまり、一台の3次元複合機10は、立体物の3次元測定機能と、立体物の造形機能と、これら機能を合わせた立体物の複製機能とを兼ね備えている。また、3次元複合機10は、造形方法に応じた造形のための構造を備え、例えばチャンバー13の底面側に配設された略水平な台(プラットフォーム14)と、プラットフォーム14をチャンバー13内において3次元複合機10の上下方向(縦方向)に移動させることが可能なモーター等からなるプラットフォーム移動機構15を含む。
【0018】
測定部20は、測定対象物Mを3次元測定して3次元モデルデータを取得可能な機構であれば、公知の非接触型の3次元デジタイザを含めて種々の構成を採ることができる。測定部20は、例えば、照射光を発する光源21、光源21から照射された照射光の測定対象物Mからの反射光を読み取るイメージセンサー22、イメージセンサー22による読み取り結果(点群データ)に基づいて所定のフォーマットの3次元モデルデータを生成するファイル生成部23などを備える。ファイル生成部23は、例えば、STLやOBJやIGES等のフォーマットで3次元モデルデータを生成可能である。
【0019】
一例として、ファイル生成部23がSTLフォーマットの3次元モデルデータを生成する場合、3次元モデルデータは、3つの頂点(座標値)を有する三角形の集合により立体を表現する。ここでいう座標値とは、例えば、チャンバー13内に定義された空間(互いに直交するX,Y,Zの3軸により定義された空間)における座標値(X成分値、Y成分値、Z成分値)である。また、各三角形は面法線ベクトルを有し、各面法線ベクトルが向く方向は立体物の表面が向く方向を示している。本実施形態では、Z軸は上記上下方向(縦方向)を向き、これに垂直なXY平面は、水平面を形成するものする。
【0020】
造形部30は、3次元モデルデータに基づいて立体物を造形可能な機構であり、本実施例では積層型の粉末造形法により造形を行なう。造形部30は、例えば、3次元モデルデータを各層の造形のためのスライスデータに変換するデータ変換部31、造形のための可動部(造形ヘッド32)、造形ヘッド32をチャンバー13内においてX,Y軸方向それぞれに移動させることが可能なモーター等からなるヘッド移動機構33などを備える。データ変換部31は、3次元モデルデータの断面形状であって、例えば、Z軸方向に垂直な断面形状(XY平面における形状)を演算により取得する。データ変換部31は、このような断面形状をZ軸方向においてスライス幅(造形部30が積層する層の厚さ。なお、スライス幅は一定とは限らない。)間隔で取得する。このようなスライス幅毎の断面形状を表したデータを、スライスデータと呼ぶ。
【0021】
造形ヘッド32は、チャンバー13内にてプラットフォーム14上をヘッド移動機構33によってX,Y軸方向に移動させられながら、一層のスライスデータが示す形状に応じて一層の造形を行なう。本実施例における粉末結合法では、造形ヘッド32はプラットフォーム14上に粉末状形成材料を吐出(噴出)して粉末層を形成し、結合材をこのプラットフォーム14上の粉末層に吐出する。このようなスライスデータに応じた一層分の造形と、Z軸方向に沿ったプラットフォーム14の当該一層分の移動(下降)とを繰り返すことで、プラットフォーム14上に層単位での造形結果が積層され、造形物Rが完成する。これらの構成については後に詳述する。なお、プラットフォーム14は吐出された粉末状形成材料を支持する台部に相当する。
【0022】
制御部40は、CPU41やメモリー42などを備え、CPU41がメモリー42に記憶された所定のプログラムに従って測定部20や造形部30を制御する。また制御部40は、造形部30による造形時に、プラットフォーム移動機構15のモーターを数値制御することでプラットフォーム14のZ軸方向の移動距離や移動速度を制御し、ヘッド移動機構33のモーターを数値制御することで造形ヘッド32のX,Y軸方向の移動距離や移動速度を制御する。すなわち、ヘッド移動機構33による造形ヘッド32のX,Y軸方向の移動とともに、プラットフォーム14のZ軸方向の移動を組み合わせることにより、造形ヘッド32と支持部とが相対的に移動することになる。すなわち、造形ヘッド32とヘッド移動機構33とプラットフォーム(台部)14とにより、台部と噴出部とは相対的に移動可能となり、かる、台部の上の粉末状形成材料の所定位置に結合材を噴出することが可能となっている。
【0023】
図3は、チャンバー13内におけるプラットフォーム14(テーブル14a:台部)の構成例を示している。図3に示すテーブル14aは円形状であり、且つ中心が軸16により下方から支持されている。軸16は、上記プラットフォーム移動機構15によりZ軸方向に沿って移動可能であり且つ回転可能である。この軸16の回転についても制御部40により数値制御される。つまり図3の例では、プラットフォームはターンテーブルとなっている。測定部20による測定対象物Mの測定時には、このターンテーブルとしてのテーブル14aに測定対象物Mが載置され、テーブル14aが回転する状況で測定が行なわれる。回転するターンテーブルに測定対象物Mが載ることで、イメージセンサー22は、それ自体が固定されていても測定対象物Mを360度満遍無く読み取ることができる。つまり、造形用の空間としても使用されるチャンバー13内において効率よく測定対象物Mについての正確な3次元モデルデータを取得できる。一方、造形部30による造形物Rの造形時には、テーブル14aは基本的には回転せず、Z軸方向に沿った移動を行なう。
【0024】
イメージセンサー22の固定位置はチャンバー13やプラットフォーム移動機構15の構成によって最適位置が異なる。
図4はチャンバー13に天井がある場合のイメージセンサー(スキャナー部)22の最適な設置位置を示し、図5は天井がない場合の同イメージセンサー(スキャナー部)22の最適な設置位置を示している。
チャンバー13に天井がある場合は測定対象物Mをテーブル14a上に載せて立体スキャンするにはテーブル14aが下がらなければならない。従って、測定対象物Mの高さ分だけテーブル14aは下がる。この移動の間に立体スキャンするためにはイメージセンサー22はチャンバー13(スキャン空間)における低い位置に設けることが好ましいといえる。
【0025】
一方、チャンバー13に天井がない場合は測定対象物Mをテーブル14a上に載せて立体スキャンするためにテーブル14aを上昇させることができる。測定対象物Mの高さ分だけテーブル14aを上げる移動の間に立体スキャンするため、イメージセンサー22はチャンバー13(スキャン空間)における高い位置に設けることが好ましいといえる。
【0026】
すなわち、これらは天井の有無に応じてできるだけスキャンできる高さを稼ぐための措置である。
図6はチャンバ13内の支持部と移動部と造形ヘッドを斜視図により概略的に示しており、図7は平面図により示している。
ヘッド移動機構33は、造形ヘッド32を枠内でX,Y方向に移動可能なように支持している。なお、造形ヘッド32の下面には噴出部32aが備えられており、上方の結合材タンク32bと、着色剤タンク32cとにチューブで接続されており、噴出する着色剤と結合材が供給されるようになっている。この造形ヘッド32はヘッド移動機構33にて上部部分を支持され、噴出部32aが吊り下げられるように支持されている。
【0027】
