説明

連続多段抽出デバイス及び連続抽出方法

【課題】多段抽出を、試料溶液と抽出液とを連続的に流すだけで実施でき、機構が単純で安価に製造でき、さらにマイクロ流体デバイスに組み込み可能な連続多段抽出デバイスの提供。
【解決手段】デバイスに、第1抽出液導入口から導入された第1抽出液を第1抽出液取出口に向けて流す第1流路と、第2抽出液導入口から導入された第2抽出液を第2抽出液取出口に向けて流す第2流路とが設けられ、これらの流路の途中に、前記第1抽出液と第2抽出液とが流路境界面を境として層状に液−液接触する抽出流路が液流れ方向に沿って多段に配置されていることを特徴とする連続多段抽出デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な抽出流路内に、相互に混和しない2種類の液体を互いに層状に液−液接触させつつ、あるいは、抽出物質透過性の隔膜を介して液−液接触させつつ、抽出を行わせる連続多段抽出デバイスに関する。
【0002】
本発明の連続多段抽出デバイスは、化学工業、製薬工業、食品工業などにおける液−液抽出用デバイス;合成化学、生化学などの分野における、液体−液体間の物質移動を伴う微小合成デバイス;集積型DNA分析,微小電気泳動,微小クロマトグラフィーなどの微小分析デバイスと組み合わせる試料調製用デバイス;質量スペクトルや液体クロマトグラフィーなどの分析試料調製用デバイスなどとして使用できる。
【背景技術】
【0003】
非特許文献1には、1本のマイクロチャンネル内での酢酸エチル/水(アルカリ性緩衝溶液)系における安息香酸と安息香酸メチルの液−液抽出分離について報告されている。
【0004】
非特許文献2には、分液ロートを用いた向流多段抽出の原理が述べられている。
【0005】
また、本発明者等による特許文献1には、毛細管状流路の内面が、低接触角部分と高接触角部分を有し、かつ、低接触角部分と高接触角部分がそれぞれ流路の上流端から下流端にわたって途切れずに連続している微小ケミカルデバイスが開示されている。
【0006】
さらに、本発明者等による特許文献2には、流体に溶解している試料を濃縮したり、流体に溶解している2以上の物質を互いに分離するデバイスとして、抽出では無く、1種類の試料流体を流通させる分離用流路と、分離用流路の下流端に形成された第1流出口及び第2流出口と、分離用流路の第1流出口側の壁面の一部に設けられた、分離すべき物質を選択的に保持できる第1保持部とを有するデバイスと、このような分離用流路が、複数段にわたって接続されたデバイスが開示されている。
【非特許文献1】第5回化学とマイクロシステム研究会予稿集, 19 (2002).
【非特許文献2】井上博夫、上原 赫、南後 守共著「有機化合物分離法」、裳華房 (1990).
【特許文献1】特開2001−137613号公報
【特許文献2】特開2006−43696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した従来技術には、次のような問題があった。
非特許文献1に示されているように、抽出により分離しようとする2物質の各分配比の比が大きい場合には、1段の抽出により分離可能であろうが、分離しようとする物質の抽出率の比は、多くの場合それほど大きくなく、1回の抽出では十分に分離できないことが多い。
【0008】
このような場合、非特許文献2に示されたような向流型多段抽出により分離能を向上させることができるが、該文献に記載されているような回分式抽出では、抽出操作を繰り返して多段抽出するのに多大な労力と時間を要していた。また、この向流多段抽出を連続装置化すると、多数のバルブやポンプや撹拌装置を使用する複雑で大がかりな装置となってしまう。また、マイクロリアクタで合成される微少量の生成物を抽出で分離精製する用途には、従来の抽出装置や方法は、取り扱う試料の量が微少すぎて使用できなかった。
【0009】
また、特許文献1には、水と疎水性溶媒を互いに層状に接触させて安定して流すことのできる連続抽出デバイスが示されているが、多段抽出に関しては記載が無く、多段化する際の各抽出液に関する各抽出用流路間の接続や、抽出液の導入・排出に関するデバイス構造については何の示唆もされていない。
【0010】
一方、特許文献2に開示されている多段式の分離デバイスは、吸着(及びそれに類似の親和性を利用する方式)による分離であり、デバイスに流す流体は試料溶液のみであり、抽出液の導入口も流出口も有しない。従って、試料溶液と抽出液をそれぞれ複数の分離用流路に流す方式や構造について何の記載もない。さらに、開示されている多段分離デバイスの構造は、5〜7層の積層構造を必要とするため、各層を正確に位置あわせして積層する必要があり、製造に多くの工程と精度を要する物であった。
【0011】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、抽出率の差が小さい場合でも、1段抽出に比べて高い濃度比で分離可能な向流型多段抽出を、試料溶液と抽出液とを連続的に流すだけで実施でき、多数のバルブやポンプや撹拌装置を用いることなく、機構が単純で安価に製造でき、さらにマイクロ流体デバイスに組み込めるような微小な連続多段抽出デバイスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明は、デバイスに、第1抽出液導入口から導入された第1抽出液を第1抽出液取出口に向けて流す第1流路と、第2抽出液導入口から導入された第2抽出液を第2抽出液取出口に向けて流す第2流路とが設けられ、これらの流路の途中に、前記第1抽出液と第2抽出液とが流路境界面を境として層状に液−液接触する抽出流路が液流れ方向に沿って多段に配置されていることを特徴とする連続多段抽出デバイスを提供する。
【0013】
また本発明は、本発明に係る前記連続多段抽出デバイスを使用し、前記最上流段の抽出流路に接続された第1抽出液導入口の一つを試料導入口とし、該試料導入口に第1抽出液を溶媒とする試料溶液を連続的に導入し、及び/又は、前記最上流段の抽出流路に接続された前記第2抽出液導入口の一つを試料導入口とし、該試料導入口に第2抽出液を溶媒とする試料溶液を連続的に導入し、その他の前記第1抽出液導入口に第1抽出液を導入するとともに、その他の前記第2抽出液導入口に第2抽出液を導入し、前記抽出流路において前記第1抽出液と前記第2抽出液に分配された前記試料を次段のそれぞれ異なる抽出流路に導入し、該第1抽出液は他の第2抽出液導入口に導入された、該第1抽出液より抽出回数の少ない第2抽出液と接触させ、該第2抽出液は他の第1抽出液導入口に導入された、該第2抽出液より抽出回数の少ない第1抽出液と接触させ、これを繰り返すことにより、前記最下流段の、前記試料の分配比に応じた番目の前記第1抽出液取出口及び/又は第2抽出液取出口から連続的に取り出すことを特徴とする向流型の連続抽出方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の連続多段抽出デバイスは、抽出率の差が小さい場合でも、1段抽出に比べて高い濃度比で分離可能な多段抽出を、試料溶液と抽出液とを連続的に流すだけで実施することができる。
また本発明の連続多段抽出デバイスは、多数のバルブやポンプや撹拌装置を用いることなく、機構が単純で安価に製造できる。
さらに本発明の連続多段抽出デバイスは、マイクロ流体デバイスに組み込めるような微小なサイズとすることができ、多くの分野における新規の抽出デバイスとして適用することができる。
【0015】
本発明の連続抽出方法は、本発明に係る前記連続多段抽出デバイスを使用することによって、分配比の差が小さい場合でも、1段抽出に比べて高い濃度比で分離する抽出を簡単に行うことができ、分配比が互いに異なる3以上の物質を抽出分離することができる。
また本発明の連続抽出方法は、多数のバルブやポンプや撹拌装置を用いることなく、抽出にかかる設備コスト及びランニングコストを低減できる。
さらに本発明の連続抽出方法は、本発明に係る前記連続多段抽出デバイスを使用することによって、マイクロ流体デバイスに組み込めるような微小なサイズでの抽出にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の連続抽出デバイスの一実施形態を説明する。図6〜図8は、本発明の連続抽出デバイスの好ましい実施形態を示す図である。
【0017】
[部材構造]
第1部材(1)、第2部材(2)は、いずれもアクリル系重合体で形成され、第1部材の表面には第1流路となる複数の溝、第2部材の表面には、第2流路となる複数の溝(これらの溝は図6,図7、及び図8中、塗りつぶし部分として示されている)を有する。
前記第1部材(1)の各溝(第1流路側ユニット)は、ジグザグの形状とされ、同じ構造の溝が複数本(図6の例では5本)平行に形成されている。該ジグザグの形状は、第1部材(1)の長さ方向に平行な5つの直線部分と、それに対して約45度の角度を持った直線部分が交互に形成されており、前記第1部材(1)の長さ方向に平行な直線部分の一部は抽出流路となる溝部分(3a)とされ、前記第1部材(1)の長さ方向に平行な直線部分の残りと、前記約45度の角度を持った直線部分は連絡流路となる溝部分(6a)とされている。
【0018】
第2部材(2)の溝(第2流路側ユニット)の形状は前記第1部材(1)の溝と全く同じである。但し、これは、第1部材(1)の溝形成面と第2部材(2)の溝形成面を、それぞれ溝形成面側から見た場合であって、図1のように溝形成面同士を合わせるように積層し、第2部材(2)側から見た図6や図8では、第1部材(1)の溝の形状と第2部材(2)の溝の形状は対称(鏡像)となる。
