説明

連続紙供給装置

【課題】停電時等を含む電源異常時にもロール紙を確実に停止できると共に、停止時にロール紙が弛むことのない技術を提供する。
【解決手段】ロール紙を支持するエアーシャフト15に設けられた制動ギヤ22の回りに設けられたスライドレール28に、渦巻ばね25の引き戻し力によって付勢される爪部材33が搭載された可動ベース30を配置し、停電時にソレノイド軸32がラッチ溝33bから外れて爪部材33の嵌合爪33aが制動ギヤ22に嵌合し、渦巻ばね25の引き戻し力をエアーシャフト15に伝達してロール紙の惰性回転を停止させた後に巻き戻し、停電時のロール紙の惰性回転の停止および、ロール紙から繰り出される連続紙の弛みを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続紙供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、長時間の無人での連続稼働や、多様な用紙サイズの印刷が要求される産業用プリンタ等においては、煩雑な給紙が必要で用紙サイズも制限されるカット紙の代わりに、長尺のロール紙から連続紙を繰り出して印刷機構部に給紙し、印刷後に所望の用紙サイズにカットすることが行われている。
【0003】
従来、このようなロール紙を回転可能に支持し、印刷装置に供給する供給装置が知られている。そして、このような供給装置には、ロール紙の惰性回転を制動し、印刷装置へのロール紙の供給を緊急停止するためのブレーキ機構が設けられている。
【0004】
例えば、特許文献1では、輪転印刷機の給紙機において、巻取紙(ロール紙)を支持するチャックにエアーブレーキを設け、このエアーブレーキにロール紙の材質や巻き径の変化に合せて空電変換器により圧力調整された圧縮空気を供給することによって、ロール紙の回転を停止させる停止装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2816762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1の停止装置では、停電時、または電源回路の切断時等の電源異常時においては、空電変換器が動作不能となり、エアーブレーキに圧縮空気を供給することができなくなる結果、ロール紙の回転を急停止させることができない、という技術的課題がある。
【0007】
また、仮に、エアーブレーキに圧縮空気を供給することができたとしても、電源異常時には、印刷装置側の用紙搬送は停止されているため、印刷装置と供給装置との間で、ロール紙から繰り出される連続紙が弛んだ状態で停止することになり、ロール紙の巻き戻し等の煩雑な保守作業が必要となる。
【0008】
また、弛んだ連続紙が床に接して汚損された場合には、異物等が付着した状態の連続紙がプリンタ機構部に供給されることになり、装置故障の一因となる。
本発明の目的は、停電時等を含む電源異常時にもロール紙を確実に停止できると共に、停止時にロール紙が弛むことのない技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ロール紙とともに回転するロール支持軸と、
停電時に前記ロール支持軸に係合して回動する係合手段、および前記係合手段に接続され前記ロール紙を巻き戻し方向に付勢する弾性部材を含むロール紙停止機構と、
を具備した連続紙供給装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、停電時等を含む電源異常時にもロール紙を確実に停止できると共に、停止時にロール紙が弛むことのない技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係るロール紙停止機構を有する連続紙供給装置を備えた連続紙印刷装置の正面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るロール紙停止機構を有する連続紙供給装置の側面図である。
【図3A】本発明の実施の形態1に係るロール紙停止機構の正面図である。
【図3B】本発明の実施の形態1に係るロール紙停止機構の内部構造を示す分解図である。
【図3C】本発明の実施の形態1に係るロール紙停止機構に備えられたソレノイド軸の先端の一例を示す拡大図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るロール紙停止機構の断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るロール紙停止機構の分解図である。
【図6】電源消失時の瞬間のロール紙停止機構の作動状態を示した正面図である。
【図7】電源消失時に慣性で回転するロール紙を停止させた状態のブレーキ機構の動作を示した正面図である。
【図8】本発明の実施の形態1の連続紙供給装置に備えられたエアーシャフトの一部を取り出して例示した斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態1の変形例2に係るロール紙停止機構の正面図である。
【図10】本発明の実施の形態1の変形例3に係るロール紙停止機構の正面図である。
【図11】本発明の実施の形態1の変形例4に係るロール紙停止機構を有する連続紙供給装置の側面図である。
【図12】本発明の実施の形態1の変形例5のロール紙停止機構の分解図である。
【図13】本発明の実施の形態1および実施の形態2におけるロール紙停止機構の渦巻ばねの変形例を示す概念図である。
【図14】本発明の実施の形態2である連続紙供給装置をロール紙の給紙側から見た側面図である。
【図15】本発明の実施の形態2である連続紙供給装置に備えられたブレーキ機構を示す正面図である。
【図16】本発明の実施の形態2である連続紙供給装置に備えられたブレーキ機構を示す平面図である。
【図17】本発明の実施の形態2である連続紙供給装置における電源消失時のブレーキ機構の動作を示した平面図である。
【図18】本発明の実施の形態2である連続紙供給装置におけるブレーキ機構の変形例を示す正面図である。
【図19】本発明の実施の形態2である連続紙供給装置におけるブレーキ機構の他の変形例を示す正面図である。
【図20】本発明の実施の形態2である連続紙供給装置におけるブレーキ機構の他の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施の形態では、一態様として、連続紙印刷装置に対してロール紙から連続紙を供給する連続紙供給装置において、電源異常時に、弦巻ばね等の弾性部材によってロール紙の給紙方向の惰性回転を停止させ、さらに、この弦巻ばねの戻り力によってロール紙を給紙方向とは逆方向に回転させて巻き戻すロール紙停止技術を開示する。
【0013】
すなわち、本態様では、ロール紙の停止時の惰性回転の運動エネルギを弦巻ばねに弾性エネルギとして吸収することによりロール紙を停止させ、この弦巻ばねに蓄えられた弾性エネルギによってロール紙の巻き戻しが行われるので、外部からのエネルギの供給は不要である。
