説明

造影剤

本発明は、一群の化合物並びにかかる化合物を含む診断用組成物に関するものであり、これらの化合物は含ヨウ素化合物である。具体的には、含ヨウ素化合物は、3又は4つのヨードフェニル基が結合した配置を取り得る親水性中心脂肪族基を含む化合物である。本発明は、画像診断法、特にX線撮像における造影剤としてのかかる診断用組成物の使用並びにかかる化合物を含む造影製剤にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一群の化合物並びにかかる化合物を含む診断用組成物に関するものであり、これらの化合物は含ヨウ素化合物である。具体的には、含ヨウ素化合物は、3又は4つのヨードフェニル基が結合した配置を取り得る親水性中心脂肪族基を含む化合物である。
【0002】
本発明は、画像診断法、特にX線撮像における造影剤としてのかかる診断用組成物の使用並びにかかる化合物を含む造影製剤にも関する。
【背景技術】
【0003】
すべての画像診断は体内の様々な構造から異なる信号レベルを得ることに基づいている。例えばX線撮像では、ある身体構造を画像として視覚化するため、その構造によるX線の減衰と周囲の組織での減衰とが異なっていなければならない。身体構造と周囲の信号の差はコントラストと呼ばれ、身体構造とその周囲とのコントラストが大きいほど画像の質が高く、診断を行う医者に有用であるので、画像診断でのコントラストを高める手段に多大な検討がなされてきた。さらに、コントラストが大きいほど、その撮像操作で小さな身体構造を視認できるようになり、換言すれば、コントラストの増強によって空間解像度を高めることができる。
【0004】
診断のための画像の質はその撮像法の固有ノイズレベルによって大きく左右されるので、コントラストレベルとノイズレベルの比が診断用画像についての有効な診断品質係数を表すことが分かる。
【0005】
かかる診断品質係数を向上させることは、古くからのしかも今もって重要な目標である。X線、磁気共鳴イメージング(MRI)及び超音波のような技術において、診断品質係数を向上させる一つの方法は撮像すべき身体領域に造影剤として処方されたコントラスト増強剤を導入することである。
【0006】
例えばX線では、初期の造影剤の例は、造影剤が分配された身体領域のX線の減衰を高める不溶性無機バリウム塩であった。過去50年間、X線造影剤の分野では可溶性含ヨウ素化合物が主流となっている。ヨウ素化造影剤を含む市販の造影製剤は、通常、ジアトリゾ酸(例えば、Gastrografen(商標)という商品名で市販)のようなイオン性単量体、イオキサグレート(例えば、Hexabrix(商標)という商品名で市販)のようなイオン性二量体、イオヘキソール(例えば、Omnipaque(商標)という商品名で市販)、イオパミドール(例えば、Isovue(商標)という商品名で市販)、イオメプロール(例えば、Iomeron(商標)という商品名で市販)のような非イオン性単量体、及び非イオン性二量体のイオジキサノール(Visipaque(商標)という商品名で市販)に分類される。
【0007】
上記に挙げたような広く使用されている非イオン性X線造影剤は安全であると考えられている。ヨウ素化造影剤を含む造影製剤は米国では毎年二千万件を超えるX線検査に使用されているが、副作用の数は許容範囲内であると考えられている。しかし、コントラスト増強X線検査には総投与量で最大約200mlもの造影剤が必要とされるため、改良造影製剤を提供することが絶えず求められている。
【0008】
造影剤の有用性は、その毒性、診断面での有効性、造影剤が投与された患者での副作用、及び保存の容易さと投与の容易さによって大きく支配される。かかる造影剤は直接的な治療効果を達成するためではなく診断用に用いられるので、細胞又は身体の各種の生物学的機構にできるだけ影響を与えない造影剤を提供することが一般に望まれる。毒性が低く、臨床副作用が少ないからである。造影剤の毒性及び生物学的副作用は、製剤の成分(例えば溶媒又は担体並びに造影剤自体及びその成分、例えばイオン性造影剤のイオンなど)及びその代謝物に起因する。
【0009】
造影製剤の毒性の主な寄与因子は、造影剤の化学毒性、造影製剤の浸透圧、及び造影製剤のイオン組成又はその欠乏であると確認されている。
【0010】
ヨウ素化造影剤の望ましい特性は、化合物自体の毒性(化学毒性)が低いこと、化合物が溶解した造影製剤の粘度が低いこと、造影製剤の浸透圧が低いこと、及びヨウ素含有量(投与用の造影製剤1ml当たりのヨウ素g数として測定されることが多い)が高いことである。ヨウ素化造影剤は、さらに、製剤(通常は水性媒体)に完全に溶解し、かつ保存中に溶解した状態を保つものでなければならない。
【0011】