円形のテーブル14aは略鉛直方向に配向された筒体14bの中と外へ移動可能である。図4と図5に示すようにテーブル14a上に測定対象物Mを載置させた状態で、同テーブル14aが筒体14bの配向方向に沿って中や外に移動することで、立体スキャンを行える。すなわち、図4に示す例であればテーブル14aが筒体14b内に入っていく際に、図5に示す例であればテーブル14aが筒体14bから外に出て行く際に、立体スキャンが行われる。
【0028】
図6と図7に示すように、筒体14bの右方には回収部36aが配置され、左方には蓄積部36bが配置されている。蓄積部36bは、上面にてテーブル14aの直径とほぼ一致する長さの幅の開口を有しており、内部に粉末状形成材料を蓄積している。また、内部にはピストン36b1が備えられ、同ピストン36b1を上下動可能としている。従って、ピストン36b1を下げた状態で蓄積部36b内に粉末状形成材料を蓄積させた後、ピストン36b1を上昇させると、蓄積された内部の粉末状形成材料は徐々に上部の開口から押し出されることになる。
【0029】
また、回収部36aは筒体14bの直径よりも長い幅の開口を有しており、後述するようにしてあふれた余分の粉末状形成材料を同開口内に落とし込むと、搬送機構36a1によって蓄積部36bの上面に吐出する構造となっている。すなわち、後述するようにして蓄積部36bからテーブル14a上に掻き出され、さらに余分となった粉末状形成材料は回収部36aを介して蓄積部36bに搬送され、再利用できるようになっている。
【0030】
テーブル14aは筒体14bの内側で上下方向に摺動しつつ移動可能である。テーブル14aの縁部が筒体14bの内周面にほぼ摺接する大きさとしてあるので、テーブル14a上で筒体14b内となる空間は、上方に開口した空間となり、筒体の開口面よりも下方の空間に粉末状形成材料を供給して結合材を噴出することで粉末造形法による造形が可能となる。なお、筒体14bと回収部36aと蓄積部36bはそれぞれ上面に開口を有しているが、チャンバー13内では開口を除く部分は平坦な面の底面13aとしてある。
【0031】
ヘッド移動機構33の枠体と干渉しないように、その下方とチャンバー13の底面13aとの間にならし部35aが配置されている。ならし部35aは、図7に示すように底面13aの奥行き方向の幅にほぼ一致するへら状の板材であり、両端を図示しない駆動機構にて支持されることにより、図7に示すように蓄積部36bの側から回収部36aの側に向けて直線移動できるようになっている。また、ならし部35aは上端が厚く、下端が薄くなるように形成されてやや弾性を有している。下端は底面13aに当接する高さ位置に配置され、上端は下端よりも回収部36aの側に位置しているので、全体としては斜めに傾けて配置されている。このように傾いた状態で蓄積部36bの側から回収部36aの側に移動する際に、粉末状形成材料を蓄積部36bから掻き出し、テーブル14a上に供給し、ならし、さらに余った粉末状形成材料を回収部36aに送る。
【0032】
図8〜図11はならし部35aの動作を概略的に示している。
図8はならし部35aの初期位置であり、下端は蓄積部36bの上で最も左端に位置している。この状態で蓄積部36bのピストン36b1を一定長さだけ押し上げると、蓄積部36bの開口から所定量の粉末状形成材料があふれ出る。このとき、ならし部35aが斜めに配置されているので、図9に示すように、あふれ出た粉末状形成材料の一部はまっすぐ上に押し上げられつつならし部35aに当接する部分で右方に押し上げられる。そして、図10に示すように、ならし部35aがテーブル14aの側に向かって移動し始めると、蓄積部36bから押し上げられた粉末状形成材料はならし部35aによってテーブル14aの側に掻き出されることになる。後述するように、この動作の前にテーブル14aは一層分の高さだけ下げられているので、筒体14bの開口部分にはこの一層分だけの空間ができており、掻き出された粉末状形成材料はこの空間に供給される。一回で掻き出された粉末状形成材料がこの空間全部を埋め尽くせなければ、数回、繰り返す。基本的には確実に余分な量を掻き出し、余ったものは図11に示すように回収部36aに送り込むという設計とする。このようにして、ならし部35aが粉末状形成材料を掻き出しつつ、テーブル14aの上部では表面を平たくならすことになる。また、ならす動作では余った粉末状形成材料は徐々に幅方向に広がるので、回収部36aの幅は筒体14bやテーブル14aの長さよりも広くなっている。
【0033】
造形ヘッド32は枠体から吊り下げられているので、その下方にならし部を配設できる。また、噴出部32a自体は上のようにしてならされた粉末状形成材料に近い位置に支持され、粉末状形成材料に対して任意の位置で結合材を至近距離から噴出できる。なお、テーブル14aは筒体14bよりも上方に移動できるので、筒体14bの内側に粉末状形成材料が入り込まないように、テーブル14aの縁部には、下方に向かって上記筒体14bの内面に略一致して摺動可能な内壁14a1が形成されているが、内壁14a1を形成せずに、筒体14bの内側に入り込んだ粉末状形成材料を回収する機構を設けても良い。
【0034】
図12は、本実施例における造形処理を模式的に示している。
造形ヘッド32は、結合材タンク32bと、着色剤タンク32cに対してチューブで接続されており、噴出及び吐出する着色剤と結合材と粉末状形成材料が供給されるようになっている。また、ならし部35で上面をならし、余分な粉末状形成材料は筒体14bの外に掻き出される。掻き出された粉末状形成材料は回収部36aにて回収されて蓄積部36bの上方に供給されるので、回収した粉末状形成材料を再利用できる。なお、ならすときには造形ヘッド32を回収部36aの側の待避位置に移動させ、ならし部35aと干渉しないのはむろんのこと、ならし部35で粉末状形成材料の表面をならすときに撒き上がった粉末状形成材料が噴出部32aに付着しないようにしている。なお、待避位置では噴出部32aの表面をカバーするキャップを設けることで、粉末状形成材料が付着したり詰まらせてしまわないようにしてもよい。
【0035】
図13は、造形データをネットワークを介して取得する状況を示す概略図である。
上述したように本実施例では制御部40が3次元モデルデータを生成したりスライスデータを生成している。しかし、かかる演算処理の負担は大きいのでネットワーク50を介して外部の演算装置51a〜51cに接続し、これらを利用して3次元モデルデータやスライスデータを求めるようにしても良い。このように構成すれば、制御部40のCPU41やメモリー42として処理能力の低いものでも利用できるようになる。
【0036】
2.複製処理の説明
図14は、3次元複合機10によって実行される立体物の複製処理の概略をフローチャートにより示している。なお、フローチャート中の各ステップのうち、ユーザによる行為は鎖線で囲んで示している。
ステップS100では、ユーザにより、チャンバー13内のターンテーブル上に測定対象物Mが載置される。ステップS110では、制御部40は複製処理の開始指示を受け付ける。この場合、ユーザが操作受付部11bを操作して、例えば“コピー”ボタンを押下げ等することで、制御部40は複製処理の開始指示を受け付ける。ステップS120では、制御部40は、測定部20に対して測定実行を指示し、当該指示に応じて測定部20は測定対象物Mを3次元測定して3次元モデルデータを生成する。むろんこのとき、制御部40は、ターンテーブルを回転させる制御も行なう。
