説明

連続鋳造鋳片の凝固完了位置検出方法及び連続鋳造鋳片の製造方法

【課題】 噴流探傷法を用いて、連続鋳造中の鋳片の凝固完了位置を検出する方法を提供する。
【解決手段】 本発明の凝固完了位置検出方法は、連続鋳造機1の鋳片支持ロール7のロール間に設置された水浸探蝕子15から送信される超音波を、該水浸探蝕子と鋳片表面との間に形成させた水柱を介して鋳造中の鋳片11に送信し、鋳片表面で反射する超音波を前記水柱を介して前記水浸探蝕子で受信し、送信から受信までの時間に基づいて水浸探蝕子と鋳片表面との間の距離を測定し、測定した距離の時間変化率の絶対値が30mm/s以上となる期間が存在するときは、前記水浸探蝕子で距離を測定される部位の鋳片の内部に未凝固層13が存在すると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水浸探蝕子から発信される超音波を、水浸探蝕子と鋳片との間に形成させた水柱を介して送受信する噴流探傷法を用いて連続鋳造機で鋳造中の鋼鋳片の凝固完了位置を検出する方法、並びに、検出した凝固完了位置を所定位置に制御しながら連続鋳造機で鋼鋳片を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造機においては、溶鋼を水冷式鋳型内に注入し、この鋳型内で溶鋼を冷却して鋳型内壁に凝固シェルを形成させ、この凝固シェルを連続的に下方に引き抜き、また、鋳型下方では、前記凝固シェルを外殻とする鋳片をクーリンググリッドや複数の鋳片支持ロールで支持しながら二次冷却帯のスプレーノズルから噴霧される冷却水で鋳片表面を冷却し、鋳片の中心部まで凝固させた後に、鋳片を切断して圧延用素材を製造している。
【0003】
このようにして鋼鋳片を製造する連続鋳造機の最大鋳造能力は、鋳片の凝固完了位置を連続鋳造機出口側の最下流の鋳片支持ロールの位置とする引き抜き速度で鋳片を鋳造した場合に達成される。また、熱エネルギーの削減を目的として連続鋳造直後の高温の鋳片を圧延工程に搬送して熱間圧延する場合にも、鋳片温度を高くするためには、鋳片の凝固完了位置を連続鋳造機出口側の最下流の鋳片支持ロールの位置とすることが好ましい。
【0004】
しかし、鋳片の凝固完了位置は、鋳片引き抜き速度を一定にしても、二次冷却用冷却水の水温や吹き付け圧力の変化、及び、鋳型内への注入時の溶鋼温度の変化などによって鋳造方向の上下に変動し、凝固完了位置を連続鋳造機の最下流側とした場合には、凝固完了位置が鋳片支持ロールの範囲を超える場合が発生する。この場合には、鋳片が溶鋼静圧によりバルジング(鋳片の厚み方向に膨らむ現象)して鋳片品質が劣化するのみならず、鋳片切断時に内部の未凝固層が流出するという設備トラブルの危険性さえもある。この危険性を回避するために、実際には凝固完了位置を連続鋳造機出口よりも十分に上流側とした条件で鋳造することが一般的である。
【0005】
このような問題を解決して安定した鋳造を行うために、鋳片の凝固完了位置を検出する種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1には、鋳造中の鋳片に送信子から横波超音波を透過させ、鋳片を透過した横波超音波を受信子にて受信し、横波超音波の透過強度に基づいて鋳片の凝固状態を検出する方法が提案されている。
【0006】
ところで、水浸探蝕子と鋳片との間に水柱を形成させ、この水柱を介して水浸探蝕子から発信される超音波を送信し且つ反射する超音波を受信する噴流探傷法を用いて連続鋳造中の鋳片の表面形状を検出する方法が特許文献2などに提案されている。特許文献2は、3つの水浸探蝕子によってそれぞれの水浸探蝕子と鋳片との間の距離を測定し、測定した距離から鋳片短辺の形状を求め、求めた短辺形状からブレークアウトを予知するという技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−83814号公報
【特許文献2】特開2002−331343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術には以下の問題がある。
【0009】