市販品、特に非イオン性化合物の浸透圧は、二量体及び非イオン性単量体を含む大半の製剤については許容範囲内にあるが、依然として改善の余地がある。例えば冠動脈造影では、ボーラス投与量の造影剤を循環系に注入した結果深刻な副作用が起きている。この方法では、血液ではなく造影剤が循環系に短時間流れ、造影剤と置換された血液との化学的及び生理化学的性状の差によって、不整脈、QT延長、心筋収縮力の低下のような望ましくない副作用を起こしかねない。かかる副作用は特にイオン性造影剤で認められ、注入された造影剤の高浸透圧性に浸透圧毒性作用が付随している。体液と等張又は体液よりもわずかに低張の造影剤が特に望ましい。低浸透圧の造影剤は低い腎毒性を有するが、これは特に望ましい。浸透圧は、造影製剤の単位体積当たりの粒子数の関数である。
【0012】
造影剤の注入量をできるだけ低く保つため、ml当たりのヨウ素濃度の高い造影製剤であって、その浸透圧が依然として低いレベル、好ましくは等張以下の造影製剤を処方することが大いに望まれる。非イオン性単量体造影剤、特にイオジキサノール(欧州特許第108638号)のような非イオン性ビス(トリヨードフェニル)二量体の開発によって、浸透圧毒性が低減し、低張液でコントラスト増強に有効なヨウ素濃度を達成できる造影製剤がもたらされ、さらに、造影製剤Visipaque(商標)を所望の浸透圧に維持しつつ、血漿イオンの配合によってイオンの不均衡を補正することもできる(国際公開第90/01194号及び同第91/13636号)。
【0013】
高ヨウ素濃度の市販X線造影製剤は、室温で約15〜約60mPasの比較的高い粘度を有する。一般に、コントラスト増強剤が二量体である造影製剤は、コントラスト増強剤が上記二量体の対応単量体である造影製剤よりも高い粘度を有する。このような高い粘度は造影製剤の投与に際して問題となりかねず、内径の比較的大きい針又は高い注入圧が必要とされ、特に小児X線撮影並びに血管造影のように急速ボーラス投与が必要とされるX線撮影技術で顕著である。
【0014】
高分子量のX線造影剤、例えば置換トリヨードフェニル基をポリマーにグラフトしたものが提案されている。欧州特許第354836号、同第436316号及び米国特許第5019370号参照。さらに、国際公開第95/01966号、欧州特許第782563号及び米国特許第5817873号には、例えば、3及び4置換トリヨウ素化フェニル基を線状に又は中心コアの周囲に配置した化合物が記載されている。しかし、提案されたこれらの化合物で上市されたものはない。
【特許文献1】欧州特許第108638号明細書
【特許文献2】国際公開第90/01194号パンフレット
【特許文献3】国際公開第91/13636号パンフレット
【特許文献4】欧州特許第354836号明細書
【特許文献5】欧州特許第436316号明細書
【特許文献6】米国特許第5019370号明細書
【特許文献7】国際公開第95/01966号パンフレット
【特許文献8】欧州特許第782563号明細書
【特許文献9】米国特許第5817873号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、上述の1以上の問題が解決される造影剤の開発が依然として望まれている。かかる造影剤は、理想的には、腎毒性、浸透圧、粘度、溶解度、注入量/ヨウ素濃度及び減衰/放射線量の1以上の特性において、可溶性含ヨウ素化合物に比して向上した特性を有しているべきである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、浸透圧(したがって、腎毒性)、粘度、ヨウ素濃度及び溶解度の1以上の基準に関して公知の造影剤よりも優れた特性を有する造影剤として有用な化合物を提供する。造影剤は含ヨウ素コントラスト増強化合物を含んでおり、含ヨウ素化合物は3又は4つのヨウ素化フェニル基が結合した配置を取り得る親水性中心脂肪族基を含む化合物である。含ヨウ素コントラスト増強化合物は、市販の比較的安価な原料から合成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
コントラスト増強化合物は、次の式(I)の合成化合物並びにその塩及び光学異性体である。
【0018】
【化1】

式中、
各R1は同一又は異なるものでCH2−O−CH2−R3基であり、
2はR1であるか或いはC1〜C4アルキル、CH2O(C1〜C4アルキル)及びOH基のいずれかであって、該アルキル基は1以上のヒドロキシ基を有していてもよく、
各R3は同一又は異なるものでα−ヒドロキシ及びω−NR4R置換基を有するC1〜C4アルキレン基であって、該アルキレン基はさらにヒドロキシル化されていてもよく、
各R4は同一又は異なるもので水素原子又はアシル基であり、
各Rは独立に同一又は異なるもので、2つの基R5でさらに置換されたトリヨウ素化フェニル基、好ましくは2,4,6−トリヨウ素化フェニル基であり、各R5は同一又は異なるもので水素原子又は非イオン性親水性基であるが、式(I)の化合物の1以上のR5基が親水性基であることを条件とする。
【0019】
式(I)において、3つの基R1は好ましくは同一である。R2がR1である場合、4つのR1基は好ましくはすべて同一である。
【0020】
2基は好ましくはメチル基、エチル基又はヒドロキシル化エーテル基、例えば式−CH2−O−CH2−CH(OH)−CH2OHである。
