説明

連続鋳造設備のガイドロールセグメント

【課題】上フレームを傾動させる際に生じる上ロール列配置のズレ量を最小とし、鋳片凝固シェルの凝固界面に生じる歪への影響を軽減して鋳片の内部割れ発生を抑制可能なガイドロールセグメントを提供する。
【解決手段】上下フレーム6,7に上下ロール4,5列が配置され、上フレーム6に配置された油圧シリンダー9のピストン10が下フレーム7に回動自在に設けられたコラム軸11に回動可能に連結され、上フレーム6には鋳造方向の前後にロール軸方向に沿って凸曲面が形成された凸曲面ガイド12を支持する凸曲面ガイド支持部13が設けられ、下フレーム7には、凹曲面ガイド14を支持する凹曲面ガイド支持部15が設けられ、凸曲面ガイド支持部13と凹曲面ガイド支持部15とは凸曲面ガイド12と凹曲面ガイド14の曲面が形成する円周上を摺動可能に接した状態で配置され、凸曲面ガイド12、凹曲面ガイド14の中心及び傾動中心(上ロール列の最前列ロール中心と最後列ロール中心との直線距離の二等分位置)は一直線上に位置するように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造設備において、ガイドロール出側で鋳片厚を圧減するガイドロールセグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スラブ用連続鋳造設備では、スラブを製造する連続鋳造工程と鋳造されたスラブを加熱し熱間圧延を行う工程を直結して生産性向上を図ることを目的に、連続鋳造設備のガイドロールセグメント内で、モールド下端部の鋳片厚に対し5〜30%ほど鋳片厚を圧減する、リキッドコアリダクション(LCR)と呼ばれる操業方法が普及してきている(特許文献1、2参照)。
【0003】
図1に示すように、鋳片厚の圧減は、モールド2を出てまだ内部が未凝固状態の鋳片3を、対で構成される上下ガイドロール4,5を多数並べたガイドロール帯において、対で構成される上下ガイドロール4,5のうち所定の区間、上ガイドロール4を下流に行くにともない順次下ガイドロール5に近づけて所定区間の出側で所定の圧下量を達成可能に上下ロール4,5の間隔を狭めていき、そこに鋳片を通過させることで鋳片を圧下し所定の鋳片厚に圧下する方法が行われている。この時、所定区間におけるロール間隔漸減量と所定区間の鋳造方向距離で決まる圧下勾配は、鋳片厚の圧下量が大きいほど大きな勾配となる。
【0004】
ガイドロール帯は、従来のスラブ用連続鋳造設備(特許文献3参照)と同じく、ガイドロールセグメント8と呼ばれる複数(4〜10並び)の上下のロール対を配したユニットを複数並べて構成される。このセグメントは、上下フレーム6,7と、上下フレーム6,7に各々固定し配列された複数本のロール列、及び上フレーム6と下フレーム7の各々四か所に設置された油圧シリンダー9で構成され、上フレーム6の下面に上ロール列が、下フレーム7の上面に下ロール列が配されている。そして、上下ロール4,5の列は相対向する上下ロール各1本で対を構成しており、油圧シリンダーにより上下フレーム6,7の間隔を調整することで各上下ロール対のロール間隔を所定の設定値とする操作が行われる。この時、上下で対を形成する上下ロール4,5の配置は、円弧部の場合、上下ロール4,5の間隔を漸減させないロール間隔一定条件において、上下ロール4,5の各々中心を結ぶ直線がロールプロフィールの円弧中心を通るように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006−515230号公報
【特許文献2】特開平08−090187号公報
【特許文献3】特開2009−274115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガイドロールセグメント8の上ガイドロール4からなる上ロール列は上フレーム6に固定されており、リキッドコアリダクション操業の場合、上フレーム6の傾動により上ロール列に圧下勾配を設定の際に、リキッドコアリダクション操業を行わないセグメントに比べて上ロール列の圧下勾配を大きくとる必要があるため、円弧部においては、上フレーム傾動の影響により上下ガイドロール4,5の各々中心を結ぶ直線(図1の一点鎖線)が常に円弧中心を外れて、上ロール列の図1(b)の点線で示す上ガイドロール4の配置にズレが生じてしまい、このズレの影響により鋳片凝固シェルの凝固界面に歪が生じて内部割れを引き起こす問題が生じていた。
【0007】
