説明

運動支援装置

【課題】トレーナーや医者等の負担を軽減して、被計測者に種々な運動を行わせることが可能な運動支援装置を提供する。
【解決手段】運動支援装置1は、被計測者から視認可能な位置に配置されるディスプレイ21を備えており、そのディスプレイ21には、被計測者が圧力分布センサ上で行う運動を誘導するためのアニメーションAが表示される。また、ディスプレイ21には、圧力分布センサにより検知された圧力分布データに基づいて生成された圧力分布映像Bが、アニメーションAと共に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加齢、病気及びケガなどにより運動能力が低下している患者に対して、運動能力を回復させる運動プログラムや運動能力を検査する運動プログラムを提供する運動支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢、病気及びケガなどにより歩行に関する運動能力が低下している患者の運動能力を回復させるため、ロードセルを用いて患者が自身の立位状態における重心位置を確認しつつ、指示された重心位置と一致するように自身の重心位置を移動させる訓練を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平07−275307号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示される重心移動訓練装置では、被計測者は、体を前後左右に動かすことにより、表示装置に表示される目標イメージに、自身の重心位置を示すイメージを一致するように自身の重心位置を移動させる訓練を行う。しかしながら、この重心移動訓練装置では、被計測者に体を前後左右に動かす運動しか提供できない。また、被計測者に種々な運動を行わせるには、従来どおりトレーナーや医者等が被計測者に付き添って指示を出す必要がある。
【0004】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、トレーナーや医者等の負担を軽減して、被計測者に種々な運動を行わせることが可能な運動支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、この発明の運動支援装置は、被計測者から加えられる圧力をそれぞれ検知する複数の圧力検知領域を有する圧力分布センサと、被計測者から視認可能な位置に配置される表示部と、被計測者が圧力分布センサ上で行う運動を誘導するためのアニメーションを、表示部に表示させる表示制御手段とを備えている。
【0006】
この発明に係る運動支援装置では、表示部に被計測者が圧力分布センサ上で行う運動を誘導するためのアニメーションが表示されるので、被計測者は、表示部に表示されるアニメーションに追従するだけで、種々の運動を行うことができる。この際、被計測者が行う運動の指示は、表示部に表示されるアニメーションによってなされるので、被計測者は、トレーナーや医者等が付き添わなくても運動を行うことができる。
【0007】
上記運動支援装置において、好ましくは、表示制御手段は、アニメーションの表示速度を変更可能である。このように構成すれば、被計測者の運動能力に応じてアニメーションの表示速度を変更することができるようになるので、運動能力が異なるあらゆる被計測者に対して、その被計測者の運動能力に適した表示速度のアニメーションを提供することができる。
【0008】
上記運動支援装置において、好ましくは、圧力分布センサにより検知された圧力分布データに基づいて、圧力分布映像を生成する映像生成手段をさらに備え、表示制御手段は、映像生成手段によって生成された圧力分布映像を、アニメーションと共に表示部に表示させる。このように構成すれば、被計測者は、アニメーションと実測の圧力分布データに基づく圧力分布映像とを比較して視認することができる。これにより、被計測者は、当該圧力分布映像がアニメーションに近づくように運動を行うようになり、被計測者の運動能力の回復を促進することができる。
【0009】
上記運動支援装置において、好ましくは、アニメーションと圧力分布映像とを比較して評価する評価手段をさらに備えている。このように構成すれば、被計測者は、評価手段による評価結果を参考にすることが可能となり、被計測者の運動能力の回復をさらに促進することができる。
【0010】
上記運動支援装置において、好ましくは、複数種類のアニメーションを記憶する第1記憶手段をさらに備え、表示制御部は、第1記憶手段に記憶される複数種類のアニメーションの中から選択された所定のアニメーションを表示部に表示する。このように構成すれば、被計測者の運動能力を回復するために最適な運動のアニメーションや被計測者の運動能力を検査するために最適な運動のアニメーションを選択して表示することができる。
【0011】