即ち、特許文献1では、横波超音波の送信及び受信を安定させるためには横波超音波の送信子及び受信子を鋳片表面に5mm以内に近接する必要があり、送信子及び受信子が、バルジングした鋳片に接触したり、鋳造開始時に使用されるダミーバーと衝突したりして、物理的に破壊されることが発生し、メンテナンスの面で問題点があった。
【0010】
また、特許文献2に提案される噴流探傷法では、水浸探蝕子を鋳片表面から50mm以上離れた位置に設置することが可能であり、ダミーバーなどと接触することはなく、鋳片表面までの距離を測定することが容易であるが、鋳片の表面位置を検出するだけであり、鋳片の未凝固層を検出する手段ではない。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、連続鋳造機の鋳片表面から離れた位置であり、ダミーバーと衝突したり、バルジングした鋳片表面と衝突したりすることのない位置に水浸探蝕子を設置することのできる噴流探傷法を用いて、連続鋳造中の鋳片の凝固完了位置を検出する方法を提供することであり、また、検出した凝固完了位置を所定の位置に制御しながら鋳片を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]連続鋳造機の鋳片支持ロールのロール間に設置された水浸探蝕子から送信される超音波を、該水浸探蝕子と鋳片表面との間に形成させた水柱を介して鋳造中の鋳片に送信し、鋳片表面で反射する超音波を前記水柱を介して前記水浸探蝕子で受信し、送信から受信までの時間に基づいて水浸探蝕子と鋳片表面との間の距離を測定し、測定した距離の時間変化率の絶対値が30mm/s以上となる期間が存在するときは、前記水浸探蝕子で距離を測定される部位の鋳片の内部に未凝固層が存在すると判定することを特徴とする、連続鋳造鋳片の凝固完了位置検出方法。
[2]前記水浸探蝕子を、連続鋳造機の鋳造方向に複数基設置し、それぞれの水浸探蝕子で測定した距離の時間変化率を独立して求めることを特徴とする、上記[1]に記載の連続鋳造鋳片の凝固完了位置検出方法。
[3]上記[1]または上記[2]に記載の凝固完了位置検出方法によって鋳造中の鋳片の凝固完了位置を検出し、この検出結果に基づいて鋳片引き抜き速度を変更し、鋳片の凝固完了位置を目標範囲内に制御することを特徴とする、連続鋳造鋳片の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、連続鋳造中の鋳片の凝固完了位置を噴流探傷法によって検出することが可能となり、また、この方法を用いて凝固完了位置を制御しつつ鋳造することにより、連続鋳造機の鋳造能力を最大まで増加させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を実施する際に用いるスラブ連続鋳造機の1例の側面概略図である。
【図2】図1に示す水柱式超音波探傷装置の詳細図である。
【図3】鋳片引き抜き速度が1.4m/minの場合に、水柱式超音波探傷装置で測定された距離の時間変化率の例を示す図である。
【図4】鋳片引き抜き速度が1.8m/minの場合に、水柱式超音波探傷装置で測定された距離の時間変化率の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1は、本発明を実施する際に用いるスラブ連続鋳造機の1例の側面概略図である。
【0016】
図1に示すように、スラブ連続鋳造機1には、溶鋼10を注入して凝固させ、鋳片11の外殻形状を形成するための鋳型5が設置され、この鋳型5の上方所定位置には、取鍋(図示せず)から供給される溶鋼10を鋳型5に中継供給するためのタンディッシュ2が設置されている。タンディッシュ2の底部には、溶鋼10の流量を調整するためのスライディングノズル3が設置され、このスライディングノズル3の下面には、浸漬ノズル4が設置されている。一方、鋳型5の下方には、クーリンググリッド6が配置され、このクーリンググリッド6の下流側に、サポートロール、ガイドロール及びピンチロールからなる複数対の鋳片支持ロール7が配置されている。クーリンググリッド6の範囲、並びに、鋳造方向に隣り合う鋳片支持ロール7の間隙には、水スプレーノズル或いはエアーミストスプレーノズルなどのスプレーノズル(図示せず)が配置された二次冷却帯が構成され、二次冷却帯のスプレーノズルから噴霧される冷却水(「二次冷却水」ともいう)によって鋳片11は引き抜かれながら冷却されるようになっている。また、鋳造方向最終の鋳片支持ロール7の下流側には、鋳造された鋳片11を搬送するための複数の搬送ロール8が設置されており、この搬送ロール8の上方には、鋳造される鋳片11から所定の長さの鋳片11aを切断するための鋳片切断機9が配置されている。尚、クーリンググリッド6を設置せずに、鋳型5の直下に鋳片支持ロール7を配置しても構わない。