【0021】
3基は好ましくは式−CH(OH)−CH2−NR4Rの基であり、R4及びRは上記の意味を有し、好ましくは式(I)のR1基はすべて同一である。
【0022】
4基は同一でも異なるものでもよい。好ましい実施形態では、各R4基は互いに独立に、脂肪族有機酸の残基、特にギ酸基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基及びバレリル基のような炭素原子数1〜5の脂肪族有機酸の残基である。ヒドロキシル化アシル基も適している。さらに好ましい実施形態では、R4基はすべて同一である。特に好ましい実施形態では、R4基はすべて同一であって、アセチル基である。
【0023】
非イオン性親水性基R5は、水溶性を高めるために従来から使用されている非イオン性基のいずれであってもよい。好適な基としては、エステル、アミド及びアミンが挙げられ、これらはさらに置換されていてもよい。かかる追加の置換基としては、直鎖又は枝分れ鎖C1-10アルキル基、好ましくはC1-5アルキル基が挙げられ、1以上のCH2又はCH基が酸素又は窒素原子で適宜置き換えられていてもよいし、オキソ、ヒドロキシル、アミノ又はカルボキシル誘導体並びにオキソ置換硫黄及びリン原子から選択される1以上の基で適宜置換されていてもよい。具体例としては、ポリヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル又はヒドロキシポリアルコキシアルキルが挙げられ、これらの基は、ヒドロキシアルキルアミノカルボニル基、N−アルキル−ヒドロキシアルキルアミノカルボニル基、ビス−ヒドロキシアルキルアミノカルボニル基のようなアミド結合でフェニル基と結合している。
【0024】
好ましい実施形態では、親水性基は1〜6個のヒドロキシ基、好ましくは1〜3個のヒドロキシ基を含む。
【0025】
以下に示す式のR5基が好ましい。
【0026】
−CONH−CH2−CH2−OH、
−CONH−CH2−CHOH−CH2−OH、
−CON(CH3)CH2−CHOH−CH2OH、
−CONH−CH−(CH2−OH)2
−CON−(CH2−CH2−OH)2
−CONH2
−CONHCH3
−NHCOCH2OH、
−N(COCH3)H、
−N(COCH3)C1-3アルキル、
−N(COCH3)−モノ、ビス又はトリス−ヒドロキシC1-4アルキル、
−N(COCH2OH)−水素、モノ、ビス又はトリス−ヒドロキシC1-4アルキル、
−N(CO−CHOH−CH2OH)−水素、モノ、ビス又はトリヒドロキシル化C1-4アルキル、
−N(CO−CHOH−CHOH−CH2OH)−水素、モノ、ビス又はトリヒドロキシル化C1-4アルキル、
−N(COCH2OH)2
−CON(CH2−CHOH−CH2−OH)(CH2−CH2−OH)、
−CONH−C(CH2−OH)3、及び
−CONH−CH(CH2−OH)(CHOH−CH2−OH)。
【0027】
さらに好ましくは、R5基は同一又は異なるものであって、式−CON(CH3)CH2−CHOH−CH2OH、−CONH−CH2−CHOH−CH2−OH、−CONH−CH−(CH2−OH)2、−CON−(CH2−CH2−OH)2、−CONH−CH2−CHOH−CH2−OH、−NHCOCH2OH及び−N(COCH2OH)−モノ、ビス又はトリス−ヒドロキシC1-4アルキルの1以上の基であり、さらに一段と好ましくは、すべてのR5基が同一であって、これらの基のいずれかである。
【0028】
そこで、本発明の好ましい構造としては、式(IIa)〜(IIh)の化合物が挙げられる。
【0029】
【化2】

【0030】
【化3】

【0031】
【化4】

【0032】
【化5】

式(I)の化合物は星状構造を与え、星状構造の3又は4本のアームの間の領域を比較的嵩高いヨウ素化フェニル基が満たしている。したがって、この分子は比較的丸い又は球状の形態を取る。球状分子は平面的な構造の類似の分子に比べると概して溶解度が高い。
【0033】
市販のヨウ素化造影剤の一般的な濃度である320mg/mlのヨウ素濃度では、式(I)の化合物の濃度は3つのヨードアリール基を有する化合物では約0.28Mであり、4つのヨードアリール基を有する化合物では約0.21Mである。このヨウ素濃度において本造影剤は低浸透圧でもあり、これは造影剤の腎毒性に関して有益な特性である。国際公開第90/01194号及び同第91/13636号に記載されているように心血管系作用を低下させるために、造影剤に電解質を添加してもよい。
【0034】
式(I)の化合物には、光学異性体も含まれる。純粋な鏡像異性体も光学異性体の混合物も包含される。
【0035】
本発明の化合物は造影剤として使用でき、慣用の担体及び賦形剤と共に製剤化して診断用造影剤を製造することができる。
【0036】
そこで、別の態様では、本発明は、上述の式(I)の化合物を含む診断薬、特にX線診断薬を提供する。
【0037】
