説明

遅延ロックループにおける早期−遅延間隔の変化

【課題】マルチパス信号の分解成分を追跡するための装置およびレイク受信機を提供する。
【解決手段】通信ネットワーク上で送信されるマルチパス情報信号の成分を追跡する。成分を、送信機側で情報信号を拡散するために最初に用いられた、局所的に生成された符号シーケンスのレプリカと、整列および同期させる。符号シーケンスのレプリカの早期シフトされたバージョンを用いて、早期逆拡散信号を導出する。レプリカは、可変遅延によって早期シフトされる。また、符号シーケンスのレプリカの遅延シフトされたバージョンを用いて、遅延シフトされた逆拡散信号を導出する。レプリカは、同一の可変遅延によって遅延シフトされる。可変遅延は、任意に、または、選ばれた所定値の中から選択することができる。所定値は、追跡プロセスを最適化するように選択することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチパス信号の分解成分を追跡するための方法に関する。
【0002】
本発明は、また、マルチパス信号の分解成分を追跡するための装置およびレイク受信機に関する。
【0003】
本発明は、更に、そのようなレイク受信機を備えた装置に関する。この装置は、携帯電話であってもよい。
【0004】
本発明は、最終的に、本発明の方法を実行するためのソフトウェアアプリケーションに関する。
【0005】
本発明は、基地局から移動局へのマルチパス信号の符号遅延を追跡するための符号分割多重アクセス(Code-Division Multiple Access)技術を用いたセルラーネットワーク上での、通信信号の処理に関連することができる。本発明は、また、送信信号のマルチパス成分の到着遅延を分解および追跡するための、移動通信装置内のレイク受信機に適用することができる。
【背景技術】
【0006】
セルラー通信では、さまざまな多重アクセス技術を使用することができる。これらの技術の第1のグループは、狭帯域のチャネル化技術、例えば周波数分割多重アクセス(FDMA:Frequency-Division Multiple Access)技術、および時分割多重アクセス(TDMA:Time-Division Multiple Access)技術を含む。FDMA通信システムでは、各ユーザに、通話の持続時間において、アップリンク通信(移動局から基地局へ)のために確保された帯域幅の第1の特定の周波数副帯域またはチャネル、および、ダウンリンク通信(基地局から移動局へ)のために確保された帯域幅の第2の周波数副帯域またはチャネル、が割り当てられる。TDMAシステムでは、各ユーザに異なる時間スロットが割り当てられ、確保された副帯域全体にアクセスする権利が与えられる。
【0007】
多重アクセス通信技術の第2のグループは、広帯域のチャネル化技術を含む。そのうち、符号分割多重アクセス(CDMA:Code-Division Multiple Access)技術は、標準として広く採用されている。CDMAでは、各ユーザは、通話の完全な持続期間において、帯域幅全体を使うことができる。
【0008】
CDMAは、拡散スペクトル技術であり、これは、情報信号に含まれる情報が、元の信号の帯域幅よりも遥かに広い帯域幅に拡散されることを意味する。直接シーケンス拡散スペクトル(DS−SS:Direct Sequence Spread Spectrum)技術では、データ速度Tbの情報信号を、送信機において、チップ期間と呼ばれるクロック期間Tの擬似ランダム2進シーケンス、すなわち符号シーケンスで乗算する(ここで、TB>>T)。これは、信号の帯域幅を、比率Tb/Tの分だけ増加させる効果を有する。拡散信号は、次に、より広い帯域にて、対応する逆拡散信号よりも相対的に減少した電力スペクトル密度で送信される。符号シーケンスは、情報信号から独立しており、送信機および受信機に周知である。
【0009】
受信機では、受信した広帯域拡散スペクトル信号が逆拡散され、情報信号が復元される。逆拡散は、拡散信号を、送信機で使用される符号シーケンスの正確なレプリカと相関させることによって、達成される。レプリカは、受信した拡散信号と同期される。符号シーケンスのレプリカは、受信機にて局所的に生成され、受信した拡散信号の1つのチップ内で整列および同期される。
【0010】
符号同期は、符号取得と、それに続く微細な符号追跡の、2つのステージで行うことができる。取得によって、受信された拡散信号と局所的に生成された符号シーケンスとの間の整列タイミングオフセットが、1つのチップ期間未満に減少される。追跡により、より微細な精度で同期された2つの信号が、整列および維持される。
【0011】