【0017】
取鍋からタンディッシュ2に溶鋼10を注入してタンディッシュ2に所定量の溶鋼10を滞留させ、次いで、タンディッシュ2に滞留した溶鋼10を、浸漬ノズル4を介して鋳型5に注入する。鋳型5に注入された溶鋼10は、鋳型5で冷却されて凝固シェル12を形成し、外殻を凝固シェル12とし、内部に未凝固層13を有する鋳片11として、クーリンググリッド6及び鋳片支持ロール7に支持されながらピンチロールによって鋳型5の下方に連続的に引き抜かれる。鋳片11は、クーリンググリッド6及び鋳片支持ロール7を通過する間、二次冷却帯の二次冷却水で冷却され、凝固シェル12の厚みを増大し、凝固完了位置14で内部までの凝固を完了する。その後、凝固完了した鋳片11は、鋳片切断機9によって切断されて鋳片11aとなる。
【0018】
鋳片11の凝固完了位置14の近傍には、鋳片支持ロール7のロール間に、噴流探傷法によって鋳片11に超音波を照射するための水柱式超音波探傷装置15が設置されている。図1では、水柱式超音波探傷装置15が鋳造方向の離れた箇所に1基ずつ合計で2基設置されているが、1基のみ設置してもよく、また、3基以上設置しても構わない。但し、水柱式超音波探傷装置15は、後述するように、鋳片11の内部の未凝固層13の有無を判定する装置であり、凝固完了位置14の位置を精度良く判定するためには、鋳造方向に複数基配置することが好ましい。鋳造方向に複数基配置する場合には、鋳片幅方向の配置位置は同一とする。また、凝固完了位置14は鋳片11の幅方向でも異なるので、鋳片幅方向に2基以上水柱式超音波探傷装置15を配置することも、凝固完了位置14を正確に把握する上で有効である。
【0019】
水柱式超音波探傷装置15は、鋳片11の表面までの距離を測定するための装置であるので、鋳片11に対して空間的に不動の位置に配置されている。つまり、水柱式超音波探傷装置15は、鋳片11の厚み変化に伴って設置位置が変動するセグメントなどには設置されておらず、スラブ連続鋳造機1の基礎に固定された部位に設置されている。
【0020】
図2に、水柱式超音波探傷装置15の詳細図を示す。水柱式超音波探傷装置15は、水冷箱17と、水冷箱17の内部に配置される、超音波を発信し且つ受信する水浸探蝕子16とで構成されている。水浸探蝕子16は信号ケーブル18を介してコンピューター(図示せず)と接続されており、また、水冷箱17には給水管19が接続されており、給水管19から水冷箱17の内部に供給された水が、超音波射出口20を通って噴出し、水冷箱17と鋳片表面との間に、直進する水柱21を形成するように構成されている。
【0021】
水浸探蝕子16は、信号ケーブル18を介して入力される信号に基づいて超音波を発信し、水浸探蝕子16から発信された超音波は、超音波射出口20及び水柱21をこの順に通って鋳片表面に到達し、鋳片表面で反射された超音波が水柱21及び超音波射出口20をこの順に通って水浸探蝕子16に戻り、そのデータがコンピューターに入力されるようになっている。コンピューターは、発信から受信までの時間に基づいて水浸探蝕子16と鋳片表面との距離を測定し、測定した距離を時間で微分し、測定した距離の時間変化率を求めている。本発明において、測定した距離を時間で微分した値が距離の時間変化率である。
【0022】
水柱式超音波探傷装置15は、使用する水浸探蝕子16の信号強度に応じてスラブ表面からの距離を設定し、且つ、使用する水浸探蝕子16の信号強度に応じて水量を設定すればよい。但し、水柱21が途切れたり、重力によって曲がったりすることのないように水量を設定する必要がある。また、測定した距離の時間変化率を求める際に、サンプリング時間を長くすると、鋳片11は連続的に引き抜かれており、凝固完了位置14は鋳造中にも鋳造方向で変動することから、測定部位に未凝固層13が入ったり入らなかったりして、判定が困難になるので、サンプリング時間を、5秒間以内できれば2秒間前後に区切り、その範囲内で判定することが好ましい。
