説明

遊技機

【課題】 1つのVDPで複数の表示装置に画像を表示する場合に、VDPによる表示データの作成を簡易な処理によって行うことを可能にする。
【解決手段】 この遊技機は、表示データを出力する1つのVDPと、そのVDPから出力される表示データの一部を用いて画像を表示する少なくとも2台の表示装置を備える。VDPから出力される1フレームデータ110内には、表示装置毎に表示データ領域102a,102bが設定されている。表示データ領域102a,102bは、互いに重複することがなく、かつ、それら表示データ領域102a,102bの間には表示装置に表示されない非表示データ領域104が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の表示装置を備えた遊技機に関し、詳しくは、1つのVDP(ビデオ・ディスプレイ・プロセッサ)によって複数の表示装置に画像を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
1つのVDPによって複数の表示装置に画像を表示する遊技機としては、特許文献1に開示された遊技機が知られている。
特許文献1に開示された遊技機では、1つのVDPに3つの表示装置が並列に接続される。VDPは、各表示装置用の表示データを連結した1つのフレームデータを所定の周期で作成し、その作成したフレームデータを各表示装置に出力する。各表示装置は、VDPから入力する表示データのうち当該表示装置用の表示データを取り込み、その取り込んだ表示データに基づいて画像を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−52957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された遊技機では、VDPで作成される1フレームデータが各表示装置用の表示データを連結して構成されている。したがって、VDPで1フレームデータを作成するためには、各表示装置用の表示データを過不足なく正確に作成する必要があった。このため、VDPによるフレームの作成処理が複雑になる場合があった。例えば、各表示装置に図柄(キャラクタ)の一部を表示する場合である。
【0005】
1つのVDPで2台の表示装置に画像を表示する場合を例に具体的に説明する。図7(a)に示すように、一方の表示装置に表示される画像が100a、他方の表示装置に表示される画像が100bである場合、VDPは図7(b)に示すフレームデータ110を作成する。図7に示す例では、表示画像100a,100b内に図柄「8」がはみ出すことなく配置される。したがって、表示画像100a用の表示データ領域102a内と表示画像100b用の表示データ領域102b内に、それぞれ図柄データ「8」を配置するだけでよい。
一方、図8(a)に示すように表示画像100a、100bから図柄「8」の一部がはみ出す場合(はみ出した部分は表示されない)は、表示データ領域102a,102b内に図柄データ「8」の表示される部分だけを配置し、フレームデータ110を作成しなければならない(図8(b)参照)。図柄データ「8」のはみ出し部分を削除しなかった場合は、表示データ領域102b内に図柄データ「8」のはみ出し部分が配置され、その部分が表示画面100bに表示されてしまうためである(図8(c)参照)。かかる場合、図柄データ「8」とは別に一部が削除された図柄データ「8」を予め用意しておく方法もあるが、このような方法はメモリの増大を招き好ましくない。したがって、図柄データ「8」から不要な部分を取り除くといった処理をVDPが行わなければならなくなる。
【0006】
また、表示装置には、液晶表示器の他、エレクトロルミネッセンス(EL)を用いるEL表示器等がある。異なる種類の表示装置であっても、同一の表示データを用いて画像を表示できる場合がある。例えば、EL表示器に画像を表示する考え方は、液晶表示器に画像を表示する考え方と同じである。このため、異種の表示装置であっても、これらの表示装置のための表示データの作成を簡易化することが望まれている。
しかしながら、種類毎に表示装置の駆動周期(画像を表示する周期)が異なる場合は、一方の表示装置用のVDPで他方の表示装置用の表示データを作成することは単純にはできない。例えば、上述したEL表示器では、現状、構造上の相違から、液晶表示器に比較して短い駆動周期で駆動しなければならない。したがって、従来の技術では、液晶表示器に画像を表示するVDPを用いて表示データを作成し、その作成した表示データによってEL表示器に画像を表示することはできなかった。
【0007】