【0014】
これにより、例えば、停電や非常停止等の電源異常時に、ロール紙の惰性回転を確実に急停止させることができると共に、弦巻ばねの戻り力によってロール紙が自動的に巻き戻されるため、連続紙印刷装置と連続紙供給装置との間で連続紙が弛んだ状態で停止することがない。
【0015】
このため、ロール紙から繰り出される連続紙の、電源切断時における弛みによる汚損が防止されるとともに、手作業によるロール紙の巻き戻し等の煩雑な保守作業が不要となる。
【0016】
この結果、汚損による連続紙の廃棄損失や、汚損された連続紙が供給されることに起因する連続紙印刷装置の故障の発生を防止でき、連続紙印刷装置および連続紙供給装置の可用性や保守性、さらには動作の信頼性および稼働率も向上する。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
なお、以下の本実施の形態の説明では、各図において、X、Y、Zの各方向は図示の通りとし、一例として、Z方向は鉛直方向、X−Y平面は水平面とする。
また、以下の各実施の形態および変形例の説明では、互いに共通する部分については共通の符号を付して重複した説明は割愛する。
【0018】
(実施の形態1)
本発明の連続紙供給装置の実施の形態1を図1から図7を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係るロール紙停止機構を有する連続紙供給装置を備えた連続紙印刷装置の正面図である。
【0019】
図2は、本発明の実施の形態1に係るロール紙停止機構を有する連続紙供給装置の側面図である。なお、図2は、図1の矢印Aの方向から見た図である。
図3Aは、本発明の実施の形態1に係るロール紙停止機構の正面図である。なお、図3Aは、図2の矢印Bの方向から見た図である。
【0020】
図3Bは、本発明の実施の形態1に係るロール紙停止機構のローラとスライドレールの詳細図である。
図3Cは、本発明の実施の形態1に係るロール紙停止機構に備えられたソレノイド軸の先端の一例を示す図である。
【0021】
図4は、本発明の実施の形態1に係るロール紙停止機構の断面図である。なお、この図4は、図3Aの線C−Cで示される部分の断面図である。
図5は、本発明の実施の形態1に係るロール紙停止機構の分解図である。なお、この図5は、図3Aの状態から爪部材を外した状態を示している。
【0022】
図6は、電源消失時の瞬間のロール紙停止機構の状態を示した正面図である。
図7は、電源消失時に慣性で回転するロール紙を停止させた状態のロール紙停止機構の動作を示した正面図である。
図1に示すように、本実施の形態1における連続紙印刷装置1は、プリンタ本体2と連続紙供給装置3と排出装置100を備えている。
【0023】
プリンタ本体2は、連続した記録媒体としてロール紙12から引き出されてプリンタ本体2に供給される連続紙11の巻き癖を除去するための巻き癖除去装置4と、連続紙11にインクを吐出して文字や図形等の画像を形成する印刷機構部5と、印刷機構部5における連続紙11の搬送を行う複数のローラ10を備えている。
【0024】
本実施の形態のプリンタ本体2の場合、連続紙11の表面および裏面の両方に対する画像記録を可能とするため、印刷機構部5は、2組のヘッド部5a、クリーニング部6a、ドラム7a、およびヘッド部5b、クリーニング部6b、ドラム7bで構成されている。
【0025】
ヘッド部5a、ヘッド部5bは、それぞれ、ドラム7a、ドラム7bに巻き付けられて搬送される連続紙11にインクを吐出して文字や図形等の画像を形成する。
クリーニング部6a、クリーニング部6bは、それぞれ、ヘッド部5a、ヘッド部5bの清掃を行う。
【0026】
ドラム7a、ドラム7bの各々は、図示しないモータで回転されることにより、巻き付けられた連続紙11の搬送を行う。なお、ドラム7a、ドラム7bの一方をモータで駆動し、他方は、連続紙11に対する摩擦力で従動回転する構成としてもよい。
これらプリンタ本体2の各部はプリンタ本体2内の図示しないフレームに支持されている。
【0027】
連続紙供給装置3は、架台20の上部に、Y方向に所定の間隔で一対のベース19が設置されている。
個々のベース19の一部にはロール紙12の中心に挿入されたエアーシャフト15(ロール支持軸)の両端に挿入されているベアリング13を保持するためのU字形溝19aが形成されている。
これにより、Y方向を軸方向とするエアーシャフト15で保持されたロール紙12はベース19に対して回転可能になっている。
【0028】
また、エアーシャフト15の一方の端部には、バックテンションギヤ14が設置されている。このバックテンションギヤ14が設けられた側のベース19には、バックテンションギヤ14と噛み合う中継ギヤ16、及び中継ギヤ16と噛み合うクラッチギヤ17が設置されている。
【0029】
このクラッチギヤ17は、連続紙11に適正な張力を与えるためのパウダークラッチ18と連結されている。
【0030】
すなわち、パウダークラッチ18は、外部からの通電により所定の回転抵抗を発生することにより、クラッチギヤ17、中継ギヤ16、バックテンションギヤ14を介して、エアーシャフト15の回転を制御している。
【0031】
本実施の形態では、パウダークラッチ18はバックテンションギヤ14、中継ギヤ16、クラッチギヤ17を介してエアーシャフト15の回転を制御する構成としているが、これに限らず、ベルトとプーリなどを介して、エアーシャフト15とパウダークラッチ18の間におけるトルクの伝達を行なってもよい。
【0032】
また、本実施の形態1の連続紙供給装置3では、ロール紙12の巻き径を測定するためのロール径測定機構を設置している。例えば、本実施の形態では、特に図示しないが、例えば、エアーシャフト15の中心軸に回転量を検知するエンコーダを設けている。
【0033】
そして、ロール紙12を一定の速度でプリンタ本体2に繰り出し、この時のエンコーダから出力されるロール紙12の回転量の信号に基づいて、ロール紙12の巻き径を測定している。
もちろん、これに限らず、ロール紙12の径方向にセンサを配置し、このセンサの出力によってロール紙12の巻き径を実測してもよい。
【0034】
また、本実施の形態1の連続紙供給装置3では、バックテンションギヤ14が設けられた側のベース19に、停電時等を含む電源異常時にもロール紙12の回転を停止させて巻き戻す動作を行うロール紙停止機構21(ロール紙停止機構)が設けられている。ロール紙停止機構21の詳細は後述する。
【0035】
プリンタ本体2に設けられた排出装置100は、連続紙11を所望の寸法に切断するカッターユニット8と、切断された連続紙(切断後はシート状記録媒体となる)を収容する収容ユニット9で構成されている。
なお、収容ユニット9を設けず、カッターユニット8で切断されたシート状記録媒体を図示しない後処理機構へと搬送してもよい。
【0036】