市街地域および郊外地域などの実際の通信環境においては、無線信号は、送信機と受信機との間の送信パス上にあるさまざまな物体によって反射され、散乱する。従って、上述の拡散信号は、基地局から移動局へ送信される際に、マルチパスに直面する。また、異なるパスをたどる信号の位相相殺により、深刻なフェージングが起こり、受信される信号の出力を低下させる場合がある。しかしながら、CDMAは、そのようなフェージング環境における、強固な動作を提供する。実際には、CDMAは、マルチパスフェージングの利点を活かし、通信および音声品質を向上させる。この目的のために、レイク受信機が、各移動局に存在し、基地局から送られるもっとも強いマルチパス信号の選択を可能にする。送信遅延が、もっとも強いマルチパス信号に対して推定され、推定された遅延が、レイク受信機の特定の「フィンガ」に割り当てられる。フィンガは、受信した拡散信号と、局所的に生成された符号シーケンスのレプリカとを、フィンガに割り当てられた推定時間遅延に基づいて相関させる処理要素である。フィンガの出力は、次に加重され、一貫して結合されて、強化された信号を生成する。このように、チャネルのマルチパス特性を用いて、CDMAにおけるダイバーシティ利点が作り出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、高速で強固な符号シーケンス同期を提供する追跡方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、本発明の方法は、
第1可変遅延分早められた、局所的に生成された符号シーケンスを用いて、分解成分を逆拡散して、早期逆拡散信号を取得し、
第2可変遅延分遅らされた、局所的に生成された符号シーケンスを用いて、分解成分を逆拡散して、遅延逆拡散信号を取得し、
早期逆拡散信号および遅延逆拡散信号から、追跡を制御するための補正信号を導出する。
【0014】
本発明は、早期および遅延逆拡散信号を導出し、分解成分の追跡および局所的に生成された符号シーケンスとの整列を可能にする。取得した早期および遅延逆拡散信号との比較アルゴリズムの実行は、分解成分と生成された符号シーケンスが時間通りであるかどうかの決定を可能にする周知のプロセスであり、時間通りでない場合は、このようなプロセスは、2つの信号を同期させる補正項を提供する。早期逆拡散信号は、分解成分と、予め早められた符号シーケンスとを相関させることにより、取得される。符号シーケンスは、第1可変遅延分、早期シフトされる。関連する遅延逆拡散信号は、分解成分と、予め遅延された符号シーケンスとを相関させることにより、取得される。この遅延逆拡散信号を導出するために、符号シーケンスは、第2可変遅延分、遅延シフトされる。本発明者は、第1および第2遅延を変化させることによって、分解成分の追跡を向上できることを認識した。本発明の利点は、分解成分の追跡および符号シーケンスとの同期における性能の向上である。
【0015】
本発明の実施形態においては、第1および第2遅延は、実質的に同等である。
【0016】
本発明の他の実施形態においては、可変遅延を、複数の所定値からランダムに選択する。このような実施形態においては、第1および第2可変遅延のための複数の所定値は、これらの所定値が、受信したマルチパス信号のさまざまな品質レベルにおいて、効率的な追跡結果を提供するように決定される。これらの所定値は、次に、符号シーケンスと分解成分の同期に使用される。
【0017】
本発明の他の実施形態においては、第1および第2可変遅延は、受信したマルチパス信号の信号品質を表わす。このような実施形態においては、受信した情報マルチパス信号に対して、品質インジケータ、例えば信号強度インジケータが決定され、早期および遅延逆拡散信号を決定するために用いられる可変遅延の値は、信号品質レベルの変化の下で最適な性能を提供するために、それぞれ適応して調整される。
【0018】
更に、本発明のレイク受信機は、
局所的に生成された符号シーケンスを、第1可変遅延分早めることにより、早期符号シーケンスを導出するための早期シフト手段と、
早期符号シーケンスを用いて、分解成分を逆拡散し、その結果、早期逆拡散信号を生成するための第1相関手段と、
局所的に生成された符号シーケンスを、第2可変遅延分遅らせることにより、遅延符号シーケンスを導出するための遅延シフト手段と、
遅延符号シーケンスを用いて、分解成分を逆拡散し、その結果、遅延逆拡散信号を生成するための第2相関手段と、
早期および遅延逆拡散信号から、追跡を制御するための補正信号を導出するための調整手段と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、通信システムである。
【図2】図2は、受信機のブロック図である。
【図3】図3は、受信機のブロック図である。
【図4】図4は、本発明の受信機のレイクフィンガのブロック図である。
【図5】図5は、本発明の遅延生成器である。
【図6】図6は、逆拡散成分のエネルギーの図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を、添付の図面を参照し、例示の手段によって更に詳細に説明する。
【0021】
同様または対応する機能を有する図面内の要素は、同様の参照符号により識別される。
