連続鋳造用浸漬ノズル
【課題】吐出孔から吐出する溶鋼流の偏流が少なく湯面変動も小さく、製造が容易な連続鋳造用浸漬ノズルを提供する。
【解決手段】浸漬ノズル10は、底部15を有する円筒状の管体11からなり、内部に形成された流路12の上端は溶鋼の流入口13とされている。一方、管体11の下部側面には、流路12と連通する一対の吐出孔14が対向して形成されている。吐出孔14は正面視して矩形状とされ、一対の吐出孔14間に在って流路12を画成する内壁18には、内方に向けて突出し当該内壁18を水平方向に横断する突条部16が対向配置されている。対向する突条部16間のクリアランスは一定とされ、その両端部は、外方に向けて下方に傾斜する傾斜部とされている。各吐出孔14の上端面及び下端面も外方に向けて下方に傾斜し、突条部16に形成された傾斜部と吐出孔14の上端面及び下端面とは同じ傾斜角度とされている。
【解決手段】浸漬ノズル10は、底部15を有する円筒状の管体11からなり、内部に形成された流路12の上端は溶鋼の流入口13とされている。一方、管体11の下部側面には、流路12と連通する一対の吐出孔14が対向して形成されている。吐出孔14は正面視して矩形状とされ、一対の吐出孔14間に在って流路12を画成する内壁18には、内方に向けて突出し当該内壁18を水平方向に横断する突条部16が対向配置されている。対向する突条部16間のクリアランスは一定とされ、その両端部は、外方に向けて下方に傾斜する傾斜部とされている。各吐出孔14の上端面及び下端面も外方に向けて下方に傾斜し、突条部16に形成された傾斜部と吐出孔14の上端面及び下端面とは同じ傾斜角度とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンディッシュから鋳型内に溶鋼を注湯する連続鋳造用浸漬ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
溶鋼を連続的に冷却凝固させて所定形状の鋳片を形成する連続鋳造工程では、タンディッシュの底部に設置された連続鋳造用浸漬ノズル(以下では、単に「浸漬ノズル」と呼ぶこともある。)を介して鋳型内に溶鋼が注湯される。
一般に、浸漬ノズルは、上端部が溶鋼の流入口とされ、流入口から下方に延びる流路が内部に形成された、底部を有する管体からなり、管体の下部側面には、流路と連通する一対の吐出孔が対向して形成されている。浸漬ノズルは、その下部を鋳型内の溶鋼中に浸漬させた状態で使用される。これにより、注湯された溶鋼の飛散を防止すると共に、溶鋼と大気との接触を遮断して酸化を防止している。また、浸漬ノズルを使用することにより鋳型内の溶鋼が整流化され、湯面を浮遊するスラグや非金属介在物などの不純物が溶鋼中へ巻き込まれないようにしている。
【0003】
近年、連続鋳造工程における鋼品質の高品位化及び高生産化が求められている。現有設備において高生産化を指向する場合、鋳込速度を上げる必要があり、限られた鋳型内で浸漬ノズルの流路径を大きくしたり、吐出孔を大きくしたりして通鋼量を稼ぐ工夫がなされている。
【0004】
しかし、吐出孔を大きくすると、吐出孔から吐出する吐出流の上下方向及び/又は左右方向の流速分布にアンバランスが生じる。そして、このアンバランスな流れ(偏流)が鋳型の短辺がわ側壁に衝突することにより、鋳型内において不安定な溶鋼流が引き起こされる。その結果、過大な反転流による湯面変動やモールドパウダーの巻き込みによる鋼品質の低下を招くと共に、ブレークアウト等の要因になっていた。
【0005】
そこで、例えば特許文献1では、管体の下部側面に対向して形成された一対の吐出孔を、内方に突出する突起部によって上下2段又は3段に分割して総数4個又は6個の吐出孔とした浸漬ノズルの発明が開示されている(図18(A)、(B)参照)。そして、当該浸漬ノズルによれば、詰まりを抑制すると共に、より一様な吐出流速を有し、回転と渦が大幅に減少した、より安定且つ制御された吐出流が生成されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/049249号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、特許文献1に記載された浸漬ノズルと、管体の下部側面に対向して形成された一対の吐出孔を有する従来の浸漬ノズルと、従来の浸漬ノズルにおいて対向する吐出孔間の流路中央部に内方に突出する突起部を設けたタイプ(図19参照)について水モデル試験を実施し、各浸漬ノズルから吐出される吐出流のバラツキについて検証した。
【0008】
図20は、各浸漬ノズルの水モデル結果を示したものである。同図では、鋳型を短辺方向から見て、浸漬ノズルを挟んで左右の反転流速の標準偏差の平均値σavを横軸、左右の反転流速の標準偏差の差Δσ及び左右の反転流速の平均値Vavを縦軸に採っている。また、試験体Aが特許文献1に記載された浸漬ノズル(4吐出孔タイプ)、試験体Bが従来の浸漬ノズル、試験体Cが流路中央部(浸漬ノズルの内壁面上かつ流路幅の中央部)に突起部を設けた浸漬ノズルに対応している。
図20(A)より、左右の反転流速の標準偏差の差Δσ、即ち左右の反転流速の差が最も大きい浸漬ノズルが従来タイプであり、特許文献1に記載された浸漬ノズルと流路中央部に突起部を設けた浸漬ノズルは、左右の反転流速の差が小さいことがわかる。一方、図20(B)より、従来の浸漬ノズルと特許文献1に記載された浸漬ノズルは左右の反転流速の平均値Vavが大きく、流路中央部に突起部を設けた浸漬ノズルは左右の反転流速の平均値Vavが小さいことがわかる。
【0009】
鋳込速度(スループット)が増大するにつれて、左右の反転流速の標準偏差の差Δσ及び左右の反転流速の平均値Vavは増大することが確認されているが、鋼品質の高品位化の観点からすれば、Δσは2cm/sec以下、Vavは10cm/sec〜30cm/secが望ましい。この点に関し、Δσについては全ての試験体において2cm/sec以下となっているが、Vavについては、全ての試験体が10cm/sec〜30cm/secの範囲から外れている。
【0010】
また、特許文献1に記載された浸漬ノズル(4吐出孔タイプ)の場合、図21(A)、(B)に示す流体解析結果が示すように、下側吐出孔からの吐出流が多く、上側吐出孔からの吐出流が少ない。その結果、反転流速が35cm/secと大きな値を示している。なお、流体解析時の鋳型サイズは1500mm×235mm、鋳込速度は3.0ton/minである。
加えて、特許文献1に記載された浸漬ノズルでは、吐出孔が4個以上有るため、製造が複雑になり過ぎると共に、吐出孔の閉塞や溶損が発生した場合、吐出流のバランスが崩れやすいという難点がある。
【0011】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、吐出孔から吐出する溶鋼流の偏流が少なく湯面変動も小さく、製造が容易な連続鋳造用浸漬ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、上端部が溶鋼の流入口とされ、該流入口から下方に延びる流路が内部に形成された、底部を有する管体の下部側面に、前記流路と連通する一対の吐出孔が対向して形成された連続鋳造用浸漬ノズルにおいて、一対の前記吐出孔間に在って前記流路を画成する内壁に、内方に突出し該内壁を水平方向に横断する突条部が対向配置されていることを特徴としている。
ここで、「内壁を水平方向に横断する」とは、内壁の一方の側端(一方の吐出孔との境界位置)から他方の側端(他方の吐出孔との境界位置)まで、突条部が水平方向に延在することを意味する。
なお、本明細書では、連続鋳造用浸漬ノズルを鉛直に立てた状態に基づいて各方向を設定している。
【0013】