【0019】
第1部材(1)と第2部材(2)が積層されるとき、第1部材(1)の抽出流路となる溝部分(3a)(図7中、濃い塗りつぶし部分として示されている)は、第2部材(2)の抽出流路(3)となる溝部分(3b)(図8中、濃い塗りつぶし部分として示されている)と一致する位置及び角度で合わされて抽出流路(3)(図6中、濃い塗りつぶし部分として示されている)が形成される。第1部材(1)と第2部材(2)が積層された状態では、それぞれの溝形成面側の表面が密着して流路境界面Sとなる。
【0020】
また、第1部材(1)の連絡流路となる溝部分(6a)(図7中、薄い塗りつぶし部分として示されている)は、第2部材(2)の抽出流路となる溝部分(3b)以外の第2部材(2)表面と合わされて第1部材側連絡流路(6a)(図6中、薄い塗りつぶし部分として示されている)が形成され、第2部材(2)の連絡流路となる溝部分(3b)(図8中、中濃度の塗りつぶし部分として示されている)は、第1部材(1)の抽出流路となる溝部分(3a)以外の第1部材(1)表面と合わされて第2部材側連絡流路(6b)(図6中、中濃度の塗りつぶし部分として示されている)が形成されている。
【0021】
そして、前記各抽出流路(3)の上流端の第1部材(1)側の部分が第1部材側流入口(4a)とされ、該上流端の第2部材(2)側の部分が第2部材側流入口(4b)とされている。また、前記各抽出流路(3)の下流端の第1部材(1)側の部分が第1部材側流出口(5a)とされ、該下流端の第2部材(2)側の部分が第2部材側流出口(5b)とされている。
【0022】
[多段接続構造]
図6の実施形態において、一般に本連続多段抽出デバイスがZ段(但し、Zは2〜10000の任意の整数。図6の実施形態はZ=5の場合である。)である場合について説明する。前記第1部材(1)の溝(第1流路側ユニット)、及び前記第2部材(2)の溝(第2流路側ユニット)は、それぞれZ本が並列に設けられており、第1部材(1)の各溝には、それぞれ第1部材(1)の長さ方向に平行なZ個の溝部分とそれに対して角度を持った溝部分が交互に設けられ、また、第2部材(2)の各溝には、それぞれ第2部材(2)の長さ方向に平行なZ個の溝部分とそれに対して角度を持った溝部分が交互に設けられている。
【0023】
第1部材(1)の溝に、第1部材(1)の溝形成面と第2部材(2)の溝形成面をそれぞれ溝形成面側から見た場合に、いずれも左から右方向に増える向きに1番からZ番まで番号を付けると(但し、図6は、第2部材(2)を溝形成面の裏側から見た図となるため、第2部材(2)の溝の順番は、右から左方向に増える向きとなる)、第1部材(1)の端(図6中、左端)から1番目の溝は、第2部材(2)の端(図6中、右端)から1番目の溝と1箇所で重なって、該重なり部分が前記第1段1番の抽出流路(3)を形成し、前記第2部材(2)の端から2番目の溝と1箇所で重なって前記第2段1番の抽出流路(3)を形成し、前記第2部材(2)の端からk番目(但し、kは1〜Zの任意の整数)の溝と1箇所で重なって前記第k段1番の抽出流路(3)を形成している。
【0024】
そして、第1部材(1)の端(図6中、左端)から2番目の溝は、第2部材(2)の溝の端(図6中、右端)から1番目の溝と1箇所で重なって、該重なり部分が第2段2番の抽出流路(3)を形成し、第2部材(2)の端から2番目の溝と1箇所で重なって第3段2番の抽出流路(3)を形成し、第2部材(2)の端からk番目の溝と1箇所で重なって前記第(k+1)段2番の抽出流路(3)を形成する。但しこの第1部材(1)の端から2番目の溝は、前記第2部材(2)の端から前記Z番目(図6中、左端)の溝とは重ならない。
【0025】
さらに、第1部材(1)の端(図6中、左端)からj番目(但し、jは1〜Zの任意の整数)の溝は、第2部材(2)の端(図6中右端)から1番目の溝と1箇所で重なって、該重なり部分が第j段j番の抽出流路(3)を形成し、第2部材(2)の端から2番目の溝と1箇所で重なって第(j+1)段j番の抽出流路(3)を形成し、第2部材(2)の端からk番目の溝と1箇所で重なって第(j+k−1)段j番の抽出流路(3)を形成する。但し、この第2部材(2)の端からj番目の溝は、第2部材(2)の端から(Z−j+1)番〜Z番の溝とは重ならない。
【0026】
図6において各第1部材(1)の溝の上流端にはそれぞれ第1抽出液導入口(15)が設けられ、第2部材(2)の溝の上流端にはそれぞれ第2抽出液導入口(16)が設けられている。そして、第1部材(1)の端から1番の溝の第1抽出液導入口(15)は試料導入口(19)とされている。ここで、第1抽出液導入口(15)と試料導入口(19)は、第1部材(1)の溝形成面の裏側表面から該溝まで開けられた穴として形成され、第2抽出液導入口(16)は、第2部材(2)の溝形成面の裏側表面から該溝まで開けられた穴として形成されている。
【0027】
また、第1部材(1)の溝の下流端にはそれぞれ第1抽出液取出口(17)が設けられ、第2部材(2)の各溝の下流端にはそれぞれ第2抽出液取出口(18)が設けられている。ここで、第1抽出液取出口(17)と第2抽出液取出口(18)は、第1部材(1)の溝形成面の裏側表面から第2部材(2)の溝形成面の裏側表面まで貫通した孔として形成され、第1部材(1)側の開口部が第1抽出液取出口(17)とされ、第2部材(2)側の開口部が第2抽出液取出口(18)とされている。
【0028】
前記の構造により、図6に見られるように、上流段から数えて第1段には1本、第2段には2本、第n段〔但し、nは2以上(Z−1)以下の任意の整数〕において前記抽出流路(3)が、1番からn番(但し、該nは前記第n段のnと同じ数値)までn本の抽出流路(3)が形成され、最終段である第Z段には抽出流路(3)が1番からZ番までZ本形成されている。
【0029】
そして、
〔1〕第1段と第2段の間の抽出流路(3)間の接続については、
〔1−1〕第1段第1番の抽出流路(3)の第1部材側流出口(5a)が、第1部材側連絡流路(6a)により第2段第1番抽出流路(3)の第1部材側流入口(4a)に接続され、第1段第1番抽出流路(3)の第2部材側流出口(5b)が、第2部材側連絡流路(6b)により第2段第2番の抽出流路(3)の第2部材側流入口(4b)に接続され、
〔1−2〕第2段第1番抽出流路(3)の第2部材側流入口(4b)は、第2抽出液導入口(16)に接続され、また、第2段第2番抽出流路(3)の第1部材側流入口(4a)は、第1抽出液導入口(15)に接続されており、
〔2〕上流側から数えて第n段の抽出流路と第(n+1)段の抽出流路(3)間の接続は、
〔2−1〕第n段第i番(但しiは1〜nの任意の整数)抽出流路(3)の第1部材側流出口(5a)が、第1部材側連絡流路(6a)により第(n+1)段第i番抽出流路(3)の第1部材側流入口(4a)に接続され、第n段第i番抽出流路(3)の第2部材側流出口(5a)が、第2部材側連絡流路(6b)により第(n+1)段第(i+1)番の抽出流路(3)の第2部材側流入口(4b)に接続され、
〔2−2〕第n段第1番抽出流路(3)の第2部材側流入口(4b)は第2抽出液導入口(16)とされ、また、第n段第n番抽出流路(3)の第1部材側流入口(4a)は、第1抽出液導入口(15)とされており、
〔3〕最終段である第Z段の接続については、第Z段第i番(但しiは1〜Zの任意の整数)抽出流路(3)の第1部材側流出口(5a)は第i番の第1抽出液取出口(17)に接続され、第2部材側流出口(5b)は第i番の第2抽出液取出口(18)に接続されている。
【0030】
[抽出方法]
本実施形態の連続多段抽出デバイスにおいて、第1抽出液導入口(15)のうちの図6中左端のものを試料導入口(19)とし、ここから第1抽出液を溶媒とする試料溶液(23)を連続的に導入し、他の第1抽出液導入口(15)に第1抽出液を連続的に導入し、第2抽出液導入口(16)に第2抽出液を連続的に導入する。試料導入口(19)に導入された試料溶液は、第1段第1番、第2段第1番、第3段第1番、第4段第1番、及び第5段第1番の各抽出流路(3)を流れて、図6中左端の第1抽出液取出口(17)から流出する。
【0031】
図6中左から2番目(第2番)の第1抽出液導入口(15)から導入された第1抽出液は、第2段第2番、第3段第2番、第4段第2番、及び第5段第2番の各抽出流路(3)を流れて図6中左端から2番目の第1抽出液取出口(17)から流出する。図6中左から3番目(第3番)の第1抽出液導入口(15)から導入された第1抽出液は、第3段第3番、第4段第3番、及び第5段第3番の各抽出流路(3)を流れて図6中左端から3番目の第1抽出液取出口(17)から流出する。図6中左から4番目(第4番)の第1抽出液導入口(15)から導入された第1抽出液は、第4段第4番、及び第5段第4番の各抽出流路(3)を流れて図6中左端から4番目の第1抽出液取出口(17)から流出する。そして、図6中左から5番目(第5番)の第1抽出液導入口(15)から導入された第1抽出液は、第5段第5番の抽出流路(3)を流れて図6中左端から5番目の第1抽出液取出口(17)から流出する。
【0032】
第2抽出液についても、第2抽出液導入口(16)に導入されること、第2抽出液取出口(18)から取り出されること、左右が逆になること以外は、第1抽出液の場合と同様である。
【0033】