本発明は上述した実情に鑑みなされたものであり、本願の第1の目的は、1つのVDPで複数の表示装置に画像を表示する場合に、VDPによる表示データの作成を簡易に行うことができる遊技機を提供することである。
また、本願の第2の目的は、異なる種類の表示装置であってその駆動周期が異なる場合であっても、同一の手順で表示データの作成を行うことができる遊技機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願第1の目的を解決するために創作された遊技機は、表示データを出力する1つのVDPと、そのVDPから出力される表示データの一部を用いて画像を表示する少なくとも2台の表示装置を備える。そして、VDPから出力される1フレームデータ内には、表示装置毎に当該表示装置に1フレームの画像を表示するための表示データ領域がそれぞれ設定されており、それら表示データ領域は互いに重複することがなく、かつ、それら表示データ領域の間には表示装置には表示されない非表示データ領域が設けられていることを特徴とする(手段1)。
【0009】
(手段1に記載の遊技機の作用と効果) この遊技機では、VDPから出力される1フレームデータ内に、表示装置毎に表示データ領域が設定されている。各表示データ領域には、対応する表示装置に1フレームの画像を表示するための表示データが格納される。そして、各表示データ領域は互いに重複することがなく、かつ、それら表示データ領域の間には表示装置に表示されない非表示データ領域が設けられている。したがって、表示データ領域内から図柄データの一部がはみ出すような場合でも、はみ出した部分が非表示領域内に位置する限り、表示データ領域からはみ出した部分を削除する必要がない。このため、VDPによる表示データの作成処理を簡易に行うことができる。
【0010】
図9を参照して具体的に説明する。図9は、図8に示す例に本発明の技術を適用した場合を模式的に示している。図9(a)に示すように、各表示装置の表示画像100a,100bには図柄「8」の一部だけが含まれている。図9(b)はVDPで作成されるフレームデータの一例を示している。図9(b)に示すように、VDPで作成される1フレームデータ110内には、各表示装置用の表示データ領域102a,102bが設定されている。表示データ領域102a,102bの間には、表示装置に表示されない非表示領域104が設けられている(ただし、図9(b)に示す例では表示データ領域102a,102bの外周全てに非表示領域が設けられている)。図9(b)から明らかなように、表示データ領域102a,102bからはみ出した図柄データ「8」の部分は非表示領域104に位置するため、その部分を削除しなくても、表示装置にはその部分が表示されない。したがって、図9に示す例では、フレームデータ110内の所定の位置に図柄データ「8」を配置するだけでよく、表示データの作成を簡易に行うことができる。
【0011】
また、本願第2の目的を解決するために創作された遊技機は、表示データを出力する1つのVDPと、そのVDPから出力される表示データの一部を用いて画像を表示する少なくとも2台の表示装置を備える。そして、VDPのフレームデータ作成周期より各表示装置の駆動周期(すなわち、表示データ更新周期)は短くてもよい。すなわち、VDPは第1の周期で1フレームデータを出力し、各表示装置は第1の周期より短い第2の周期で画像を表示する。かかる場合、各表示装置は、表示器と、2つのフレームメモリと、それらフレームメモリのいずれかに格納されている表示データに基づいて表示器に画像を表示するドライバ回路とを備え、2つのフレームメモリを表示データが格納されるフレームメモリと、表示器に表示データを出力するフレームメモリとに交互に切換える。すなわち、2つのフレームメモリの一方は、VDPから1フレームデータが出力される間、その出力されるフレームデータのうち当該表示装置に設定された表示データ領域の表示データを格納する。ドライバ回路は、一方のフレームメモリに表示データが格納される間、他方のフレームメモリに格納されている表示データに基づいて第2の周期で表示器に画像を表示する(手段2)。
【0012】
(手段2に記載の遊技機の作用と効果) この遊技機では、VDPのフレームデータ作成周期(フレームデータ出力周期)より表示装置の駆動周期が短い場合であっても、表示装置に画像を表示することができる(すなわち、表示装置の駆動周期で表示データを更新することできる)。すなわち、2つのフレームメモリを備えることで、一方のフレームメモリに受信した表示データを格納しているときは、他方のフレームメモリから読み出した表示データを用いて表示器に画像を表示することができる。このため、VDPのフレームデータ作成周期に関係なく、表示装置に画像を表示することができる(表示装置の表示データを更新することができる。)。例えば、液晶表示器用のVDPで駆動周期の短いEL表示器に画像を表示することができる。