上記運動支援装置において、好ましくは、アニメーションは、圧力分布映像である。このように構成すれば、実測の圧力分布データに基づく圧力分布映像に即している圧力分布映像がアニメーションとして表示されるので、被計測者は、運動のイメージの把握が容易になる。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、被計測者は、表示部に表示されるアニメーションに追従するだけで、種々の運動を行うことができる。この際、被計測者が行う運動の指示は、表示部に表示されるアニメーションによってなされるので、被計測者は、トレーナーや医者等が付き添わなくても運動を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る運動支援装置の全体構成を示した外観図である。図2は、図1に示した運動支援装置のブロック図である。図3は、図1に示した運動支援装置のディスプレイの画像図である。まず、図1〜図3を参照して、本発明の一実施形態に運動支援装置1の構成について説明する。
【0015】
本実施形態に係る運動支援装置1は、加齢、病気及びケガなどにより運動能力が低下している患者に対して、運動能力を回復させる運動プログラムや運動能力を検査する運動プログラムを提供する装置であって、図1に示すように、シート状の圧力分布センサ11と、圧力分布センサ11に接続された圧力検出部12と、パーソナルコンピュータ(パソコン)20と、圧力検出部12とパソコン20とを接続する接続ユニット40とを備えている。接続ユニット40は、インターフェースボックス45及びインターフェースケーブル46を含んでおり、その両端が圧力検出部12及びパソコン20に接続されている。
【0016】
圧力分布センサ11は、多数の感圧センサ11aが格子状に配置された圧力検知領域を有している。圧力分布センサ11の厚さは、約0.1〜0.2mmである。被計測者がその上に立つための十分な剛性を有する検出板は必要ではなく、被計測者の両足は圧力分布センサ11上に載せることができる。また、圧力分布センサ11は、シート単体での使用も可能であるが、シートの保護の観点から、ゴムシートを緩衝用に積層してもよい。また、床上へのセッティングを容易にする目的でセンサを保持するアルミなどの金属製や樹脂製の板の上に積層してもよい。
【0017】
圧力検出部12は、多数の感圧センサ11aのそれぞれに接続されており、各感圧センサ11aの状態を検出する。本実施形態においては、各感圧センサ11aの状態は、それらに加えられる圧力に対応した0〜255のデジタル出力値によって表される。圧力検出部12は、このデジタル出力値をパソコン20に対して出力する。
【0018】
パソコン20は、ディスプレイ21と、キーボード25と、マウス26と、制御部30(図2参照)とを有している。ディスプレイ21は、圧力分布センサ11上で運動する被計測者から視認可能な位置に配置される。また、制御部30は、図2に示すように、ROM31と、CPU32と、RAM33と、ハードディスク34と、入出力インターフェース35とから構成されており、その間はバス36によってデータ通信可能に接続されている。
【0019】
ROM31は、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどにより構成されている。また、RAM33は、SRAMまたはDRAMなどにより構成されており、ROM31および後述するハードディスク34に記憶されているプログラム等の読み出しに用いられると共に、そのプログラム等を実行する場合に、CPU32の作業領域として利用される。また、入出力インターフェース35には、ディスプレイ21と、キーボード25と、マウス26と、インターフェースボックス45とが接続されている。
【0020】
CPU32は、運動支援装置1の各部の動作を制御する信号を生成するために各種演算を実行する。本実施形態では、CPU32は、RAM33にロードされた後述する運動支援プログラムPを実行する。CPU32が運動支援プログラムPを実行することによって、図3に示すように、被計測者が圧力分布センサ11上で行う運動を誘導するためのアニメーションAが、ディスプレイ21の左側に表示される。この図3に示したアニメーションAは、「(a)両足立ち→(b)右足つま先立ち→(c)左足つま先立ち→(d)右足かかと立ち→(e)左足かかと立ち→(f)両足つま先立ち」の運動を誘導するアニメーションである。この図3では、「(a)両足立ち〜(f)両足つま先立ち」の一連のアニメーションAを、6つの代表的な画像(a)〜(f)で現したが、実際には「(a)両足立ち〜(f)両足つま先立ち」が滑らかに遷移する様子がディスプレイ21に表示される。ここでは、「(a)両足立ち→(b)右足つま先立ち→(c)左足つま先立ち→(d)右足かかと立ち→(e)左足かかと立ち→(f)両足つま先立ち」の運動パターンに係るアニメーションAが選択されているが、被計測者や医者等は、キーボード25やマウス26の外部入力装置により他の運動パターンが選択可能であって、CPU32は、選択された所定のアニメーションをディスプレイ21に表示する。上記したアニメーションAは、実測の圧力分布データに基づく圧力分布映像に即している足型をイメージさせる圧力分布映像である。
【0021】
