造波装置、造波方法及びプログラム
【課題】波動場の重ね合せで所望の波動場を構成することができる造波装置、造波方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】複数の造波板100をそれぞれ駆動する複数の直線駆動部102やモーター106等と、造波条件を設定する造波条件設定器302−1と、該造波水面場において反射の影響も考慮した該複数の造波板の個々の造波板の造る速度ポテンシャルを予め計算し全ての該複数の造波板についての計算結果を蓄えておく速度ポテンシャルデータベース204−1と、該造波条件設定器302−1で設定した造波条件とこの設定された造波条件に対応した該速度ポテンシャルデータベース204−1のデータに基づき演算を行う演算処理部304と、時系列データ記憶装置305と、時系列データ記憶装置305の時系列データに基づいて該複数の直線駆動部102やモーター106等を制御する。
【解決手段】複数の造波板100をそれぞれ駆動する複数の直線駆動部102やモーター106等と、造波条件を設定する造波条件設定器302−1と、該造波水面場において反射の影響も考慮した該複数の造波板の個々の造波板の造る速度ポテンシャルを予め計算し全ての該複数の造波板についての計算結果を蓄えておく速度ポテンシャルデータベース204−1と、該造波条件設定器302−1で設定した造波条件とこの設定された造波条件に対応した該速度ポテンシャルデータベース204−1のデータに基づき演算を行う演算処理部304と、時系列データ記憶装置305と、時系列データ記憶装置305の時系列データに基づいて該複数の直線駆動部102やモーター106等を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば波を人工的に発生させるための造波装置、造波方法及びプログラムに係り、特に消波を造波の一種ととらえ、個々の造波機が振動するときの反射を含めた波動場を高精度に計算した上で、波動場の重ね合せで所望の波動場を構成することができる造波装置、造波方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶海洋工学分野において実海域での船舶性能を評価する要求が高まっている。水槽試験において船舶の実海域性能を把握するには、多方向不規則波を再現し、また、長い実験時間が取れるように反射の影響を無くすことが求められる。
【0003】
それらの要件の中でも所定の制御方式によって波を作り出したり、反射の影響を無くしたりするための試みとして、例えば、特許文献1乃至4に開示される技術思想がある。
【0004】
特許文献1は、複数の造波信号のうちの対応するものに基づいて、複数の造波コントロール信号を出力する造波装置であって、詳細な造波計算を行いながら同時に造波板の動作のリアルタイム制御を行うものである。しかし、この特許文献1に係る技術思想では、たとえばその図12に示されるように、フィードバック部95において、各周波数毎(i毎)のXの時間微分の総和が実際のサーボモータ17によるXの時間微分のフィードバック信号と比較され、コントロール部96は、その差分に基づいて、ゲインを調整し、サーボモータ17を制御する、というフィードバック制御を行うものである。
【0005】
特許文献2は、多方向不規則波を造波して模擬した場合にも不規則反射波を効率良く吸収し、実際の海洋と同様に周期及び波向きが不規則に変化する波浪場の高精度再現を確保しようとするものである。しかし、この特許文献2に係る技術思想においても、波高を観測してこれに基づくフィードバック制御を各造波板に対して加えているものである。
【0006】
特許文献3は、造波体に対し減衰力及び復元力係数を吸収目的の波周波数により定まる値に設定し波の反射を防止するものである。しかし、この特許文献3に係る技術思想においても、造波指令信号と、造波体の運動変位に応じた信号に復元力係数を乗じた値と、造波体の運動速度に応じた信号に減衰力係数を乗じた値とを加算したものに基づくフィードバック制御をかけているもの
である。
【0007】
特許文献4は、造波体の減衰力及び復元力信号と駆動力信号とにより、基本駆動信号を修正するものである。この特許文献4に係る技術思想においても、造波体に作用する力を求め、これを指令駆動力と比較して所要の駆動力を補償するフィードバック制御を加えているものである。
【特許文献1】特開2003−177073号公報
【特許文献2】特開平6−11411号公報
【特許文献3】特開平2−307031号公報
【特許文献4】特開昭63−273033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記で見たように、上記各特許文献を含むこれまでの技術もしくは技術的思想は、水槽の淵や造波板に衝突した波を打ち消すための消波効果や吸収効果を得るために、造波板の挙動を所定の数式処理により計算して最適値を算出し、当該最適値を用いて閉ループ制御(フィーバック制御)する域を出ないものであった。特に、上記各特許文献3及び4については、フィードバック制御の対象となるのは造波板の反射波であって、この反射波を造波装置として検出して造波機構にフィーバック制御をかけることで最終出力系での反射波を吸収しようとするものである。したがって、これら従来技術のいずれにおいても、造波という最終出力系でのオープンループ制御はなし得ない構成となっている。
【0009】
また、個々の造波板が反射波を認識する構成であるため、造波板が複数で全体の系が構成される場合に、一の造波板が他の造波板での反射も含めて全領域に与える影響を考慮に入れているものではないため、反射波中でも斜め方向から衝突する波の影響を考慮に入れた精密な波を形成することが困難であった。
【0010】
本発明は、上記の従来技術上の問題点を解決するもので、フィーバック制御を不要としつつも一の造波板が他の造波板での反射も含めて全領域に与える影響を反映した正確な波を生成し得る造波装置、造波方法及びプログラムを提供することを目的とする。本発明のより詳細な目的は、所望の造波に対応する各造波板の挙動を所定の数式処理にて算出し、それらの結果を重ね合わせることで、反射波の影響も考慮して所望の波を発生させることのできる造波装置、造波方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するために、本願に係る造波装置は、造波水面場に対して配列した複数の造波板と、この複数の造波板をそれぞれ駆動する複数の駆動手段と、造波条件を設定する造波条件設定手段と、前記造波水面場において反射の影響も考慮した前記複数の造波板の個々の造波板の造る速度ポテンシャルを予め計算し全ての前記複数の造波板についての計算結果を蓄えておく速度ポテンシャルデータベースと、前記造波条件設定手段で設定した造波条件とこの設定された造波条件に対応した前記速度ポテンシャルデータベースのデータとに基づき所定の演算式に従って演算を行う演算手段と、この演算手段の演算結果である個々の造波板位置の時系列データを蓄える記憶装置と、この記憶装置の時系列データに基づいて前記複数の駆動手段を制御する制御手段とを備えて構成される。
【0012】
波には、規則波、不規則波及び集中波が含まれる。規則波とは、一つの向きの波で、波高及び周期が一定であるものを示し、不規則波は複数の規則波を加え合わせたものを示す。一方、集中波とは、時系列的に各時刻の空間的な波高分布を決め、それらの組み合わせによって構成されるものである。
【0013】
上記において、造波板とは、所定の形状、寸法及び重量を有する板状のものをいうが、その寸法、材質、形状等に特に限定はなく、一定の剛性を備えた実質的に板状の物体であって波を生成する機能を担えるものであればよい。特に造波板の材質については、硬質であって防錆効果を有する素材、たとえば金属(たとえば鉄、鋼鉄等に塗装を施したもの)、合成樹脂、セラミック等であることが好ましいがこれに限定されることはない。造波板の種類としては、一つの継手部を利用して挙動させるフラップ式、直線駆動部の駆動と平行に駆動させるピストン式、及び造波板を楔形にして上下に挙動させるプランジャー式、或いは複数の造波板を連接させてその挙動を動的に制御する連結式のうちのいずれでもよく、或いはそれらの任意の組み合わせでもよい。
【0014】
本願では、この造波板は造波水面場に対して複数配列されることを前提としているが、その配列の間隔及び造波板の数に限定はない。但し、個々の造波板と接触する等の直接的な影響を与えないような配列が好ましい。
【0015】
駆動手段とは、造波板により波動を発生させるための動力を与える機能を有するものをいい、造波板を振動させるための継手部(例えば、蝶番やジョイントを含む。)、造波板を波面に対して前後、上下及び左右のうちいずれかもしくはそれらの組み合わせによる駆動をさせるための直線駆動部、直線駆動部が駆動することができるレール部、直線駆動部の駆動範囲を制限するリミッター部、直線駆動部の駆動位置を検出する位置検出部、及び造波板及び/または直線駆動部を駆動させるための電動部(例えば、モーターや運動変換機構を含む。)、或いはそれらを組み合わせたものを含んだ概念をいい、具体的にはこれらの機能を備える機械、装置、デバイス、或いはこれらの一部分もしくは組み合わせによって実現される。なお、造波板の挙動は、一つの継手部を利用して挙動させるフラップ式、直線駆動部の駆動と平行に駆動させるピストン式、及び造波板を楔形にして上下に挙動させるプランジャー式、或いは複数の造波板を連接させてその挙動を動的に制御する連結式のうちのいずれの挙動でもよく、或いはそれらの任意の組み合わせでもよい。
【0016】
造波条件設定手段とは、波の波長、振幅、波高、波向、波形、波状、波の速度、周期及び位相のうち少なくとも一つ、或いはそれらの組み合わせによって種々の波を発生させるための条件を設定することのできる機能を有するものを示し、具体的には、これらの機能を有する機械、装置、部品、或いは、こうした機能をコンピュータに実行させるアルゴリズム、このアルゴリズムを実行させるプログラム、もしくはこのプログラムを含めたソフトウェア、搭載媒体、ROM(読み出し専用メモリ)、或いはこれらを搭載もしくは内蔵したコンピュータもしくはその部分によって実現される。また、かかる条件としては所定の数式処理(例えば、行列計算や複素数計算を含む。)により最適値を算出するものを示す。
【0017】
速度ポテンシャルとはその微分値が流体速度になるような波動に係る物理量を示し、速度ポテンシャルデータとは、目標とする波動場における任意の点に関し、(後述する)境界要素法を利用し、所定の計算により算出される速度ポテンシャルをいう。
【0018】
速度ポテンシャルデータベースとは、速度ポテンシャルデータを記憶する機能を有し所定の容量を有する記憶媒体(ハード)もしくはかかる記憶媒体上に磁気情報として記録されたデータも含めた概念をいい、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む概念である。
【0019】
演算手段とは、造波条件設定手段により設定した造波条件及び該造波条件に対応した速度ポテンシャルデータを用いて所定の演算方法により演算処理する機能を有するものをいい、具体的には、これらの機能を有する機械、装置、部品、或いは、こうした機能をコンピュータに実行させるアルゴリズム、このアルゴリズムを実行させるプログラム、もしくはこのプログラムを含めたソフトウェア、搭載媒体、ROM(読み出し専用メモリ)、或いはこれらを搭載もしくは内蔵したコンピュータもしくはその部分によって実現される。
【0020】
記憶装置とは、上記演算手段の演算結果である個々の造波板位置の時系列データを記憶する機能を有し所定の容量を有する記憶媒体(ハード)もしくはかかる記憶媒体上に磁気情報として記録されたデータも含めた概念をいい、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む概念である。
【0021】
制御手段とは、記憶装置に記憶される時系列データに基づいて駆動手段を制御する機能を有するものを示し、具体的には、これらの機能を有する機械、装置、部品、或いは、こうした機能をコンピュータに実行させるアルゴリズム、このアルゴリズムを実行させるプログラム、もしくはこのプログラムを含めたソフトウェア、搭載媒体、ROM(読み出し専用メモリ)、或いはこれらを搭載もしくは内蔵したコンピュータもしくはその部分によって実現される。
【0022】
こうした構成を備えることにより、造波条件設定手段で環境条件、所望の波を構成する物理条件を形成する種々の造波条件を設定し、予め計算した全ての造波板の造る速度ポテンシャルデータを速度ポテンシャルデータベースに蓄えた上で、設定されたこの造波条件と速度ポテンシャルデータベースに蓄えられている速度ポテンシャルデータとに基づき所定の演算式に従い演算手段において個々の造波板位置の時系列データを演算し、記憶装置に蓄えた時系列データに基づいて制御手段にて駆動手段を制御して造波板を挙動させることによって、所望の波を発生させることができる。
【0023】
上記構成において、本発明に係る造波装置は、実際の水面場において計測した波のスペクトルデータを保有し、前記造波条件設定手段の設定に基づいて、前記所定の演算式に従った演算結果に前記スペクトルデータを適用して得られた適用結果に基づいて前記制御手段が前記複数の駆動手段を制御するように構成しても良い。
【0024】
ここで、実際の水面場とは、例えば、太平洋、大西洋及び日本海その他すべての海洋や海域の意味である。この実際の水面場に係るデータとしては、たとえば、種々の波の類型データ(例えば、スペクトル、つまり波長及び波向ごとの強度含む。)を計測装置によって計測したものが挙げられ、この類型データを記憶装置(データベース含む。)に予め保有しておくものとすることができる。
【0025】
また、任意に設定した成分値或いは該成分値に基づいて発生させた水面場で計測した波のスペクトルデータをもって発生させた波も、実際の水面場に含まれる。すなわち、所定の海洋や海域に存在しない成分でも、独自の波に係る成分値であってもよく、各成分を有する規則波或いは不規則波を重ね合わせることで、規則波或いは不規則波を自在に造波し得ることになる。
【0026】
こうした構成を備えることにより、設定された所定の造波条件とスペクトルデータとを適用して、この適用結果に基づいて制御手段にて駆動手段を制御するところ、造波条件に所望の造波状態が反映されているため、造波板が所望の挙動をするようにさせることができる。
【0027】
また、上記構成において、前記速度ポテンシャルの計算に当たっては、波の向きと波の波長もしくは周期の一方と造波板の最大振幅とを指定し、個々の造波板について波と同じ周期で調和振動させたときの反射の影響も考慮した前記造波水面場全体の速度ポテンシャルを境界要素法に基づいて計算する構成としてもよい。
【0028】
調和振動とは、ある量の時刻tでの値が一つの振動数ωによってAsin(ωt+α)で表される正弦関数的な時間変動をすることをいう。ここで、Aは振幅、αは位相のずれを表す。
【0029】
また、境界要素法とは、関数F(x,y)がある領域Ωの内部で性質の良い微分方程式を満たすとき、その境界δΩでの値または勾配の値のみが与えられたときに内部の値を決定する方法をいう。本願においては、Greenの公式により条件を境界での値に関する連立方程式に直してそれを解き、再びGreenの公式によって内部での値を計算する。
【0030】
上記の構成において、個々の造波板についての速度ポテンシャルの計算にあたっては、波と同じ周期で調和振動させたときの反射の影響をも盛り込んだ上、境界要素法を用いることで、各造波板ごとに造波水面場全体の速度ポテンシャルを正確に求め、これを造波水面場全体の造波板に対して行う。
【0031】
また、上記において、前記演算手段の演算は、前記造波条件に対応する調和振動場をこの造波条件に対応した前記速度ポテンシャルデータベースのデータの絶対値に制限をつけた複素線形和で近似する、個々の造波板の振幅及び/もしくは位相に関する連立方程式を解くような構成である。
【0032】
ここで、調和振動場とは、系全体が調和振動している場のことをいう。
【0033】
複素線形和とは、ベクトルに複素数の係数を掛けて和をとることをいう。
【0034】
上記の構成により、演算方法として、造波条件とこの造波条件に対応して各造波板が作る速度ポテンシャル場のデータを一つのベクトルとみなし、それらの複素線形和で所望の造波水面場の速度ポテンシャルを近似する、全造波板の振幅と位相に関する連立方程式を解くという算出方法を採用したので、造波水面場の任意の地点において、正確な造波をすることが数学的に可能になり、フィードバックによらない正確な造波が可能となる。
【0035】
また、上記構成においては、予め定めた造波条件に対する演算結果を前記個々の造波板の位置の時系列データとして蓄える造波板位置時系列データベースをさらに備え、前記造波条件設定手段で設定された造波条件が前記予め定めた造波条件と実質的に一致する場合は、前記造波板位置時系列データベースの時系列データを用いて前記制御手段が前記複数の駆動手段を制御するような構成とすることもできる。
【0036】
造波板位置時系列データベースとは、所与の造波条件に対する演算結果を、造波水面場における個々の造波板の位置ごと及び経時ごとにデータとしたデータベースをいい、具体的には、かかる記憶する機能を有し所定の容量を有する記憶媒体(ハード)もしくはかかる記憶媒体上に磁気情報として記録されたデータも含めた概念をいい、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む概念である。
【0037】
上記の構成により、造波板位置時系列データベースを構築することで造波水面場の各位置にある造波板の時系列的な演算結果に係るデータがデータベースとして記録され、必要に応じてこれから読み出して随時用いることができる。特に、設定した造波条件と一致するデータをこの造波板位置時系列データベースから読出し、これに基づいて駆動手段を制御して造波板の挙動をさせるようにすれば、所望の波の発生を常時正確に実現させることができる。
【0038】
また、上記課題を解決すべく、本願に係る造波装置は、造波水面場に対して配列した複数の造波板と、この複数の造波板をそれぞれ駆動する複数の駆動手段と、時刻毎、位置毎の造波条件を設定する造波条件設定手段と、前記造波水面場において反射の影響も考慮した前記複数の造波板の個々の造波板の造る時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを予め計算し全ての前記複数の造波板について計算した結果を時系列データとして蓄えておく速度ポテンシャル時系列データベースと、前記造波条件設定手段で設定した造波条件とこの設定された造波条件に対応した前記速度ポテンシャル時系列データベースのデータとに基づき所定の演算式に従って演算を行う演算手段と、前記造波条件設定手段での設定に対応したこの演算手段の演算結果である造波板位置の時系列データを蓄える記憶装置と、この記憶装置の時系列データに基づき前記複数の駆動手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0039】
速度ポテンシャル時系列データとは、速度ポテンシャルを、個々について瞬時に一定の変位をした後の造波板の時刻毎及び位置毎に計算し、時刻毎及び位置毎のベクトルデータとしたものを示す。それぞれの造波板の全時刻での速度を未知数とし、それらを前記ベクトルに乗じて加えた結果が所望の波の速度ポテンシャルを時刻毎及び位置毎に並べたベクトルにより近い値を持つようにすることで所望の波を形成することが可能となり、たとえ調和振動として表現できない集中波であっても形成することを可能とするものである。
【0040】
また、速度ポテンシャル時系列データベースとは、上記の速度ポテンシャル時系列データに係るデータベースをいい、具体的には、かかるデータを記憶する機能を有し所定の容量を有する記憶媒体(ハード)もしくはかかる記憶媒体上に磁気情報として記録されたデータも含めた概念をいい、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む概念である。
【0041】
上記の構成により、造波条件設定手段に種々の造波条件を時間毎及び位置毎に設定し、予め計算した全ての造波板の造る時間毎及び位置毎の速度ポテンシャルをデータとして速度ポテンシャル時系列データベースに蓄えておくことができる。その上で、任意に設定された時間毎及び位置毎の造波条件と速度ポテンシャル時系列データベースに蓄えられている速度ポテンシャル時系列データとを用いて所定の演算式に従って演算手段が個々の造波板位置の時系列データを演算して記憶装置にこの演算結果を蓄えることができる。この蓄えられた時系列データに基づき、制御手段が駆動手段を制御して造波板を挙動させることにより、所望の集中波を正確に再現・発生させることができる。
【0042】
また、上記構成において、前記制御手段は、前記複数の駆動手段の予め求めた駆動特性に基づいて前記記憶装置の時系列データあるいは造波板位置時系列データベースの時系列データを補正し及び/もしくは補正条件を付加して前記駆動手段を制御するような構成としても良い。
【0043】
例えばこれまででは、制御手段或いは駆動手段に係る時定数の差異及び/または遅れ型無駄時間の発生により、個々の造波装置に係る制御結果にバラツキが生じてしまうような状況が考えられる。制御手段により駆動手段を最適に制御することで所望の波を発生させる場合に、こうした状況を放置すると、所望の波を発生させることが困難になる場合もある。
【0044】
そこで本願では上記の構成により、駆動特性に必要な所定の時系列データを補正し及び/もしくは補正条件を付加することで、最適な制御を行えるように駆動特性に係るパラメータを調整を行うので、個々の造波装置に係る制御結果のバラツキをなくし、造波における予期せぬばらつき、不具合を防止することができる。かかる補正の手段としては、例えば、時定数の差異に備えて予め所定の時定数を(記憶装置に蓄えて)補正条件(例えば、補正係数の乗算を含む。)として付加したり、遅れ型無駄時間の発生時に駆動手段に係るモーターの回転数や回転速度を補正したりすることで、個々の造波装置に係る制御のバラツキ、装置のガタつきによる不正常発生を抑制し、最適な制御を実現させ、所望の波を発生させることができる。
【0045】
また、上記構成において、制御手段は、リセット部を有し前記複数の駆動手段の駆動開始に当たり前記複数の駆動手段に対してリセットをかけた構成とすることもできる。
【0046】
本来、所望の波を発生させるためには、最適な制御結果の処理終了後、無駄な挙動を行わせないように、各造波装置に係る駆動手段は所定の状態で停止させることが必要である。すなわち、一旦動作の後、再度所望の波を発生させるためには、駆動手段を駆動前の初期状態に復元したり、各駆動手段を駆動させるための所定のパラメータ(例えば、造波条件や時系列データを含む。)をリセットもしくは初期化したりする必要がある。
【0047】
そこで本願は、上記の構成により、制御手段がリセット部を有するようにさせたので、各々の駆動手段を、直前の挙動をさせたパラメータに拘らず、各駆動手段に対してリセットもしくは初期化することにより、複数の造波板の初期位置や所定段階での位置を揃え、その後の駆動に影響を与えることなく、所望の波を発生させることができる。例えば、駆動手段に係る直線駆動部の挙動を認識する位置センサー部やリミッターを設け、この位置センサー部やリミッターが所定位置を認識した時点で電動部を停止させる、あるいは待機する仕組みであってもよい。また、造波板の位置を位置センサー部でリニアーに検出し、造波板の時系列データと照合して造波板位置を時々刻々調整することも可能である。なお、こうした仕組みは、複数の駆動手段に対してリセットをかけるためのフィードバック制御であって、造波発生のためのフィードバック制御ではない。すなわち、たとえば上記の特許文献3,4では、最終出力系での反射波の吸収のために、その反射波を造波装置の信号として検出してフィードバック制御しているのに対し、本願発明では、造波という最終出力系でのオープンループ制御を行い造波装置を所望の通り動かすために、造波装置の信号(位置検出センサ等)を装置としてフィードバック制御しているものである。
【0048】
また、電動部を例えばステッピングモーターとする場合、ステッピングモーターのパルス数により直線駆動部の位置を検出することができるため、直線駆動部の駆動を認識する位置センサー部に代えることができる。
【0049】
