説明

運動補助具

【課題】 使用者の体力に合った屈伸運動を容易に行うことができ、安全でしかも小型でコンパクトな運動補助具を提供する。
【解決手段】 屈伸運動を行う使用者をアシストするための椅子50を常に使用者の動作に合わせて臀部近傍に位置させるように上下移動させる昇降手段30を備えており、昇降手段30は、その一端が支柱20に沿って上下移動可能に配設された移動部材25に取り付けられたワイヤ部材35、37と、ワイヤ部材35、37が巻き付けられる巻取部材31と、そして、下端側が固定され、上端側が巻取部材に巻き付けられたワイヤ部材35、37の他端に連結された一又は複数の弾性部材33とを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動補助具に関し、さらに詳しくは、屈伸運動を行う使用者をアシストするための椅子を常に使用者の動作に合わせて臀部近傍に位置させるように上下移動させる昇降手段を備えた運動補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
わが国の高齢化は急速に進展しており、現在、6人に1人が65歳以上の高齢者であるといわれている。一般に、高齢者の多くは足腰の衰えや関節痛に悩まされている。そのため、次第に日常生活に不自由をきたすようになり、そして、その不自由さが原因でますます運動から遠ざかり一層の運動機能の低下が進むという悪循環が生じている。そのため、そのような問題を解消するために従来から様々な運動器具が開発され、提供されている。
【0003】
特開2000−70405は足の運動を行う運動具の一つである(特許文献1参照。)。特許文献1に記載の発明は、足腰に体重をかけずに、歩行運動と同様の効果を有する足の運動を行うことができる運動具である。使用者は、角度が変えられるように配置されたフレームの上に仰向けの状態で寝そべり、滑車で上方から吊るされた足掛け部に両足を掛け、寝そべったままの状態で足掛け部に掛けた足を上方に上げたり下げたりすることで、足に体重をかけずに足の運動ができるものである。
【0004】
一方、特開平10−5279は起立補助器に関する発明である(特許文献2参照。)。特許文献2に記載の発明は、起立不能障害者用のリハビリ用起立補助器であり、使用者が自力で安全に起立することができるものである。使用者は、臀部受と膝嵌め込み用縦溝型マットにより、下肢を固定し、腕もたれ用円筒マットにより上肢を支えることにより、自力で直立姿勢を取ることが可能となり、この状態において、起立補助器上に設けられた後方牽引装置により牽引条を巻き取り、それと共に牽引条に接続された昇降回動自在腕の伸び縮みと連動した臀部受の上昇・下降によって、使用者の膝が屈伸されるものである。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の発明である運動具は、使用者が自力で足を上げることができなければ運動具としての機能を果たさず、対象が特定の使用者に限定されてしまう。また、使用者は仰向けの状態で寝そべって足の曲げ運動だけを行うので、足の運動しかできず体全体の運動ができないという問題がある。
また、特許文献2に記載の発明は、昇降回動自在腕と電動機を用いて、所定の位置に固定された使用者は、電動機のスイッチを入れることにより自動的に屈伸運動をすることができるが、逆に自分の意志で運動できないため、自分でトレーニングするという意志がなくなり、楽しみも無くなるという問題がある。さらに、電動機を用いているため、騒音や振動が大きく、さらには故障に対する使用者の不安感が拭い去れないという問題もある。
【0006】
そのため、本願発明の発明者は以上の問題を解決し、使用者の体力に合った屈伸運動が容易に行うことができ、しかも安全性を考慮した運動補助具を提供すべく国際出願を行った(特許文献3)。
【0007】
【特許文献1】特開2000−70405号公報
【特許文献2】特開平10−5279号公報
【特許文献3】国際公開第03/082410号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3に示された運動補助具は、使用者がどの位置からでも屈伸運動を行うことかでき、しかも途中で足や腰がふらついて場合でもすぐに椅子に腰掛けることができる安全性の高い運動補助具を提供するものである。
しかしながら、上記特許文献3に示された実施形態のうち、例えば。第2の実施形態のように、使用者の屈伸運動をアシストするための上昇補助手段たる上昇バネは、所定の力で椅子を引っ張り上げる方向に力を加えるようにした構成であり、運動補助具の支柱の上部側に連結される長さを有するバネ部材を使用している。そのため、運動補助具の高さは上昇バネの長さに依存することとなり、運動補助具を小型化・コンパクト化することが難しかった。その一方で、屈伸運動に伴って上下移動する椅子の移動ストローク長は確保しなければならない。