試料の溶質は、第1抽出液と第2抽出液に対する分配比に応じた番目の第1抽出液取出口(17)及び第2抽出液取出口(18)から流出する。[分配比]=[第1抽出液中の試料の平衡モル濃度]/[(第2抽出液中の試料の平衡モル濃度)](但し、試料は第1抽出液の溶液として導入する場合で、かつ、第1抽出液の合計流量と第2抽出液の合計流量が等しい場合。)とすると、分配比が小さいほど(即ちゼロに近いほど)前記大きな番目(図6中右側)の第1抽出液取出口(17)と前記小さな番目(図6中右側)の第2抽出液取出口(18)から取り出され、かつ、各取出口(17)(18)において、一定時間に[第1抽出液取出口(17)から取り出される溶液中の試料のモル数/第2抽出液取出口(18)から取り出される溶液中の試料のモル数]は分配比に略等しくなる。
【0034】
例えば、抽出比0.2の溶質は、前記4番の第1抽出液取出口(17)(図6中、右から2つ目)と前記2番の第2抽出液取出口(18)(図6中、右から2つ目)から流出する濃度がそれぞれ最も高くなり、かつ、該両取出口について、[第1抽出液中の試料のモル濃度]/[(第2抽出液中の試料のモル濃度)]≒0.2となる。
【0035】
また、分配比が5(即ち、0.2の逆数)の溶質は、2番の第1抽出液取出口(17)と4番目の第2抽出液取出口(18)から流出する濃度がそれぞれ最も高くなり、かつ、該両取出口について、一定時間に[第1抽出液取出口(17)から取り出される溶液中の試料のモル数/第2抽出液取出口(18)から取り出される溶液中の試料のモル数]≒5となる。
【0036】
従って、例えば分配比が0.2の物質と5の物質(即ち、分配比の比は25)を分離することができる。
【0037】
試料として、第2抽出液を溶媒とするものを用いる場合も同様であり、第2抽出液導入口(16)のうちの図6中右端のものを試料導入口(19)とすればよい。
【0038】
以上、本発明の連続抽出デバイスを、図6〜図8に示した好ましい実施形態に即して説明したが、以下、一般の場合について述べる。
【0039】
[部材構造]
本発明の連続多段抽出デバイスの外形は特に板状に限定する必要はなく、用途目的に応じた形状を採りうる。例えば、板状の他、シート状(フィルム、リボンなどを含む。以下同様。)、塗膜状、棒状、管状、塊状、その他複雑な形状の成型物などであり得るが、板状又はシート状であることが、製造や使用時の取り扱いが容易になり、好ましい。
【0040】
第1部材(1)及び第2部材(2)の外形についても、溝形成面を液密に固定できれば、特に限定する必要はなく、用途目的に応じた形状を採りうる。例えば、板状の他、シート状(フィルム、リボンなどを含む。以下、同様。)、塗膜状、棒状、管状、塊状、その他複雑な形状の成型物などであり得るが、板状又はシート状であることが特に好ましい。第1部材(1)と第2部材(2)の接触面の形状は任意であり、平面や任意の曲面であり得るし、局所的に凹凸のある形状であり得る。局所的に凹凸のある形状の例としては、任意の抽出流路や連絡流路となる部分が凸部又は凹部とされた形状であって良い。但し、この際、部材A(1)と部材B(2)が接触して抽出流路や連絡流路を形成するためには、部材A(1)と部材B(2)の該凹部と凸部はアンダーカットで無い必要がある。これらの中で、製造の容易さから平面が好ましい。勿論、本連続多段抽出デバイスがフレキシブルなフィルム状などである場合には,平面状にして製造した後に曲面状にして使用してもよい。
【0041】
本連続多段抽出デバイスは、前記第1部材(1)と第2部材(2)を必須構成要素とし、第1部材(1)と第2部材(2)が互いに液密に固定されている。「液密」とは、抽出液がリークしない状態に接触していることを言い、直接又は抽出物質透過性の隔膜を介した接触とされる。前記固定は、任意の方法による固定、例えばネジやクランプや枠による非固着の固定や、接着剤による接着、接着剤を用いない接着(固着)、粘着などの固着であってよいが、互いに固着されていることが好ましい。接着や粘着の場合は、第1部材(1)と第2部材(2)は接着剤や粘着剤を介しての接触とされる。
【0042】
第1部材(1)と第2部材(2)の素材は任意であり、有機高分子重合体(以下、単に「重合体」と称する)、ガラス、石英などの結晶、セラミック、炭素、金属、シリコンなどの半導体等であってよいが、成形しやすさの面から、重合体であることが好ましい。第1部材(1)と第2部材(2)の素材は同じであっても良いし、互いに異なっていても良い。さらに、第1部材(1)、第2部材(2)はそれぞれ複数の素材で構成されていてもよく、例えば、互いに異なる素材で形成された、貫通溝状の欠損部を有する層状の部材が他の部材の表面に液密に固定されて形成されていても良い。この場合も、固定方法は前記と同様に任意である。
【0043】
第1部材(1)や第2部材(2)の素材として用いられる重合体は、熱可塑性重合体であっても、熱硬化性重合体であっても良いが、成形性の良い点で熱可塑性重合体が好ましく、また、表面に溝を形成する場合に、溝の形成が容易で、硬化速度が高い、表面親水化が容易などの点で、エネルギー線硬化性の架橋重合体が好ましい。エネルギー線硬化性の架橋重合体は、製造の容易さの点で紫外線硬化性の架橋重合体が好ましい。本発明の連続多段抽出デバイスの素材は、ポリマーブレンドやポリマーアロイで構成されていても良いし、複合体や積層体であっても良い。
【0044】
本発明の連続多段抽出デバイスは、次の各構成要素を備えていることが好ましい。
〔A〕デバイスを前記抽出流路に前記各抽出液を流す状態に保持した際、図1〜図4のように、前記抽出流路の長手方向に対して直交する断面における水平方向をX方向とし、垂直方向をY方向とし、且つ前記抽出流路の長手方向をZ方向としたとき、このデバイスのY方向両端間に設定された水平な面である流路境界面に対し、前記第1流路が前記流路境界面からY方向上側に設けられ、前記第2流路が前記流路境界面からY方向下側に設けられ、
〔B〕前記第1流路は、Z方向に沿う所定長さを有する第1流路側抽出流路と、この第1流路側抽出流路の上流端及び下流端に連通し、Z方向と交差するα方向に設けられた第1流路側連絡流路とが、上流側にある第1流路側抽出流路の下流端とその下流側にある第1流路側抽出流路の上流端とを連通させて多段に設けられた一連の第1流路側ユニットを複数並設した構造を有し、
〔C〕前記第2流路は、Z方向に沿う所定長さを有する第2流路側抽出流路と、この第2流路側抽出流路の上流端及び下流端に連通し、Z方向と交差し前記α方向と異なるβ方向に設けられた第2流路側連絡流路とが、上流側にある第2流路側抽出流路の下流端とその下流側にある第2流路側抽出流路の上流端とを連通させて多段に設けられた一連の第1流路側ユニットを複数並設した構造を有し、
〔D〕このデバイスの多段に配置された抽出流路は、前記第1流路側抽出流路と前記第2流路側抽出流路とがX方向及びZ方向で重なり合い、且つ第1流路側連絡通路と第2流路側連絡通路とがX方向及びY方向で異なる位置となり、
〔E〕このデバイスにおける第n段の第1流路側抽出流路の下流端は、前記第n段の抽出流路より下流のα方向側にある第n+1段第p番の抽出流路の第1流路側連絡流路に連通すると共に、第n段の第2流路側抽出流路の下流端は、前記第n段の抽出流路より下流のβ方向側にある第n+1段第p+1番の抽出流路の第2流路側連絡流路に連通してなること(ただし、n及びpは1以上の整数を表す)。
ここで、デバイスが曲面状である場合には、前記X、Y、Z方向はそれに応じた曲線とする。例えば、本連続多段抽出デバイスが円筒の一部である形状をなし、即ち、図1〜6のデバイスが円筒の表面に貼り付けられた形状をなし、図のZ方向が該円筒の周方向である場合には、Z方向は円周方向の曲線状に採られる。また、図のX方向が該円筒の周方向である場合には、X方向は周方向の曲線状に採られる。
また、上記角度α及びβは、抽出流路から見た連絡流路の全体としての方向であって、必ずしも抽出流路と連絡流路の接続部に於いて成す角度ではない。例えば連絡流路がS字型(逆S字型を含む)の場合には、抽出流路と連絡流路の接続部に於いて成す角度は双方共にゼロであっても良い。
【0045】
さらに、本発明の連続多段抽出デバイスを2つの部材、第1部材(1)と第2部材(2)を用いて構成する場合、次の各構成要素を備えていることが好ましい。
〔1〕表面に流路となる溝を有する2つの部材、第1部材(1)と第2部材(2)が、該溝形成面を互いに液密に固定され、
〔2〕前記第1部材(1)の溝および前記第2部材(2)の各溝が、それぞれ長さ方向に交互に抽出流路となる溝部分(3a、3b)と連絡流路となる溝部分(6a、6b)を有し、
〔3〕前記第1部材(1)の抽出流路となる溝部分(3a)と、前記第2部材(2)の抽出流路となる溝部分(3b)とが合わされて抽出流路(3)が形成され、
〔4〕前記第1部材(1)の連絡流路となる溝部分(6a)は、前記第2部材(2)の抽出流路となる溝部分(3b)以外の表面と合わされて第1部材側連絡流路(6a)が形成され、前記第2部材(2)の連絡流路となる溝部分(6b)は、前記第1部材(1)の抽出流路となる溝部分(3a)以外の表面と合わされて第2部材側連絡流路(6b)が形成され、
〔5〕前記各抽出流路(3)の一方の端である上流端が、第1部材側流入口(4a)と第2部材側流入口(4b)とされ、前記各抽出流路(3)の他端である下流端が、第1部材側流出口(5a)と第2部材側流出口(5b)とされている。
【0046】