従来の浸漬ノズルでは、吐出孔から吐出する吐出流の流速分布が下方に偏り不均一となっていたが、本発明では、対向する突条部による堰き止め効果により、吐出孔上部においても吐出流を得ることができる。一方、対向する突条部間を下方に通過する溶鋼流は、突条部間のクリアランスによる整流効果によって、突条部の延在方向と平行な鉛直面内において管体軸を挟んで左右均等な流れとなる。また、吐出流が均等となることによって、鋳型の短辺がわ側壁に衝突する吐出流の最大速度が緩和され、反転流速が小さくなる。その結果、過大な反転流による湯面変動やモールドパウダーの巻き込みがなくなり、鋼品質の低下を防止することができる。
【0014】
また、本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズルでは、前記吐出孔を正面視して、該吐出孔の水平方向の幅をa’、鉛直方向の幅をb’とし、前記突条部端面の突出高さをa、鉛直方向の幅をbとすると、a/a’=0.05〜0.38、b/b’=0.05〜0.5であることを好適とする。さらに、該吐出孔の上縁から前記突条部端面の鉛直方向の幅の1/2までの鉛直距離をcとすると、c/b’=0.15〜0.7であることを好適とする。
【0015】
また、本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズルでは、前記突条部の両端部が外方に向けて下方に傾斜する傾斜部とされていることが好ましい。またそれに伴い、前記吐出孔の上端面及び下端面が外方に向けて下方に傾斜し、該上端面及び該下端面の傾斜角度と前記傾斜部の傾斜角度とが同角度であることが好ましい。
吐出孔の上端面及び下端面が外方に向けて下方に傾斜した浸漬ノズルにおいて、延在方向の両端部に傾斜部の無い突条部を設けた場合、突条部上方における吐出流が突条部により遮られ、上方に向けて吐出する流れとなる。そして、この流れが、鋳型表面における反転流と衝突するため、反転流速の安定化が図れなくなる。このため、突条部の両端部に形成した傾斜部の傾斜角度は、吐出孔の上端面及び下端面の傾斜角度と同角度であることが望ましい。
【0016】
また、本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズルでは、前記突条部の延在方向に関し、一対の前記吐出孔の直上における前記流路の幅をL1、前記傾斜部を除いた前記突条部の長さをL2とすると、L2/L1=0〜1であることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズルでは、前記上端面、前記下端面、及び前記傾斜部の傾斜角度は0〜45°であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、一対の吐出孔間に在って流路を画成する内壁に、内方に突出し、該内壁を水平方向に横断する突条部を対向配置することによって、吐出孔全域に亘って吐出流を分散、均一化させることができる。これにより、鋳型の短辺がわ側壁に衝突する吐出流の流速分布及び衝突位置を安定化させることができ、鋳型表面の反転流速を低減することができる。その結果、湯面変動が小さくなると共に、浸漬ノズル左右の流れも対称に近づき、鋼品質の高品位化及び高生産化が可能となる。
【0019】
加えて、本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズルでは、一対の吐出孔間に在って流路を画成する内壁に突条部を対向して形成すればよいので、通常の浸漬ノズルにて吐出孔を形成する方法を適用することができ製造も容易である。
【0020】
なお、通常の浸漬ノズルにて吐出孔を形成する方法としては、例えば、最終形状よりも小さな吐出孔を成形した後、当該吐出孔を正面方向からボーリング等により削孔して、設定した断面寸法を有する突条部を形成する方法や、CIP(Cold Isostatic Pressing)成形時に、突条部となる部分を凹状の空間として成形時の芯金に形成しておき、その凹状空間に、管体を形成する坏土を充填して圧縮し、設定した断面寸法を有する突条部を形成するなどの方法を採ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態に係る連続鋳造用浸漬ノズルを示し、(A)は側面図、(B)は縦断面図である。
【図2】同連続鋳造用浸漬ノズルの部分側面図である。
【図3】(A)、(B)はそれぞれ同連続鋳造用浸漬ノズルの部分縦断面図である。
【図4】水モデル試験を説明するための模式図である。
【図5】(A)はa/a’とΔσとの関係、(B)はa/a’とVavとの関係を示すグラフである。
【図6】(A)はb/b’とΔσとの関係、(B)はb/b’とVavとの関係を示すグラフである。
【図7】(A)はc/b’とΔσとの関係、(B)はc/b’とVavとの関係を示すグラフである。
【図8】(A)はL2/L1とΔσとの関係、(B)はL2/L1とVavとの関係を示すグラフである。
【図9】(A)はR/a’とΔσとの関係、(B)はR/a’とVavとの関係を示すグラフである。
【図10】流体解析に使用した解析モデルの模式図を示し、(A)は実施例、(B)は従来例である。
【図11】実施例の流体解析結果を示し、(A)は流体の鉛直面内の流れを示す説明図、(B)は流体の水平面内の流れを示す説明図である。
【図12】従来例の流体解析結果を示し、(A)は流体の鉛直面内の流れを示す説明図、(B)は流体の水平面内の流れを示す説明図である。
【図13】ΔθとVavとの関係を示すグラフである。
【図14】実施例(θ=0°)の流体解析結果を示し、(A)は流体の鉛直面内の流れを示す説明図、(B)は流体の水平面内の流れを示す説明図である。
【図15】実施例(θ=25°)の流体解析結果を示し、(A)は流体の鉛直面内の流れを示す説明図、(B)は流体の水平面内の流れを示す説明図である。
【図16】実施例(θ=35°)の流体解析結果を示し、(A)は流体の鉛直面内の流れを示す説明図、(B)は流体の水平面内の流れを示す説明図である。
【図17】実施例(θ=45°)の流体解析結果を示し、(A)は流体の鉛直面内の流れを示す説明図、(B)は流体の水平面内の流れを示す説明図である。
【図18】特許文献1に記載された連続鋳造用浸漬ノズルを示し、(A)は縦断面図、(B)は平断面図である。
【図19】対向する吐出孔間の流路中央部に突起部を設けた連続鋳造用浸漬ノズルの部分縦断面図である。
【図20】(A)はσavとΔσとの関係、(B)はσavとVavとの関係を示すグラフである。
【図21】特許文献1に記載された浸漬ノズルの流体解析結果を示し、(A)は流体の鉛直面内の流れを示す説明図、(B)は流体の水平面内の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
【0023】
本発明の一実施の形態に係る連続鋳造用浸漬ノズル(以下では、単に「浸漬ノズル」と呼ぶ。)10の形状を図1(A)、(B)に示す。
浸漬ノズル10は、底部15を有する円筒状の管体11からなり、内部に形成された流路12の上端は溶鋼の流入口13とされている。一方、管体11の下部側面には、流路12と連通する一対の吐出孔14が対向して形成されている。なお、浸漬ノズル10には耐スポーリング性及び耐食性が要求されるため、管体11はアルミナ黒鉛質などの耐火物によって形成されている。
【0024】
吐出孔14は正面視してコーナー部にアールが設けられた矩形状とされ、一対の吐出孔14間に在って流路12を画成する内壁18には、内方に向けて突出し当該内壁18を水平方向に横断する突条部16が対向配置されている。即ち、対向する突条部16は、一対の吐出孔14の中心を通る鉛直面を挟んで対称に配置されている。突条部16間のクリアランスは一定とされ、延在方向の両端部は、外方に向けて下方に傾斜する傾斜部16aとされている(図3参照)。一方、各吐出孔14の上端面14a及び下端面14bも外方に向けて下方に傾斜しており、本実施の形態では、突条部16に形成された傾斜部16aと吐出孔14の上端面14a及び下端面14bとは同じ傾斜角度とされている。