図3A、図3B、図3C、図4、図5、図6、図7を用いて、本実施の形態1の連続紙印刷装置1における連続紙供給装置3に備えられたロール紙停止機構21について説明する。
【0037】
図3A等に例示されるように、本実施の形態のロール紙停止機構21は、後述する制動ギヤ22、スライドレール28、ローラ29a、ローラ29b、可動ベース30、ソレノイド31、爪部材33(係合手段)、渦巻ばね25(弾性部材)、等で構成されている。
バックテンションギヤ14が設けられた側のベース19には、ロール紙停止機構21の渦巻ばね25が設置されている。
本実施の形態のロール紙停止機構21の場合、渦巻ばね25の一端部(外端部)25aを直線的に引き出して、その巻き戻し力を利用する。
【0038】
この渦巻ばね25の他端部(内端部)25bはベース19に固着されている巻軸24により保持されて固定されている。渦巻ばね25の外端部25aは、後述の爪部材33の基端部に固着されている。
この渦巻ばね25は、例えば、なんらかの原因で外端部25aが非拘束状態になった場合に、弾発力で飛散して周囲の機構を損傷しないように、ばねケース23に収納されている。
【0039】
ばねケース23の引き出し口26近傍には、渦巻ばね25の引き出しおよび巻き戻しの軌道を安定させるために、渦巻ばね25の上面に接するガイドローラ27aと、渦巻ばね25の下面に接するガイドローラ27bを備えている。これらガイドローラ27a、27bは、ベース19に取り付けられている。
【0040】
なお、ガイドローラ27a、ガイドローラ27bはベアリングなどで回動させても良いし、滑り性のよい樹脂からなる回動しない固定ローラでも良い。
また、このガイドローラ27aとガイドローラ27bの対は、ばねケース23の内部やベース19の図示していない他の箇所など、複数箇所に設置しても良い。
【0041】
ベース19にはエアーシャフト15と同心円状のガイド溝28aを備えたスライドレール28が設置されている。スライドレール28の周方向の長さは電源消失時にロール紙停止機構21により停止するロール紙12の惰性回転の範囲を包含するように設定されている。
【0042】
スライドレール28のガイド溝28aには複数のローラ29a、ローラ29bが挿入され、このローラ29aおよびローラ29bは可動ベース30に固着されている。具体的には、ローラ29a、29bは、スライドレール28のガイド溝28aの曲率(図3Aの曲率R)に一致するように可動ベース30に固着されている。
【0043】
これにより、ローラ29aおよびローラ29bに支持された可動ベース30は、ベース19の側面に平行なZ−X平面内において、曲率Rで、エアーシャフト15の回りに移動可能になっている。
【0044】
なお、ローラ29a、ローラ29bはカムフォロア、ベアリング、滑り性のよい樹脂等で構成される。
【0045】
可動ベース30には、ピボット軸34がビス止め、圧入などで固着され、このピボット軸34にはベアリング35が挿入されている。ピボット軸34に対するベアリング35の位置は図示しないE型止め輪(Eリング)、ピン、ビスなどで決められている。
【0046】
さらに、ベアリング35には先端部に上向きに嵌合爪33aが形成された爪部材33の基端部が挿入されており、爪部材33は、ピボット軸34を中心として嵌合爪33aが旋回するように、可動ベース30に対して回動自在になっている。
【0047】
エアーシャフト15には爪部材33の嵌合爪33aと噛み合う位置に制動ギヤ22が固着され、制動ギヤ22はエアーシャフト15の回転に連動して回転する。爪部材33の先端部の嵌合爪33aは制動ギヤ22の歯形に噛み合う形状になっている。
【0048】
爪部材33には、ばねポスト36aが設置され、可動ベース30には、ばねポスト36bが設置されている。ばねポスト36aとばねポスト36bとの間には引張ばね37が設置されている。
【0049】
そして、引張ばね37により爪部材33は常にエアーシャフト15に設置された制動ギヤ22に接近する方向に、すなわち、制動ギヤ22の歯に嵌合爪33aが噛み合う方向に付勢されている。
【0050】
ベース19の爪部材33の近傍には、当該爪部材33の旋回範囲にソレノイド31が固着され、このソレノイド31は、電源が供給されている時、ソレノイド軸32がY方向に突出する構成となっている。
【0051】
爪部材33には、ソレノイド軸32が入り込むことによってソレノイド軸32が嵌合する(引っ掛けられる)ラッチ溝33bが設けられている。
【0052】
また、このラッチ溝33bとピボット軸34の間における爪部材33の外側面には、ピボット軸34からラッチ溝33bに向かう方向に爪部材33の幅が徐々に大きくなるようなガイド斜面部33cが設けられている。
【0053】
そして、ソレノイド軸32が爪部材33の外側の位置で突出した場合には、巻き戻し方向における爪部材33の移動に伴って、ガイド斜面部33cに沿ってソレノイド軸32が滑らかに摺動し、ラッチ溝33bに嵌合する構造となっている。
【0054】
すなわち、ソレノイド31の位置は、爪部材33の嵌合爪33aが制動ギヤ22から離間した初期位置で、ラッチ溝33bにソレノイド軸32が嵌合することにより、爪部材33の旋回位置が当該初期位置に固定される位置に設定されている。
【0055】
図3Cに例示されるように、ソレノイド軸32の先端は、爪部材33のラッチ溝33bに挿入し易いように先端が先細りのテーパ状になっている。
さらにベース19には、可動ベース30の端面に当接して爪部材33の初期位置を規制するためのストッパ38が固着されている。
【0056】
本実施の形態の場合、爪部材33の初期位置とは、上述のようにソレノイド軸32が爪部材33のラッチ溝33bに挿入され、引張ばね37の張力に抗して嵌合爪33aが制動ギヤ22から離脱した状態に保持される位置である。
【0057】
このストッパ38は、基端部に渦巻ばね25の外端部25aが接続されてばねケース23に接近する方向に常時付勢される爪部材33が、渦巻ばね25の引き出し方向と逆方向に引き込まれ過ぎないように設置されている。
【0058】
次に図1から図7を参照して本実施の形態1の動作の一例について説明する。
連続紙供給装置3にロール紙12をセットし、連続紙印刷装置1の電源をオンにして画像記録開始指令を出すと、ドラム7a、ドラム7b及び複数のローラ10で、ロール紙12から繰り出される連続紙11を下流へと搬送すると共に、巻き癖除去装置4によって巻き癖が除去された連続紙11に対してヘッド部5a、ヘッド部5bによって与えられた画像情報に基づいて画像が記録される。
【0059】
そして、連続紙11はカッターユニット8により所望の大きさに切断され、収容ユニット9に収容される。
連続紙11への印刷が実施されている間、当該連続紙11を繰り出すロール紙12は、ロール紙12に挿入されたエアーシャフト15を中心に回転し、プリンタ本体2へ連続紙11を供給している。
【0060】