【0037】
測定部20による測定の終了後、ステップ130では、制御部40は、測定対象物Mの取り出し催促を外部に対して行なう。測定対象物Mの取り出し催促は、3次元複合機10が備えるスピーカーから所定の音声を出力させたり、表示装置11aに所定のメッセージを表示させたりして行なう。ステップS140では、ターンテーブル上に載置された測定対象物Mがユーザにより3次元複合機10外へ取り出される。ステップS150では、制御部40は、測定対象物Mが取り出されたか否かを所定のセンサー等を介して判定し、取り出しを確認したらステップS160で造形準備を実行する。造形準備とは、造形部30のデータ変換部31に、上記ステップS120で取得された3次元モデルデータをスライスデータへ変換させたり、プラットフォーム14の位置を造形開始のための所定位置に移動させたりする処理等である。
【0038】
造形準備が整った後、ステップS170では、制御部40は、造形部30に対して上記ステップS160で変換させた各スライスデータに基づく造形実行を指示し、当該指示に応じて造形部30は造形ヘッド32を駆動させて造形を実行する。むろんこのとき、制御部40は、造形ヘッド32およびプラットフォーム14を移動させる制御も行なう。ステップS170の結果、プラットフォーム14上にはスライスデータに応じて粉末状形成材料が結合された各層が積み重なり、上記ステップS100で載置された測定対象物Mの複製物である造形物Rが完成する。ステップS180では、制御部40は、造形部30による造形が終了したタイミングで造形物Rの取り出しの催促を外部に対して行なう。造形物Rの取り出し催促も音声やメッセージ表示等により行なう。ステップS190では、プラットフォーム14上に造形された造形物Rがユーザにより3次元複合機10外へ取り出され、ステップS195では、制御部40は、造形物Rが取り出されたか否かをイメージセンサー22を介して判定し、取り出しを確認したら処理を終了する。なお、造形物Rが取り出されたか否かの判定は、プラットフォームに設けた重量センサーや扉12の開閉センサーやその他のセンサーを用いても良いし、ユーザの終了操作で判定しても良い。
【0039】
図15は、造形処理の要部(ステップS170)の手順を示すフローチャートである。
造形処理は、各層ごとに粉末層を形成した後、結合材を噴出して壁部を形成し、さらに着色することになる。この各層の処理の詳細を以下に説明する。
まず、ステップS200では、テーブル(台部)14aを筒体14bの上端から一層分だけ下がった位置に移動させる。これにより、筒体14bの上面に一層分だけの凹んだ空間が形成される。なお、このときに造形ヘッド32は回収部36aの側の待避位置にて待機している。次のステップS210では、ならし部35aを初期位置に移動させる。初期位置とは、図8に示すように、ならし部35aの下端が蓄積部36bの上部の最も左方の端部に位置する状態である。この状態で、ステップS220では蓄積部36bで粉末状形成材料を押し上げる。すなわち、ピストン36b1を一定長さだけ上げる。
【0040】
すると、図9に示すように所定量の粉末状形成材料が押し上げられることになるから、ステップS230ではならし部35aをテーブル14aの側に移動させ始めることにより、あふれ出ている粉末状形成材料を同テーブル14aの側に掻き出す。ならし部35aは蓄積部36bの側から回収部36aの側まで移動するので、ある段階では粉末状形成材料をテーブル14a上の空間に供給し、ならす動作を行い、これとともに余った粉末状形成材料は回収部36aに送り込む。そして、回収部36a自体は送り込まれた粉末状形成材料を回収して蓄積部36bに供給する。このとき同粉末状形成材料は蓄積部36bの上方から吐出されることになるが、ならし部35aは下からあふれ出る粉末状形成材料と上から供給される粉末状形成材料を共にテーブル14aの側に供給することになる。
【0041】
この動作は数回で行うのが現実的である。一度に多量の粉末状形成材料をあふれ出させてならし部35aで掻き出したとしても、ならし部35aの下端がへらのように粉末状形成材料を移動させるときには必ずしも一回では平坦にならない。従って、少量を数回に分けて掻き出すことにより、掻き出しとならしとが数回繰り返されて平坦度合いが向上する。
【0042】
ステップS240ではテーブル14a上に粉末状形成材料がまんべんなく行き渡ったかを判断する。これはセンサーで平坦度合いを調べるようにしても良いし、実験結果から得られた回数だけの繰り返し動作を行ったか否かの判断でも良い。
まんべんなく行き渡ったらステップS250では造形ヘッド32を走査開始位置へ移動させる。走査開始位置は、造形ヘッド32をX,Y平面で移動させる際の起点となる位置であり、この位置から主走査動作と副走査動作を繰り返してプラットフォーム14のテーブル14a上面を満遍なく移動できる。続いて、ステップS260では、結合材の噴出走査を開始する。これは上述したスライスデータに基づいて造形物Rの壁部を形成するように、結合させたい粉末状形成材料の部位に対して結合材を噴出させる。このようにして造形のための処理は完成する。
【0043】
その後、ステップS270では、同様にして、着色剤の噴出走査を開始する。着色剤は壁部における表側にあたる部分に対して行う。最後に、ステップS280では、上述したように造形ヘッド32を待避位置へ移動させる。このように一層分の造形と着色が終わった時点で造形ヘッド32が待避位置へ移動しているので、ステップS200では必ず待避位置にあることを保証できる。このようにして、次の粉末層の形成に備えて、一層の造形処理を終了する。
【0044】
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
【0045】
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
例えば、ならし部35aの形状は、へら状に限られず、左官ごて状などの他の形状であっても良い。
【符号の説明】
【0046】
10…3次元複合機、11…筺体、11a…表示装置、11b…操作受付部、12…扉、13…チャンバー、14…プラットフォーム、14a…テーブル、14a1…内壁、14b…筒体、15…プラットフォーム移動機構、20…測定部(スキャナー部)、21…光源、22…イメージセンサー、23…ファイル生成部、30…造形部、31…データ変換部、32…造形ヘッド、32a…噴出部、32b…結合材タンク、32c…着色剤タンク、33…ヘッド移動機構(移動部)、35a…ならし部、36a…回収部、36a1…搬送機構、36b…蓄積部、36b1…ピストン、40…制御部、41…CPU、42…メモリー、50…ネットワーク、51a〜51c…外部の演算装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元の造形複合装置に関し、特に、3次元の立体スキャナーと3次元の造形装置を兼ね備えた造形複合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体物の造形技術として幾つかの手法が知られている。具体的には、いわゆる光造形法(特許文献1参照)、選択的レーザー焼結法(特許文献2参照)、溶融堆積法(特許文献3参照)、粉末結合法(特許文献4参照)、シート積層法(特許文献5参照)、インクジェットによる材料の直接吐出による造形法(特許文献6参照)等の積層型の造形法が知られている。