【0025】
突条部16は、内壁18の一方の側端(一方の吐出孔14との境界位置)から他方の側端(他方の吐出孔14との境界位置)まで水平方向に延在している。突条部16の延在方向の端面は、図3(A)に示すように、延在方向と直交する鉛直面とすることが好ましい。但し、管体11が円筒状等の場合、図3(B)に示すように、突条部16の延在方向端面の形状を管体11の外周面の形状に合わせてもよく、これによって溶鋼の吐出流が影響を受けることはない。
【0026】
なお、管体11の底部15には、凹陥状の湯溜り部17を形成することが好ましい。このような凹陥状の湯溜り部17が管体11の底部15に無くても本発明の効果に影響はないが、浸漬ノズル10に注湯された溶鋼を一旦、湯溜り部17で受けることにより、両吐出孔14へ、より均一かつ、より安定的に分散させることができる。
また、吐出孔14の水平方向の幅a’は、流路12の幅(円筒状の流路12の場合は直径)と同じ場合でも異なる場合でも本発明の効果に影響はない。
【0027】
[水モデル試験]
次に、突条部16を備えた吐出孔14の最適形状を確定するため、上記構成からなる浸漬ノズル10の模型を用いて実施した水モデル試験について説明する。
【0028】
最初に、突条部16を備えた吐出孔14の最適形状を確定するためのパラメータを定義しておく。吐出孔14を正面視して、吐出孔14の水平方向の幅をa’、鉛直方向の幅をb’とする。突条部16は矩形状断面とし、突条部16の端面の突出高さをa、鉛直方向の幅をbとすると共に、吐出孔14の上縁から突条部16の端面の鉛直方向の幅の1/2までの鉛直距離をcとする(図2参照)。ここで、「矩形状断面」は、矩形断面の角部にアールを有するものを含む。また、突条部16の延在方向に関し、一対の吐出孔14の直上における流路12の幅をL1、傾斜部16aを除いた突条部16の長さ(水平部16bの長さ)をL2とする(図3参照)。なお、突条部16に形成された傾斜部16a並びに吐出孔14の上端面14a及び下端面14bの下向き傾斜角度をθとし、吐出孔14コーナー部の曲率半径をRとする。
【0029】
図4に、水モデル試験を説明するための模式図を示す。
鋳型21は、縮尺1/1とし、アクリル樹脂で作製した。鋳型21のサイズは、長辺方向の幅(図4では左右方向)を925mm、短辺方向の幅(紙面に垂直な方向)を210mmとした。また、浸漬ノズル10から鋳型21に流入される水は、ポンプを用いて、引抜き速度が1.4m/minに相当するように循環させた。
【0030】
浸漬ノズル10は、鋳型21の中央に配置し、各吐出孔14が鋳型21の短辺がわ側壁23に面するようにした。また、鋳型21の短辺がわ側壁23から325mm(長辺方向の幅の1/4)、水面から30mmの位置に、プロペラ型の流速検出器22を設置し、反転流Frの流速を3分間測定した。そして、測定された左右の反転流Frの流速について標準偏差の差Δσ及び平均流速Vavを算出して評価した。
【0031】
ここで、反転流速と鋳込速度(スループット)との関係について説明しておく。
浸漬ノズルを挟んで左右の反転流速の標準偏差の差Δσとスループットの関係及び左右の反転流速の平均値Vavとスループットとの関係について明らかにするために水モデル試験を実施したところ、スループットが増大するにつれてΔσ及びVavが比例的に増大することが確認された。その際、鋳型サイズ及び浸漬ノズルの流路断面積としては、スラブの連続鋳造において一般的に使用される、長辺方向700mm〜2000mm×短辺方向150mm〜350mmの鋳型及び15cm2〜120cm2(φ50mm〜φ120mm)の浸漬ノズルを想定している。
スループットが1.4ton/min未満の場合、湯面における反転流速が不足傾向となり、7ton/minを超えると、反転流速が増大し、湯面変動の増大やモールドパウダーの巻き込みなどによる鋼品質の低下が懸念される。因って、スループットは1.4ton/min〜7ton/minであることが望ましく、左右の反転流速の標準偏差の差Δσが2.0cm/sec以下且つ左右の反転流速の平均値Vavが10cm/sec〜30cm/secである場合に、スループットは上記最適範囲に収まることが判明した。従って、以下に示す水モデル試験結果では、Δσが2.0cm/sec以下且つVavが10cm/sec〜30cm/secであることを評価基準として、各パラメータを決定した。
なお、水モデル試験におけるスループット値は、溶鋼比重/水比重=7.0として溶鋼換算した値である。
【0032】
図5(A)はa/a’とΔσとの関係、図5(B)はa/a’とVavとの関係を示したグラフである。図中、◆が試験結果、実線は回帰曲線を示し、これらは以降のグラフにおいても同様である。同図より、a/a’が0.05〜0.38の範囲内にある場合に、Δσが2.0cm/sec以下且つVavが10cm/sec〜30cm/secであることがわかる。
a/a’が0.05未満の場合、遮流及び整流効果が充分発揮されず、鋳型内の浸漬ノズル左右の流れが非対称となり、反転流速も30cm/secを超える。その結果、湯面変動が激しく、モールドパウダー巻き込み等の悪影響が生じる。一方、a/a’が0.38を超えると、吐出孔下方の流速が不足気味、換言すれば吐出孔上方の流速が過大となり、反転流速も30cm/secを超える。その結果、湯面変動が激しく、モールドパウダー巻き込み等の悪影響が生じる。
なお、本試験を実施した際の他のパラメータ値は以下の通りである。
b/b’=0.25、c/b’=0.57、L2/L1=0.83、θ=15°、R/a’=0.14
【0033】
図6(A)はb/b’とΔσとの関係、図6(B)はb/b’とVavとの関係を示したグラフである。同図より、b/b’が0.05〜0.5の範囲内にある場合に、Δσが2.0cm/sec以下且つVavが10cm/sec〜30cm/secであることがわかる。
b/b’が0.05未満とb/b’が0.5を超える場合は、a/a’の場合と同様の現象が発生し、湯面変動が激しく、モールドパウダー巻き込み等の悪影響が生じる。
本試験を実施した際の他のパラメータ値は以下の通りである。
a/a’=0.21、c/b’=0.48、L2/L1=0.77、θ=15°、R/a’=0.14
【0034】
図7(A)はc/b’とΔσとの関係、図7(B)はc/b’とVavとの関係を示したグラフである。同図より、Δσはc/b’値の変化に敏感ではないが、Vavに関しては、c/b’が0.15〜0.7の範囲内にある場合に、Vavが10cm/sec〜30cm/secとなることがわかる。
c/b’が0.15未満とc/b’が0.7を超える場合は、a/a’の場合と同様の現象が発生し、湯面変動が激しく、モールドパウダー巻き込み等の悪影響が生じる。
本試験を実施した際の他のパラメータ値は以下の通りである。
a/a’=0.24、b/b’=0.25、L2/L1=0.77、θ=15°、R/a’=0.14
【0035】
図8(A)はL2/L1とΔσとの関係、図8(B)はL2/L1とVavとの関係を示したグラフである。同図より、L2/L1が0〜1の範囲内にある場合に、Δσが2.0cm/sec以下且つVavが10cm/sec〜30cm/secであることがわかる。L2/L1=0は、L2=0、即ち、水平部16bの無い逆V字状の突条部16であることを示している。一方、L2/L1が1を超えると、浸漬ノズルの製造が困難になるという製造上の問題がある。