【0009】
そこで、本発明においては、使用者の体力に合った屈伸運動を容易に行うことができ、しかも安全性に配慮した上記特許文献3に示す運動補助具の機能及び効用をそのまま維持しつつも小型でコンパクトな運動補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に記載の本発明は、屈伸運動を行う使用者をアシストするための椅子を常に使用者の動作に合わせて臀部近傍に位置させるように上下移動させる昇降手段を備えた運動補助具において、昇降手段は、その一端が支柱に沿って上下移動可能に配設された移動部材に取り付けられたワイヤ部材と、ワイヤ部材が巻き付けられる巻取部材と、そして、下端側が固定され、上端側が巻取部材に巻き付けられたワイヤ部材の他端に連結された一又は複数の弾性部材とを備えて構成されてなることを特徴とする。
巻取部材介して椅子が取り付けられた移動部材と弾性部材とをワイヤ部材で連結する。これによって移動部材は常に弾性部材の引張り力によって上昇方向に付勢された状態となる。そのため移動部材に取り付けられた椅子には使用者の屈伸運動をアシストする力が付与されることになる。そして、巻取部材介してワイヤ部材により弾性部材と連結しているため従来のように運動補助具の基台から支柱の上部側に至る長さの弾性部材を用いることなく短い弾性部材を利用することができる。これにより運動補助具の高さを低くすることが可能となり、全体として小型化・コンパクト化が実現できる。尚、弾性部材を従来よりも短くすることによる補助力の不足は弾性部材を2倍にすること等により補うことができる。
【0011】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の運動補助具において、巻取部材はプーリーであることを特徴とする。
弾性部材の引張り力をワイヤ部材によってプーリーを介して移動部材に伝えることにより移動部材は常に上昇方向に付勢された状態となる。これにより移動部材に取り付けられた椅子には使用者の屈伸運動をアシストする力が付与される。
【0012】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項1に記載の運動補助具において、巻取部材は、径の小さな小径部と、それよりも径の大きな大径部とを備えて構成され、小径部には弾性部材と連結された第一のワイヤ部材が巻き付けられ、大径部には移動部材に取り付けられた第二のワイヤ部材が巻き付けられていることを特徴とする。
運動補助具の高さは少なくとも椅子が取り付けられた移動部材の移動ストロークを確保する必要があるので、ワイヤ部材が同じ径サイズの巻取部材を介して移動部材と弾性部材を繋いでいる場合には弾性部材はその伸びる長さと移動部材の移動ストロークの長さが同じで且つ適当な圧力を有するものを用いる必要がある。そこで、弾性部材と連結されるワイヤ部材を巻き取る巻取部材の径サイズよりも移動部材に連結されるワイヤ部材を巻き取る巻取部材の径サイズを大きくすることにより弾性部材が伸びる長さに対して径の比率に応じた長を繰り出すことができる。そのため弾性部材の伸縮力と巻取部材の大径と小径の比率を適宜組み合わせることにより圧力調整可能な範囲をより広げることができる。
【0013】
上記課題を解決するために請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の運動補助具において、巻取部材の小径部と大径部との径の比率が1:2であることを特徴とする。
巻取部材の小径部と大径部との径の比率を1:2とすることにより弾性部材が1の長さだけ伸びると移動部材はその2倍の長さだけ下方に移動し、1の長さだけ縮むと移動部材はその2倍の長さだけ上方に移動する。これによって、長さの短い弾性部材を使用しながら移動部材の移動ストロークを確保することができる。
【0014】
上記課題を解決するために請求項5に記載の本発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の運動補助具において、巻取部材は移動可能とされ、それによって弾性部材に対する負荷を変化させて移動部材に取り付けられた椅子の昇降圧力を調整可能とされていることを特徴とする。
巻取部材を上下に移動させることによって弾性部材に付与する与圧を変化させ、それによって椅子に付与される使用者の屈伸運動をアシストする力の調整を可能とする。
【0015】
上記課題を解決するために請求項6に記載の本発明は、請求項5に記載の運動補助具において、巻取部材には圧力調整ワイヤが取り付けられ、圧力調整ワイヤを巻き取り又は繰り出すことにより巻取部材を移動可能としたことを特徴とする。
巻取部材の上下の移動を圧力調整ワイヤを巻き取り又は繰り出すことによって行う。
【0016】