また、上記課題を解決するために、本願に係る造波方法は、造波水面場に対して配列した複数の造波板の個々の造波板の造る前記造波水面場における反射の影響を考慮した速度ポテンシャルを予め計算するステップと、この速度ポテンシャルを全ての前記複数の造波板について計算した結果をデータとしてデータベースに蓄えるステップと、造波条件を設定するステップと、この設定された造波条件に従って前記データベースから対応したデータを呼び出すステップと、前記造波条件と呼び出した前記データとに従って所定の演算式に基づいて演算を行うステップと、この演算結果である個々の造波板位置の時系列データを記憶するステップと、この時系列データに基づいて前記複数の造波板を駆動制御するステップとを備えて構成される。
【0050】
上記構成を備えることで、他の造波装置に係る造波板の挙動により発生した反射波の影響を考慮して速度ポテンシャルを予め計算し、この計算結果がデータベースに蓄えられ、造波条件が設定された上で、このデータベースに蓄えたデータが呼び出され、当該呼び出したデータと造波条件とに従って演算が行われた上で、この演算結果が個々の時系列データとして記憶され、この記憶された時系列データに基づいて造波板を駆動制御することができる。これにより、個々の造波板の速度ポテンシャルが正確に割り出され、データ化されるので、どんな場合であっても、かかるデータを読み出すことで、同じ造波が正確に再現されることが可能となる。
【0051】
また、上記構成において、前記演算を行うステップ及び/あるいは前記駆動制御するステップは、実際の水面場において計測した波のスペクトルデータと前記造波条件を設定するステップの設定とに基づいて、前記所定の演算式に従った演算結果に前記スペクトルデータを適用して得られた適用結果に基づいて前記複数の造波板を制御する構成としても良い。
【0052】
こうした構成を備えることにより、上述した演算に係るステップにおいては、実際の水面場において計測した波のスペクトルデータと造波条件とに従った演算が可能となり、この演算結果に基づいて制御手段にて駆動手段を制御し、造波板を挙動させることができるから、実海域を正確に反映する造波が実現され、しかもこうした演算結果等が記憶装置に格納されることから、かかる造波の再現性を高くすることができる。
【0053】
また、上記構成において、前記速度ポテンシャルの計算に当たっては、波の向きと波の波長もしくは周期の一方と造波板の最大振幅とを指定し、個々の造波板について波と同じ周期で調和振動させたときの前記造波水面場全体の反射の影響も考慮した速度ポテンシャルを境界要素法に基づいて計算する構成としてもよい。
【0054】
こうした構成を備えることにより、個々の造波板についての速度ポテンシャルの計算において、波と同じ周期で調和振動させたときの反射の影響をも盛り込んだ上、境界要素法を用いることで、1枚の造波板について速度ポテンシャルが求められ、しかもこれを造波水面場全体の造波板に対して行うので、造波水面場全体の任意の位置での所望の波形状に係る造波を速度ポテンシャルの重ね合わせによって正確に実現することができる。
【0055】
また、上記構成において、前記演算を行うステップは、前記造波条件に対応する調和振動場とこの造波条件に対応した前記データベースのデータの絶対値に制限をつけた複素線形和で近似する、個々の造波板の振幅及び位相に関する連立方程式を解く構成としてもよい。
【0056】
こうした構成を備えることにより、上述した演算に係るステップは、造波条件とこの造波条件に対応して各造波板が作る速度ポテンシャル場のデータを一つのベクトルとみなし、それらの複素線形和で所望の造波水面場の速度ポテンシャルを近似する、全造波板の振幅と位相に関する連立方程式を解くという算出方法を採用したので、造波水面場の任意の地点において、正確な造波をすることが数学的に可能になり、フィードバックによらずに所望の波を正確に生成することが可能となる。
【0057】
また、上記課題を解決するために、本願に係る造波方法は、造波水面場に対して配列した複数の造波板の個々の造波板の造る前記造波水面場における反射の影響も考慮した時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを予め計算するステップと、全ての前記複数の造波板について時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを計算した結果を時系列データとしてデータベースに蓄えるステップと、時刻毎、位置毎の造波条件を設定するステップと、この設定された造波条件と該設定された造波条件に対応した前記データベースの時系列データとに基づき所定の演算式に従って演算を行うステップと、この演算手段の演算結果である造波板位置の時系列データを記憶するステップと、この時系列データに基づいて前記複数の造波板を駆動制御するステップとを備えて構成される。
【0058】
こうした構成を備えることにより、予め種々の造波条件を時間毎及び位置毎に設定し、予め計算した全ての造波板の造る時間毎及び位置毎の速度ポテンシャルをデータとして速度ポテンシャル時系列データベースに蓄えておく。その上で、任意に設定された時間毎及び位置毎の造波条件と速度ポテンシャル時系列データベースに蓄えられている速度ポテンシャル時系列データとを用いて所定の演算式に従って個々の造波板位置の時系列データを演算し、この演算結果を記憶装置に蓄える。この蓄えられた時系列データに基づき、複数の造波板を駆動制御するので、所望の集中波に係る造波であっても、地点ごとの時系列的な速度ポテンシャルを重ね合わせることで正確に再現・発生させることができる。
【0059】
また、上記課題を解決するために、本願に係るプログラムは、コンピュータを、造波水面場に関する波の向きと波の波長もしくは周期の一方と造波板の最大振幅とを指定するステップと、前記造波水面場に対して配列した複数の造波板の個々の造波板について波と同じ周期で調和振動させたときの反射の影響も考慮した速度ポテンシャルを前記造波水面場全体について境界要素法に基づいて計算するステップと、前記計算した結果をデータベースに格納するステップとを備えて動作させたことを特徴とする。
【0060】
こうした構成を備えることにより、個々の造波板の速度ポテンシャルは波と同じ周期で調和振動させた反射の影響も反映した正確性の高いものとなり、造波水面場全体に対して速度ポテンシャルを境界要素法に基づいて計算して求めるので、任意の位置に対して所望の波を得るには、当該位置に係る速度ポテンシャルを重ね合わせたものとすればよい。しかもこれをデータベースとして記憶装置に格納するので、種々の状況・場面に応じたデータを予め蓄えておくことにより、あらゆる状況に相応した造波をデータベースからデータを読み出し、これに基づいた制御を行うという操作で容易に実現することができる。
【0061】
また、上記課題を解決するために、本願に係る造波プログラムは、コンピュータを
造波条件設定手段で設定した造波条件を入力するステップと、前記入力されたこの造波条件に従って造波水面場において反射の影響も考慮した複数の造波板の個々の造波板の造る速度ポテンシャルを予め計算し全ての複数の造波板についてその結果を蓄えた速度ポテンシャルデータベースから対応するデータを呼び出すステップと、前記入力された前記造波条件と呼び出された前記データとに基づき所定の演算式に従って演算を行うステップと、この演算結果を個々の造波板の時系列データとして記憶するステップと、この時系列データに基づき前記複数の造波板を駆動する駆動手段の駆動条件として出力するステップとを備えて動作させることを特徴とする。
【0062】
こうした構成を備えることにより、造波条件設定手段を介して造波条件を入力し、所定の速度ポテンシャルデータを速度ポテンシャルデータベースから呼び出し、入力された造波条件と呼び出された速度ポテンシャルデータとに基づき演算を行い、演算した結果を時系列データとして記憶し、記憶した時系列データに基づき駆動手段の駆動条件を出力する、という一連の処理を所定のコンピュータで実現することができる。したがって、コンピュータによる制御を通して所望の規則波或いは不規則波を造波することが可能となる。
【0063】
また、上記課題を解決するために、本願に係るプログラムは、コンピュータを、造波条件設定手段で設定した時刻毎、位置毎の造波条件を入力させるステップと、前記入力されたこの造波条件に対応した造波水面場に対して配列した複数の造波板の個々の造波板の造る前記造波水面場における反射の影響も考慮した時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを予め計算するステップと、全ての前記複数の造波板についての前記時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを速度ポテンシャル時系列データベースに格納するステップとを備えて動作させたことを特徴とする。
【0064】
こうした構成を備えることにより、個々の造波板の速度ポテンシャル時系列データは、個々の造波板の時刻毎及び位置毎の速度ポテンシャルであって波と同じ周期で調和振動させた反射の影響も反映した正確性の高いものを造波水面場全体に対して境界要素法に基づいて計算して求めるので、任意の位置に対して所望の造波を得るには、当該位置に係る速度ポテンシャル時系列データを重ね合わせたものとすればよい。しかもこれをデータベースとして記憶装置に格納しておけるので、種々の状況・場面に応じたデータを予め蓄えておくことにより、あらゆる状況に相応した波をデータベースからデータを読み出し、これに基づいた制御を行うという操作で容易に実現することができる。
【0065】
また、上記課題を解決するために、本願に係る造波プログラムは、コンピュータを 造波条件設定手段で設定した時刻毎、位置毎の造波条件を入力するステップと、前記入力されたこの造波条件に対応した造波水面場に対して配列した複数の造波板の個々の造波板の造る前記造波水面場における反射の影響も考慮した時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを予め計算し全ての前記複数の造波板について蓄えた速度ポテンシャル時系列データベースから呼び出すステップと、前記造波条件設定手段で設定した造波条件と呼び出された前記速度ポテンシャルの時系列データとに基づき所定の演算式に従って演算を行うステップと、この演算ステップの演算結果の時系列データを記憶するステップと、この演算結果の時系列データを呼び出すステップと、この呼び出された演算結果の時系列データに従って前記複数の造波板を駆動する駆動手段の駆動条件として出力するステップとを備えて動作させることを特徴とする。
【0066】
こうした構成を備えることにより、造波条件設定手段で時刻毎及び位置毎の造波条件を設定し、造波に係る反射の影響も考慮して速度ポテンシャルを時刻毎及び位置毎に予め計算し速度ポテンシャル時系列データベースに蓄え、設定された造波条件と蓄えられた速度ポテンシャル時系列データとに基づいて演算し、演算結果の時系列データを記憶し、記憶した時系列データを呼び出し、呼び出された時系列データを駆動手段の駆動条件として出力する、という一連の処理を所定のコンピュータで実現することができる。したがって、コンピュータによる制御を通して所望の集中波を造波することが可能となる。
【発明の効果】
【0067】
本願によれば、造波条件設定手段に種々の造波条件を設定し、予め計算した全ての造波板の造る速度ポテンシャルを速度ポテンシャルデータベースに蓄え、設定された造波条件と速度ポテンシャルデータベースに蓄えられている速度ポテンシャルデータとに基づき所定の演算式に従って演算手段で個々の造波板位置の時系列データを演算し、記憶装置に蓄えた時系列データに基づいて制御手段にて駆動手段を制御して造波板を挙動させるので、所望の波を発生させることができる。したがって、発生した波の特性(例えば、波高や波長、造波板にかかる圧力を含む。)を測定し、該測定した値を制御手段に係るパラメータに利用するフィードバック制御を行うことなく、駆動手段を最適に制御し、所望の規則波或いは不規則波を造波することができる。また、個々の造波板や両隣合わせた造波板のみで消波するのではなく、複数の造波板全部の反射の影響を考慮して所定の演算を行うことで造波水面場としての例えば水槽全体の系としての造波特性を正確に反映した波を形成でき、たとえば造波水槽全体での消波の効果を得て消波効率を格段に向上させることができるだけでなく、水槽の形状や発生する波の向きその他の影響を受けず、所望の波を発生させることができる。
【0068】
また、本願によれば、実際の水面場において計測した波のスペクトルデータを保有し、造波条件設定手段の設定に基づいて、所定の演算式に従った演算結果にスペクトルデータを適用して得られた適用結果に基づいて制御手段が複数の駆動手段を制御するので、設定された所定の造波条件とスペクトルデータとを適用して、適用結果に基づいて制御手段にて駆動手段を制御して造波板を挙動させることができる。したがって、例えば、所定の海洋に係る波の成分をスペクトルデータとして、擬似的に該所定の海洋に係る波を造波することができる。また、スペクトルデータとして任意の値を設定することで、自然界では存在し得ない波であっても人工的に造波することも可能である。
【0069】
また、本願によれば、個々の造波板について波と同じ周期で調和振動させたときの反射の影響も考慮した造波水面場全体の速度ポテンシャルを境界要素法に基づいて計算することができる。したがって、例えば、発生させた造波の特性を出力値とし、該出力値を駆動手段の制御パラメータとする制御手段に入力値として入力して制御するPID制御(フィードバック制御の一種であり、入力値の制御を出力値と目標値との偏差、その積分、および微分の3つの要素によって行う方法)を含むフィードバック制御では複雑な形状の水槽では無数の反射が生じるが、境界要素法を用いると、その複雑な波動場を水槽全体にわたって正確にかつ短時間で計算することができ、それを適切な振幅と位相差で組み合わせることで従来の水槽周辺部での波高データなどからのフィードバックに代わる精度の高い消波方法を構築することができる。
【0070】
また、本願によれば、演算手段の演算においては、造波条件に対応する調和振動場とこの造波条件に対応した速度ポテンシャルデータベースのデータの絶対値に制限をつけた複素線形和によって、個々の造波板の振幅と位相に関する近似する連立方程式を解く。このとき、複素線形和を利用することで、造波板の振幅と位相を決定する方程式を簡単に表すことができ、プログラムを組む上でも便利である。
【0071】
また、本願によれば、予め定めた造波条件に対する演算結果を個々の造波板の位置の造波板位置時系列データベースを構築することで造波板の位置の時系列データを随時用いることができ、特に、設定した造波条件と一致する場合はこの造波板位置時系列データベースに記憶される所定のデータを読出して制御手段により駆動手段を制御して造波板を挙動させ、所望の造波を発生させることができる。したがって、代表的な水面場、すなわち頻繁に発生させる造波は、演算手段による演算結果が造波板位置時系列データベースに蓄えられているため、同様な造波を発生させる際は、造波板位置時系列データを用いることで再現性の高い造波を実現でき、かつ、迅速な制御を行うことができる。
【0072】
また、本願によれば、造波条件設定手段に種々の造波条件を時間毎及び位置毎に設定し、予め計算した全ての造波板の造る時間毎及び位置毎の速度ポテンシャルを時系列として速度ポテンシャル時系列データベースに蓄え、設定された時間毎及び位置毎の造波条件と速度ポテンシャル時系列データベースに蓄えられている速度ポテンシャル時系列データとに基づき所定の演算式に従って演算手段で個々の造波板位置の時系列データを演算し、記憶装置に蓄えた時系列データに基づいて制御手段にて駆動手段を制御して造波板を挙動させることによって、造波水面場の任意の地点における所望の集中波を発生させることができる。すなわち、造波水面場が静止している状態において、造波板の近傍から遠方までの波の広がりを速度ポテンシャル時系列データとして蓄積し、個々の造波板が作る特定の位置における速度ポテンシャル時系列データを重ね合わせて、所望の造波を発生させることができる。したがって、例えば、1枚のパドルによる集中波(例えば、集中円弧型や花型を含む。)、半分のパドルによる集中波(例えば、3方向から発生する集中波を含む。)、集中点の集合による模様や文字(例えば、人や動物、或いはキャラクターの顔や仮名文字、片仮名文字、ローマ字、ギリシア文字、漢字、数字、英数字、漢数字及びその他全ての文字や数字の一つ或いはそれらの組み合わせによる文字列を含む。)といった、規則波及び不規則波では表現できない特殊な波形を表現する集中波を人工的に発生させることができる。また、造波板に係る反射波を含む外力と造波板の位置を計測し、フィードバック制御により造波板を駆動させて集中波を発生させる造波方式ではないため、計測・フィードバック制御という余分なプロセスを省くことができ、所望の集中波をより的確に発生させることができる。
【0073】
また、本願によれば、制御手段は、複数の駆動手段の予め求めた駆動特性に基づいて記憶装置の時系列データあるいは造波板位置時系列データベースの時系列データを補正し及び/もしくは補正条件を付加して駆動手段を制御することにより、駆動特性に必要な所定の時系列データを補正し及び/もしくは補正条件を付加し、最適な制御を行えるように駆動特性に係るパラメータを調整するため、所望の造波を発生させることができる。例えば、時定数の差異に備えて予め所定の時定数を記憶装置に蓄えて補正条件(例えば、補正係数の乗算を含む。)を付加したり、遅れ型無駄時間の発生時に駆動手段に係るモーターの回転数や回転タイミングを補正したりすることで、個々の造波装置に係る制御のバラツキを抑制し、最適な制御を実現させ、所望の波を発生させることができる。したがって、時系列データのデータ自体の信頼性に依存することなく、必要に応じて駆動特性に応じたデータ補正や補正条件の付加を行い制御の最適性を保持することで、常に所望の波を確実性をもって発生させることができる。
【0074】
また、本願によれば、制御手段においては、リセット部を有し複数の駆動手段の駆動開始に当たり、複数の駆動手段に対してリセットをかけるもしくは初期化することにより、各々の駆動手段を、直前の挙動をさせたパラメータに拘らず、複数の造波板の初期位置や所定段階での位置を揃え、その後の挙動に影響を与えることなく、所望の波を発生させることができる。また、造波板の位置を位置センサー部でリニアーに検出し、造波板の時系列データと照合して造波板位置を時々刻々調整することも可能である。なお、こうした仕組みは、複数の駆動手段に対してリセットをかけるためのフィードバック制御であって、造波発生のためのフィードバック制御ではない。すなわち、たとえば上記の特許文献3,4では、最終出力系での反射波の吸収のために、その反射波を造波装置の信号として検出してフィードバック制御しているのに対し、本願発明では、造波という最終出力系でのオープンループ制御を行い造波装置を所望の通り動かすために、造波装置の信号(位置検出センサ等)を装置としてフィードバック制御しているものである。
【0075】
また、本願によれば、他の造波装置に係る造波板の挙動により発生した反射波の影響を考慮して速度ポテンシャルを予め計算し、この計算結果をデータベースに蓄え、造波条件を設定し、データベースに蓄えたデータを呼び出し、この呼び出したデータと造波条件に従って演算を行い、この演算結果を個々の時系列データとして記憶し、当該記憶された時系列データに基づいて造波板を駆動制御することができるので、発生した造波の特性(例えば、波高や波長を含む。)を測定し、該測定した値を制御手段に係るパラメータに利用するフィードバック制御を行うことなく、駆動手段を最適に制御し、所望の規則波或いは不規則波を造波することができる。また、個々の造波板や両隣合わせた造波板のみで消波するのではなく、複数の造波装置で反射の影響を考慮して所定の演算を行うことにより水槽全体で消波の効果を得られるため、消波効率を格段に向上させることができ、任意の形状の水槽において任意の波向きの所望の波を造ることができる。
【0076】
また、本願によれば、演算を行うステップあるいは駆動制御するステップは、実際の水面場において計測した波のスペクトルデータと造波条件を設定するステップの設定とに基づいて、所定の演算式に従った演算結果にスペクトルデータを適用して得られた適用結果に基づいて複数の造波板を制御する。上述した演算に係るステップでは、実際の水面場において計測した波のスペクトルデータと造波条件とに従って演算を行っても良く、この演算結果に基づいて制御手段にて駆動手段を制御し、造波板を挙動させることができる。したがって、例えば、所定の海洋に係る波の成分をスペクトルデータとして、擬似的に当該所定の海洋に係る波を造波させることができる。また、スペクトルデータとして任意の値を設定することで、自然界では存在し得ない波も人工的に造波することができる。
【0077】
また、本願によれば、速度ポテンシャルの計算に当たっては、波の向きと波の波長もしくは周期の一方と造波板の最大振幅とを指定し、個々の造波板について波と同じ周期で調和振動させたときの造波水面場全体の反射の影響も考慮した速度ポテンシャルを境界要素法に基づいて計算する。複雑な形状の水槽では無数の反射が生じるので、発生させた造波の特性を出力値とし、該出力値を駆動手段の制御パラメータとする制御手段に入力値として入力して計算するPID制御を含むフィードバック制御ではその度ごとに制御が必要で、定常状態の予測が難しいことおよび定常状態への収束に時間がかかることが考えられるが、境界要素法を用いると、その複雑な波動場を水槽全体にわたって正確にかつ短時間で計算することができ、それを適切な振幅と位相差で組み合わせることで従来の水槽周辺部での波高データなどからのフィードバックに代わる精度の高い消波方法を構築することができる。
【0078】
また、本願によれば、演算を行うステップは、造波条件に対応する調和振動場とこの造波条件に対応したデータベースのデータの絶対値に制限をつけた複素線形和で近似する、個々の造波板の振幅と位相に関する連立方程式を解くことにより、演算手段により最適な演算結果を得ることができるため、所望の波を発生させることが可能となる。このとき、複素線形和を利用することで、造波板の振幅と位相を決定する方程式を簡単に表すことができ、プログラムを組む上でも便利である。このように、調和振動場と複素線形和との概念を用いて個々の造波板の振幅と位相に関する近似する連立方程式を解くという純粋に代数的手段によって造波を発生させることができ、ぶれが発生することがない。さらに、フィードバック制御を行わないため、最短時間で制御し所望の造波を発生させることができる。
【0079】
また、本願によれば、速度ポテンシャルを時刻毎及び位置毎に予め計算し、この計算した結果を速度ポテンシャル時系列データベースに蓄え、造波条件を時刻毎及び位置毎に設定し、上記設定した造波条件と蓄えた時系列データとで演算を行い、この演算結果を個々の時系列データとして記憶し、当該記憶された時系列データに基づいて造波板を駆動制御するので、造波水面場が静止している状態において、造波板の近傍から遠方までの波の広がりを速度ポテンシャル時系列データとして蓄積し、個々の造波板に係る速度ポテンシャル時系列データを重ね合わせて、所望の波を発生させることができる。したがって、例えば、1枚のパドルによる集中波(例えば、集中円弧型や花型を含む。)、半分のパドルによる集中波(例えば、3方向から発生する集中波を含む。)、集中点の集合による模様や文字(例えば、人や動物、或いはキャラクターの顔や仮名文字、片仮名文字、ローマ字、ギリシア文字、漢字、数字、英数字、漢数字及びその他全ての文字や数字の一つ或いはそれらの組み合わせによる文字列を含む。)といった、規則波及び不規則波では表現できない特殊な波形を表現する集中波であっても、これを人工的に発生させることができる。また、造波板に係る反射波を含む外力と造波板の位置を計測し、フィードバック制御により造波板を駆動させて集中波を発生させる造波方式ではないため、余分な設備の必要なしに所望の集中波をより的確に発生させることができる。
【0080】
また、本願によれば、個々の造波板の速度ポテンシャルは波と同じ周期で調和振動させた反射の影響も反映した正確性の高いものを造波水面場全体について境界要素法に基づいて計算して求めるので、水面場の任意の位置に対して所望の波を得るには当該位置に係る速度ポテンシャルを重ね合わせたものとすればよい。複雑な形状の水槽では無数の反射が生じるためにフィードバック制御ではその度ごとに制御が必要で、定常状態の予測が難しいことおよび定常状態への収束に時間がかかることが考えられるのに対して、境界要素法を用いているために、その複雑な波動場を水槽全体にわたって正確にかつ短時間で計算することができ、それを適切な振幅と位相差で組み合わせることで従来の水槽周辺部での波高データなどからのフィードバックに代わる精度の高い消波方法を構築することができる。しかもこれをデータベースとして記憶装置に格納するので、種々の状況・場面に応じたデータを予め蓄えておくことにより、あらゆる状況に相応した造波をデータベースからデータを読み出し、これに基づいた制御を行うという操作で容易に実現することができる。したがって、このプログラムにより、所定の情報機器にて構成されるシステムに対し、後付で速度ポテンシャルデータベースを構築することができる。