このとき、エアーシャフト15の端部に設けられたバックテンションギヤ14とそれに噛みあう中継ギヤ16が回転し、さらにクラッチギヤ17に固着されているパウダークラッチ18により回転抵抗を付与することで、ロール紙12の巻き径の変化に合わせて、連続紙11に適正な張力(バックテンション)を与えている。
【0061】
ロール紙12の巻き径寸法の検出は、上述のように、エアーシャフト15の端部に設置した図示しないエンコーダで行ったり、フォトインタラプタとロール紙12の回転に連動し、フォトインタラプタの光路を遮ったり開放したりできるスリットを設けた円盤の回転速度で行う。エンコーダおよび円盤状のスリットは中継ギヤ16、クラッチギヤ17に設置してもよい。
【0062】
電源供給時にはベース19に設置されたソレノイド31のソレノイド軸32が突出し、爪部材33はソレノイド軸32に保持された状態で初期位置に固定されており、制動ギヤ22と爪部材33の嵌合爪33aは噛み合っていないためエアーシャフト15およびロール紙12は自由に回転可能になっている。
【0063】
一般的に、ロール紙12を使用する連続紙印刷装置1は24時間連続運転される場合が多い。また24時間連続運転されない場合でも、スリープ状態(待機状態)にあり、電源は完全に遮断されない。
【0064】
そのため、ロール紙停止機構21のソレノイド31に電源が供給されている場合が殆どであり、連続紙印刷装置1の稼働中および待機状態のいずれにおいてもソレノイド31に通電して爪部材33を保持させることができる。
【0065】
なお、本実施の形態において、連続紙印刷装置1の「電源消失時」とは、外部からの電力供給が停止した停電時、および連続紙印刷装置1の異常によって図示しない緊急停止ボタンが押された時、を意味する。
【0066】
本実施の形態では、連続紙印刷装置1の緊急停止ボタンが押された時には、連続紙印刷装置1への電力供給を遮断し、停電時と同じ状態にする。
電源消失時には、連続紙印刷装置1の全ユニットへ(プリンタ本体2、連続紙供給装置3)の電源が供給されなくなるため、プリンタ本体2の内部における連続紙11の搬送が停止する。
【0067】
また、連続紙供給装置3に設置されているパウダークラッチ18も停止するため、パウダークラッチ18に連結されているクラッチギヤ17の回転規制が無くなり、当該クラッチギヤ17、中継ギヤ16に連結されているバックテンションギヤ14およびエアーシャフト15も自由に回転するためエアーシャフト15に保持されたロール紙12も、連続紙11の繰り出し方向に惰性回転する。
【0068】
ロール紙12の外径(巻き径)が大きい場合、惰性回転の慣性力も大きくなり、プリンタ本体2と連続紙供給装置3との間に連続紙11が弛むことになる。
【0069】
例えば、ロール紙12の巻き径が54インチの場合、その重さは300kg超えるため、惰性回転の慣性力は大きく、そのままでは、電源消失時に数メートルの連続紙11がプリンタ本体2と連続紙供給装置3との間に弛むことになる。
【0070】
このロール紙12の惰性回転による連続紙11の弛みを回避するために、本実施の形態1のロール紙停止機構21は、以下のように動作する。
【0071】
すなわち、ロール紙停止機構21において、電源消失時には、ソレノイド軸32がソレノイド31内にY方向(図4の矢印Dの方向)に引き込まれ、ラッチ溝33bから離脱するため爪部材33の回転規制がなくなる。
【0072】
このため、爪部材33に設置されたばねポスト36aと可動ベース30に設置されたばねポスト36bの間に張架されている引張ばね37によって爪部材33はピボット軸34を中心に図6の矢印Fの方向に回転する。
【0073】
回転した爪部材33の嵌合爪33aは制動ギヤ22の歯に噛み合い、爪部材33と制動ギヤ22は一体に移動する状態となり、爪部材33を搭載する可動ベース30はローラ29a、ローラ29bを案内するスライドレール28のガイド溝28aに沿って制動ギヤ22と同心で回転する。
【0074】
爪部材33の後端に外端部25aが固定された渦巻ばね25は、当該渦巻ばね25の巻き取り力に抗してロール紙12の惰性回転とともに引き出され、爪部材33を引き戻す方向に作用する渦巻ばね25の巻き取り力により、ロール紙12の惰性回転の運動エネルギが渦巻ばね25の弾性エネルギとして徐々に吸収されて消失し、ロール紙12は徐々に惰性回転が減衰して停止する。
【0075】
ロール紙12の惰性回転が停止すると、渦巻ばね25に蓄積された上述の弾性エネルギによる巻き取り力が爪部材33に作用することにより、爪部材33が制動ギヤ22を介してロール紙12を逆回転させ、爪部材33を搭載した可動ベース30が同じスライドレール28に沿って逆回転し、爪部材33がストッパ38に当接して停止し、初期位置に復帰する。
【0076】
このとき、ロール紙停止機構21によるロール紙12の逆回転により、連続紙11の弛みは自動的に解消される。
初期位置に戻った爪部材33は、連続紙印刷装置1に電源が供給されると、ラッチ溝33bにソレノイド軸32が挿入されることにより保持される。
【0077】
また、爪部材33が初期位置に戻る前に連続紙印刷装置1に電源が供給された場合は、爪部材33の外側でソレノイド軸32が突出するため、爪部材33は、その下側外周に形成されたガイド斜面部33cにソレノイド軸32を当接させながら可動ベース30とともに初期位置に移動し、ソレノイド軸32がラッチ溝33bに嵌合する。
【0078】
本実施の形態1の構成では次の効果を奏する。
(1)本実施の形態1では、連続紙印刷装置1の電源消失時に連動して動作するロール紙停止機構21により、ロール紙12の停止が確実に行われるため、ロール紙12から繰り出される連続紙11の弛みを抑えられ、弛んだ連続紙11が床へ接地することに起因する汚損や、プリンタ本体2内への連続紙11の巻き込みによる故障、汚損した連続紙11の廃棄に伴う無駄紙の削減等を実現できる。
【0079】
(2)本実施の形態1では、ロール紙停止機構21により、電源消失時において、ロール紙12が停止後、自動的にロール紙12の回転位置が元の位置に戻るため、ユーザーがロール紙12を巻き戻す必要が無くなる。
【0080】
この結果、無人運転の実現や、保守作業の簡略化、稼働監視要員の削減等により、連続紙印刷装置1の運用コストの削減や稼働率の向上を実現できる。
【0081】
(3)本実施の形態1のロール紙停止機構21では、ロール紙12の惰性回転の運動エネルギを渦巻ばね25に蓄積してロール紙12の巻き戻し動作に利用する構成であるため、油圧や空気圧等の外部エネルギを必要としない。
【0082】
このため、連続紙印刷装置1の電源消失時に備えて、コンプレッサなどの付帯設備を設置する必要がなく、別系統の配線、配管が不要となり、且つ、連続紙印刷装置1の重量、稼働コストの削減を実現できる。
【0083】
(4)本実施の形態1のロール紙停止機構21では、簡易なソレノイド31に対する給電停止のみで、電源消失時における爪部材33等の動作を制御するために、コンデンサ等で動作電力を蓄えておく必要がなく、連続紙印刷装置1の稼働コストや製造コストの削減が実現できる。