第1部材(1)及び第2部材(2)の抽出流路となる溝部分(3a、3b)の断面形状は任意であり、例えば、矩形(角が丸められた矩形を含む。角のある形状についても同様。)、台形、三角形、半円、半楕円、及びこれらの組み合わせなどであり得る。該抽出流路となる溝部分(3a、3b)の深さは任意であるが、下限は1μm 以上であり、さらに好ましくは3μm以上であり、最も好ましくは5μm以上である。上限は、好ましくは500μm以下であり、さらに好ましくは300μm以下であり、最も好ましくは150μm以下である。この下限以上とすることにより、圧力損失の過剰な上昇が避けられ、処理量も多くなる。また、この上限以下とすることにより、抽出時間が迅速化されるとともに、抽出流路(3)毎の流量調節バルブやポンプを設けなくても、抽出液を均一に流すことができる。抽出流路(3)となる溝部分の深さは各抽出流路(3)毎に異なっていてもよいが、同じとすることで製造が容易となり好ましい。
【0047】
該抽出流路となる溝部分(3a、3b)〔及び抽出流路(3)〕の幅については制約は少なく、製造上の問題がない限り、広い範囲から任意に選択できる。例えば、好ましくは1μm〜5mm、さらに好ましくは3μm〜1mmとし得る。
【0048】
第1部材(1)及び第2部材(2)の連絡流路となる溝部分(6a、6b)(及び連絡流路)の平面形状も任意であり、図6に示された直線の他、曲線でもジグザグなどでもよいが、直線又はS字型(逆S字型を含む)であることが製造上好ましい。
【0049】
該連絡流路となる溝部分(6a、6b)の断面形状、深さ、および幅についても、前記抽出流路となる溝部分(3a、3b)と同様である。連絡流路となる溝部分(6a、6b)の深さは各連絡流路(6a、6b)毎に異なっていてもよいが、同じであることが、製造が容易となることから好ましい。抽出流路となる溝部分(3a、3b)と連絡流路となる溝部分(6a、6b)の深さは、異なっていてもよいが、同じとすれば、製造が容易となることから好ましい。
【0050】
抽出流路となる溝部分(3a、3b)〔及び抽出流路(3)〕の一つの長さは任意であるが、該溝部分の深さが深いほど長くすることが好ましく、例えば、該溝部分の深さの10倍〜10000倍であって、かつ、100mm以下が好ましい。
【0051】
連絡流路となる溝部分(6a、6b)(及び連絡流路)の長さは任意であり、抽出流路(3)や各導入口(15,16)、各取出口(17,18)の配置に依存する。しかしながら、各抽出液を偏り無く流すために、前記第1部材(1)及び第2部材(2)の各溝を流れる圧力損失を等しくすることが好ましいため、連絡流路(6a、6b)の長さと幅でもって該圧力損失を調節することが好ましい。この観点から、抽出流路となる溝部分(3a、3b)及び連絡流路となる溝部分(6a、6b)の幅が同じ場合には、前記第1部材(1)及び第2部材(2)の各溝の長さも同じにすることが好ましい。
【0052】
第1部材(1)の構造は、例えば、前記説明のように通常の溝が掘られた形状の他、表裏を貫通する長穴状の欠損部を有する層状部材が、他の部材の表面に液密に固定されていて、第1部材(1)の溝が、前記層状部材の欠損部と他の部材の表面とで形成された構造であってもよい。第2部材(2)についても同様である。勿論、本構造を製造する手順は任意であり、例えば、(i)第1部材側の前記他の部材の上に第1部材側の前記層状部材を積層固着して第1部材(1)を形成し、第2部材側の前記他の部材の上に第2部材側の前記層状部材を積層固着して第2部材(2)を形成し、該第1部材(1)と該第2部材(2)を液密に固定してもよいし、(ii)第1部材(1)側の前記他の部材の上に、第1部材側の前記層状部材、第2部材側の前記層状部材、第2部材側の前記他の部材を順次積層してもよいし、(iii)第1部材側の前記層状部材と第2部材側の前記層状部材を積層し、その両側から前記2つのその他の部材で挟んでもよい。
【0053】
また、前記第1部材(1)と第2部材(2)の製造方法や固着の順序は任意である。例えば、前記第1部材(1)と第2部材(2)は別々に製造してから互いに固定してもよいし、前述のように、前記第1部材(1)の一部を先に第2部材(2)に固定してから、残りの部材を固定してもよい。或いは、光造形法のように、前記第1部材(1)と第2部材(2)を製造するのと実質的に同時に一体化することにより、その境界が明白でなくてもよい。
【0054】
第1部材(1)及び第2部材(2)の溝の形成方法は任意であり、例えば、フォト(放射線)リソグラフィー(但し、光硬化性樹脂のパターン露光法や、光分解性樹脂のパターン露光法などの、エッチング工程を有しない物も含む)、光(エネルギー線)造形法、光(エネルギー線)アブレーション、射出成型、キャスト硬化法、熱エンボス法(溶融レプリカ法)、溶剤キャスト法(溶剤レプリカ法)、機械的切削、蒸着法、気相重合法、溝となるべき部分を切り抜いた層状部材と平滑な表面を有する部材との密着等とし得る。
【0055】
第1部材(1)と第2部材(2)の固定方法は任意であり、例えば、クランプ、ネジ、リベットなどによる非固着の固定としてもよいが、固着することが好ましい。固着方法は任意であり、第1部材(1)第2部材(2)の少なくとも一方を半硬化状態で密着させ、その状態で硬化させて固着する方法、接着剤の使用、粘着剤の使用、第1部材(1)及び/又は第2部材(2)表面への溶剤塗布による接着、熱や超音波による融着、などの方法を使用しうるが、半硬化状態で密着固化させる方法、及び、無溶剤型の接着剤の使用が好ましい。無溶剤型接着剤としてエネルギー線硬化性樹脂を用い、エネルギー線照射により硬化させて接着する方法が好ましい。あるいは、光造形法のように、第1部材(1)と第2部材(2)を一体成形してもよい。
【0056】
本発明のデバイスは、第1部材(1)の溝の、少なくとも抽出流路(3)となる溝部分の水との接触角と、第2部材(2)の溝の、少なくとも抽出流路(3)となる溝部分の水との接触角の差が、好ましくは30度以上、さらに好ましくは45度以上、最も好ましくは60度以上である。上限は180度である。これに加え、第1部材(1)又は第2部材(2)の溝の該接触角の小さい方の溝の接触角は、30°以下が好ましく、20°以下がさらに好ましく、10°以下が最も好ましい。下限は0度である。
【0057】
接触角をこの範囲とすることにより、相互に混和しない第1抽出液と第2抽出液が層状に流れる流速条件や圧力条件の範囲が広くなり、第1抽出液が第2抽出液取出口から流出することなく流すことが容易になる。また、第1部材(1)の溝の水との接触角が低いほど、第2部材(2)の溝の水との接触角が比較的低くても前記の不都合が生じにくい。
【0058】
第1部材(1)の溝のうち、連絡流路となる溝部分の表面の水との接触角は任意であるが、第1部材(1)に設けられた一本の溝の上流端から下流端の間の全体が同じ水との接触角を持つ構造は、製造が容易となることから好ましい。第2部材(2)の溝についても同様である。本発明の連続多段抽出デバイスが、抽出物質透過性の隔膜を有する場合には、前記のような第1部材(1)と第2部材(2)の溝の水との接触角の差を設ける必要はない。
【0059】
なお、本発明で言う「水との接触角」とは、液滴法による静止角を言う。測定に先立って、試料を温度24±1℃、湿度65±5%の雰囲気に1時間以上静置し、温度24±1℃、湿度65±5%で測定する。測定は、置液後3分の安定化時間の後に行なう。なお、溝が細い場合には、溝内面の接触角の測定は困難であるため、同じ条件で作製したテストピースで測定することができる。
【0060】
第1部材(1)の溝の親水化方法は任意であり、例えば前記特許文献1に記載の方法を使用できる。即ち、第1部材(1)を親水性の素材で形成することの他、プラズマ処理、プラズマ重合、コロナ放電処理、表面の化学修飾、表面への親水性化合物のグラフト重合等が挙げられる。
【0061】
第2部材(2)の溝の疎水化方法は任意であり、例えば前記特許文献1に記載の方法を使用できる。即ち、第1部材(1)を疎水性の素材で形成することの他、例えば、フッ素処理、プラズマ処理、プラズマ重合、表面の化学修飾、表面への疎水性化合物のグラフト重合、などが挙げられる。
【0062】
図6に示された実施形態では、第1部材(1)の溝の上流端に、第1部材(1)を貫通する孔として第1抽出液導入口(15)が設けられ、第2部材(2)の溝の上流端に、第2部材(2)を貫通する孔として第2抽出液導入口(16)が設けられている。しかし、第1抽出液導入口(15)、第2抽出液導入口(16)は任意の場所、任意の方向に設けることができる。例えば、全て第1部材(1)を貫通した孔を通って、第1部材(1)側の外表面に設けることもできるし、全て第2部材(2)を貫通した孔を通って、第2部材(2)側の外表面に設けることもできるし、本連続多段抽出デバイスの側面に設けることもできる。また、連絡流路を伸ばすことにより、本連続多段抽出デバイスの任意の位置に設けることができる。図6の各第1抽出液導入口(15)は、試料導入口(19)として使用するものを除いて、全て一つに纏めることもできる。各第2抽出液導入口(16)についても同様である。
【0063】
図6に示された実施形態では、最下流段の抽出流路(3)の下流端に、第1部材(1)と第2部材(2)を貫通する孔として第1抽出液取出口(17)及び第2抽出液取出口(18)が設けられているが、第1抽出液取出口(17)及び第2抽出液取出口(18)は、最下流段の抽出流路(3)の下流端に接続された連絡流路を伸ばすことにより、本連続多段抽出デバイスの任意の位置と方向に設けることができる。例えば、全て第1部材(1)側の外表面に設けることもできるし、全て第2部材(2)側の外表面に設けることもできるし、本連続多段抽出デバイスの側面に設けることもできる。
【0064】