上記課題を解決するために請求項7に記載の本発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の運動補助具において、移動部材に取り付けられたワイヤ部材の張力調整が可能とされ、それによって弾性部材に対する負荷を変化させて移動部材に取り付けられた椅子の昇降圧力を調整可能とされていることを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するために請求項8に記載の本発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の運動補助具において、屈伸運動を行う使用者が身体を支えるハンドルレバーを備え、ハンドルレバーは折り曲げ収納可能とされていることを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するために請求項9に記載の本発明は、請求項8に記載の運動補助具において、ハンドルレバーは使用者の体型や動作に合わせて位置調整が可能とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る運動補助具によれば、昇降手段は、その一端が支柱に沿って上下移動可能に配設された移動部材に取り付けられたワイヤ部材と、ワイヤ部材が巻き付けられる巻取部材と、そして、下端側が固定され、上端側が巻取部材に巻き取られたワイヤ部材の他端に連結された弾性部材とを備えて構成されているので従来の運動補助具に比べて高さを低く押さえることができ小型でコンパクトな運動補助具を提供することが可能となるという効果がある。そのため、簡単に移動や持ち運びができ、一般家庭においても気軽に使用できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る運動補助具について図面を参照しながら以下詳細に説明する。
初めに、図1本発明に係る運動補助具の一実施形態における斜視図、図2はその背面図、図3はその側面図、図4は椅子を最上部まで移動させた状態の側面図である。
図示された運動補助具1は、概略として、基台10と、一対の支柱20と、昇降手段30と、ハンドルレバー40と、椅子50を備えて構成されている。
【0021】
基台10は、略台形状をした板状体であり、その表面に一対の支柱20が立設されている。そして、使用者はこの基台10上に乗り屈伸運動を行う。尚、基台10表面の使用者の立ち位置には足型等所定の形状をした滑り止め10aが設けられている。尚、滑り止め10aは、摩擦の高い材料を基台10上に取り付けるタイプのものや基台10の表面にグレーティング様の溝を形成したタイプのもの等、摩擦効果が発揮されるものであれば特にその形式が限定されるものではない。
支柱20の背面側の底部には車輪13、13が設けられており、運動補助具1を斜めに傾けることによって簡単に移動することができるようになっている。
【0022】
図3、図4に示すように、一対の支柱20には屈伸運動を行う使用者の動作をアシストするための椅子50を常に使用者の臀部近傍に位置させるように上下移動させる昇降手段30が設けられている。昇降手段30は、概略として、移動部材25と、巻取部材31と、弾性部材であるバネ部材33と、第一のワイヤ部材35と、第二のワイヤ部材37を備えて構成されている。
移動部材25は、支柱20に沿って上下移動可能に配設されている。そして、移動部材25の上部側には支柱20側とは反対方向に突き出すようにして片持ち張り状に支持板25aが固定されており、この支持板25aに椅子50が取り付けられている。
【0023】
椅子50は、その高さ位置に応じて角度が変化するように配設されている。ここで、図3は、屈伸運動中の使用者が膝を曲げてしゃがみこんだ状態における運動補助具1の状態を示しており、この状態では椅子50は基台10に対して座部が水平に近い状態となっている。これに対して、図4は使用者が立ち上がった状態における運動補助具1の状態に近く、この状態では椅子50は基台10に対して座部が直角に近い状態となっている。すなわち、椅子50はその高さ位置によって座部の角度が連続的に変化するようになっており、それにより椅子50は常に使用者の臀部近傍に位置すると共に、使用者はいつでも椅子50に座ることができるようになっている。
【0024】
巻取部材31は、図5に示すように、径サイズの小さな小径部31bと、それよりも径サイズの大きな大径部31aを有して形成されている。そして、大径部31aには移動部材25と連結された第二のワイヤ部材37が巻き付けられており、小径部31bには、第一のワイヤ部材35が巻き付けられている。図示された巻取部材31は小径部31bと大径部31aとの径サイズの比率は1:2とされている。もちろん、小径部31bと大径部31aとの径サイズの比率は1:2に限定されるものではなく、適宜の比率を選択することは可能である。そして、この径サイズの比率によって後述するように移動部材25の移動距離とバネ部材33の伸縮長さが適宜決定されることになる。