【0084】
次に、図8を用いて上述の実施の形態1の変形例1を説明する。
図8は、本実施の形態1の連続紙供給装置3に備えられ、ロール紙12を支持するエアーシャフト15の一部を取り出して例示した斜視図である。
【0085】
この変形例1のロール紙停止機構21Aでは、上述の実施の形態1のロール紙停止機構21において、制動ギヤ22を廃止し、代わりにエアーシャフト15における制動ギヤ22の取り付け位置に制動ギヤ溝50を形成し、この制動ギヤ溝50に爪部材33の嵌合爪33aが噛合する(引っ掛かる)構成としたものである。
【0086】
この変形例1のロール紙停止機構21Aの作用は実施の形態1と同じである。
本変形例1の構成のロール紙停止機構21Aにあっては次の効果を奏する。すなわち、制動ギヤ22の廃止によりロール紙停止機構21Aの部品点数の削減を実現でき、ロール紙停止機構21A、ひいては連続紙印刷装置1の省スペース化、組み立てコストの削減が実現できる。
【0087】
次に、図9を用いて実施の形態1のロール紙停止機構21の変形例2を説明する。
図9は、本変形例2に係るロール紙停止機構の正面図である。なお、この図9は、上述の図2の矢印Bの方向から見た図である。
【0088】
この変形例2のロール紙停止機構21Bでは、上述の実施の形態1のロール紙停止機構21におけるストッパ38を、爪後端部角52の軌跡に合わせた形状を有するストッパ51に変更した構成となっている。
【0089】
すなわち、ストッパ51は、可動ベース30に搭載されて移動する爪部材33の爪後端部角52の軌跡に沿った曲線形状を有する摺動曲面51aと、爪部材33の端面に接して初期位置に停止させる垂直ストッパ面51bを備えた構成となっている。
【0090】
なお、爪部材33の爪後端部角52に、ストッパ51の摺動曲面51aに摺接して転動する図示しないローラを設けたり、摩擦の小さな樹脂等の部材を配置して、爪後端部角52と摺動曲面51aの摺動を円滑化する構成としてもよい。
【0091】
この変形例2におけるロール紙停止機構21Bは、以下のように作用する。
すなわち、連続紙印刷装置1の電源消失時、爪部材33の嵌合爪33aが制動ギヤ22(エアーシャフト15)に嵌合して渦巻ばね25の引き出し力によりロール紙12を停止させた後、渦巻ばね25の引き戻し力によって可動ベース30が逆回転して爪部材33が初期位置に戻るときに、爪部材33は、爪後端部角52をストッパ51の摺動曲面51aに接触させ、嵌合爪33aを制動ギヤ22から強制的に離間させる方向の反時計回りのトルクを発生させながら初期位置に戻り、垂直ストッパ面51bに当接して停止する。
【0092】
上記構成の本変形例2のロール紙停止機構21Bにあっては次の効果を奏する。
すなわち、なんらかの原因で爪部材33の嵌合爪33aが制動ギヤ22にかじりついた場合でも、爪部材33の爪後端部角52が、摺動曲面51aに接触して図9の反時計回り方向のトルクを受けることにより、嵌合爪33aを制動ギヤ22から強制的に離脱させて爪部材33を初期位置に戻らせることができる。
【0093】
この結果、ロール紙停止機構21Bの爪部材33がエアーシャフト15の制動ギヤ22にかじりついたままとなるような管理者の介入を必要とする障害が確実に防止され、連続紙印刷装置1の円滑な無人稼働を実現できる。
【0094】
次に、図10を用いて本実施の形態1のロール紙停止機構21の変形例3を説明する。
図10は、本変形例3に係るロール紙停止機構21Cの正面図である。なお、この図10は、上述の図2の矢印Bの方向から見た図である。
【0095】
本変形例3のロール紙停止機構21Cでは、上述の実施の形態1のロール紙停止機構21におけるストッパ38の代わりに、緩衝作用を有するショックアブソーバ53などの緩衝材を設けた構成となっている。
なお、上述のストッパ38をショックアブソーバ53と併用する構成としても良い。
【0096】
この変形例3のロール紙停止機構21Cでは、ショックアブソーバ53は、渦巻ばね25の引き出し方向(X方向)に平行で、可動ベース30の端面に当接する方向に伸縮する作動軸53aを備えている。
すなわち、ショックアブソーバ53の作動軸53aは図10中の矢印Gの方向に伸縮する。
【0097】
本変形例3のロール紙停止機構21Cは、以下のように作用する。
すなわち、連続紙印刷装置1の電源消失時、ロール紙停止機構21が渦巻ばね25によってロール紙12の惰性回転を停止させた後、可動ベース30が逆回転して爪部材33が初期位置に戻る場合に、可動ベース30がショックアブソーバ53の作動軸53aに当接後、徐々に減速して初期位置に停止する。
【0098】
本変形例3のロール紙停止機構21Cは次の効果を奏する。
すなわち、ロール紙12の巻き径、すなわち重量が大きい場合、ロール紙12の惰性回転を停止させてから逆回転して初期位置に戻る場合の慣性力も大きいため、ショックアブソーバ53などの緩衝材に可動ベース30を当接させて緩衝することで、初期位置での停止における衝撃が緩和され、ベース19の破損や、騒音が抑えられる。
【0099】
さらに、ロール紙12の巻き戻し端において連続紙11に過大なバックテンションが作用することが防止され、ロール紙12から繰り出される連続紙11の破断を防止でき、円滑に長時間の無人稼働を実現できる。
【0100】
図11を用いて実施の形態1の変形例4を説明する。
図11は、本変形例4に係るロール紙停止機構21を有する連続紙供給装置の側面図である。なお、この図11は、上述の図1の矢印Aの方向から見た図である。
【0101】
上述の実施の形態1の変形例4の連続紙供給装置3Aでは、上述のロール紙停止機構21(またはロール紙停止機構21A〜ロール紙停止機構21E)を、ロール紙12を支持するエアーシャフト15の両端部を支持する一対のベース19の各々に設置した構成となっている。
【0102】
本変形例4の連続紙供給装置3Aにおけるロール紙停止機構21の作用は上述の実施の形態1と同じである。
【0103】
本変形例4の構成の連続紙供給装置3Aでは次の効果を奏する。
すなわち、上述の実施の形態1に比較して、二つの渦巻ばね25によってロール紙12の惰性回転の運動エネルギを分担して吸収して停止させるので、単一のロール紙停止機構21の場合よりも素早く短時間に、ロール紙12の惰性回転の停止が実現できる。
【0104】
換言すれば、単一のロール紙停止機構21の場合と同一の停止時間とする場合には、個々のロール紙停止機構21の構成を小形化できる利点がある。
【0105】
図12を用いて上述の実施の形態1の変形例5を説明する。
図12は、本変形例5のロール紙停止機構の分解図である。この図12は、上述の図3Aの状態から本変形例5のロール紙停止機構の爪部材等を取り外した状態を示している。
【0106】
また、図12においては、スライドレール55およびスライドレール56以外の二点鎖線で囲まれた部分は、上述の実施の形態1のロール紙停止機構21と共通であるため、図示は省略されている。