本発明の連続多段抽出デバイスにおいて、図9に示すように、前記第1部材(1)と前記第2部材(2)が抽出物質透過性の隔膜(11)を介して液密に固定され、抽出流路(3)が、抽出流路となる第1部材の溝部分(3a)と抽出流路となる第2部材の溝部分(3b)とが前記隔膜(11)で隔てられた構造としても良い。該隔膜(11)を装着することにより、該隔膜(11)が第1抽出液を透過させない圧力範囲においては、第1抽出液の圧力を変化させても第1抽出液が第2部材側の溝に入り込むことはないし、該隔膜(11)が第2抽出液を透過させない圧力範囲においては、第2抽出液の圧力を変化させても第2抽出液が第1部材側の溝に入り込むことはない。そのため、デバイスの製造に当たって、第1部材や第2部材の溝の設計の自由度が増すし、デバイスの使用に当たって、第1抽出液や第2抽出液の流量の自由度が増す。
【0065】
該隔膜(11)は、抽出流路(3)が形成される部分に設置すれればよいが、大きな面積の膜、例えば図9に示されたように、第1部材(1)の溝形成面や第2部材(2)の溝形成面と同じ寸法形状とすることが、製造が容易となることから好ましい。隔膜(11)としてこのような大面積のものを使用すると、第1部材(1)の溝形成面と第2部材(2)の溝形成面を合わせた際に、第1部材側連絡流路(6a)となる溝部分(6a)は、第2部材(2)の表面ではなく隔膜(11)と接触することになるが問題はない。第2部材側連絡流路(6b)となる溝部分(6b)についても同様である。但し、隔膜(11)が面に平行な方向に第1抽出液又は第2抽出液を透過させ得る細孔を有する種類である場合には、該隔膜(11)を通って、抽出液が他の流路の抽出液との間でコンタミネーションを起こしたり、デバイス外部に漏れ出る恐れがある。そのため、このような場合には、抽出流路(3)となる部分以外の隔膜(11)の細孔を目止めすることが好ましい。目止めの方法としては、例えば特開2000−237556号公報に開示されているように、エネルギー線硬化樹脂を用いて、パターン露光により必要部分のみを目止めする方法とすることができる。
【0066】
隔膜(11)は、抽出物質透過性であれば任意であり、非選択透過性であっても選択透過性であっても良い。非選択透過性の隔膜の例としては、精密濾過膜(MF膜)、限外濾過膜(UF膜)などの多孔質膜を例示でき、選択透過性膜については、透析膜、電気透析膜、逆浸透膜などを例示できる。これらの中で、抽出物質の透過速度の低下が少ないMF膜が好ましく、ポリ四フッ化エチレン樹脂製のような強い疎水性を持つ精密濾過膜が特に好ましい。強い疎水性を持つ精密濾過膜は、孔径にもよるが、数百kPaまでは水系抽出液を透過させない。
【0067】
[多段配置]
〔任意の連続した2段の接続方法〕
本発明の好ましい実施形態において、連続多段抽出デバイスは、図3に示したように、前記連続多段抽出デバイスの流路配列が、
〔1〕抽出流路(3)が上流から下流にかけて2段〜10000段、好ましくは3〜1000段の複数段にわたって配置され、該複数段の抽出流路(3)のうちの任意の連続した2段において、
第1の抽出流路(3)(例えば前記図6の実施形態における第n段第i番の抽出流路(3)とすることができる)が上流段の抽出流路(3)とされ、第2の抽出流路(3)(前記図6の実施形態における第n+1段第i番の抽出流路(3)に相当する)と第3の抽出流路(3)(前記図6の実施形態における第n+1段第i+1番の抽出流路(3)に相当する)が下流段の抽出流路(3)とされ、
〔1-1〕第1の抽出流路(3)の第1部材側流出口(5a)が、第1部材側連絡流路(6a)により前記第2の抽出流路(3)の第1部材側流入口(4a)に接続され、前記第1の抽出流路(3)の第2部材側流出口(5b)が、第2部材側連絡流路(6b)により前記第3の抽出流路(3)の前記第2部材側流入口(4b)に接続され、
〔1-2〕前記第2の抽出流路(3)の第2部材側流入口(4b)は、第2部材側連絡流路(6b)により、前記第1の抽出流路(3)以外の前記上流段の抽出流路(3)の第2部材側流出口(5b)に接続されるか、第2抽出液導入口(16)に接続され、また、前記第3の抽出流路(3)の第1部材側流入口(15)は、第1部材側連絡流路(6a)により前記第1の抽出流路(3)以外の前記上流段の抽出流路(3)の第1部材側流出口(5a)に接続されるか、第1抽出液導入口(15)に接続された多段構成を有する。
〔2〕そして、前記複数段の最上流段の抽出流路(3)は、第1部材側流入口(4a)に前記第1抽出液導入口(15)が接続されており、前記第2部材側流入口(4b)に前記第2抽出液導入口(16)が接続されている。また、
〔3〕最上流段の抽出流路(3)に接続された、第1抽出液導入口(15)の少なくとも一つ、又は前記第2抽出液導入口(16)の少なくとも一つが試料導入口とされている。さらに、
〔4〕複数段の最下流段の抽出流路(3)は、第1部材側流出口(5a)に第1抽出液取出口(17)が接続され、第2部材側流出口(5b)に第2抽出液取出口(18)が接続されている。
【0068】
〔任意の連続した3段の接続方法〕
図5に、本発明の連続多段抽出デバイスの上流から下流にかけて配置された3段の抽出流路(3)の接続を示す。
【0069】
本発明の連続多段抽出デバイスは、好ましくは、上流から下流にかけて抽出流路(3)が3段以上の複数段にわたって配置されていて、
〔1〕前記複数段のうちの任意の連続した3段である第1段、第2段及び第3段において、第5の抽出流路(3)(前記図6の実施形態における第n+2段第i番の抽出流路(3)に相当する)と第6の抽出流路(3)(前記図6の実施形態における第n+2段第i+1番の抽出流路(3)に相当する)と第7の抽出流路(3)(前記図6の実施形態における第n+2段第i+2番の抽出流路(3)に相当する)を有し、
〔2〕前記第2の抽出流路(3)の第1部材側流出口(5a)が、第1部材側連絡流路(6a)により前記第4の抽出流路(3)の第1部材側流入口(4a)に接続されるとともに、前記第2の抽出流路(3)の第2部材側流出口(5b)が、第2部材側連絡流路(6b)により前記第5の抽出流路(3)の第2部材側流入口(4b)に接続され、また、前記第3の抽出流路(3)の第1部材側流出口(5a)が、第1部材側連絡流路(6a)により前記第5の抽出流路(3)の第1部材側流入口(4a)に接続されるとともに、前記第3の抽出流路(3)の第2部材側流出口(5b)が、第2部材側連絡流路(6b)により前記第6の抽出流路(3)の第2部材側流入口(4b)に接続されている。
【0070】
また、前記第4の抽出流路(3)の第2部材側流入口(4b)は、第2部材側連絡流路(6b)により、前記第2と第3以外の中流段の抽出流路(3)の第2部材側流出口(5b)に接続されるか、第2抽出液導入口(16)が接続され、また、前記第6の前記抽出流路(3)の第1部材側流入口(4a)は、第1部材側連絡流路(6a)により前記第2と第3以外の中流段の抽出流路(3)の第1部材側流出口(5a)に接続されるか、第1抽出液導入口(15)が接続されている。
【0071】
〔全段の接続方法〕
図6に、本発明の連続多段抽出デバイスの複数の抽出流路(3)の接続を示す。本発明の連続多段抽出デバイスは、一般に、前記複数段がZ段(但し、Zは2〜10000の任意の整数)であり、
〔1〕最上流段である第1段には第1段第1番抽出流路(3)が設けられ、上流側から数えて第2段には、第2段第1番抽出流路(3)と第2段第2番抽出流路(3)が設けられており、
〔1−1〕第1段第1番抽出流路(3)の第1部材側流出口(5a)が、第1部材側連絡流路(6a)により第2段第1番抽出流路(3)の第1部材側流入口(4a)に接続され、第1段第1番抽出流路(3)の第2部材側流出口(5b)が、第2部材側連絡流路(6b)により第2段第2番抽出流路(3)の第2部材側流入口(4b)に接続され、
〔1−2〕第2段第1番抽出流路(3)の第2部材側流入口(4b)は、第2抽出液導入口(16)に接続され、また、第2段第2番抽出流路(3)の第1部材側流入口(4a)は、第1抽出液導入口(15)に接続されており、
〔2〕上流側から数えて第n段〔但し、nは2以上(Z−1)以下の任意の整数〕において前記抽出流路(3)が、1番からn番(但し、該nは前記第n段のnと同じ数値)までn本配され、
〔2−1〕第n段第i番(但しiは1〜nの任意の整数)抽出流路(3)の第1部材側流出口(5a)が、第1部材側連絡流路(6a)により第(n+1)段第i番抽出流路(3)の第1部材側流入口(4a)に接続され、第n段第i番抽出流路(3)の第2部材側流出口(5b)が、第2部材側連絡流路(6b)により第(n+1)段第(i+1)番の抽出流路(3)の第2部材側流入口(4b)に接続され、
〔2−2〕第n段第1番抽出流路(3)の第2部材側流入口(4b)には第2抽出液導入口(16)が接続され、また、第n段第n番抽出流路(3)の第1部材側流入口(4a)には第1抽出液導入口(15)が接続されており、
〔3〕前記第Z段には前記抽出流路(3)が1番からZ番までZ本配され、第Z段第i番(但しiは1〜Zの任意の整数)抽出流路(3)の第1部材側流出口(5a)には第i番の第1抽出液取出口(17)が接続され、第2部材側流出口(5b)には第i番の第2抽出液取出口が接続されている。
【0072】
前記のような部材構造と多段接続構造により、本発明の多段連続抽出デバイスにおいて、第1部材(1)の各溝(流路)に流される第1抽出液は、該溝(流路)の一端から導入されてから流出するまで、他の並列な溝を流れる第1抽出液と接触することなく、独立に流れることができる。これにより、抽出流路(3)を流れた回数、即ち抽出回数の異なる第1抽出液間のコンタミネーションが生じず、分配比が互いに近い物質を効率よく分離することができる。
【0073】