巻取部材31の小径部31bには第一のワイヤ部材35が巻き付けられていると共に、他端はバネ部材33と連結されている。
バネ部材33は、コイルバネであり、第一のワイヤ部材35と連結された側とは反対側は基台10に固定されて取り付けられている。バネ部材33は縮む方向、すなわち下側に向かって引っ張り力を発生させており、これによりバネ部材33の力は第一のワイヤ部材35、巻取部材31、第二のワイヤ部材37を介して移動部材25に伝達され、移動部材25を常に上方に引き上げる方向に付勢している。従って、移動部材25に取り付けられた椅子50は常に上方に押し上げられることとなり、これによって使用者の動作屈伸運動がアシストされるようになっている。
【0025】
また、巻取部材31の小径部31bと大径部31aとの径サイズの比率は1:2とされているので、例えば、図6(a)に示すように、何も負荷をかけていない状態のときに192mmの長さを有するバネ部材33を使用した場合、10mm分だけ長くなるように引っ張って与圧をかけて長さ203mmとした状態で、バネ部材33を195mm引き伸ばすとバネ部材33の全長は398mmとなる。このとき、バネ部材33と連結された第一のワイヤ部材35は巻取部材31の小径部31bに巻き取られるが、第二のワイヤ部材37はそれよりも2倍の径サイズを有する大径部31aから繰り出されるので第二のワイヤ部材37はその2倍の390mmだけ繰り出されることになる。従って、強い引っ張り力を有する長さの短いバネ部材33を使用しつつも第二のワイヤ部材37をバネ部材33が延びる長さよりも2倍の長さだけ繰り出すことができる。これにより移動部材25の十分な移動ストローク長を確保することが可能となる。
【0026】
これに対して、図7(a)に示すような従来の運動補助具におけるアシスト力の付与構造では、椅子が取り付けられた移動部材(いずれも図示せず)をバネ部材133で直接引っ張り上げるような構造となっていたことから本発明のように390mmのストローク長を確保しようとすると全長で795mmの長さを確保しなければならない。従って、本発明における昇降手段30は従来の構造に比べてバネの長さを大幅に短くできるので運動補助具1の全体の高さを低くすることができ、それによって小型でコンパクトにすることが可能となる。尚、バネが短くなることによる引っ張り力の不足は、例えば、図2に示すように、バネを2本又はそれ以上配置することにより解決することができる。図2に示す運動補助具1では左右の2箇所にそれぞれ2本ずつバネ部材33を配置すると共に、2本のバネ部材33の上端に連結部材34を介在させ、連結部材34と第一のワイヤ部材35を連結している。
【0027】
一方、図6に示すように、巻取部材31は、圧力調整ワイヤ39が取り付けられ、圧力調整ワイヤ39はハンドル39bを備えた巻取器39aによって巻き取り又は繰り出すことができるようになっている。これにより巻取部材31は上下方向に移動可能とされ、それによってバネ部材33によって発生される張力を調整して移動部材25に取り付けられた椅子50の昇降圧力を調整可能としている。すなわち、図7(b)(c)に示すような従来の運動補助具における圧力調整構造では、バネ部材133の引っ張り長さを確保することによって調整を行っていたことからバネ部材133の全長が長くなり全体の大きさを小さくすることが難しかった。これに対して、本実施形態では、図6(b)に示すように、巻取器39aのハンドル39bを回すことにより圧力調整ワイヤ39を巻き取り、それによって図6(a)の状態に比べて巻取部材31が70mmだけ上方に移動した状態となっている。そのため、バネ部材33は図6(a)に比べて70mmだけ長く引っ張られた状態となっている。これにより、移動部材25の移動ストロークは図6(a)と同様に390mmだけ確保されるが移動部材25に加わる引っ張り力は図6(a)の場合に比べてもっと大きくなる。このように、巻取部材31を上下方向に移動可能とすることによってコンパクトな構造でありながら使用者に対するアシスト力を調整できるようになっている。
【0028】
さらに、別の圧力調整機構を備えたアシスト力の付与構造を図8(a)(b)に示す。図8(a)に示すように、大径部31aに巻き付けられた第二のワイヤ部材37の移動部材25側の端部は基点P1に位置して設けられている。そして、基点P1は基点P2までスライド可能に形成されており第二のワイヤ部材37の張力を調整することができるようになっている。図8(a)の左図は、バネ部材33を10mm分だけ長くなるように引っ張って与圧をかけて長さ203mmとした状態を示している。そして、バネ部材33を195mm引き伸ばすとバネ部材33の全長は398mmとなるが、第二のワイヤ部材37は小径部31bよりも2倍の径サイズを有する大径部31aから繰り出されるので第二のワイヤ部材37は2倍の長さの390mmだけ繰り出される(図8(a)右図参照)。
