連続捺印型の印判
【課題】捺印者の氏名を印字する印字区画を備えた連続捺印型の印判において、氏名などを印字する印字区画の印字内容を簡便にしかも低コストで変更でき、必要に応じてユーザー自身で印字内容の変更を迅速に行える印判を提供する。
【解決手段】捺印面に接当する外ケース1と、外ケース1で昇降自在に案内支持されて、ばね4で浮揚支持される印字ケース2を備えている。印字ケース2の下部のホルダー枠11に2以上の印字区画S1・S2を設け、そのひとつに連続捺印が可能な氏名印ユニット26を配置し、残る印字区画に印字内容が固定化されたゴム印字体17とインク吸蔵マット15とを配置する。氏名印ユニット26はホルダー枠11ないし印字ケース2に対して着脱可能に装着する。
【解決手段】捺印面に接当する外ケース1と、外ケース1で昇降自在に案内支持されて、ばね4で浮揚支持される印字ケース2を備えている。印字ケース2の下部のホルダー枠11に2以上の印字区画S1・S2を設け、そのひとつに連続捺印が可能な氏名印ユニット26を配置し、残る印字区画に印字内容が固定化されたゴム印字体17とインク吸蔵マット15とを配置する。氏名印ユニット26はホルダー枠11ないし印字ケース2に対して着脱可能に装着する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の印字区画を備えていて多色の印字表示が可能な連続捺印型の印判に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る連続捺印型の印判は、たとえば多色印として使用するのに好適であるが、この種の印判は特許文献1に公知である。そこでは、印面台の下面にインクを吸蔵できるゴム印字体を設け、ゴム印字体に切り込みを入れて印面を区分し、切込み部分に接着剤層や薄い金属板を配置して、隣接する印字区画に含浸させた色の異なるインクが混じりあうのを防いでいる。特許文献2には、筒状の本体部の内部に独立した3個の区室を形成し、各区室の内部にゴム印字体と、インク含浸体と、インク吸蔵材が組み込んである。
【0003】
この種の二色印において、横長四角形状の印面に店名や法人名と住所、あるいは書類内容の表示などを印字する印字区画と、捺印者の氏名を印字する印字区画とを隣接配置し、前者の印字区画を黒または紺色などで印字し、後者の印字区画を赤または朱色で印字できる印判が市販されている(シヤチハタ株式会社 品番X−BC 商品コード62002等)。
【0004】
上記の印判は、捺印面に接当する外ケースと、外ケースで昇降自在に案内支持される印字ケースと、印字ケースを捺印面から浮揚支持するばねと、印字ケースの下部に着脱されるホルダー枠などで構成してある。ホルダー枠には、個々の印字区画ごとにゴム印字体とインク吸蔵マットが組み込んであり、隣接する印字区画は金属薄板で区分してある。ホルダー枠は、外側方へスライド操作することで印字ケースから取り外して分離でき、この分離状態において上面側からインクを滴下補充できる。なお、本発明の印判に関して、印字ケースに組み込まれる連続捺印型の氏名印ユニットの基本構造は、たとえば特許文献3に公知である。
【0005】
【特許文献1】実開昭58−196155号公報(第4頁第3行、第2図)
【特許文献2】実公昭39−22334号公報(第1頁左欄第5〜13行、第1図)
【特許文献3】特開平8−108606号公報(段落番号0017、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の多色印は、インクの色が異なる隣接する印字区画を、切り込み部分に配置した接着剤層で区分することにより、隣接する印字区画に吸蔵されたインクが混じりあうのを防止できる。しかし、印字面の側からインクを滴下して補充する必要があるので、誤って隣接する印字区画にインクを滴下するおそれがある。補充されたインクがゴム印字体の各印字区画に含浸されるまえに、隣接する印字区画に染み込むおそれがある。この点、特許文献2の多色印は、筒状の本体部の上面開口から各区室のインク吸蔵体にインクを的確に滴下できる。しかし、特許文献1・2のいずれの多色印も、印字内容が固定化されていて印字内容を変更できない不便がある。
【0007】
先に説明した市販品の印判は、特許文献2の印判と同様に、印字ケースから取り外したホルダー枠の上面側からインクを補充できる。しかし、隣接する印字区画を金属薄板で区分するだけであるため、補充されたインクがインク吸蔵マットに完全に吸い込まれる前に金属薄板を乗越えて隣の印字区画に流れ込むおそれがある。また、印字内容が固定化されていて、印字内容をユーザー自身で変更するのは難しい。印章店に交換を依頼することはできるが、交換対象となるゴム印字体を特注する必要があるので、ゴム印字体の交換に多くの時間とコストがかかり、即応性に欠ける。
【0008】
本発明の目的は、複数の印字区画を備えた連続捺印型の印判において、インク補充の際に異なる色のインクが混じりあうのを防止できるのはもちろん、印字内容の一部を必要に応じて簡便にしかも低コストで変更できる連続捺印型の印判を提供することにある。本発明の目的は、捺印者の氏名を印字する印字区画を備えた連続捺印型の印判において、氏名などを印字する印字区画の印字内容を簡便にしかも低コストで変更でき、必要に応じてユーザー自身で印字内容の変更を迅速に行える印判を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の連続捺印型の印判は、捺印面に接当する外ケース1と、外ケース1に沿って昇降する印字ケース2と、外ケース1と印字ケース2との間に配置されて印字ケース2を捺印面から浮揚支持するばね4とを備えている。印字ケース2の下部に設けたホルダー枠11の内部は、区分壁32で2以上の印字区画S1・S2に区分する。前記印字区画S1・S2の一方S2には、連続捺印が可能なゴム印字体39を含む印字構造26を分離可能に装着する。残る印字区画S1には、印字内容が固定化されたゴム印字体17とインク吸蔵マット15を配置する。
【0010】
図4に示すように、印字構造は、上下面が開口する筒ケース35と、筒ケース35の下部内面に組み込まれるインク吸蔵マット38およびゴム印字体39とを含む氏名印ユニット26からなる。
【0011】
ホルダー枠11の下面に、印字区画S1に装着したゴム印字体17を押え保持する押え枠27を着脱可能に装着する。図11および図16に示すように前記区分壁32は、押え枠27と一体に形成する。
【0012】
ホルダー枠11の下面に、印字区画S1に装着したゴム印字体17を押え保持する押え枠27を組み付ける。図11に示すように印字構造26は、押え枠27と一体に設けた装着構造25に対して着脱自在に装着する。
【0013】
印字ケース2に印字構造26を装着するための装着ピース25を内嵌固定する。以て、装着ピース25の下部に設けた区分筒壁29の一部が区分壁32を兼ねるようにする。
【0014】
