説明

造粒コーティング種子およびその製造方法

【課題】生産性に優れ、機械播種に適した造粒コーティング種子及びその製造方法を提供すること。さらには均質なコーティング層を有し、発芽性能および発芽後の植生定着性に優れたコーティング種子及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】芯材としてコア基材を用い、その表面に種子及びコーティング材を付着させた構造の造粒コーティング種子。また、傾斜回転型パンを用いて、コア基材の表面に植物種子及びコーティング材からなるコーティング層を形成させ、造粒することを特徴とする造粒コーティング種子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、播種作業を省力化させ、かつ発芽種子の定着率向上に資する造粒コーティング種子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種子を利用する分野において播種作業を省力化し、少ない労働力で大規模な作業をするために造粒コーティング種子がますます重要となってきている。とりわけ、農業生産や造園などの分野において、低コストでしかも生産効率の高い植物栽培方法が求められ、造粒コーティング種子への期待が高まっている。造粒コーティング種子は、その植物種子表面がコーティング材で加工されたことにより、虫や鳥などによる食害を大きく軽減できるのみならず、気候変動や一時的な薬剤散布による薬害などから植物種子が保護され、その発芽率が高まることが知られている。
【0003】
コーティング材としては従来から様々なものが知られており、例えばシリカ、タルク、カオリナイト、珪藻土、炭酸カルシウム、鉄粉などの無機物の単体もしくはそれらの混合物が提案されている。これらの無機物は、デンプン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性結合材を水と共に用いることで種子表面にコーティングされる。また、種子に付着した病害菌による被害を防止する目的で、殺菌剤等をコーティング材に添加することもある。
【0004】
下記特許文献1乃至5に、従来型の造粒コーティング種子及びそれらの製造方法が開示されている。これらはいずれも種子を芯材として、その表面に様々なコーティング材を被覆するものである。
【0005】
植物種子は一般的には、傾斜回転型パンを用い、種子表面にコーティング材を付着する方法をとるが、種子形状が小さい場合には傾斜回転型パンの加工面上で転がりにくいことから、粒子同士の凝集やコーティングの偏りなどが発生し均質な造粒コーティング種子が得られにくいという問題がある。
コーティング層が均質でなく、凝集などにより凝集塊内部深くに取り込まれた種子は、過剰に厚くなったコーティング材により発芽が阻害される場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−192011号公報
【特許文献2】特開平05−015208号公報
【特許文献3】特開平11−004606号公報
【特許文献4】特開2005−097309号公報
【特許文献5】特開2005−192458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は生産性に優れ、均質なコーティング層を有し、適切な粒径を有していることで機械播種性にも優れ、かつ、発芽性能および発芽後の植生定着性に優れた造粒コーティング種子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決すべく、本発明者らは鋭意検討した結果、芯材となるコア基材を用いて、その表面に種子およびコーティング材を付着させる方法により、粒径が小さく傾斜回転型パンの加工面を転がりにくいような種子であっても、効率よくコーティング種子を製造できることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、以下に示すものである。
【0010】
第1の発明は、コア基材の周囲に植物種子を含有したコーティング層を有することを特徴とする造粒コーティング種子である。
【0011】
第2の発明は、
前記コア基材が、
粒状培土、粒状赤土、鹿沼土及びパーライトからなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする第1の発明に記載の造粒コーティング種子である。
【0012】
第3の発明は、
前記コーティング層が、
シリカ、珪藻土、フェライト、炭酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、パリゴルスカイト及びバーミキュライトからなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする第1又は第2の発明に記載の造粒コーティング種子である。
【0013】
第4の発明は、
前記コア基材の粒子径が1.5〜20mmであることを特徴とする第1〜第3の発明のいずれかに記載の造粒コーティング種子である。
【0014】
第5の発明は、コア基材の表面に植物種子及びコーティング材を含有するコーティング層を被覆形成する工程を包含することを特徴とする造粒コーティング種子の製造方法である。
【0015】
第6の発明は、
コア基材を傾斜回転型パンに投入し、次いで、植物種子及びコーティング材を投入して前記コア基材表面に植物種子及びコーティング材を含有するコーティング層を被覆形成し、造粒する工程を包含することを特徴とする第5の発明に記載の造粒コーティング種子の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は芯材となるコア基材を用いて、その表面に種子及びコーティング材を付着させる方法により効率良くコーティング種子を製造することが可能となった。