【0081】
また、本願によれば、造波条件設定手段を介して造波条件を入力し、所定の速度ポテンシャルデータを速度ポテンシャルデータベースから呼び出し、入力された造波条件と呼び出された速度ポテンシャルデータとに基づき演算を行い、この演算した結果を時系列データとして記憶し、この記憶した時系列データに基づき駆動手段の駆動条件を出力する、という一連の処理を所定のコンピュータで実現するので、発生した造波の特性(例えば、波高や波長を含む。)を測定し、該測定した値を制御手段に係るパラメータに利用するフィードバック制御を行うことなく、かかるプログラムを搭載した所定のコンピュータにより、駆動手段を最適に制御し、所望の規則波或いは不規則波を造波することができる。また、個々の造波板や両隣合わせた造波板のみで消波するのではなく、複数の造波装置で反射の影響を考慮して所定の演算を行うことにより水槽全体で消波の効果を得られるため、消波効率を格段に向上させることができ、任意の形状の水槽において任意の波向きの所望の波を造ることができる。
【0082】
また、本願によれば、個々の造波板の速度ポテンシャル時系列データは、個々の造波板の時刻毎及び位置毎の速度ポテンシャルであって波と同じ周期で調和振動させた反射の影響も反映した正確性の高いものを造波水面場全体に対して境界要素法に基づいて計算して求めるので、水面場の任意の位置に対して所望の造波を得るには、当該位置に係る速度ポテンシャル時系列データを重ね合わせたものとすればよい。また、複雑な形状の水槽では無数の反射が生じるためにフィードバック制御ではその度ごとに制御が必要で、定常状態の予測が難しいことおよび定常状態への収束に時間がかかることが考えられるのに対して、境界要素法を用いているために、その複雑な波動場を水槽全体にわたって正確にかつ短時間で計算することができ、それを適切な振幅と位相差で組み合わせることで従来の水槽周辺部での波高データなどからのフィードバックに代わる精度の高い消波方法を構築することができる。しかもこれをデータベースとして記憶装置に格納しておけるので、種々の状況・場面に応じたデータを予め蓄えておくことにより、あらゆる状況に相応した造波をデータベースからデータを読み出し、これに基づいた制御を行うという操作で容易に実現することができる。したがって、かかるプログラムにより、所定の情報機器にて構成されるシステムに対し、後付で速度ポテンシャル時系列データベースを構築することができる。
【0083】
また、本願によれば、造波条件設定手段で時刻毎及び位置毎の造波条件を設定し、造波に係る反射の影響も考慮して速度ポテンシャルを時刻毎及び位置毎に予め計算し速度ポテンシャル時系列データベースに蓄え、設定された造波条件と蓄えられた速度ポテンシャル時系列データとに基づいて演算し、この演算結果の時系列データを記憶し、この記憶した時系列データを呼び出し、この呼び出された時系列データを駆動手段の駆動条件として出力する、という一連の処理を所定のコンピュータで実現するので、造波水面場が静止している状態において、造波板の近傍から遠方までの波の広がりを速度ポテンシャル時系列データとして蓄積し、個々の造波板に係る速度ポテンシャル時系列データを重ね合わせて、所望の波を発生させることができる。したがって、かかるプログラムを搭載した所定のコンピュータにより、例えば、1枚のパドルによる集中波(例えば、集中円弧型や花型を含む。)、半分のパドルによる集中波(例えば、3方向から発生する集中波を含む。)、集中点の集合による模様や文字(例えば、人や動物、或いはキャラクターの顔や仮名文字、片仮名文字、ローマ字、ギリシア文字、漢字、数字、英数字、漢数字及びその他全ての文字や数字の一つ或いはそれらの組み合わせによる文字列を含む。)といった、規則波及び不規則波では表現できない特殊な波形を表現する集中波であっても、コンピュータ制御によって人工的に発生させることができる。また、造波板に係る反射波を含む外力と造波板の位置を計測し、フィードバック制御により造波板を駆動させて集中波を発生させる造波方式ではないため、余分な設備を要することなく所望の集中波をより的確に発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0084】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、以下では、本発明の目的の達成のために説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0085】
図1は、本発明の一実施形態に係る造波装置1の平面的概要を示す全体概要図である。同図に示すとおり、造波装置1は、水槽2、造波機10、造波板位置時系列計算・データベース20及び造波機運転制御部30を少なくとも備えて構成される。
【0086】
造波装置1は、所定の寸法及び形状を有する水槽2全体を含んで構成されるが、その寸法に限定はなく、巨大な水槽から小規模の器まで幅広く応用できる。造波実験の目的からすれば十分な寸法を有するものが好ましく、さらに好適には深さ4.5m、東西80m、南北40m程度の長方形の四隅を、半径8m程度の四分円状で置き換えたものとする。
【0087】
また、造波機10は、造波板100とこの造波板100が所定の挙動を行うように制御する制御装置101を備えて構成される。概括的にいえば、造波機10は制御装置101により造波板100を適応的に制御して所望の波を発生させるものであり、水槽2の淵に複数個設置し、その数や設置間隔に限定はないが、個々の造波板100と接触する等の直接的な影響を与えないような配列が好ましい。
【0088】
造波板位置時系列計算・データベース20及び造波機運転制御部30は、造波装置1に係る水槽2付近に設置されるものであり、例えば、各機能を有するモジュールを搭載した制御盤や各機能を搭載したコンピュータによって実現されるものでもよい。
【0089】
図2は、本発明の一実施形態に係る造波機10の機器構成図である。同図に示すとおり、造波機10は、造波板100、制御装置101、直線駆動部102、リミッター103、位置検出センサー104、ボールネジレール105、モーター106及び運動変換機構107を少なくとも備えて構成される。
【0090】
造波板100は、ここではフラップ式を採用しているが、直線駆動部102の挙動と平行に駆動させるピストン式、造波板100を楔形にして上下に挙動させるプランジャー式、或いは造波板100を複数連接させる連接式のうちのいずれの方式(図示しない)によって挙動させるものであってもよい。造波板100は、直線駆動部102と蝶番108を介して直結されている。造波板100は、所定の形状、寸法及び重量を有する板状のものであるが、これに限定されるわけではなく、たとえば曲面板であっても実質的に波を起せる形状であればよい。造波板の材質としては、硬質であって防錆効果を有する素材、たとえば金属(たとえば鉄、鋼鉄等に塗装を施したもの)、合成樹脂、セラミック等を採用することが好ましいがこれらに限定されることはない。造波板100は造波水面場に対して複数配列されており、その配列の間隔及び該造波板の数に限定はないが、個々の造波板と接触する等の直接的な影響を与えないような配列が好ましい。
【0091】
直線駆動部102は、造波板100がフラップ式(或いはピストン式)の場合、ボールネジレール105を介して水面に対し平行にスライドできる機能を実現する装置、機械、デバイスであればよく、その形状、寸法及び材質に限定はない。なお、プランジャー式の場合は、水面に対し略垂直にスライドできるものが好ましい。
【0092】
直線駆動部102は、ボールネジレール105に対して両端に設けたリミッター103のスライド可能範囲内で前後移動可能であり、その位置を位置検出センサー104で検出することができる。
【0093】
直線駆動部102は、モーター106の回転力がボールネジレール105を介して伝達され、前後にスライドする動力とされる機構(装置、部品、システム)であるが、モーター106の駆動タイミングや回転数は、制御装置101により制御することができる。
【0094】
制御装置101は、所定の制御方式によりモーター106を制御する機能を有する回路(装置、機構、部品、システム)である。所定の制御方式とは、たとえば、演算装置によって演算された個々の造波板位置の経時的な位置に関するデータに対応する波を起させるように造波板100の動作を制御・統制するものであり、たとえば、こうした動作を起させることを実現するハード回路、またプログラム或いはソフトウェア、もしくはこれらを搭載(インストール)した記憶装置、または、かかるプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているコンピュータ(マイコン、ROMを含む)によって実現される。また、所望の波を発生させるために直線駆動部102が最適に駆動するように制御に係る所定のデータを、モーター106、運動変換機構107、ボールネジレール105等の特性に基づいて補正する補正器(図示しない)や直線駆動部102を駆動前の初期状態に復元したり、直線駆動部102を駆動させるための初期位置や所定のパラメータ(例えば、造波条件や時系列データを含む。)をリセットもしくは初期化したりするリセット部(図示しない)を有することが好ましい。
【0095】
ボールネジレール105は、ボールの転がりにより直線駆動部102の駆動をスムーズに行わせる機能を有し、たとえば、螺子切りされている棒状のものによって実現される。リミッター103は、直線駆動部102のスライド可能範囲を区画し制限を与えるものであり、電気的なスイッチや機構的なストッパーをもって構成される。位置検出センサー104は、スライド可能範囲全域に設置する形態であってボールネジレール105に対する直線駆動部102の具体的な位置を検出する機能、もしくは所定の部分に設置するもので直線駆動部102が通過したことを検出する機能を備えるものであればよく、制御装置101と連動して位置検出センサー104のセンシングにより直線駆動部102の駆動を制御できるものであることが好ましい。モーター106は、所定の電動式モーターであればよく、例えば、ステッピングモーターであってもよい。ステッピングモーターを使用する場合、ステッピングモーターのパルス数により直線駆動部102の位置を検出することができるため、機構的なストッパーとの組み合わせにより、直線駆動部102の駆動を認識する位置検出センサー104は必須ではなくなる。
【0096】
図3は、本発明に係る一実施形態に係る規則波或いは不規則波を造波する造波装置1における造波機10、造波板位置時系列計算・データベース20及び造波機運転制御部30の機能構成を示す機能ブロック図である。同図に示すとおり、個別造波機10は、上述した各制御装置101、モーター106及び造波板100を少なくとも備えて構成される。
【0097】
たとえばコンピュータ及び/もしくは記憶装置にデータが搭載される形態として実現される造波板位置時系列計算・データベース20は、造波水面場である水槽に係る物理データ、環境状況データ等を入力・設定するための試験水槽設定部200、波の向き、波長もしくは周期、造波板の最大振幅等の計算条件たる情報を入力するための計算条件入力部201−1、計算対象の造波板の識別情報を指定するための造波板指定部202、当該指定されて造波板に関する速度ポテンシャルを所定の演算式によって求める機能を有する速度ポテンシャル計算部203、求められた速度ポテンシャルデータを位置ごとに格納するための機能を有する速度ポテンシャルデータベース204−1、予め定めた条件の組み合わせを入力設定するための予設定条件入力部205、実海域等の波スペクトルデータ情報を獲得して(少なくとも一時的に)保持するための波スペクトルデータ部206、予め設定すべき所望の造波に関するデータを演算によって求める機能を有する予設定波面演算部207、及び演算によって求められた波を発生させるための各位置ごとの造波板の経時的なデータを記憶・保管する機能を有する造波板位置時系列データベース208を少なくとも備えて構成される。
【0098】
制御装置、コンピュータ、機構、コンピュータに搭載されることでコンピュータを所望の動作させることが可能なROM等として実現される造波機運転制御部30は、造波運転に関する制御指示を表示し所望の指示を入力できる機能を有する運転指示器300、種々の波に対して形態ごとに予めモード設定をしておくことのできる機能を有する波モード設定器301、造波に関する環境条件、物理条件等の各種条件をデータとして入力・設定する機能を有する造波条件設定器302−1、予め設定された条件と所望の造波に係る条件との照合を行い、所望の造波に最も近接するモードを選択する機能を有する予設定条件照合部303、選択されたモードに準拠する造波板の経時的な動作状況を演算する機能を有する演算処理部304、演算された各位置ごとの造波板の経時的なデータを記録・保管しておく機能を有する時系列データ記憶装置305、及び所望の造波に関するデータ或いは造波装置の運転に関するデータ・指示を通信する機能を有する条件・データ送受信部306を少なくとも備えて構成される。
【0099】
造波板位置時系列計算・データベース20に係る試験水槽設定部200は、水槽2の形状或いは寸法及び造波板100の数、位置、幅及び向きその他関係する全ての条件のうち少なくとも一つ或いはその組み合わせを入力・設定する機能を有し、たとえばキーボード、マウス、音声入力装置、またはこれらの機能をコンピュータに実行させるプログラム或いはソフトウェア、さらにはこれらを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものによって実現されるものである。
【0100】
造波板位置時系列計算・データベース20に係る計算条件入力部201−1は、造波(特に、規則波)に係る波の波長、振幅、波高、波向、波形、波状、波の速度、周期及び位相のうち少なくとも一つ、或いはそれらの組み合わせによって種々の波を発生させる計算条件に係る情報を入力・設定する機能を有し、たとえばキーボード、マウス、音声入力装置、またはこれらの機能をコンピュータに実行させるプログラム或いはソフトウェア、さらにはこれらを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものによって実現されるものである。
【0101】
造波板位置時系列計算・データベース20に係る造波板指定部202は、水槽2における調和振動場の計算を行ういずれかの造波板を指定する機能を有し、これらの機能を持った表示装置(部)、入力装置(部)、中央処理装置(部)、或いはかかる機能をコンピュータに実行させるプログラム或いはソフトウェア、もしくはこれらを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものによって実現される。
【0102】
造波板位置時系列計算・データベース20に係る速度ポテンシャル計算部203は、水槽2における調和振動場内の各位置ごとの造波に係る速度ポテンシャルの計算を行う機能を有し、この機能を持った演算装置(部)、中央処理装置(部)、或いはかかる機能をコンピュータに実行させるプログラム或いはソフトウェア、もしくはこれらを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものによって実現される。
【0103】
造波板位置時系列計算・データベース20に係る速度ポテンシャルデータベース204−1は、本願に係る所定の計算(後述)により算出した速度ポテンシャルデータに係るデータベースをいい、具体的には、かかるデータを記憶する機能を有し所定の容量を有する記憶媒体(ハード)もしくはかかる記憶媒体上に磁気情報として記録されたデータも含めた概念をいい、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む装置、機械、コンピュータ、コンピュータ周辺機器によって実現される。
【0104】
造波板位置時系列計算・データベース20に係る予設定条件入力部205は、波長と造波機の数とに応じて造波目標の各規則波成分の代表点を入力・指定する機能を有し、たとえばキーボード、マウス、音声入力装置、またはこれらの機能をコンピュータに実行させるプログラム或いはソフトウェア、さらにはこれらを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものによって実現されるものである。具体的には、水槽2全体から見て理想的な波を形成できるように代表となる点を打点(プロット)する。この代表点の数に限定はないが、造波板の数よりも多く、一つの波形に2つ以上あることが好ましい。
【0105】
造波板位置時系列計算・データベース20に係る波スペクトルデータ部206は、造波目標の波長及び方向毎にスペクトル強度を指定し、実際の水面場での種々の波の類型データ(例えば、波長及び波向含む。)を保持する機能を有する。類型データは記憶装置(データベース含む。)に予め保有しておくことができる。したがって、例えば、太平洋、大西洋及び日本海その他すべての海洋や海域に係る所定の地点の波の成分(例えば、波の波長、振幅、波高、波向、波形、波状、波の速度、周期及び位相)を計測したスペクトルデータを適用して生成する波面を、実際の水面場と定義する。さらに、任意に設定した成分値或いはかかる成分値に基づいて発生させた水面場で計測した波のスペクトルデータをもって発生させた波も、実際の水面場に含まれる。すなわち、所定の海洋や海域に存在しない成分でも、独自の波に係る成分値であってもよく、各成分を有する規則波或いは不規則波を重ね合わせることで、さらに不規則波を造波し得る。なお、この波スペクトルデータ部206は、かかるデータを記憶する機能を有し所定の容量を有する記憶媒体(ハード)もしくはかかる記憶媒体上に磁気情報として記録されたデータも含めた概念をいい、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む装置、機械、コンピュータ、コンピュータ周辺機器によって実現される。
【0106】
造波板位置時系列計算・データベース20に係る予設定波面演算部207は、予設定条件入力部205で指定された代表点で、造波目標を最もよく近似する調和振動場の線形和を計算し、速度ポテンシャルデータベース204−1に蓄えられる速度ポテンシャルデータに基づいて、造波機の振幅と位相を求める機能を有し(振幅の制限を含む)、この機能を持った演算装置(部)、中央処理装置(部)、或いはかかる機能をコンピュータに実行させるプログラム或いはソフトウェア、もしくはこれらを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものによって実現される。
【0107】
造波板位置時系列計算・データベース20に係る造波板位置時系列データベース208は、波スペクトルデータ206と予設定波面演算部207で演算された演算結果とに基づいて各成分波に対して計算した造波機の振幅と位相を合成した造波板の位置の時系列データに係るデータベースをいい、具体的には、かかるデータを記憶する機能を有し所定の容量を有する記憶媒体(ハード)もしくはかかる記憶媒体上に磁気情報として記録されたデータも含めた概念をいい、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む装置、機械、コンピュータ、コンピュータ周辺機器によって実現される。
【0108】
一方、造波機運転制御部30に係る運転指示器300は、造波機10を実際に駆動させるためのコントロール部分であって、所定の入力機器(例えば、駆動開始ボタンや操作画面、その他の情報や指示の入力部分を含む。)を有して構成されるものであってもよい。この運転指示器300は、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む装置、機械、コンピュータ、コンピュータ周辺機器によって実現してもよい。
【0109】
造波機運転制御部30に係る波モード設定器301は、造波機10を駆動させて波を起すための状態に設定するものであって、所定の入力機器(例えば、波モード開始ボタンや操作画面、その他の情報や指示の入力部分を含む。)を有するものである。この波モード設定器301は、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む装置、機械、コンピュータ、コンピュータ周辺機器によって実現してもよい。
【0110】
造波機運転制御部30に係る造波条件設定器302−1は、波の波長、振幅、波高、波向、波形、波状、波の速度、周期及び位相のうち少なくとも一つ、或いはそれらの組み合わせによって種々の波を発生させるための条件を設定する機能を有するものであって、所定の入力機器(例えば、条件設定ボタンや操作画面、その他の情報や指示の入力部分を含む。)を含んで構成されるものであってもよい。この造波条件設定器302−1は、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む装置、機械、コンピュータ、コンピュータ周辺機器によって実現してもよい。
【0111】
造波機運転制御部30に係る予設定条件照合部303は、造波板位置時系列データベース208に蓄えられた個々の造波板の位置の時系列データと、造波条件設定器302−1で設定された造波条件とが一致するか否かを照合する機能を有し、この機能を持った演算装置(部)、中央処理装置(部)、或いはかかる機能をコンピュータに実行させるプログラム或いはソフトウェア、もしくはこれらを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものによって実現されてもよい。
【0112】
造波機運転制御部30に係る演算処理部304は、造波板位置時系列計算・データベース20に係る速度ポテンシャルデータベース204−1に蓄えられる速度ポテンシャルデータ、入力された波スペクトルデータ206及び造波板位置時系列データベース208に蓄えられる造波板位置時系列データのうちの少なくとも一つと、造波条件設定器302−1で設定された造波条件等とに基づいて演算する機能を有し、この機能を持った演算装置(部)、中央処理装置(部)、或いはかかる機能をコンピュータに実行させるプログラム或いはソフトウェア、もしくはこれらを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものによって実現されてもよい。
【0113】
造波機運転制御部30に係る時系列データ記憶装置305は、演算処理部304での演算結果を記憶する機能を有し所定の容量を有する記憶媒体(ハード)もしくはかかる記憶媒体上に磁気情報として記録されたデータも含めた概念をいい、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む装置、機械、コンピュータ、コンピュータ周辺機器によって実現される。
【0114】
造波機運転制御部30に係る条件・データ送受信部306は、造波板位置時系列計算・データベース20の速度ポテンシャルデータベース204−1に蓄えられる速度ポテンシャルデータ、入力された波スペクトルデータ206及び造波板位置時系列データベース208に蓄えられる造波板位置時系列データのうちの少なくとも一つと、造波条件設定器302−1で設定された造波条件等とを受信し、予設定条件照合部303に基づいて照合した結果を、演算処理部304に送信する機能を有し、この機能を持った演算装置(部)、中央処理装置(部)、通信装置(部)、もしくはこれらの組み合わせ、或いはかかる機能をコンピュータに実行させるプログラム或いはソフトウェア、もしくはこれらを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものによって実現されてもよい。
【0115】
なお、個別造波機10に関しては、制御装置101(補正器1010及びリセット部1011を含む。)、モーター106及び造波板100を有するが、上述で述べたとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0116】
次に、演算処理部304が行う演算として、個々の造波板の作る速度ポテンシャルの境界要素法による計算概要について説明する。
【0117】