装着構造25と印字構造26との間に、印字構造26の印面高さを調整する高低調整構造を設ける。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、ホルダー枠11の内部を区分壁32で2以上の印字区画S1・S2に区分し、そのひとつS2に連続捺印が可能な印字構造26を分離可能に装着し、残る印字区画S1に印字内容が固定化されたゴム印字体17とインク吸蔵マット15とを配置した。このように、印字構造26を印字区画S2に分離可能に装着すると、印字構造26を交換することで表示される印字内容を変更できるので、従来の印判に比べて印字内容を簡便に変更でき、必要に応じて印字構造26の交換をユーザー自身で行える。複数の印字区画S1・S2を区分壁32で区分するので、印字構造26の内部に含浸したインクが隣の印字区画に染み出ることがなく、逆にゴム印字体17に含浸させたインクが印字構造26の側に入り込むこともない。
【0016】
印字構造が、筒ケース35と、筒ケース35の内部に組み込まれるインク吸蔵マット38およびゴム印字体39などからなる氏名印ユニット26で構成してあると、少なくとも氏名などを印字するための既存のゴム印字体39とインク吸蔵マット38を流用できるので、ゴム印字体39を特注する必要もなく即座にしかも安価に入手できる。さらに、数千種類の氏名について常時在庫がある、連続捺印式の既製の印字ユニットを利用して氏名印ユニット26とする場合には、とくに珍しい名字でない限りは、ゴム印字体39を特注する必要もなく即座に氏名印ユニット26を入手できるので、印字内容を簡便にしかも低コストで変更できる。インク補充の際に、ゴム印字体17に含浸したインクが染み出ることがあったとしても、インクが氏名印ユニット26の内部に入り込む余地がないので、異なる色のインクが混じりあうのを確実に防止できる。
【0017】
押え枠27と一体に区分壁32を形成すると、区分壁32の形成位置が異なる押え枠27を複数種用意しておくことにより、印字区画S1・S2の大きさを変更できるので、例えば印字ケース2に区分壁32が一体成形してある場合に比べて、印字区画S1・S2の大きさが異なる印判をより少ないコストで提供できる。
【0018】
押え枠27と一体に装着構造25を設け、この装着構造25に対して印字構造26を着脱自在に装着すると、上記の押え枠27と同様に、装着構造25が異なる複数種の押え枠27を用意しておくことにより、各種の印字構造26に対応できる印判をより少ないコストで提供できる。さらに、例えば装着構造25を印字ケース2と一体に設ける場合に比べて印字ケース2の構造を簡素化でき、しかも外ケース1や印字ケース2などの、既存の二色印の構成部品をそのまま利用して、あるいは構造の一部を変更して印判を構成することができ、印判全体の製造コストを削減できる点で有利である。
【0019】
印字ケース2に装着ピース25を内嵌固定し、その下部に設けた区分筒壁29の一部が、隣接する印字区画S1の区分壁32を兼ねるようにした印判によれば、別途区分壁32を設ける必要がない分だけホルダー枠11を簡素化でき、さらに、大きさが異なる複数種の装着ピース25を用意しておくことにより、印字区画S1の大きさを大小に変更できる。また、大きさが異なる複数種の装着ピース25を用意しておくことにより、印面サイズが異なる氏名印ユニット26をホルダー枠11に組むことができ、その分だけ印判の品種を多様化できる。
【0020】
装着構造25と印字構造26との間に高低調整構造が設けてあると、印字構造26の印面高さを調整して、各印字区画S1・S2に配置されたゴム印字体17・39の印面高さを揃えることができ、したがって両ゴム印字体17・39の印字結果に濃淡が生じるのを解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(実施例1) 図1ないし図9は本発明に係る連続捺印型の印判の実施例を示す。図1ないし図3において、印判は捺印面に接当する外ケース1と、外ケース1で昇降自在に案内支持される印字ケース2と、印字ケース2に圧嵌係合されて外ケース1の上面開口を覆うグリップ3を主な構造体にして構成してある。印字ケース2は、外ケース1の内面中央と印字ケース2との間に配置した圧縮コイル形のばね4で、捺印面から浮き離れる状態で浮揚支持される。
【0022】
外ケース1は、上下面が開口する左右横長の角枠体からなるプラスチック成形品からなり、その下半部分に捺印面に接当するスカート部6を有し、上半部にスカート部6よりひと回り小さなガイド枠7が連出してある。図3に示すようにガイド枠7は、正面から見て凹字状に形成してある。スカート部6の内面中央には、ばね4の下端を受け止めるばね受座8が形成され、その底壁に後述するばね受筒13用の挿通穴9が形成してある。
【0023】
印字ケース2は、下向きに開口するホルダー枠11と、ホルダー枠11の上面左右に突設される一対のインク補充口12と、インク補充口12の外側面に連続して突設される断面コ字状の連結腕13と、インク補充口12の間に突設されるばね受筒14とを一体に備えたプラスチック成形品からなる。角枠状に形成されるインク補充口12は、ホルダー枠11の内部空間と連通している。ホルダー枠11の内部には、インク吸蔵マット15を組み込むための上凹部16と、多孔質ゴムからなるゴム印字体17を組み込むための下凹部18とが多段状に形成してあり、上凹部16の前後周面で左右のインク補充口12に臨む個所には、それぞれ位置決め凹部19(図3参照)が形成してある。
【0024】
グリップ3は下向きに開口する横長四角容器状のプラスチック成形品からなり、その内面左右に設けた係合腕22を、図1に示すように先の連結腕13に凹凸係合構造24を介して圧嵌係合することにより、印字ケース2と一体化される。グリップ3の内面中央寄りの左右には、左右のインク補充口12の開口周縁壁に接当する押圧脚23が一体に形成してある。なお、この実施例における外ケース1、印字ケース2、グリップ3の三者は、既製品である連続捺印型の印判用の構成部品を流用したものである。
【0025】
ホルダー枠11の内面一側に、インク補充口12を利用して装着ピース(装着構造)25を嵌め込み装着することにより、ホルダー枠11の内部を大小2個の印字区画S1・S2に区分し、大きい側の印字区画S1に先のインク吸蔵マット15とゴム印字体17を装填し、装着ピース25に連続捺印が可能な既製の氏名印ユニット(印字構造)26を組み込んでいる。図9に示すようにゴム印字体17の捺印面には、店名や法人名と住所、あるいは書類内容の表示などの、固定化された表示内容を印字するための印字部が膨出形成してあり、その周囲がホルダー枠11に下面側から外嵌装着した押え枠27で保持固定してある(図7参照)。押え枠27は、プレス成形品とプラスチック成形品のどちらであってもよい。
【0026】
図3および図4に示すように装着ピース25は、氏名印ユニット26を内嵌装着するための装着筒28と、装着筒28の下部に連続する四角枠状の区分筒壁29とを一体に備えたプラスチック成形品からなる。装着筒28の中途部周面には四角形のフランジ30が張り出し形成され、区分筒壁29の前後面には左右一対の位置決めリブ31が突設してある。装着ピース25をホルダー枠11の内面に嵌め込んだ状態において、区分筒壁29の三周壁がホルダー枠11で係合保持され、同時に先のフランジ30がインク補充口12に嵌まり込み、さらに前後の位置決めリブ31が位置決め凹部19に嵌まり込む(図8参照)。これにより装着ピース25の全体が前後方向と左右方向と上下方向に遊動規制され、位置決めされている。区分筒壁29の四周壁のうちのひとつは、印字区画S1と印字区画S2とを区分する区分壁32を兼ねている。なお、装着ピース25は印字ケースに対して接着固定してもよい。