なお、本試験を実施した際の他のパラメータ値は以下の通りである。また、図8における◇は、突条部16が無い場合の結果を比較例として示したものである。
a/a’=0.29、b/b’=0.25、c/b’=0.5、θ=15°、R/a’=0.14
【0036】
図9(A)はR/a’とΔσとの関係、図9(B)はR/a’とVavとの関係を示したグラフであり、R/a’=0.5は、吐出孔の形状が長円形又は円形であることを示している。同図より、R/a’が大きくなると、若干Δσの値が大きくなるものの、特に大きな変化はないことがわかる。一方、Vavについては、R/a’が大きくなると、吐出孔面積が小さくなることによる影響により、反転流速が増加する傾向にある。しかしながら、Vavは10cm/sec〜30cm/secの範囲内にあり、コーナー部のアールを大きくした場合でも、突条部が有効に作用することが確認された。
なお、本試験を実施した際の他のパラメータ値は以下の通りである。また、本試験における鋳型サイズは1500mm×235mm、鋳込速度は3.0ton/minである。
a/a’=0.13、b/b’=0.25、c/b’=0.4、L2/L1=1、θ=0°
【0037】
表1は、本発明の一実施の形態に係る連続鋳造用浸漬ノズルについて、管体の底部に湯溜り部が有る場合と無い場合に関して実施した水モデル試験結果を示したものである。同表より、Δσ及びVavは、湯溜り部の有無にかかわらずほぼ等しい値を示すと共に最適範囲内にあることがわかる。
なお、本試験を実施した際のパラメータ値は以下の通りである。また、本試験における鋳型サイズは1200mm×235mm、鋳込速度は2.4ton/minである。
a/a’=0.14、b/b’=0.33、c/b’=0.5、L2/L1=1、θ=0°、R/a’=0.14
【0038】
【表1】
【0039】
[流体解析]
次に、本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズル及び従来の連続鋳造用浸漬ノズルの吐出流について、それぞれ実施した流体解析について説明する。
【0040】
流体解析には、フルーエント・アジア・パシフィック(株)製のFLUENT(流体解析ソフトウェア)を使用した。図10に流体解析に使用した解析モデルを示す。同図において(A)が実施例、(B)が従来例である。本解析では、従来例として、底部を有する円筒状管体の下部側面に流路と連通する一対の吐出孔が対向して形成された浸漬ノズルを用いた。一方、実施例は、対向する突条部を従来例に設けたものであり、諸元は以下の通りである。a/a’=0.13、b/b’=0.13、c/b’=0.43、L2/L1=0.68、θ=15°
また、鋳型は長辺方向1540mm、短辺方向235mmとし、鋳込速度は2.7ton/minとした。
【0041】
図11(A)、(B)に実施例の流体解析結果を、図12(A)、(B)に従来例の流体解析結果をそれぞれ示す。これらの図より、実施例は、鋳型内における左右の偏流が従来例に比べて少なく、湯面の反転流速も低減されていることがわかる。その結果、湯面変動が小さくなり、優れたスラブ品質と高速鋳造による生産効率の向上が可能となる。
【0042】
また、図13は、実施例に関して、吐出孔の上端面及び下端面の傾斜角度に対して突条部に形成された傾斜部の傾斜角度を変化させた場合における左右の反転流速の平均値Vavの値を、流体解析により算出した結果を示したものである。同図において、Δθは、突条部に形成された傾斜部の傾斜角度と吐出孔の上端面及び下端面の傾斜角度との差であり、Δθが負の場合、突条部に形成された傾斜部のほうが、吐出孔の上端面及び下端面よりも上向きであることを意味している。
同図より、Δθがゼロの場合、即ち突条部に形成された傾斜部と吐出孔の上端面及び下端面が同じ傾斜角度である場合が、Vavが最も小さくなることがわかる。また、Δθが−10°〜+7°の範囲において、Vavが10cm/sec〜30cm/secとなり、良好な反転流速を示すことが確認された。
【0043】
さらに、実施例において、突条部に形成された傾斜部の傾斜角度と吐出孔の上端面及び下端面の傾斜角度とを同期させて変化させた場合における吐出流について、流体解析により検討した。その結果を図14〜図17に示す。その際の諸元は以下の通りである。
図14(A)、(B)の場合、a/a’=0.13、b/b’=0.25、c/b’=0.4、L2/L1=1、θ=0°、鋳込速度:3.0ton/min
図15(A)、(B)の場合、a/a’=0.13、b/b’=0.13、c/b’=0.43、L2/L1=0.68、θ=25°、鋳込速度:2.7ton/min
図16(A)、(B)の場合、a/a’=0.13、b/b’=0.13、c/b’=0.43、L2/L1=0.68、θ=35°、鋳込速度:2.7ton/min
図17(A)、(B)の場合、a/a’=0.13、b/b’=0.13、c/b’=0.43、L2/L1=0.68、θ=45°、鋳込速度:2.7ton/min
図14〜図17及び先に示したθ=15°の解析結果(図11)より、傾斜角度が0°〜45°の場合、鋳型内における吐出流の偏流は少なく、湯面の反転流速も低減されることがわかる。
【0044】
以上、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、連続鋳造用浸漬ノズルの管体は円筒状としているが、角形状など他の形状も含むものである。また、上記実施の形態では、突条部の両端部に傾斜部を設けているが、突条部に傾斜部を設けず、吐出孔の上端面及び下端面を水平としてもよい。なお、連続鋳造用浸漬ノズルの吐出孔の形状は矩形状が好ましいが、長円形や楕円形などでもよい。
【符号の説明】
【0045】
10:浸漬ノズル、11:管体、12:流路、13:流入口、14:吐出孔、14a:上端面、14b:下端面、15:底部、16:突条部、16a:傾斜部、16b:水平部、17:湯溜り部、18:内壁、21:鋳型、22:流速検出器、23:短辺がわ側壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンディッシュから鋳型内に溶鋼を注湯する連続鋳造用浸漬ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
溶鋼を連続的に冷却凝固させて所定形状の鋳片を形成する連続鋳造工程では、タンディッシュの底部に設置された連続鋳造用浸漬ノズル(以下では、単に「浸漬ノズル」と呼ぶこともある。)を介して鋳型内に溶鋼が注湯される。
一般に、浸漬ノズルは、上端部が溶鋼の流入口とされ、流入口から下方に延びる流路が内部に形成された、底部を有する管体からなり、管体の下部側面には、流路と連通する一対の吐出孔が対向して形成されている。浸漬ノズルは、その下部を鋳型内の溶鋼中に浸漬させた状態で使用される。これにより、注湯された溶鋼の飛散を防止すると共に、溶鋼と大気との接触を遮断して酸化を防止している。また、浸漬ノズルを使用することにより鋳型内の溶鋼が整流化され、湯面を浮遊するスラグや非金属介在物などの不純物が溶鋼中へ巻き込まれないようにしている。
【0003】
近年、連続鋳造工程における鋼品質の高品位化及び高生産化が求められている。現有設備において高生産化を指向する場合、鋳込速度を上げる必要があり、限られた鋳型内で浸漬ノズルの流路径を大きくしたり、吐出孔を大きくしたりして通鋼量を稼ぐ工夫がなされている。
【0004】
しかし、吐出孔を大きくすると、吐出孔から吐出する吐出流の上下方向及び/又は左右方向の流速分布にアンバランスが生じる。そして、このアンバランスな流れ(偏流)が鋳型の短辺がわ側壁に衝突することにより、鋳型内において不安定な溶鋼流が引き起こされる。その結果、過大な反転流による湯面変動やモールドパウダーの巻き込みによる鋼品質の低下を招くと共に、ブレークアウト等の要因になっていた。