なお、上記したアニメーションAの表示速度は、キーボード25やマウス26の外部入力装置により変更可能である。従って、運動能力が高い被計測者に対して、アニメーションの表示速度を速くしたり、運動能力が低い被計測者に対して、アニメーションの表示速度を遅くしたりする、といった使用方法が可能となる。
【0022】
また、本実施形態では、CPU32により運動支援プログラムPが実行された場合には、CPU32は、圧力分布センサ11により検知された圧力分布データに基づいて、当該圧力分布データに応じた映像信号を生成し、その映像信号に係る圧力分布映像Bをディスプレイ21の右側に出力する(図3参照)。これにより、ディスプレイ21にアニメーションAと圧力分布映像Bとが並んで表示される。
【0023】
また、本実施形態では、CPU32により運動支援プログラムPが実行された場合には、ディスプレイ21に表示されるアニメーションAと圧力分布映像Bとを比較して評価し、両画像が類似する度合いに応じた点数が算出される。
【0024】
ハードディスク34には、オペレーティングシステム、運動支援プログラムP、及び、このプログラムの実行に必要な種々のデータが格納されている。運動支援プログラムPは、圧力分布センサ11上で運動する被計測者に対して、当該運動を誘導するためのアニメーションA、及び、その圧力分布センサ11により検知される圧力分布データに基づいて生成された圧力分布映像Bをディスプレイ21に表示するプログラムである。ハードディスク34には、この運動支援プログラムPの実行に必要な複数種類のアニメーション、及び、圧力検出部12から接続ユニット40を介してパソコン20に送信された圧力分布データが記憶されている。この圧力分布データは、圧力分布センサ11の格子状に配置された多数の感圧センサ11a毎に、計測時間内におけるサンプル時間おきのデータとしてハードディスク34に記憶されている。つまり、各サンプル時間に対応する1つの検知時刻における多数の感圧センサ11aの圧力分布データが、検知時刻の数だけ記憶されている。従って、この圧力分布データに基づいて、各感圧センサ11aで検知される圧力の時間的な変化を把握することができる。また、圧力分布センサ11で検出される圧力分布の時間的な変化を検知することができる。
【0025】
なお、上記した運動支援プログラムPは、ディスプレイ21に表示されるアニメーションAと圧力分布映像Bとを比較して評価し、両画像が類似する度合いに応じた点数を算出する機能も有している。
【0026】
図4は、図1に示した運動支援装置の動作を示したフローチャートである。次に、図4を参照して、本実施形態の運動支援装置1の動作について説明する。
【0027】
運動支援プログラムPを起動すると、ディスプレイ21に運動パターンを選択する画面が表示されるので、被計測者や医者等は、キーボード25やマウス26を用いて、被計測者の運動能力を回復するために最適な運動パターンを選択する(ステップS1)。運動パターンを選択すると、ディスプレイ21にアニメーションAの表示速度を選択する画面が表示されるので、被計測者や医者等は、キーボード25やマウス26を用いて、被計測者の年齢や運動能力などを考慮して、アニメーションAの表示速度を選択する(ステップS2)。アニメーションAの表示速度が選択されると、ステップS1において選択した運動パターンに係るアニメーションAが、ステップS2において選択した表示速度でディスプレイ21に表示される(ステップS3)。このとき、圧力分布センサ11により検知される圧力分布データに基づいて生成された圧力分布映像Bも表示される(ステップS3)。アニメーションAが終了して、被計測者が行う運動が終了すると、当該被計測者が行った運動に係る圧力分布映像BとアニメーションAとを比較した評価結果がディスプレイ21に出力される(ステップS4)。
【0028】
本実施形態では、上記のように、被計測者が圧力分布センサ11上で行う運動を誘導するためのアニメーションがディスプレイ21に表示されるので、被計測者は、ディスプレイ21に表示されるアニメーションAに追従するだけで、種々の運度(例えば、「両足立ち→右足つま先立ち→左足つま先立ち→右足かかと立ち→左足かかと立ち→両足つま先立ち」)を行うことができる。この際、被計測者が行う運動の指示は、ディスプレイ21に表示されるアニメーションAによってなされるので、被計測者は、トレーナーや医者等が付き添わなくても、運動を行うことができる。
【0029】
また、本実施形態では、アニメーションAの表示速度を変更可能であるから、被計測者の運動能力に応じてアニメーションAの表示速度を変更することができるようになる。これにより、運動能力が異なるあらゆる被計測者に対して、その被計測者の運動能力に適した表示速度のアニメーションAを提供することができる。
【0030】
また、本実施形態では、圧力分布センサ11により検知された圧力分布データに基づいて生成された圧力分布映像を、アニメーションAと共にディスプレイ21に表示させることにより、被計測者は、アニメーションAと、実測の圧力分布データに基づく圧力分布映像Bとを比較して視認することができる。これにより、被計測者は、圧力分布映像BがアニメーションAに近づくように運動を行うようになり、被計測者の運動能力の回復を促進することができる。
