説明

進相コンデンサ開放支援システム

【課題】 適正な進相コンデンサの開放を支援する。
【解決手段】 配電線100の複数の箇所に配設され、電圧を測定する測定器2と、進相コンデンサSCの容量や配設位置などのコンデンサ情報を記憶したコンデンサデータベース31と、進相コンデンサSCを管理する需要家との、進相コンデンサSCの開放に関する交渉履歴を記憶した履歴データベース33と、配電線の系統図や変電所101からの送り出し電圧、測定器2による測定結果、コンデンサデータベース31のコンデンサ情報などの算出要件データと、履歴データベース32の交渉履歴とに基づいて、配電系統の電圧を所定値に維持するために開放が必要な進相コンデンサSCであって、需要家が開放を拒否していない進相コンデンサSCを選択する選択タスク36と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配電系統の電圧が適正に維持されるように進相コンデンサの開放を支援する、進相コンデンサ開放支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高圧の需要家においては、遅れ力率である負荷に対する力率を改善するために、受電設備に進相コンデンサが設置されている場合がある。しかし、進相コンデンサが契約電力に対して過大であったり、負荷が軽い時間帯でも進相コンデンサが系統に接続されたままであったりすることで、進相無効電力によって高圧系統(例えば、6.6kV)の電圧が上昇する傾向がある。この結果、配電用変圧器の電圧調整範囲の下限に至り、規定・規制された電圧を維持できないバンクが、将来的に多くなってくるおそれがある。また、近年、太陽光発電の導入が進み、その結果電圧上昇を防止するために、太陽光発電の出力を抑制しなければならないケースが発生している。
【0003】
このような電圧上昇に対して、これまで、電力会社が自動電圧調整装置や分路リアクトル装置(Shr)を設置し、力率を適正に保つように対応してきた。しかしながら、電力品質向上への社会的要請のさらなる高まりや、新エネルギーの連系数がさらに増加すること、などが予測され、自動電圧調整装置などの設置のみでは、将来対応しきれないおそれがある。
【0004】
このような背景の下、配電系統の電圧を適正に維持するには、進相コンデンサを適正に開放することが重要である。一方、所定の時間帯には進相コンデンサを投入し、所定の時間帯ではなく、かつ、構内高圧母線の電圧値が所定の電圧上限を逸脱している場合には、進相コンデンサを開放する、という進相コンデンサ制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−050123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、進相コンデンサは、需要家が所有、管理するものであり、電力会社などが勝手に制御することはできない。すなわち、進相コンデンサの開放が必要な場合には、予めその需要家に進相コンデンサの開放を依頼・交渉しなければならず、開放を許可した需要家の進相コンデンサのみを、開放することができる。
【0007】
また、従来、開放すべき進相コンデンサの選択は、担当者の知識や経験などに基づいて行われていたため、適正な選択になっていなかったり、担当者によって選択精度にバラツキが生じたりするおそれがあった。
【0008】
そこでこの発明は、適正な進相コンデンサの開放を支援することができる、進相コンデンサ開放支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、配電線の複数の箇所に配設され、少なくとも該箇所の電圧を測定する測定手段と、進相コンデンサの容量や配設位置などのコンデンサ情報を記憶したコンデンサデータベースと、進相コンデンサを管理する需要家との、該進相コンデンサの開放に関する交渉履歴を記憶した履歴データベースと、配電線の系統図や変電所からの送り出し電圧、前記各測定手段による測定結果、前記コンデンサデータベースのコンデンサ情報などの算出要件データと、前記履歴データベースの交渉履歴とに基づいて、配電系統の電圧を所定値に維持するために開放が必要な進相コンデンサであって、該需要家が開放を拒否していない進相コンデンサを選択する選択手段と、を備えることを特徴とする進相コンデンサ開放支援システムである。