そこで、本発明は、連続鋳造設備のガイドロールセグメントにおいて、リキッドコアリダクション操業を行う際に、上フレームの傾動により生じる上ロール列配置のズレ量を最小とし、鋳片凝固シェルの凝固界面に生じる歪への影響を軽減して鋳片の内部割れ発生の抑制が可能なガイドロールセグメントを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、移動する鋳片の上面及び下面を挟んで圧下する上ロール及び下ロールをそれぞれ回転自由に保持する上フレーム及び下フレームと、前記上フレーム及び下フレームの前後の左右両側にそれぞれ設けられ、上フレーム及び下フレームを連結する連結軸を備えた締結手段とを有した連続鋳造設備のガイドロールセグメントにおいて、上フレームのフレーム傾動中心を上フレームに鋳造方向に設置された上ロール列の最前列ロール中心と最後列ロール中心との直線距離の二等分位置とすることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る連続鋳造用ガイドロールセグメントにおいて、上フレームのフレーム傾動中心は上フレーム中央ロール径の範囲内にあることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る連続鋳造用ガイドロールセグメントにおいて、上フレームには、鋳造方向の前後にロール軸方向に沿って凸曲面が形成された凸曲面ガイドを支持する凸曲面ガイド支持部が設けられ、下フレームには、凹曲面を支持する凹曲面ガイド支持部が設けられ、凸曲面ガイド支持部と凹曲面ガイド支持部とは、凹曲面ガイドの曲面が形成し、上フレーム傾動中心を円弧中心とする円周上を摺動可能に接した状態で配置することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る連続鋳造用ガイドロールセグメントにおいて、下フレームに設けられた凹曲面ガイドがスライド可動するように支持し、上フレームの昇降動作にともない移動する上フレームに設けられた凸曲面ガイドに追従可能とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、上フレームの傾動の際に生じる上ロール列配置のズレ量を最小化し、鋳片凝固シェルの凝固界面に生じる歪を抑制できるため、従来に比べ、大なる圧下が可能となる。その結果、内部割れが低減でき、生産性の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は連続鋳造設備のガイドロールセグメントの配置を示す概略図、(b)はズレの説明図である。
【図2】本発明のガイドロールセグメントの概略図である。
【図3】凸曲面ガイドと凹曲面ガイドを示し、(a)横断面図、(b)は縦断面図である。
【図4】本発明の上フレームの傾動時の状態を示す図である。
【図5】傾動時のズレ量を示し、(a)は本発明による傾動中心の例、(b)は上ロール最下部を傾動中心とした例である。
【図6】傾動時のズレ量を示し、(a)は本発明による傾動中心の例、(b)は上ロール列の最外部ロール中心を傾動中心とした例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0015】
連続鋳造設備においては、図1に示すように、溶鋼1を注湯するモールド2の下方に鋳片3をガイドして下方に引き抜く複数の上下ガイドロール4,5が上下フレーム6,7に組み込まれたガイドロールセグメント8が鋳片3の引き抜き方向に並べられている。溶鋼1をタンディッシュから浸漬ノズルを介して、モールド2に注入し、この鋳型で冷却して凝固させながら得られた鋳片3を、モールド2の下部に配置された複数のガイドロール4からなる複数のガイドロールセグメント8で構成された鋳片支持構造を介して支持しながら搬出する構造を有している。
【0016】
図2において、ガイドロールセグメント8は、上フレーム6と下フレーム7を備え、上フレーム6の下面に上ガイドロール4からなる上ロール列が、下フレーム7の上面に下ガイドロール5からなる下ロール列が固定、配列されている。上フレーム6は鋳造方向の前後四か所に油圧シリンダー9が配置され、油圧シリンダー9のピストン10は下フレーム7に回動自在に設けられたコラム軸11に回動可能に連結されている。上下ガイドロール列は相対向する上下ガイドロール4,5の各1本で対を構成しており、油圧シリンダー9により上下フレーム6,7の間隔を調整することで各上下ガイドロール6,7対のロール間隔を所定の設定値とする操作が行われる。
【0017】
上フレーム6には、鋳造方向の前後にロール軸方向に沿ってかまぼこ形の凸曲面が形成された凸曲面ガイド12を支持する凸曲面ガイド支持部13が下フレーム7の方向に向かって設けられている。一方、下フレーム7には、鋳造方向の前後にロール軸方向に沿って形成された樋形の凹曲面14を支持する凹曲面ガイド支持部15が上フレーム6の方向に向かって設けられている。凸曲面ガイド支持部13と凹曲面ガイド支持部15とは、凸曲面ガイド12と凹曲面
ガイド14を曲面が形成する円周上を摺動可能に接した状態で配置される。また、凹面ガイド14はスライド可動するように支持されており、上フレーム6の昇降動作に伴い移動する凸面ガイド12に追従可能となっている。凸曲面ガイド12、凹曲面ガイド14及び傾動中心(上ロール列の最前列ロール中心と最後列ロール中心との直線距離の二等分位置)は、一直線上に位置するように配置する。