【0031】
また、本実施形態では、アニメーションAと圧力分布映像Bとを比較した評価結果を参考にすることが可能となるので、被計測者の運動能力の回復をさらに促進することができる。
【0032】
また、本実施形態では、ハードディスク34に複数種類のアニメーションを記憶しておくことにより、被計測者の運動能力を回復するために最適な運動のアニメーションや被計測者の運動能力を検査するために最適な運動のアニメーションを選択して表示することができる。
【0033】
また、本実施形態では、アニメーションAを、実測の圧力分布データに基づく圧力分布映像に即している圧力分布映像にすることにより、被計測者は、運動のイメージの把握が容易になる。
【0034】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0035】
例えば、上記実施形態では、被計測者の運動を誘導するアニメーションと実測の圧力分布映像とをディスプレイに並べて表示する例について説明したが、本発明はこれに限らず、図5に示すように、被計測者の運動を誘導するアニメーションCのみをディスプレイ21に表示しても良い。
【0036】
また、上記実施形態では、被計測者の運動を誘導するアニメーションと実測の圧力分布映像とを1つのディスプレイに並べて表示する例について説明したが、本発明はこれに限らず、当該アニメーションと当該圧力分布映像とを別個の表示部に表示しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明を利用すれば、トレーナーや医者等の負担を軽減して、被計測者に種々な運動を行わせることが可能な運動支援装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る運動支援装置の全体構成を示した外観図である。
【図2】図1に示した運動支援装置のブロック図である。
【図3】図1に示した運動支援装置のディスプレイの画像図である。
【図4】図1に示した運動支援装置の動作を示したフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態の変形例に係る運動支援装置のディスプレイの画像図である。
【符号の説明】
【0039】
1 運動支援装置
11 圧力分布センサ
21 ディスプレイ(表示部)
30 制御部(表示制御手段,映像生成手段,評価手段)
34 ハードディスク(第1記憶手段)
A,C アニメーション
B 圧力分布映像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測者から加えられる圧力をそれぞれ検知する複数の圧力検知領域を有する圧力分布センサと、
前記被計測者から視認可能な位置に配置される表示部と、
前記被計測者が前記圧力分布センサ上で行う運動を誘導するためのアニメーションを、前記表示部に表示させる表示制御手段とを備えることを特徴とする、運動支援装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記アニメーションの表示速度を変更可能であることを特徴とする、請求項1に記載の運動支援装置。
【請求項3】
前記圧力分布センサにより検知された圧力分布データに基づいて、圧力分布映像を生成する映像生成手段をさらに備え、
前記表示制御手段は、前記映像生成手段によって生成された前記圧力分布映像を、前記アニメーションと共に前記表示部に表示させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の運動支援装置。
【請求項4】
前記アニメーションと前記圧力分布映像とを比較して評価する評価手段をさらに備えることを特徴とする、請求項3に記載の運動支援装置。
【請求項5】
複数種類の前記アニメーションを記憶する第1記憶手段をさらに備え、
前記表示制御部は、前記第1記憶手段に記憶される複数種類のアニメーションの中から選択された所定のアニメーションを前記表示部に表示することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の運動支援装置。
【請求項6】
前記アニメーションは、圧力分布映像であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の運動支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−69227(P2010−69227A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242756(P2008−242756)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【出願人】(307020545)公立大学法人岡山県立大学 (8)