説明

連続繊維帯の接続具及び斜面安定化工法

【課題】連続繊維帯同士を強固に接続することができる連続繊維帯の接続具、及びそのような連続繊維帯の接続具を用いて配設された連続繊維帯で斜面を安定化する斜面安定化工法を提供する。
【解決手段】連続繊維帯11〜18の端部を圧着面に挟み込ませて外周に巻回した固定部材を地盤に固定された定着体に固定し、連続繊維帯11〜18の接続端部を圧着面に挟み込ませて外周に巻回した2個の端部部材同士を接続部材で接続する。斜面に格子状に配設された複数の連続繊維帯11〜18をこのようにして固定し、押し込みプレート40を用いて連続繊維帯11〜18に緊張力を付与して斜面に圧着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等の連続繊維を内蔵する樹脂から成る帯状の補強材料(以下、本発明において連続繊維を内蔵する帯状の補強材料を連続繊維帯と称する)同士を接続する連続繊維帯の接続具、及び斜面を安定化する斜面安定化工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、表層崩壊が予想されるような自然斜面や法面において、碁盤目状に配置された補強材を地山に打ち込み、この補強材にネットを緊張定着することにより発生する張力を利用して、想定すべり面に比較的均等な抑止力を発生させて斜面を安定化する斜面安定化工法が知られている。このような斜面安定化工法では、張力を発生させるネットとして、一般に、PC鋼より線が用いられる。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところが、上述した特許文献1に提案された斜面安定化工法で張力を発生させるネットとして用いられるPC鋼より線は、鋼製であるため、一般的なものでは腐食性雰囲気など使用条件に対して、十分な耐食性・耐候性を期待できない場合がある。また、防食加工が施されたPC鋼より線も普及しているものの、例えば、塩害が予想される海岸近くの土壌や、酸性土壌などの斜面で長期にわたって使用されると腐食する恐れがある。
【0004】
近年、耐食性・耐候性を有する部材として、連続繊維帯も普及している。連続繊維帯とは、連続した繊維、例えば炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等で強化した樹脂から成る帯状の繊維補強材料をいう。このような連続繊維帯は、軽量、高耐食性、高強度、低磁性などの優位性があるほか、PC鋼より線に代表される従来の鋼製の部材と比較して、機械的、物理的諸特性にも安定性があり、緊張材として認知されている。ただ、強度的に唯一の弱点は、連続繊維帯が剪断に弱いことである。連続繊維帯の剪断強さは一般鋼材に比べて、1/4〜1/5と低く、そのため、取扱に特別な注意を払う必要がある。
【0005】
一般のPC鋼より線を緊張定着する場合、内面に歯形加工をした「くさび」を用いてPC鋼より線を直接掴み、緊張、定着を任意の位置で行っている。一方、連続繊維帯は、上述したように、剪断強さが小さいため、「くさび」で直接、連続繊維帯を掴んで定着するなど過度の剪断力を付加することが出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3566219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、塩害が予想される海岸近くの土壌や、酸性土壌などの斜面を安定化する場合に用いる部材としては、従来の鋼製の部材よりも耐食性・耐候性を有する連続繊維帯の方が望ましいものの、連続繊維帯には過度の剪断力を付加することが出来ないことから、連続繊維帯を強固に固定したり、連続繊維帯同士を強固に接続することが極めて困難であった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、連続繊維帯同士を強固に接続することができる連続繊維帯の接続具、及びそのような連続繊維帯の接続具を用いて配設された連続繊維帯で斜面を安定化する斜面安定化工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の連続繊維帯の接続具は、一対の半割柱体の半割面を合わせて圧着する端部部材の圧着面に連続繊維帯の接続端部をそれぞれ挟み込んで締め付けると共に、その接続端部の隣接部を上記端部部材の外周に巻回した2個の端部部材を対向させ、それらの端部部材同士を接続部材で接続して構成したことを特徴とする。
【0010】
ここで、本発明にいう「一対の半割柱体」とは、柱体が円柱であって円柱断面の直径に沿って半割されたものが最も好ましいが、他の断面形状、例えば矩形断面、楕円形断面、六角形断面などでもよく、また、上記の円柱断面の直径に沿って半割されたものに限らず、連続繊維帯の接続端部を適切に挟み込むことができるような、任意の円柱の断面の弦に沿って半割されたものや、柱体の任意の断面の位置を通る直線に沿って半割されたものなどであってもよい。