【0010】
この発明によれば、各測定手段によって配電線の複数の箇所の電圧が測定され、また、需要家との交渉履歴が履歴データベースに記憶される。そして、選択手段によって、算出要件データと交渉履歴とに基づいて、配電系統の電圧を所定値に維持するために開放が必要な進相コンデンサであって、需要家が開放を拒否していない進相コンデンサが選択される。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の進相コンデンサ開放支援システムにおいて、前記進相コンデンサの開閉状態を監視可能で、前記選択手段は、前記各進相コンデンサの開閉状態に基づいて、前記進相コンデンサを選択する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の進相コンデンサ開放支援システムにおいて、前記選択手段は、電圧が高いノードから進相コンデンサの容量が大きい順に進相コンデンサを選択するか、容量が過剰な進相コンデンサを優先的に選択するか、などの選択優先度を選択可能となっている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、配電系統の電圧を所定値に維持するために開放が必要な進相コンデンサが自動で選択されるため、担当者が選択する場合に比べて、選択業務が適正化かつ迅速化・効率化される。しかも、需要家が開放を拒否していない進相コンデンサが選択されるため、開放を拒否している需要家に対して開放を依頼・交渉する、という非効率な業務を回避することができる。
【0014】
さらに、各測定手段で測定された電圧値・実測値に基づいて、進相コンデンサが選択されるため、より適正な進相コンデンサを選択することができる。これらの結果、進相コンデンサの開放業務を適正かつ迅速・効率的に行うことが可能となる。
【0015】
請求項2の発明によれば、各進相コンデンサの開閉状態に基づいて、開放すべき進相コンデンサが選択されるため、実情に合ったより適正な進相コンデンサを選択することができるとともに、既に開放している進相コンデンサを選択することがなく、開放業務をより適正化、効率化することが可能となる。
【0016】
請求項3の発明によれば、選択優先度を選択可能なため、配電系統や需要家の状況などに応じて選択優先度を選択することで、より適正な進相コンデンサを選択することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態に係る進相コンデンサ開放支援システムを示す概略構成図である。
【図2】図1のシステムのセンタサーバの概略構成ブロック図である。
【図3】図2のセンタサーバの選択タスクのフローチャートである。
【図4】図3の選択タスクにおける開放数最少モードのフローチャートである。
【図5】図3の選択タスクにおける過剰SC優先モードのフローチャートである。
【図6】図1のシステムによる業務手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0019】
図1は、この発明の実施の形態に係る進相コンデンサ開放支援システム1を示す概略構成図である。この進相コンデンサ開放支援システム1は、配電系統の電圧が適正に維持されるように進相コンデンサSCの開放を支援するシステムであり、複数の測定器(測定手段)2とセンタサーバ3とが通信可能に接続されている。また、進相コンデンサSCは、通信機能を有し、開閉状態・状況が逐次センタサーバ3に送信され、センタサーバ3にて各進相コンデンサSCの開閉状態がリアルタイムに監視可能となっている。
【0020】
測定器2は、配電線100の複数の箇所に配設され、配設箇所における電圧や電流を測定する機器であり、測定結果を逐次・リアルタイムにセンタサーバ3に送信する通信機能を備えている。
【0021】
センタサーバ3は、変電所101のサーバや営業サーバ4、配電サーバ5とも通信可能に接続されている。ここで、営業サーバ4は、需要家や進相コンデンサSCに関する情報などを管理するサーバであり、進相コンデンサSCの新設、撤去などの情報が逐次記憶され、後述するように、こられの情報がセンタサーバ3に記憶されるようになっている。また、配電サーバ5は、配電線100に関する情報などを管理するサーバであり、配電線100の新設・増設、変更などの情報が逐次記憶され、後述するように、こられの情報がセンタサーバ3に記憶されるようになっている。
