説明

運動器具

【課題】足部挙上と足関節・足指関節の運動を愉しく行わせる運動器具を提供する。
【解決手段】足部を挙上させるための高さを有する基台と、基台に配置されて足部で操作されるスイッチ部、スイッチ操作に関連する情報を使用者に対して視覚的、聴覚的、または触覚的に提示する情報提示部とから構成される運動器具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足部挙上と足関節・足指関節の運動を愉しく行わせる運動器具に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活において、また社会参加において、歩行が重要であることはよく知られている。
そして高齢者は、歩行時に転倒しないようなさまざまな訓練を行うことがある。
転倒しないためには、足先が身の回りの段差を越えられる、いわゆる「トウ・クリアランス」が重要になり、その訓練としての足部挙上と足関節・足指関節の運動を行える運動器具が望まれる。
【0003】
足部挙上に関連する運動器具としては、ペダルを足踏みする原理の訓練器具が多数提案されている。(特許文献1〜3)
また足部挙上以外の効果として、足裏(足底)に刺激を与える運動器具が提案されている。(特許文献4)
さらに楽しみながらトレーニングを行わせるために、ステップを足で踏むことで音を奏でる訓練装置が提案されている。(特許文献5)
あるいは、遊び気分での足の鍛錬のために、ランプが点滅する踏み台が提案されている。(特許文献6)
あるいは、出没する標的を足で踏みつけるトレーニングマシンも提案されている。(特許文献7)
その他、足でローラーボールを操作する入力装置が提案されている。(特許文献8)
【先行技術文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2002−65938号公報
【特許文献2】 特開2002−233591号公報
【特許文献3】 特開2004−141292号公報
【特許文献4】 特開平10−192445号公報
【特許文献5】 特開2008−73112号公報
【特許文献6】 実用新案登録3071369号公報
【特許文献7】 特開2006−115968号公報
【特許文献8】 特開2004−357781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜7に示された装置は、足踏みを促すものであって、足関節・足指関節において運動を行わせるものではない。
特許文献8に示された装置は、ローラーボールを足で操作することから、足関節・足指関節において運動を行わせるものである。しかし、他の機器を制御するための入力装置であり、それ単体で運動を愉しく行わせる器具ではない。
【0006】
足部挙上と足関節・足指関節の運動に際し、「筋力トレーニング」のような運動系に重点をおく訓練だけでなく、身体や周囲の状況を理解して運動を発現する「コーディネーショントレーニング」のような、感覚系まで含めた訓練が重要であり、身体の感覚系・運動系を統合するような訓練に関する運動器具が望まれる。
また運動訓練は単調な動きの繰り返しになりがちであることから、感覚系まで含めた訓練をする際に、運動と関連する適切な情報提示は、使用者が愉しく運動訓練を継続する有効な動機となる。
そこで本発明の目的は、足部挙上と足関節・足指関節の運動を愉しく行わせる運動器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る運動器具は、足部を挙上させるための高さを有する基台と、基台に配置されて足部で操作されるスイッチ部、スイッチ操作に関連する情報を使用者に対して視覚的、聴覚的、または触覚的に提示する情報提示部とから構成される。
【0008】
基台は、スイッチ部が配置される。
例えば基台上面にスイッチ部が配置されたならば、使用者が足部によってスイッチ操作するためには、足部を基台の上面まで挙上させる必要があり、これによって足部挙上運動が誘発される。
【0009】
スイッチ部は、基台の表面に配置され、使用者が足部で操作する。
操作の方法はスイッチの原理によって異なる。
例えばスイッチが押しボタン式であれば、使用者は足の裏で押し込む運動、すなわち足関節底屈によって操作する。
例えばスイッチがトグルレバー式であれば、使用者は足の指でレバーを倒す運動、すなわち足指屈伸によって操作する。
このように、基台に配置されたスイッチ部を操作することで、使用者は足部挙上と足関節・足指関節の運動を行うこととなる。
【0010】