【0005】
そこで、例えば特許文献1では、管体の下部側面に対向して形成された一対の吐出孔を、内方に突出する突起部によって上下2段又は3段に分割して総数4個又は6個の吐出孔とした浸漬ノズルの発明が開示されている(図18(A)、(B)参照)。そして、当該浸漬ノズルによれば、詰まりを抑制すると共に、より一様な吐出流速を有し、回転と渦が大幅に減少した、より安定且つ制御された吐出流が生成されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/049249号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、特許文献1に記載された浸漬ノズルと、管体の下部側面に対向して形成された一対の吐出孔を有する従来の浸漬ノズルと、従来の浸漬ノズルにおいて対向する吐出孔間の流路中央部に内方に突出する突起部を設けたタイプ(図19参照)について水モデル試験を実施し、各浸漬ノズルから吐出される吐出流のバラツキについて検証した。
【0008】
図20は、各浸漬ノズルの水モデル結果を示したものである。同図では、鋳型を短辺方向から見て、浸漬ノズルを挟んで左右の反転流速の標準偏差の平均値σavを横軸、左右の反転流速の標準偏差の差Δσ及び左右の反転流速の平均値Vavを縦軸に採っている。また、試験体Aが特許文献1に記載された浸漬ノズル(4吐出孔タイプ)、試験体Bが従来の浸漬ノズル、試験体Cが流路中央部(浸漬ノズルの内壁面上かつ流路幅の中央部)に突起部を設けた浸漬ノズルに対応している。
図20(A)より、左右の反転流速の標準偏差の差Δσ、即ち左右の反転流速の差が最も大きい浸漬ノズルが従来タイプであり、特許文献1に記載された浸漬ノズルと流路中央部に突起部を設けた浸漬ノズルは、左右の反転流速の差が小さいことがわかる。一方、図20(B)より、従来の浸漬ノズルと特許文献1に記載された浸漬ノズルは左右の反転流速の平均値Vavが大きく、流路中央部に突起部を設けた浸漬ノズルは左右の反転流速の平均値Vavが小さいことがわかる。
【0009】
鋳込速度(スループット)が増大するにつれて、左右の反転流速の標準偏差の差Δσ及び左右の反転流速の平均値Vavは増大することが確認されているが、鋼品質の高品位化の観点からすれば、Δσは2cm/sec以下、Vavは10cm/sec〜30cm/secが望ましい。この点に関し、Δσについては全ての試験体において2cm/sec以下となっているが、Vavについては、全ての試験体が10cm/sec〜30cm/secの範囲から外れている。
【0010】
また、特許文献1に記載された浸漬ノズル(4吐出孔タイプ)の場合、図21(A)、(B)に示す流体解析結果が示すように、下側吐出孔からの吐出流が多く、上側吐出孔からの吐出流が少ない。その結果、反転流速が35cm/secと大きな値を示している。なお、流体解析時の鋳型サイズは1500mm×235mm、鋳込速度は3.0ton/minである。
加えて、特許文献1に記載された浸漬ノズルでは、吐出孔が4個以上有るため、製造が複雑になり過ぎると共に、吐出孔の閉塞や溶損が発生した場合、吐出流のバランスが崩れやすいという難点がある。
【0011】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、吐出孔から吐出する溶鋼流の偏流が少なく湯面変動も小さく、製造が容易な連続鋳造用浸漬ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、上端部が溶鋼の流入口とされ、該流入口から下方に延びる流路が内部に形成された、底部を有する管体の下部側面に、前記流路と連通する一対の吐出孔が対向して形成された連続鋳造用浸漬ノズルにおいて、一対の前記吐出孔間に在って前記流路を画成する内壁に、内方に突出し該内壁を水平方向に横断する突条部が対向配置されていることを特徴としている。
ここで、「内壁を水平方向に横断する」とは、内壁の一方の側端(一方の吐出孔との境界位置)から他方の側端(他方の吐出孔との境界位置)まで、突条部が水平方向に延在することを意味する。
なお、本明細書では、連続鋳造用浸漬ノズルを鉛直に立てた状態に基づいて各方向を設定している。
【0013】
従来の浸漬ノズルでは、吐出孔から吐出する吐出流の流速分布が下方に偏り不均一となっていたが、本発明では、対向する突条部による堰き止め効果により、吐出孔上部においても吐出流を得ることができる。一方、対向する突条部間を下方に通過する溶鋼流は、突条部間のクリアランスによる整流効果によって、突条部の延在方向と平行な鉛直面内において管体軸を挟んで左右均等な流れとなる。また、吐出流が均等となることによって、鋳型の短辺がわ側壁に衝突する吐出流の最大速度が緩和され、反転流速が小さくなる。その結果、過大な反転流による湯面変動やモールドパウダーの巻き込みがなくなり、鋼品質の低下を防止することができる。
【0014】
また、本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズルでは、前記吐出孔を正面視して、該吐出孔の水平方向の幅をa’、鉛直方向の幅をb’とし、前記突条部端面の突出高さをa、鉛直方向の幅をbとすると、a/a’=0.05〜0.38、b/b’=0.05〜0.5であることを好適とする。さらに、該吐出孔の上縁から前記突条部端面の鉛直方向の幅の1/2までの鉛直距離をcとすると、c/b’=0.15〜0.7であることを好適とする。
【0015】
また、本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズルでは、前記突条部の両端部が外方に向けて下方に傾斜する傾斜部とされていることが好ましい。またそれに伴い、前記吐出孔の上端面及び下端面が外方に向けて下方に傾斜し、該上端面及び該下端面の傾斜角度と前記傾斜部の傾斜角度とが同角度であることが好ましい。
吐出孔の上端面及び下端面が外方に向けて下方に傾斜した浸漬ノズルにおいて、延在方向の両端部に傾斜部の無い突条部を設けた場合、突条部上方における吐出流が突条部により遮られ、上方に向けて吐出する流れとなる。そして、この流れが、鋳型表面における反転流と衝突するため、反転流速の安定化が図れなくなる。このため、突条部の両端部に形成した傾斜部の傾斜角度は、吐出孔の上端面及び下端面の傾斜角度と同角度であることが望ましい。
【0016】
また、本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズルでは、前記突条部の延在方向に関し、一対の前記吐出孔の直上における前記流路の幅をL1、前記傾斜部を除いた前記突条部の長さをL2とすると、L2/L1=0〜1であることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズルでは、前記上端面、前記下端面、及び前記傾斜部の傾斜角度は0〜45°であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、一対の吐出孔間に在って流路を画成する内壁に、内方に突出し、該内壁を水平方向に横断する突条部を対向配置することによって、吐出孔全域に亘って吐出流を分散、均一化させることができる。これにより、鋳型の短辺がわ側壁に衝突する吐出流の流速分布及び衝突位置を安定化させることができ、鋳型表面の反転流速を低減することができる。その結果、湯面変動が小さくなると共に、浸漬ノズル左右の流れも対称に近づき、鋼品質の高品位化及び高生産化が可能となる。
【0019】
加えて、本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズルでは、一対の吐出孔間に在って流路を画成する内壁に突条部を対向して形成すればよいので、通常の浸漬ノズルにて吐出孔を形成する方法を適用することができ製造も容易である。