【0011】
本発明の連続繊維帯の接続具は、連続繊維帯の接続端部を圧着面に挟み込ませて外周に巻回した端部部材を用いるものであるため、剪断強さが小さい連続繊維帯に過度の剪断力が付加されることを回避してその接続端部を強固に掴むことができる。また、本発明の連続繊維帯の接続具は、このようにして連続繊維帯の接続端部が強固に掴まれた2個の端部部材同士を接続部材で接続して構成されるものであるため、連続繊維帯同士を強固に接続することが実現される。
【0012】
ここで、上記本発明の連続繊維帯の接続具は、上記接続部材が、上記連続繊維帯に作用する張力の方向に直交する方向に接続するものであってもよく、また、上記接続部材が、上記連続繊維帯に作用する張力の方向に平行する方向に接続するものであってもよい。
【0013】
また、上記本発明の連続繊維帯の接続具は、上記圧着面に挟み込む平板を備えたことが好ましい。
【0014】
上記半割柱体の強度が不足している場合に平板を圧着面に挟み込むことによってその強度を増加させることができる。また、平板の厚みを変更することによって、その強度を調節することができる。
【0015】
また、上記目的を達成する本発明の斜面安定化工法は、複数の連続繊維帯を斜面に格子状に配設し、その連続繊維帯の端部を地盤に固定し、湾曲状の隆起部分を有する押し込みプレートの隆起部分で上記連続繊維帯同士の交差部を地中方向に押し込み、上記連続繊維帯に緊張力を付与して斜面に圧着させることを特徴とする。
【0016】
本発明の斜面安定化工法は、押し込みプレートを用いて連続繊維帯に緊張力が付与されるため、連続繊維帯に過度の剪断力が付加されることが回避される。従って、本発明の斜面安定化工法によれば、連続繊維帯を緊張することによって斜面を安定化することができる。
【0017】
ここで、上記本発明の斜面安定化工法において、上記連続繊維帯は接続具で接続して所要長さとすることが好ましい。
【0018】
連続繊維帯の長さが、安定化する斜面の領域に対して必要十分な長さを満たさない場合は、連続繊維帯の2個の接続端部同士を強固に接続する上記連続繊維帯の接続具が用いられることにより、押し込みプレートを用いて連続繊維帯に緊張力が付与されて、上記端部部材の外周に巻回された連続繊維帯の締め付けがより一層強くなると共に、連続繊維帯に過度の剪断力が付加されることが回避されて、所要長さの連続繊維帯を得ることができる。
【0019】
また、上記本発明の斜面安定化工法において、上記押し込みプレートが、高強度繊維補強モルタルからなるものであることも好ましい形態である。
【0020】
上記高強度繊維補強モルタルは、モルタルに鋼繊維や有機繊維などを混入したものであって、高い靱性を有するものである。従って、このような高強度繊維補強モルタルからなる押し込みプレートは、小型で軽量なものとなり、大きな押し込み力を得ることができ、本発明の斜面安定化工法に適用すると、施工時における作業性が向上し、再締めも容易で、保全性、耐久性も高く、好適である。
【発明の効果】
【0021】
従来、剪断強さが小さい連続繊維帯同士を強固に接続することも極めて困難であったが、本発明の連続繊維帯の接続具は、連続繊維帯の接続端部を圧着面に挟み込ませて外周に巻回した端部部材が強固に掴まれた2個の端部部材同士を接続部材で接続するものであるため、連続繊維帯同士を強固に接続することができる。
【0022】
さらに、上記連続繊維帯の接続具を用いて斜面に配設された連続繊維帯に緊張力が付与されても、その連続繊維帯に過度の剪断力が付加されることが回避されることから、本発明の斜面安定化工法によれば、連続繊維帯を緊張することによって斜面を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態が適用された法面保護具10の一部分を上面から見た部分上面図である。
【図2】図1に示す端部固定具21の側面図である。
【図3】図1,図2に示す端部固定具21の上面図である。
【図4】図1に示す端部固定具22の側面図である。
【図5】図1,図4に示す端部固定具22の上面図である。
【図6】図1に示す接続具31の側面図である。
【図7】図1,図6に示す接続具31の上面図である。
【図8】図1に示す接続具32の側面図である。
【図9】図1,図8に示す接続具32の上面図である。
【図10】図1に示す押し込みプレート40を製造するための押し込みプレート型枠50の側面図である。
【図11】図10に示す押し込みプレート型枠50の上面図である。
【図12】図1に示す押し込みプレート40の側面図である。
【図13】図1,図12に示す押し込みプレート40の上面図である。
【図14】図1に示す法面保護具10の一部分を側面から見た部分側面図である。
【図15】図1,図6,図7に示す接続具の圧着面に平板を挟み込んだ状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態が適用された法面保護具10の一部分を上面から見た部分上面図である。