情報提示部は、スイッチ操作に関連する情報を使用者に対して視覚的、聴覚的、または触覚的に提示する。
何故ならば、使用者に適切にスイッチ部を操作させるためには、操作を促すきっかけ、操作が正しく行われたことを示すフィードバック、という2つの情報を積極的に与えることが望ましいからである。
情報提示部は、視覚的、聴覚的、または触覚的に情報提示する感覚情報提示器と、それを制御する制御器とから構成される。
きっかけやフィードバックとして与える情報は、光のような視覚的情報、音のような聴覚的情報、振動のような触覚的情報が考えられる。
したがって、発光ダイオードのような視覚情報提示器、ブザーのような聴覚情報提示器、バイブレータのような触覚情報提示器、などを基台の表面や内部、スイッチ部に備えておき、制御器で適切に制御する。
【0011】
足部挙上と足関節・足指関節の運動に関する訓練を行う場合、複数人が、本発明に係る運動器具を複数個同時に用いることもある。その場合、情報提示に関する信号を、複数の運動器具の間で相互に伝送できると、それぞれの使用者の感覚・運動を関連付けられ、訓練の難易度を調整できると共に、運動の愉しさをより引き出せる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以下のような効果を奏する。
【0013】
この運動器具を用いることにより、高齢者がコーディネーショントレーニングを行って、愉しみながら転倒予防訓練が行える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る運動器具の斜視図である。
【図2】本発明に係る運動器具の、情報提示部が基台に内蔵された場合の斜視図である。
【図3】本発明に係る運動器具の、情報提示のブロック図の例である。
【図4】本発明に係る運動器具の、情報提示のフローチャートの例である。
【図5】本発明に係る運動器具の、情報提示とスイッチ操作のタイミングチャートの例である。
【図6】本発明に係る運動器具の、相互伝送する場合の情報提示とスイッチ操作のタイミングチャートの例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る運動器具の斜視図である。
本発明に係る運動器具は、基台1、スイッチ部2、情報提示部3とから構成される。
ここで情報提示部3の感覚情報提示器は、発光ダイオードのような視覚情報提示器を想定しており、使用者に適切に情報提示するために、情報提示部3は基台表面に配置されている。
また情報提示部3の感覚情報提示器として、バイブレータのような触覚情報提示器を想定した場合などにも、使用者に適切に情報提示するために、情報提示部3は基台表面に配置される。
【0017】
図2は、本発明に係る運動器具の、情報提示部が基台に内蔵された場合の斜視図である。
情報提示部3の感覚情報提示器として、ブザーのような聴覚情報提示器を想定した場合など、感覚情報提示器を基台1に内蔵しても使用者に適切に情報提示できるのであれば、情報提示部3は外観には現れない。
また、スイッチ部2として、照光式スイッチのように、スイッチ部品と感覚情報提示器とを一体化できる場合には、情報提示部3は単独の構成要素としては外観には現れない。
【実施例1】
【0018】
図2の運動器具において、実施例を説明する。
スイッチ部2には照光式押しボタンスイッチを用いることとし、足裏(足底)または足指でスイッチを押すことで、情報提示部3に信号が送られる。
情報提示部の感覚情報提示器として、発光ダイオードによる視覚情報提示器、ブザーによる聴覚情報提示器を用いる。
視覚情報提示器は、照光式押しボタンスイッチであるスイッチ部2に内蔵され、外観には現れない。
聴覚情報提示器は、基台1に内蔵され、外観には現れない。
【0019】
図3は、本発明に係る運動器具の、情報提示のブロック図の例である。
運動器具の視覚情報提示器からの光、聴覚情報提示器からの音を、使用者は目や耳で検出し、その生体情報が脳(中枢)に送られる。
中枢で生成された運動指令が、下肢の筋に送られ、足関節や足指関節で運動が発現する。
その運動によってスイッチ部が操作され、信号が情報提示部の制御器に送られる。
制御器の処理によって、光や音を発するための信号が、視覚情報提示器、聴覚情報提示器に送られ、それらが動作する。
この手順を繰り返すことで、感覚情報の提示による、足部挙上と足関節・足指関節の運動を愉しく行わせることが可能となる。
【0020】
図4は、本発明に係る運動器具の、情報提示のフローチャートの例である。
制御器では、まずタイマーを起動し、経過時間を計測する。