【0013】
手段1に記載の遊技機においては、2台の表示装置は離隔して配置されており、2台の表示装置には、一方の表示装置に表示されているキャラクタが他方の表示装置に移動する遊技演出が表示されることが好ましい(手段3)。
【0014】
(手段3に記載の遊技機の作用と効果) この遊技機では、2台の表示装置が離隔して配置され、一方の表示装置から他方の表示装置にキャラクタ(スプライト)が移動する遊技演出が行われる。すなわち、一方の表示装置の表示画面ではキャラクタが徐々に消失し、他方の表示装置の表示画面にはキャラクタが徐々に出現する。手段1に記載の技術を用いると、データ表示領域に対するキャラクタデータの配置位置を変えるだけで、上記遊技演出を表示することができる。このため、少ない表示データで、しかも、VDPに複雑な処理を行わせることなく、複雑な遊技演出を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施例のパチンコ機の遊技盤とその遊技盤に配置される表示装置の位置関係を模式的に示す図。
【図2】本実施例のパチンコ機の表示装置の制御系の構成を示すブロック図。
【図3】EL表示器用VDPで作成されるフレームデータと、2台のEL表示器の表示データ領域の位置関係を示す図。
【図4】EL表示器用VDPから出力される表示データと各種制御信号の出力タイミングを示すタイミングチャート。
【図5】EL表示器用VDPで作成されるフレームデータの一例と、そのフレームデータによって2台のEL表示器に表示される画面とを併せて示す図。
【図6】EL表示器用VDPで作成されるフレームデータの他の例と、そのフレームデータによって2台のEL表示器に表示される画面とを併せて示す図。
【図7】従来技術を説明するための図。
【図8】従来技術を説明するための図。
【図9】本発明の作用効果を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願に係る遊技機を実施するための最良の形態を列記する。
(形態1) 遊技盤には、液晶表示器と、この液晶表示器を挟んで左右両側にエレクトロルミネッセンス表示器(以下、単にEL表示器という)が配置される。液晶表示器は液晶表示器用VDPで作成された表示データにより画像を表示し、2台のEL表示器は1つのEL表示器用VDPで作成された表示データにより画像を表示する。
(形態2) EL表示器用VDPで作成されるフレームデータ内には、EL表示器毎に表示データ領域が設定される。各表示データ領域には、対応するEL表示器に1フレームの画像を表示するための表示データが配置される。表示データ領域の周囲には(すなわち、2つの表示データ領域の間にも)、EL表示器に表示されない非表示領域が設定される。
(形態3) 表示器には液晶表示器と異なる駆動周期のEL表示器を用いる。EL表示器用VDPは液晶表示器用VDPで代用する。各EL表示器の駆動回路には2つのフレームメモリが設けられる。一方のフレームメモリはEL表示器用VDPから出力される表示データを格納する。他方のフレームメモリは、一方のフレームメモリに表示データが格納される間、EL表示器に画像を表示する。
【0017】
以下、本発明を具現化した一実施例に係るパチンコ機について図面を参照して説明する。なお、本実施例のパチンコ機に設けられる表示装置以外の部分については、従来公知のパチンコ機と同様に構成することができ、特に本発明を特徴付けるものでもないため、その説明を省略する。図1は本実施例のパチンコ機に装備される遊技盤の正面図である。図1に示すように、遊技盤1の略中央には大型の液晶表示器10が配置され、その液晶表示器10の左右両側に2台のEL表示器12,14が配置されている(すなわち、2台のEL表示器12,14は離隔した状態で遊技盤1上に配置されている)。
【0018】
液晶表示器10は9インチ(536×328ドット)のアクティブマトリックス型液晶表示器であり、ディスプレイ上には特別図柄の変動表示演出等が表示される。液晶表示器10の駆動周期(表示データ更新周期)は16msとなっている。EL表示器12,14はエレクトロルミネッセンス素子を利用した公知の表示器であり、液晶表示器10と比較して小型(3.4インチ(128×60ドットのパッシブマトリックス型)のものが用いられる。EL表示器12,14には、液晶表示器10に特別図柄が変動表示される際にキャラクタ等が表示され、液晶表示器10による特別図柄の変動表示演出を盛り上げる。EL表示器12,14の駆動周期(表示データ更新周期)は特性上2msであり、液晶表示器10とは異なる周期となっている。
