説明

連続ショットブラスト装置

【課題】大径な被研掃物であっても短時間で効率良く周囲全面が均等に研掃されるよう、自動的に転動させながら研掃することができるとともに、被研掃物の投入・研掃・排出を連続して行うことができる連続ショットブラスト装置を提供する。
【解決手段】無端環状ベルト1をプーリー2、3、4に巻き掛けてプーリー2、3間に凹溝状のトラフ5を形成し、該トラフに入れた被研掃物Wを無端環状ベルトの回動により転動させながら研掃材を投射するショットブラスト装置において、無端環状ベルト表面に突条のガイドリブ8を螺旋状に周回させて形成し、周回動する無端環状ベルトによりトラフ中で転動する被研掃物をガイドリブが押動付勢して排出方向に送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被研掃物を転動し移動させながら研掃材を投射して、被研掃物の周囲全面を効率良く均等に研掃することができる連続ショットブラスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被研掃物の周囲全面に研掃材を投射して均等に、かつ連続的に研掃されるよう、被研掃物を自動的に転動させる技術としては、長鋼材をスリットを設けて円筒状ケージに構成するとともに、被研掃物を搬送するために内部に螺旋状の搬送部材を設け、円筒状ケージの外側から研掃材を投射するショットブラスト装置が存在する(特許文献1参照)。これは、筒内に入れた多数の小径な被研掃物を転動させながら投射機により研掃材を投射し、被研掃物を連続的に研掃することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−343430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のショットブラスト装置は、被研掃物を連続して搬送しながら研掃することはできるものの、投射機から投射される研掃材は円筒状ケージのスリットを通り抜けて被研掃物に到達する構造であることから、スリットを通り抜けずに長鋼材に衝突して周囲に飛散する研掃材もある程度発生していた。長鋼材を薄くすれば研掃材の通過率は向上するものの、薄い鋼材は研掃材の衝突によって損傷が進みやすいという二律背反の課題があった。
そこで、投射機と被研掃物との間に研掃材の投射を阻害するものを存在させることなく、被研掃物を連続して投入・研掃・排出することができる連続ショットブラスト装置の実現が待たれた。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みて為されたものであって、その目的は、大径な被研掃物であっても短時間で効率良く周囲全面が均等に研掃されるよう、自動的に転動させながら研掃することができるとともに、投射機と被研掃物との間に研掃材の投射を阻害するものを存在させることなく、被研掃物の投入・研掃・排出を連続して行うことができる連続ショットブラスト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の連続ショットブラスト装置は、無端環状ベルトを複数のプーリーに巻き掛けて該プーリー間に凹溝状のトラフを形成し、該トラフに入れた被研掃物を前記無端環状ベルトの回動により転動させながら研掃材を投射するショットブラスト装置において、無端環状ベルト表面に突条のガイドリブを螺旋状に周回させて形成し、周回動する無端環状ベルトによりトラフ中で転動する被研掃物を前記ガイドリブが押動付勢して排出方向に送ることを特徴とする。
このような構成とすることにより、大径な被研掃物であっても短時間で効率良く周囲全面が均等に研掃されるよう、自動的に転動させながら研掃することができるとともに、投射機と被研掃物との間に研掃材の投射を阻害するものを存在させることなく、被研掃物の投入・研掃・排出を連続して行うことが可能となる。
【0007】
また、ガイドリブは、台形状のリブを直線状に連設して形成され、プーリーに巻き掛けられた状態では隣接するリブ間の隙間が開き、トラフ中では隣接するリブ間の隙間がない密接した状態となることを特徴とする。
【0008】
また、無端環状ベルトを複数のプーリーに巻き掛けて該プーリー間に凹溝状のトラフを形成し、該トラフに入れた被研掃物を前記無端環状ベルトの回動により転動させながら研掃材を投射するショットブラスト装置において、中心軸が存在しないリボン状スクリュー羽根からなる螺旋体をトラフ中に載置し、周回動する無端環状ベルトによりトラフ中で転動する被研掃物を、前記無端環状ベルトと同期して回動する前記螺旋体の羽根が押動付勢して排出方向に送ることを特徴とする。
このような構成とすることにより、被研掃物を転動させながら研掃材を投射するとともに、研掃済みの被研掃物をトラフから自動的に送り出すことが可能となり、研掃処理工程の連続処理が可能となる。無端環状ベルトを簡素な構造とすることができる。