渦なし非圧縮の流れでは、ΔΨ=0が成り立つが、水平と鉛直と時間方向に変数分離
【0118】
【数1】
・・・・・・・・・・・(1)
を仮定すると、水平方向にはHelmholtz方式
【0119】
【数2】
・・・・・・・・・・・(2)
を満たす。この式中のkは分散関係式
【0120】
【数3】
・・・・・・・・・・・(3)
を解いて求めたものである。Greenの公式に、このHelmholtz方式に対応するGreen関数である第1種のHankel関数
【0121】
【数4】
を用いて
【0122】
【数5】
・・・・・・・・・・・(4)
を得る。これを離散化して境界上の造波板中央の点xi(i=1,2,・・・,N)(Nは造波機の総数)でのFの値に関する次の連立方程式を得る。
【0123】
【数6】
・・・・・・・・・・・(5)
この式の中の
【0124】
【数7】
はj番目の造波板の速度に一致する。いま、m番目の造波板だけを速度1で動かす、すなわち
【0125】
【数8】
の場合の解
【0126】
【数9】
を考えると、
【0127】
【数10】
として、
【0128】
【数11】
・・・・・・・・・・・(6)
これを、m=1,2,・・・,NについてAF=Bという行列の形にまとめると、
【0129】
【数12】
・・・・・・・・・・・(7)
【0130】
【数13】
・・・・・・・・・・・(8)
AF=Bを解いて得た
【0131】
【数14】
から内部での
【0132】
【数15】
での値を次のように得る。
【0133】
【数16】
・・・・・・・・・・・(8)
【0134】
次に、上記のような構成を有する造波装置1の動作を説明する。図4は、本願の一実施形態に係る造波装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【0135】
同図に示されるように、規則波を造波する際は、まず水槽1の寸法或いは形状及び造波板100の位置、幅及び向きを指定することで、造波装置1を構成する水槽2や造波機10に係る情報を入力する(ステップS41)。そして、計算条件入力部201−1にて規則波の波長や周波数を含む造波条件を指定する(ステップS42)。
【0136】
次に、こうして指定された造波条件に基づき、造波板指定部202及び速度ポテンシャル計算部203にて造波板を一つ選び、それを波と同じ周期で単独で調和振動させたときの水槽1全体の速度ポテンシャル場を境界要素法によって計算し、一つの造波機10が作る速度ポテンシャルを算出する(ステップS43)。これを全ての造波板について行う(ステップS43)。
【0137】
一方、予設定条件入力部205にて造波に係る規則波の波長と造波機数に応じて造波目標を各規則波成分の代表点、すなわち、波長と波向きを考慮して「波を表現しうる代表点」をM箇所選び(ステップS44)、目標とする波動場に対応するポテンシャルのその代表点での値を求めM元の複素列ベクトル
【0138】
【数17】
とする。このときの代表点は造波板の数N以上に選ぶ。
【0139】
その後、予設定波面演算部207にて造波板指定部202及び速度ポテンシャル計算部203で造波板毎に求めた調和振動場のM箇所の代表点での値を抜き出してM元の複素列ベクトルとし、造波板の数だけ列を並べて複素M×N行列Pを作る。これにより、
【0140】
【数18】
をN元の複素列ベクトル
【0141】
【数19】
について近似的に解く(ステップS45)。造波機の振幅には限界があるので、ベクトル
【0142】
【数20】
の各要素の大きさが適当に定めた値以下になるように制限をつける。
【0143】
こうして後、波スペクトルデータ206にて造波目標の波長及び方向毎にスペクトル強度を指定し(ステップS46)、波スペクトルデータ206と予設定波面演算部207で演算された演算結果とに基づいて各成分波に対して計算した造波機の振幅と位相を合成した造波板の位置の時系列データを造波板位置時系列データベース208に蓄える(図示しない)。これらの処理により求められた速度ポテンシャル、波スペクトルデータ及び造波板位置時系列データのうち少なくとも一つ或いはその組み合わせに係る条件やデータは、各成分波に対して計算した造波機の振幅と位相を合計し(ステップS47)、造波機運転制御部30の条件・データ送受信部306に送られる(図示しない)。
【0144】
一方、造波機運転制御部30の各部により運転指示及び波モードが設定され、造波条件設定器302−1で設定された造波条件及び予設定条件照合部303での照合結果が条件・データ送受信部306に送られ、演算処理部304にて造波の時系列データが演算され、時系列データ記憶装置305に蓄えられる(図示しない)。したがって、個別造波機10は、時系列データ記憶装置305に記憶される時系列データに基いて、制御装置101は制御され、モーター106を駆動し、造波板100は挙動する(図示しない)。
【0145】
図5は上記の手順にしたがって生成される造波の一例を斜視図として示すものであり、一つの造波機が作る速度ポテンシャルの虚部を表すものである。図6は図5の場合の造波目標とする波面の斜視図である。図7は図5の場合の造波機の振幅を表す斜視図、図8は図5の場合の造波機の位相を表す斜視図である。
【0146】
次に、本願の別の実施形態について説明する。
【0147】
図9は、本発明の別の一実施形態に係る集中波を造波する造波装置1における造波機10、造波板位置時系列計算・データベース20A及び造波機運転制御部30Aの機能構成を示す機能ブロック図である。なお、基本的な構成は図3に示す規則波或いは不規則波を造波する造波装置1と同じであるため、相違点についてのみ説明し、図3と同等な部分についての説明は省略する。
【0148】
計算条件入力部201−2は、時間毎及び位置毎に、造波に係る波の波長、振幅、波高、波向、波形、波状、波の速度、周期及び位相、造波板の最大振幅、のうち少なくとも一つ、或いはそれらの組み合わせによって種々の波を発生させる計算条件を入力・設定する機能を有し、たとえばキーボード、マウス、音声入力装置、またはこれらの機能をコンピュータに実行させるプログラム或いはソフトウェア、さらにはこれらを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものによって実現されるものである。
【0149】
速度ポテンシャル時系列データベース204−2は、速度ポテンシャル計算部203にて、速度ポテンシャルを個々の造波板について時刻毎及び位置毎に計算し、そうして計算されたデータを時間・位置を指定すれば呼び出せる状態にして記憶しておくデータベースをいう。具体的には、かかるデータを記憶する機能を有し所定の容量を有する記憶媒体(ハード)もしくはかかる記憶媒体上に磁気情報として記録されたデータも含めた概念をいい、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む装置、機械、コンピュータ、コンピュータ周辺機器によって実現される。
【0150】
なお、速度ポテンシャル時系列データは時刻毎及び位置毎に計算するため、不規則波を構成するための波スペクトルデータ206の要素は、速度ポテンシャル時系列データに含まれるものとし、造波板位置時系列データを蓄えるための造波板位置時系列データベース208は不要となる。
【0151】
さらに、造波条件設定器301−2でも、計算条件入力部201−2と同様に、時間毎及び位置毎に造波条件を設定する。したがって、規則波のような造波パターンは存在しないため、予設定条件照合部303は不要となる。
【0152】
このような構成により、集中波が造波される。図10は、本発明のこの実施形態に係る造波した集中波の具体例を概念的に示す図であり、(a)は1枚のパドル(造波板)によって集中波が形成され、6枚のパドルによって花模様(平面的)が形成される様子を、(b)は半分のパドルによって集中波が形成され、3方向からの集中波が形成される様子を、(c)は集中点の集合によりある時間において文字・模様が形成される(上は顔キャラクタ、下は文字)様子を、それぞれ示した図である。同図に示すとおり、上記の構成によって、所望の集中波を形成するための各造波板の挙動を細かく制御するため、1枚のパドルによる集中波(例えば、集中円弧型や花型を含む。)、半分のパドルによる集中波(例えば、3方向から発生する集中波を含む。)、集中点の集合による模様や文字(例えば、人や動物、或いはキャラクターの顔や仮名文字、片仮名文字、ローマ字、ギリシア文字、漢字、数字、英数字、漢数字及びその他全ての文字や数字の一つ或いはそれらの組み合わせによる文字列を含む。)といった、規則波及び不規則波では表現できない特殊な波形を表現する集中波を人工的に発生させることができる。
【0153】
以上詳細に説明したように、本願によれば、実海域再現水槽の中間棚に設置した造波板を所定の演算に基づき制御することで、規則波、不規則波、集中波のいずれをも発生させることが可能となる。
【実施例】
【0154】
次に、本願に係る造波装置の一実施例について説明する。
1.概要
(1) 本装置は、実海域再現水槽の中間棚に設置した造波板を制御して、任意の他方向波を発生させるものである。
(2) 本造波装置は、造波板382枚を用いて水槽内に規制波を発生させるもので、位置制御と吸収制御の両方の制御方式が可能なものとし、造波装置と制御装置によって構成される。
(3) 造波装置は、フラップ方造波板と駆動装置にて構成される。それぞれ水槽の中間棚部及び上部棚部に埋め込まれた金物に固定を行うものとする。
(4) 造波板の駆動は、ACサーボモータによるボールネジ駆動方式とする。駆動装置は円滑な運動を行うための十分な強度を有し、造波板側部の隙間は造波板に設けたシール板により極力小さくする。なお、造波板は底面ヒンジによって支持され、滑らかな運転ができるものとする。
(5) 各造波板は、側面ヒンジ部を介して隣接する造波板に連結され、複数の造波板が1つの帯状に連結された構造とする。
(6) 駆動装置は、造波板の上部にフラップ型の前後運動を個別に与えるもので、接続部1ヶ所につき1台で、計382台設ける。
(7) 制御装置は駆動装置を制御するもので、制御盤及び操作盤によって構成される。
(8) 制御盤は水槽東面に設けられた制御盤室内に設置するものとする。
2.主要性能
(1) 基本仕様
a) 数量:382台
b) 造波方式:フラップ型スネーク式
c) 駆動方式:ACサーボモータ・ボールネジ駆動
d) 発生波型:規則波、斜め規則波、単一方向不規則波、斜め単一方向不規則波、多方向不規則波、集中波、任意波、合成波、純吸収モード、その他(造波信号を計算してストアし、読み出しながら造波)
e) 造波周期:0.43sec 〜 4.0sec
f) 最大波高:0.35m
g) 吸収能力:周期0.8sec 〜2.53secの範囲において、波エネルギー97%以上を目標
h) 消波装置:造波板背面の壁面に消波装置を取り付け
i) 造波板の装置:短辺方向造波板間/36m以上
長編方向造波板間/76m以上
コーナー部は円弧状(R7.7m)に配置
3.造波機構造
(1) 造波板
a) 数量:382枚
b) 寸法:幅55cm以下
c) 材質:SUS304
(2) 駆動装置
a) 数量:382台
b) 構造:鋼板形鋼溶接構造
c) 駆動電動機:1.0kW – 1500rpm、ACサーボモータ
d) 駆動機構:ボールネジ、タイミングベルト、リニアガイド
e) 駆動方式:ACサーボモータ・ボールネジ駆動
f) 材質:SS400
g) 塗装:フタル酸塗装等
【0155】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。本願の技術思想は、一定の限られた区画で所望の波をフィードバック制御を行うことなく創り出すことにあり、この技術思想は、造船業における実海域や実水面場を再現した模型船実験のみならず、種々の方面に活用できる。たとえば、上記説明中、好適には水槽が巨大な容積を有する形状である旨を説明したが、例えば実海域や実水面場を再現した土木工学的な目的で造波実験や、プールに本願に係る造波装置を設けて人工的に波を発生させることで、遊戯を楽しむ、サーフィンの練習を行う、波によるリラクゼーションを味わう、造波に基づく体感ゲームを楽しむといった活用やアミューズメント施設での設置が容易に実現可能である。さらに、室内用の観覧魚を飼育する水槽に造波装置を設けて造波することで魚の鮮度が上げるような、人間の日常生活に密着した用途にも利用し得る。或いは、造波による効果を苗の育成に役立てるといった農業面での活用も見込まれる。さらに造波により実海域や実水面場を再現した模型船、浮体のゲームやアミューズメント等にも利用可能である。
【0156】
また、上述したものは本発明に係る技術思想を具現化するための実施形態の一例を示したにすぎないものであり、他の実施形態でも本発明に係る技術思想を適用することが可能である。
【0157】
さらにまた、本発明を用いて生産される装置、方法、システムが、その2次的生産品に登載されて商品化された場合であっても、本発明の価値は何ら減ずるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明によれば、特に消波を造波の一種ととらえ、個々の造波機が振動するときの反射を含めた波動場を高精度に計算した上で、波動場の重ね合せで所望の波動場を構成するものである。開ループ制御で波を発生させる仕組みは余分な設備負担を軽減する画期的なものであり、船舶業界に限らず水面場を有する商業施設の活性化に大きな有益性をもたらすものである。さらに上述したように、土木、農業、観光業、ペット産業、ゲーム機業等にも広く応用される可能性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】本発明の一実施形態に係る造波装置1の平面的概要を示す全体概要図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る造波機10の機器構成図である。
【図3】本発明に係る一実施形態に係る規則波或いは不規則波を造波する造波装置1における造波機10、造波板位置時系列計算・データベース20及び造波機運転制御部30の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図4】本願の一実施形態に係る造波装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る手順にしたがって生成される造波の一例を斜視図として示すものであり、一つの造波機が作る速度ポテンシャルの虚部を表すものである。
【図6】図5の場合の造波目標とする波面の斜視図である。
【図7】図5の場合の造波機の振幅を表す斜視図である。
【図8】図5の場合の造波機の位相を表す斜視図である。
【図9】本発明に係る一実施形態に係る集中波を造波する造波装置1における造波機10、造波板位置時系列計算・データベース20A及び造波機運転制御部30Aの機器構成を示す機能ブロック図である。
【図10】本発明のこの実施形態に係る造波した集中波の具体例を概念的に示す図であり、(a)は1枚のパドルによって集中波が形成され、6枚のパドルによって花模様(平面的)が形成される様子を、(b)は半分のパドルによって集中波が形成され、3方向からの集中波が形成される様子を、(c)は集中点の集合によりある時間において文字・模様が形成される(上は顔キャラクタ、下は文字)様子を、それぞれ示した図である。
【符号の説明】
【0160】
1…造波装置、2…水槽、10…造波機、20…造波板位置時系列計算・データベース、30…造波機運転制御部、100…造波板、101…制御装置、102…直線駆動部、106…モーター、204−1…速度ポテンシャルデータベース、302−1…造波条件設定器、304…演算処理部、305…時系列データ記憶装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば波を人工的に発生させるための造波装置、造波方法及びプログラムに係り、特に消波を造波の一種ととらえ、個々の造波機が振動するときの反射を含めた波動場を高精度に計算した上で、波動場の重ね合せで所望の波動場を構成することができる造波装置、造波方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶海洋工学分野において実海域での船舶性能を評価する要求が高まっている。水槽試験において船舶の実海域性能を把握するには、多方向不規則波を再現し、また、長い実験時間が取れるように反射の影響を無くすことが求められる。
【0003】
それらの要件の中でも所定の制御方式によって波を作り出したり、反射の影響を無くしたりするための試みとして、例えば、特許文献1乃至4に開示される技術思想がある。
【0004】
特許文献1は、複数の造波信号のうちの対応するものに基づいて、複数の造波コントロール信号を出力する造波装置であって、詳細な造波計算を行いながら同時に造波板の動作のリアルタイム制御を行うものである。しかし、この特許文献1に係る技術思想では、たとえばその図12に示されるように、フィードバック部95において、各周波数毎(i毎)のXの時間微分の総和が実際のサーボモータ17によるXの時間微分のフィードバック信号と比較され、コントロール部96は、その差分に基づいて、ゲインを調整し、サーボモータ17を制御する、というフィードバック制御を行うものである。
【0005】
特許文献2は、多方向不規則波を造波して模擬した場合にも不規則反射波を効率良く吸収し、実際の海洋と同様に周期及び波向きが不規則に変化する波浪場の高精度再現を確保しようとするものである。しかし、この特許文献2に係る技術思想においても、波高を観測してこれに基づくフィードバック制御を各造波板に対して加えているものである。
【0006】
特許文献3は、造波体に対し減衰力及び復元力係数を吸収目的の波周波数により定まる値に設定し波の反射を防止するものである。しかし、この特許文献3に係る技術思想においても、造波指令信号と、造波体の運動変位に応じた信号に復元力係数を乗じた値と、造波体の運動速度に応じた信号に減衰力係数を乗じた値とを加算したものに基づくフィードバック制御をかけているもの
である。
【0007】
特許文献4は、造波体の減衰力及び復元力信号と駆動力信号とにより、基本駆動信号を修正するものである。この特許文献4に係る技術思想においても、造波体に作用する力を求め、これを指令駆動力と比較して所要の駆動力を補償するフィードバック制御を加えているものである。
【特許文献1】特開2003−177073号公報
【特許文献2】特開平6−11411号公報
【特許文献3】特開平2−307031号公報
【特許文献4】特開昭63−273033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記で見たように、上記各特許文献を含むこれまでの技術もしくは技術的思想は、水槽の淵や造波板に衝突した波を打ち消すための消波効果や吸収効果を得るために、造波板の挙動を所定の数式処理により計算して最適値を算出し、当該最適値を用いて閉ループ制御(フィーバック制御)する域を出ないものであった。特に、上記各特許文献3及び4については、フィードバック制御の対象となるのは造波板の反射波であって、この反射波を造波装置として検出して造波機構にフィーバック制御をかけることで最終出力系での反射波を吸収しようとするものである。したがって、これら従来技術のいずれにおいても、造波という最終出力系でのオープンループ制御はなし得ない構成となっている。
【0009】
また、個々の造波板が反射波を認識する構成であるため、造波板が複数で全体の系が構成される場合に、一の造波板が他の造波板での反射も含めて全領域に与える影響を考慮に入れているものではないため、反射波中でも斜め方向から衝突する波の影響を考慮に入れた精密な波を形成することが困難であった。
【0010】
本発明は、上記の従来技術上の問題点を解決するもので、フィーバック制御を不要としつつも一の造波板が他の造波板での反射も含めて全領域に与える影響を反映した正確な波を生成し得る造波装置、造波方法及びプログラムを提供することを目的とする。本発明のより詳細な目的は、所望の造波に対応する各造波板の挙動を所定の数式処理にて算出し、それらの結果を重ね合わせることで、反射波の影響も考慮して所望の波を発生させることのできる造波装置、造波方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するために、本願に係る造波装置は、造波水面場に対して配列した複数の造波板と、この複数の造波板をそれぞれ駆動する複数の駆動手段と、造波条件を設定する造波条件設定手段と、前記造波水面場において反射の影響も考慮した前記複数の造波板の個々の造波板の造る速度ポテンシャルを予め計算し全ての前記複数の造波板についての計算結果を蓄えておく速度ポテンシャルデータベースと、前記造波条件設定手段で設定した造波条件とこの設定された造波条件に対応した前記速度ポテンシャルデータベースのデータとに基づき所定の演算式に従って演算を行う演算手段と、この演算手段の演算結果である個々の造波板位置の時系列データを蓄える記憶装置と、この記憶装置の時系列データに基づいて前記複数の駆動手段を制御する制御手段とを備えて構成される。
【0012】
波には、規則波、不規則波及び集中波が含まれる。規則波とは、一つの向きの波で、波高及び周期が一定であるものを示し、不規則波は複数の規則波を加え合わせたものを示す。一方、集中波とは、時系列的に各時刻の空間的な波高分布を決め、それらの組み合わせによって構成されるものである。
【0013】
上記において、造波板とは、所定の形状、寸法及び重量を有する板状のものをいうが、その寸法、材質、形状等に特に限定はなく、一定の剛性を備えた実質的に板状の物体であって波を生成する機能を担えるものであればよい。特に造波板の材質については、硬質であって防錆効果を有する素材、たとえば金属(たとえば鉄、鋼鉄等に塗装を施したもの)、合成樹脂、セラミック等であることが好ましいがこれに限定されることはない。造波板の種類としては、一つの継手部を利用して挙動させるフラップ式、直線駆動部の駆動と平行に駆動させるピストン式、及び造波板を楔形にして上下に挙動させるプランジャー式、或いは複数の造波板を連接させてその挙動を動的に制御する連結式のうちのいずれでもよく、或いはそれらの任意の組み合わせでもよい。
【0014】
本願では、この造波板は造波水面場に対して複数配列されることを前提としているが、その配列の間隔及び造波板の数に限定はない。但し、個々の造波板と接触する等の直接的な影響を与えないような配列が好ましい。
【0015】
駆動手段とは、造波板により波動を発生させるための動力を与える機能を有するものをいい、造波板を振動させるための継手部(例えば、蝶番やジョイントを含む。)、造波板を波面に対して前後、上下及び左右のうちいずれかもしくはそれらの組み合わせによる駆動をさせるための直線駆動部、直線駆動部が駆動することができるレール部、直線駆動部の駆動範囲を制限するリミッター部、直線駆動部の駆動位置を検出する位置検出部、及び造波板及び/または直線駆動部を駆動させるための電動部(例えば、モーターや運動変換機構を含む。)、或いはそれらを組み合わせたものを含んだ概念をいい、具体的にはこれらの機能を備える機械、装置、デバイス、或いはこれらの一部分もしくは組み合わせによって実現される。なお、造波板の挙動は、一つの継手部を利用して挙動させるフラップ式、直線駆動部の駆動と平行に駆動させるピストン式、及び造波板を楔形にして上下に挙動させるプランジャー式、或いは複数の造波板を連接させてその挙動を動的に制御する連結式のうちのいずれの挙動でもよく、或いはそれらの任意の組み合わせでもよい。
【0016】
造波条件設定手段とは、波の波長、振幅、波高、波向、波形、波状、波の速度、周期及び位相のうち少なくとも一つ、或いはそれらの組み合わせによって種々の波を発生させるための条件を設定することのできる機能を有するものを示し、具体的には、これらの機能を有する機械、装置、部品、或いは、こうした機能をコンピュータに実行させるアルゴリズム、このアルゴリズムを実行させるプログラム、もしくはこのプログラムを含めたソフトウェア、搭載媒体、ROM(読み出し専用メモリ)、或いはこれらを搭載もしくは内蔵したコンピュータもしくはその部分によって実現される。また、かかる条件としては所定の数式処理(例えば、行列計算や複素数計算を含む。)により最適値を算出するものを示す。
【0017】
速度ポテンシャルとはその微分値が流体速度になるような波動に係る物理量を示し、速度ポテンシャルデータとは、目標とする波動場における任意の点に関し、(後述する)境界要素法を利用し、所定の計算により算出される速度ポテンシャルをいう。
【0018】