【0027】
図4ないし図6において、氏名印ユニット26は、上下面が開口する丸筒状の筒ケース35と、筒ケース35の下部内面に設けた多段状の上筒36および下筒37に組み込まれる、インク吸蔵マット38および多孔質ゴムからなるゴム印字体39と、下筒37の外面に装着されてゴム印字体39の抜け外れを防ぐリング状の止め金具40と、筒ケース35の上面開口に内嵌される栓体41とで構成してある。この実施例では、数千種類の氏名について常時在庫がある、連続捺印式の既製の氏名印を構成する印字ユニットを利用して氏名印ユニット26とした。したがって、とくに珍しい名字でない限りは、ゴム印字体39を特注する必要もなく即座に、しかも安価に供給できる。
【0028】
氏名印ユニット26は装着ピース25に対して着脱可能に組み込まれる。そのために、筒ケース35の周面上部に、筒壁の弾性変形を許すスリット43を形成し、筒壁の上部周面にリブ状の係合突起44を形成している。氏名印ユニット26を装着ピース25に圧嵌装着するとき、スリット43を含む筒ケース35の筒壁は、縮径方向に弾性変形しながら装着筒28をくぐり抜けたのち、係合突起44が装着筒28の上端開口縁で受け止められる。この組み付け状態において、氏名印ユニット26のゴム印字体30の印面高さと、印字区画S1に装填したゴム印字体17の印面高さとは一致しているので、図6に示すように、グリップ3を押し下げ操作して捺印するとき、隣接する印字区画S1・S2の一方の区画における印字状態が滲んだり、かすれることはなく、均等にしかも適正に印字できる。図1および図2において符号46は印面キャップである。
【0029】
氏名印ユニット26を交換する場合には、グリップ3を印字ケース2から抜き外したのち、印字ケース2の上面側から栓体41に指先をあてがって押し込み操作することで、図4に示すように氏名印ユニット26を装着ピース25から下方へ分離できる。新たな氏名印ユニット26は栓体41の側を差し込み始端にして、筒ケース35を装着ピース25に差し込み係合することにより、簡単に印字ケース2と一体化できる。装着状態において、氏名印ユニット26のゴム印字体39は、リング状の止め金具40と装着ピース25の区分筒壁29などで囲まれて、隣接する印字区画S1から隔離されるので、印字区画S1に収容したゴム印字体17に含浸されたインクが、氏名印ユニット26のゴム印字体39に染み込むのを確実に防止できる。
【0030】
以上のように構成した連続捺印型の印判は、例えば印字区画S1に収容したインク吸蔵マット15およびゴム印字体17に、黒や紺色のインクを含浸させ、氏名印ユニット26のインク吸蔵マット38およびゴム印字体39に、赤や朱色のインクを含浸させて二色印として使用できる。例えば、前者印字区画S1のゴム印字体17によって、図9に示すように店名や法人名と住所、あるいは書類内容の表示などの固定化された表示内容を印字し、同時に後者印字区画S2に設けた氏名印ユニット26のゴム印字体39によって、捺印者の氏名を印字することができる。印字構造26は、捺印者の氏名を表わすものである必要はなく、捺印者の社員番号や、捺印者の所属する職域を意味する表示であってもよい。さらに、「検」、「済」、「控」などの検認を意味する表示や、バーコードや2次元バーコードであってもよい。
【0031】
インクを補充する場合には、グリップ3を印字ケース2から取り外したのち、一方のインク補充口12から所定の色のインクを滴下して、インク吸蔵マット15にインクを含浸させる。さらに、栓体41を筒ケース35から取り外して、所定の色のインクを滴下して、インク吸蔵マット38にインクを含浸させる。このように、筒ケース35の内部にインクを滴下する状況では、滴下したインクがゴム印字体17を収容する印字区画S1に染み出ることがなく、逆にゴム印字体17に含浸させたインクが氏名印ユニット26の内部に入り込む余地もない。したがって、インク補充時はもちろん、使用時に異なる色のインクが互いに混じりあうことはなく、常に適正な呈色状態の捺印を行うことができる。
【0032】
(実施例2) 図10および図11は本発明に係る印判の別の実施例を示す。そこでは、押え枠27をプラスチック成形品で形成し、上記の実施例における装着ピースに相当する装着構造25を押え枠27と一体に形成し、氏名印ユニット(印字構造)26を装着構造25に対して着脱可能に係合装着した。この場合の氏名印ユニット26は、筒ケース35の内部にインク吸蔵マット38とゴム印字体39を収容し、筒ケース35の下面に外嵌装着した止め金具40で抜け止めした。図11に示すように、押え枠27の前後壁の上縁には左右一対の係合爪27aが突設してあり、これらの係合爪27aをホルダー枠11の前後壁の設けた段部11aに係合することにより、押え枠27をホルダー枠11に固定できる。
【0033】
装着構造25は、氏名印ユニット26の印字部分を収容する角枠状の筒枠51と、筒ケース35が係合装着される装着座52とを備えている。装着座52には係合穴53が形成され、その対向周面に回止め溝54が形成してある。筒ケース35の周面には回止め溝54と係合する一対のリブ55が形成してあり、これら両者54・55の係合により氏名印ユニット26が捺印時に回動するのを規制している。氏名印ユニット26は、装着座52と下筒37の上壁との間に介装したばね56で押下げ付勢されており、これにより印字区画S1に収容したゴム印字体17と、氏名印ユニット26のゴム印字体39との印面の高低差をばね56で吸収して、両ゴム印字体17・39の印影の濃淡を抑止できるようにしている。
【0034】
氏名印ユニット26を交換する場合には、筒ケース35の上端を下向きに押し込むだけで、氏名印ユニット26の全体を装着構造25から分離できる。この実施例では、筒枠51の周囲壁のひとつが区分壁32を兼ねる。この実施例における外ケース1と印字ケース2は既存の二色印の構成部品であって、そのまま利用して印判を構成できる。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同様に扱う。
【0035】
(実施例3) 図12〜図14は本発明に係る印判の別の実施例を示す。そこでは、実施例1と同様に、インク補充口12を利用して装着ピース25をホルダー枠11に装着固定した。装着ピース25は、氏名印ユニット26の印字部分を収容する区分筒壁29を備えており、区分筒壁29の上壁にボス60を一体に備えている。ボス60の内面にはねじ穴61が上下貫通状に形成してあり、区分筒壁29の内面前後には、氏名印ユニット26を回止め保持する規制リブ62が形成してある。
【0036】