【0003】
また、測定対象となる立体物を3次元測定して3次元モデルデータを出力可能な3次元測定器(3次元デジタイザ)が知られている。
また、測定対象物を測定する装置や、コンピューターや、立体物の造形のための装置といった複数の装置からなるシステムによって、立体物のコピーを実現する技術が知られている(特許文献7,8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008‐195069号公報
【特許文献2】特表2010‐510104号公報
【特許文献3】特表2009‐525207号公報
【特許文献4】特表2002‐507940号公報
【特許文献5】特開2001‐301060号公報
【特許文献6】特表2003‐535712号公報
【特許文献7】特開2004‐69403号公報
【特許文献8】特開2006‐250906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のように、測定対象物を測定する装置や立体物の造形のための装置が分離した構成においては、各装置が占有スペースを必要としたり、装置間におけるコンピューターを介したデータ転送などの手間や配線の煩雑さがあった。このような各装置による多くのスペースの占有や手間などは、立体物の複製(コピー)を家庭やオフィス等で手軽に実現したいユーザに対する障害となっていた。
【0006】
また、粉末結合法の場合は粉末状形成材料を造形する各層ごとに吐出し、表面をなだらかにしなければならない。従来は、この過程をコンパクトな構成で実現することができなかった。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、立体物の複製を従来よりも小さなスペースで且つ容易に実行することが可能な3次元の造形複合装置を提供する。また、粉末結合法を採用するにあたり構成が簡易な造形複合装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、造形時に台座となる台部は移動可能となっており、蓄積部にて粉末状形成材料を蓄積しているので、ならし部は上記蓄積部から上記台部上に供給された上記粉末状形成材料を上記台部上でならす。
一方、スキャナー部は、上記台部上のスキャン対象を立体スキャン可能であり、このスキャナー部の立体スキャンによって生成したスキャンデータに基づいて制御部が造形データを生成し、同造形データに基づき、上記噴出部によって上記ならされた粉末状形成材料に結合材を噴出させることで造形を行わせる。
【0008】
一例として、上記台部は略鉛直方向に配向された筒体の中と外で当該筒体の配向方向に沿って移動可能とし、上記台部が上記筒体の外で上方に位置する状態で、上記スキャナー部は上記台部上に載置されたスキャン対象を立体スキャンする。また、上記台部が上記筒体の中に入ると、上記筒体の開口面と当該筒体の内部に位置する上記台座と当該筒体の内周面とで囲まれた空間が形成される。この空間に上記粉末状形成材料を収容した上で、上記ならし部は当該筒体の開口面で粉末状形成材料をならす。この状態で、上記噴出部は、上記筒体の開口面に位置する粉末状形成材料に上記結合材を噴出することで造形を行える。
【0009】
粉末状形成材料を台部に供給する手法として、上記蓄積部を、上面に開口を有するようにして上記筒体に隣接して設け、下方から上記粉末状形成材料を押し上げるようにして開口より上方に押し出せるようにする。そして、上記ならし部は、この蓄積部の開口で押し出される上記粉末状形成材料を、隣接する上記筒体の側に掻き出すように運ぶ。もともと台部の上の粉末状形成材料の表面をならすのであるから、隣接する蓄積部で下方から押し上げられる粉末状形成材料を隣の台部の側に掻き出す動作も行える。
【0010】
粉末状形成材料を有効利用するべく、上記蓄積部は、上記筒体に隣接して同筒体の外でならした粉末状形成材料を回収する回収部を備えるようにしてもよい。このようにすれば、筒体の外に運ばれるならされた粉末状形成材料の余分は回収部にて回収され、回収した粉末状形成材料を再利用することができる。
なお、上記台部の縁部には、下方に向かって上記筒体の内面に略一致して摺動可能な内壁を形成してもよい。台部は筒体の外の上方に移動することがあり、このときに内壁があることで筒体内に粉末状形成材料が入り込むのを防止できる。
【0011】
スキャナー部の設置位置として、上記台部が所定の高さから天井の側に向けて上下動可能であるときに、天井がある形態においては、上記スキャナー部は、台部の可動範囲における中央よりも低い位置に備えるとよい。
天井があるときは、台部にスキャン対象を載置したときに、上方へは少ししか移動できない。従って、高さ分だけは下方へ移動しながら立体スキャンすることになる。台部の上のスキャン空間における低い位置にスキャナー部があれば、台部が下がる移動に際し、低い位置のスキャナー部を越えるようにスキャン対象をおろしていく。そして、その可動範囲を最も有効に利用して同台部上のスキャン対象の高さ分をスキャンできるようになる。
【0012】
逆に天井が開口している形態においては、上記台部が所定の高さから天井の側に向けて上下動可能であるときに、上記スキャナー部は、台部の上のスキャン空間における中央よりも高い位置に備える。
天井がないので、台部が上方へ移動して立体スキャンを行うことが可能であり、台部の上のスキャン空間における高い位置にスキャナー部があれば、その位置を越えるようにスキャン対象を上げていく際に立体スキャンを行える。
【0013】
以上のスキャンと造形は台部を共用し、また、スキャン空間と造形空間を共用している。さらに、制御系も共通の動作を共通の機構でまかなうことができ、コンパクトな複合装置を提供できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、立体物の複製を従来よりも小さなスペースで且つ容易に実行することが可能な3次元の造形複合装置を提供できる。また、構成も簡易な造形複合装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】造形装置の外観例を示した斜視図である。
【図2】造形装置の構成を概略的に示した図である。
【図3】プラットフォームの構成例を示した図である。
【図4】天井がある場合のスキャナー部の設置位置を示す概略図である。
【図5】天井がない場合のスキャナー部の設置位置を示す概略図である。
【図6】支持部と移動部と造形ヘッドを概略的に示す斜視図である。
【図7】支持部と移動部と造形ヘッドを概略的に示す平面図である。
【図8】蓄積部とならし部による粉末状形成材料の掻き出しの過程を示す概略図である。
【図9】蓄積部とならし部による粉末状形成材料の掻き出しの過程を示す概略図である。
【図10】蓄積部とならし部による粉末状形成材料の掻き出しの過程を示す概略図である。
【図11】ならし部による余分な粉末状形成材料を回収部へ送る過程を示す概略図である。
【図12】造形処理を模式的に示す概略図である。
【図13】造形データをネットワークを介して取得する状況を示す概略図である。
【図14】造形処理の手順を示すフローチャートである。