さらに、図6の実施形態では、第1部材(1)の各溝(流路)に流される第1抽出液は、該溝(流路)の一端から導入されてから流出するまで、流れる抽出流路(3)の数は異なっても、全て同じ形状の流路を流れることができる形状とされている。その結果、第1抽出液の圧力損失は、自ずと第1部材(1)の並列な各溝(流路)に関して等しくなり、該溝(流路)の一端をまとめて第1抽出液導入口に接続しても、全ての第1部材(1)の各溝(流路)に第1抽出液を等しい流量で流すことができる。このため、各溝(流路)の圧力損失を等しくする調節を行う必要もなく、また、溝(流路)毎に独立したポンプを使用する必要もない。第2部材(2)の各溝(流路)に流される第2抽出液についても同様である。
【0074】
図6に示された連続多段抽出デバイスにおいて、第1部材(1)の溝の上流端に設けられた各第1抽出液導入口(15)にはそれぞれ第1抽出液(21)を導入し、第2部材(2)の溝の上流端に設けられた各第2抽出液導入口(16)にはそれぞれ第2抽出液(22)を導入すると、第1抽出液(21)は第1部材(1)側の溝を通り、第2部材(2)側の溝を通ることなく、該第1部材(1)側の溝の他端の第1抽出液流出口(17)から流出する。この間、第1抽出液(21)は、各抽出流路(3)において第2抽出液と接触して流れ、抽出が行われる。第2部材(2)の溝についても、第1抽出液(21)と第2抽出液(22)を逆に置き換えて読むこと以外は、第1部材(1)側の溝と同様である。
【0075】
第1抽出液(21)が第2部材側の流路に入り込んだり、第2抽出液(22)が第1部材側の流路に入り込むことを防ぐために、本連続多段抽出デバイスの使用に当たって、各段の抽出流路(3)の流出口(5a)と流出口(5b)の圧力(大気圧基準)が略等しくなるようにすることが好ましい。そのため、第1抽出液と第2抽出液をそれぞれ特定の流量で流したい場合には、該圧力が等しくなるように溝の断面積を変えることが好ましい。溝の断面積を変える方法は任意であり、例えば第1部材(1)の溝の深さと第2部材(2)の溝の深さを異なる値にする方法を好ましく採用できる。他の方法としては、第1部材側連絡流路となる溝部分(6a)と第2部材側連絡流路となる溝部分(6b)で、溝幅を変える方法が挙げられる。
【0076】
但し、前記溝の断面積が例えば0.001mm以上或いは0.01mm以上のように大きな場合には、これらの溝の上流端から下流端までの全圧力損失が低くなり、各段の抽出流路の圧力差も小さくなるため、断面積を調節する必要はない。また、第1部材(1)側の溝(流路)と第2部材(2)側の溝(流路)の表面の親水性の差を大きくすることにより、前記第1部材側の溝と第2部材側の溝の断面積の設計の許容幅量を増すことができる。さらに、抽出流路(3)が、第1部材(1)側の溝と第2部材(2)側の溝との間に抽出物質透過性の隔膜を設けることにより、一定の圧力差までは、前記隔膜が、抽出液が反対側の部材の溝に入り込むことを防止するため、前記第1部材側の溝と第2部材側の溝の断面積の設計の許容幅を増すことができる。
【0077】
[抽出方法]
本発明の連続抽出方法は、本発明の連続多段抽出デバイスの、試料導入口(19)に試料溶液(23)を連続的に導入し、第1抽出液導入口(15)に第1抽出液(21)を連続的に導入し、第2抽出液導入口(16)に第2抽出液(22)を連続的に導入する。そして、第1抽出液と第2抽出液に対する試料の分配比に応じた番目の第1抽出液取出口(17)及び第2抽出液取出口(18)から流出する溶液を連続的に採取する。各流路中の第1抽出液および第2抽出液流動状態は前述のとおりである。
本発明で言う「向流型抽出」とは、ある抽出流路で抽出された第1抽出液は、次段の抽出流路に於いて、該第1抽出液より抽出回数の少ない第2抽出液と接して抽出がなされ、また、ある抽出流路で抽出された第2抽出液は、次段の抽出流路に於いて、該第2抽出液より抽出回数の少ない第1抽出液と接して抽出がなされることをいい、個々の抽出流路に於いて第1抽出液と第2抽出液の接触方法が向流か並流か十字流かは問題ではない。
【0078】
前記のように、[分配比]=[第1抽出液中の試料の平衡モル濃度]/[(第2抽出液中の試料の平衡モル濃度)](但し、試料は第1抽出液の溶液として導入し、第1抽出液の合計流量と第2抽出液の合計流量が等しい場合)とすると、分配比が小さな(即ちゼロに近い)試料ほど、前記大きな番目(図6中、左側)の取出口から取り出され、かつ、各取出口(17、18)において、一定時間に[第1抽出液取出口(17)から取り出される溶液中の試料のモル数/第2抽出液取出口(18)から取り出される溶液中の試料のモル数]は分配比に略等しくなる。
【0079】
勿論、分離された試料は、前記試料の分配比に応じた番目に近い番目の取出口(17、18)からも、より低い濃度で流出するが、本発明の連続多段抽出デバイスの段数を多くするほど、流出の分布がシャープになり、分配比の比がより1に近い試料も分離可能となる。
【0080】
第1抽出液(21)の流量と第2抽出液(22)の流量の関係は任意であるが、各段の抽出流路(3)の流出口(5a)と流出口(5b)の圧力(大気圧基準)が等しくなるよう、第1抽出液(21)の流量と第2抽出液(22)の流量を設定することが好ましい。そのため、第1部材(1)の溝と第2部材(2)の溝の断面積や長さが同じ場合、第1抽出液と第2抽出液の流量比を、第1抽出液と第2抽出液の粘度の比の逆数に近い値とすることが好ましい。これにより、第1抽出液が第2部材(2)側の溝(流路)に入り込んだり、第2抽出液が第1部材(1)側の溝(流路)に入り込むことがない。
【0081】
但し、流速が低く、これらの溝の上流端から下流端までの圧力損失が、例えば10kPa以下であるように低い場合には、かならずしもその必要はない。また、第1部材(1)側の溝(流路)と第2部材(2)側の溝(流路)との表面の親水性の差を大きくすることにより、前記第1抽出液と第2抽出液流量の差の許容量を増すことができる。さらに、抽出流路(3)が、第1部材(1)側の溝と第2部材(2)側の溝との間に抽出物質透過性の隔膜を有する場合は、該隔膜が第1抽出液を透過させない圧力範囲においては、第1抽出液の流量と圧力は任意である。第2抽出液についても同様である。
【0082】
なお、前述した実施形態及び後述する実施例の記載は、本発明の具体的な例示であり、本発明の範囲はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、種々の修正や変更が可能である。
例えば、図示したデバイスでは、基板の長さ方向に沿う所定長さを有する抽出流路を備えた構造としているが、これに限らず、直線状又は曲線状の第1流路と第2流路とが交差した交差部を抽出流路とする構成であってもよい。即ち、表面に互いに平行な複数の直線状の溝を有する2つの部材を、該溝形成面同士を合わせたときに形成されるような、抽出流路と連絡流路を有するデバイスであってもよい。この場合、2つの溝の合わさった、平面視で矩形(菱形、正方形、平行四辺形、又は長方形)の部分が抽出流路とされ、一方の部材の溝と、他の部材の溝でない表面が合わさった部分が連絡流路とされる。従って、抽出流路のZ方向は該矩形の対向する頂点を結ぶ方向であり、該矩形の各辺に連絡流路が接続された構造となっている。
【実施例】
【0083】
以下、実施例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、「部」は「質量部」を表わす。
【0084】
以下に、実施例で使用する紫外線硬化性組成物の調製方法、紫外線照射方法、及び、親水性層形成材料の調製方法を示した。
【0085】
[紫外線硬化性組成物[X1]の調製]
トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM−315」)40部、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM−215」)40部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(第一工業製薬株式会社製「ニューフロンティアHDDA」)20部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガイギー社製「イルガキュア184」)2部、及び重合遅延剤として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(関東化学株式会社製)0.5部を均一に混合して組成物(X1)を調整した。
【0086】
[紫外線硬化方法]
〔ランプ1〕
3000Wメタルハライドランプ(アイグラフィックス株式会社製のUE031−353CHC型UV照射装置)により、365nmにおける紫外線強度が40mW/cmの紫外線を、室温、窒素気流下で照射した。
【0087】
〔ランプ2〕
250W高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製のマルチライト250Wシリーズ露光装置用光源ユニット)により、365nmにおける紫外線強度が50mW/cmの紫外線を照射した。
【0088】
[親水性層形成材料(Y1)の調製]
N,N−ジメチルアクリルアミド(株式会社興人製の「DMAA」)11部を蒸留水89部に溶解させて親水性層形成材料(Y1)を調製した。
【0089】
[水との接触角の測定方法]
試料を温度24±1℃、湿度65±5%の雰囲気に6時間以上静置し、温度24±1℃、湿度65±5%で接触角を測定する。測定は、置液後3分の安定化時間の後に行なう。なお、溝が細い場合には、溝内面の接触角の測定は困難であるため、同じ条件で作製したテストピースで測定する。