氏名印ユニット26は、筒ケース35の内部にインク吸蔵マット38とゴム印字体39とを収容し、止め金具40で抜け止め固定する。図13に示すように筒ケース35の周面前後には、先の規制リブ62と係合する溝63が形成してあり、これら両者62・63の係合により氏名印ユニット26が捺印時に回動するのを規制している。氏名印ユニット26の印面の高さを変更調整するために、先のねじ穴61に調整筒65をねじ込み装着し、その下端部分に氏名印ユニット26を圧嵌装着している。調整筒65は、周面に雄ねじ66が形成してある下筒部67と、下筒部67より大径の操作筒68とを一体に備えており、下筒部67の外面に筒ケース35の上部の筒開口69を圧嵌装着して、筒開口69の内面に設けた係合突起44を下筒部67の周面の係合突起70で受け止めさせる。
【0037】
上記の調整筒65をねじ込み操作することにより、氏名印ユニット26を高低調整して、ゴム印字体39の印面高さを適正化できる。氏名印ユニット26を交換する場合には、図14に示すように、調整筒65を最後までねじ込んで、雄ねじ66をねじ穴61から分離し、操作筒68をボス60で受け止めて、氏名印ユニット26を印字区画S2の外へ露出させる。この状態で氏名印ユニット26の全体を引っ張り操作することにより、係合突起44・70の係合状態を解除して、氏名印ユニット26を装着構造25から分離できる。
【0038】
(実施例4) 図15は本発明に係る印判の別の実施例を示す。そこでは、上記の実施例における装着ピースに相当する装着構造25を印字ケース2と一体に形成し、氏名印ユニット(印字構造)26を装着構造25に対して着脱可能に係合装着した。この場合の装着構造25は、区分筒壁29と、氏名印ユニット26の筒ケース35が内嵌装着される筒壁71を含んで構成してある。氏名印ユニット26は、上筒36の中心軸線と下筒37の中心軸線とが偏心させてある。区分筒壁29の周壁のひとつは、大小2個の印字区画S1・S2を区分する区分壁32を兼ねている。
【0039】
(実施例5) 図16および図17は本発明に係る印判の別の実施例を示す。そこでは、区分壁32を押え枠27と一体に形成し、さらに区分壁32に連続する前後壁73を設けて、区分壁32と前後壁73とホルダー枠11の側端壁で囲まれる装着構造25を形成し、その内部に印字構造26を収容した。この場合の印字構造26は、インク吸蔵マット58と、ゴム印字体59とからなり、これら両者は、上凹部16と押え枠27とで保持固定される。インクを補充する場合には、グリップ3を印字ケース2から取り外したのち、各インク補充口12から所定の色のインクを滴下して、インク吸蔵マット15・58にインクを含浸させる。この状態からさらに、印字ケース2を外ケース1から分離し、押え枠27の係合爪27aと段部11aとの係合を解除すると、押え枠27をホルダー枠11から分離できるので、インク吸蔵マット58およびゴム印字体59を交換することができる。
【0040】
上記の実施例では、ホルダー枠11を印字ケース2と一体に形成したが、ホルダー枠11を印字ケース2と別体の部品で形成して、印字ケース2に対してスライド着脱自在に装着することができる。その場合には、氏名印ユニット26の上下寸法をホルダー枠11の上下寸法と同じ程度にまで小さく設定して、筒ケース35がホルダー枠11の出し入れの邪魔になるのを避けるとよい。本発明の印判は、各実施例に固有の構造を組み合わせて実施することができる。
【0041】
固定化された表示内容を印字するゴム印字体17に含浸されるインクと、氏名印ユニット26のゴム印字体39に含浸されるインクとは、色違いとする以外に、異質のインクを含浸させて使用することができる。例えば、前者インクを染料系や顔料系の通常インクで形成しておき、後者インクを紫外線を照射した場合にのみ読み取りできる蛍光インクで形成することができる。印字区画は2個以上設けることができる。インク吸蔵マット38の代わりに、栓体41に装着した棒状のインク吸蔵体にインクを含浸させて、ゴム印字体39にインクを補充することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1に係る印判の縦断正面図である。
【図2】印判の正面図である。
【図3】主な構成部品の一部を破断した分解正面図である。
【図4】グリップと印字ユニットを分離した状態の縦断面図である。
【図5】図1におけるA−A線断面図である。
【図6】印判の捺印状態を示す縦断正面図である。
【図7】印判の底面図である。
【図8】図5におけるB−B線断面図である。
【図9】捺印の結果えられる印字例を示す平面図である。
【図10】実施例2に係る印判を示す縦断正面図である。
【図11】図10に係る構成部品の一部を破断した分解正面図である。
【図12】実施例3に係る印判を示す縦断正面図である。
【図13】図12に係る構成部品の一部を破断した分解正面図である。
【図14】印字構造の着脱状況を示す縦断正面図である。
【図15】実施例4に係る印判を示す縦断正面図である。
【図16】実施例5に係る印判を示す縦断正面図である。
【図17】図16におけるC−C線断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 外ケース
2 印字ケース
4 ばね
11 ホルダー枠
15 インク吸蔵マット
17 ゴム印字体
25 装着ピース
26 氏名印ユニット
35 筒ケース
38 インク吸蔵マット
39 ゴム印字体
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の印字区画を備えていて多色の印字表示が可能な連続捺印型の印判に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る連続捺印型の印判は、たとえば多色印として使用するのに好適であるが、この種の印判は特許文献1に公知である。そこでは、印面台の下面にインクを吸蔵できるゴム印字体を設け、ゴム印字体に切り込みを入れて印面を区分し、切込み部分に接着剤層や薄い金属板を配置して、隣接する印字区画に含浸させた色の異なるインクが混じりあうのを防いでいる。特許文献2には、筒状の本体部の内部に独立した3個の区室を形成し、各区室の内部にゴム印字体と、インク含浸体と、インク吸蔵材が組み込んである。
【0003】
この種の二色印において、横長四角形状の印面に店名や法人名と住所、あるいは書類内容の表示などを印字する印字区画と、捺印者の氏名を印字する印字区画とを隣接配置し、前者の印字区画を黒または紺色などで印字し、後者の印字区画を赤または朱色で印字できる印判が市販されている(シヤチハタ株式会社 品番X−BC 商品コード62002等)。
【0004】
上記の印判は、捺印面に接当する外ケースと、外ケースで昇降自在に案内支持される印字ケースと、印字ケースを捺印面から浮揚支持するばねと、印字ケースの下部に着脱されるホルダー枠などで構成してある。ホルダー枠には、個々の印字区画ごとにゴム印字体とインク吸蔵マットが組み込んであり、隣接する印字区画は金属薄板で区分してある。ホルダー枠は、外側方へスライド操作することで印字ケースから取り外して分離でき、この分離状態において上面側からインクを滴下補充できる。なお、本発明の印判に関して、印字ケースに組み込まれる連続捺印型の氏名印ユニットの基本構造は、たとえば特許文献3に公知である。