【0022】
センタサーバ3は、図2に示すように、主として、コンデンサデータベース31と、配電データベース32と、履歴データベース33と、入力部34と、記憶部35と、選択タスク(選択手段)36と、これらを管理、制御する中央処理部37とを備えている。
【0023】
コンデンサデータベース31は、進相コンデンサSCの識別情報や容量、配設位置、この進相コンデンサSCを所有する需要家、この需要家の契約電力、などのコンデンサ情報を記憶するデータベースである。このコンデンサ情報は、進相コンデンサSCが新設、撤去などされるたびに、更新されるようになっている。すなわち、進相コンデンサSCが新設、撤去などされ、その情報が営業サーバ4に登録、記憶されると、営業サーバ4からセンタサーバ3に情報が送信され、コンデンサ情報が更新されることで、コンデンサデータベース31には、常に最新のコンデンサ情報が記憶されている。
【0024】
配電データベース32は、配電線100の系統図や設備情報などを記憶したデータベースであり、配電線100が新設、変更などされるたびに、更新されるようになっている。すなわち、配電線100が新設、変更などされ、その情報が配電サーバ5に登録、記憶されると、配電サーバ5からセンタサーバ3に情報が送信され、配電データベース32には、常に最新の情報が記憶される。
【0025】
このように、この実施の形態では、営業サーバ4および配電サーバ5から送信された情報に基づいて、データベース31、32を構築するようになっているが、営業サーバ4および配電サーバ5内のデータベースをデータベース31、32とし、このデータベースを必要に応じてアクセスするようにしてもよい。
【0026】
履歴データベース33は、進相コンデンサSCを所有、管理する需要家との、進相コンデンサSCの開放に関する交渉履歴、状況を記憶したデータベースである。すなわち、過去に交渉を行った需要家に対しては、その交渉日、交渉結果(開放の可否)などが時系列に記憶され、過去に交渉を行っていない需要家に対しては、交渉を行っていない旨が記憶されている。ここで、過去の交渉で開放を許可した旨の交渉結果が記憶されている場合と、交渉を行っていない旨が記憶されている場合とが、後述する「需要家が開放を拒否していない」場合に該当する。つまり、過去の交渉で開放を拒否した旨の交渉結果が記憶されていなければ、交渉可能とする。このような履歴データベース33への情報は、後述するようにして交渉が完了するごとに、入力、更新されるようになっている。
【0027】
入力部34は、後述する選択タスク36を起動したり、電圧範囲を設定したりするインターフェイスであり、また、記憶部35は、後述する選択タスク36による選択過程や選択結果などを記憶するメモリである。
【0028】
選択タスク36は、算出要件データと履歴データベース33の交渉履歴とに基づいて、配電系統の電圧を所定値・適正値に維持するために開放が必要な進相コンデンサSCであって、需要家が開放を拒否していない進相コンデンサSCを選択するタスク・プログラムである。ここで、算出要件データには、配電データベース32に記憶された配電系統図や、変電所101のサーバから受信した変電所101からの送り出し電圧、各測定器2による測定結果、コンデンサデータベース31のコンデンサ情報など、後述する算出、選択に必要な情報・データである。
【0029】
具体的には、図3に示すように、まず、対象となる電圧範囲を設定する、設定待ちとなり(ステップS1)、電圧範囲が設定されると、想定潮流を設定する、設定待ちとなる(ステップS2)。ここで、各測定器2で測定された電流値を用いる場合には、ステップS2を省略してもよい。
【0030】
次に、想定潮流が設定されると、進相コンデンサの選択モード(選択優先度)を選択する、選択待ちとなる(ステップS3)。ここで、この実施の形態では、次の3つのモードを選択できるようになっている。
【0031】
開放数最少モード:電圧が最も高いノード(開閉器の配設範囲)から進相コンデンサの容量が大きい順に進相コンデンサを選択する(開放数・交渉数を最少にする)モード。
【0032】
過剰SC優先モード:容量が過剰な進相コンデンサを優先的に選択する(進相コンデンサを適正容量にすることを主眼にした)モード。