【図15】造形処理の要部の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
1.複合機の構成
図1は、本実施形態にかかる3次元の造形複合装置を適用した3次元複合機10の外観例を斜視図により示している。3次元複合機10は、装置全体を覆う筺体11の前面上部側に扉12を有している。また、筺体11の内部には、処理用空間としてのチャンバー13が形成されている。ユーザは、扉12を開けることで、チャンバー13内にアクセス可能であり、チャンバー13内に測定対象物Mとしての立体物を載置したり、載置した測定対象物Mを取り出したり、チャンバー13内で造形された立体物(造形物R)を取り出したりすることができる。3次元複合機10は、筺体11表面の所定位置に、ユーザに対する表示部としての表示装置11a(液晶パネル等)や、ユーザからの操作を受け付ける操作受付部11bとしてのスイッチやボタンやタッチパネル等を適宜備える。
【0017】
図2は、3次元複合機10の構成を概略的に示している。3次元複合機10は、チャンバー13内に載置された測定対象物Mを3次元測定(立体スキャン)して3次元モデルデータを取得可能な測定部(スキャナー部)20と、与えられた3次元モデルデータに基づいてチャンバー13内に造形物Rを造形可能な造形部30と、測定部20と造形部30とを制御する制御部40とを含む。ここで言う与えられた3次元モデルデータとは、外部から3次元複合機10に接続されたコンピューターや記憶媒体(メモリーカード等)から3次元複合機10が読み込む3次元モデルデータと、測定部20によって取得される3次元モデルデータとの両方を含む意味である。つまり、一台の3次元複合機10は、立体物の3次元測定機能と、立体物の造形機能と、これら機能を合わせた立体物の複製機能とを兼ね備えている。また、3次元複合機10は、造形方法に応じた造形のための構造を備え、例えばチャンバー13の底面側に配設された略水平な台(プラットフォーム14)と、プラットフォーム14をチャンバー13内において3次元複合機10の上下方向(縦方向)に移動させることが可能なモーター等からなるプラットフォーム移動機構15を含む。
【0018】
測定部20は、測定対象物Mを3次元測定して3次元モデルデータを取得可能な機構であれば、公知の非接触型の3次元デジタイザを含めて種々の構成を採ることができる。測定部20は、例えば、照射光を発する光源21、光源21から照射された照射光の測定対象物Mからの反射光を読み取るイメージセンサー22、イメージセンサー22による読み取り結果(点群データ)に基づいて所定のフォーマットの3次元モデルデータを生成するファイル生成部23などを備える。ファイル生成部23は、例えば、STLやOBJやIGES等のフォーマットで3次元モデルデータを生成可能である。
【0019】
一例として、ファイル生成部23がSTLフォーマットの3次元モデルデータを生成する場合、3次元モデルデータは、3つの頂点(座標値)を有する三角形の集合により立体を表現する。ここでいう座標値とは、例えば、チャンバー13内に定義された空間(互いに直交するX,Y,Zの3軸により定義された空間)における座標値(X成分値、Y成分値、Z成分値)である。また、各三角形は面法線ベクトルを有し、各面法線ベクトルが向く方向は立体物の表面が向く方向を示している。本実施形態では、Z軸は上記上下方向(縦方向)を向き、これに垂直なXY平面は、水平面を形成するものする。
【0020】
造形部30は、3次元モデルデータに基づいて立体物を造形可能な機構であり、本実施例では積層型の粉末造形法により造形を行なう。造形部30は、例えば、3次元モデルデータを各層の造形のためのスライスデータに変換するデータ変換部31、造形のための可動部(造形ヘッド32)、造形ヘッド32をチャンバー13内においてX,Y軸方向それぞれに移動させることが可能なモーター等からなるヘッド移動機構33などを備える。データ変換部31は、3次元モデルデータの断面形状であって、例えば、Z軸方向に垂直な断面形状(XY平面における形状)を演算により取得する。データ変換部31は、このような断面形状をZ軸方向においてスライス幅(造形部30が積層する層の厚さ。なお、スライス幅は一定とは限らない。)間隔で取得する。このようなスライス幅毎の断面形状を表したデータを、スライスデータと呼ぶ。
【0021】
造形ヘッド32は、チャンバー13内にてプラットフォーム14上をヘッド移動機構33によってX,Y軸方向に移動させられながら、一層のスライスデータが示す形状に応じて一層の造形を行なう。本実施例における粉末結合法では、造形ヘッド32はプラットフォーム14上に粉末状形成材料を吐出(噴出)して粉末層を形成し、結合材をこのプラットフォーム14上の粉末層に吐出する。このようなスライスデータに応じた一層分の造形と、Z軸方向に沿ったプラットフォーム14の当該一層分の移動(下降)とを繰り返すことで、プラットフォーム14上に層単位での造形結果が積層され、造形物Rが完成する。これらの構成については後に詳述する。なお、プラットフォーム14は吐出された粉末状形成材料を支持する台部に相当する。
【0022】
制御部40は、CPU41やメモリー42などを備え、CPU41がメモリー42に記憶された所定のプログラムに従って測定部20や造形部30を制御する。また制御部40は、造形部30による造形時に、プラットフォーム移動機構15のモーターを数値制御することでプラットフォーム14のZ軸方向の移動距離や移動速度を制御し、ヘッド移動機構33のモーターを数値制御することで造形ヘッド32のX,Y軸方向の移動距離や移動速度を制御する。すなわち、ヘッド移動機構33による造形ヘッド32のX,Y軸方向の移動とともに、プラットフォーム14のZ軸方向の移動を組み合わせることにより、造形ヘッド32と支持部とが相対的に移動することになる。すなわち、造形ヘッド32とヘッド移動機構33とプラットフォーム(台部)14とにより、台部と噴出部とは相対的に移動可能となり、かる、台部の上の粉末状形成材料の所定位置に結合材を噴出することが可能となっている。
【0023】
図3は、チャンバー13内におけるプラットフォーム14(テーブル14a:台部)の構成例を示している。図3に示すテーブル14aは円形状であり、且つ中心が軸16により下方から支持されている。軸16は、上記プラットフォーム移動機構15によりZ軸方向に沿って移動可能であり且つ回転可能である。この軸16の回転についても制御部40により数値制御される。つまり図3の例では、プラットフォームはターンテーブルとなっている。測定部20による測定対象物Mの測定時には、このターンテーブルとしてのテーブル14aに測定対象物Mが載置され、テーブル14aが回転する状況で測定が行なわれる。回転するターンテーブルに測定対象物Mが載ることで、イメージセンサー22は、それ自体が固定されていても測定対象物Mを360度満遍無く読み取ることができる。つまり、造形用の空間としても使用されるチャンバー13内において効率よく測定対象物Mについての正確な3次元モデルデータを取得できる。一方、造形部30による造形物Rの造形時には、テーブル14aは基本的には回転せず、Z軸方向に沿った移動を行なう。
【0024】
イメージセンサー22の固定位置はチャンバー13やプラットフォーム移動機構15の構成によって最適位置が異なる。