【0023】
鋳片11に未凝固層13が存在する領域では、凝固シェル12は溶鋼静圧によってバルジングするので、水柱式超音波探傷装置15によって測定される鋳片表面までの距離の時間変化率は、鋳片11に未凝固層13が存在しない場合よりも相対的に大きくなる。但し、鋳片11の厚みは鋳造方向で変化しているので、鋳片11に未凝固層13が存在しない場合も、距離の時間変化率は変動する。
【0024】
そこで、本発明者らは、距離の時間変化率の変動がどの程度のときに鋳片11に未凝固層13が存在するかを確認するために、水柱式超音波探傷装置15の真横に、横波電磁超音波センサーの送信子及び受信子を、鋳片11を挟んで配置し、横波電磁超音波センサーでの受信信号の有無で未凝固層13の有無を判定した。横波電磁超音波は、液相を通過しない性質があり、横波電磁超音波が鋳片11を透過しないときは、未凝固層13が存在すると判定することができ、一方、横波電磁超音波が鋳片11を透過したときは、未凝固層13は存在せず、鋳片11は完全に凝固していると判定することができる。
【0025】
この横波電磁超音波センサーの判定を正とし、水柱式超音波探傷装置15によって測定される鋳片表面までの距離の時間変化率の値と未凝固層13の有無とを対比させた。その結果、鋳片表面までの距離の時間変化率の絶対値が30mm/s以上となる期間が存在するときには、水柱式超音波探傷装置15によって測定される部位の鋳片11は内部に未凝固層13を有することが判明した。勿論、誤検出の可能性も否定できないことから、或る時間帯内で、距離の時間変化率の絶対値が30mm/s以上となる現象が複数回発生したときに、未凝固層13が存在するという判定ロジックを組んでも構わない。
【0026】
従来、水柱式超音波探傷装置15は、連続鋳造機においては、鋳片表面との距離を測定する装置として使用されていたが、測定された距離を時間で微分することにより求められる時間変化率を指標とすることで、鋳片11が凝固完了したか否かを判定することができる。但し、上記の横波電磁超音波センサーでは、1基の横波電磁超音波センサーであっても、透過速度から鋳造方向での鋳片11の凝固完了位置14を推定することができるが、水柱式超音波探傷装置15では、その測定位置の鋳片11が凝固完了したか否かを判定することになる。水柱式超音波探傷装置15を鋳造方向に複数基設置した場合には、それぞれの水柱式超音波探傷装置15の測定結果から、鋳片11の凝固完了位置14を正確に判定することが可能となる。
【0027】
鋳片11の凝固完了位置14を、例えば鋳造方向最下流側に制御したい場合には、上記のようにして凝固完了位置14を検出し、この結果に基づいて鋳片引き抜き速度を変更しながらフィードバック制御することで、凝固完了位置14を目標とする所定の範囲内に制御することが実現される。例えば、図1に示す凝固完了位置14を目標位置とした場合に、図1に示すように、凝固完了位置14の上流側及び下流側に水柱式超音波探傷装置15を配置し、上流側の水柱式超音波探傷装置15では未凝固層13が検出され、且つ、下流側の水柱式超音波探傷装置15では未凝固層13が検出されないように、鋳片引き抜き速度を制御することで、凝固完了位置14を目標とする所定の範囲内に制御することができる。
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、連続鋳造中の鋳片11の凝固完了位置14を噴流探傷法によって検出することが可能となり、また、この方法を用いて凝固完了位置14を制御しつつ鋳造することにより、スラブ連続鋳造機1の鋳造能力を最大まで増加させることが可能となる。
【実施例】
【0029】
低炭素アルミキルド鋼を、鋳片厚みが250mm、鋳片幅が2100mmのスラブ鋳片に鋳造する際に、鋳型内溶鋼湯面から29.7m下流側に離れたスラブ連続鋳造機水平部の二次冷却帯に、水柱式超音波探傷装置及び横波電磁超音波センサーを設置し、これらのセンサーを用いて凝固完了の有無を調査した。凝固完了の有無は、横波電磁超音波センサーによる検出結果を正とした。つまり、横波電磁超音波センサーにより横波電磁超音波の鋳片透過が確認された場合を凝固完了と判定し、横波電磁超音波の鋳片透過が確認されない場合を未凝固と判定した。