【0022】
図1は、少なくとも1つの第2トランシーバ300と通信する第1トランシーバ200を含む、本発明の通信システム100である。トランシーバ200は、基地局としてもよく、トランシーバ300は、CDMAセルラー通信システムにおけるハンドセットまたは携帯電話などの移動局としてもよい。トランシーバ200および300は、それぞれ、情報信号を送信するための送信機T200およびT300と、情報信号を受信するための受信機R200およびR300を備える。送信機T200は、アンテナ210を介して、擬似ランダムノイズ符号シーケンスとの相関により拡散された情報信号Sを送信する。信号Sはまた、搬送波周波数fcの搬送波信号との相関により、予め変調されている。拡散信号Sは、トランシーバ300のアンテナ310により受信される。
【0023】
送信機T200から受信機R300へ送信される間、信号Sはマルチパス伝播の対象となる。この実施形態においては、信号Sは山110およびビル120に反射され、分散する。拡散信号Sは、少なくとも2つのマルチパス信号S1およびS2の重ね合わせである。マルチパス信号S1およびS2は、異なる伝播パスおよび異なる伝播遅延を有する。信号S1およびS2を対象とするパス減衰および位相シフトは、ほぼランダムであり、相互に独立していると推測される。その結果、信号Sは、特に信号S1およびS2を含む、ランダムに減衰し位相回転する多数の信号の重ね合わせであると考えられる。
【0024】
図2は、受信機R300のブロック図である。信号Sは、基地局200から送信され、アンテナ310により受信され、受信機R300の搬送波復調回路305に入力される。信号Sは、RF受信機320を通過し、その後、スプリッタ330により処理され、2つの無線信号I1およびQ1に分離される。無線信号I1は、相関器340にて、オシレータ360のオシレータ出力fcとともに逆拡散され、その結果、同相に復調されたベースバンド信号I2となる。無線信号Q1は、相関器350にて、位相シフタ370にてπ/2にシフトされたオシレータ出力fcと逆拡散され、その結果、直交に復調されたベースバンド信号Q2となる。ベースバンド信号I2およびQ2は、次に、チャネル選択度を提供するために、それぞれローパスフィルタ380および390を通過する。フィルタされた両方の信号IおよびQは、次に、マルチパス成分の分解および信号Rへのダイバーシティ結合のために、レイク受信機400に供給される。
【0025】
図3は、受信機R300の他のブロック図である。受信機R300は、複合信号S*としてレイク受信機400に更に送信される同相成分Iおよび直交成分Qを抽出する、搬送波復調回路305を備える。レイク受信機400は、3つのレイクフィンガ410、412、414を備える。各フィンガ410〜414に、取得と追跡のために、受信した信号Sのマルチパス成分S1、S2、S3がそれぞれ割り当てられる。レイクフィンガ410〜414は、もっとも強いマルチパス成分のみに割り当ててもよい。レイク受信機400は、また、フィンガ410〜414によって分解されたマルチパス成分S1〜S3を結合して、ダイバーシティを提供するための、最大比率結合手段416を含む。結果として生じる信号は、信号Rである。
【0026】
図4は、本発明のレイクフィンガ410〜414の実施形態を表わす回路ブロック図である。最初に、レイクフィンガ410〜414は、取得モードを選択する。取得は、取得ユニット422にて行われ、符号シーケンスのレプリカC1を、フィンガ410〜414に割り当てられたマルチパス成分S1〜S3と同期させる。符号シーケンスC1は、送信機側で情報信号Sを拡散するために最初に用いられた符号シーケンスのレプリカCから得られる。符号シーケンスCは、擬似ランダムノイズ生成器426にて生成される。符号シーケンスC1は、生成器426から受信した符号シーケンスCを、時間シフタ424にて、可変遅延Dによって遅延させることにより得られる。本発明においては、遅延Dは可変である。成分S1〜S3は、相関器420にて、信号S*と符号シーケンスC1を相関させることによって逆拡散される。取得プロセスは、マルチパス成分S1〜S3の、チップ半分以内の精度での同期を提供する。
【0027】
その後、追跡モードにて、レイクフィンガ410〜414は、符号シーケンスC1の、割り当てられたマルチパス成分S1〜S3との整列を、補正信号CORRに基づいて維持する。ベースバンド信号IおよびQは、複合入力信号S*の形式で、レイクフィンガ410〜414に供給される。信号S*は、次に、早期逆拡散信号Eおよび遅延逆拡散信号Lのそれぞれを決定するための2つのブランチに分岐される。
【0028】