図4はチャンバー13に天井がある場合のイメージセンサー(スキャナー部)22の最適な設置位置を示し、図5は天井がない場合の同イメージセンサー(スキャナー部)22の最適な設置位置を示している。
チャンバー13に天井がある場合は測定対象物Mをテーブル14a上に載せて立体スキャンするにはテーブル14aが下がらなければならない。従って、測定対象物Mの高さ分だけテーブル14aは下がる。この移動の間に立体スキャンするためにはイメージセンサー22はチャンバー13(スキャン空間)における低い位置に設けることが好ましいといえる。
【0025】
一方、チャンバー13に天井がない場合は測定対象物Mをテーブル14a上に載せて立体スキャンするためにテーブル14aを上昇させることができる。測定対象物Mの高さ分だけテーブル14aを上げる移動の間に立体スキャンするため、イメージセンサー22はチャンバー13(スキャン空間)における高い位置に設けることが好ましいといえる。
【0026】
すなわち、これらは天井の有無に応じてできるだけスキャンできる高さを稼ぐための措置である。
図6はチャンバ13内の支持部と移動部と造形ヘッドを斜視図により概略的に示しており、図7は平面図により示している。
ヘッド移動機構33は、造形ヘッド32を枠内でX,Y方向に移動可能なように支持している。なお、造形ヘッド32の下面には噴出部32aが備えられており、上方の結合材タンク32bと、着色剤タンク32cとにチューブで接続されており、噴出する着色剤と結合材が供給されるようになっている。この造形ヘッド32はヘッド移動機構33にて上部部分を支持され、噴出部32aが吊り下げられるように支持されている。
【0027】
円形のテーブル14aは略鉛直方向に配向された筒体14bの中と外へ移動可能である。図4と図5に示すようにテーブル14a上に測定対象物Mを載置させた状態で、同テーブル14aが筒体14bの配向方向に沿って中や外に移動することで、立体スキャンを行える。すなわち、図4に示す例であればテーブル14aが筒体14b内に入っていく際に、図5に示す例であればテーブル14aが筒体14bから外に出て行く際に、立体スキャンが行われる。
【0028】
図6と図7に示すように、筒体14bの右方には回収部36aが配置され、左方には蓄積部36bが配置されている。蓄積部36bは、上面にてテーブル14aの直径とほぼ一致する長さの幅の開口を有しており、内部に粉末状形成材料を蓄積している。また、内部にはピストン36b1が備えられ、同ピストン36b1を上下動可能としている。従って、ピストン36b1を下げた状態で蓄積部36b内に粉末状形成材料を蓄積させた後、ピストン36b1を上昇させると、蓄積された内部の粉末状形成材料は徐々に上部の開口から押し出されることになる。
【0029】
また、回収部36aは筒体14bの直径よりも長い幅の開口を有しており、後述するようにしてあふれた余分の粉末状形成材料を同開口内に落とし込むと、搬送機構36a1によって蓄積部36bの上面に吐出する構造となっている。すなわち、後述するようにして蓄積部36bからテーブル14a上に掻き出され、さらに余分となった粉末状形成材料は回収部36aを介して蓄積部36bに搬送され、再利用できるようになっている。
【0030】
テーブル14aは筒体14bの内側で上下方向に摺動しつつ移動可能である。テーブル14aの縁部が筒体14bの内周面にほぼ摺接する大きさとしてあるので、テーブル14a上で筒体14b内となる空間は、上方に開口した空間となり、筒体の開口面よりも下方の空間に粉末状形成材料を供給して結合材を噴出することで粉末造形法による造形が可能となる。なお、筒体14bと回収部36aと蓄積部36bはそれぞれ上面に開口を有しているが、チャンバー13内では開口を除く部分は平坦な面の底面13aとしてある。
【0031】
ヘッド移動機構33の枠体と干渉しないように、その下方とチャンバー13の底面13aとの間にならし部35aが配置されている。ならし部35aは、図7に示すように底面13aの奥行き方向の幅にほぼ一致するへら状の板材であり、両端を図示しない駆動機構にて支持されることにより、図7に示すように蓄積部36bの側から回収部36aの側に向けて直線移動できるようになっている。また、ならし部35aは上端が厚く、下端が薄くなるように形成されてやや弾性を有している。下端は底面13aに当接する高さ位置に配置され、上端は下端よりも回収部36aの側に位置しているので、全体としては斜めに傾けて配置されている。このように傾いた状態で蓄積部36bの側から回収部36aの側に移動する際に、粉末状形成材料を蓄積部36bから掻き出し、テーブル14a上に供給し、ならし、さらに余った粉末状形成材料を回収部36aに送る。
【0032】
図8〜図11はならし部35aの動作を概略的に示している。
図8はならし部35aの初期位置であり、下端は蓄積部36bの上で最も左端に位置している。この状態で蓄積部36bのピストン36b1を一定長さだけ押し上げると、蓄積部36bの開口から所定量の粉末状形成材料があふれ出る。このとき、ならし部35aが斜めに配置されているので、図9に示すように、あふれ出た粉末状形成材料の一部はまっすぐ上に押し上げられつつならし部35aに当接する部分で右方に押し上げられる。そして、図10に示すように、ならし部35aがテーブル14aの側に向かって移動し始めると、蓄積部36bから押し上げられた粉末状形成材料はならし部35aによってテーブル14aの側に掻き出されることになる。後述するように、この動作の前にテーブル14aは一層分の高さだけ下げられているので、筒体14bの開口部分にはこの一層分だけの空間ができており、掻き出された粉末状形成材料はこの空間に供給される。一回で掻き出された粉末状形成材料がこの空間全部を埋め尽くせなければ、数回、繰り返す。基本的には確実に余分な量を掻き出し、余ったものは図11に示すように回収部36aに送り込むという設計とする。このようにして、ならし部35aが粉末状形成材料を掻き出しつつ、テーブル14aの上部では表面を平たくならすことになる。また、ならす動作では余った粉末状形成材料は徐々に幅方向に広がるので、回収部36aの幅は筒体14bやテーブル14aの長さよりも広くなっている。
【0033】
造形ヘッド32は枠体から吊り下げられているので、その下方にならし部を配設できる。また、噴出部32a自体は上のようにしてならされた粉末状形成材料に近い位置に支持され、粉末状形成材料に対して任意の位置で結合材を至近距離から噴出できる。なお、テーブル14aは筒体14bよりも上方に移動できるので、筒体14bの内側に粉末状形成材料が入り込まないように、テーブル14aの縁部には、下方に向かって上記筒体14bの内面に略一致して摺動可能な内壁14a1が形成されているが、内壁14a1を形成せずに、筒体14bの内側に入り込んだ粉末状形成材料を回収する機構を設けても良い。
【0034】
図12は、本実施例における造形処理を模式的に示している。
造形ヘッド32は、結合材タンク32bと、着色剤タンク32cに対してチューブで接続されており、噴出及び吐出する着色剤と結合材と粉末状形成材料が供給されるようになっている。また、ならし部35で上面をならし、余分な粉末状形成材料は筒体14bの外に掻き出される。掻き出された粉末状形成材料は回収部36aにて回収されて蓄積部36bの上方に供給されるので、回収した粉末状形成材料を再利用できる。なお、ならすときには造形ヘッド32を回収部36aの側の待避位置に移動させ、ならし部35aと干渉しないのはむろんのこと、ならし部35で粉末状形成材料の表面をならすときに撒き上がった粉末状形成材料が噴出部32aに付着しないようにしている。なお、待避位置では噴出部32aの表面をカバーするキャップを設けることで、粉末状形成材料が付着したり詰まらせてしまわないようにしてもよい。