【0020】
なお、通常の浸漬ノズルにて吐出孔を形成する方法としては、例えば、最終形状よりも小さな吐出孔を成形した後、当該吐出孔を正面方向からボーリング等により削孔して、設定した断面寸法を有する突条部を形成する方法や、CIP(Cold Isostatic Pressing)成形時に、突条部となる部分を凹状の空間として成形時の芯金に形成しておき、その凹状空間に、管体を形成する坏土を充填して圧縮し、設定した断面寸法を有する突条部を形成するなどの方法を採ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態に係る連続鋳造用浸漬ノズルを示し、(A)は側面図、(B)は縦断面図である。
【図2】同連続鋳造用浸漬ノズルの部分側面図である。
【図3】(A)、(B)はそれぞれ同連続鋳造用浸漬ノズルの部分縦断面図である。
【図4】水モデル試験を説明するための模式図である。
【図5】(A)はa/a’とΔσとの関係、(B)はa/a’とVavとの関係を示すグラフである。
【図6】(A)はb/b’とΔσとの関係、(B)はb/b’とVavとの関係を示すグラフである。
【図7】(A)はc/b’とΔσとの関係、(B)はc/b’とVavとの関係を示すグラフである。
【図8】(A)はL2/L1とΔσとの関係、(B)はL2/L1とVavとの関係を示すグラフである。
【図9】(A)はR/a’とΔσとの関係、(B)はR/a’とVavとの関係を示すグラフである。
【図10】流体解析に使用した解析モデルの模式図を示し、(A)は実施例、(B)は従来例である。
【図11】実施例の流体解析結果を示し、(A)は流体の鉛直面内の流れを示す説明図、(B)は流体の水平面内の流れを示す説明図である。
【図12】従来例の流体解析結果を示し、(A)は流体の鉛直面内の流れを示す説明図、(B)は流体の水平面内の流れを示す説明図である。
【図13】ΔθとVavとの関係を示すグラフである。
【図14】実施例(θ=0°)の流体解析結果を示し、(A)は流体の鉛直面内の流れを示す説明図、(B)は流体の水平面内の流れを示す説明図である。
【図15】実施例(θ=25°)の流体解析結果を示し、(A)は流体の鉛直面内の流れを示す説明図、(B)は流体の水平面内の流れを示す説明図である。
【図16】実施例(θ=35°)の流体解析結果を示し、(A)は流体の鉛直面内の流れを示す説明図、(B)は流体の水平面内の流れを示す説明図である。
【図17】実施例(θ=45°)の流体解析結果を示し、(A)は流体の鉛直面内の流れを示す説明図、(B)は流体の水平面内の流れを示す説明図である。
【図18】特許文献1に記載された連続鋳造用浸漬ノズルを示し、(A)は縦断面図、(B)は平断面図である。
【図19】対向する吐出孔間の流路中央部に突起部を設けた連続鋳造用浸漬ノズルの部分縦断面図である。
【図20】(A)はσavとΔσとの関係、(B)はσavとVavとの関係を示すグラフである。
【図21】特許文献1に記載された浸漬ノズルの流体解析結果を示し、(A)は流体の鉛直面内の流れを示す説明図、(B)は流体の水平面内の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
【0023】
本発明の一実施の形態に係る連続鋳造用浸漬ノズル(以下では、単に「浸漬ノズル」と呼ぶ。)10の形状を図1(A)、(B)に示す。
浸漬ノズル10は、底部15を有する円筒状の管体11からなり、内部に形成された流路12の上端は溶鋼の流入口13とされている。一方、管体11の下部側面には、流路12と連通する一対の吐出孔14が対向して形成されている。なお、浸漬ノズル10には耐スポーリング性及び耐食性が要求されるため、管体11はアルミナ黒鉛質などの耐火物によって形成されている。
【0024】
吐出孔14は正面視してコーナー部にアールが設けられた矩形状とされ、一対の吐出孔14間に在って流路12を画成する内壁18には、内方に向けて突出し当該内壁18を水平方向に横断する突条部16が対向配置されている。即ち、対向する突条部16は、一対の吐出孔14の中心を通る鉛直面を挟んで対称に配置されている。突条部16間のクリアランスは一定とされ、延在方向の両端部は、外方に向けて下方に傾斜する傾斜部16aとされている(図3参照)。一方、各吐出孔14の上端面14a及び下端面14bも外方に向けて下方に傾斜しており、本実施の形態では、突条部16に形成された傾斜部16aと吐出孔14の上端面14a及び下端面14bとは同じ傾斜角度とされている。
【0025】
突条部16は、内壁18の一方の側端(一方の吐出孔14との境界位置)から他方の側端(他方の吐出孔14との境界位置)まで水平方向に延在している。突条部16の延在方向の端面は、図3(A)に示すように、延在方向と直交する鉛直面とすることが好ましい。但し、管体11が円筒状等の場合、図3(B)に示すように、突条部16の延在方向端面の形状を管体11の外周面の形状に合わせてもよく、これによって溶鋼の吐出流が影響を受けることはない。
【0026】
なお、管体11の底部15には、凹陥状の湯溜り部17を形成することが好ましい。このような凹陥状の湯溜り部17が管体11の底部15に無くても本発明の効果に影響はないが、浸漬ノズル10に注湯された溶鋼を一旦、湯溜り部17で受けることにより、両吐出孔14へ、より均一かつ、より安定的に分散させることができる。
また、吐出孔14の水平方向の幅a’は、流路12の幅(円筒状の流路12の場合は直径)と同じ場合でも異なる場合でも本発明の効果に影響はない。
【0027】
[水モデル試験]
次に、突条部16を備えた吐出孔14の最適形状を確定するため、上記構成からなる浸漬ノズル10の模型を用いて実施した水モデル試験について説明する。
【0028】
最初に、突条部16を備えた吐出孔14の最適形状を確定するためのパラメータを定義しておく。吐出孔14を正面視して、吐出孔14の水平方向の幅をa’、鉛直方向の幅をb’とする。突条部16は矩形状断面とし、突条部16の端面の突出高さをa、鉛直方向の幅をbとすると共に、吐出孔14の上縁から突条部16の端面の鉛直方向の幅の1/2までの鉛直距離をcとする(図2参照)。ここで、「矩形状断面」は、矩形断面の角部にアールを有するものを含む。また、突条部16の延在方向に関し、一対の吐出孔14の直上における流路12の幅をL1、傾斜部16aを除いた突条部16の長さ(水平部16bの長さ)をL2とする(図3参照)。なお、突条部16に形成された傾斜部16a並びに吐出孔14の上端面14a及び下端面14bの下向き傾斜角度をθとし、吐出孔14コーナー部の曲率半径をRとする。
【0029】
図4に、水モデル試験を説明するための模式図を示す。
鋳型21は、縮尺1/1とし、アクリル樹脂で作製した。鋳型21のサイズは、長辺方向の幅(図4では左右方向)を925mm、短辺方向の幅(紙面に垂直な方向)を210mmとした。また、浸漬ノズル10から鋳型21に流入される水は、ポンプを用いて、引抜き速度が1.4m/minに相当するように循環させた。
【0030】
浸漬ノズル10は、鋳型21の中央に配置し、各吐出孔14が鋳型21の短辺がわ側壁23に面するようにした。また、鋳型21の短辺がわ側壁23から325mm(長辺方向の幅の1/4)、水面から30mmの位置に、プロペラ型の流速検出器22を設置し、反転流Frの流速を3分間測定した。そして、測定された左右の反転流Frの流速について標準偏差の差Δσ及び平均流速Vavを算出して評価した。
【0031】
ここで、反転流速と鋳込速度(スループット)との関係について説明しておく。