【0107】
この変形例5におけるロール紙停止機構21Dの構成では、エアーシャフト15に挿入されているベアリング13の支持方法として、上述の実施の形態1のロール紙停止機構21におけるベース19のようなU字形溝19aへの落とし込みではなく、分割可能なベース54とベース57でベアリング13を挟む構成を採用したものである。
【0108】
すなわち、変形例5におけるロール紙停止機構21Dでは、ベース54とベース57は、下側のベース54に対して、上側のベース57が、ヒンジ58により開閉可能な構成になっている。
【0109】
上側のベース57は図12中の矢印Fの方向に開閉される。ベース54とベース57はボルト59またはクランプ材により締結されることでエアーシャフト15のベアリング13を挟み込むようになっている。
【0110】
ベース54とベース57には、各々が上述の実施の形態1のスライドレール28と同等な形状のスライドレール55およびスライドレール56が分割可能に固着されている。
すなわち、スライドレール55およびスライドレール56の各々には、曲率Rの半円形のガイド溝55aおよびガイド溝56aが分割可能に固着されている。
【0111】
そして、ベアリング13をベース54、ベース57で挟み込んだ時にスライドレール55とスライドレール56のガイド溝55aおよびガイド溝56aの両端が一致して、円形となるように配置されている。
【0112】
ベース57の開閉方法および開閉方向は、図12中の矢印Fの方向でなくてもベース54に対して垂直方向でも良く、ベアリング13を中心として左右をボルトなどで固定してもよい。
【0113】
この変形例5のロール紙停止機構21Dの作用は上述の実施の形態1のロール紙停止機構21とほぼ同じであるが、エアーシャフト15の回りにおける可動ベース30の移動範囲が、上述の実施の形態1のスライドレール28に比べて広くなっている。
【0114】
すなわち、この変形例5のロール紙停止機構21Dの場合、可動ベース30は、スライドレール55とスライドレール56の両端の溝が一致して形成される円形のガイド溝55aおよびガイド溝56aに沿って移動するローラ29aおよびローラ29bに案内されることにより、エアーシャフト15の回りに全周にわたって360度以上にエンドレスに回転できる。
【0115】
本変形例5のロール紙停止機構21Dにあっては次の効果を奏する。
すなわち、上述の実施の形態1のロール紙停止機構21の構成に比べて、エアーシャフト15の回りにおける爪部材33の移動範囲が広くなることで、例えば、想定以上のロール紙12の慣性力が発生しても、爪部材33がエアーシャフト15の回転に追随して、ロール紙12の惰性回転の運動エネルギを渦巻ばね25に吸収させて停止させ、さらに初期位置まで巻き戻す動作を確実に実現できる利点がある。
【0116】
上述のロール紙停止機構21では、渦巻ばね25の構成は種々変更可能である。以下に、渦巻ばね25の変形例を示す。
図13は、実施の形態1におけるロール紙停止機構21の渦巻ばね25の変形例を示す概念図である。
すなわち、この図13に例示される変形例のロール紙停止機構21Eでは、ロール紙停止機構21において、渦巻ばね25の代わりに、弦巻ばね81(弾性部材)とワイヤ82で爪部材33を付勢する例を示す。
【0117】
このロール紙停止機構21Eの場合、図13に例示されるように、ばねケース23の内部に、複数のベアリング83を螺旋状に配置する。
【0118】
そして、中央部には、一端が、ばねポスト84に固定された弦巻ばね81を配置し、この弦巻ばね81の他端にワイヤ82の基端部82aを接続し、複数のベアリング83の配置経路に沿って螺旋状にワイヤ82を引き回した後、ばねケース23の引き出し口26から引き出して、ワイヤ82の可動端82bを爪部材33に接続する。
【0119】
これにより、ロール紙停止機構21Eの構成では、伸縮する弦巻ばね81に接続されたワイヤ82が、上述の渦巻ばね25の代わりに、ばねケース23から引き出されて爪部材33を付勢し、ロール紙12の回転停止および巻き戻し動作を行う構成となる。
【0120】
この場合、渦巻ばね25の代わりに、弦巻ばね81およびワイヤ82のような汎用的で安価な部品を使用することで、ロール紙停止機構21Eの製造コストを削減できる。
また、ばね定数の異なる弦巻ばね81に交換するだけで、ロール紙12のサイズや重量等に合わせて、簡易に、様々な動作特性のロール紙停止機構21Eを実現できる利点もある。
【0121】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2の連続紙供給装置を図14から図18を用いて説明する。
図14は本発明の他の実施の形態である連続紙供給装置をロール紙の給紙側から見た側面図である。
【0122】
図15は、本発明の実施の形態2である連続紙供給装置に備えられたブレーキ機構を示す正面図である。なお、この図15は、図14の矢印Hの方向から見たエアーシャフト近傍の図である。
【0123】
図16は、本発明の実施の形態2である連続紙供給装置に備えられたブレーキ機構を示す平面図である。なお、この図16は、図15の矢印Kの方向から見たエアーシャフト近傍の図である。
図17は、本実施の形態の連続紙供給装置における電源消失時のブレーキ機構の動作を示した平面図である。
図18は、本実施の形態のブレーキ機構の変形例を示す図である。
【0124】
この実施の形態2の連続紙供給装置3Bでは、ロール紙12を支持するエアーシャフト15の一端を支持するベース19に、上述のロール紙停止機構21(または、ロール紙停止機構21A〜ロール紙停止機構21E)を配置し、他端を支持するベース61にブレーキ機構60(第1ブレーキ機構)を配置した点が、上述の実施の形態1と異なっている。
【0125】
よって、図14の左側のベース19に設置されているロール紙停止機構21は上述の実施の形態1と全く同じなので説明は割愛し、図14の右側のベース61に設置されたブレーキ機構60の部分を説明する。
【0126】
すなわち、本実施の形態2の連続紙供給装置3Bの構成では、エアーシャフト15の一端側には上述の実施の形態1と同じロール紙停止機構21が設置され、他端側には、ブレーキ機構60の第2制動ギヤ62(第2制動ギヤ)が固着されている。
【0127】
エアーシャフト15のブレーキ機構60の側の端部は、反対のロール紙停止機構21の側と同様にベアリング13が挿入され、ベース61に支持されている。
【0128】
図15のように、第2制動ギヤ62の近傍には、ソレノイドばね67aによって当該第2制動ギヤ62の側に突出する方向に常時付勢されるソレノイド軸67を備えたソレノイド63が設置されている。
【0129】
すなわち、ソレノイド軸67の先端部に保持部材68が設けられ、保持部材68とソレノイド63の端面に配置されたソレノイドばね67aの伸長力によって、ソレノイド軸67は図16の矢印Jの方向に突出するように常時付勢されている。