【0019】
図2は上述した表示器10,12,14を制御するための制御系の構成を示すブロック図である。図2に示すように、本実施例のパチンコ機には、複数の制御基板(メイン基板20,サブ基板22,表示基板32,EL駆動基板40)により表示器10,12,14の制御を行う。
メイン基板20は、パチンコ機に装備される各遊技装置の動作を統括する制御装置である。メイン基板20は、所定条件(例えば、始動口へのパチンコ球の入賞)が成立したときに表示コマンドを作成し、その表示コマンドをサブ制御基板22に出力する。メイン基板20において行われる処理には、従来公知の方法を用いることができる。
【0020】
サブ基板22は、メイン基板20から出力されるコマンドに基づいてスピーカ28、ランプ30及びEL表示器12,14を制御する。サブ基板22には、CPU24と、EL表示器用VDP26が装備される。CPU24は、メイン基板20から出力されたコマンドを受信すると、そのコマンドを解析して表示基板32に送信するためのコマンドを作成し、そのコマンドを表示基板32に出力する。表示基板32へのコマンドの出力と併せてCPU24は、スピーカ28及びランプ30を駆動し、また、EL表示器用VDP26に制御信号を出力する。EL表示器用VDP26は、CPU24からの制御信号が入力すると、その制御信号に応じてEL駆動基板40を制御し、EL表示器12,14に所定の画像を表示する(EL表示器用VDP26,EL駆動基板40に関しては後で詳述する)。なお、CPU24によるスピーカ28及びランプ30の駆動処理並びに表示基板32へのコマンド出力処理については、従来公知の方法を用いることができる。
【0021】
表示基板32は、サブ基板22から出力されるコマンドに基づいて液晶表示器10を制御する。表示基板32には、CPU34と、液晶表示器用VDP36が装備される。CPU34及び液晶表示器用VDP36の処理は、従来公知の方法を用いることができる。すなわち、CPU34は、サブ基板22から出力されたコマンドを受信するとそのコマンドを解析し、そのコマンドに対応する制御信号を液晶表示器用VDP36に出力する。液晶表示器用VDP36は、CPU34から入力する制御信号に応じた表示データを作成し、その表示データを液晶表示器10に出力する。これによって、液晶表示器10に所定の画像が表示される。なお、液晶表示器用VDP36の表示データ作成周期(出力周期)は16msであり、液晶表示器10の表示データ更新周期と同一周期となっている。
【0022】
次に、EL表示器用VDP26とEL駆動基板40について詳細に説明する。サブ基板22に設けられるEL表示器用VDP26は、所定の周期で1フレームの表示データを作成し、作成した表示データ(D0,D1)と各種制御信号(垂直同期信号(VSYNC),水平同期信号(HSYNC),データイネーブル信号(DEN),ドットクロック信号(DCLK))をEL駆動基板40に出力する。表示データの出力タイミングと各種制御信号の出力タイミングとの関係については後述する。
図3には、EL表示器用VDP26で作成される1フレームデータと、EL表示器12,14で画像表示に用いられる表示データ領域との関係が示されている。図3に示すように、EL表示器用VDP26で作成されるフレームデータ60は、EL表示器12,14の表示画面より大きく(9インチ液晶表示器の1フレームに相当)、フレームデータ60内にEL表示器12用の表示データ領域62とEL表示器14用の表示データ領域64が設定されている。表示データ領域62内の表示データはEL表示器12に1フレームの画像を表示するためのものであり、表示データ領域64内の表示データはEL表示器14に1フレームの画像を表示するためのものである。表示データ領域62と表示データ領域64との間の領域66bは、EL表示器12,14のいずれにも表示されることがない非表示データ領域とされる。また、表示データ領域62の外周領域66a及び表示データ領域64の外周領域66cも、EL表示器12,14のいずれにも表示されることがない非表示データ領域とされている。したがって、表示データ領域62,64の周囲は、全て非表示データ領域66a,66b,66cとなっている。
なお、EL表示器用VDP26は、EL表示器12,14の表示データ更新周期(2ms)より長い、フレームデータの作成(出力)周期が16msの液晶表示器用のVDPを用いている。
【0023】
EL駆動基板40は、EL制御IC(ゲートアレイ)42と、電源回路54を備える。EL制御IC42は、EL表示器用VDP26から入力する表示データを格納し、その格納した表示データをドライバ56a,56b,58a,58bへ出力する。電源回路54は、サブ基板22から供給される電源をEL制御IC42やドライバ56a,56b,58a,58bへ供給する。