【0033】
送電損失最小モード:送電損失が最小になるように進相コンデンサを選択するモード。
【0034】
そして、選択モードが選択されると、選択されたモードに従って、開放すべき進相コンデンサSCの一覧表を作成する(ステップS4)。
【0035】
具体的には、開放数最少モードが選択されると、図4に示すように、まず、各測定器2による測定結果に基づいて、電圧値が所定値よりも逸脱・オーバーしているノードのなかから、最も逸脱しているノードを選択する(ステップS11)。次に、選択したノード中で最大容量の進相コンデンサSCを、コンデンサデータベース31のコンデンサ情報に基づいて選択する(ステップS12)。この際、実際に(既に)開放されている進相コンデンサSCを除いて選択する。そして、選択した進相コンデンサSCの識別情報に選択フラグを付して、記憶部35に記憶する。
【0036】
続いて、選択した進相コンデンサSCを開放した場合における無効電力を算出、集計して(ステップS13)、配電系統の各電圧を算出する(ステップS14)。ここで、このような算出は、従来から通常行われる手法(例えば、単位法による換算を利用した演算)によって行われる。さらに、算出に際しては、各進相コンデンサSCの開閉状況を考慮して算出する。すなわち、開放状態の進相コンデンサSCに対しては、開放されているものとし、投入状態の進相コンデンサSCに対しては、開放されていないものとして、算出を行う。そして、算出した電圧値が所定値・規定値内である場合(ステップS15で「Y」の場合)には、処理を終了し、規定値内でない場合(ステップS15で「N」の場合)には、ステップS11に戻って同様の処理を繰り返す。
【0037】
このとき、ステップS12においては、記憶部35に選択フラグが付されていない進相コンデンサSC、つまり既に選択されていない進相コンデンサSCを選択する。このような処理を繰り返すことで、開放が必要な進相コンデンサSCの一覧表・リストが作成、記憶される。
【0038】
また、過剰SC優先モードが選択されると、図5に示すように、まず、各測定器2による測定結果に基づいて、電圧値が最も高いノードを選択し(ステップS21)、このノードのなかで、容量が過剰である進相コンデンサSCが存在するか否かを、コンデンサデータベース31のコンデンサ情報に基づいて判定する(ステップS22)。具体的には、例えば、進相コンデンサSCの総容量が契約電力の1/3以上であるか否かで判断する。そして、容量が過剰な進相コンデンサSCがない場合には、選択したノードの識別情報に選択フラグを付して、記憶部35に記憶する(ステップS23)。
一方、容量が過剰な進相コンデンサSCがある場合には、過剰な進相コンデンサSCのなかから最も容量が大きい進相コンデンサSCを、コンデンサ情報に基づいて選択する(ステップS24)。そして、選択した進相コンデンサSCの識別情報に選択フラグを付して、記憶部35に記憶する。
【0039】
続いて、選択した進相コンデンサSCを開放した場合における無効電力を算出、集計して(ステップS25)、配電系統の各電圧を算出する(ステップS26)。そして、算出した電圧値が所定値・規定値内である場合(ステップS27で「Y」の場合)には、処理を終了し、規定値内でない場合(ステップS27で「N」の場合)には、すべてのノードに対する処理が終了したか否かを判断する(ステップS28)。
【0040】
すなわち、全ノードの識別情報が、選択フラグが付されて記憶部35に記憶されているか否かを判断し、記憶されていない場合(ステップS28で「N」の場合)には、ステップS21に戻って同様の処理を繰り返す。このとき、ステップS21においては、記憶部35に選択フラグが付されていないノード、つまり既に処理されていないノードを選択する。また、ステップS22においては、既に選択された(選択フラグが付されている)進相コンデンサSCの容量を差し引いた容量に基づいて、過剰な進相コンデンサSCの有無を判断する。さらに、ステップS24においては、記憶部35に選択フラグが付されていない進相コンデンサSC、つまり既に選択されていない進相コンデンサSCを選択する。このような処理を繰り返すことで、開放が必要な進相コンデンサSCの一覧表・リストが作成、記憶される。
【0041】