【0130】
ソレノイド63は、通電時には、ソレノイドばね67aの付勢力に抗してソレノイド軸67を矢印Jの方向と反対側に引き込む動作を行う。これにより、連続紙印刷装置1に対する電源供給時には、第2制動ギヤ62の側に突出するソレノイド軸67はソレノイド63の内部に引き込まれた状態になっている。
【0131】
ソレノイド軸67の先端に設けられた保持部材68にはリミッタ軸66が固着されている。さらに、このリミッタ軸66は回動可能に被動ギヤ65を支持し、リミッタ軸66の一端にはトルクリミッタ64が固定されている。
【0132】
このトルクリミッタ64は、ロール紙12の給紙方向および巻き戻し方向のいずれ方向の第2制動ギヤ62の回転でも、被動ギヤ65を介して第2制動ギヤ62の回転に負荷を与える機能を備えている。
なお、エアーシャフト15に固定された第2制動ギヤ62に当接する被動ギヤ65は、第2制動ギヤ62に噛み合うギヤ構造に限らない。
【0133】
例えば、図18に例示された変形例のブレーキ機構60A(第1ブレーキ機構)のように、ソレノイドばね67aによって第2制動ギヤ62に押圧されることによって、トルクリミッタ64の負荷トルクを第2制動ギヤ62に伝達する円柱形状のゴムローラ69などの弾性体でも構わない。
【0134】
このゴムローラ69を被動ギヤ65の代わりに使用したブレーキ機構60Aの場合には、第2制動ギヤ62に接する制動開始時に、当該第2制動ギヤ62に対して滑らかに接続でき、振動や騒音を発生することなく、トルクリミッタ64による緩やかで静穏な制動動作を実現することができる。
【0135】
次に図16および図17を用いて本実施の形態2の連続紙供給装置3Bにおけるブレーキ機構60(ブレーキ機構60A)の動作について説明する。
【0136】
まず、連続紙供給装置3Bの通電時、すなわち、通常の稼働時には、ソレノイド63が作動し、ソレノイド軸67はソレノイドばね67aの付勢力に抗して、ソレノイド63の内部に引き込まれており、被動ギヤ65(ゴムローラ69)は、エアーシャフト15の第2制動ギヤ62から離間した状態にある。
【0137】
連続紙供給装置3Bの電源消失時、すなわち、反対側のロール紙停止機構21の作動時には、ソレノイド軸67が、ソレノイドばね67aの付勢力によって図16中の矢印Jの方向に繰り出し、第2制動ギヤ62に被動ギヤ65(ゴムローラ69)が当接して噛み合う。
【0138】
エアーシャフト15の第2制動ギヤ62に噛み合った被動ギヤ65(ゴムローラ69)はリミッタ軸66で連結されているトルクリミッタ64により、回転力が規制され、被動ギヤ65(ゴムローラ69)の回転力が規制されることにより、惰性回転するロール紙12が支持されたエアーシャフト15に固着されている被動ギヤ65(ゴムローラ69)の回転力も規制され、ロール紙12の惰性回転が減衰する。
【0139】
同様に、ロール紙停止機構21によるロール紙12の巻き戻し時にも、トルクリミッタ64による回転負荷によって、ロール紙12は緩やかに巻き戻される。
【0140】
連続紙供給装置3Bに再び電源が供給されると、ソレノイド63は、ソレノイドばね67aの付勢力に抗して、ソレノイド軸67を矢印Jの方向とは逆方向に引き込み、被動ギヤ65(ゴムローラ69)はエアーシャフト15の第2制動ギヤ62から離れる。
本実施の形態2の連続紙供給装置3Bの構成にあっては次の効果を奏する。
【0141】
(1)電源消失時に、ロール紙停止機構21とともにブレーキ機構60(ブレーキ機構60A)が作動することにより、ロール紙12の惰性回転を、より短時間で停止させることができる。
【0142】
(2)ロール紙停止機構21によるロール紙12の巻き戻し動作時に、ブレーキ機構60(ブレーキ機構60A)からロール紙12に作用する回転負荷によって緩やかにロール紙12を巻き戻すことができ、巻き戻し終了時の衝撃を緩和し、ロール紙12から繰り出される連続紙11の破断が防止できる。
【0143】
次に、図19および図20を用いて、本実施の形態2の連続紙供給装置3Bにおける他の変形例を説明する。
図19は、本発明の実施の形態2である連続紙供給装置におけるブレーキ機構の他の変形例を示す正面図である。
図20は、本発明の実施の形態2である連続紙供給装置におけるブレーキ機構の他の変形例を示す平面図である。
【0144】
なお、図19は、上述の図14の矢印Hの方向から見たエアーシャフト近傍の図である。また、図20は、上述の図19の矢印Mの方向から見たエアーシャフト近傍の図である。
【0145】
本実施の形態2の連続紙供給装置3Bにおける変形例1のブレーキ機構60B(第2ブレーキ機構)では、エアーシャフト15に固着された第2制動ギヤ62と噛み合う位置にヒンジギヤ70を配置し、ヒンジギヤ70はベアリング72を介してヒンジ軸71に支持されている。ヒンジ軸71はベース61にベアリング74を介して支持されている。
【0146】
さらにヒンジ軸71はベース61に固着されているワンウェイヒンジ73に連結されている。
このワンウェイヒンジ73は第2制動ギヤ62(ロール紙12)が印刷時に回転する方向(図19中の矢印Nの方向)には全く負荷がかからず第2制動ギヤ62を回転させ、逆回転時にのみ一定の負荷がかかるように動作する機能を備えている。
【0147】
他の構成については上述の実施の形態1と同じである。
次に図19および図20を用いて本実施の形態2の連続紙供給装置3Bにおける変形例1のブレーキ機構60Bの動作について説明する。
【0148】
ブレーキ機構60Bにおいて、印刷時には、ロール紙12を支持するエアーシャフト15および第2制動ギヤ62は図19中の矢印Nの方向に回転している。
【0149】
このとき、ブレーキ機構60Bでは、第2制動ギヤ62にはヒンジギヤ70が噛み合い、ヒンジ軸71を介してワンウェイヒンジ73が連結されているが、エアーシャフト15は全く負荷が作用せずに回転している。
【0150】
印刷中に連続紙供給装置3Bの電源が消失すると、ブレーキ機構60Bと反対側に設けられた上述のロール紙停止機構21によりロール紙12の惰性回転が停止される。
ロール紙12の惰性回転が停止すると、ロール紙停止機構21の渦巻ばね25によりロール紙12は逆回転し始める。
【0151】
このロール紙12の逆回転時には、ブレーキ機構60Bのワンウェイヒンジ73により、ロール紙停止機構21の渦巻ばね25によるエアーシャフト15の逆回転に負荷がかかり、ロール紙12の回転速度が印刷時より遅くなる。
本実施の形態2の連続紙供給装置3Bにおける変形例1のブレーキ機構60Bにあっては次の効果を奏する。
【0152】
ブレーキ機構60Bのワンウェイヒンジ73の作用により、ロール紙停止機構21よるロール紙12の巻き戻し時に、緩やかに低回転速度でロール紙12を巻き戻すことができ、巻き戻し終了時の衝撃を緩和し、ロール紙12から繰り出される連続紙11の破断を防止できる。
【0153】