【0005】
【特許文献1】実開昭58−196155号公報(第4頁第3行、第2図)
【特許文献2】実公昭39−22334号公報(第1頁左欄第5〜13行、第1図)
【特許文献3】特開平8−108606号公報(段落番号0017、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の多色印は、インクの色が異なる隣接する印字区画を、切り込み部分に配置した接着剤層で区分することにより、隣接する印字区画に吸蔵されたインクが混じりあうのを防止できる。しかし、印字面の側からインクを滴下して補充する必要があるので、誤って隣接する印字区画にインクを滴下するおそれがある。補充されたインクがゴム印字体の各印字区画に含浸されるまえに、隣接する印字区画に染み込むおそれがある。この点、特許文献2の多色印は、筒状の本体部の上面開口から各区室のインク吸蔵体にインクを的確に滴下できる。しかし、特許文献1・2のいずれの多色印も、印字内容が固定化されていて印字内容を変更できない不便がある。
【0007】
先に説明した市販品の印判は、特許文献2の印判と同様に、印字ケースから取り外したホルダー枠の上面側からインクを補充できる。しかし、隣接する印字区画を金属薄板で区分するだけであるため、補充されたインクがインク吸蔵マットに完全に吸い込まれる前に金属薄板を乗越えて隣の印字区画に流れ込むおそれがある。また、印字内容が固定化されていて、印字内容をユーザー自身で変更するのは難しい。印章店に交換を依頼することはできるが、交換対象となるゴム印字体を特注する必要があるので、ゴム印字体の交換に多くの時間とコストがかかり、即応性に欠ける。
【0008】
本発明の目的は、複数の印字区画を備えた連続捺印型の印判において、インク補充の際に異なる色のインクが混じりあうのを防止できるのはもちろん、印字内容の一部を必要に応じて簡便にしかも低コストで変更できる連続捺印型の印判を提供することにある。本発明の目的は、捺印者の氏名を印字する印字区画を備えた連続捺印型の印判において、氏名などを印字する印字区画の印字内容を簡便にしかも低コストで変更でき、必要に応じてユーザー自身で印字内容の変更を迅速に行える印判を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の連続捺印型の印判は、捺印面に接当する外ケース1と、外ケース1に沿って昇降する印字ケース2と、外ケース1と印字ケース2との間に配置されて印字ケース2を捺印面から浮揚支持するばね4とを備えている。印字ケース2の下部に設けたホルダー枠11の内部は、区分壁32で2以上の印字区画S1・S2に区分する。前記印字区画S1・S2の一方S2には、連続捺印が可能なゴム印字体39を含む印字構造26を分離可能に装着する。残る印字区画S1には、印字内容が固定化されたゴム印字体17とインク吸蔵マット15を配置する。
【0010】
図4に示すように、印字構造は、上下面が開口する筒ケース35と、筒ケース35の下部内面に組み込まれるインク吸蔵マット38およびゴム印字体39とを含む氏名印ユニット26からなる。
【0011】
ホルダー枠11の下面に、印字区画S1に装着したゴム印字体17を押え保持する押え枠27を着脱可能に装着する。図11および図16に示すように前記区分壁32は、押え枠27と一体に形成する。
【0012】
ホルダー枠11の下面に、印字区画S1に装着したゴム印字体17を押え保持する押え枠27を組み付ける。図11に示すように印字構造26は、押え枠27と一体に設けた装着構造25に対して着脱自在に装着する。
【0013】
印字ケース2に印字構造26を装着するための装着ピース25を内嵌固定する。以て、装着ピース25の下部に設けた区分筒壁29の一部が区分壁32を兼ねるようにする。
【0014】
装着構造25と印字構造26との間に、印字構造26の印面高さを調整する高低調整構造を設ける。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、ホルダー枠11の内部を区分壁32で2以上の印字区画S1・S2に区分し、そのひとつS2に連続捺印が可能な印字構造26を分離可能に装着し、残る印字区画S1に印字内容が固定化されたゴム印字体17とインク吸蔵マット15とを配置した。このように、印字構造26を印字区画S2に分離可能に装着すると、印字構造26を交換することで表示される印字内容を変更できるので、従来の印判に比べて印字内容を簡便に変更でき、必要に応じて印字構造26の交換をユーザー自身で行える。複数の印字区画S1・S2を区分壁32で区分するので、印字構造26の内部に含浸したインクが隣の印字区画に染み出ることがなく、逆にゴム印字体17に含浸させたインクが印字構造26の側に入り込むこともない。
【0016】
印字構造が、筒ケース35と、筒ケース35の内部に組み込まれるインク吸蔵マット38およびゴム印字体39などからなる氏名印ユニット26で構成してあると、少なくとも氏名などを印字するための既存のゴム印字体39とインク吸蔵マット38を流用できるので、ゴム印字体39を特注する必要もなく即座にしかも安価に入手できる。さらに、数千種類の氏名について常時在庫がある、連続捺印式の既製の印字ユニットを利用して氏名印ユニット26とする場合には、とくに珍しい名字でない限りは、ゴム印字体39を特注する必要もなく即座に氏名印ユニット26を入手できるので、印字内容を簡便にしかも低コストで変更できる。インク補充の際に、ゴム印字体17に含浸したインクが染み出ることがあったとしても、インクが氏名印ユニット26の内部に入り込む余地がないので、異なる色のインクが混じりあうのを確実に防止できる。
【0017】
押え枠27と一体に区分壁32を形成すると、区分壁32の形成位置が異なる押え枠27を複数種用意しておくことにより、印字区画S1・S2の大きさを変更できるので、例えば印字ケース2に区分壁32が一体成形してある場合に比べて、印字区画S1・S2の大きさが異なる印判をより少ないコストで提供できる。
【0018】
押え枠27と一体に装着構造25を設け、この装着構造25に対して印字構造26を着脱自在に装着すると、上記の押え枠27と同様に、装着構造25が異なる複数種の押え枠27を用意しておくことにより、各種の印字構造26に対応できる印判をより少ないコストで提供できる。さらに、例えば装着構造25を印字ケース2と一体に設ける場合に比べて印字ケース2の構造を簡素化でき、しかも外ケース1や印字ケース2などの、既存の二色印の構成部品をそのまま利用して、あるいは構造の一部を変更して印判を構成することができ、印判全体の製造コストを削減できる点で有利である。
【0019】
印字ケース2に装着ピース25を内嵌固定し、その下部に設けた区分筒壁29の一部が、隣接する印字区画S1の区分壁32を兼ねるようにした印判によれば、別途区分壁32を設ける必要がない分だけホルダー枠11を簡素化でき、さらに、大きさが異なる複数種の装着ピース25を用意しておくことにより、印字区画S1の大きさを大小に変更できる。また、大きさが異なる複数種の装着ピース25を用意しておくことにより、印面サイズが異なる氏名印ユニット26をホルダー枠11に組むことができ、その分だけ印判の品種を多様化できる。