浸漬ノズルを挟んで左右の反転流速の標準偏差の差Δσとスループットの関係及び左右の反転流速の平均値Vavとスループットとの関係について明らかにするために水モデル試験を実施したところ、スループットが増大するにつれてΔσ及びVavが比例的に増大することが確認された。その際、鋳型サイズ及び浸漬ノズルの流路断面積としては、スラブの連続鋳造において一般的に使用される、長辺方向700mm〜2000mm×短辺方向150mm〜350mmの鋳型及び15cm2〜120cm2(φ50mm〜φ120mm)の浸漬ノズルを想定している。
スループットが1.4ton/min未満の場合、湯面における反転流速が不足傾向となり、7ton/minを超えると、反転流速が増大し、湯面変動の増大やモールドパウダーの巻き込みなどによる鋼品質の低下が懸念される。因って、スループットは1.4ton/min〜7ton/minであることが望ましく、左右の反転流速の標準偏差の差Δσが2.0cm/sec以下且つ左右の反転流速の平均値Vavが10cm/sec〜30cm/secである場合に、スループットは上記最適範囲に収まることが判明した。従って、以下に示す水モデル試験結果では、Δσが2.0cm/sec以下且つVavが10cm/sec〜30cm/secであることを評価基準として、各パラメータを決定した。
なお、水モデル試験におけるスループット値は、溶鋼比重/水比重=7.0として溶鋼換算した値である。
【0032】
図5(A)はa/a’とΔσとの関係、図5(B)はa/a’とVavとの関係を示したグラフである。図中、◆が試験結果、実線は回帰曲線を示し、これらは以降のグラフにおいても同様である。同図より、a/a’が0.05〜0.38の範囲内にある場合に、Δσが2.0cm/sec以下且つVavが10cm/sec〜30cm/secであることがわかる。
a/a’が0.05未満の場合、遮流及び整流効果が充分発揮されず、鋳型内の浸漬ノズル左右の流れが非対称となり、反転流速も30cm/secを超える。その結果、湯面変動が激しく、モールドパウダー巻き込み等の悪影響が生じる。一方、a/a’が0.38を超えると、吐出孔下方の流速が不足気味、換言すれば吐出孔上方の流速が過大となり、反転流速も30cm/secを超える。その結果、湯面変動が激しく、モールドパウダー巻き込み等の悪影響が生じる。
なお、本試験を実施した際の他のパラメータ値は以下の通りである。
b/b’=0.25、c/b’=0.57、L2/L1=0.83、θ=15°、R/a’=0.14
【0033】
図6(A)はb/b’とΔσとの関係、図6(B)はb/b’とVavとの関係を示したグラフである。同図より、b/b’が0.05〜0.5の範囲内にある場合に、Δσが2.0cm/sec以下且つVavが10cm/sec〜30cm/secであることがわかる。
b/b’が0.05未満とb/b’が0.5を超える場合は、a/a’の場合と同様の現象が発生し、湯面変動が激しく、モールドパウダー巻き込み等の悪影響が生じる。
本試験を実施した際の他のパラメータ値は以下の通りである。
a/a’=0.21、c/b’=0.48、L2/L1=0.77、θ=15°、R/a’=0.14
【0034】
図7(A)はc/b’とΔσとの関係、図7(B)はc/b’とVavとの関係を示したグラフである。同図より、Δσはc/b’値の変化に敏感ではないが、Vavに関しては、c/b’が0.15〜0.7の範囲内にある場合に、Vavが10cm/sec〜30cm/secとなることがわかる。
c/b’が0.15未満とc/b’が0.7を超える場合は、a/a’の場合と同様の現象が発生し、湯面変動が激しく、モールドパウダー巻き込み等の悪影響が生じる。
本試験を実施した際の他のパラメータ値は以下の通りである。
a/a’=0.24、b/b’=0.25、L2/L1=0.77、θ=15°、R/a’=0.14
【0035】
図8(A)はL2/L1とΔσとの関係、図8(B)はL2/L1とVavとの関係を示したグラフである。同図より、L2/L1が0〜1の範囲内にある場合に、Δσが2.0cm/sec以下且つVavが10cm/sec〜30cm/secであることがわかる。L2/L1=0は、L2=0、即ち、水平部16bの無い逆V字状の突条部16であることを示している。一方、L2/L1が1を超えると、浸漬ノズルの製造が困難になるという製造上の問題がある。
なお、本試験を実施した際の他のパラメータ値は以下の通りである。また、図8における◇は、突条部16が無い場合の結果を比較例として示したものである。
a/a’=0.29、b/b’=0.25、c/b’=0.5、θ=15°、R/a’=0.14
【0036】
図9(A)はR/a’とΔσとの関係、図9(B)はR/a’とVavとの関係を示したグラフであり、R/a’=0.5は、吐出孔の形状が長円形又は円形であることを示している。同図より、R/a’が大きくなると、若干Δσの値が大きくなるものの、特に大きな変化はないことがわかる。一方、Vavについては、R/a’が大きくなると、吐出孔面積が小さくなることによる影響により、反転流速が増加する傾向にある。しかしながら、Vavは10cm/sec〜30cm/secの範囲内にあり、コーナー部のアールを大きくした場合でも、突条部が有効に作用することが確認された。
なお、本試験を実施した際の他のパラメータ値は以下の通りである。また、本試験における鋳型サイズは1500mm×235mm、鋳込速度は3.0ton/minである。
a/a’=0.13、b/b’=0.25、c/b’=0.4、L2/L1=1、θ=0°
【0037】
表1は、本発明の一実施の形態に係る連続鋳造用浸漬ノズルについて、管体の底部に湯溜り部が有る場合と無い場合に関して実施した水モデル試験結果を示したものである。同表より、Δσ及びVavは、湯溜り部の有無にかかわらずほぼ等しい値を示すと共に最適範囲内にあることがわかる。
なお、本試験を実施した際のパラメータ値は以下の通りである。また、本試験における鋳型サイズは1200mm×235mm、鋳込速度は2.4ton/minである。
a/a’=0.14、b/b’=0.33、c/b’=0.5、L2/L1=1、θ=0°、R/a’=0.14
【0038】
【表1】
【0039】
[流体解析]
次に、本発明に係る連続鋳造用浸漬ノズル及び従来の連続鋳造用浸漬ノズルの吐出流について、それぞれ実施した流体解析について説明する。
【0040】
流体解析には、フルーエント・アジア・パシフィック(株)製のFLUENT(流体解析ソフトウェア)を使用した。図10に流体解析に使用した解析モデルを示す。同図において(A)が実施例、(B)が従来例である。本解析では、従来例として、底部を有する円筒状管体の下部側面に流路と連通する一対の吐出孔が対向して形成された浸漬ノズルを用いた。一方、実施例は、対向する突条部を従来例に設けたものであり、諸元は以下の通りである。a/a’=0.13、b/b’=0.13、c/b’=0.43、L2/L1=0.68、θ=15°
また、鋳型は長辺方向1540mm、短辺方向235mmとし、鋳込速度は2.7ton/minとした。
【0041】
図11(A)、(B)に実施例の流体解析結果を、図12(A)、(B)に従来例の流体解析結果をそれぞれ示す。これらの図より、実施例は、鋳型内における左右の偏流が従来例に比べて少なく、湯面の反転流速も低減されていることがわかる。その結果、湯面変動が小さくなり、優れたスラブ品質と高速鋳造による生産効率の向上が可能となる。
【0042】
また、図13は、実施例に関して、吐出孔の上端面及び下端面の傾斜角度に対して突条部に形成された傾斜部の傾斜角度を変化させた場合における左右の反転流速の平均値Vavの値を、流体解析により算出した結果を示したものである。同図において、Δθは、突条部に形成された傾斜部の傾斜角度と吐出孔の上端面及び下端面の傾斜角度との差であり、Δθが負の場合、突条部に形成された傾斜部のほうが、吐出孔の上端面及び下端面よりも上向きであることを意味している。