【0090】
[実施例1]
〔第1部材(1)の作製〕
7cm×9cm×1mmのアクリル樹脂板(日東樹脂工業株式会社製の「クラレックス SO」)を第1部材(1)の基材1cとし、その上にスピンコーターを用いて組成物(X1)を塗工し、該塗膜にランプ2により紫外線を40秒間照射して組成物(X1)を半硬化させ、溝の底となる第1樹脂層1dを形成した。
【0091】
第1樹脂層(1d)の上にスピンコーターを用いて組成物X1を塗工し、次いで、図7に示した形状の抽出流路(3)となる溝部分(6a)及び連絡流路となる溝部分(6a)とする部分をフォトマスキングし、ランプ2にて紫外線を180秒間照射した後、エタノールを用いて洗浄することにより、未重合の組成物(X1)を除去し、図3に示された形状の、基材(1c)、第1樹脂層(1d)、及び第2樹脂層(1e)が積層され、第2樹脂層(1e)の欠損部が溝とされた第1部材(1)を得た。該溝の深さは全体にわたって約100μmであり、抽出流路(3)となる溝部分(6a)及び連絡流路となる溝部分(6a)は全て約150μmであった。また、各抽出流路(3)となる溝部分(6a)の長さは1cmとした。
【0092】
この第1部材(1)前記全溝の中に、親水性層形成材料(Y1)を注入し、該溝部分に、ランプ2にて紫外線を60秒照射後、蒸留水にて洗浄し、風乾することにより、第1部材の全溝の内面全体を親水化した。
【0093】
〔第2部材(2)の作製〕
基材(1c)の代わりに、一時的な支持体(12)として、表面がコロナ処理された厚さ60μmの二軸延伸ポリプロピレン・シート(二村化学株式会社製)を用いたこと、スピンコーターを用いて塗工する代わりにバーコーターにて塗工したこと、及び、表面処理を行わないこと以外は、第1部材(1)の作製と同様にして、図8に示された形状の、一時的な支持体(12)の上に第1樹脂層(2d)と第2樹脂層(2e)が積層され、第2樹脂層(2e)の欠損部が溝とされた第2部材(2)を得た。該溝の寸法、形状は第1部材(1)と同じであった。
【0094】
〔接着およびその他の工程〕
第1部材(1)の第2樹脂層1e面と、第2部材(2)の第2樹脂層2e面を、両部材の抽出流路(3)となる溝部分の位置を合わせて積層し、ランプ1にて紫外線を100秒間照射して接着した後、前記一時的な支持体(12)を第2部材(2)の第1樹脂層2dから剥離して、連続多段抽出デバイス前駆体を得た。
【0095】
次いで該前駆体の各流路の上流端において、第1部材(1)の基材1cと第1部材(1)の第1樹脂層を貫通し、第1部材(1)の各流路に達する穴をドリルにより開けて、第1抽出液導入口(15)を形成し、第2部材(2)の第1樹脂層2dに、第2部材(2)の各流路に達する穴をドリルにより開けて、第2抽出液導入口(16)を形成した。また、最下流段の抽出流路(3)の下流端(該部分は、第1部材(1)の溝と第2部材(2)の溝の下流端となっている)において、第1部材(1)の基材1c、第1部材(1)の第1樹脂層1d、第1部材(1)の第2樹脂層1e、第2部材(2)の第2樹脂層2e、及び第2部材(2)の第2樹脂層2dの全てを貫通する孔をドリルにより開け、第1部材(1)側の開口部を第1抽出液取出口、第2部材(2)側の開口部を第2抽出液取出口として、図6に示された形状の連続多段抽出デバイス[D1]を作製した。
【0096】
〔溝内面の水との接触角の推定〕
溝内面の水との接触角は、溝の毛細管現象により測定不能であった為、平板状のテストピースを作製し、これを用いてモデル試験を行った。
【0097】
(第1部材の溝のモデルの作製と接触角試験)
前記アクリル樹脂板「クラレックス SO」の上にスピンコーターを用いて組成物(X1)を塗工し、該塗膜にランプ2により紫外線を40秒間照射して組成物(X1)を半硬化させ、それを親水性層形成材料(Y1)に浸漬した状態で、ランプ1により180秒間紫外線を照射し、蒸留水にて洗浄し、風乾することにより、第1部材の溝の内面と同じ操作で作製された平面形状のテストピースを作製した。
得られたテストピースの、水との接触角は9度であった。
【0098】
(第2部材の溝のモデル)
前記アクリル樹脂板「クラレックス SO」の上にスピンコーターを用いて組成物(X1)を塗工し、該塗膜にランプ2により紫外線を40秒間照射して組成物(X1)を半硬化させ、さらに窒素雰囲気でランプ1により180秒紫外線を照射し、蒸留水にて洗浄し、風乾することにより、第2部材の溝の内面と同じ操作で作製された平面形状のテストピースを作製した。
得られたテストピースの、水との接触角は、68度であった。
【0099】
〔流通試験〕
第1抽出液としてローダミン6Gで着色した蒸留水、第2抽出液としてn−ヘキサンを使用して、流通試験を行った。連続多段抽出デバイス[D1]を、第2部材(2)が上側になるように設置し、各第1抽出液導入口(15)、第2抽出液導入口(16)、第1抽出液取出口、及び第2抽出液取出口に、それぞれ長さ1m、内径250μmのフッ素樹脂チューブを接続し、第1抽出液導入口(15)に接続されたフッ素樹脂チューブをまとめて、第1抽出液の入ったシリンジポンプ(図示略)に接続し、第2抽出液導入口(16)に接続されたフッ素樹脂チューブをまとめて、第2抽出液の入ったシリンジポンプ(図示略)に接続し、第1抽出液取出口および第2抽出液取出口に接続されたフッ素樹脂チューブはそれぞれ試験管に配した。試料導入口19は設けなかった。
【0100】
第1抽出液の入ったシリンジポンプ(図示略)を50μL/分の吐出速度で運転し、シリンジポンプにより第2抽出液を50μL/分の吐出速度で運転したところ、各第1抽出液取出口からはほぼ等量の第1抽出液が流出し、各第2抽出液取出口からはほぼ等量の第2抽出液が流出した。光学顕微鏡にて、抽出流路(3)を観察したところ、第1抽出液と第2抽出液が層状に接触して流れていることが確認され、第1抽出液と第2抽出液がそれぞれ抽出流路(3)の断面全体を占めた状態で交互に流れるような様子は観察されなかった。
【0101】
次いで、第2抽出液の吐出速度はそのままで、第1抽出液の吐出速度を25μL/分としたところ、各第1抽出液取出口からは約5μL/分で第1抽出液が流出し、各第2抽出液取出口からは10μL/分で第2抽出液が流出した。光学顕微鏡にて、抽出流路(3)を観察したところ、第1抽出液と第2抽出液が層状に接触して流れていることが確認され、第1抽出液と第2抽出液が、それぞれ抽出流路(3)の断面全体を占めた状態で交互に流れるような様子は観察されなかった。
【0102】
〔抽出方法〕
第1抽出液として蒸留水、第2抽出液としてn−ヘキサンを使用して、連続多段抽出デバイス[D1]を用いた抽出方法の例を以下に示す。
一連の第1抽出液導入口(15)のうちの図6中最も左の第1番の第1抽出液導入口(15)を試料導入口(19)とし、該試料導入口(19)に試料溶液(試料の水溶液)の入ったシリンジポンプ(図示略)に接続し、他の第1抽出液導入口(15)に第1抽出液として使用する蒸留水の入ったシリンジポンプ(図示略)を接続したこと以外は、前記流通試験と同様に配管接続する。
【0103】
試料溶液の入ったシリンジポンプ(図示略)を10μL/分の吐出速度で運転し、第1抽出液の入ったシリンジポンプ(図示略)を40μL/分の吐出速度で運転し、第2抽出液の入ったシリンジポンプ(図示略)を50μL/分の吐出速度で運転すると、各第1抽出液取出口(17)からは10μL/分の流速で第1抽出液が流出し、各第2抽出液取出口(18)からは10μL/分の流速で第2抽出液が流出する。
【0104】
流出した各抽出液を採取し、分光光度計で溶質の濃度を測定する。試料のn−ヘキサン/蒸留水の分配比が0.2であると、各第1抽出液取出口(17)の中で、第4番(図6中左から4番目)の第1抽出液取出口(17)の濃度が最も高くなり、各第2抽出液取出口(18)の中で、第2番(図6中左から4番目)の第2抽出液取出口(18)の濃度が最も高くなり、一定時間に[{第4番の第1抽出液取出口(17)から取り出される溶液中の試料のモル数}/{第2番の第2抽出液取出口(18)から取り出される溶液の試料のモル数}]の比は0.2となる。
【0105】
[実施例2]
第1部材(1)側の溝及び第2部材(2)側の数がそれぞれ30本であること、抽出流路(3)の段数が30段であること、最下流段の抽出流路(3)が1番から30番まであること、第1部材(1)側の溝及び第2部材(2)側の溝の深さが共に30μmであること、これらの溝(抽出流路(3)となる溝部分及び連絡流路となる溝部分とも)の幅が60μmであること、以外は、実施例1と同様の連続多段抽出デバイス[D2]を作製した。
【0106】
[実施例3]
孔径0.2μm(カタログ値)のポリ四フッ化エチレン(PTFE)製精密濾過膜(アドバンテック製、厚さ約30μm)を隔膜(11)として用い、紫外線硬化性組成物[X1]とn-ヘキサンの1/1(質量比)混合溶液に浸漬した状態で真空脱泡し、引き上げて、ポリプロピレンフィルム上で6時間風乾して、n-ヘキサンを蒸発させ、前記精密濾過膜の膜表面に付着している過剰の紫外線硬化性組成物[X1]をバーコーターで掻き取り、抽出流路(3)が形成される部分以外の部分に、ランプ2にて紫外線を40秒間照射し、未照射部の、隔膜(11)の細孔中の未硬化の紫外線硬化性組成物[X1]をn-ヘキサンで洗浄除去して、抽出流路(3)が形成される部分のみが透過性で、他の部分が目止めされた隔膜(11)を作製した。
【0107】