【0035】
図13は、造形データをネットワークを介して取得する状況を示す概略図である。
上述したように本実施例では制御部40が3次元モデルデータを生成したりスライスデータを生成している。しかし、かかる演算処理の負担は大きいのでネットワーク50を介して外部の演算装置51a〜51cに接続し、これらを利用して3次元モデルデータやスライスデータを求めるようにしても良い。このように構成すれば、制御部40のCPU41やメモリー42として処理能力の低いものでも利用できるようになる。
【0036】
2.複製処理の説明
図14は、3次元複合機10によって実行される立体物の複製処理の概略をフローチャートにより示している。なお、フローチャート中の各ステップのうち、ユーザによる行為は鎖線で囲んで示している。
ステップS100では、ユーザにより、チャンバー13内のターンテーブル上に測定対象物Mが載置される。ステップS110では、制御部40は複製処理の開始指示を受け付ける。この場合、ユーザが操作受付部11bを操作して、例えば“コピー”ボタンを押下げ等することで、制御部40は複製処理の開始指示を受け付ける。ステップS120では、制御部40は、測定部20に対して測定実行を指示し、当該指示に応じて測定部20は測定対象物Mを3次元測定して3次元モデルデータを生成する。むろんこのとき、制御部40は、ターンテーブルを回転させる制御も行なう。
【0037】
測定部20による測定の終了後、ステップ130では、制御部40は、測定対象物Mの取り出し催促を外部に対して行なう。測定対象物Mの取り出し催促は、3次元複合機10が備えるスピーカーから所定の音声を出力させたり、表示装置11aに所定のメッセージを表示させたりして行なう。ステップS140では、ターンテーブル上に載置された測定対象物Mがユーザにより3次元複合機10外へ取り出される。ステップS150では、制御部40は、測定対象物Mが取り出されたか否かを所定のセンサー等を介して判定し、取り出しを確認したらステップS160で造形準備を実行する。造形準備とは、造形部30のデータ変換部31に、上記ステップS120で取得された3次元モデルデータをスライスデータへ変換させたり、プラットフォーム14の位置を造形開始のための所定位置に移動させたりする処理等である。
【0038】
造形準備が整った後、ステップS170では、制御部40は、造形部30に対して上記ステップS160で変換させた各スライスデータに基づく造形実行を指示し、当該指示に応じて造形部30は造形ヘッド32を駆動させて造形を実行する。むろんこのとき、制御部40は、造形ヘッド32およびプラットフォーム14を移動させる制御も行なう。ステップS170の結果、プラットフォーム14上にはスライスデータに応じて粉末状形成材料が結合された各層が積み重なり、上記ステップS100で載置された測定対象物Mの複製物である造形物Rが完成する。ステップS180では、制御部40は、造形部30による造形が終了したタイミングで造形物Rの取り出しの催促を外部に対して行なう。造形物Rの取り出し催促も音声やメッセージ表示等により行なう。ステップS190では、プラットフォーム14上に造形された造形物Rがユーザにより3次元複合機10外へ取り出され、ステップS195では、制御部40は、造形物Rが取り出されたか否かをイメージセンサー22を介して判定し、取り出しを確認したら処理を終了する。なお、造形物Rが取り出されたか否かの判定は、プラットフォームに設けた重量センサーや扉12の開閉センサーやその他のセンサーを用いても良いし、ユーザの終了操作で判定しても良い。
【0039】
図15は、造形処理の要部(ステップS170)の手順を示すフローチャートである。
造形処理は、各層ごとに粉末層を形成した後、結合材を噴出して壁部を形成し、さらに着色することになる。この各層の処理の詳細を以下に説明する。
まず、ステップS200では、テーブル(台部)14aを筒体14bの上端から一層分だけ下がった位置に移動させる。これにより、筒体14bの上面に一層分だけの凹んだ空間が形成される。なお、このときに造形ヘッド32は回収部36aの側の待避位置にて待機している。次のステップS210では、ならし部35aを初期位置に移動させる。初期位置とは、図8に示すように、ならし部35aの下端が蓄積部36bの上部の最も左方の端部に位置する状態である。この状態で、ステップS220では蓄積部36bで粉末状形成材料を押し上げる。すなわち、ピストン36b1を一定長さだけ上げる。
【0040】
すると、図9に示すように所定量の粉末状形成材料が押し上げられることになるから、ステップS230ではならし部35aをテーブル14aの側に移動させ始めることにより、あふれ出ている粉末状形成材料を同テーブル14aの側に掻き出す。ならし部35aは蓄積部36bの側から回収部36aの側まで移動するので、ある段階では粉末状形成材料をテーブル14a上の空間に供給し、ならす動作を行い、これとともに余った粉末状形成材料は回収部36aに送り込む。そして、回収部36a自体は送り込まれた粉末状形成材料を回収して蓄積部36bに供給する。このとき同粉末状形成材料は蓄積部36bの上方から吐出されることになるが、ならし部35aは下からあふれ出る粉末状形成材料と上から供給される粉末状形成材料を共にテーブル14aの側に供給することになる。
【0041】
この動作は数回で行うのが現実的である。一度に多量の粉末状形成材料をあふれ出させてならし部35aで掻き出したとしても、ならし部35aの下端がへらのように粉末状形成材料を移動させるときには必ずしも一回では平坦にならない。従って、少量を数回に分けて掻き出すことにより、掻き出しとならしとが数回繰り返されて平坦度合いが向上する。
【0042】
ステップS240ではテーブル14a上に粉末状形成材料がまんべんなく行き渡ったかを判断する。これはセンサーで平坦度合いを調べるようにしても良いし、実験結果から得られた回数だけの繰り返し動作を行ったか否かの判断でも良い。
まんべんなく行き渡ったらステップS250では造形ヘッド32を走査開始位置へ移動させる。走査開始位置は、造形ヘッド32をX,Y平面で移動させる際の起点となる位置であり、この位置から主走査動作と副走査動作を繰り返してプラットフォーム14のテーブル14a上面を満遍なく移動できる。続いて、ステップS260では、結合材の噴出走査を開始する。これは上述したスライスデータに基づいて造形物Rの壁部を形成するように、結合させたい粉末状形成材料の部位に対して結合材を噴出させる。このようにして造形のための処理は完成する。
【0043】
その後、ステップS270では、同様にして、着色剤の噴出走査を開始する。着色剤は壁部における表側にあたる部分に対して行う。最後に、ステップS280では、上述したように造形ヘッド32を待避位置へ移動させる。このように一層分の造形と着色が終わった時点で造形ヘッド32が待避位置へ移動しているので、ステップS200では必ず待避位置にあることを保証できる。このようにして、次の粉末層の形成に備えて、一層の造形処理を終了する。