【0026】
図1に示す法面保護具10は、斜面に格子状に配設された法面保護具の一部分を示すものである。ここでは、図の横方向に配設された複数の連続繊維帯11,12,13,14,15と、図の縦方向に配設された複数の連続繊維帯16,17,18が示されている。複数の連続繊維帯11〜18の各端部は端部固定具21,22によって地盤に固定されている。図1には、連続繊維帯16,17の端部が端部固定具22によって地盤に固定され、連続繊維帯18の端部が端部固定具21によって地盤に固定されている例が示されている。また、複数の連続繊維帯11〜18は、必要に応じて、本発明の連続繊維帯の接続具の実施例である接続具31,32によって接続されて所要長さとされている。図1には、連続繊維帯12,13の各接続端部が接続具32によって接続され、連続繊維帯14,15の各接続端部が接続具31によって接続されている例が示されている。さらに、複数の連続繊維帯11〜18同士の交差部には、この交差部を地中方向に押し込み、各連続繊維帯11〜18に緊張力を付与して斜面に圧着させる押し込みプレート40が配備されている。
【0027】
次に、図1に示す端部固定具21,22の構成を図2〜図5を参照して詳述し、図1に示す接続具31,32の構成を図6〜図9を参照して詳述し、図1に示す押し込みプレート40の構成を図10〜図14を参照して詳述する。
【0028】
図2は、図1に示す端部固定具21の側面図であり、図3は、図1,図2に示す端部固定具21の上面図であり、図4は、図1に示す端部固定具22の側面図であり、図5は、図1,図4に示す端部固定具22の上面図である。
【0029】
図2,図3に示す端部固定具21は、本発明の一対の半割柱体の実施例である一対の半割円柱211,212の半割面211a,212aを合わせて圧着する固定部材213の圧着面213aに、連続繊維帯18の端部18aを挟み込んで締め付けると共に、その端部18aの隣接部18bを固定部材213の外周213bに巻回している。従って、剪断強さが小さい連続繊維帯18に過度の剪断力が付加されることが回避されてその連続繊維帯18の端部18aを強固に掴むことができる。また、この端部固定具21は、このようにして連続繊維帯18の端部18aが強固に掴まれた固定部材213を、アンカーボルト214で地盤に固定された定着体215に、連続繊維帯18に作用する張力の方向に平行する方向に2本の固定ボルト216で固定して構成されるものであるため、連続繊維帯18の端部18aが強固に固定される。
【0030】
また、図4,図5に示す端部固定具22も、図2,図3に示す端部固定具21と同様に、一対の半割円柱221,222の半割面221a,222aを合わせて圧着する固定部材223の圧着面223aに、連続繊維帯16の端部16aを挟み込んで締め付けると共に、その端部16aの隣接部16bを固定部材223の外周223bに巻回している。また、この端部固定具22は、このようにして連続繊維帯16の端部16aが強固に掴まれた固定部材223を、アンカーボルト224で地盤に固定された定着体225に、連続繊維帯16に作用する張力の方向に直交する方向に2本の固定ボルト226で固定して構成されるものであるため、連続繊維帯16の端部16aが強固に固定される。
【0031】
図6は、図1に示す接続具31の側面図であり、図7は、図1,図6に示す接続具31の上面図であり、図8は、図1に示す接続具32の側面図であり、図9は、図1,図8に示す接続具32の上面図である。
【0032】
図6,図7に示す接続具31は、一対の半割円柱3111,3112の半割面3111a,3112aを合わせて圧着する端部部材3113の圧着面3113aに、連続繊維帯14の接続端部14aを挟み込んで締め付け、一対の半割円柱3121,3122の半割面3121a,3122aを合わせて圧着する端部部材3123の圧着面3123aに、連続繊維帯15の接続端部15aを挟み込んで締め付けると共に、接続端部14aの隣接部14bを端部部材3113の外周3113bに巻回し、接続端部15aの隣接部15bを端部部材3123の外周3123bに巻回している。従って、剪断強さが小さい連続繊維帯14,15に過度の剪断力が付加されることが回避されてその連続繊維帯14,15の接続端部14a,15aを強固に掴むことができる。また、この接続具31は、このようにして連続繊維帯14,15の接続端部14a,15aが強固に掴まれた2個の端部部材3113,3123を対向させ、それらの端部部材3113,3123同士を、連続繊維帯14,15に作用する張力の方向に直交する方向に2本のハイテンションボルト313で接続して構成されるものであるため、連続繊維帯14,15同士が強固に接続される。
【0033】