本発明は、さらに、上述の式(I)の化合物を、生理的認容性の1種以上の担体又は賦形剤と共に(例えば血漿イオン又は溶存酸素を適宜添加した注射用水溶液中に)含んでなる診断薬、特にX線診断薬を提供する。
【0038】
本発明は、さらに、式(I)の化合物を含む診断薬及び診断用組成物の使用、並びに画像診断、特にX線撮像に使用される造影剤を製造するための上記化合物の使用を提供する。
【0039】
診断方法並びに撮像、特にX線撮像法であって、式(I)の化合物をヒト又は動物の身体に投与し、身体を診断装置で検査し、検査データをコンパイルし、適宜データを解析し、診断することを含む方法を提供する。或いは、診断法において、ヒト又は動物の身体には式(I)の化合物が予め投与されている。
【0040】
本発明の診断用組成物は 適当な濃度のそのまま使用できる形態のものでも、投与前に希釈される濃縮物の形態のものであってもよい。一般に、そのまま使用できる形態の組成物のヨウ素濃度は100mgl/ml以上、好ましくは150mgl/ml以上であるが、300mgl/ml以上、例えば320mgl/mlが好ましい。ヨウ素濃度が高いほど、造影剤のX線減衰の形で診断的価値は高まる。ただし、ヨウ素濃度が高いほど、組成物の粘度及び浸透圧は高くなる。一般に、所与の造影剤での最大ヨウ素濃度は、コントラスト増強剤(例えばヨウ素化合物)の溶解度、並びに粘度及び浸透圧の認容限度によって決まる。
【0041】
注射又は点滴で投与される造影剤では、室温(20℃)での溶液の粘度の望ましい上限は約30mPasであるが、最大50〜60mPas、さらには60mPasを超える粘度も許容できる。血管造影法などにおいてボーラス注射で投与される造影剤では、浸透圧毒性作用を考慮しなければならず、好ましくは浸透圧は1Osm/kgH2O未満、好ましくは850mOsm/kgH2O未満、さらに好ましくは約300mOsm/kgH2O未満とすべきである。
【0042】
本発明の化合物は、かかる粘度、浸透圧及びヨウ素濃度の目標を満たすことができる。実際、低張液で有効なヨウ素濃度に達することができる。したがって、ボーラス注射後の不均衡作用に起因する毒性寄与を低減するため、血漿陽イオンの添加によって溶液の張度を補うのが望ましいこともある。かかる陽イオンは、望ましくは国際公開第90/01194号及び同第91/13636号で示唆された範囲内に収められる。
【0043】
特に、すべてのヨウ素濃度で血液と等張な造影剤を与えるためナトリウム及びカルシウムイオンの添加が望ましい。血漿陽イオンは、生理的認容性の対イオンとの塩の形態、例えば塩化物、リン酸塩、炭酸水素塩などの形態で与えることができるが、血漿陰イオンを使用するのが好ましい。
【0044】
一般式(I)の化合物は、トリエポキシド又はテトラエポキシド誘導体及び反応性アミン官能基を有するトリヨウ素化フェニル化合物から、一段階プロセスで合成できる。ある種のトリエポキシド及びテトラエポキシドは市販されているし、T.Kida, M.Yokota, A.Masuyama, Y.Nakatsuji, M.Okahara: A facile synthesis of polyglycidyl ethers from polyols and epichlorohydrin. Synthesis, (5)1993,487−489に記載の方法でエピクロロヒドリンとトリオール又はテトラオールから製造することもできる。トリエポキシド及びテトラエポキシドの具体例は以下の化合物である。
【0045】
【化6】

トリヨウ素化フェニル基は市販されているし、国際公開第95/35122号及び同第98/52911号に記載又は引用された方法で製造することもできる。好ましいトリヨード化合物5−アミノ−2,4,6−トリヨード−N,N′−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−イソフタルアミドは、例えば富士化学工業(株)から市販されている。5−N−アセチル化化合物及び対応アシル化化合物の製造は、米国特許第4250113号に記載されているような無水酢酸でのアセチル化のような慣用アシル化剤によって行うことができる。
【0046】
アルカリ水酸化物の存在下、水性メタノールにアシルアミノ−トリヨードフェニル誘導体を溶解させる。適宜ホウ酸で初期pHを調節した後、トリエポキシドを添加する。pH<7に中和して反応を停止させ、生成物を分取HPLCで単離する。
【0047】
一般的方法を、式(II)の化合物の製造に関する以下のスキームで例示することができる。
【0048】
【化7】

【0049】
【化8】

【実施例】
【0050】
以下、本発明を非限定的な実施例でさらに例示する。
【0051】
実施例1
5−(アセチル−{3−[2,2−ビス−(3−{アセチル−[3,5−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨード−フェニル]−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロポキシメチル)−ブトキシ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アミノ)−N,N′−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド
トリメチロルプロパントリグリシジルエーテルは、Aldrich社から市販のものであった。5−アセチルアミノ−N,N′−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド(500g、669mmol)を、水(539ml)/メタノール(254ml)中のKOH(53.76g、958mmol)溶液に23〜50℃で溶解した。この透明な溶液に、ホウ酸(36.05g、583mmol)を添加し、0.5〜3時間撹拌する。トリメチロルプロパントリグリシジルエーテル(34.14g、112.9mmol)を23〜25℃で添加して2日間撹拌した。水(900ml)を添加し、18.4%HCl水溶液でpH4〜5に中和して反応を停止させた。白色沈殿(原料)を濾過し、濾過ケークを水洗した。イオン交換体Amberlite200C及びIRA67によって濾液から塩を除去した。溶液は28HPLC面積%の目標化合物(約80g)を含んでおり、生成物を分取HPLCで単離した。
HPLC/MS(TOF ES+,m/e):2543,8[M+H]+,1272,4[M+2H]2+
1H NMR(d6−DMSO):8,7〜8,1(m,6H,NH),4,9〜4,4(m,15H,OH+CH),4,0〜3,0(m,CH2,CH),2,2&1,8(s,9H,CH3−CO),1,4(m,2H,C−CH2),0,8(t,3H,CH3)。
IR:3262(m),2927(w),2874(w),1638(s),1546(m),1394(m),1253(m),1105(m),1036(s),978(w)。
【0052】
実施例2
5−(アセチル−{3−[2,2−ビス−(3−{アセチル−[3,5−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨード−フェニル]−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロポキシメチル)−プロポキシ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アミノ)−N,N′−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド
トリエポキシドトリメチロルエタントリグリシジルエーテルは、T.Kida, M.Yokota, A.Masuyama, Y.Nakatsuji, M.Okahara: A facile synthesis of polyglycidyl ethers from polyols and epichlorohydrin. Synthesis, (5)1993,487−489に記載の方法で調製した。5−アセチルアミノ−N,N′−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド(500g、669mmol)を、水(537ml)/メタノール(253ml)中のKOH(49.08g、874mmol)溶液に23〜50℃で溶解させた。この透明な溶液に、ホウ酸(26.81g、433mmol)を添加し、0.5〜3時間撹拌した。トリメチロルエタントリグリシジルエーテル(32.4g、112.4mmol)を10℃で添加して2日間撹拌した。水(1000ml)を添加し、18.4%HCl水溶液でpH4〜5に中和して反応を停止させた。白色沈殿(原料)を濾過し、濾過ケークを水洗した。イオン交換体Amberlite200C及びIRA67によって濾液から塩を除去した。溶液は40HPLC面積%の目標化合物(約110g)を含んでおり、生成物を分取HPLCで単離した。
HPLC/MS(TOF ES+、m/e):2529,9[M+H]+,1265,4[M+H]2+
【0053】
実施例3
5−(アセチル−{3−[2,2−ビス−(3−{アセチル−[3,5−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨード−フェニル]−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロポキシメチル)−3−(2,3−ジヒドロキシ−プロポキシ)−プロポキシ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アミノ)−N,N′−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド
テトラエポキシドペンタエリトロールテトラグリシジルエーテルは、T.Kida, M.Yokota, A.Masuyama, Y.Nakatsuji, M.Okahara: A facile synthesis of polyglycidyl ethers from polyols and epichlorohydrin. Synthesis, (5)1993,487−489に記載の方法で調製した。5−アセチルアミノ−N,N′−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド(400g、535mmol)を、水(431ml)/メタノール(203ml)中のKOH(41.07g、731mmol)溶液に23〜50℃で溶解させた。この透明な溶液に、ホウ酸(21.55g、348mmol)を添加し、0.5〜3時間撹拌した。ペンタエリトロールテトラグリシジルエーテル(32.5g、90.3mmol)を10℃で添加して1日間撹拌した。ホウ酸3.67g、59mmol)を添加し、さらにもう1日10℃で撹拌を続けた。水(600ml)を添加し、18.4%のHCl水溶液でpH4〜5に中和して反応を停止させた。白色沈殿(原料)を濾過し、濾過ケークを水洗した。イオン交換体Amberlite200C及びIRA67によって濾液から塩を除去した。溶液は7HPLC面積%の目標化合物(約16g)を含んでおり、生成物を分取HPLCで単離した。
HPLC/MS(TOF ES+,m/e):2619,7[M+H]+,1310,3[M+2H]2+
1H NMR(d6−DMSO):8,7〜8,1(m,6H,NH),4,9〜4,2(m,17H,OH),4,1〜2,9(m,58H,CH2&CH),2,2&1,75(s,9H,CH3)。
IR:3266(m),2926(w),1641(vs),1552(m),1396(m),1258(m),1108(s),1038(s),979(w)。
【0054】
実施例4
5−(アセチル−{3−[2,2−ビス−(3−{アセチル−[3,5−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨード−フェニル]−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロポキシメチル)−3−(3−{アセチル−[3,5−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨード−フェニル]−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−プロポキシ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アミノ)−N,N′−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド
テトラエポキシドペンタエリトロールテトラグリシジルエーテルは、T.Kida, M.Yokota, A.Masuyama, Y.Nakatsuji, M.Okahara: A facile synthesis of polyglycidyl ethers from polyols and epichlorohydrin. Synthesis, (5)1993,487−489に記載の方法で調製した。5−アセチルアミノ−N,N′−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド(400g、535mmol)を、水(159ml)/メタノール(159ml)中のKOH(41.07g、731mmol)溶液に23〜50℃で溶解させた。この透明な溶液に、ホウ酸(25.22g、407mmol)を添加し、0.5〜3時間撹拌した。ペンタエリトロールテトラグリシジルエーテル(32.5g、90.3mmol)を10℃で添加して2日間撹拌した。水(1000ml)を添加し、18.4%HCl水溶液でpH4〜5に中和して反応を停止させた。白色沈殿(原料)を濾過し、濾過ケークを水洗した。イオン交換体Amberlite200C及びIRA67によって濾液から塩を除去した。溶液は15HPLC面積%の目標化合物(約45g)を含んでおり、生成物を分取HPLCで単離した。
HPLC/MS(TOF ES+、m/e):3348,8[M+H]+,1674,9[M+H]2+

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物又はその塩もしくは光学異性体。
【化1】

式中、
各R1は同一又は異なるものでCH2−O−CH2−R3基であり、
2はR1であるか或いはC1〜C4アルキル、CH2O(C1〜C4アルキル)及びOH基のいずれかであって、アルキル基は1以上のヒドロキシ基を有していてもよく、
各R3は同一又は異なるものでα−ヒドロキシ及びω−NR4R置換基を有するC1〜C4アルキレン基であって、該アルキレン基はさらにヒドロキシル化されていてもよく、
各R4は同一又は異なるもので水素原子又はアシル基であり、
各Rは独立に同一又は異なるものでトリヨウ素化フェニル基であるが、1以上のR基は親水性基でさらに置換されている。
【請求項2】