【0020】
装着構造25と印字構造26との間に高低調整構造が設けてあると、印字構造26の印面高さを調整して、各印字区画S1・S2に配置されたゴム印字体17・39の印面高さを揃えることができ、したがって両ゴム印字体17・39の印字結果に濃淡が生じるのを解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(実施例1) 図1ないし図9は本発明に係る連続捺印型の印判の実施例を示す。図1ないし図3において、印判は捺印面に接当する外ケース1と、外ケース1で昇降自在に案内支持される印字ケース2と、印字ケース2に圧嵌係合されて外ケース1の上面開口を覆うグリップ3を主な構造体にして構成してある。印字ケース2は、外ケース1の内面中央と印字ケース2との間に配置した圧縮コイル形のばね4で、捺印面から浮き離れる状態で浮揚支持される。
【0022】
外ケース1は、上下面が開口する左右横長の角枠体からなるプラスチック成形品からなり、その下半部分に捺印面に接当するスカート部6を有し、上半部にスカート部6よりひと回り小さなガイド枠7が連出してある。図3に示すようにガイド枠7は、正面から見て凹字状に形成してある。スカート部6の内面中央には、ばね4の下端を受け止めるばね受座8が形成され、その底壁に後述するばね受筒13用の挿通穴9が形成してある。
【0023】
印字ケース2は、下向きに開口するホルダー枠11と、ホルダー枠11の上面左右に突設される一対のインク補充口12と、インク補充口12の外側面に連続して突設される断面コ字状の連結腕13と、インク補充口12の間に突設されるばね受筒14とを一体に備えたプラスチック成形品からなる。角枠状に形成されるインク補充口12は、ホルダー枠11の内部空間と連通している。ホルダー枠11の内部には、インク吸蔵マット15を組み込むための上凹部16と、多孔質ゴムからなるゴム印字体17を組み込むための下凹部18とが多段状に形成してあり、上凹部16の前後周面で左右のインク補充口12に臨む個所には、それぞれ位置決め凹部19(図3参照)が形成してある。
【0024】
グリップ3は下向きに開口する横長四角容器状のプラスチック成形品からなり、その内面左右に設けた係合腕22を、図1に示すように先の連結腕13に凹凸係合構造24を介して圧嵌係合することにより、印字ケース2と一体化される。グリップ3の内面中央寄りの左右には、左右のインク補充口12の開口周縁壁に接当する押圧脚23が一体に形成してある。なお、この実施例における外ケース1、印字ケース2、グリップ3の三者は、既製品である連続捺印型の印判用の構成部品を流用したものである。
【0025】
ホルダー枠11の内面一側に、インク補充口12を利用して装着ピース(装着構造)25を嵌め込み装着することにより、ホルダー枠11の内部を大小2個の印字区画S1・S2に区分し、大きい側の印字区画S1に先のインク吸蔵マット15とゴム印字体17を装填し、装着ピース25に連続捺印が可能な既製の氏名印ユニット(印字構造)26を組み込んでいる。図9に示すようにゴム印字体17の捺印面には、店名や法人名と住所、あるいは書類内容の表示などの、固定化された表示内容を印字するための印字部が膨出形成してあり、その周囲がホルダー枠11に下面側から外嵌装着した押え枠27で保持固定してある(図7参照)。押え枠27は、プレス成形品とプラスチック成形品のどちらであってもよい。
【0026】
図3および図4に示すように装着ピース25は、氏名印ユニット26を内嵌装着するための装着筒28と、装着筒28の下部に連続する四角枠状の区分筒壁29とを一体に備えたプラスチック成形品からなる。装着筒28の中途部周面には四角形のフランジ30が張り出し形成され、区分筒壁29の前後面には左右一対の位置決めリブ31が突設してある。装着ピース25をホルダー枠11の内面に嵌め込んだ状態において、区分筒壁29の三周壁がホルダー枠11で係合保持され、同時に先のフランジ30がインク補充口12に嵌まり込み、さらに前後の位置決めリブ31が位置決め凹部19に嵌まり込む(図8参照)。これにより装着ピース25の全体が前後方向と左右方向と上下方向に遊動規制され、位置決めされている。区分筒壁29の四周壁のうちのひとつは、印字区画S1と印字区画S2とを区分する区分壁32を兼ねている。なお、装着ピース25は印字ケースに対して接着固定してもよい。
【0027】
図4ないし図6において、氏名印ユニット26は、上下面が開口する丸筒状の筒ケース35と、筒ケース35の下部内面に設けた多段状の上筒36および下筒37に組み込まれる、インク吸蔵マット38および多孔質ゴムからなるゴム印字体39と、下筒37の外面に装着されてゴム印字体39の抜け外れを防ぐリング状の止め金具40と、筒ケース35の上面開口に内嵌される栓体41とで構成してある。この実施例では、数千種類の氏名について常時在庫がある、連続捺印式の既製の氏名印を構成する印字ユニットを利用して氏名印ユニット26とした。したがって、とくに珍しい名字でない限りは、ゴム印字体39を特注する必要もなく即座に、しかも安価に供給できる。
【0028】
氏名印ユニット26は装着ピース25に対して着脱可能に組み込まれる。そのために、筒ケース35の周面上部に、筒壁の弾性変形を許すスリット43を形成し、筒壁の上部周面にリブ状の係合突起44を形成している。氏名印ユニット26を装着ピース25に圧嵌装着するとき、スリット43を含む筒ケース35の筒壁は、縮径方向に弾性変形しながら装着筒28をくぐり抜けたのち、係合突起44が装着筒28の上端開口縁で受け止められる。この組み付け状態において、氏名印ユニット26のゴム印字体30の印面高さと、印字区画S1に装填したゴム印字体17の印面高さとは一致しているので、図6に示すように、グリップ3を押し下げ操作して捺印するとき、隣接する印字区画S1・S2の一方の区画における印字状態が滲んだり、かすれることはなく、均等にしかも適正に印字できる。図1および図2において符号46は印面キャップである。
【0029】
氏名印ユニット26を交換する場合には、グリップ3を印字ケース2から抜き外したのち、印字ケース2の上面側から栓体41に指先をあてがって押し込み操作することで、図4に示すように氏名印ユニット26を装着ピース25から下方へ分離できる。新たな氏名印ユニット26は栓体41の側を差し込み始端にして、筒ケース35を装着ピース25に差し込み係合することにより、簡単に印字ケース2と一体化できる。装着状態において、氏名印ユニット26のゴム印字体39は、リング状の止め金具40と装着ピース25の区分筒壁29などで囲まれて、隣接する印字区画S1から隔離されるので、印字区画S1に収容したゴム印字体17に含浸されたインクが、氏名印ユニット26のゴム印字体39に染み込むのを確実に防止できる。
【0030】