【0009】
また、トラフの一方の開口端に被研掃物を投入する投入筒、トラフの他方の開口端に被研掃物を導入して排出する排出筒をそれぞれ配設し、該投入筒及び排出筒を無端環状ベルトと同じ周回動速度で回動させることを特徴とする。
このような構成とすることにより、トラフの形態はこれに接する投入筒及び排出筒により固定的に安定保持されるとともに、投入筒からの被研掃物の投入及び排出筒への被研掃物の排出がスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態の連続ショットブラスト装置を正面から見た説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の連続ショットブラスト装置を側面から見た説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の連続ショットブラスト装置を上方から見た説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の連続ショットブラスト装置における螺旋体の説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の連続ショットブラスト装置を側面から見た説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の連続ショットブラスト装置を上方から見た説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る連続ショットブラスト装置を実施するための形態を詳細に説明する。図1〜図6は、本発明の実施の形態を例示する図であり、これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。
【0012】
<第1の実施例>
<構成>
図1〜図3は、本発明の連続ショットブラスト装置の第1の実施形態を表している。
図1に示すように、可撓性を有する幅広のゴムベルト等からなる無端環状ベルト1が、3つのプーリー2、3、4(少なくとも何れか一つが回転駆動手段)に巻き掛けられている。そして、無端環状ベルト1は、上方の2つのプーリー2、3の間で垂れ下がって、そこに凹溝状のトラフ5が形成される。
【0013】
図2及び図3に示すように、トラフ5の両端には被研掃物Wをトラフ5に投入する投入筒6と、被研掃物Wをトラフ5から排出する排出筒7が、トラフ5の中心線と同心に設置されるとともに、投入筒6と排出筒7は無端環状ベルト1の周回動速度と同期して回転している。
無端環状ベルト1の表面には、幅20mm、高さ50mm程度のガイドリブ8を螺旋状(本実施例では二重螺旋)に突設している。このガイドリブ8は、比較的大径な被研掃物Wを1個ずつ単独に研掃させるためにトラフ5を縦方向に仕切る作用と、トラフ5中の被研掃物Wを投入筒6から排出筒7に向かって押動付勢して搬送する作用を有している。また、ガイドリブ8は、投射された研掃材が周囲に飛散することを防止する作用も発揮する。
ガイドリブ8は、個々が台形状であるリブを直線状に多数連設して形成されており、プーリー2、3、4に巻き掛けられた状態では、図1に示すように、隣接するリブ間のV字状の隙間が開き、トラフ5中では隣接するリブ間の隙間がない密接した状態となっている。この状態で、ガイドリブ8の凹形状が安定的に維持されてトラフ5は半円弧状を安定的に保持することができる。V字状の隙間の角度は、設定されるトラフ5の曲率に依存し、V字状の隙間の角度が小さいほどトラフ5の直径は大きくなる。
【0014】
<動作>
被研掃物Wは、投入筒6を通じてトラフ5に投入され、無端環状ベルト1上に仕切り状に形成されたガイドリブ8間に1個ずつ入れられ、周回動する無端環状ベルト1により転動しつつ、螺旋状のガイドリブ8に押動付勢されて排出筒7方向に移動しながら、トラフ5の上方に位置する研掃材投射機9から研掃材を満遍なく投射される。研掃された被研掃物Wは、ガイドリブ8に押動付勢されて排出筒7に入り、次工程へと搬送される。
そして、トラフ5中の被研掃物Wが、投入筒6の先端から移動してその後方がガイドリブ8で仕切られるタイミングで、次の被研掃物Wが投入筒6からトラフ中5に投入される。
なお、研掃材投射機9からトラフ5に投射された研掃材は、無端環状ベルト1に小さな孔を数多く穿設する等の手段によりベルトの下方に落下させて回収する。
このように、研掃材投射機9と被研掃物Wとの間に、研掃材をはね返してしまう阻害物が存在しないことから、効率良く被研掃物Wを研掃することができ、さらに比較的大きな被研掃物を確実に転動させながら、人手を要することなく自動で投入・研掃・排出の工程を処理することができる。