一方、全ノードに対する処理が終了しても、電圧値が規定値を満たさない場合(ステップS28で「Y」の場合)、つまり、進相コンデンサSCの開放量が足りない場合には、開放数最少モードが選択された場合の処理(図4の処理)を行う(ステップS29)ものである。これにより、過剰SC優先モードによって選択された進相コンデンサSCと、開放数最少モードによって選択された進相コンデンサSCとを含む、一覧表・リストが作成、記憶される。
【0042】
このようにして一覧表が作成されると、一覧表の修正が必要か否かを判断する(ステップS5)。ここで、この実施の形態で一覧表の修正が必要な場合とは、一覧表中の進相コンデンサSCの需要家が、過去の交渉で進相コンデンサSCの開放を拒否している場合である。具体的には、履歴データベース33の交渉履歴に、一覧表中の進相コンデンサSCの需要家のなかで、開放を拒否した旨の交渉結果が記憶された需要家があるか否かを検索する。
【0043】
そして、修正が必要でない場合には、選択タスク36を終了し、修正が必要な場合には、新たな進相コンデンサSCを選択する(ステップS6)。すなわち、一覧表から当該進相コンデンサSCを削除するとともに、上記のステップS12やステップS24と同様にして、次に容量が大きい進相コンデンサSCを選択する。このとき、記憶部35に選択フラグが付されていない進相コンデンサSCを選択し、選択した進相コンデンサSCの識別情報に選択フラグを付して、記憶部35に記憶する。ここで,ステップS6の進相コンデンサSCの選択は、進相コンデンサの一覧表を表示させ、その中から選択してもよい。
【0044】
続いて、選択した進相コンデンサSCを開放した場合における無効電力を算出、集計して(ステップS7)、配電系統の各電圧を算出する(ステップS8)。そして、算出した電圧値が所定値・規定値内である場合(ステップS9で「Y」の場合)には、ステップS5に戻って一覧表の修正がさらに必要か否かを判断して、同様の処理を繰り返す。一方、規定値内でない場合(ステップS9で「N」の場合)には、ステップS6に戻ってさらに新たな進相コンデンサSCを選択して、同様の処理を繰り返すものである。
【0045】
次に、このような構成の進相コンデンサ開放支援システム1の作用や、進相コンデンサの開放業務などについて説明する。
【0046】
例えば、配電線100において電圧が所定値・規定値よりも高くなる事象が発生した場合に、図6に示すように、選択タスク36を起動することで、上記のようにして、開放が必要な進相コンデンサSCの一覧表・リストが作成される(ステップS31)。次に、作成された一覧表の進相コンデンサSCの需要家に対して、進相コンデンサSCの開放が依頼・交渉され(ステップS32)、その交渉結果が、履歴データベース33に入力、記憶される(ステップS33)。そして、交渉の結果(開放の有無)に基づいて算出された電圧が、規定値内である場合(ステップS34で「Y」の場合)には、業務・処理が終了し、規定値内でない場合(ステップS34で「N」の場合)には、ステップS31に戻って、同様の処理が繰り返されるものである。
【0047】
ここで、ステップS32の交渉やステップS33の記憶、ステップS34の算出、判定を、システムで自動的に行ってもよい。すなわち、インターネットや電話回線などを介して自動的に依頼・交渉を行い、その結果を履歴データベース33に記憶し、算出、判定するようにしてもよい。これにより、一連の開放業務を、人を介さずにシステムで自動的に行えるものである。
【0048】
以上のように、この進相コンデンサ開放支援システム1によれば、配電系統の電圧を適正に維持するために開放が必要な進相コンデンサSCが自動で選択されるため、担当者が選択する場合に比べて、選択業務が適正化かつ迅速化・効率化される。しかも、需要家が開放を拒否していない進相コンデンサSCが選択されるため、開放を拒否している需要家に対して開放を依頼・交渉する、という非効率な業務を回避することができる。
【0049】
また、各測定器2で測定された電圧値・実測値に基づいて、進相コンデンサSCが選択されるため、より適正な進相コンデンサSCを選択することができる。しかも、各進相コンデンサSCの実際の開閉状況に基づいて、開放すべき進相コンデンサSCが選択されるため、実情に合ったより適正な進相コンデンサSCを選択することができるとともに、既に開放している進相コンデンサSCを選択することがない。
【0050】