2がメチル基、エチル基又はヒドロキシル化エーテル基、好ましくは式−CH2−O−CH2−CH(OH)−CH2OHである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
2がR1である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
各R3が式−CH(OH)−CH2−NR4Rの基である、請求項1乃至請求項3記載の化合物。
【請求項5】
各R3が式(I)のすべてのR1基で同一である、請求項1乃至請求項4記載の化合物。
【請求項6】
4が同一又は異なるもので脂肪族有機酸の残基である、請求項1乃至請求項5記載の化合物。
【請求項7】
各R4が、ギ酸基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基及びバレリル基又はそれらの対応ヒドロキシル化アシル基のような炭素原子数1〜5の脂肪族有機酸の残基である、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
4基がすべて同一である、請求項1乃至請求項7記載の化合物。
【請求項9】
各基Rが2つの基R5で置換されており、各R5は同一又は異なるもので水素又は非イオン性親水性基であるが、式(I)の化合物の1以上のR5基が親水性基であることを条件とする、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の化合物。
【請求項10】
5がエステル、アミド又はアミン基であって、直鎖又は枝分れ鎖C1-10アルキル基でさらに置換されていてもよく、1以上のCH2又はCH基が酸素又は窒素原子で適宜置き換えられていてもよいし、オキソ、ヒドロキシル、アミノ又はカルボキシル誘導体並びにオキソ置換硫黄及びリン原子から選択される1以上の基で適宜置換されていてもよい、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
各R5がエステル、アミド又はアミン基であって、直鎖又は枝分れ鎖C1-5アルキル基でさらに置換されていてもよく、1以上のCH2又はCH基が酸素又は窒素原子で適宜置き換えられていてもよいし、オキソ、ヒドロキシル、アミノ又はカルボキシル誘導体並びにオキソ置換硫黄及びリン原子から選択される1以上の基で適宜置換されていてもよい、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
各R5が、1〜6個のヒドロキシ基、好ましくは1〜3個のヒドロキシ基を含む親水性基である、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
各R5が同一又は異なるもので、ポリヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル又はヒドロキシポリアルコキシアルキルであり、該基が、ヒドロキシアルキルアミノカルボニル基、N−アルキル−ヒドロキシアルキルアミノカルボニル基、ビス−ヒドロキシアルキルアミノカルボニル基のようなアミド結合によってフェニル基に結合している、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
各R5が同一又は異なるもので以下の式の基から選択される、請求項9記載の化合物。
−CONH−CH2−CH2−OH、
−CONH−CH2−CHOH−CH2−OH、
−CON(CH3)CH2−CHOH−CH2OH、
−CONH−CH−(CH2−OH)2
−CON−(CH2−CH2−OH)2
−CONH2
−CONHCH3
−NHCOCH2OH、
−N(COCH3)H、
−N(COCH3)C1-3アルキル、
−N(COCH3)−モノ、ビス又はトリス−ヒドロキシC1-4アルキル、
−N(COCH2OH)−水素、モノ、ビス又はトリス−ヒドロキシC1-4アルキル、
−N(CO−CHOH−CH2OH)−水素、モノ、ビス又はトリヒドロキシル化C1-4アルキル、
−N(CO−CHOH−CHOH−CH2OH)−水素、モノ、ビス又はトリヒドロキシル化C1-4アルキル、
−N(COCH2OH)2
−CON(CH2−CHOH−CH2−OH)(CH2−CH2−OH)、
−CONH−C(CH2−OH)3、及び
−CONH−CH(CH2−OH)(CHOH−CH2−OH)。
【請求項15】
各R5が同一又は異なるもので式CON(CH3)CH2−CHOH−CH2OH、−CONH−CH2−CHOH−CH2−OH、−CONH−CH−(CH2−OH)2、−CON−(CH2−CH2−OH)2、−CONH−CH2−CHOH−CH2−OH、−NHCOCH2OH及びN(COCH2OH)−モノ、ビス又はトリス−ヒドロキシC1-4アルキル基から選択される、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
各R5が同一であって−CONH−CH2−CHOH−CH2−OHである、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