また、本発明によれば、種子の形状や大小に左右されることなく、コア基材を適切に選定することにより、播種性に優れたコーティング種子を得ることができる。
さらに、本発明によれば、コア基材を目的に応じて選定することができ、肥料材料などと組み合わせることで、発芽後の植物生長を助け、植物定着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の造粒コーティング種子の内部構造を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
従来、植物種子の造粒コーティング種子を製造する場合には、一般的には傾斜回転型パンを用いて傾斜した加工面を造粒対象種子が転がり落ちる動きを利用して、種子表面を濡らした後に/または濡らしながらコーティング材を振り掛ける操作を繰り返し行い、目的とする造粒コーティング種子を得ている。ここで、造粒対象種子が球形に近く直径1.5mm以上であれば該加工面を転がりやすく、コーティング層形成がしやすいものとなるが、種子が細長くなり(アスペクト比が大きくなり)、しかも種子が小さい場合などには粒子同士が凝集した形態でコーティング工程が進行することにより、不均一な凝集塊が生じやすくなる。
本発明はこのような問題点に鑑み、加工面を転がりやすい粒子をコア基材として用いれば、該コア基材が転がり落ちる動きのなかで該対象種子をその表面に付着することが可能となり、コーティング材を加えた場合でも種子同士の凝集に基づく凝集塊の生成は起りにくくなるとの考えから、本発明の造粒コーティング種子及びその製造方法を見出した。
【0019】
このようにコア基材の表面に対象種子とコーティング材を被覆した形態であれば、種子の表面に被覆するコーティング層は適切な厚さに制御することが可能であり、コーティング種子内部深くに埋没して有効に使用されない種子を無くすことができる。
さらに、このようにして得られたコーティング種子は、コア基材を適切に選定することにより機械播種しやすい粒径である2〜30mmにすることが可能になり、播種性に優れたコーティング種子を得ることができる。
また、このようにして得られるコーティング種子は、コア基材を目的に応じて選定することができ、肥料などと組み合わせることで、発芽後の植物成長を助け、定着性を向上させることができる。
【0020】
〔コア基材〕
本発明の造粒コーティング種子において、芯材として用いるコア基材としては、平均粒径が1.5mm〜20mm程度の球形粒子が好ましいが、回転パンの加工面を転がり易い形状のものであればとくに制限を受けず、球形に近いものの方がその表面に均質にコーティングしやすい。
無機材料、有機材料、天然素材、人工素材等とくに制限無く使用することができるが、無機材料を主要成分とするのが好ましく、窒素、リン、カリウムなどの化成肥料成分を含んでも良く、吸水性樹脂などの保水性材料を含んでも良い。
具体的には、例えば、市販の粒状培土、粒状赤土、鹿沼土、パーライトなどが好適に利用できる。
【0021】
〔植物種子〕
本発明の造粒コーティング種子に用いる種子としては特に制限されず、下記の野菜種子、芝種子を例示することができる。
野菜種子・・・ダイコン、ハクサイ、カブ、キャベツなどのアブラナ科、エダマメ、シロクローバ、アカクローバ、ヘアリーベッチ、アルファルファ、クリムソンクローバ、バーズフットトレホイル、レンゲなどのマメ科、キク科、ニンジン、アスパラガス、等が挙げられる。
芝種子・・・トールフェスク、チューイングフェスクなどのフェスク類、ペレニアルライグラスなどのライグラス類、バミューダグラス類、センチピートグラス類、ノシバ類、ベントグラス類、ブルーグラス類、その他カーペットグラス、バヒアグラス、ローズグラス、ウウィーピングラブグラス、ダイカンドラ等が挙げられる。
本発明は特に、種子の粒径の小さいものや、回転パンの加工面を転がりにくい形状の種子を造粒対象種子とすることで、大きな効果を発揮させることができる。
【0022】
〔コーティング材〕
特に制限されないが、下記の無機材料、有機材料を例示することができる。
無機材料・・・シリカ、珪藻土、フェライト、炭酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、パリゴルスカイト、バーミキュライト等が挙げられる。
有機材料・・・カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、リグニン、等の水溶性樹脂を好適に用いることができる。
【0023】
〔製造工程〕
本発明のコーティング種子を形成する方法としては、傾斜回転型パンを用い、加工面に上記コア基材を投入し、該コア基材が転がり落ちる動きを利用しながら、霧吹きなどを利用して水をスプレーすることにより表面を濡らし、次いで造粒対象種子及びコーティング材を振り掛ける操作を繰り返し行うことで、目的とする造粒コーティング種子を得ることができる。ここで、用いるコア基材が平均粒径1.5mm以上の球形であれば該加工面を転がりやすく、コーティングもしやすいものとなるが、該コア基材同士が絡みやすい線状、あるいは三角錐形に近い粒子では、粒子が転がりにくいことにより凝集塊を形成しやすくなる。
【0024】
本発明の造粒コーティング種子製造の好ましい態様としては、まず、コア基材を50〜20000重量部、コーティング材を50〜20000重量部、植物種子を1〜1000重量部準備し、該コア基材に被覆処理する。
【0025】