速度ポテンシャルデータベースとは、速度ポテンシャルデータを記憶する機能を有し所定の容量を有する記憶媒体(ハード)もしくはかかる記憶媒体上に磁気情報として記録されたデータも含めた概念をいい、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む概念である。
【0019】
演算手段とは、造波条件設定手段により設定した造波条件及び該造波条件に対応した速度ポテンシャルデータを用いて所定の演算方法により演算処理する機能を有するものをいい、具体的には、これらの機能を有する機械、装置、部品、或いは、こうした機能をコンピュータに実行させるアルゴリズム、このアルゴリズムを実行させるプログラム、もしくはこのプログラムを含めたソフトウェア、搭載媒体、ROM(読み出し専用メモリ)、或いはこれらを搭載もしくは内蔵したコンピュータもしくはその部分によって実現される。
【0020】
記憶装置とは、上記演算手段の演算結果である個々の造波板位置の時系列データを記憶する機能を有し所定の容量を有する記憶媒体(ハード)もしくはかかる記憶媒体上に磁気情報として記録されたデータも含めた概念をいい、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む概念である。
【0021】
制御手段とは、記憶装置に記憶される時系列データに基づいて駆動手段を制御する機能を有するものを示し、具体的には、これらの機能を有する機械、装置、部品、或いは、こうした機能をコンピュータに実行させるアルゴリズム、このアルゴリズムを実行させるプログラム、もしくはこのプログラムを含めたソフトウェア、搭載媒体、ROM(読み出し専用メモリ)、或いはこれらを搭載もしくは内蔵したコンピュータもしくはその部分によって実現される。
【0022】
こうした構成を備えることにより、造波条件設定手段で環境条件、所望の波を構成する物理条件を形成する種々の造波条件を設定し、予め計算した全ての造波板の造る速度ポテンシャルデータを速度ポテンシャルデータベースに蓄えた上で、設定されたこの造波条件と速度ポテンシャルデータベースに蓄えられている速度ポテンシャルデータとに基づき所定の演算式に従い演算手段において個々の造波板位置の時系列データを演算し、記憶装置に蓄えた時系列データに基づいて制御手段にて駆動手段を制御して造波板を挙動させることによって、所望の波を発生させることができる。
【0023】
上記構成において、本発明に係る造波装置は、実際の水面場において計測した波のスペクトルデータを保有し、前記造波条件設定手段の設定に基づいて、前記所定の演算式に従った演算結果に前記スペクトルデータを適用して得られた適用結果に基づいて前記制御手段が前記複数の駆動手段を制御するように構成しても良い。
【0024】
ここで、実際の水面場とは、例えば、太平洋、大西洋及び日本海その他すべての海洋や海域の意味である。この実際の水面場に係るデータとしては、たとえば、種々の波の類型データ(例えば、スペクトル、つまり波長及び波向ごとの強度含む。)を計測装置によって計測したものが挙げられ、この類型データを記憶装置(データベース含む。)に予め保有しておくものとすることができる。
【0025】
また、任意に設定した成分値或いは該成分値に基づいて発生させた水面場で計測した波のスペクトルデータをもって発生させた波も、実際の水面場に含まれる。すなわち、所定の海洋や海域に存在しない成分でも、独自の波に係る成分値であってもよく、各成分を有する規則波或いは不規則波を重ね合わせることで、規則波或いは不規則波を自在に造波し得ることになる。
【0026】
こうした構成を備えることにより、設定された所定の造波条件とスペクトルデータとを適用して、この適用結果に基づいて制御手段にて駆動手段を制御するところ、造波条件に所望の造波状態が反映されているため、造波板が所望の挙動をするようにさせることができる。
【0027】
また、上記構成において、前記速度ポテンシャルの計算に当たっては、波の向きと波の波長もしくは周期の一方と造波板の最大振幅とを指定し、個々の造波板について波と同じ周期で調和振動させたときの反射の影響も考慮した前記造波水面場全体の速度ポテンシャルを境界要素法に基づいて計算する構成としてもよい。
【0028】
調和振動とは、ある量の時刻tでの値が一つの振動数ωによってAsin(ωt+α)で表される正弦関数的な時間変動をすることをいう。ここで、Aは振幅、αは位相のずれを表す。
【0029】
また、境界要素法とは、関数F(x,y)がある領域Ωの内部で性質の良い微分方程式を満たすとき、その境界δΩでの値または勾配の値のみが与えられたときに内部の値を決定する方法をいう。本願においては、Greenの公式により条件を境界での値に関する連立方程式に直してそれを解き、再びGreenの公式によって内部での値を計算する。
【0030】
上記の構成において、個々の造波板についての速度ポテンシャルの計算にあたっては、波と同じ周期で調和振動させたときの反射の影響をも盛り込んだ上、境界要素法を用いることで、各造波板ごとに造波水面場全体の速度ポテンシャルを正確に求め、これを造波水面場全体の造波板に対して行う。
【0031】
また、上記において、前記演算手段の演算は、前記造波条件に対応する調和振動場をこの造波条件に対応した前記速度ポテンシャルデータベースのデータの絶対値に制限をつけた複素線形和で近似する、個々の造波板の振幅及び/もしくは位相に関する連立方程式を解くような構成である。
【0032】
ここで、調和振動場とは、系全体が調和振動している場のことをいう。
【0033】
複素線形和とは、ベクトルに複素数の係数を掛けて和をとることをいう。
【0034】
上記の構成により、演算方法として、造波条件とこの造波条件に対応して各造波板が作る速度ポテンシャル場のデータを一つのベクトルとみなし、それらの複素線形和で所望の造波水面場の速度ポテンシャルを近似する、全造波板の振幅と位相に関する連立方程式を解くという算出方法を採用したので、造波水面場の任意の地点において、正確な造波をすることが数学的に可能になり、フィードバックによらない正確な造波が可能となる。
【0035】
また、上記構成においては、予め定めた造波条件に対する演算結果を前記個々の造波板の位置の時系列データとして蓄える造波板位置時系列データベースをさらに備え、前記造波条件設定手段で設定された造波条件が前記予め定めた造波条件と実質的に一致する場合は、前記造波板位置時系列データベースの時系列データを用いて前記制御手段が前記複数の駆動手段を制御するような構成とすることもできる。
【0036】
造波板位置時系列データベースとは、所与の造波条件に対する演算結果を、造波水面場における個々の造波板の位置ごと及び経時ごとにデータとしたデータベースをいい、具体的には、かかる記憶する機能を有し所定の容量を有する記憶媒体(ハード)もしくはかかる記憶媒体上に磁気情報として記録されたデータも含めた概念をいい、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む概念である。
【0037】
上記の構成により、造波板位置時系列データベースを構築することで造波水面場の各位置にある造波板の時系列的な演算結果に係るデータがデータベースとして記録され、必要に応じてこれから読み出して随時用いることができる。特に、設定した造波条件と一致するデータをこの造波板位置時系列データベースから読出し、これに基づいて駆動手段を制御して造波板の挙動をさせるようにすれば、所望の波の発生を常時正確に実現させることができる。
【0038】
また、上記課題を解決すべく、本願に係る造波装置は、造波水面場に対して配列した複数の造波板と、この複数の造波板をそれぞれ駆動する複数の駆動手段と、時刻毎、位置毎の造波条件を設定する造波条件設定手段と、前記造波水面場において反射の影響も考慮した前記複数の造波板の個々の造波板の造る時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを予め計算し全ての前記複数の造波板について計算した結果を時系列データとして蓄えておく速度ポテンシャル時系列データベースと、前記造波条件設定手段で設定した造波条件とこの設定された造波条件に対応した前記速度ポテンシャル時系列データベースのデータとに基づき所定の演算式に従って演算を行う演算手段と、前記造波条件設定手段での設定に対応したこの演算手段の演算結果である造波板位置の時系列データを蓄える記憶装置と、この記憶装置の時系列データに基づき前記複数の駆動手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0039】
速度ポテンシャル時系列データとは、速度ポテンシャルを、個々について瞬時に一定の変位をした後の造波板の時刻毎及び位置毎に計算し、時刻毎及び位置毎のベクトルデータとしたものを示す。それぞれの造波板の全時刻での速度を未知数とし、それらを前記ベクトルに乗じて加えた結果が所望の波の速度ポテンシャルを時刻毎及び位置毎に並べたベクトルにより近い値を持つようにすることで所望の波を形成することが可能となり、たとえ調和振動として表現できない集中波であっても形成することを可能とするものである。
【0040】
また、速度ポテンシャル時系列データベースとは、上記の速度ポテンシャル時系列データに係るデータベースをいい、具体的には、かかるデータを記憶する機能を有し所定の容量を有する記憶媒体(ハード)もしくはかかる記憶媒体上に磁気情報として記録されたデータも含めた概念をいい、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む概念である。
【0041】
上記の構成により、造波条件設定手段に種々の造波条件を時間毎及び位置毎に設定し、予め計算した全ての造波板の造る時間毎及び位置毎の速度ポテンシャルをデータとして速度ポテンシャル時系列データベースに蓄えておくことができる。その上で、任意に設定された時間毎及び位置毎の造波条件と速度ポテンシャル時系列データベースに蓄えられている速度ポテンシャル時系列データとを用いて所定の演算式に従って演算手段が個々の造波板位置の時系列データを演算して記憶装置にこの演算結果を蓄えることができる。この蓄えられた時系列データに基づき、制御手段が駆動手段を制御して造波板を挙動させることにより、所望の集中波を正確に再現・発生させることができる。
【0042】
また、上記構成において、前記制御手段は、前記複数の駆動手段の予め求めた駆動特性に基づいて前記記憶装置の時系列データあるいは造波板位置時系列データベースの時系列データを補正し及び/もしくは補正条件を付加して前記駆動手段を制御するような構成としても良い。
【0043】
例えばこれまででは、制御手段或いは駆動手段に係る時定数の差異及び/または遅れ型無駄時間の発生により、個々の造波装置に係る制御結果にバラツキが生じてしまうような状況が考えられる。制御手段により駆動手段を最適に制御することで所望の波を発生させる場合に、こうした状況を放置すると、所望の波を発生させることが困難になる場合もある。
【0044】
そこで本願では上記の構成により、駆動特性に必要な所定の時系列データを補正し及び/もしくは補正条件を付加することで、最適な制御を行えるように駆動特性に係るパラメータを調整を行うので、個々の造波装置に係る制御結果のバラツキをなくし、造波における予期せぬばらつき、不具合を防止することができる。かかる補正の手段としては、例えば、時定数の差異に備えて予め所定の時定数を(記憶装置に蓄えて)補正条件(例えば、補正係数の乗算を含む。)として付加したり、遅れ型無駄時間の発生時に駆動手段に係るモーターの回転数や回転速度を補正したりすることで、個々の造波装置に係る制御のバラツキ、装置のガタつきによる不正常発生を抑制し、最適な制御を実現させ、所望の波を発生させることができる。
【0045】
また、上記構成において、制御手段は、リセット部を有し前記複数の駆動手段の駆動開始に当たり前記複数の駆動手段に対してリセットをかけた構成とすることもできる。
【0046】
本来、所望の波を発生させるためには、最適な制御結果の処理終了後、無駄な挙動を行わせないように、各造波装置に係る駆動手段は所定の状態で停止させることが必要である。すなわち、一旦動作の後、再度所望の波を発生させるためには、駆動手段を駆動前の初期状態に復元したり、各駆動手段を駆動させるための所定のパラメータ(例えば、造波条件や時系列データを含む。)をリセットもしくは初期化したりする必要がある。
【0047】
そこで本願は、上記の構成により、制御手段がリセット部を有するようにさせたので、各々の駆動手段を、直前の挙動をさせたパラメータに拘らず、各駆動手段に対してリセットもしくは初期化することにより、複数の造波板の初期位置や所定段階での位置を揃え、その後の駆動に影響を与えることなく、所望の波を発生させることができる。例えば、駆動手段に係る直線駆動部の挙動を認識する位置センサー部やリミッターを設け、この位置センサー部やリミッターが所定位置を認識した時点で電動部を停止させる、あるいは待機する仕組みであってもよい。また、造波板の位置を位置センサー部でリニアーに検出し、造波板の時系列データと照合して造波板位置を時々刻々調整することも可能である。なお、こうした仕組みは、複数の駆動手段に対してリセットをかけるためのフィードバック制御であって、造波発生のためのフィードバック制御ではない。すなわち、たとえば上記の特許文献3,4では、最終出力系での反射波の吸収のために、その反射波を造波装置の信号として検出してフィードバック制御しているのに対し、本願発明では、造波という最終出力系でのオープンループ制御を行い造波装置を所望の通り動かすために、造波装置の信号(位置検出センサ等)を装置としてフィードバック制御しているものである。
【0048】
また、電動部を例えばステッピングモーターとする場合、ステッピングモーターのパルス数により直線駆動部の位置を検出することができるため、直線駆動部の駆動を認識する位置センサー部に代えることができる。
【0049】
また、上記課題を解決するために、本願に係る造波方法は、造波水面場に対して配列した複数の造波板の個々の造波板の造る前記造波水面場における反射の影響を考慮した速度ポテンシャルを予め計算するステップと、この速度ポテンシャルを全ての前記複数の造波板について計算した結果をデータとしてデータベースに蓄えるステップと、造波条件を設定するステップと、この設定された造波条件に従って前記データベースから対応したデータを呼び出すステップと、前記造波条件と呼び出した前記データとに従って所定の演算式に基づいて演算を行うステップと、この演算結果である個々の造波板位置の時系列データを記憶するステップと、この時系列データに基づいて前記複数の造波板を駆動制御するステップとを備えて構成される。
【0050】
上記構成を備えることで、他の造波装置に係る造波板の挙動により発生した反射波の影響を考慮して速度ポテンシャルを予め計算し、この計算結果がデータベースに蓄えられ、造波条件が設定された上で、このデータベースに蓄えたデータが呼び出され、当該呼び出したデータと造波条件とに従って演算が行われた上で、この演算結果が個々の時系列データとして記憶され、この記憶された時系列データに基づいて造波板を駆動制御することができる。これにより、個々の造波板の速度ポテンシャルが正確に割り出され、データ化されるので、どんな場合であっても、かかるデータを読み出すことで、同じ造波が正確に再現されることが可能となる。
【0051】
また、上記構成において、前記演算を行うステップ及び/あるいは前記駆動制御するステップは、実際の水面場において計測した波のスペクトルデータと前記造波条件を設定するステップの設定とに基づいて、前記所定の演算式に従った演算結果に前記スペクトルデータを適用して得られた適用結果に基づいて前記複数の造波板を制御する構成としても良い。
【0052】
こうした構成を備えることにより、上述した演算に係るステップにおいては、実際の水面場において計測した波のスペクトルデータと造波条件とに従った演算が可能となり、この演算結果に基づいて制御手段にて駆動手段を制御し、造波板を挙動させることができるから、実海域を正確に反映する造波が実現され、しかもこうした演算結果等が記憶装置に格納されることから、かかる造波の再現性を高くすることができる。
【0053】
また、上記構成において、前記速度ポテンシャルの計算に当たっては、波の向きと波の波長もしくは周期の一方と造波板の最大振幅とを指定し、個々の造波板について波と同じ周期で調和振動させたときの前記造波水面場全体の反射の影響も考慮した速度ポテンシャルを境界要素法に基づいて計算する構成としてもよい。
【0054】
こうした構成を備えることにより、個々の造波板についての速度ポテンシャルの計算において、波と同じ周期で調和振動させたときの反射の影響をも盛り込んだ上、境界要素法を用いることで、1枚の造波板について速度ポテンシャルが求められ、しかもこれを造波水面場全体の造波板に対して行うので、造波水面場全体の任意の位置での所望の波形状に係る造波を速度ポテンシャルの重ね合わせによって正確に実現することができる。
【0055】
また、上記構成において、前記演算を行うステップは、前記造波条件に対応する調和振動場とこの造波条件に対応した前記データベースのデータの絶対値に制限をつけた複素線形和で近似する、個々の造波板の振幅及び位相に関する連立方程式を解く構成としてもよい。
【0056】
こうした構成を備えることにより、上述した演算に係るステップは、造波条件とこの造波条件に対応して各造波板が作る速度ポテンシャル場のデータを一つのベクトルとみなし、それらの複素線形和で所望の造波水面場の速度ポテンシャルを近似する、全造波板の振幅と位相に関する連立方程式を解くという算出方法を採用したので、造波水面場の任意の地点において、正確な造波をすることが数学的に可能になり、フィードバックによらずに所望の波を正確に生成することが可能となる。
【0057】
また、上記課題を解決するために、本願に係る造波方法は、造波水面場に対して配列した複数の造波板の個々の造波板の造る前記造波水面場における反射の影響も考慮した時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを予め計算するステップと、全ての前記複数の造波板について時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを計算した結果を時系列データとしてデータベースに蓄えるステップと、時刻毎、位置毎の造波条件を設定するステップと、この設定された造波条件と該設定された造波条件に対応した前記データベースの時系列データとに基づき所定の演算式に従って演算を行うステップと、この演算手段の演算結果である造波板位置の時系列データを記憶するステップと、この時系列データに基づいて前記複数の造波板を駆動制御するステップとを備えて構成される。
【0058】
こうした構成を備えることにより、予め種々の造波条件を時間毎及び位置毎に設定し、予め計算した全ての造波板の造る時間毎及び位置毎の速度ポテンシャルをデータとして速度ポテンシャル時系列データベースに蓄えておく。その上で、任意に設定された時間毎及び位置毎の造波条件と速度ポテンシャル時系列データベースに蓄えられている速度ポテンシャル時系列データとを用いて所定の演算式に従って個々の造波板位置の時系列データを演算し、この演算結果を記憶装置に蓄える。この蓄えられた時系列データに基づき、複数の造波板を駆動制御するので、所望の集中波に係る造波であっても、地点ごとの時系列的な速度ポテンシャルを重ね合わせることで正確に再現・発生させることができる。
【0059】
また、上記課題を解決するために、本願に係るプログラムは、コンピュータを、造波水面場に関する波の向きと波の波長もしくは周期の一方と造波板の最大振幅とを指定するステップと、前記造波水面場に対して配列した複数の造波板の個々の造波板について波と同じ周期で調和振動させたときの反射の影響も考慮した速度ポテンシャルを前記造波水面場全体について境界要素法に基づいて計算するステップと、前記計算した結果をデータベースに格納するステップとを備えて動作させたことを特徴とする。
【0060】
こうした構成を備えることにより、個々の造波板の速度ポテンシャルは波と同じ周期で調和振動させた反射の影響も反映した正確性の高いものとなり、造波水面場全体に対して速度ポテンシャルを境界要素法に基づいて計算して求めるので、任意の位置に対して所望の波を得るには、当該位置に係る速度ポテンシャルを重ね合わせたものとすればよい。しかもこれをデータベースとして記憶装置に格納するので、種々の状況・場面に応じたデータを予め蓄えておくことにより、あらゆる状況に相応した造波をデータベースからデータを読み出し、これに基づいた制御を行うという操作で容易に実現することができる。
【0061】
また、上記課題を解決するために、本願に係る造波プログラムは、コンピュータを
造波条件設定手段で設定した造波条件を入力するステップと、前記入力されたこの造波条件に従って造波水面場において反射の影響も考慮した複数の造波板の個々の造波板の造る速度ポテンシャルを予め計算し全ての複数の造波板についてその結果を蓄えた速度ポテンシャルデータベースから対応するデータを呼び出すステップと、前記入力された前記造波条件と呼び出された前記データとに基づき所定の演算式に従って演算を行うステップと、この演算結果を個々の造波板の時系列データとして記憶するステップと、この時系列データに基づき前記複数の造波板を駆動する駆動手段の駆動条件として出力するステップとを備えて動作させることを特徴とする。
【0062】
こうした構成を備えることにより、造波条件設定手段を介して造波条件を入力し、所定の速度ポテンシャルデータを速度ポテンシャルデータベースから呼び出し、入力された造波条件と呼び出された速度ポテンシャルデータとに基づき演算を行い、演算した結果を時系列データとして記憶し、記憶した時系列データに基づき駆動手段の駆動条件を出力する、という一連の処理を所定のコンピュータで実現することができる。したがって、コンピュータによる制御を通して所望の規則波或いは不規則波を造波することが可能となる。
【0063】
また、上記課題を解決するために、本願に係るプログラムは、コンピュータを、造波条件設定手段で設定した時刻毎、位置毎の造波条件を入力させるステップと、前記入力されたこの造波条件に対応した造波水面場に対して配列した複数の造波板の個々の造波板の造る前記造波水面場における反射の影響も考慮した時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを予め計算するステップと、全ての前記複数の造波板についての前記時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを速度ポテンシャル時系列データベースに格納するステップとを備えて動作させたことを特徴とする。
【0064】
こうした構成を備えることにより、個々の造波板の速度ポテンシャル時系列データは、個々の造波板の時刻毎及び位置毎の速度ポテンシャルであって波と同じ周期で調和振動させた反射の影響も反映した正確性の高いものを造波水面場全体に対して境界要素法に基づいて計算して求めるので、任意の位置に対して所望の造波を得るには、当該位置に係る速度ポテンシャル時系列データを重ね合わせたものとすればよい。しかもこれをデータベースとして記憶装置に格納しておけるので、種々の状況・場面に応じたデータを予め蓄えておくことにより、あらゆる状況に相応した波をデータベースからデータを読み出し、これに基づいた制御を行うという操作で容易に実現することができる。
【0065】
また、上記課題を解決するために、本願に係る造波プログラムは、コンピュータを 造波条件設定手段で設定した時刻毎、位置毎の造波条件を入力するステップと、前記入力されたこの造波条件に対応した造波水面場に対して配列した複数の造波板の個々の造波板の造る前記造波水面場における反射の影響も考慮した時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを予め計算し全ての前記複数の造波板について蓄えた速度ポテンシャル時系列データベースから呼び出すステップと、前記造波条件設定手段で設定した造波条件と呼び出された前記速度ポテンシャルの時系列データとに基づき所定の演算式に従って演算を行うステップと、この演算ステップの演算結果の時系列データを記憶するステップと、この演算結果の時系列データを呼び出すステップと、この呼び出された演算結果の時系列データに従って前記複数の造波板を駆動する駆動手段の駆動条件として出力するステップとを備えて動作させることを特徴とする。
【0066】