早期逆拡散信号Eは、受信した拡散信号S*を、相関器430にて、符号シーケンスCを用いて最初に逆拡散することによって得られる。前述のように、相関器430に送信された符号シーケンスCは、相関器420にて成分S1〜S3の逆拡散に実際に使用された符号シーケンスC1に関連して、遅延Dによって早められる。その結果、信号Eは、「早期」逆拡散信号と呼ばれる。早期逆拡散信号Eは、次に、相関器430の出力信号を、ローパスフィルタ434にて処理し、スクエア装置438にて複合振幅スクエアリングすることにより決定される。得られた早期逆拡散信号Eは、成分S1〜S3のエネルギーのピークの推定発生の前の、分解成分S1〜S3のエネルギーの値を表わす。
【0029】
対称的に、遅延逆拡散信号Lは、受信した拡散信号S*を、相関器432にて、符号シーケンスCのバージョンC2を用いて最初に逆拡散することによって得られる。符号シーケンスC2は、時間シフタ428にて、相関器432に供給される前に、2Dと実質的に同等な可変遅延によって遅延される。このように、相関器432に送信された符号シーケンスC2は、相関器420に送信された符号シーケンスC1に関連して、遅延Dにより遅延される。早期逆拡散信号Eおよび遅延逆拡散信号Lの間の時間間隔は、従って、実質的に2Dと同等になる。遅延逆拡散信号Lは、次に、相関器432の結果の出力を、ローパスフィルタ436にて処理し、スクエアリング装置440にて複合振幅スクエアリングすることにより導出される。遅延逆拡散信号Lは、成分S1〜S3のエネルギーのピークの推定発生の後にとられた、逆拡散された分解成分S1〜S3のエネルギーを表わす。
【0030】
早期逆拡散信号Eおよび遅延逆拡散信号Lは、次に、遅延検出器442に入力される。遅延検出器442は、例えば、デジタル処理ユニットである。遅延検出器442は、2つの信号EおよびLを処理し、割り当てられたマルチパス成分S1〜S3の追跡の早期−遅延状態を決定する。その結果が、次にループフィルタ444に供給され、ここで、適当な補正信号CORRが導出され、擬似ノイズ生成器426に送信されて、符号シーケンスCを生成する。補正信号CORRにより、符号シーケンスC、より正確には符号シーケンスC1と、割り当て成分S1〜S3との同期を維持するための、符号シーケンスCの位相の監視が可能となる。
【0031】
上述のように、逆拡散成分S1〜S3は、次に、相関器420の出力にて、信号S*と、適応して整列された符号シーケンスC1との相関より得られる。また、異なる遅延を用いて早期逆拡散信号Eおよび遅延逆拡散信号Lを導出する実施形態の考慮も、本発明の範囲内である。このように、この実施形態においては、相関器430に供給された符号シーケンスは、相関器420に供給された符号シーケンスのバージョンに関連して、成分S1〜S3の実際の逆拡散のために、第1遅延分、時間シフトされ(早められ)、相関器432に供給された符号シーケンスは、相関器420に供給された符号シーケンスのバージョンに関連して、成分S1〜S3の実際の逆拡散のために、第1遅延とは異なる第2遅延分、時間シフトされる(遅延される)。
【0032】
図5は、可変遅延Dを生成するための手段の実施形態である。この実施形態においては、遅延Dは、3つの値D1、D2、D3をとることができる。値D1〜D3を実験的に選択して、分解成分S1〜S3の追跡を、受信されるマルチパス信号Sのさまざまな品質レベルに対し最適化することができる。追跡プロセスを更に最適化するために、1つの所与の値を、他の所定値よりも頻繁に選択することができる。例えば、値D3を、早期逆拡散信号Eおよび遅延逆拡散信号Lの1回おきの計算に用い、さもなければ、値D1およびD2を交互に用いる。このために、生成手段は、第1ランダム生成器500と、第1スイッチ制御510とを含む。スイッチ制御510は、遅延Dの選択された値を、遅延シフタ424および428に送信する。ランダム生成器500は、一方に値D3と、他方に値D1およびD2と、の間のランダム選択を可能にする。生成手段は、また、第2ランダム生成器520と、第2スイッチ制御530とを含む。ランダム生成器520は、値D1およびD2の間のランダム選択を可能にし、選択された値D1またはD2が、スイッチ制御530によってスイッチ制御510へ送信される。このように、遅延Dについて異なる値を交互に使用して、分解成分を追跡し、符合シーケンスCを分解成分と同期させることができる。他の実施形態では、値D1〜D3は、ランダムには選択されず、受信したマルチパス信号Sの品質インジケータの測定または計算に基づいて選択される。この品質インジケータは、情報信号Sを受信する際に、受信機R300つまりトランシーバ300によってリアルタイムに導出してもよい。品質インジケータの値は、次に、レイク受信機400に送信され、レイク受信器400は、ルックアップ表から、供給された品質インジケータの値と関連付けられた遅延Dの値を検索する。ルックアップ表は、品質インジケータおよび遅延Dの異なる値に対する、レイク受信機の実験およびシミュレーションを通じて作成してもよい。こうして、成分S1〜S3の追跡は、最適化される。他の実施形態においては、品質インジケータは、マルチパス信号Sに対して計算された信号対雑音比である。
【0033】