【0024】
EL制御IC42には、表示データを格納する第1メモリ46・第2メモリ48と、表示データの格納先のメモリを切換える入力データ切換回路44と、出力データの読取り先のメモリを切換える出力データ読出回路50と、出力データ読出回路50の表示データの読出タイミング等を制御するタイミング回路52が設けられる。
第1メモリ46には2つのフレームデータ記憶部46a,46bが設けられる。第2メモリ48にも2つのフレームデータ記憶部48a,48bが設けられる。フレームデータ記憶部46a,48aにはEL表示器12用の表示データが格納され、フレームデータ記憶部46b,48bにはEL表示器14用の表示データが格納される。
【0025】
入力データ切換回路44は、EL表示器用VDP26から入力する垂直同期信号、データイネーブル信号及びドットクロック信号に基づいて、EL表示器用VDP26から出力される1フレームデータ60の中から必要なデータをメモリ46(又はメモリ48)に格納する。
すなわち、図4に示すようにEL表示器用VDP26は、フレームデータ出力周期毎(すなわち、16ms毎)に1回の垂直同期信号を出力する。また、EL表示器用VDP26は、フレームデータ60を出力している間はデータイネーブル信号をON状態とすると共に、1ドットクロック信号毎に1表示データを出力する。一方、EL表示器用VDP26は、フレームデータを出力していないとデータイネーブル信号をOFF状態とする。
したがって、入力データ切換回路44は、垂直同期信号に同期して表示データを格納するメモリを第1メモリ46から第2メモリ48(または第2メモリ48から第1メモリ46)に切換える。例えば、直前のフレームデータ出力周期で第1メモリ46に表示データを格納している場合は、表示データを格納するメモリを第2メモリ48に切換える。
また、入力データ切換回路44は、データイネーブル信号がONされると、クロック信号をカウントする。そして、そのカウント値が所定の値となるとそのときの表示データを、第1メモリ46又は第2メモリ48に格納する。すなわち、カウント値から表示データ領域62内の表示データと判断されるときは、その表示データをフレームデータ記憶部46a又は48aに格納する。一方、カウント値から表示データ領域64内の表示データと判断されるときは、その表示データをフレームデータ記憶部46b,48bに格納する。これによって、第1メモリ46のフレームデータ記憶部46a,46b又は第2メモリ48のフレームデータ記憶部48a,48bに必要な表示データが格納される。
【0026】
出力データ読出回路50は、EL表示器12,14の表示データ更新周期毎(2ms毎)に第1メモリ46又は第2メモリ48のいずれか一方から表示データを読取り、読取った表示データをカラムドライバ56a又は56b並びにロウドライバ58a又は58bに出力する。すなわち、出力データ読出回路50は、入力データ切換回路44によって表示データ格納先のメモリとして選択されていない方のメモリから表示データを読取り、その読取った表示データをドライバ56a〜58bに出力する。例えば、第1メモリ46に表示データが格納されている間は、第2メモリ48から表示データを読取り、その読取った表示データを出力する。例えば、EL表示器12に対しては、EL表示器12の画面左上角から右上角に向かって表示データが出力されるように(図1参照)、出力データ読出回路50は、図4に示すAnに対応する表示データから順番に上方に向かってA1に対応する表示データまで読み出す。以下、このような読取り処理をEL表示器12の各走査線について行う。
表示データの読取り対象となるメモリは、タイミング回路52によって切換えられる。タイミング回路52には垂直同期信号が入力し、その入力する垂直同期信号に同期して読取り先のメモリを切換える。これにより、入力データ切換回路44による表示データ格納先メモリの切換えタイミングと、出力データ読出回路50による読出し対象メモリの切換えタイミングが同期することとなる。
なお、フレームデータ記憶部46a又は48aから読取られた表示データは、カラムドライバ56a及びロウドライバ58aに出力され、EL表示器12に画像を表示するために用いられる。一方、フレームデータ記憶部46b又は48bから読取られた表示データは、カラムドライバ56b及びロウドライバ58bに出力され、EL表示器14に画像を表示するために用いられる。