【0030】
二次冷却帯の二次冷却水の比水量は1.61L/kg.steelの一定値とし、鋳片引き抜き速度を1.4m/min及び1.8m/minの2水準とした。水柱式超音波探傷装置及び横波電磁超音波センサーを設置した範囲の鋳片支持ロールの外径は230mm、ロールピッチは270mmであり、ロール間隔は40mmである。
【0031】
このようにして鋳造したときに水柱式超音波探傷装置で測定された距離の時間変化率の例を図3及び図4に示す。図3は、鋳片引き抜き速度が1.4m/minの場合で、図4は、鋳片引き抜き速度が1.8m/minの場合である。
【0032】
予め行った凝固伝熱計算の結果から推定される凝固完了位置は、鋳片引き抜き速度が1.4m/minの場合は、鋳型内溶鋼湯面から24.2mの位置であり、水柱式超音波探傷装置の設置位置では凝固が完了しているはずであった。一方、鋳片引き抜き速度が1.8m/minの場合は、凝固完了位置は鋳型内溶鋼湯面から31.3mの位置であり、水柱式超音波探傷装置の設置位置では凝固が完了していないはずであった。
【0033】
図3に示すように、鋳片引き抜き速度が1.4m/minの場合は、距離の時間変化率の絶対値の最大値は20mm/s以下であった。また、横波電磁超音波センサーにより、鋳片引き抜き速度が1.4m/minの場合には、水柱式超音波探傷装置の設置位置では凝固が完了していることが確認できた。
【0034】
これに対して、水柱式超音波探傷装置の設置位置で、横波電磁超音波センサーによる未凝固層の存在が確認された鋳片引き抜き速度が1.8m/minの場合には、距離の時間変化率の絶対値の最大値は40mm/sに達していた。
【0035】
これらの結果から、水柱式超音波探傷装置で測定した距離の時間変化率の絶対値が30mm/s以上となる場合には、鋳片に未凝固層が存在することが確認できた。
【符号の説明】
【0036】
1 スラブ連続鋳造機
2 タンディッシュ
3 スライディングノズル
4 浸漬ノズル
5 鋳型
6 クーリンググリッド
7 鋳片支持ロール
8 搬送ロール
9 鋳片切断機
10 溶鋼
11 鋳片
12 凝固シェル
13 未凝固層
14 凝固完了位置
15 水柱式超音波探傷装置
16 水浸探蝕子
17 水冷箱
18 信号ケーブル
19 給水管
20 超音波射出口
21 水柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造機の鋳片支持ロールのロール間に設置された水浸探蝕子から送信される超音波を、該水浸探蝕子と鋳片表面との間に形成させた水柱を介して鋳造中の鋳片に送信し、鋳片表面で反射する超音波を前記水柱を介して前記水浸探蝕子で受信し、送信から受信までの時間に基づいて水浸探蝕子と鋳片表面との間の距離を測定し、測定した距離の時間変化率の絶対値が30mm/s以上となる期間が存在するときは、前記水浸探蝕子で距離を測定される部位の鋳片の内部に未凝固層が存在すると判定することを特徴とする、連続鋳造鋳片の凝固完了位置検出方法。
【請求項2】
前記水浸探蝕子を、連続鋳造機の鋳造方向に複数基設置し、それぞれの水浸探蝕子で測定した距離の時間変化率を独立して求めることを特徴とする、請求項1に記載の連続鋳造鋳片の凝固完了位置検出方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の凝固完了位置検出方法によって鋳造中の鋳片の凝固完了位置を検出し、この検出結果に基づいて鋳片引き抜き速度を変更し、鋳片の凝固完了位置を目標範囲内に制御することを特徴とする、連続鋳造鋳片の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−111631(P2013−111631A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261606(P2011−261606)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】