【0029】
一方、図8(b)に示すように、第二のワイヤ部材37の端部を基点P1から基点P2に移動することにより(図9実施形態にあってはハンドル39bにより巻き取ることにより)図8(a)の状態に比べて大径部31aから第二のワイヤ部材37が繰り出され、それによってバネ部材33が70mmだけ引き伸ばされた状態となっている。これにより、移動部材25の移動ストロークは図8(a)と同様に390mmだけ確保されるが移動部材25に加わる引っ張り力は図8(a)の場合に比べて大きくなる。
ここで、張力の調整は、図9に示すように、巻取器39aを椅子50の下部に配置してハンドル39bにより第二のワイヤ部材37を巻き取ることにより張力を調整する構造とすることもできる。図9示した実施形態では図6に示した実施形態と比べて運動補助具1の上部側に巻取器39aを設ける必要がないので高さをさらに低くすることができる。従って、巻取器39aを椅子50の下部に配置するとする本構成はコンパクト化の実現に著しく貢献する。ここで、図9示す実施形態における運動補助具1では椅子50の下部にはさらにストッパ80が取り付けられている。そして、ストッパ80の基台10と当接する先端部にはバネ等のクッション性を有する弾性部材が設けられており、ストッパ80が基台10に当接する際の衝撃を緩和して使用者に与えるショックを軽減するようになっている。尚、図9示した実施形態は巻取器39aの配置位置及びストッパ80以外の構成については図1から図4に示した実施形態のものとほぼ同様の構成とされている。
【0030】
一方、運動補助具1は、使用者が屈伸運動中に身体を支えるために握るハンドルレバー40を有しており、ハンドルレバー40は関節部43を介して支持バー41と繋がっている。関節部43は使用者の体型等に合わせてハンドルレバー40の角度が変えられるようになっており、図示しない固定手段により所望の位置で固定可能とされている。これによりハンドルレバー40は使用者の体型や動作に合わせて位置調整が可能となる。
【0031】
さらに、他の実施形態におけるハンドルレバー40を図10に示す。図示されたハンドルレバー40は、折り曲げ収納可能とされたものである。具体的には図10(a)に示すように、支持バー41の先端側に取付部材47を設け、この取付部材47にハンドルレバー40を回動自在に装着して形成されている。取付部材47には、図10(b)に示すように、貫通孔47aが穿設されており、この貫通孔47aに略くの字状に折り曲げられた屈曲部材45の一端側を回動自在に装着し、他端側をハンドルレバー40に連結することにより構成されている。これにより、ハンドルレバー40は取付部材47を基点として回動可能となり、図10(a)に示すように折り曲げ収納が可能となる。尚、屈曲部材45を設けることなくハンドルレバー40の端部を適宜の角度に屈曲させて取付部材47の貫通孔47aに装着することもできる。折り曲げ収納に際してはハンドルレバー40を内回し、外回しのいずれによるものであってもよい。但し、屈伸運動の際にはハンドルレバー40を引く操作は内側に向く力がかかりやすいので外回しにより折り曲げ収納することが好ましいが、特にこれに限定するものではない。また、折り曲げ収納方向は内回り、外回りのいずれの場合も屈曲部材45の回動を阻止するストッパを設けて使用時における誤動作を防止することが好ましい。
【0032】
また、運動補助具1は、移動部材25の上下移動を支持するクランク機構60を備えている。図1から図4及び図9に示すように、クランク機構60は、左右に略V字状の第1リンク63、63を備え、左右の第1リンク63、63の一端側にはその動きを規制するシャフト65が挿通されている。そして、シャフト65が挿通された第1リンク63、63の反対側の端部側はそれぞれ連結部材67に可動可能に取り付けられており、連結部材67は基台10から立設された突起部15に可動可能に取り付けられた棒状の第2リンク61に連結されている。これにより、移動部材25が支持されて安定して上下方向に移動可能とされている。尚、図9ではクランク機構60の動きを破線で示している。また、使用者の安全のために背もたれ70が配設されている。
【0033】
上記した運動補助具1の巻取部材31を図11に示すようにすることも可能である。すなわち、図11に示す巻取部材31は図5に示す巻取部材31と同様であるが、大径部31aに巻きつけられた第二のワイヤ部材37の他端が図1乃至図4に示すバネ部材33と連結されて構成されており、小径部31bに巻きつけられた第一のワイヤ部材35は存在しない。この場合、大径部31aに第二のワイヤ部材37を巻き付け、小径部31bに第一のワイヤ部材35を巻き付けた上記実施形態のもの比べて椅子50のストローク長が確保でき、しかもバネ部材33の引っ張り力が使用者の体重をしっかりと支えることができればこのような構成とすることもできる。
【0034】