以上のように構成した連続捺印型の印判は、例えば印字区画S1に収容したインク吸蔵マット15およびゴム印字体17に、黒や紺色のインクを含浸させ、氏名印ユニット26のインク吸蔵マット38およびゴム印字体39に、赤や朱色のインクを含浸させて二色印として使用できる。例えば、前者印字区画S1のゴム印字体17によって、図9に示すように店名や法人名と住所、あるいは書類内容の表示などの固定化された表示内容を印字し、同時に後者印字区画S2に設けた氏名印ユニット26のゴム印字体39によって、捺印者の氏名を印字することができる。印字構造26は、捺印者の氏名を表わすものである必要はなく、捺印者の社員番号や、捺印者の所属する職域を意味する表示であってもよい。さらに、「検」、「済」、「控」などの検認を意味する表示や、バーコードや2次元バーコードであってもよい。
【0031】
インクを補充する場合には、グリップ3を印字ケース2から取り外したのち、一方のインク補充口12から所定の色のインクを滴下して、インク吸蔵マット15にインクを含浸させる。さらに、栓体41を筒ケース35から取り外して、所定の色のインクを滴下して、インク吸蔵マット38にインクを含浸させる。このように、筒ケース35の内部にインクを滴下する状況では、滴下したインクがゴム印字体17を収容する印字区画S1に染み出ることがなく、逆にゴム印字体17に含浸させたインクが氏名印ユニット26の内部に入り込む余地もない。したがって、インク補充時はもちろん、使用時に異なる色のインクが互いに混じりあうことはなく、常に適正な呈色状態の捺印を行うことができる。
【0032】
(実施例2) 図10および図11は本発明に係る印判の別の実施例を示す。そこでは、押え枠27をプラスチック成形品で形成し、上記の実施例における装着ピースに相当する装着構造25を押え枠27と一体に形成し、氏名印ユニット(印字構造)26を装着構造25に対して着脱可能に係合装着した。この場合の氏名印ユニット26は、筒ケース35の内部にインク吸蔵マット38とゴム印字体39を収容し、筒ケース35の下面に外嵌装着した止め金具40で抜け止めした。図11に示すように、押え枠27の前後壁の上縁には左右一対の係合爪27aが突設してあり、これらの係合爪27aをホルダー枠11の前後壁の設けた段部11aに係合することにより、押え枠27をホルダー枠11に固定できる。
【0033】
装着構造25は、氏名印ユニット26の印字部分を収容する角枠状の筒枠51と、筒ケース35が係合装着される装着座52とを備えている。装着座52には係合穴53が形成され、その対向周面に回止め溝54が形成してある。筒ケース35の周面には回止め溝54と係合する一対のリブ55が形成してあり、これら両者54・55の係合により氏名印ユニット26が捺印時に回動するのを規制している。氏名印ユニット26は、装着座52と下筒37の上壁との間に介装したばね56で押下げ付勢されており、これにより印字区画S1に収容したゴム印字体17と、氏名印ユニット26のゴム印字体39との印面の高低差をばね56で吸収して、両ゴム印字体17・39の印影の濃淡を抑止できるようにしている。
【0034】
氏名印ユニット26を交換する場合には、筒ケース35の上端を下向きに押し込むだけで、氏名印ユニット26の全体を装着構造25から分離できる。この実施例では、筒枠51の周囲壁のひとつが区分壁32を兼ねる。この実施例における外ケース1と印字ケース2は既存の二色印の構成部品であって、そのまま利用して印判を構成できる。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同様に扱う。
【0035】
(実施例3) 図12〜図14は本発明に係る印判の別の実施例を示す。そこでは、実施例1と同様に、インク補充口12を利用して装着ピース25をホルダー枠11に装着固定した。装着ピース25は、氏名印ユニット26の印字部分を収容する区分筒壁29を備えており、区分筒壁29の上壁にボス60を一体に備えている。ボス60の内面にはねじ穴61が上下貫通状に形成してあり、区分筒壁29の内面前後には、氏名印ユニット26を回止め保持する規制リブ62が形成してある。
【0036】
氏名印ユニット26は、筒ケース35の内部にインク吸蔵マット38とゴム印字体39とを収容し、止め金具40で抜け止め固定する。図13に示すように筒ケース35の周面前後には、先の規制リブ62と係合する溝63が形成してあり、これら両者62・63の係合により氏名印ユニット26が捺印時に回動するのを規制している。氏名印ユニット26の印面の高さを変更調整するために、先のねじ穴61に調整筒65をねじ込み装着し、その下端部分に氏名印ユニット26を圧嵌装着している。調整筒65は、周面に雄ねじ66が形成してある下筒部67と、下筒部67より大径の操作筒68とを一体に備えており、下筒部67の外面に筒ケース35の上部の筒開口69を圧嵌装着して、筒開口69の内面に設けた係合突起44を下筒部67の周面の係合突起70で受け止めさせる。
【0037】
上記の調整筒65をねじ込み操作することにより、氏名印ユニット26を高低調整して、ゴム印字体39の印面高さを適正化できる。氏名印ユニット26を交換する場合には、図14に示すように、調整筒65を最後までねじ込んで、雄ねじ66をねじ穴61から分離し、操作筒68をボス60で受け止めて、氏名印ユニット26を印字区画S2の外へ露出させる。この状態で氏名印ユニット26の全体を引っ張り操作することにより、係合突起44・70の係合状態を解除して、氏名印ユニット26を装着構造25から分離できる。
【0038】
(実施例4) 図15は本発明に係る印判の別の実施例を示す。そこでは、上記の実施例における装着ピースに相当する装着構造25を印字ケース2と一体に形成し、氏名印ユニット(印字構造)26を装着構造25に対して着脱可能に係合装着した。この場合の装着構造25は、区分筒壁29と、氏名印ユニット26の筒ケース35が内嵌装着される筒壁71を含んで構成してある。氏名印ユニット26は、上筒36の中心軸線と下筒37の中心軸線とが偏心させてある。区分筒壁29の周壁のひとつは、大小2個の印字区画S1・S2を区分する区分壁32を兼ねている。
【0039】
(実施例5) 図16および図17は本発明に係る印判の別の実施例を示す。そこでは、区分壁32を押え枠27と一体に形成し、さらに区分壁32に連続する前後壁73を設けて、区分壁32と前後壁73とホルダー枠11の側端壁で囲まれる装着構造25を形成し、その内部に印字構造26を収容した。この場合の印字構造26は、インク吸蔵マット58と、ゴム印字体59とからなり、これら両者は、上凹部16と押え枠27とで保持固定される。インクを補充する場合には、グリップ3を印字ケース2から取り外したのち、各インク補充口12から所定の色のインクを滴下して、インク吸蔵マット15・58にインクを含浸させる。この状態からさらに、印字ケース2を外ケース1から分離し、押え枠27の係合爪27aと段部11aとの係合を解除すると、押え枠27をホルダー枠11から分離できるので、インク吸蔵マット58およびゴム印字体59を交換することができる。
【0040】
上記の実施例では、ホルダー枠11を印字ケース2と一体に形成したが、ホルダー枠11を印字ケース2と別体の部品で形成して、印字ケース2に対してスライド着脱自在に装着することができる。その場合には、氏名印ユニット26の上下寸法をホルダー枠11の上下寸法と同じ程度にまで小さく設定して、筒ケース35がホルダー枠11の出し入れの邪魔になるのを避けるとよい。本発明の印判は、各実施例に固有の構造を組み合わせて実施することができる。