こうした構成を備えることにより、造波条件設定手段で時刻毎及び位置毎の造波条件を設定し、造波に係る反射の影響も考慮して速度ポテンシャルを時刻毎及び位置毎に予め計算し速度ポテンシャル時系列データベースに蓄え、設定された造波条件と蓄えられた速度ポテンシャル時系列データとに基づいて演算し、演算結果の時系列データを記憶し、記憶した時系列データを呼び出し、呼び出された時系列データを駆動手段の駆動条件として出力する、という一連の処理を所定のコンピュータで実現することができる。したがって、コンピュータによる制御を通して所望の集中波を造波することが可能となる。
【発明の効果】
【0067】
本願によれば、造波条件設定手段に種々の造波条件を設定し、予め計算した全ての造波板の造る速度ポテンシャルを速度ポテンシャルデータベースに蓄え、設定された造波条件と速度ポテンシャルデータベースに蓄えられている速度ポテンシャルデータとに基づき所定の演算式に従って演算手段で個々の造波板位置の時系列データを演算し、記憶装置に蓄えた時系列データに基づいて制御手段にて駆動手段を制御して造波板を挙動させるので、所望の波を発生させることができる。したがって、発生した波の特性(例えば、波高や波長、造波板にかかる圧力を含む。)を測定し、該測定した値を制御手段に係るパラメータに利用するフィードバック制御を行うことなく、駆動手段を最適に制御し、所望の規則波或いは不規則波を造波することができる。また、個々の造波板や両隣合わせた造波板のみで消波するのではなく、複数の造波板全部の反射の影響を考慮して所定の演算を行うことで造波水面場としての例えば水槽全体の系としての造波特性を正確に反映した波を形成でき、たとえば造波水槽全体での消波の効果を得て消波効率を格段に向上させることができるだけでなく、水槽の形状や発生する波の向きその他の影響を受けず、所望の波を発生させることができる。
【0068】
また、本願によれば、実際の水面場において計測した波のスペクトルデータを保有し、造波条件設定手段の設定に基づいて、所定の演算式に従った演算結果にスペクトルデータを適用して得られた適用結果に基づいて制御手段が複数の駆動手段を制御するので、設定された所定の造波条件とスペクトルデータとを適用して、適用結果に基づいて制御手段にて駆動手段を制御して造波板を挙動させることができる。したがって、例えば、所定の海洋に係る波の成分をスペクトルデータとして、擬似的に該所定の海洋に係る波を造波することができる。また、スペクトルデータとして任意の値を設定することで、自然界では存在し得ない波であっても人工的に造波することも可能である。
【0069】
また、本願によれば、個々の造波板について波と同じ周期で調和振動させたときの反射の影響も考慮した造波水面場全体の速度ポテンシャルを境界要素法に基づいて計算することができる。したがって、例えば、発生させた造波の特性を出力値とし、該出力値を駆動手段の制御パラメータとする制御手段に入力値として入力して制御するPID制御(フィードバック制御の一種であり、入力値の制御を出力値と目標値との偏差、その積分、および微分の3つの要素によって行う方法)を含むフィードバック制御では複雑な形状の水槽では無数の反射が生じるが、境界要素法を用いると、その複雑な波動場を水槽全体にわたって正確にかつ短時間で計算することができ、それを適切な振幅と位相差で組み合わせることで従来の水槽周辺部での波高データなどからのフィードバックに代わる精度の高い消波方法を構築することができる。
【0070】
また、本願によれば、演算手段の演算においては、造波条件に対応する調和振動場とこの造波条件に対応した速度ポテンシャルデータベースのデータの絶対値に制限をつけた複素線形和によって、個々の造波板の振幅と位相に関する近似する連立方程式を解く。このとき、複素線形和を利用することで、造波板の振幅と位相を決定する方程式を簡単に表すことができ、プログラムを組む上でも便利である。
【0071】
また、本願によれば、予め定めた造波条件に対する演算結果を個々の造波板の位置の造波板位置時系列データベースを構築することで造波板の位置の時系列データを随時用いることができ、特に、設定した造波条件と一致する場合はこの造波板位置時系列データベースに記憶される所定のデータを読出して制御手段により駆動手段を制御して造波板を挙動させ、所望の造波を発生させることができる。したがって、代表的な水面場、すなわち頻繁に発生させる造波は、演算手段による演算結果が造波板位置時系列データベースに蓄えられているため、同様な造波を発生させる際は、造波板位置時系列データを用いることで再現性の高い造波を実現でき、かつ、迅速な制御を行うことができる。
【0072】
また、本願によれば、造波条件設定手段に種々の造波条件を時間毎及び位置毎に設定し、予め計算した全ての造波板の造る時間毎及び位置毎の速度ポテンシャルを時系列として速度ポテンシャル時系列データベースに蓄え、設定された時間毎及び位置毎の造波条件と速度ポテンシャル時系列データベースに蓄えられている速度ポテンシャル時系列データとに基づき所定の演算式に従って演算手段で個々の造波板位置の時系列データを演算し、記憶装置に蓄えた時系列データに基づいて制御手段にて駆動手段を制御して造波板を挙動させることによって、造波水面場の任意の地点における所望の集中波を発生させることができる。すなわち、造波水面場が静止している状態において、造波板の近傍から遠方までの波の広がりを速度ポテンシャル時系列データとして蓄積し、個々の造波板が作る特定の位置における速度ポテンシャル時系列データを重ね合わせて、所望の造波を発生させることができる。したがって、例えば、1枚のパドルによる集中波(例えば、集中円弧型や花型を含む。)、半分のパドルによる集中波(例えば、3方向から発生する集中波を含む。)、集中点の集合による模様や文字(例えば、人や動物、或いはキャラクターの顔や仮名文字、片仮名文字、ローマ字、ギリシア文字、漢字、数字、英数字、漢数字及びその他全ての文字や数字の一つ或いはそれらの組み合わせによる文字列を含む。)といった、規則波及び不規則波では表現できない特殊な波形を表現する集中波を人工的に発生させることができる。また、造波板に係る反射波を含む外力と造波板の位置を計測し、フィードバック制御により造波板を駆動させて集中波を発生させる造波方式ではないため、計測・フィードバック制御という余分なプロセスを省くことができ、所望の集中波をより的確に発生させることができる。
【0073】
また、本願によれば、制御手段は、複数の駆動手段の予め求めた駆動特性に基づいて記憶装置の時系列データあるいは造波板位置時系列データベースの時系列データを補正し及び/もしくは補正条件を付加して駆動手段を制御することにより、駆動特性に必要な所定の時系列データを補正し及び/もしくは補正条件を付加し、最適な制御を行えるように駆動特性に係るパラメータを調整するため、所望の造波を発生させることができる。例えば、時定数の差異に備えて予め所定の時定数を記憶装置に蓄えて補正条件(例えば、補正係数の乗算を含む。)を付加したり、遅れ型無駄時間の発生時に駆動手段に係るモーターの回転数や回転タイミングを補正したりすることで、個々の造波装置に係る制御のバラツキを抑制し、最適な制御を実現させ、所望の波を発生させることができる。したがって、時系列データのデータ自体の信頼性に依存することなく、必要に応じて駆動特性に応じたデータ補正や補正条件の付加を行い制御の最適性を保持することで、常に所望の波を確実性をもって発生させることができる。
【0074】
また、本願によれば、制御手段においては、リセット部を有し複数の駆動手段の駆動開始に当たり、複数の駆動手段に対してリセットをかけるもしくは初期化することにより、各々の駆動手段を、直前の挙動をさせたパラメータに拘らず、複数の造波板の初期位置や所定段階での位置を揃え、その後の挙動に影響を与えることなく、所望の波を発生させることができる。また、造波板の位置を位置センサー部でリニアーに検出し、造波板の時系列データと照合して造波板位置を時々刻々調整することも可能である。なお、こうした仕組みは、複数の駆動手段に対してリセットをかけるためのフィードバック制御であって、造波発生のためのフィードバック制御ではない。すなわち、たとえば上記の特許文献3,4では、最終出力系での反射波の吸収のために、その反射波を造波装置の信号として検出してフィードバック制御しているのに対し、本願発明では、造波という最終出力系でのオープンループ制御を行い造波装置を所望の通り動かすために、造波装置の信号(位置検出センサ等)を装置としてフィードバック制御しているものである。
【0075】
また、本願によれば、他の造波装置に係る造波板の挙動により発生した反射波の影響を考慮して速度ポテンシャルを予め計算し、この計算結果をデータベースに蓄え、造波条件を設定し、データベースに蓄えたデータを呼び出し、この呼び出したデータと造波条件に従って演算を行い、この演算結果を個々の時系列データとして記憶し、当該記憶された時系列データに基づいて造波板を駆動制御することができるので、発生した造波の特性(例えば、波高や波長を含む。)を測定し、該測定した値を制御手段に係るパラメータに利用するフィードバック制御を行うことなく、駆動手段を最適に制御し、所望の規則波或いは不規則波を造波することができる。また、個々の造波板や両隣合わせた造波板のみで消波するのではなく、複数の造波装置で反射の影響を考慮して所定の演算を行うことにより水槽全体で消波の効果を得られるため、消波効率を格段に向上させることができ、任意の形状の水槽において任意の波向きの所望の波を造ることができる。
【0076】
また、本願によれば、演算を行うステップあるいは駆動制御するステップは、実際の水面場において計測した波のスペクトルデータと造波条件を設定するステップの設定とに基づいて、所定の演算式に従った演算結果にスペクトルデータを適用して得られた適用結果に基づいて複数の造波板を制御する。上述した演算に係るステップでは、実際の水面場において計測した波のスペクトルデータと造波条件とに従って演算を行っても良く、この演算結果に基づいて制御手段にて駆動手段を制御し、造波板を挙動させることができる。したがって、例えば、所定の海洋に係る波の成分をスペクトルデータとして、擬似的に当該所定の海洋に係る波を造波させることができる。また、スペクトルデータとして任意の値を設定することで、自然界では存在し得ない波も人工的に造波することができる。
【0077】
また、本願によれば、速度ポテンシャルの計算に当たっては、波の向きと波の波長もしくは周期の一方と造波板の最大振幅とを指定し、個々の造波板について波と同じ周期で調和振動させたときの造波水面場全体の反射の影響も考慮した速度ポテンシャルを境界要素法に基づいて計算する。複雑な形状の水槽では無数の反射が生じるので、発生させた造波の特性を出力値とし、該出力値を駆動手段の制御パラメータとする制御手段に入力値として入力して計算するPID制御を含むフィードバック制御ではその度ごとに制御が必要で、定常状態の予測が難しいことおよび定常状態への収束に時間がかかることが考えられるが、境界要素法を用いると、その複雑な波動場を水槽全体にわたって正確にかつ短時間で計算することができ、それを適切な振幅と位相差で組み合わせることで従来の水槽周辺部での波高データなどからのフィードバックに代わる精度の高い消波方法を構築することができる。
【0078】
また、本願によれば、演算を行うステップは、造波条件に対応する調和振動場とこの造波条件に対応したデータベースのデータの絶対値に制限をつけた複素線形和で近似する、個々の造波板の振幅と位相に関する連立方程式を解くことにより、演算手段により最適な演算結果を得ることができるため、所望の波を発生させることが可能となる。このとき、複素線形和を利用することで、造波板の振幅と位相を決定する方程式を簡単に表すことができ、プログラムを組む上でも便利である。このように、調和振動場と複素線形和との概念を用いて個々の造波板の振幅と位相に関する近似する連立方程式を解くという純粋に代数的手段によって造波を発生させることができ、ぶれが発生することがない。さらに、フィードバック制御を行わないため、最短時間で制御し所望の造波を発生させることができる。
【0079】
また、本願によれば、速度ポテンシャルを時刻毎及び位置毎に予め計算し、この計算した結果を速度ポテンシャル時系列データベースに蓄え、造波条件を時刻毎及び位置毎に設定し、上記設定した造波条件と蓄えた時系列データとで演算を行い、この演算結果を個々の時系列データとして記憶し、当該記憶された時系列データに基づいて造波板を駆動制御するので、造波水面場が静止している状態において、造波板の近傍から遠方までの波の広がりを速度ポテンシャル時系列データとして蓄積し、個々の造波板に係る速度ポテンシャル時系列データを重ね合わせて、所望の波を発生させることができる。したがって、例えば、1枚のパドルによる集中波(例えば、集中円弧型や花型を含む。)、半分のパドルによる集中波(例えば、3方向から発生する集中波を含む。)、集中点の集合による模様や文字(例えば、人や動物、或いはキャラクターの顔や仮名文字、片仮名文字、ローマ字、ギリシア文字、漢字、数字、英数字、漢数字及びその他全ての文字や数字の一つ或いはそれらの組み合わせによる文字列を含む。)といった、規則波及び不規則波では表現できない特殊な波形を表現する集中波であっても、これを人工的に発生させることができる。また、造波板に係る反射波を含む外力と造波板の位置を計測し、フィードバック制御により造波板を駆動させて集中波を発生させる造波方式ではないため、余分な設備の必要なしに所望の集中波をより的確に発生させることができる。
【0080】
また、本願によれば、個々の造波板の速度ポテンシャルは波と同じ周期で調和振動させた反射の影響も反映した正確性の高いものを造波水面場全体について境界要素法に基づいて計算して求めるので、水面場の任意の位置に対して所望の波を得るには当該位置に係る速度ポテンシャルを重ね合わせたものとすればよい。複雑な形状の水槽では無数の反射が生じるためにフィードバック制御ではその度ごとに制御が必要で、定常状態の予測が難しいことおよび定常状態への収束に時間がかかることが考えられるのに対して、境界要素法を用いているために、その複雑な波動場を水槽全体にわたって正確にかつ短時間で計算することができ、それを適切な振幅と位相差で組み合わせることで従来の水槽周辺部での波高データなどからのフィードバックに代わる精度の高い消波方法を構築することができる。しかもこれをデータベースとして記憶装置に格納するので、種々の状況・場面に応じたデータを予め蓄えておくことにより、あらゆる状況に相応した造波をデータベースからデータを読み出し、これに基づいた制御を行うという操作で容易に実現することができる。したがって、このプログラムにより、所定の情報機器にて構成されるシステムに対し、後付で速度ポテンシャルデータベースを構築することができる。
【0081】
また、本願によれば、造波条件設定手段を介して造波条件を入力し、所定の速度ポテンシャルデータを速度ポテンシャルデータベースから呼び出し、入力された造波条件と呼び出された速度ポテンシャルデータとに基づき演算を行い、この演算した結果を時系列データとして記憶し、この記憶した時系列データに基づき駆動手段の駆動条件を出力する、という一連の処理を所定のコンピュータで実現するので、発生した造波の特性(例えば、波高や波長を含む。)を測定し、該測定した値を制御手段に係るパラメータに利用するフィードバック制御を行うことなく、かかるプログラムを搭載した所定のコンピュータにより、駆動手段を最適に制御し、所望の規則波或いは不規則波を造波することができる。また、個々の造波板や両隣合わせた造波板のみで消波するのではなく、複数の造波装置で反射の影響を考慮して所定の演算を行うことにより水槽全体で消波の効果を得られるため、消波効率を格段に向上させることができ、任意の形状の水槽において任意の波向きの所望の波を造ることができる。
【0082】
また、本願によれば、個々の造波板の速度ポテンシャル時系列データは、個々の造波板の時刻毎及び位置毎の速度ポテンシャルであって波と同じ周期で調和振動させた反射の影響も反映した正確性の高いものを造波水面場全体に対して境界要素法に基づいて計算して求めるので、水面場の任意の位置に対して所望の造波を得るには、当該位置に係る速度ポテンシャル時系列データを重ね合わせたものとすればよい。また、複雑な形状の水槽では無数の反射が生じるためにフィードバック制御ではその度ごとに制御が必要で、定常状態の予測が難しいことおよび定常状態への収束に時間がかかることが考えられるのに対して、境界要素法を用いているために、その複雑な波動場を水槽全体にわたって正確にかつ短時間で計算することができ、それを適切な振幅と位相差で組み合わせることで従来の水槽周辺部での波高データなどからのフィードバックに代わる精度の高い消波方法を構築することができる。しかもこれをデータベースとして記憶装置に格納しておけるので、種々の状況・場面に応じたデータを予め蓄えておくことにより、あらゆる状況に相応した造波をデータベースからデータを読み出し、これに基づいた制御を行うという操作で容易に実現することができる。したがって、かかるプログラムにより、所定の情報機器にて構成されるシステムに対し、後付で速度ポテンシャル時系列データベースを構築することができる。
【0083】
また、本願によれば、造波条件設定手段で時刻毎及び位置毎の造波条件を設定し、造波に係る反射の影響も考慮して速度ポテンシャルを時刻毎及び位置毎に予め計算し速度ポテンシャル時系列データベースに蓄え、設定された造波条件と蓄えられた速度ポテンシャル時系列データとに基づいて演算し、この演算結果の時系列データを記憶し、この記憶した時系列データを呼び出し、この呼び出された時系列データを駆動手段の駆動条件として出力する、という一連の処理を所定のコンピュータで実現するので、造波水面場が静止している状態において、造波板の近傍から遠方までの波の広がりを速度ポテンシャル時系列データとして蓄積し、個々の造波板に係る速度ポテンシャル時系列データを重ね合わせて、所望の波を発生させることができる。したがって、かかるプログラムを搭載した所定のコンピュータにより、例えば、1枚のパドルによる集中波(例えば、集中円弧型や花型を含む。)、半分のパドルによる集中波(例えば、3方向から発生する集中波を含む。)、集中点の集合による模様や文字(例えば、人や動物、或いはキャラクターの顔や仮名文字、片仮名文字、ローマ字、ギリシア文字、漢字、数字、英数字、漢数字及びその他全ての文字や数字の一つ或いはそれらの組み合わせによる文字列を含む。)といった、規則波及び不規則波では表現できない特殊な波形を表現する集中波であっても、コンピュータ制御によって人工的に発生させることができる。また、造波板に係る反射波を含む外力と造波板の位置を計測し、フィードバック制御により造波板を駆動させて集中波を発生させる造波方式ではないため、余分な設備を要することなく所望の集中波をより的確に発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0084】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、以下では、本発明の目的の達成のために説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0085】
図1は、本発明の一実施形態に係る造波装置1の平面的概要を示す全体概要図である。同図に示すとおり、造波装置1は、水槽2、造波機10、造波板位置時系列計算・データベース20及び造波機運転制御部30を少なくとも備えて構成される。
【0086】
造波装置1は、所定の寸法及び形状を有する水槽2全体を含んで構成されるが、その寸法に限定はなく、巨大な水槽から小規模の器まで幅広く応用できる。造波実験の目的からすれば十分な寸法を有するものが好ましく、さらに好適には深さ4.5m、東西80m、南北40m程度の長方形の四隅を、半径8m程度の四分円状で置き換えたものとする。
【0087】
また、造波機10は、造波板100とこの造波板100が所定の挙動を行うように制御する制御装置101を備えて構成される。概括的にいえば、造波機10は制御装置101により造波板100を適応的に制御して所望の波を発生させるものであり、水槽2の淵に複数個設置し、その数や設置間隔に限定はないが、個々の造波板100と接触する等の直接的な影響を与えないような配列が好ましい。
【0088】
造波板位置時系列計算・データベース20及び造波機運転制御部30は、造波装置1に係る水槽2付近に設置されるものであり、例えば、各機能を有するモジュールを搭載した制御盤や各機能を搭載したコンピュータによって実現されるものでもよい。
【0089】
図2は、本発明の一実施形態に係る造波機10の機器構成図である。同図に示すとおり、造波機10は、造波板100、制御装置101、直線駆動部102、リミッター103、位置検出センサー104、ボールネジレール105、モーター106及び運動変換機構107を少なくとも備えて構成される。
【0090】
造波板100は、ここではフラップ式を採用しているが、直線駆動部102の挙動と平行に駆動させるピストン式、造波板100を楔形にして上下に挙動させるプランジャー式、或いは造波板100を複数連接させる連接式のうちのいずれの方式(図示しない)によって挙動させるものであってもよい。造波板100は、直線駆動部102と蝶番108を介して直結されている。造波板100は、所定の形状、寸法及び重量を有する板状のものであるが、これに限定されるわけではなく、たとえば曲面板であっても実質的に波を起せる形状であればよい。造波板の材質としては、硬質であって防錆効果を有する素材、たとえば金属(たとえば鉄、鋼鉄等に塗装を施したもの)、合成樹脂、セラミック等を採用することが好ましいがこれらに限定されることはない。造波板100は造波水面場に対して複数配列されており、その配列の間隔及び該造波板の数に限定はないが、個々の造波板と接触する等の直接的な影響を与えないような配列が好ましい。
【0091】
直線駆動部102は、造波板100がフラップ式(或いはピストン式)の場合、ボールネジレール105を介して水面に対し平行にスライドできる機能を実現する装置、機械、デバイスであればよく、その形状、寸法及び材質に限定はない。なお、プランジャー式の場合は、水面に対し略垂直にスライドできるものが好ましい。
【0092】
直線駆動部102は、ボールネジレール105に対して両端に設けたリミッター103のスライド可能範囲内で前後移動可能であり、その位置を位置検出センサー104で検出することができる。
【0093】
直線駆動部102は、モーター106の回転力がボールネジレール105を介して伝達され、前後にスライドする動力とされる機構(装置、部品、システム)であるが、モーター106の駆動タイミングや回転数は、制御装置101により制御することができる。
【0094】
制御装置101は、所定の制御方式によりモーター106を制御する機能を有する回路(装置、機構、部品、システム)である。所定の制御方式とは、たとえば、演算装置によって演算された個々の造波板位置の経時的な位置に関するデータに対応する波を起させるように造波板100の動作を制御・統制するものであり、たとえば、こうした動作を起させることを実現するハード回路、またプログラム或いはソフトウェア、もしくはこれらを搭載(インストール)した記憶装置、または、かかるプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているコンピュータ(マイコン、ROMを含む)によって実現される。また、所望の波を発生させるために直線駆動部102が最適に駆動するように制御に係る所定のデータを、モーター106、運動変換機構107、ボールネジレール105等の特性に基づいて補正する補正器(図示しない)や直線駆動部102を駆動前の初期状態に復元したり、直線駆動部102を駆動させるための初期位置や所定のパラメータ(例えば、造波条件や時系列データを含む。)をリセットもしくは初期化したりするリセット部(図示しない)を有することが好ましい。
【0095】
ボールネジレール105は、ボールの転がりにより直線駆動部102の駆動をスムーズに行わせる機能を有し、たとえば、螺子切りされている棒状のものによって実現される。リミッター103は、直線駆動部102のスライド可能範囲を区画し制限を与えるものであり、電気的なスイッチや機構的なストッパーをもって構成される。位置検出センサー104は、スライド可能範囲全域に設置する形態であってボールネジレール105に対する直線駆動部102の具体的な位置を検出する機能、もしくは所定の部分に設置するもので直線駆動部102が通過したことを検出する機能を備えるものであればよく、制御装置101と連動して位置検出センサー104のセンシングにより直線駆動部102の駆動を制御できるものであることが好ましい。モーター106は、所定の電動式モーターであればよく、例えば、ステッピングモーターであってもよい。ステッピングモーターを使用する場合、ステッピングモーターのパルス数により直線駆動部102の位置を検出することができるため、機構的なストッパーとの組み合わせにより、直線駆動部102の駆動を認識する位置検出センサー104は必須ではなくなる。