図8,図9に示す接続具32も、図6,図7に示す接続具31と同様に、一対の半割円柱3211,3212の半割面3211a,3212aを合わせて圧着する端部部材3213の圧着面3213aに、連続繊維帯12の接続端部12aを挟み込んで締め付け、一対の半割円柱3221,3222の半割面3221a,3222aを合わせて圧着する端部部材3223の圧着面3223aに、連続繊維帯13の接続端部13aを挟み込んで締め付けると共に、接続端部12aの隣接部12bを端部部材3213の外周3213bに巻回し、接続端部13aの隣接部13bを端部部材3223の外周3223bに巻回している。また、この接続具32は、このようにして連続繊維帯12,13の接続端部12a,13aが強固に掴まれた2個の端部部材3213,3223を対向させ、それらの端部部材3213,3223同士を、連続繊維帯12,13に作用する張力の方向に平行する方向に2本のハイテンションボルト323で接続して構成されるものであるため、連続繊維帯12,13同士が強固に接続される。
【0034】
図10は、図1に示す押し込みプレート40を製造するための押し込みプレート型枠50の側面図であり、図11は、図10に示す押し込みプレート型枠50の上面図である。また、図12は、図1に示す押し込みプレート40の側面図であり、図13は、図1,図12に示す押し込みプレート40の上面図である。
【0035】
図10,図11に示す、湾曲状の窪み50aを有する押し込みプレート型枠50内に、鋼繊維などが混入されたモルタルを打設して養生し、モルタルの硬化後に押し込みプレート型枠50から押し込みプレート40を取出すことによって、図12,図13に示すような、隆起部分40aを有する押し込みプレート40が得られる。また、この押し込みプレート40の中心部分には、後述するアンカーボルト60が差し込まれる貫通孔40bが設けられている。このようにして得られた押し込みプレート40は、鋼繊維などが混入された高強度繊維補強モルタルからなるものであるため、高い靱性を有する。従って、このような高強度繊維補強モルタルからなる押し込みプレートは、小型で軽量なものとなり、大きな押し込み力を得ることができ、本実施形態の斜面安定化工法に適用すると、施工時における作業性が向上し、再締めも容易で、保全性、耐久性も高く、好適である。
【0036】
以下、図1に示す法面保護具10を用いて斜面を安定化する斜面安定化工法の施工手順を、図1,図14を参照して説明する。尚、図14は、図1に示す法面保護具10の一部分を側面から見た部分側面図であって、連続繊維帯17の両端部が端部固定具22で地盤に固定されるとともに、押し込みプレート40によって連続繊維帯17に緊張力Tが付与されて斜面に圧着された状態が示されている。
【0037】
先ず、表層崩壊が予想されるような自然斜面や法面などといった斜面に、後述するように格子状に配設される複数の連続繊維帯11〜18同士の交差部が位置する地盤をボーリングするとともに、ボーリングした各位置の地表に空隙60を設ける。
【0038】
次に、ボーリングされた各空間にアンカーボルト70を挿入し、アンカーボルト70が挿入された各空間の下部にモルタルを打設して、各アンカーボルト70を地盤に固定する。
【0039】
次に、複数の連続繊維帯11〜18同士の交差部の位置と、地盤に固定されたアンカーボルト70の位置とが一致するように、複数の連続繊維帯11〜18を斜面に格子状に配設する。また、必要に応じて、複数の連続繊維帯11〜18の接続端部を、図1,図6〜図9に示す接続具31,32で接続して所要長さとする。
【0040】
次に、複数の連続繊維帯11〜18の各端部を、図1〜図5に示す端部固定具21,22で地盤に固定する。
【0041】
次に、複数の連続繊維帯11〜18同士の各交差部に、湾曲状の隆起部分40aを有する押し込みプレート40の隆起部分40aが接するように、押し込みプレート40を各交差部に配設する。このとき、押し込みプレート40の貫通孔40bを、地盤に固定されたアンカーボルト70が貫通している。
【0042】
次に、地盤に固定されたアンカーボルト70の、押し込みプレート40の貫通孔40bを貫通して上部に突出した部分をナット80で締め付けて、押し込みプレート40の隆起部分40aで、複数の連続繊維帯11〜18同士の各交差部に押し込み力Pを付与することによってこれら各交差部を地中方向に押し込み、押し込みプレート40を地盤に固定するとともに、各連続繊維帯11〜18に緊張力Tを付与する。この押し込み力Pは、各連続繊維帯11〜18に対しても押し込み力pとして作用し、各連続繊維帯11〜18は、この押し込み力pによって斜面に圧着される。
【0043】
最後に、複数の連続繊維帯11〜18同士の各交差部直下に設けられている空隙60にウレタン樹脂などを充填してこの空隙60を密閉する。このように、空隙60に、可縮性を有するウレタン樹脂などを充填して密閉することによって、ナット80を再締めすることができる。尚、空隙60を充填して密閉する物質はウレタン樹脂に限らず、スポンジなど弾性や可縮性を有する物質であれば同様の効果が得られる。また、ナット80を再締めする必要がない場合には、この空隙60にソイルセメントなどを充填して密閉してもよい。