さらに、選択タスク36で選択モードを選択可能なため、配電系統や需要家の状況などに応じて選択モードを選択することで、より適正な進相コンデンサSCを選択することが可能となる。しかも、コンデンサデータベース31や配電データベース32には、常に最新の情報が記憶され、この最新の情報に基づいて進相コンデンサSCが選択されるため、最新の実情に合ったより適正な進相コンデンサSCを選択することができる。
【0051】
これらの結果、進相コンデンサSCの開放業務が支援され、開放業務を適正かつ迅速・効率的に行うことが可能となる。
【0052】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、コンデンサデータベース31と履歴データベース33とを分けているが、例えば、コンデンサデータベース31のコンデンサ情報に交渉履歴を含めるようにしてもよい。また、選択タスク36では、一旦一覧表を作成した後に、交渉履歴に基づいて修正が必要か否か、つまり、需要家が開放を拒否していないか否か、を判断している。これに対して、一覧表を作成する際、つまり、上記のステップS12やステップS24などで進相コンデンサSCを選択する際に、需要家が開放を拒否していないか否かを判断してもよい。
【0053】
さらに、配電線100の電圧が上昇した場合に選択タスク36を起動するケースを説明したが、その他のケースの場合に、選択タスク36を起動してもよい。例えば、将来の進相無効電力の増加や太陽光発電の増加などを見込んで、選択タスク36を起動して、開放が必要な進相コンデンサSCの一覧表を作成してもよい。この場合、設定する電圧範囲や想定潮流などは、進相無効電力の増加などを見込んで設定する。なお、ここで将来の想定潮流や進相無効電力の増加は,過去の実績からシステムで自動的に予測し、設定してもよい。これにより、将来の進相無効電力の増加などを見込んで、計画的に進相コンデンサSCの開放交渉などを進めることが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 進相コンデンサ開放支援システム
2 測定器(測定手段)
3 センタサーバ
31 コンデンサデータベース
32 配電データベース
33 履歴データベース
34 入力部
35 記憶部
36 選択タスク(選択手段)
4 営業サーバ
5 配電サーバ
100 配電線
101 変電所
SC 進相コンデンサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線の複数の箇所に配設され、少なくとも該箇所の電圧を測定する測定手段と、
進相コンデンサの容量や配設位置などのコンデンサ情報を記憶したコンデンサデータベースと、
進相コンデンサを管理する需要家との、該進相コンデンサの開放に関する交渉履歴を記憶した履歴データベースと、
配電線の系統図や変電所からの送り出し電圧、前記各測定手段による測定結果、前記コンデンサデータベースのコンデンサ情報などの算出要件データと、前記履歴データベースの交渉履歴とに基づいて、配電系統の電圧を所定値に維持するために開放が必要な進相コンデンサであって、該需要家が開放を拒否していない進相コンデンサを選択する選択手段と、
を備えることを特徴とする進相コンデンサ開放支援システム。
【請求項2】
前記進相コンデンサの開閉状態を監視可能で、
前記選択手段は、前記各進相コンデンサの開閉状態に基づいて、前記進相コンデンサを選択する、
ことを特徴とする請求項1に記載の進相コンデンサ開放支援システム。
【請求項3】
前記選択手段は、電圧が高いノードから進相コンデンサの容量が大きい順に進相コンデンサを選択するか、容量が過剰な進相コンデンサを優先的に選択するか、などの選択優先度を選択可能となっている、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の進相コンデンサ開放支援システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−93962(P2013−93962A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234166(P2011−234166)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】