【0096】
図3は、本発明に係る一実施形態に係る規則波或いは不規則波を造波する造波装置1における造波機10、造波板位置時系列計算・データベース20及び造波機運転制御部30の機能構成を示す機能ブロック図である。同図に示すとおり、個別造波機10は、上述した各制御装置101、モーター106及び造波板100を少なくとも備えて構成される。
【0097】
たとえばコンピュータ及び/もしくは記憶装置にデータが搭載される形態として実現される造波板位置時系列計算・データベース20は、造波水面場である水槽に係る物理データ、環境状況データ等を入力・設定するための試験水槽設定部200、波の向き、波長もしくは周期、造波板の最大振幅等の計算条件たる情報を入力するための計算条件入力部201−1、計算対象の造波板の識別情報を指定するための造波板指定部202、当該指定されて造波板に関する速度ポテンシャルを所定の演算式によって求める機能を有する速度ポテンシャル計算部203、求められた速度ポテンシャルデータを位置ごとに格納するための機能を有する速度ポテンシャルデータベース204−1、予め定めた条件の組み合わせを入力設定するための予設定条件入力部205、実海域等の波スペクトルデータ情報を獲得して(少なくとも一時的に)保持するための波スペクトルデータ部206、予め設定すべき所望の造波に関するデータを演算によって求める機能を有する予設定波面演算部207、及び演算によって求められた波を発生させるための各位置ごとの造波板の経時的なデータを記憶・保管する機能を有する造波板位置時系列データベース208を少なくとも備えて構成される。
【0098】
制御装置、コンピュータ、機構、コンピュータに搭載されることでコンピュータを所望の動作させることが可能なROM等として実現される造波機運転制御部30は、造波運転に関する制御指示を表示し所望の指示を入力できる機能を有する運転指示器300、種々の波に対して形態ごとに予めモード設定をしておくことのできる機能を有する波モード設定器301、造波に関する環境条件、物理条件等の各種条件をデータとして入力・設定する機能を有する造波条件設定器302−1、予め設定された条件と所望の造波に係る条件との照合を行い、所望の造波に最も近接するモードを選択する機能を有する予設定条件照合部303、選択されたモードに準拠する造波板の経時的な動作状況を演算する機能を有する演算処理部304、演算された各位置ごとの造波板の経時的なデータを記録・保管しておく機能を有する時系列データ記憶装置305、及び所望の造波に関するデータ或いは造波装置の運転に関するデータ・指示を通信する機能を有する条件・データ送受信部306を少なくとも備えて構成される。
【0099】
造波板位置時系列計算・データベース20に係る試験水槽設定部200は、水槽2の形状或いは寸法及び造波板100の数、位置、幅及び向きその他関係する全ての条件のうち少なくとも一つ或いはその組み合わせを入力・設定する機能を有し、たとえばキーボード、マウス、音声入力装置、またはこれらの機能をコンピュータに実行させるプログラム或いはソフトウェア、さらにはこれらを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものによって実現されるものである。
【0100】
造波板位置時系列計算・データベース20に係る計算条件入力部201−1は、造波(特に、規則波)に係る波の波長、振幅、波高、波向、波形、波状、波の速度、周期及び位相のうち少なくとも一つ、或いはそれらの組み合わせによって種々の波を発生させる計算条件に係る情報を入力・設定する機能を有し、たとえばキーボード、マウス、音声入力装置、またはこれらの機能をコンピュータに実行させるプログラム或いはソフトウェア、さらにはこれらを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものによって実現されるものである。
【0101】
造波板位置時系列計算・データベース20に係る造波板指定部202は、水槽2における調和振動場の計算を行ういずれかの造波板を指定する機能を有し、これらの機能を持った表示装置(部)、入力装置(部)、中央処理装置(部)、或いはかかる機能をコンピュータに実行させるプログラム或いはソフトウェア、もしくはこれらを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものによって実現される。
【0102】
造波板位置時系列計算・データベース20に係る速度ポテンシャル計算部203は、水槽2における調和振動場内の各位置ごとの造波に係る速度ポテンシャルの計算を行う機能を有し、この機能を持った演算装置(部)、中央処理装置(部)、或いはかかる機能をコンピュータに実行させるプログラム或いはソフトウェア、もしくはこれらを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものによって実現される。
【0103】
造波板位置時系列計算・データベース20に係る速度ポテンシャルデータベース204−1は、本願に係る所定の計算(後述)により算出した速度ポテンシャルデータに係るデータベースをいい、具体的には、かかるデータを記憶する機能を有し所定の容量を有する記憶媒体(ハード)もしくはかかる記憶媒体上に磁気情報として記録されたデータも含めた概念をいい、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む装置、機械、コンピュータ、コンピュータ周辺機器によって実現される。
【0104】
造波板位置時系列計算・データベース20に係る予設定条件入力部205は、波長と造波機の数とに応じて造波目標の各規則波成分の代表点を入力・指定する機能を有し、たとえばキーボード、マウス、音声入力装置、またはこれらの機能をコンピュータに実行させるプログラム或いはソフトウェア、さらにはこれらを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものによって実現されるものである。具体的には、水槽2全体から見て理想的な波を形成できるように代表となる点を打点(プロット)する。この代表点の数に限定はないが、造波板の数よりも多く、一つの波形に2つ以上あることが好ましい。
【0105】
造波板位置時系列計算・データベース20に係る波スペクトルデータ部206は、造波目標の波長及び方向毎にスペクトル強度を指定し、実際の水面場での種々の波の類型データ(例えば、波長及び波向含む。)を保持する機能を有する。類型データは記憶装置(データベース含む。)に予め保有しておくことができる。したがって、例えば、太平洋、大西洋及び日本海その他すべての海洋や海域に係る所定の地点の波の成分(例えば、波の波長、振幅、波高、波向、波形、波状、波の速度、周期及び位相)を計測したスペクトルデータを適用して生成する波面を、実際の水面場と定義する。さらに、任意に設定した成分値或いはかかる成分値に基づいて発生させた水面場で計測した波のスペクトルデータをもって発生させた波も、実際の水面場に含まれる。すなわち、所定の海洋や海域に存在しない成分でも、独自の波に係る成分値であってもよく、各成分を有する規則波或いは不規則波を重ね合わせることで、さらに不規則波を造波し得る。なお、この波スペクトルデータ部206は、かかるデータを記憶する機能を有し所定の容量を有する記憶媒体(ハード)もしくはかかる記憶媒体上に磁気情報として記録されたデータも含めた概念をいい、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む装置、機械、コンピュータ、コンピュータ周辺機器によって実現される。
【0106】
造波板位置時系列計算・データベース20に係る予設定波面演算部207は、予設定条件入力部205で指定された代表点で、造波目標を最もよく近似する調和振動場の線形和を計算し、速度ポテンシャルデータベース204−1に蓄えられる速度ポテンシャルデータに基づいて、造波機の振幅と位相を求める機能を有し(振幅の制限を含む)、この機能を持った演算装置(部)、中央処理装置(部)、或いはかかる機能をコンピュータに実行させるプログラム或いはソフトウェア、もしくはこれらを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものによって実現される。
【0107】
造波板位置時系列計算・データベース20に係る造波板位置時系列データベース208は、波スペクトルデータ206と予設定波面演算部207で演算された演算結果とに基づいて各成分波に対して計算した造波機の振幅と位相を合成した造波板の位置の時系列データに係るデータベースをいい、具体的には、かかるデータを記憶する機能を有し所定の容量を有する記憶媒体(ハード)もしくはかかる記憶媒体上に磁気情報として記録されたデータも含めた概念をいい、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む装置、機械、コンピュータ、コンピュータ周辺機器によって実現される。
【0108】
一方、造波機運転制御部30に係る運転指示器300は、造波機10を実際に駆動させるためのコントロール部分であって、所定の入力機器(例えば、駆動開始ボタンや操作画面、その他の情報や指示の入力部分を含む。)を有して構成されるものであってもよい。この運転指示器300は、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む装置、機械、コンピュータ、コンピュータ周辺機器によって実現してもよい。
【0109】
造波機運転制御部30に係る波モード設定器301は、造波機10を駆動させて波を起すための状態に設定するものであって、所定の入力機器(例えば、波モード開始ボタンや操作画面、その他の情報や指示の入力部分を含む。)を有するものである。この波モード設定器301は、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む装置、機械、コンピュータ、コンピュータ周辺機器によって実現してもよい。
【0110】
造波機運転制御部30に係る造波条件設定器302−1は、波の波長、振幅、波高、波向、波形、波状、波の速度、周期及び位相のうち少なくとも一つ、或いはそれらの組み合わせによって種々の波を発生させるための条件を設定する機能を有するものであって、所定の入力機器(例えば、条件設定ボタンや操作画面、その他の情報や指示の入力部分を含む。)を含んで構成されるものであってもよい。この造波条件設定器302−1は、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む装置、機械、コンピュータ、コンピュータ周辺機器によって実現してもよい。
【0111】
造波機運転制御部30に係る予設定条件照合部303は、造波板位置時系列データベース208に蓄えられた個々の造波板の位置の時系列データと、造波条件設定器302−1で設定された造波条件とが一致するか否かを照合する機能を有し、この機能を持った演算装置(部)、中央処理装置(部)、或いはかかる機能をコンピュータに実行させるプログラム或いはソフトウェア、もしくはこれらを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものによって実現されてもよい。
【0112】
造波機運転制御部30に係る演算処理部304は、造波板位置時系列計算・データベース20に係る速度ポテンシャルデータベース204−1に蓄えられる速度ポテンシャルデータ、入力された波スペクトルデータ206及び造波板位置時系列データベース208に蓄えられる造波板位置時系列データのうちの少なくとも一つと、造波条件設定器302−1で設定された造波条件等とに基づいて演算する機能を有し、この機能を持った演算装置(部)、中央処理装置(部)、或いはかかる機能をコンピュータに実行させるプログラム或いはソフトウェア、もしくはこれらを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものによって実現されてもよい。
【0113】
造波機運転制御部30に係る時系列データ記憶装置305は、演算処理部304での演算結果を記憶する機能を有し所定の容量を有する記憶媒体(ハード)もしくはかかる記憶媒体上に磁気情報として記録されたデータも含めた概念をいい、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む装置、機械、コンピュータ、コンピュータ周辺機器によって実現される。
【0114】
造波機運転制御部30に係る条件・データ送受信部306は、造波板位置時系列計算・データベース20の速度ポテンシャルデータベース204−1に蓄えられる速度ポテンシャルデータ、入力された波スペクトルデータ206及び造波板位置時系列データベース208に蓄えられる造波板位置時系列データのうちの少なくとも一つと、造波条件設定器302−1で設定された造波条件等とを受信し、予設定条件照合部303に基づいて照合した結果を、演算処理部304に送信する機能を有し、この機能を持った演算装置(部)、中央処理装置(部)、通信装置(部)、もしくはこれらの組み合わせ、或いはかかる機能をコンピュータに実行させるプログラム或いはソフトウェア、もしくはこれらを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものによって実現されてもよい。
【0115】
なお、個別造波機10に関しては、制御装置101(補正器1010及びリセット部1011を含む。)、モーター106及び造波板100を有するが、上述で述べたとおりであるため、詳細な説明は省略する。
【0116】
次に、演算処理部304が行う演算として、個々の造波板の作る速度ポテンシャルの境界要素法による計算概要について説明する。
【0117】
渦なし非圧縮の流れでは、ΔΨ=0が成り立つが、水平と鉛直と時間方向に変数分離
【0118】
【数1】
・・・・・・・・・・・(1)
を仮定すると、水平方向にはHelmholtz方式
【0119】
【数2】
・・・・・・・・・・・(2)
を満たす。この式中のkは分散関係式
【0120】
【数3】
・・・・・・・・・・・(3)
を解いて求めたものである。Greenの公式に、このHelmholtz方式に対応するGreen関数である第1種のHankel関数
【0121】
【数4】
を用いて
【0122】
【数5】
・・・・・・・・・・・(4)
を得る。これを離散化して境界上の造波板中央の点xi(i=1,2,・・・,N)(Nは造波機の総数)でのFの値に関する次の連立方程式を得る。
【0123】
【数6】
・・・・・・・・・・・(5)
この式の中の
【0124】
【数7】
はj番目の造波板の速度に一致する。いま、m番目の造波板だけを速度1で動かす、すなわち
【0125】
【数8】
の場合の解
【0126】
【数9】
を考えると、
【0127】
【数10】
として、
【0128】
【数11】
・・・・・・・・・・・(6)
これを、m=1,2,・・・,NについてAF=Bという行列の形にまとめると、
【0129】
【数12】
・・・・・・・・・・・(7)
【0130】
【数13】
・・・・・・・・・・・(8)
AF=Bを解いて得た
【0131】
【数14】
から内部での
【0132】
【数15】
での値を次のように得る。
【0133】
【数16】
・・・・・・・・・・・(8)
【0134】
次に、上記のような構成を有する造波装置1の動作を説明する。図4は、本願の一実施形態に係る造波装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【0135】
同図に示されるように、規則波を造波する際は、まず水槽1の寸法或いは形状及び造波板100の位置、幅及び向きを指定することで、造波装置1を構成する水槽2や造波機10に係る情報を入力する(ステップS41)。そして、計算条件入力部201−1にて規則波の波長や周波数を含む造波条件を指定する(ステップS42)。
【0136】
次に、こうして指定された造波条件に基づき、造波板指定部202及び速度ポテンシャル計算部203にて造波板を一つ選び、それを波と同じ周期で単独で調和振動させたときの水槽1全体の速度ポテンシャル場を境界要素法によって計算し、一つの造波機10が作る速度ポテンシャルを算出する(ステップS43)。これを全ての造波板について行う(ステップS43)。
【0137】
一方、予設定条件入力部205にて造波に係る規則波の波長と造波機数に応じて造波目標を各規則波成分の代表点、すなわち、波長と波向きを考慮して「波を表現しうる代表点」をM箇所選び(ステップS44)、目標とする波動場に対応するポテンシャルのその代表点での値を求めM元の複素列ベクトル
【0138】
【数17】
とする。このときの代表点は造波板の数N以上に選ぶ。
【0139】
その後、予設定波面演算部207にて造波板指定部202及び速度ポテンシャル計算部203で造波板毎に求めた調和振動場のM箇所の代表点での値を抜き出してM元の複素列ベクトルとし、造波板の数だけ列を並べて複素M×N行列Pを作る。これにより、
【0140】
【数18】
をN元の複素列ベクトル
【0141】
【数19】
について近似的に解く(ステップS45)。造波機の振幅には限界があるので、ベクトル
【0142】
【数20】
の各要素の大きさが適当に定めた値以下になるように制限をつける。
【0143】
こうして後、波スペクトルデータ206にて造波目標の波長及び方向毎にスペクトル強度を指定し(ステップS46)、波スペクトルデータ206と予設定波面演算部207で演算された演算結果とに基づいて各成分波に対して計算した造波機の振幅と位相を合成した造波板の位置の時系列データを造波板位置時系列データベース208に蓄える(図示しない)。これらの処理により求められた速度ポテンシャル、波スペクトルデータ及び造波板位置時系列データのうち少なくとも一つ或いはその組み合わせに係る条件やデータは、各成分波に対して計算した造波機の振幅と位相を合計し(ステップS47)、造波機運転制御部30の条件・データ送受信部306に送られる(図示しない)。
【0144】
一方、造波機運転制御部30の各部により運転指示及び波モードが設定され、造波条件設定器302−1で設定された造波条件及び予設定条件照合部303での照合結果が条件・データ送受信部306に送られ、演算処理部304にて造波の時系列データが演算され、時系列データ記憶装置305に蓄えられる(図示しない)。したがって、個別造波機10は、時系列データ記憶装置305に記憶される時系列データに基いて、制御装置101は制御され、モーター106を駆動し、造波板100は挙動する(図示しない)。
【0145】
図5は上記の手順にしたがって生成される造波の一例を斜視図として示すものであり、一つの造波機が作る速度ポテンシャルの虚部を表すものである。図6は図5の場合の造波目標とする波面の斜視図である。図7は図5の場合の造波機の振幅を表す斜視図、図8は図5の場合の造波機の位相を表す斜視図である。
【0146】
次に、本願の別の実施形態について説明する。
【0147】
図9は、本発明の別の一実施形態に係る集中波を造波する造波装置1における造波機10、造波板位置時系列計算・データベース20A及び造波機運転制御部30Aの機能構成を示す機能ブロック図である。なお、基本的な構成は図3に示す規則波或いは不規則波を造波する造波装置1と同じであるため、相違点についてのみ説明し、図3と同等な部分についての説明は省略する。
【0148】
計算条件入力部201−2は、時間毎及び位置毎に、造波に係る波の波長、振幅、波高、波向、波形、波状、波の速度、周期及び位相、造波板の最大振幅、のうち少なくとも一つ、或いはそれらの組み合わせによって種々の波を発生させる計算条件を入力・設定する機能を有し、たとえばキーボード、マウス、音声入力装置、またはこれらの機能をコンピュータに実行させるプログラム或いはソフトウェア、さらにはこれらを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものによって実現されるものである。
【0149】
速度ポテンシャル時系列データベース204−2は、速度ポテンシャル計算部203にて、速度ポテンシャルを個々の造波板について時刻毎及び位置毎に計算し、そうして計算されたデータを時間・位置を指定すれば呼び出せる状態にして記憶しておくデータベースをいう。具体的には、かかるデータを記憶する機能を有し所定の容量を有する記憶媒体(ハード)もしくはかかる記憶媒体上に磁気情報として記録されたデータも含めた概念をいい、かかる機能を実現するプログラム或いはソフトウェアを実行可能形式にして搭載した記録媒体を内蔵しているものを含む装置、機械、コンピュータ、コンピュータ周辺機器によって実現される。
【0150】
なお、速度ポテンシャル時系列データは時刻毎及び位置毎に計算するため、不規則波を構成するための波スペクトルデータ206の要素は、速度ポテンシャル時系列データに含まれるものとし、造波板位置時系列データを蓄えるための造波板位置時系列データベース208は不要となる。
【0151】
さらに、造波条件設定器301−2でも、計算条件入力部201−2と同様に、時間毎及び位置毎に造波条件を設定する。したがって、規則波のような造波パターンは存在しないため、予設定条件照合部303は不要となる。
【0152】
このような構成により、集中波が造波される。図10は、本発明のこの実施形態に係る造波した集中波の具体例を概念的に示す図であり、(a)は1枚のパドル(造波板)によって集中波が形成され、6枚のパドルによって花模様(平面的)が形成される様子を、(b)は半分のパドルによって集中波が形成され、3方向からの集中波が形成される様子を、(c)は集中点の集合によりある時間において文字・模様が形成される(上は顔キャラクタ、下は文字)様子を、それぞれ示した図である。同図に示すとおり、上記の構成によって、所望の集中波を形成するための各造波板の挙動を細かく制御するため、1枚のパドルによる集中波(例えば、集中円弧型や花型を含む。)、半分のパドルによる集中波(例えば、3方向から発生する集中波を含む。)、集中点の集合による模様や文字(例えば、人や動物、或いはキャラクターの顔や仮名文字、片仮名文字、ローマ字、ギリシア文字、漢字、数字、英数字、漢数字及びその他全ての文字や数字の一つ或いはそれらの組み合わせによる文字列を含む。)といった、規則波及び不規則波では表現できない特殊な波形を表現する集中波を人工的に発生させることができる。
【0153】
以上詳細に説明したように、本願によれば、実海域再現水槽の中間棚に設置した造波板を所定の演算に基づき制御することで、規則波、不規則波、集中波のいずれをも発生させることが可能となる。
【実施例】
【0154】
次に、本願に係る造波装置の一実施例について説明する。
1.概要
(1) 本装置は、実海域再現水槽の中間棚に設置した造波板を制御して、任意の他方向波を発生させるものである。
(2) 本造波装置は、造波板382枚を用いて水槽内に規制波を発生させるもので、位置制御と吸収制御の両方の制御方式が可能なものとし、造波装置と制御装置によって構成される。
(3) 造波装置は、フラップ方造波板と駆動装置にて構成される。それぞれ水槽の中間棚部及び上部棚部に埋め込まれた金物に固定を行うものとする。
(4) 造波板の駆動は、ACサーボモータによるボールネジ駆動方式とする。駆動装置は円滑な運動を行うための十分な強度を有し、造波板側部の隙間は造波板に設けたシール板により極力小さくする。なお、造波板は底面ヒンジによって支持され、滑らかな運転ができるものとする。
(5) 各造波板は、側面ヒンジ部を介して隣接する造波板に連結され、複数の造波板が1つの帯状に連結された構造とする。
(6) 駆動装置は、造波板の上部にフラップ型の前後運動を個別に与えるもので、接続部1ヶ所につき1台で、計382台設ける。
(7) 制御装置は駆動装置を制御するもので、制御盤及び操作盤によって構成される。
(8) 制御盤は水槽東面に設けられた制御盤室内に設置するものとする。
2.主要性能
(1) 基本仕様
a) 数量:382台
b) 造波方式:フラップ型スネーク式
c) 駆動方式:ACサーボモータ・ボールネジ駆動
d) 発生波型:規則波、斜め規則波、単一方向不規則波、斜め単一方向不規則波、多方向不規則波、集中波、任意波、合成波、純吸収モード、その他(造波信号を計算してストアし、読み出しながら造波)
e) 造波周期:0.43sec 〜 4.0sec
f) 最大波高:0.35m
g) 吸収能力:周期0.8sec 〜2.53secの範囲において、波エネルギー97%以上を目標