【0044】
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
【0045】
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
例えば、ならし部35aの形状は、へら状に限られず、左官ごて状などの他の形状であっても良い。
【符号の説明】
【0046】
10…3次元複合機、11…筺体、11a…表示装置、11b…操作受付部、12…扉、13…チャンバー、14…プラットフォーム、14a…テーブル、14a1…内壁、14b…筒体、15…プラットフォーム移動機構、20…測定部(スキャナー部)、21…光源、22…イメージセンサー、23…ファイル生成部、30…造形部、31…データ変換部、32…造形ヘッド、32a…噴出部、32b…結合材タンク、32c…着色剤タンク、33…ヘッド移動機構(移動部)、35a…ならし部、36a…回収部、36a1…搬送機構、36b…蓄積部、36b1…ピストン、40…制御部、41…CPU、42…メモリー、50…ネットワーク、51a〜51c…外部の演算装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状形成材料を蓄積する蓄積部と、
移動可能であって造形時に台座となる台部と、
上記蓄積部から上記台部上に供給された上記粉末状形成材料を上記台部上でならすならし部と、
ならされた粉末状形成材料に結合材を噴出する噴出部と、
上記台部上のスキャン対象を立体スキャン可能なスキャナー部と、
このスキャナー部の立体スキャンによって生成したスキャンデータに基づいて造形データを生成し、同造形データに基づき、上記噴出部によって上記ならされた粉末状形成材料に結合材を噴出させることで造形を行わせる制御部と
を備えたことを特徴とする造形複合装置。
【請求項2】
上記台部は略鉛直方向に配向された筒体の中と外で当該筒体の配向方向に沿って移動可能であり、
上記スキャナー部は、上記台部が上記筒体の外で上方に位置する状態で上記台部上に載置されたスキャン対象を立体スキャンし、
上記ならし部は、上記筒体の開口面と当該筒体の内部に位置する上記台座と当該筒体の内周面とで囲まれた空間に収容される上記粉末状形成材料を当該筒体の開口面でならし、
上記噴出部は、上記筒体の開口面に位置する粉末状形成材料に上記結合材を噴出することを特徴とする請求項1に記載の造形複合装置。
【請求項3】
上記蓄積部は、上面に開口を有するようにして上記筒体に隣接して設けられ、下方から上記粉末状形成材料を押し上げるようにして開口より上方に押し出し、
上記ならし部は、同蓄積部の開口で押し出される上記粉末状形成材料を、隣接する上記筒体の側に掻き出すように運ぶことを特徴とする請求項2に記載の造形複合装置。
【請求項4】
上記蓄積部は、上記筒体に隣接して設けられ、同筒体の外でならした粉末状形成材料を回収する回収部を備え、回収した粉末状形成材料を再利用することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の造形複合装置。
【請求項5】
上記台部の縁部には、下方に向かって上記筒体の内面に略一致して摺動可能な内壁が形成されている請求項2〜請求項4のいずれかに記載の造形複合装置。
【請求項6】
天井がある形態において、上記台部が所定の高さから天井の側に向けて上下動可能であるときに、上記スキャナー部は、台部の上のスキャン空間における中央よりも低い位置に備えられることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の造形複合装置。
【請求項7】
天井が開口している形態において、上記台部が所定の高さから天井の側に向けて上下動可能であるときに、上記スキャナー部は、台部の上のスキャン空間における中央よりも高い位置に備えられることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の造形複合装置。
【請求項1】
粉末状形成材料を蓄積する蓄積部と、
移動可能であって造形時に台座となる台部と、
上記蓄積部から上記台部上に供給された上記粉末状形成材料を上記台部上でならすならし部と、
ならされた粉末状形成材料に結合材を噴出する噴出部と、
上記台部上のスキャン対象を立体スキャン可能なスキャナー部と、
このスキャナー部の立体スキャンによって生成したスキャンデータに基づいて造形データを生成し、同造形データに基づき、上記噴出部によって上記ならされた粉末状形成材料に結合材を噴出させることで造形を行わせる制御部と
を備えたことを特徴とする造形複合装置。
【請求項2】
上記台部は略鉛直方向に配向された筒体の中と外で当該筒体の配向方向に沿って移動可能であり、
上記スキャナー部は、上記台部が上記筒体の外で上方に位置する状態で上記台部上に載置されたスキャン対象を立体スキャンし、
上記ならし部は、上記筒体の開口面と当該筒体の内部に位置する上記台座と当該筒体の内周面とで囲まれた空間に収容される上記粉末状形成材料を当該筒体の開口面でならし、
上記噴出部は、上記筒体の開口面に位置する粉末状形成材料に上記結合材を噴出することを特徴とする請求項1に記載の造形複合装置。
【請求項3】
上記蓄積部は、上面に開口を有するようにして上記筒体に隣接して設けられ、下方から上記粉末状形成材料を押し上げるようにして開口より上方に押し出し、
上記ならし部は、同蓄積部の開口で押し出される上記粉末状形成材料を、隣接する上記筒体の側に掻き出すように運ぶことを特徴とする請求項2に記載の造形複合装置。
【請求項4】
上記蓄積部は、上記筒体に隣接して設けられ、同筒体の外でならした粉末状形成材料を回収する回収部を備え、回収した粉末状形成材料を再利用することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の造形複合装置。
【請求項5】
上記台部の縁部には、下方に向かって上記筒体の内面に略一致して摺動可能な内壁が形成されている請求項2〜請求項4のいずれかに記載の造形複合装置。
【請求項6】
天井がある形態において、上記台部が所定の高さから天井の側に向けて上下動可能であるときに、上記スキャナー部は、台部の上のスキャン空間における中央よりも低い位置に備えられることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の造形複合装置。
【請求項7】
天井が開口している形態において、上記台部が所定の高さから天井の側に向けて上下動可能であるときに、上記スキャナー部は、台部の上のスキャン空間における中央よりも高い位置に備えられることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の造形複合装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−213972(P2012−213972A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81700(P2011−81700)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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