以上説明したように、本発明の各実施の形態によれば、連続紙印刷装置1における「電源消失時」に、簡単な構造のロール紙停止機構21(ロール紙停止機構21A、ロール紙停止機構21B、ロール紙停止機構21C、ロール紙停止機構21D、ロール紙停止機構21E)等で連続紙11を繰り出すロール紙12の惰性回転の停止および巻き戻しを実現でき、停電時等を含む電源異常時にもロール紙12を確実に停止できると共に、停止時にロール紙12が弛むことのない技術を提供することができる。
【0154】
また、ロール紙停止機構21(ロール紙停止機構21A、ロール紙停止機構21B、ロール紙停止機構21C、ロール紙停止機構21D、ロール紙停止機構21E)は、外部からのエネルギ供給を必要としない簡易で小形な構造であるため、連続紙印刷装置1の小型化、低価格化を実現できる効果を奏する。
【0155】
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、弾性部材としては、渦巻ばね等に限らず、圧縮気体等の弾性を利用する構成でもよい。
【符号の説明】
【0156】
1 連続紙印刷装置
2 プリンタ本体
3 連続紙供給装置
3A 連続紙供給装置
3B 連続紙供給装置
4 巻き癖除去装置
5 印刷機構部
5a ヘッド部
5b ヘッド部
6a クリーニング部
6b クリーニング部
7a ドラム
7b ドラム
8 カッターユニット
9 収容ユニット
10 ローラ
11 連続紙
12 ロール紙
13 ベアリング
14 バックテンションギヤ
15 エアーシャフト
16 中継ギヤ
17 クラッチギヤ
18 パウダークラッチ
19 ベース
19a U字形溝
20 架台
21 ロール紙停止機構
21A ロール紙停止機構
21B ロール紙停止機構
21C ロール紙停止機構
21D ロール紙停止機構
21E ロール紙停止機構
22 制動ギヤ
23 ばねケース
24 巻軸
25 渦巻ばね
25a 外端部
25b 内端部
26 引き出し口
27a ガイドローラ
27b ガイドローラ
28 スライドレール
28a ガイド溝
29a ローラ
29b ローラ
30 可動ベース
31 ソレノイド
32 ソレノイド軸
33 爪部材
33a 嵌合爪
33b ラッチ溝
33c ガイド斜面部
34 ピボット軸
35 ベアリング
36a ばねポスト
36b ばねポスト
37 引張ばね
38 ストッパ
50 制動ギヤ溝
51 ストッパ
51a 摺動曲面
51b 垂直ストッパ面
52 爪後端部角
53 ショックアブソーバ
53a 作動軸
54 ベース
55 スライドレール
55a ガイド溝
56 スライドレール
56a ガイド溝
57 ベース
58 ヒンジ
59 ボルト
60 ブレーキ機構
60A ブレーキ機構
60B ブレーキ機構
61 ベース
62 第2制動ギヤ
63 ソレノイド
64 トルクリミッタ
65 被動ギヤ
66 リミッタ軸
67 ソレノイド軸
67a ソレノイドばね
68 保持部材
69 ゴムローラ
70 ヒンジギヤ
71 ヒンジ軸
72 ベアリング
73 ワンウェイヒンジ
74 ベアリング
81 弦巻ばね
82 ワイヤ
82a 基端部
82b 可動端
83 ベアリング
84 ばねポスト
100 排出装置
R ガイド溝28aの曲率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙とともに回転するロール支持軸と、
停電時に前記ロール支持軸に係合して回動する係合手段、および前記係合手段に接続され前記ロール紙を巻き戻し方向に付勢する弾性部材を含むロール紙停止機構と、
を具備したことを特徴とする連続紙供給装置。
【請求項2】
請求項1記載の連続紙供給装置において、
前記ロール紙停止機構は、停電時に、前記弾性部材から前記係合手段に作用する付勢力によって、前記ロール紙の惰性回転の停止および巻き戻し動作を行うことを特徴とする連続紙供給装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の連続紙供給装置において、
前記係合手段は、
前記ロール支持軸に設けられた制動ギヤと、
前記ギヤの回りに設けられたスライドレールと、
前記スライドレールに沿って移動可能に設けられた可動ベースと、
前記可動ベースに搭載され、前記弾性部材に接続された爪部材と、
前記爪部材を前記制動ギヤに噛合させる方向に付勢する引張ばねと、
前記爪部材を前記制動ギヤから離間した位置に拘束し、前記停電時に前記爪部材の拘束を解除するソレノイドと、
を含むことを特徴とする連続紙供給装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の連続紙供給装置において、
前記弾性部材は渦巻ばねからなることを特徴とする連続紙供給装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の連続紙供給装置において、
前記ロール支持軸の両端の各々に前記ロール紙停止機構を具備したことを特徴とする連続紙供給装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の連続紙供給装置において、
さらに、停電時に前記ロール支持軸に係合し、前記ロール紙の給紙方向および巻き戻し方向の回転を制動する第1ブレーキ機構を具備したことを特徴とする連続紙供給装置。
【請求項7】
請求項6記載の連続紙供給装置において、
第1ブレーキ機構は、
前記ロール支持軸に設けられた第2制動ギヤと、
前記第2制動ギヤに対して被動ギヤを介して接続され、前記ロール紙の給紙方向および巻き戻し方向に回動負荷を発生するトルクリミッタと、
前記トルクリミッタをソレノイド軸の一端に搭載したソレノイドと、
前記ソレノイド軸に搭載された前記トルクリミッタの前記被動ギヤを前記第2制動ギヤに噛合させる方向に常時付勢するばねと、
を具備したことを特徴とする連続紙供給装置。
【請求項8】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の連続紙供給装置において、
さらに、停電時に前記ロール支持軸に係合し、前記ロール紙の巻き戻し方向の回転を制動する第2ブレーキ機構を具備したことを特徴とする連続紙供給装置。
【請求項9】
請求項8記載の連続紙供給装置において、
前記第2ブレーキ機構は、
前記ロール支持軸に設けられた第2制動ギヤと、
前記第2制動ギヤに対して被動ギヤを介して接続され、前記巻き戻し方向にのみ回動負荷を発生するワンウェイヒンジと、
を具備したことを特徴とする連続紙供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−121696(P2011−121696A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280346(P2009−280346)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】