図6は、逆拡散された成分S1〜S3の実際のエネルギーの図である。破線の曲線は、分解成分S1〜S3の推定エネルギーを表わす。図は、遅延Dの異なる値D1およびD2に対する早期信号Eおよび遅延信号Lの値の、2つの可能な計算を示す。遅延D1を使用する第1測定は、早期逆拡散信号Eの値E1および遅延逆拡散信号Lの値L1を示す。値E1およびL1は、t0におけるエネルギーの推定ピーク前後の時間間隔D1にて、逆拡散成分のエネルギーを測定することにより得られる。より大きい遅延D2を使用する第2測定は、早期逆拡散信号Eの値E2および遅延逆拡散信号Lの値L2を示す。値E2およびL2は、t0におけるエネルギーのピークの推定発生前後の時間間隔D2にて、逆拡散成分のエネルギーを導出することにより得られる。
【0034】
なお、記述された方法、受信機、装置および構成に関して、本発明の範囲から逸脱することなく、変更または改良を提示することが可能である。例えば、この方法は、いくつかの方法で実施可能であることは明白であり、有線の電子回路、あるいは、コンピュータ読み取り可能媒体に保存された命令のセット等によって実施でき、前記命令を、前記回路の少なくとも一部と置換して、コンピュータまたはデジタルプロセッサの制御下で実行し、置換された前記回路にて実現されていたものと同一の機能を実行することができる。本発明は、このように、提示された例に限定されない。
【0035】
「備える」という語は、請求項に列記されたもの以外の要素または工程の存在を除外するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチパス信号の分解成分を追跡するための方法であって、
複数の所定値のセットの中からランダムに選択された第1可変遅延分早められた、局所的に生成された符号シーケンスを用いて、前記分解成分を逆拡散して、早期逆拡散信号を取得し、
複数の所定値のセットの中からランダムに選択された第2可変遅延分遅らされた、局所的に生成された前記符号シーケンスを用いて、前記分解成分を逆拡散して、遅延逆拡散信号を取得し、
前記早期逆拡散信号および前記遅延逆拡散信号から、前記追跡を制御するための補正信号を導出する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1および第2可変遅延は、前記マルチパス信号の品質インジケータを表わす、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
レイク受信機を備える装置であって、前記レイク受信機は、
局所的に生成された符号シーケンスを、複数の所定値の中からランダムに選択された第1可変遅延分早めることにより、早期符号シーケンスを導出するための早期シフト手段と、
前記早期符号シーケンスを用いて、前記分解成分を逆拡散し、その結果、早期逆拡散信号を生成するための第1相関手段と、
局所的に生成された前記符号シーケンスを、複数の所定値の中からランダムに選択された第2可変遅延分遅らせることにより、遅延符号シーケンスを導出するための遅延シフト手段と、
前記遅延符号シーケンスを用いて、前記分解成分を逆拡散し、その結果、遅延逆拡散信号を生成するための第2相関手段と、
前記早期および遅延逆拡散信号から、前記追跡を制御するための補正信号を導出するための調整手段と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項4】
前記装置は、携帯電話である、ことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
マルチパス信号の分解成分を追跡するためのソフトウェアアプリケーションであって、
複数の所定値の中からランダムに選択された第1可変遅延分早められた、局所的に生成された符号シーケンスを用いて、前記分解成分を逆拡散して、早期逆拡散信号を取得し、
複数の所定値の中からランダムに選択された第2可変遅延分遅らされた、局所的に生成された前記符号シーケンスを用いて、前記分解成分を逆拡散して、遅延逆拡散信号を取得し、
前記早期逆拡散信号および前記遅延逆拡散信号から、前記追跡を制御するための補正信号を導出するための命令を含む、ことを特徴とするソフトウェアアプリケーション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−63140(P2010−63140A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253390(P2009−253390)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【分割の表示】特願2003−501085(P2003−501085)の分割
【原出願日】平成14年5月28日(2002.5.28)
【出願人】(306043703)エヌエックスピー ビー ヴィ (125)
【氏名又は名称原語表記】NXP B.V.
【Fターム(参考)】