【0018】
リキッドコアリダクション操業の場合、上フレーム6を油圧シリンダー9により傾動させて上ロール列の圧下勾配を大きくとる必要があるが、ガイドロールセグメント8の上ロール列は上フレーム6に固定されているため、上フレーム6を傾動させるに伴い上ロール列の鋳造方向への投影長さが下ロール列長さと比べて幾何学的に短くなって上ロール列の配置にズレが生じてしまう(図5(b)、図6(b)参照)。
【0019】
そこで、ズレ量を最小化するため、図5(a)、図6(a)に示すように、上フレーム6のフレーム傾動中心の位置を、上ロール列の最前列ロール中心と最後列ロール中心との直線距離の二等分位置としている。
【0020】
こうして設定されたフレーム傾動中心により、上ロール列の鋳造方向への投影長さと下ロール列長さの差を、上ロール列中央を中心に、上流側と下流側に各々に振り分けることができ、上ロール列のロール配置誤差の最小化が可能となる。
【0021】
続いて本発明の試算結果を表1に示し、以下説明する。
【表1】

【0022】
〈試算の前提条件〉
(1)ズレ量(x)が0.15mmを上回ると許容範囲以上の内部割れ発生(経験値)
(2)出側鋳片厚み(z2):120mm
(3)最外部ロール間距離(1):1496mm
【0023】
〈最外部ロール中心を傾動中心とした場合(図6(b))〉
1つのセグメント当たりで30mmの圧下をするとズレ量0.3mmとなり内部割れが生じてしまう(内部割れが生じない0.15mm以内にズレ量をおさめようとするとセグメント当たり21mmの圧下までしかできない。)。
【0024】
〈請求項1記載の位置を傾動中心とした場合(図6(a))〉
1つのセグメント当たりで30mmの圧下をしても、ズレ量は0.15mmであり、内部割れが生じない。
【0025】
表1から明らかなように、従来の傾動中心の位置ではセグメント当たり21mmしか圧下できなかったものが、本発明により30mm圧下可能となるため、圧下前の厚み141mmを30−21=9mm増加させ150mmとすることができる。これにより、元の厚み141mm時に比し、生産性が9/141≒6%向上できる。
【0026】
なお、前記の実施例では、鋳片のリキッドコアリダクションを行うガイドロールセグメントについて記載したが、本発明は、これに限らず例えば、鋳片の軽圧下を行うセグメントにも適用でき、同様な作用・効果を奏する。
【符号の説明】
【0027】
1:溶鋼
2:モールド
3:鋳片
4:上ガイドロール
5:下ガイドロール
6:上フレーム
7:下フレーム
8:ガイドロールセグメント
9:油圧シリンダー
10:ピ不トン
11:コラム軸
12:凸曲面ガイド
13:凸曲面ガイド支持部
14:凹曲面ガイド
15:凹曲面ガイド支持部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する鋳片の上面及び下面を挟んで圧下する上ロール及び下ロールをそれぞれ回転自由に保持する上フレーム及び下フレームと、前記上フレーム及び下フレームの前後の左右両側にそれぞれ設けられ、上フレーム及び下フレームを連結する連結軸を備えた締結手段とを有した連続鋳造設備のガイドロールセグメントにおいて、
上フレームのフレーム傾動中心を上フレームに鋳造方向に設置された上ロール列の最前列ロール中心と最後列ロール中心との直線距離の二等分位置とすることを特徴とする連続鋳造設備のガイドロールセグメント。
【請求項2】
前記上フレームのフレーム傾動中心が上フレーム中央ロール径の範囲内にあることを特徴とする請求項1記載の連続鋳造設備のガイドロールセグメント。
【請求項3】
上フレームには、鋳造方向の前後にロール軸方向に沿って凸曲面が形成された凸曲面ガイドを支持する凸曲面ガイド支持部が設けられ、下フレームには、凹曲面を支持する凹曲面ガイド支持部が設けられ、凸曲面ガイド支持部と凹曲面ガイド支持部とは、凹曲面ガイドの曲面が形成し、上フレーム傾動中心を円弧中心とする円周上を摺動可能に接した状態で配置することを特徴とする請求項1又は2に記載の連続鋳造設備のガイドロールセグメント。
【請求項4】
下フレームに設けられた凹曲面ガイドがスライド可動するように支持し、上フレームの昇降動作にともない移動する上フレームに設けられた凸曲面ガイドに追従可能とすることを特徴とする請求項3記載の連続鋳造設備のガイドロールセグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−230132(P2011−230132A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100317(P2010−100317)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】