その経過時間がある値に達するまで、待機する。
所定の時間経過により、制御器は視覚情報提示器に点灯信号を送り、視覚情報提示器は点灯する。
点灯までの経過時間は、予め一定値に定めておくこともできるし、制御器で発生させた乱数に基づいて不規則に変化させることもできる。
視覚情報提示器の点灯の後、スイッチ部2の押しボタンスイッチが押下されるまで、待機する。
スイッチが押下されると、制御器は視覚情報提示器に消灯信号を送り(あるいは点灯信号を
【0021】
送るのを止め)、視覚情報提示器は消灯する。
それと共に、制御器は聴覚情報提示器に発鳴信号を送り、聴覚情報提示器は発鳴する。
それと共に、制御器はタイマーを起動し、経過時間を計測する。
その経過時間がある値に達するまで、待機する。
所定の時間経過により、制御器は聴覚情報提示器に消鳴信号を送り(あるいは発鳴信号を送るのを止め)、聴覚情報提示器は消鳴する。
消鳴までの経過時間は、予め一定値に定めておくこともできるし、制御器で発生させた乱数に基づいて不規則に変化させることもできる。
この手順を繰り返すことで、足部挙上と足関節・足指関節の運動を愉しく行うための、感覚情報の提示が可能となる。
図5は、本発明に係る運動器具の、情報提示とスイッチ操作のタイミングチャートの例である。
視覚情報提示器の点灯後、スイッチが押下されることにより、視覚情報提示器が消灯すると共に、聴覚情報提示器が発鳴する。
聴覚情報提示器の発鳴後、所定の時間経過により、聴覚情報提示器が消鳴する。
【実施例2】
【0022】
先の実施例1では、単独の使用者による、運動器具を用いた訓練であった。
この実施例2では、使用者A、使用者Bの2名での訓練を想定する。
そして両者の運動器具の間で、情報提示に関する信号を相互に伝送できるようにする。
伝送は、有線系でも無線系でも可能である。
伝送は、赤外線通信でも可能である。
【0023】
実施例1では、視覚情報提示器が点灯する条件は、所定の時間経過であった。
実施例2では、所定の時間経過だけでなく、他の運動器具の聴覚情報提示器の消鳴でも、視覚情報提示器が点灯する。
図6は、本発明に係る運動器具の、相互伝送する場合の情報提示とスイッチ操作のタイミングチャートの例である。
まず使用者Aの運動器具は、図5のタイミングチャートと同様の推移をする。
そして使用者Aの聴覚情報提示器が消鳴すると、使用者Aの情報提示部の制御器は、使用者Bの運動器具に対する駆動信号を生成し、伝送する。
駆動信号を受信した使用者Bの運動器具は、所定の時間経過がなくても、視覚情報提示器を点灯させる。
以降、使用者Bの運動器具は、図5のタイミングチャートと同様の推移をする。
そして使用者Bの聴覚情報提示器が消鳴すると、使用者Bの情報提示部の制御器は、使用者Aの運動器具に対する駆動信号を生成し、伝送する。
駆動信号を受信した使用者Aの運動器具は、所定の時間経過がなくても、視覚情報提示器を点灯させる。
この手順を繰り返すことにより、使用者相互の感覚・運動を関連付けられ、訓練の難易度を調整できると共に、運動の愉しさを引き出せる。
この実施例2では2名での訓練を想定したが、より多くの運動器具を接続することにより、多数の使用者の訓練を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 本発明に係る運動器具の基台
2 本発明に係る運動器具のスイッチ部
3 本発明に係る運動器具の情報提示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足部を挙上させるための高さを有する基台と、基台に配置されて足部で操作されるスイッチ部、スイッチ操作に関連する情報を使用者に対して視覚的、聴覚的、または触覚的に提示する情報提示部とから構成される、運動器具。
【請求項2】
情報提示に関する信号を、複数の運動器具の間で相互に伝送できるようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の運動器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−167487(P2011−167487A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53726(P2010−53726)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(506051511)
【出願人】(305057235)株式会社 白川製作所 (2)