同図より、Δθがゼロの場合、即ち突条部に形成された傾斜部と吐出孔の上端面及び下端面が同じ傾斜角度である場合が、Vavが最も小さくなることがわかる。また、Δθが−10°〜+7°の範囲において、Vavが10cm/sec〜30cm/secとなり、良好な反転流速を示すことが確認された。
【0043】
さらに、実施例において、突条部に形成された傾斜部の傾斜角度と吐出孔の上端面及び下端面の傾斜角度とを同期させて変化させた場合における吐出流について、流体解析により検討した。その結果を図14〜図17に示す。その際の諸元は以下の通りである。
図14(A)、(B)の場合、a/a’=0.13、b/b’=0.25、c/b’=0.4、L2/L1=1、θ=0°、鋳込速度:3.0ton/min
図15(A)、(B)の場合、a/a’=0.13、b/b’=0.13、c/b’=0.43、L2/L1=0.68、θ=25°、鋳込速度:2.7ton/min
図16(A)、(B)の場合、a/a’=0.13、b/b’=0.13、c/b’=0.43、L2/L1=0.68、θ=35°、鋳込速度:2.7ton/min
図17(A)、(B)の場合、a/a’=0.13、b/b’=0.13、c/b’=0.43、L2/L1=0.68、θ=45°、鋳込速度:2.7ton/min
図14〜図17及び先に示したθ=15°の解析結果(図11)より、傾斜角度が0°〜45°の場合、鋳型内における吐出流の偏流は少なく、湯面の反転流速も低減されることがわかる。
【0044】
以上、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、連続鋳造用浸漬ノズルの管体は円筒状としているが、角形状など他の形状も含むものである。また、上記実施の形態では、突条部の両端部に傾斜部を設けているが、突条部に傾斜部を設けず、吐出孔の上端面及び下端面を水平としてもよい。なお、連続鋳造用浸漬ノズルの吐出孔の形状は矩形状が好ましいが、長円形や楕円形などでもよい。
【符号の説明】
【0045】
10:浸漬ノズル、11:管体、12:流路、13:流入口、14:吐出孔、14a:上端面、14b:下端面、15:底部、16:突条部、16a:傾斜部、16b:水平部、17:湯溜り部、18:内壁、21:鋳型、22:流速検出器、23:短辺がわ側壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部が溶鋼の流入口とされ、該流入口から下方に延びる流路が内部に形成された、底部を有する管体の下部側面に、前記流路と連通する一対の吐出孔が対向して形成された連続鋳造用浸漬ノズルにおいて、
一対の前記吐出孔間に在って前記流路を画成する内壁に、内方に突出し該内壁を水平方向に横断する突条部が対向配置されていることを特徴とする連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項2】
請求項1記載の連続鋳造用浸漬ノズルにおいて、前記吐出孔を正面視して、該吐出孔の水平方向の幅をa’、鉛直方向の幅をb’とし、前記突条部端面の突出高さをa、鉛直方向の幅をbとすると、a/a’=0.05〜0.38、b/b’=0.05〜0.5である連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項3】
請求項2記載の連続鋳造用浸漬ノズルにおいて、前記吐出孔を正面視して、該吐出孔の上縁から前記突条部端面の鉛直方向の幅の1/2までの鉛直距離をcとすると、c/b’=0.15〜0.7である連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の連続鋳造用浸漬ノズルにおいて、前記突条部の両端部が外方に向けて下方に傾斜する傾斜部とされている連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項5】
請求項4記載の連続鋳造用浸漬ノズルにおいて、前記吐出孔の上端面及び下端面が外方に向けて下方に傾斜し、該上端面及び該下端面の傾斜角度と前記傾斜部の傾斜角度とが同角度である連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項6】
請求項5記載の連続鋳造用浸漬ノズルにおいて、前記突条部の延在方向に関し、一対の前記吐出孔の直上における前記流路の幅をL1、前記傾斜部を除いた前記突条部の長さをL2とすると、L2/L1=0〜1である連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項7】
請求項6記載の連続鋳造用浸漬ノズルにおいて、前記上端面、前記下端面、及び前記傾斜部の傾斜角度が0〜45°である連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項1】
上端部が溶鋼の流入口とされ、該流入口から下方に延びる流路が内部に形成された、底部を有する管体の下部側面に、前記流路と連通する一対の吐出孔が対向して形成された連続鋳造用浸漬ノズルにおいて、
一対の前記吐出孔間に在って前記流路を画成する内壁に、内方に突出し該内壁を水平方向に横断する突条部が対向配置されていることを特徴とする連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項2】
請求項1記載の連続鋳造用浸漬ノズルにおいて、前記吐出孔を正面視して、該吐出孔の水平方向の幅をa’、鉛直方向の幅をb’とし、前記突条部端面の突出高さをa、鉛直方向の幅をbとすると、a/a’=0.05〜0.38、b/b’=0.05〜0.5である連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項3】
請求項2記載の連続鋳造用浸漬ノズルにおいて、前記吐出孔を正面視して、該吐出孔の上縁から前記突条部端面の鉛直方向の幅の1/2までの鉛直距離をcとすると、c/b’=0.15〜0.7である連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の連続鋳造用浸漬ノズルにおいて、前記突条部の両端部が外方に向けて下方に傾斜する傾斜部とされている連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項5】
請求項4記載の連続鋳造用浸漬ノズルにおいて、前記吐出孔の上端面及び下端面が外方に向けて下方に傾斜し、該上端面及び該下端面の傾斜角度と前記傾斜部の傾斜角度とが同角度である連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項6】
請求項5記載の連続鋳造用浸漬ノズルにおいて、前記突条部の延在方向に関し、一対の前記吐出孔の直上における前記流路の幅をL1、前記傾斜部を除いた前記突条部の長さをL2とすると、L2/L1=0〜1である連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項7】
請求項6記載の連続鋳造用浸漬ノズルにおいて、前記上端面、前記下端面、及び前記傾斜部の傾斜角度が0〜45°である連続鋳造用浸漬ノズル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−167488(P2010−167488A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40594(P2009−40594)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【Fターム(参考)】
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