5−(アセチル−{3−[2,2−ビス−(3−{アセチル−[3,5−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨード−フェニル]−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロポキシメチル)−ブトキシ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アミノ)−N,N′−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド、
5−(アセチル−{3−[2,2−ビス−(3−{アセチル−[3,5−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨード−フェニル]−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロポキシメチル)−プロポキシ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アミノ)−N,N′−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド、
5−(アセチル−{3−[2,2−ビス−(3−{アセチル−[3,5−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨード−フェニル]−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロポキシメチル)−3−(2,3−ジヒドロキシ−プロポキシ)−プロポキシ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アミノ)−N,N′−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミド、又は
5−(アセチル−{3−[2,2−ビス−(3−{アセチル−[3,5−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨード−フェニル]−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロポキシメチル)−3−(3−{アセチル−[3,5−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨード−フェニル]−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−プロポキシ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アミノ)−N,N′−ビス−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−2,4,6−トリヨード−イソフタルアミドである、請求項1乃至請求項16のいずれか1項記載の化合物。
【請求項18】
請求項1乃至請求項17のいずれか1項記載の式(I)の化合物を含んでなる診断薬。
【請求項19】
請求項1乃至請求項18のいずれか1項記載の式(I)の化合物を、薬学的に許容される担体又は賦形剤と共に含んでなる診断用組成物。
【請求項20】
請求項1乃至請求項19のいずれか1項記載の式(I)の化合物を、薬学的に許容される担体又は賦形剤と共に含むX線診断用組成物。
【請求項21】
請求項1乃至請求項20のいずれか1項記載の式(I)の化合物を含む診断薬及び診断用組成物のX線造影検査における使用。
【請求項22】
X線造影剤としての使用される診断用組成物の製造のための、請求項1乃至請求項21のいずれか1項記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項23】
請求項1乃至請求項22のいずれか1項記載の式(I)の化合物をヒト又は動物の身体に投与し、身体を診断装置で検査し、検査データをコンパイルすることを含む診断方法。
【請求項24】
請求項1乃至請求項23のいずれか1項記載の式(I)の化合物をヒト又は動物の身体に投与し、身体を診断装置で検査し、検査データをコンパイルし、適宜データを解析することを含んでなる撮像、特にX線撮像方法。

【公表番号】特表2009−531286(P2009−531286A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554169(P2008−554169)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【国際出願番号】PCT/NO2007/000045
【国際公開番号】WO2007/094677
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(396019387)ジーイー・ヘルスケア・アクスイェ・セルスカプ (82)
【Fターム(参考)】