第1部材(1)と第2部材(2)を積層する際に、該隔膜(11)前駆体を挟持して固着したこと以外は、実施例1と同様にして、隔膜(11)を持つ連続多段抽出デバイス[D3]を作製した。
【0108】
〔抽出方法〕
第1抽出液として蒸留水、第2抽出液としてn−ヘキサンを使用し、抽出方法の例を以下に示す。
連続多段抽出デバイス[D3]を、第2部材(2)が上側になるように設置し、実施例1と同様に配管接続する。まず、第2抽出液として使用するn−ヘキサンの入ったシリンジポンプ(図示略)を1500μL/分の吐出速度で運転すると、n−ヘキサンは隔膜(11)を透過し、抽出流路の第1部材の溝部分(3a)および第2部材の溝部分(3b)の全体に充満する。次いで、第2抽出液の入ったシリンジポンプ(図示略)の吐出速度を50μL/分に下げ、第1抽出液の入ったシリンジポンプ(図示略)を40μL/分の吐出速度で運転し、試料水溶液の入ったシリンジポンプ(図示略)を10μL/分の吐出速度で運転すると、すべての抽出流路の第1部材の溝部分(3a)は第1抽出液又はその溶液で置換される。このとき、第2部材の溝部分(3b)および隔膜(11)の細孔内は第2抽出液で満たされた状態が維持される。
【0109】
そして、各第1抽出液取出口(17)からは10μL/分の流速で第1抽出液が流出し、各第2抽出液取出口(18)からは10μL/分の流速で第2抽出液が流出する。
流出した各抽出液を採取し、分光光度計で溶質の濃度を測定する。
【0110】
〔流通試験〕
試料溶液と第1抽出液の入ったシリンジポンプの吐出速度はそのままで、第2抽出液の入ったシリンジポンプ(図示略)を150μL/分の吐出速度で運転すると、各第2抽出液取出口(18)からの第2抽出液の流出速度は30μL/分となるが、第2抽出液各第1抽出液取出口(17)からの第1抽出液が流出速度は10μL/分で変化しない。
【0111】
逆に、第1抽出液の入ったシリンジポンプの吐出速度は40μL/分のままで、第1抽出液の入ったシリンジポンプ(図示略)を250μL/分の吐出速度で運転し、試料溶液の入ったシリンジポンプ(図示略)を50μL/分の吐出速度で運転すると、各第1抽出液取出口(17)からの第1抽出液の流出速度は50μL/分に増加するが、各第2抽出液取出口(18)からの第2抽出液流出速度は10μL/分で変化しない。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の連続多段抽出デバイスのデバイス構造を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)は要部断面図である。抽出流路は1本のみが描かれている。
【図2】本発明の連続多段抽出デバイスにおける抽出流路の一つを示す平面図である。
【図3】本発明の連続多段抽出デバイスにおける上流から下流方向に連続する2段部分の抽出流路の接続を示す平面図である。
【図4】本発明の連続多段抽出デバイスにおける上流から下流方向に連続する3段部分の抽出流路の接続を示す平面図である。
【図5】本発明の連続多段抽出デバイスにおける抽出流路の接続を示す平面図である。
【図6】本発明の連続多段抽出デバイスの一実施形態を示す平面図(a)及び側面図(b)である。
【図7】図6に示された連続多段抽出デバイスの第1部材を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図8】図6に示された連続多段抽出デバイスの第2部材を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図9】本発明の連続多段抽出デバイスの別の実施形態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0113】
1‥第1部材、1c‥第1部材の基材、1d‥第1部材の第1樹脂層、1e‥第1部材の第2樹脂層、2‥第2部材、2d‥第2部材の第1樹脂層、2e‥第2部材の第2樹脂層、3(濃い塗りつぶし部)‥抽出流路、3a(濃い塗りつぶし部)‥第1部材の溝部分、3b(濃い塗りつぶし部)‥第2部材の溝部分、4a‥第1部材側流入部、4b‥第2部材側流入部、5a‥第1部材側流出部、5b‥第2部材側流出部、6a(薄い塗りつぶし部)‥連絡流路、6b(中濃度の塗りつぶし部)‥連絡流路、11‥隔膜、12‥一時的な支持体、15‥第1抽出液導入口、16‥第2抽出液導入口、17‥第1抽出液取出口、18‥第2抽出液取出口、19‥試料導入口、21‥第1抽出液、22‥第2抽出液、23‥試料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスに、第1抽出液導入口から導入された第1抽出液を第1抽出液取出口に向けて流す第1流路と、第2抽出液導入口から導入された第2抽出液を第2抽出液取出口に向けて流す第2流路とが設けられ、これらの流路の途中に、前記第1抽出液と第2抽出液とが流路境界面を境として層状に液−液接触する抽出流路が液流れ方向に沿って多段に配置されていることを特徴とする連続多段抽出デバイス。
【請求項2】
前記デバイスを前記抽出流路に前記各抽出液を流す状態に保持した際、前記抽出流路の長手方向に対して直交する断面における水平方向をX方向とし、垂直方向をY方向とし、且つ前記抽出流路の長手方向をZ方向としたとき、
このデバイスのY方向両端間に設定された水平な面である流路境界面に対し、前記第1流路が前記流路境界面からY方向上側に設けられ、前記第2流路が前記流路境界面からY方向下側に設けられ、
前記第1流路は、Z方向に沿う所定長さを有する第1流路側抽出流路と、この第1流路側抽出流路の上流端及び下流端に連通し、Z方向と交差するα方向に設けられた第1流路側連絡流路とが、上流側にある第1流路側抽出流路の下流端とその下流側にある第1流路側抽出流路の上流端とを連通させて多段に設けられた一連の第1流路側ユニットを複数並設した構造を有し、
前記第2流路は、Z方向に沿う所定長さを有する第2流路側抽出流路と、この第2流路側抽出流路の上流端及び下流端に連通し、Z方向と交差し前記α方向と異なるβ方向に設けられた第2流路側連絡流路とが、上流側にある第2流路側抽出流路の下流端とその下流側にある第2流路側抽出流路の上流端とを連通させて多段に設けられた一連の第1流路側ユニットを複数並設した構造を有し、
このデバイスの多段に配置された抽出流路は、前記第1流路側抽出流路と前記第2流路側抽出流路とがX方向及びZ方向で重なり合い、且つ第1流路側連絡通路と第2流路側連絡通路とがX方向及びY方向で異なる位置となり、
このデバイスにおける第n段の第1流路側抽出流路の下流端は、前記第n段の抽出流路より下流のα方向側にある第n+1段第p番の抽出流路の第1流路側連絡流路に連通すると共に、第n段の第2流路側抽出流路の下流端は、前記第n段の抽出流路より下流のβ方向側にある第n+1段第p+1番の抽出流路の第2流路側連絡流路に連通してなる(ただし、n及びpは1以上の整数を表す)請求項1に記載の連続多段抽出デバイス。
【請求項3】
前記第1流路と前記第2流路との境界に抽出物質透過性の隔膜が設けられた請求項1又は2に記載の連続多段抽出デバイス。
【請求項4】
前記第1流路となる溝が形成された第1部材と、前記第2流路となる溝が形成された第2部材とをそれぞれの溝形成面同士を接合してなる請求項1〜3のいずれかに記載の連続多段抽出デバイス。
【請求項5】
前記第1部材が、部材本体の表面に、表裏を貫通する長穴状の欠損部を有する層状部材が積層されてなり、前記第1部材の溝が、前記部材本体の表面と前記層状部材の前記欠損部で形成され、及び/又は、前記第2部材が、部材本体の表面に、表裏を貫通する長穴状の欠損部を有する層状部材が積層されてなり、前記第2部材の溝が、前記部材本体の表面と前記層状部材の前記欠損部で形成されたものである請求項4に記載の連続多段抽出デバイス。
【請求項6】
前記第1流路の抽出流路の内面の少なくとも一部に、水との接触角が30゜以下の低接触角部分が設けられ、前記第2流路の抽出流路の内面の少なくとも一部に、水との接触角が前記低接触角部分のそれより30゜以上高い高接触角部分が設けられた請求項1〜5のいずれかに記載の連続多段抽出デバイス。
【請求項7】
前記デバイスが有機高分子重合体からなるものである請求項1〜6のいずれかに記載の連続多段抽出デバイス。
【請求項8】
前記抽出流路のY方向長さが1μm以上1mm以下である請求項1〜7のいずれかに記載の連続多段抽出デバイス。
【請求項9】
前記デバイスが光造形法によって一体的に形成されてなる請求項1又は2に記載の連続多段抽出デバイス。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の連続多段抽出デバイスを使用し、
前記最上流段の抽出流路に接続された第1抽出液導入口の一つを試料導入口とし、該試料導入口に第1抽出液を溶媒とする試料溶液を連続的に導入し、及び/又は、前記最上流段の抽出流路に接続された前記第2抽出液導入口の一つを試料導入口とし、該試料導入口に第2抽出液を溶媒とする試料溶液を連続的に導入し、その他の前記第1抽出液導入口に第1抽出液を導入するとともに、その他の前記第2抽出液導入口に第2抽出液を導入し、前記抽出流路において前記第1抽出液と前記第2抽出液に分配された前記試料を、前記最下流段の、前記試料の分配比に応じた番目の前記第1抽出液取出口及び/又は第2抽出液取出口から連続的に取り出すことを特徴とする連続抽出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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