【0015】
<第2の実施例>
<構成>
図4〜図6は、本発明の連続ショットブラスト装置の第2の実施形態を表している。
本実施形態の連続ショットブラスト装置にあっては、上述した第1の実施形態における螺旋状のガイドリブの代わりに、図4に示すように、中心軸が存在しないリボン状スクリュー羽根からなる螺旋体11をトラフ5中に配置する。
螺旋体11は、剛性を有する鉄等からなり、その形状としては、一例として直径がトラフ5の内径に合わせて約300mm、羽根11aの幅径が約50mm、螺旋のピッチは被研掃部材の大きさに応じて適宜に設定することとする。
そして、図5に示すように、螺旋体11はその外周をトラフ5中に隙間なく密接して位置し、無端環状ベルト1と同期して回転する。螺旋体11は、その外周を無端環状ベルト1と接することにより受動的に回転するか、若しくは投入筒6及び/又は排出筒7の先端に接続して一体的に回転することとする。
【0016】
<動作>
被研掃物Wは、投入筒6を通じてトラフ5に投入され、螺旋体11の谷部に収まる。周回動する無端環状ベルト1により転動しつつ、螺旋体11に押動付勢されて排出筒7方向に移動しながら、トラフ5の上方に位置する研掃材投射機9から研掃材を満遍なく投射される。研掃された被研掃物Wは、螺旋体11に押動付勢されて排出筒7に入り、次工程へと搬送される。
そして、トラフ5中の被研掃物Wが、投入筒6の先端から移動してその後方が螺旋体11で仕切られるタイミングで、次の被研掃物Wが投入筒6からトラフ中5に投入される。
このように、研掃材投射機9と被研掃物Wとの間に、研掃材をはね返してしまう阻害物が存在しないことから、効率良く被研掃物Wを研掃することができ、さらに比較的大きな被研掃物を確実に転動させながら、人手を要することなく自動で投入・研掃・排出の工程を処理することができる。
上述した第1の実施形態及び第2の実施形態における被研掃物の搬送速度は、無端環状ベルトの周回動速度と、ガイドリブの傾斜角度、螺旋体における螺旋のピッチ等で決定されるが、これらは被研掃物の研掃時間に応じて適宜設定することとする。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の連続ショットブラスト装置は、金属等のワークを研掃する加工産業において利用することができるものである。
【符号の説明】
【0018】
1…無端環状ベルト
2、3、4…プーリー
5…トラフ
6…投入筒
7…排出筒
8…ガイドリブ
9…研掃材投射機
11…螺旋体
W…被研掃物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端環状ベルトを複数のプーリーに巻き掛けて該プーリー間に凹溝状のトラフを形成し、該トラフに入れた被研掃物を前記無端環状ベルトの回動により転動させながら研掃材を投射するショットブラスト装置において、
無端環状ベルト表面に突条のガイドリブを螺旋状に周回させて形成し、周回動する無端環状ベルトによりトラフ中で転動する被研掃物を前記ガイドリブが押動付勢して排出方向に送ることを特徴とする連続ショットブラスト装置。
【請求項2】
ガイドリブは、台形状のリブを直線状に連設して形成され、プーリーに巻き掛けられた状態では隣接するリブ間の隙間が開き、トラフ中では隣接するリブ間の隙間がない密接した状態となることを特徴とする請求項1記載の連続ショットブラスト装置。
【請求項3】
無端環状ベルトを複数のプーリーに巻き掛けて該プーリー間に凹溝状のトラフを形成し、該トラフに入れた被研掃物を前記無端環状ベルトの回動により転動させながら研掃材を投射するショットブラスト装置において、
中心軸が存在しないリボン状スクリュー羽根からなる螺旋体をトラフ中に載置し、周回動する無端環状ベルトによりトラフ中で転動する被研掃物を、前記無端環状ベルトと同期して回動する前記螺旋体の羽根が押動付勢して排出方向に送ることを特徴とする連続ショットブラスト装置。
【請求項4】
トラフの一方の開口端に被研掃物を投入する投入筒、トラフの他方の開口端に被研掃物を導入して排出する排出筒をそれぞれ配設し、該投入筒及び排出筒を無端環状ベルトと同じ周回動速度で回動させることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の連続ショットブラスト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−31891(P2013−31891A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168246(P2011−168246)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(592148155)株式会社サンポー (14)