h) 消波装置:造波板背面の壁面に消波装置を取り付け
i) 造波板の装置:短辺方向造波板間/36m以上
長編方向造波板間/76m以上
コーナー部は円弧状(R7.7m)に配置
3.造波機構造
(1) 造波板
a) 数量:382枚
b) 寸法:幅55cm以下
c) 材質:SUS304
(2) 駆動装置
a) 数量:382台
b) 構造:鋼板形鋼溶接構造
c) 駆動電動機:1.0kW – 1500rpm、ACサーボモータ
d) 駆動機構:ボールネジ、タイミングベルト、リニアガイド
e) 駆動方式:ACサーボモータ・ボールネジ駆動
f) 材質:SS400
g) 塗装:フタル酸塗装等
【0155】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。本願の技術思想は、一定の限られた区画で所望の波をフィードバック制御を行うことなく創り出すことにあり、この技術思想は、造船業における実海域や実水面場を再現した模型船実験のみならず、種々の方面に活用できる。たとえば、上記説明中、好適には水槽が巨大な容積を有する形状である旨を説明したが、例えば実海域や実水面場を再現した土木工学的な目的で造波実験や、プールに本願に係る造波装置を設けて人工的に波を発生させることで、遊戯を楽しむ、サーフィンの練習を行う、波によるリラクゼーションを味わう、造波に基づく体感ゲームを楽しむといった活用やアミューズメント施設での設置が容易に実現可能である。さらに、室内用の観覧魚を飼育する水槽に造波装置を設けて造波することで魚の鮮度が上げるような、人間の日常生活に密着した用途にも利用し得る。或いは、造波による効果を苗の育成に役立てるといった農業面での活用も見込まれる。さらに造波により実海域や実水面場を再現した模型船、浮体のゲームやアミューズメント等にも利用可能である。
【0156】
また、上述したものは本発明に係る技術思想を具現化するための実施形態の一例を示したにすぎないものであり、他の実施形態でも本発明に係る技術思想を適用することが可能である。
【0157】
さらにまた、本発明を用いて生産される装置、方法、システムが、その2次的生産品に登載されて商品化された場合であっても、本発明の価値は何ら減ずるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明によれば、特に消波を造波の一種ととらえ、個々の造波機が振動するときの反射を含めた波動場を高精度に計算した上で、波動場の重ね合せで所望の波動場を構成するものである。開ループ制御で波を発生させる仕組みは余分な設備負担を軽減する画期的なものであり、船舶業界に限らず水面場を有する商業施設の活性化に大きな有益性をもたらすものである。さらに上述したように、土木、農業、観光業、ペット産業、ゲーム機業等にも広く応用される可能性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】本発明の一実施形態に係る造波装置1の平面的概要を示す全体概要図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る造波機10の機器構成図である。
【図3】本発明に係る一実施形態に係る規則波或いは不規則波を造波する造波装置1における造波機10、造波板位置時系列計算・データベース20及び造波機運転制御部30の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図4】本願の一実施形態に係る造波装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る手順にしたがって生成される造波の一例を斜視図として示すものであり、一つの造波機が作る速度ポテンシャルの虚部を表すものである。
【図6】図5の場合の造波目標とする波面の斜視図である。
【図7】図5の場合の造波機の振幅を表す斜視図である。
【図8】図5の場合の造波機の位相を表す斜視図である。
【図9】本発明に係る一実施形態に係る集中波を造波する造波装置1における造波機10、造波板位置時系列計算・データベース20A及び造波機運転制御部30Aの機器構成を示す機能ブロック図である。
【図10】本発明のこの実施形態に係る造波した集中波の具体例を概念的に示す図であり、(a)は1枚のパドルによって集中波が形成され、6枚のパドルによって花模様(平面的)が形成される様子を、(b)は半分のパドルによって集中波が形成され、3方向からの集中波が形成される様子を、(c)は集中点の集合によりある時間において文字・模様が形成される(上は顔キャラクタ、下は文字)様子を、それぞれ示した図である。
【符号の説明】
【0160】
1…造波装置、2…水槽、10…造波機、20…造波板位置時系列計算・データベース、30…造波機運転制御部、100…造波板、101…制御装置、102…直線駆動部、106…モーター、204−1…速度ポテンシャルデータベース、302−1…造波条件設定器、304…演算処理部、305…時系列データ記憶装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造波水面場に対して配列した複数の造波板と、この複数の造波板をそれぞれ駆動する複数の駆動手段と、造波条件を設定する造波条件設定手段と、前記造波水面場において反射の影響も考慮した前記複数の造波板の個々の造波板の造る速度ポテンシャルを予め計算し全ての前記複数の造波板についての計算結果を蓄えておく速度ポテンシャルデータベースと、前記造波条件設定手段で設定した造波条件とこの設定された造波条件に対応した前記速度ポテンシャルデータベースのデータとに基づき所定の演算式に従って演算を行う演算手段と、この演算手段の演算結果である個々の造波板位置の時系列データを蓄える記憶装置と、この記憶装置の時系列データに基づいて前記複数の駆動手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする造波装置。
【請求項2】
実際の水面場において計測した波のスペクトルデータを保有し、前記造波条件設定手段の設定に基づいて、前記所定の演算式に従った演算結果に前記スペクトルデータを適用して得られた適用結果に基づいて前記制御手段が前記複数の駆動手段を制御したことを特徴とする請求項1記載の造波装置。
【請求項3】
前記速度ポテンシャルの計算に当たっては、波の向きと波の波長もしくは周期の一方と造波板の最大振幅とを指定し、個々の造波板について波と同じ周期で調和振動させたときの反射の影響も考慮した前記造波水面場全体の速度ポテンシャルを境界要素法に基づいて計算したことを特徴とする請求項1あるいは2記載の造波装置。
【請求項4】
前記演算手段の演算は、前記造波条件に対応する調和振動場とこの造波条件に対応した前記速度ポテンシャルデータベースのデータの絶対値に制限をつけた複素線形和で近似する、個々の造波板の振幅及び位相に関する連立方程式を解くことを特徴とする請求項3記載の造波装置。
【請求項5】
予め定めた造波条件に対する演算結果を前記個々の造波板の位置の時系列データとして蓄える造波板位置時系列データベースをさらに備え、前記造波条件設定手段で設定された造波条件が前記予め定めた造波条件と実質的に一致する場合は、前記造波板位置時系列データベースの時系列データを用いて前記制御手段が前記複数の駆動手段を制御したことを特徴とする請求項1乃至4の内の1項記載の造波装置。
【請求項6】
造波水面場に対して配列した複数の造波板と、この複数の造波板をそれぞれ駆動する複数の駆動手段と、時刻毎、位置毎の造波条件を設定する造波条件設定手段と、前記造波水面場において反射の影響も考慮した前記複数の造波板の個々の造波板の造る時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを予め計算し全ての前記複数の造波板について計算した結果を時系列データとして蓄えておく速度ポテンシャル時系列データベースと、前記造波条件設定手段で設定した造波条件とこの設定された造波条件に対応した前記速度ポテンシャル時系列データベースのデータとに基づき所定の演算式に従って演算を行う演算手段と、前記造波条件設定手段での設定に対応したこの演算手段の演算結果である造波板位置の時系列データを蓄える記憶装置と、この記憶装置の時系列データに基づき前記複数の駆動手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする造波装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記複数の駆動手段の予め求めた駆動特性に基づいて前記記憶装置の時系列データあるいは造波板位置時系列データベースの時系列データを補正し及び/もしくは補正条件を付加して前記駆動手段を制御したことを特徴とする請求項1乃至6の内の1項記載の造波装置。
【請求項8】
前記制御手段は、リセット部を有し前記複数の駆動手段の駆動開始に当たり前記複数の駆動手段に対してリセットをかけたことを特徴とする請求項1乃至7の内の1項記載の造波装置。
【請求項9】
造波水面場に対して配列した複数の造波板の個々の造波板の造る前記造波水面場における反射の影響を考慮した速度ポテンシャルを予め計算するステップと、この速度ポテンシャルを全ての前記複数の造波板について計算した結果をデータとしてデータベースに蓄えるステップと、造波条件を設定するステップと、この設定された造波条件に従って前記データベースから対応したデータを呼び出すステップと、前記造波条件と呼び出した前記データとに従って所定の演算式に基づいて演算を行うステップと、この演算結果である個々の造波板位置の時系列データを記憶するステップと、この時系列データに基づいて前記複数の造波板を駆動制御するステップとを備えたことを特徴とする造波方法。
【請求項10】
前記演算を行うステップ及び/あるいは前記駆動制御するステップは、実際の水面場において計測した波のスペクトルデータと前記造波条件を設定するステップの設定とに基づいて、前記所定の演算式に従った演算結果に前記スペクトルデータを適用して得られた適用結果に基づいて前記複数の造波板を制御したことを特徴とする請求項9記載の造波方法。
【請求項11】
前記速度ポテンシャルの計算に当たっては、波の向きと波の波長もしくは周期の一方と造波板の最大振幅とを指定し、個々の造波板について波と同じ周期で調和振動させたときの前記造波水面場全体の反射の影響も考慮した速度ポテンシャルを境界要素法に基づいて計算したことを特徴とする請求項9あるいは10記載の造波方法。
【請求項12】
前記演算を行うステップは、前記造波条件に対応する調和振動場とこの造波条件に対応した前記データベースのデータの絶対値に制限をつけた複素線形和で近似する、個々の造波板の振幅及び位相に関する連立方程式を解くことを特徴とする請求項11記載の造波方法。
【請求項13】
造波水面場に対して配列した複数の造波板の個々の造波板の造る前記造波水面場における反射の影響も考慮した時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを予め計算するステップと、全ての前記複数の造波板について時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを計算した結果を時系列データとしてデータベースに蓄えるステップと、時刻毎、位置毎の造波条件を設定するステップと、この設定された造波条件と該設定された造波条件に対応した前記データベースの時系列データとに基づき所定の演算式に従って演算を行うステップと、この演算手段の演算結果である造波板位置の時系列データを記憶するステップと、この時系列データに基づいて前記複数の造波板を駆動制御するステップとを備えたことを特徴とする造波方法。
【請求項14】
コンピュータを、
造波水面場に関する波の向きと波の波長もしくは周期の一方と造波板の最大振幅とを指定するステップと、
前記造波水面場に対して配列した複数の造波板の個々の造波板について波と同じ周期で調和振動させたときの反射の影響も考慮した速度ポテンシャルを前記造波水面場全体について境界要素法に基づいて計算するステップと、
前記計算した結果をデータベースに格納するステップとを備えて動作させた
ことを特徴とするプログラム。
【請求項15】
コンピュータを
造波条件設定手段で設定した造波条件を入力するステップと、
前記入力されたこの造波条件に従って造波水面場において反射の影響も考慮した複数の造波板の個々の造波板の造る速度ポテンシャルを予め計算し全ての複数の造波板についてその結果を蓄えた速度ポテンシャルデータベースから対応するデータを呼び出すステップと、
前記入力された前記造波条件と呼び出された前記データとに基づき所定の演算式に従って演算を行うステップと、
この演算結果を個々の造波板の時系列データとして記憶するステップと、
この時系列データに基づき前記複数の造波板を駆動する駆動手段の駆動条件として出力するステップとを備えて動作させた
ことを特徴とする造波プログラム。
【請求項16】
コンピュータを、
造波条件設定手段で設定した時刻毎、位置毎の造波条件を入力させるステップと、
前記入力されたこの造波条件に対応した造波水面場に対して配列した複数の造波板の個々の造波板の造る前記造波水面場における反射の影響も考慮した時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを予め計算するステップと、
全ての前記複数の造波板についての前記時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを速度ポテンシャル時系列データベースに格納するステップとを備えて動作させた
ことを特徴とするプログラム。
【請求項17】
コンピュータを
造波条件設定手段で設定した時刻毎、位置毎の造波条件を入力するステップと、
前記入力されたこの造波条件に対応した造波水面場に対して配列した複数の造波板の個々の造波板の造る前記造波水面場における反射の影響も考慮した時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを予め計算し全ての前記複数の造波板について蓄えた速度ポテンシャル時系列データベースから呼び出すステップと、
前記造波条件設定手段で設定した造波条件と呼び出された前記速度ポテンシャルの時系列データとに基づき所定の演算式に従って演算を行うステップと、
この演算ステップの演算結果の時系列データを記憶するステップと、
この演算結果の時系列データを呼び出すステップと、
この呼び出された演算結果の時系列データに従って前記複数の造波板を駆動する駆動手段の駆動条件として出力するステップとを備えて動作させた
ことを特徴とする造波プログラム。
【請求項1】
造波水面場に対して配列した複数の造波板と、この複数の造波板をそれぞれ駆動する複数の駆動手段と、造波条件を設定する造波条件設定手段と、前記造波水面場において反射の影響も考慮した前記複数の造波板の個々の造波板の造る速度ポテンシャルを予め計算し全ての前記複数の造波板についての計算結果を蓄えておく速度ポテンシャルデータベースと、前記造波条件設定手段で設定した造波条件とこの設定された造波条件に対応した前記速度ポテンシャルデータベースのデータとに基づき所定の演算式に従って演算を行う演算手段と、この演算手段の演算結果である個々の造波板位置の時系列データを蓄える記憶装置と、この記憶装置の時系列データに基づいて前記複数の駆動手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする造波装置。
【請求項2】
実際の水面場において計測した波のスペクトルデータを保有し、前記造波条件設定手段の設定に基づいて、前記所定の演算式に従った演算結果に前記スペクトルデータを適用して得られた適用結果に基づいて前記制御手段が前記複数の駆動手段を制御したことを特徴とする請求項1記載の造波装置。
【請求項3】
前記速度ポテンシャルの計算に当たっては、波の向きと波の波長もしくは周期の一方と造波板の最大振幅とを指定し、個々の造波板について波と同じ周期で調和振動させたときの反射の影響も考慮した前記造波水面場全体の速度ポテンシャルを境界要素法に基づいて計算したことを特徴とする請求項1あるいは2記載の造波装置。
【請求項4】
前記演算手段の演算は、前記造波条件に対応する調和振動場とこの造波条件に対応した前記速度ポテンシャルデータベースのデータの絶対値に制限をつけた複素線形和で近似する、個々の造波板の振幅及び位相に関する連立方程式を解くことを特徴とする請求項3記載の造波装置。
【請求項5】
予め定めた造波条件に対する演算結果を前記個々の造波板の位置の時系列データとして蓄える造波板位置時系列データベースをさらに備え、前記造波条件設定手段で設定された造波条件が前記予め定めた造波条件と実質的に一致する場合は、前記造波板位置時系列データベースの時系列データを用いて前記制御手段が前記複数の駆動手段を制御したことを特徴とする請求項1乃至4の内の1項記載の造波装置。
【請求項6】
造波水面場に対して配列した複数の造波板と、この複数の造波板をそれぞれ駆動する複数の駆動手段と、時刻毎、位置毎の造波条件を設定する造波条件設定手段と、前記造波水面場において反射の影響も考慮した前記複数の造波板の個々の造波板の造る時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを予め計算し全ての前記複数の造波板について計算した結果を時系列データとして蓄えておく速度ポテンシャル時系列データベースと、前記造波条件設定手段で設定した造波条件とこの設定された造波条件に対応した前記速度ポテンシャル時系列データベースのデータとに基づき所定の演算式に従って演算を行う演算手段と、前記造波条件設定手段での設定に対応したこの演算手段の演算結果である造波板位置の時系列データを蓄える記憶装置と、この記憶装置の時系列データに基づき前記複数の駆動手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする造波装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記複数の駆動手段の予め求めた駆動特性に基づいて前記記憶装置の時系列データあるいは造波板位置時系列データベースの時系列データを補正し及び/もしくは補正条件を付加して前記駆動手段を制御したことを特徴とする請求項1乃至6の内の1項記載の造波装置。
【請求項8】
前記制御手段は、リセット部を有し前記複数の駆動手段の駆動開始に当たり前記複数の駆動手段に対してリセットをかけたことを特徴とする請求項1乃至7の内の1項記載の造波装置。
【請求項9】
造波水面場に対して配列した複数の造波板の個々の造波板の造る前記造波水面場における反射の影響を考慮した速度ポテンシャルを予め計算するステップと、この速度ポテンシャルを全ての前記複数の造波板について計算した結果をデータとしてデータベースに蓄えるステップと、造波条件を設定するステップと、この設定された造波条件に従って前記データベースから対応したデータを呼び出すステップと、前記造波条件と呼び出した前記データとに従って所定の演算式に基づいて演算を行うステップと、この演算結果である個々の造波板位置の時系列データを記憶するステップと、この時系列データに基づいて前記複数の造波板を駆動制御するステップとを備えたことを特徴とする造波方法。
【請求項10】
前記演算を行うステップ及び/あるいは前記駆動制御するステップは、実際の水面場において計測した波のスペクトルデータと前記造波条件を設定するステップの設定とに基づいて、前記所定の演算式に従った演算結果に前記スペクトルデータを適用して得られた適用結果に基づいて前記複数の造波板を制御したことを特徴とする請求項9記載の造波方法。
【請求項11】
前記速度ポテンシャルの計算に当たっては、波の向きと波の波長もしくは周期の一方と造波板の最大振幅とを指定し、個々の造波板について波と同じ周期で調和振動させたときの前記造波水面場全体の反射の影響も考慮した速度ポテンシャルを境界要素法に基づいて計算したことを特徴とする請求項9あるいは10記載の造波方法。
【請求項12】
前記演算を行うステップは、前記造波条件に対応する調和振動場とこの造波条件に対応した前記データベースのデータの絶対値に制限をつけた複素線形和で近似する、個々の造波板の振幅及び位相に関する連立方程式を解くことを特徴とする請求項11記載の造波方法。
【請求項13】
造波水面場に対して配列した複数の造波板の個々の造波板の造る前記造波水面場における反射の影響も考慮した時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを予め計算するステップと、全ての前記複数の造波板について時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを計算した結果を時系列データとしてデータベースに蓄えるステップと、時刻毎、位置毎の造波条件を設定するステップと、この設定された造波条件と該設定された造波条件に対応した前記データベースの時系列データとに基づき所定の演算式に従って演算を行うステップと、この演算手段の演算結果である造波板位置の時系列データを記憶するステップと、この時系列データに基づいて前記複数の造波板を駆動制御するステップとを備えたことを特徴とする造波方法。
【請求項14】
コンピュータを、
造波水面場に関する波の向きと波の波長もしくは周期の一方と造波板の最大振幅とを指定するステップと、
前記造波水面場に対して配列した複数の造波板の個々の造波板について波と同じ周期で調和振動させたときの反射の影響も考慮した速度ポテンシャルを前記造波水面場全体について境界要素法に基づいて計算するステップと、
前記計算した結果をデータベースに格納するステップとを備えて動作させた
ことを特徴とするプログラム。
【請求項15】
コンピュータを
造波条件設定手段で設定した造波条件を入力するステップと、
前記入力されたこの造波条件に従って造波水面場において反射の影響も考慮した複数の造波板の個々の造波板の造る速度ポテンシャルを予め計算し全ての複数の造波板についてその結果を蓄えた速度ポテンシャルデータベースから対応するデータを呼び出すステップと、
前記入力された前記造波条件と呼び出された前記データとに基づき所定の演算式に従って演算を行うステップと、
この演算結果を個々の造波板の時系列データとして記憶するステップと、
この時系列データに基づき前記複数の造波板を駆動する駆動手段の駆動条件として出力するステップとを備えて動作させた
ことを特徴とする造波プログラム。
【請求項16】
コンピュータを、
造波条件設定手段で設定した時刻毎、位置毎の造波条件を入力させるステップと、
前記入力されたこの造波条件に対応した造波水面場に対して配列した複数の造波板の個々の造波板の造る前記造波水面場における反射の影響も考慮した時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを予め計算するステップと、
全ての前記複数の造波板についての前記時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを速度ポテンシャル時系列データベースに格納するステップとを備えて動作させた
ことを特徴とするプログラム。
【請求項17】
コンピュータを
造波条件設定手段で設定した時刻毎、位置毎の造波条件を入力するステップと、
前記入力されたこの造波条件に対応した造波水面場に対して配列した複数の造波板の個々の造波板の造る前記造波水面場における反射の影響も考慮した時刻毎、位置毎の速度ポテンシャルを予め計算し全ての前記複数の造波板について蓄えた速度ポテンシャル時系列データベースから呼び出すステップと、
前記造波条件設定手段で設定した造波条件と呼び出された前記速度ポテンシャルの時系列データとに基づき所定の演算式に従って演算を行うステップと、
この演算ステップの演算結果の時系列データを記憶するステップと、
この演算結果の時系列データを呼び出すステップと、
この呼び出された演算結果の時系列データに従って前記複数の造波板を駆動する駆動手段の駆動条件として出力するステップとを備えて動作させた
ことを特徴とする造波プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−127659(P2010−127659A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300216(P2008−300216)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)
【Fターム(参考)】
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