また、本実施例のEL表示器用VDP26は、R(赤)、G(緑)、B(青)ともに6ビット、すなわち64階調、26万色が表現可能なVDPである。これに対してEL表示器12,14は、単色発光のEL表示器である。したがって、EL駆動基板40は、EL表示器用VDP26から出力されるR(赤)の2ビットの表示データを使用して、1ドットを4階調に制御する。具体的には、EL駆動基板40には、R(赤)の2ビットの表示データに対応して点灯パターンデータが4パターン記憶されている。点灯パターンデータは、1ドットに対して2msごとに何回点灯するかを決める情報である。すなわち、VDP26のフレームデータ作成周期は16msであるため、EL表示器12,14は1フレームデータ作成周期内に8回の点灯タイミングを有する。点灯パターンデータは、8回の点灯タイミングに対し何回点灯するかを決めるデータであり、その点灯回数によって4階調を表現する。
上述したように、EL表示器12,14は、EL表示器用VDP26から出力されるR(赤)の2ビットの表示データのみを使用する。このため、EL表示器用VDP26に接続されるキャラクタROM(図示省略)には、R(赤)の6ビットのうち2ビット(D4,D5)が4階調を表現するためのデータとして記憶されている(D0〜D3については未使用となるため0又は1に固定される)。
なお、6ビットのR(赤)のデータのうち上位ビットD4,D5を使用するのは、下記の理由による。すなわち、6ビットのデータを用いると64階調の表現が可能である。6ビットのデータのうち下位のD0,D1のデータを使用すると、64階調に対して0,1,2,3階調の色の濃さが表現でき、色の濃淡差が小さくなる。一方、上位のD4,D5のデータを使用すると、0,16,32,48階調の色の濃さが表現でき、色の濃淡差を大きくすることができる。このため、表示データ作成時等に、作成したキャラクタデータを液晶表示器上で確認する場合に、その濃淡(明暗)が明確となり、分かり易いためである。
【0027】
上述したことから明らかなようにEL表示器用VDP26は、16ms毎に1フレームデータを作成し、その作成したフレームデータ(表示データ)をEL駆動基板40に出力する。EL駆動基板40のEL制御IC42は2つのメモリ46,48を備え、一方のメモリ46又は48に表示データを格納する。メモリ46、48の一方に表示データが格納されている間は、他方のメモリに格納された表示データが2ms毎にEL表示器12,14に出力され、これによってEL表示器12,14の画像が更新される。したがって、EL表示器用VDP26の表示データ作成周期よりEL表示器12,14の表示データ更新周期が短い場合でも、液晶表示器用VDP36と同じものを用いてEL表示器12,14に画像を表示することができる。
【0028】
次に、EL表示器用VDP26で作成されるフレームデータと、そのフレームデータによってEL表示器12,14に表示される画像との関係について、図5,図6を参照して説明する。図5(a)に示すように、EL表示器用VDP26で作成されるフレームデータ60内にはキャラクタ70が配置される。キャラクタ70の一部は表示データ領域62内に位置し、キャラクタ70の残りは表示データ領域62と表示データ領域64の間の非表示領域に位置する。したがって、図5(b)に示すように、EL表示器12にはキャラクタ70の一部が表示され、EL表示器14には何も表示されない。
図5(b)に示す画面がEL表示器12,14に表示されてから所定時間が経過すると、図6(a)に示すフレームデータがEL表示器用VDP26で作成される。図6(a)から明らかなように、キャラクタ70はその一部が表示データ領域64にあり、残りは表示データ領域62と表示データ領域64の間の非表示領域に位置する。したがって、EL表示器12には何も表示されず、EL表示器14にはキャラクタ70の一部が表示される。したがって、図5〜図6の画面を連続して見ている遊技者は、EL表示器12に表示されていたキャラクタ70がEL表示器14に走って移動したように認識されることとなる。
【0029】
上述した説明から明らかなように本実施例では、表示データ領域62と表示データ領域64の間にEL表示器12,14に表示されない非表示領域が形成されている。このため、表示データ領域62又は表示データ領域64からキャラクタ70の一部がはみ出たとしても、そのはみ出し部分がEL表示器12,14に表示されることがない。したがって、EL表示器用VDP26における表示データの作成は、フレームデータ60上にキャラクタデータ(例えば、キャラクタ70)を配置するだけでよい。
【0030】