上記の工程にて得られる造粒コーティング加工された種子を、乾燥することにより本発明の造粒コーティング種子が得られる。
【実施例】
【0026】
実施例1
市販の日本肥料社製粒状園芸培土(粒径0.5〜3mm、平均粒径2mm)をコア基材として用い、その表面にベントグラスの種子(1g当たり約6000粒)およびホウジュン社製ベントナイト(穂高)をコーティングした。まず傾斜回転型パン(直径1000mm)を起動させたところに上記園芸培土1000gを計り取り、流動させながら霧吹きで水分を補給し、そこにベントグラスの種子700mgを均一にまぶすようにふりかけ、1分間そのまま流動させた後にさらに霧吹きで水分を補給し、ここにベントナイト500gを均一にいきわたるようふりかけ、10分間そのまま流動させた。得られたコーティング種子を30℃の乾燥室内で乾燥させることで目的とするコーティング種子を得た。
【0027】
実施例2
市販の日本肥料社製粒状園芸培土(粒径0.5〜3mm、平均粒径2mm)をコア基材として用い、その表面にノシバの種子(1g当たり約1500粒)およびホウジュン社製ベントナイト(穂高)をコーティングした。まず回転パン(直径1000mm)を起動させたところに上記園芸培土1000gを計り取り、流動させながら霧吹きで水分を補給し、そこにノシバの種子2500mgを均一にまぶすようにふりかけ、1分間そのまま流動させた後にさらに霧吹きで水分を補給し、ここにベントナイト500gを均一にいきわたるようふりかけ、10分間そのまま流動させた。得られたコーティング種子を30℃の乾燥室内で乾燥させることで目的とするコーティング種子を得た。
【0028】
実施例3
市販の日本肥料社製粒状園芸培土(粒径0.5〜3mm、平均粒径2mm)をコア基材として用い、その表面にバミューダグラスの種子(1g当たり約2200粒)およびホウジュン社製ベントナイト(穂高)をコーティングした。まず回転パン(直径1000mm)を起動させたところに上記園芸培土1000gを計り取り、流動させながら霧吹きで水分を補給し、そこにバミューダグラスの種子1700mgを均一にまぶすようにふりかけ、1分間そのまま流動させた後にさらに霧吹きで水分を補給し、ここにベントナイト500gを均一にいきわたるようふりかけ、10分間そのまま流動させた。得られたコーティング種子を30℃の乾燥室内で乾燥させることで目的とするコーティング種子を得た。
【0029】
比較例1
回転パン(直径1000mm)を起動させたところにバミューダグラスの種子200gを計り取り、流動させながら霧吹きで水分を補給しながら、ここにベントナイト500gを均一にいきわたるように徐々にふりかけ、コーティング種子形成を試みた。しかし、バミューダグラスの種子は径1mm以下の微細な形状であるため、回転パンの加工面を分散しながら流動することができないために直径5mm〜20mm程度の不均一塊が形成された、これら凝集塊にはバミューダグラスの種子が平均的には50個以上含まれ、「播種性に優れる」という本来の目的に沿うものではなかった。
【0030】
比較例2
回転パン(直径1000mm)を起動させたところにベントグラスの種子200gを計り取り、流動させながら霧吹きで水分を補給しながら、ここにベントナイト500gを均一にいきわたるように徐々にふりかけ、コーティング種子形成を試みた。しかし、ベントグラスの種子は径1mm以下の微細な形状であるため、回転パンの加工面を分散しながら流動することができないために直径5mm〜20mm程度の不均一塊が形成された、これら凝集塊にはベントグラスの種子が平均的には50個以上含まれ、「播種性に優れる」という本来の目的に沿うものではなかった。
【符号の説明】
【0031】
1 コア基材
2 植物種子
3 コーティング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア基材の周囲に植物種子を含有したコーティング層を有することを特徴とする造粒コーティング種子。
【請求項2】
前記コア基材が、
粒状培土、粒状赤土、鹿沼土及びパーライトからなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の造粒コーティング種子。
【請求項3】
前記コーティング層が、
シリカ、珪藻土、フェライト、炭酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、パリゴルスカイト及びバーミキュライトからなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の造粒コーティング種子。
【請求項4】
前記コア基材の粒子径が1.5〜20mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の造粒コーティング種子。
【請求項5】
コア基材の表面に植物種子及びコーティング材を含有するコーティング層を被覆形成する工程を包含することを特徴とする造粒コーティング種子の製造方法。
【請求項6】
コア基材を傾斜回転型パンに投入し、次いで、植物種子及びコーティング材を投入して前記コア基材表面に植物種子及びコーティング材を含有するコーティング層を被覆形成し造粒する工程を包含することを特徴とする請求項5に記載の造粒コーティング種子の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−90544(P2012−90544A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239158(P2010−239158)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)
【Fターム(参考)】