【0041】
固定化された表示内容を印字するゴム印字体17に含浸されるインクと、氏名印ユニット26のゴム印字体39に含浸されるインクとは、色違いとする以外に、異質のインクを含浸させて使用することができる。例えば、前者インクを染料系や顔料系の通常インクで形成しておき、後者インクを紫外線を照射した場合にのみ読み取りできる蛍光インクで形成することができる。印字区画は2個以上設けることができる。インク吸蔵マット38の代わりに、栓体41に装着した棒状のインク吸蔵体にインクを含浸させて、ゴム印字体39にインクを補充することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1に係る印判の縦断正面図である。
【図2】印判の正面図である。
【図3】主な構成部品の一部を破断した分解正面図である。
【図4】グリップと印字ユニットを分離した状態の縦断面図である。
【図5】図1におけるA−A線断面図である。
【図6】印判の捺印状態を示す縦断正面図である。
【図7】印判の底面図である。
【図8】図5におけるB−B線断面図である。
【図9】捺印の結果えられる印字例を示す平面図である。
【図10】実施例2に係る印判を示す縦断正面図である。
【図11】図10に係る構成部品の一部を破断した分解正面図である。
【図12】実施例3に係る印判を示す縦断正面図である。
【図13】図12に係る構成部品の一部を破断した分解正面図である。
【図14】印字構造の着脱状況を示す縦断正面図である。
【図15】実施例4に係る印判を示す縦断正面図である。
【図16】実施例5に係る印判を示す縦断正面図である。
【図17】図16におけるC−C線断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 外ケース
2 印字ケース
4 ばね
11 ホルダー枠
15 インク吸蔵マット
17 ゴム印字体
25 装着ピース
26 氏名印ユニット
35 筒ケース
38 インク吸蔵マット
39 ゴム印字体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
捺印面に接当する外ケース(1)と、外ケース(1)に沿って昇降する印字ケース(2)と、外ケース(1)と印字ケース(2)との間に配置されて印字ケース(2)を捺印面から浮揚支持するばね(4)とを備えており、
印字ケース(2)の下部に設けたホルダー枠(11)の内部が、区分壁(32)で2以上の印字区画(S1・S2)に区分されており、
前記印字区画(S1・S2)のひとつ(S2)に、連続捺印が可能なゴム印字体(39)を含む印字構造(26)が分離可能に装着され、
残る印字区画(S1)に、印字内容が固定化されたゴム印字体(17)とインク吸蔵マット(15)とが配置してある連続捺印型の印判。
【請求項2】
印字構造が、上下面が開口する筒ケース(35)と、筒ケース(35)の下部内面に組み込まれるインク吸蔵マット(38)およびゴム印字体(39)とを含む氏名印ユニット(26)からなる請求項1記載の連続捺印型の印判。
【請求項3】
ホルダー枠(11)の下面に、印字区画(S1)に装着したゴム印字体(17)を押え保持する押え枠(27)が着脱可能に装着されており、
前記区分壁(32)が、押え枠(27)と一体に形成してある請求項1または2記載の連続捺印型の印判。
【請求項4】
ホルダー枠(11)の下面に、印字区画(S1)に装着したゴム印字体(17)を押え保持する押え枠(27)が組み付けられており、
印字構造(26)が、押え枠(27)と一体に設けた装着構造(25)に対して着脱自在に装着してある請求項2または3記載の連続捺印型の印判。
【請求項5】
印字ケース(2)に印字構造(26)を装着するための装着ピース(25)が内嵌固定されており、
装着ピース(25)の下部に設けた区分筒壁(29)の一部が区分壁(32)を兼ねている請求項2または3記載の連続捺印型の印判。
【請求項6】
装着構造(25)と印字構造(26)との間に、印字構造(26)の印面高さを調整する高低調整構造が設けてある請求項1から5のいずれかに記載の連続捺印型の印判。
【請求項1】
捺印面に接当する外ケース(1)と、外ケース(1)に沿って昇降する印字ケース(2)と、外ケース(1)と印字ケース(2)との間に配置されて印字ケース(2)を捺印面から浮揚支持するばね(4)とを備えており、
印字ケース(2)の下部に設けたホルダー枠(11)の内部が、区分壁(32)で2以上の印字区画(S1・S2)に区分されており、
前記印字区画(S1・S2)のひとつ(S2)に、連続捺印が可能なゴム印字体(39)を含む印字構造(26)が分離可能に装着され、
残る印字区画(S1)に、印字内容が固定化されたゴム印字体(17)とインク吸蔵マット(15)とが配置してある連続捺印型の印判。
【請求項2】
印字構造が、上下面が開口する筒ケース(35)と、筒ケース(35)の下部内面に組み込まれるインク吸蔵マット(38)およびゴム印字体(39)とを含む氏名印ユニット(26)からなる請求項1記載の連続捺印型の印判。
【請求項3】
ホルダー枠(11)の下面に、印字区画(S1)に装着したゴム印字体(17)を押え保持する押え枠(27)が着脱可能に装着されており、
前記区分壁(32)が、押え枠(27)と一体に形成してある請求項1または2記載の連続捺印型の印判。
【請求項4】
ホルダー枠(11)の下面に、印字区画(S1)に装着したゴム印字体(17)を押え保持する押え枠(27)が組み付けられており、
印字構造(26)が、押え枠(27)と一体に設けた装着構造(25)に対して着脱自在に装着してある請求項2または3記載の連続捺印型の印判。
【請求項5】
印字ケース(2)に印字構造(26)を装着するための装着ピース(25)が内嵌固定されており、
装着ピース(25)の下部に設けた区分筒壁(29)の一部が区分壁(32)を兼ねている請求項2または3記載の連続捺印型の印判。
【請求項6】
装着構造(25)と印字構造(26)との間に、印字構造(26)の印面高さを調整する高低調整構造が設けてある請求項1から5のいずれかに記載の連続捺印型の印判。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−188797(P2008−188797A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22940(P2007−22940)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000106461)サンビー株式会社 (12)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000106461)サンビー株式会社 (12)
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