【0044】
上述した斜面安定化工法によれば、押し込みプレート40を用いて各連続繊維帯11〜18に緊張力が付与されて、固定部材や端部部材の外周に巻回された各連続繊維帯11〜18の締め付けがより一層強くなると共に、各連続繊維帯11〜18に過度の剪断力が付加されることが回避される。従って、本実施形態の斜面安定化工法によれば、法面保護具10の各連続繊維帯11〜18に緊張力を付与することによって斜面を安定化することができる。
【0045】
図15は、図1,図6,図7に示す接続具の圧着面に平板を挟み込んだ状態を示す側面図である。
【0046】
図15に示すように、接続具31の端部部材3113,3123それぞれの圧着面3113a,3123aに平板90が挟み込まれている。このように圧着面3113a,3123aに平板90を挟み込むと端部部材3113,3123の強度が増加されることとなるため、各連続繊維帯11〜18をより一層強く緊張させることが可能となる。また、平板90の厚みを変更することによって、その強度を調節することができる。
【0047】
尚、本実施形態では、接続具の圧着面に平板を挟み込む例を挙げたが、これに限られるものではなく、本発明の連続繊維帯の接続具の圧着面に挟み込んでもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 法面保護具
11,12,13,14,15,16,17,18 連続繊維帯
18a,16a 端部
14a,15a,12a,13a 接続端部
18b,16b,14b,15b,12b,13b 隣接部
21,22 端部固定具
211,212,221,222,3111,3112,3121,3122,3211,3212,3221,3222 半割円柱
211a,212a,221a,222a,3111a,3112a,3121a,3122a,3211a,3212a,3221a,3222a 半割面
213,223 固定部材
213a,223a,3113a,3123a,3213a,3223a 圧着面
213b,223b,3113b,3123b,3213b,3223b 外周
214,224 アンカーボルト
215,225 定着体
216,226 固定ボルト
31,32 接続具
3113,3123,3213,3223 端部部材
313,323 ハイテンションボルト
40 押し込みプレート
40a 隆起部分
40b 貫通孔
50 押し込みプレート型枠
50a 窪み
60 空隙
70 アンカーボルト
80 ナット
90 平板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の半割柱体の半割面を合わせて圧着する端部部材の圧着面に連続繊維帯の接続端部をそれぞれ挟み込んで締め付けると共に、該接続端部の隣接部を前記端部部材の外周に巻回した2個の端部部材を対向させ、該端部部材同士を接続部材で接続してなることを特徴とする連続繊維帯の接続具。
【請求項2】
前記接続部材が、前記連続繊維帯に作用する張力の方向に直交する方向に接続するものであることを特徴とする請求項1記載の連続繊維帯の接続具。
【請求項3】
前記接続部材が、前記連続繊維帯に作用する張力の方向に平行する方向に接続するものであることを特徴とする請求項1記載の連続繊維帯の接続具。
【請求項4】
前記圧着面に挟み込む平板を備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の連続繊維帯の接続具。
【請求項5】
複数の連続繊維帯を斜面に格子状に配設し、該連続繊維帯の端部を地盤に固定し、湾曲状の隆起部分を有する押し込みプレートの該隆起部分で前記連続繊維帯同士の交差部を地中方向に押し込み、前記連続繊維帯に緊張力を付与して斜面に圧着させることを特徴とする斜面安定化工法。
【請求項6】
前記連続繊維帯は接続具で接続して所要長さとすることを特徴とする請求項5記載の斜面安定化工法。
【請求項7】
前記押し込みプレートが、高強度繊維補強モルタルからなるものであることを特徴とする請求項5記載の斜面安定化工法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2011−26951(P2011−26951A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225089(P2010−225089)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【分割の表示】特願2004−366644(P2004−366644)の分割
【原出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000112196)株式会社ピーエス三菱 (181)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】