以上、本発明の一実施例について詳細に説明したが、これは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、上述した実施例では、フレームデータ60に対して表示データ領域62,64の位置が常に一定の位置関係となる例であったが、本発明はこのような例に限られず、例えば、フレームデータ60に対してデータ表示領域(いわゆる、窓)を動かすようにしてもよい。例えば、図5,6に示す画像を表示器に表示する場合は、フレームデータ60に対するキャラクタ70の配置位置を不変とし、フレームデータ60に対する表示データ領域62,64を設定する位置を変更すればよい。
また、上述した実施例では、表示データ領域62,64の長辺がフレームデータ60の上下の辺と平行となるように表示データ領域62,64を設定したが(すなわち、実際に表示される画面を横向きに配置した状態に設定したが)、表示データ領域62,64の設定方法はこのような方法に限られない。例えば、表示データ領域62,64の長辺がフレームデータ60の側辺に平行となるように表示データ領域62,64を設定することもできる(すなわち、実際に表示される画面通りに設定することもできる)。
また、上述した実施例では、VDP26により2台のEL表示器に画像を表示する例を説明したが、1のVDPによって画像を表示する表示器の数は2台に限られず、より多くの表示器(例えば、3台)に画像を表示するようにしてもよい。また、表示器の種類もEL表示器には限られない。さらに、VDPの表示データ作成方式(フレームバッファ方式,ラインバッファ方式)についても設計者によって任意に選択できる。
また、サブ基板22からEL駆動基板40に出力される信号についても本実施例に限られない。例えば、VDPで作成される表示データのうち、EL表示器12,14用のデータ領域以外の領域(非表示領域)については、B(青)の表示データが出力されるようにする(Bの6ビットは全て‘1’とする)。一方、EL表示器12,14に表示するデータは、前述したようにR(赤)の2ビットで表現する。そして、イネーブル信号の出力とB(青)の1ビットの信号をAND回路で論理演算を行う。このように構成すると、AND回路が最初に‘0’を出力する期間のR(赤)の2ビットが、EL表示器12に出力するデータであり、次に‘0’を出力する期間の2ビットがEL表示器14に対するデータとなる。したがって、EL駆動基板40は、垂直同期信号、水平同期信号をカウントする必要がなくなり、サブ基板22から出力されるAND回路の出力を契機に表示データを、フレームデータ記憶部46a(又は48a)とフレームデータ記憶部46b(又は468b)に交互に記憶すればよい。
なお、上述した実施例は本発明をパチンコ機に適用した例であったが、本発明はこの他にも、例えば、スロットマシン、アレンジホール機、雀球遊技機等の各種遊技機にも適用することができる。
【0031】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0032】
1・・・遊技盤
10・・液晶表示器
12,14・・EL表示器
20・・メイン基板
22・・サブ基板
26・・EL表示器用VDP
32・・表示基板
40・・EL駆動基板
42・・EL制御IC
44・・入力データ切換回路
46・・第1メモリ
46a,46b,48a,48b・・フレームデータ記憶部
48・・第2メモリ
50・・出力データ読出回路
52・・タイミング回路
60・・フレームデータ
62,64・・表示データ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示データを出力する1つのVDPと、
そのVDPから出力される表示データの一部を用いて画像を表示する少なくとも2台の表示装置を備える遊技機であって、
VDPから出力される1フレームデータ内には、表示装置毎に当該表示装置に1フレームの画像を表示するための表示データ領域がそれぞれ設定されており、
それら表示データ領域は互いに重複することがなく、かつ、それら表示データ領域の間には表示装置には表示されない非表示データ領域が設けられていることを特徴とする遊技
機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−94548(P2010−94548A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20465(P2010−20465)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【分割の表示】特願2004−59246(P2004−59246)の分割
【原出願日】平成16年3月3日(2004.3.3)
【出願人】(000148922)株式会社大一商会 (3,262)
【Fターム(参考)】