さらに、図12に示すように、小径部31bをシャフト31cとすると共に、小径部31bをシャフト31cとし、大径部31aはシャフト31cを軸として回動可能なプーリー31dとした巻取部材31とすることもできる。この場合、大径部31aから第二のワイヤ部材37が巻き取り又は繰り出しされる代わりに、第二のワイヤ部材37はプーリー31d上を滑るように移動する点で大径部31aに巻き付けた上述の構成とは異なるがそれ以外は同じである。
【0035】
以上のように、本発明に係る運動補助具は、従来の運動補助具に比べてその高さを低く押さえることができるので小型、軽量、コンパクトとなり、簡単に移動や持ち運びができて一般家庭においても気軽に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る運動補助具の一実施形態における斜視図
【図2】本発明に係る運動補助具の一実施形態における背面図である。
【図3】図1に示す運動補助具の側面図である。
【図4】椅子を最上部まで移動させた状態の運動補助具の側面図である。
【図5】巻取部材の斜視図である。
【図6】(a)、(b)は昇降手段のバネ部材と椅子のストローク長の関係を示す説明図である。
【図7】(a)〜(c)は従来のバネ部材と椅子のストローク長の関係を示す説明図である。
【図8】(a)、(b)は図6と異なる実施形態における昇降手段のバネ部材と椅子のストローク長の関係を示す説明図である。
【図9】他の実施形態の巻取部材を備えた運動補助具の側面図である。
【図10】(a)はハンドルレバーの折り曲げ収納を示す側面図、(b)は折り曲げ部分の拡大断面図である。
【図11】図5と異なる実施形態における巻取部材の斜視図である。
【図12】さらに異なる実施形態の巻取部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 運動補助具
10 基台
13 車輪
15 突起部
20 支柱
25 移動部材
25a 支持板
30 昇降手段
31 巻取部材
31a 大径部
31b 小径部
31c シャフト
31d プーリー
33 バネ部材
34 連結部材
39 圧力調整ワイヤ
39a 巻取器
39b ハンドル
40 ハンドルレバー
41 支持バー
43 関節部
45 屈曲部材
47 取付部材
50 椅子
60 クランク機構
61 第2リンク
63 第1リンク
65 シャフト
67 連結部材
70 背もたれ
80 ストッパ
P1,P2 基点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈伸運動を行う使用者をアシストするための椅子を常に当該使用者の動作に合わせて臀部近傍に位置させるように上下移動させる昇降手段を備えた運動補助具において、
前記昇降手段は、
その一端が支柱に沿って上下移動可能に配設された移動部材に取り付けられたワイヤ部材と、
前記ワイヤ部材が巻き付けられる巻取部材と、そして、
下端側が固定され、上端側が前記巻取部材に巻き取られた前記ワイヤ部材の他端に連結された一又は複数の弾性部材と、
を備えて構成されてなることを特徴とする運動補助具。
【請求項2】
請求項1に記載の運動補助具において、
前記巻取部材はプーリーであることを特徴とする運動補助具。
【請求項3】
請求項1に記載の運動補助具において、
前記巻取部材は、径の小さな小径部と、それよりも径の大きな大径部とを備えて構成され、
前記小径部には前記弾性部材と連結された第一のワイヤ部材が巻き付けられ、前記大径部には前記移動部材に取り付けられた第二のワイヤ部材が巻き付けられていることを特徴とする運動補助具。
【請求項4】
請求項3に記載の運動補助具において、
前記巻取部材の小径部と大径部との径の比率が1:2であることを特徴とする運動補助具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の運動補助具において、
前記巻取部材は移動可能とされ、それによって前記弾性部材に対する負荷を変化させて前記移動部材に取り付けられた椅子の昇降圧力を調整可能とされていることを特徴とする運動補助具。
【請求項6】
請求項5に記載の運動補助具において、
前記巻取部材には圧力調整ワイヤが取り付けられ、当該圧力調整ワイヤを巻き取り又は繰り出すことにより前記巻取部材を移動可能としたことを特徴とする運動補助具。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の運動補助具において、
前記移動部材に取り付けられたワイヤ部材の張力調整が可能とされ、それによって前記弾性部材に対する負荷を変化させて当該移動部材に取り付けられた椅子の昇降圧力を調整可能とされていることを特徴とする運動補助具。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の運動補助具において、
屈伸運動を行う使用者が身体を支えるハンドルレバーを備え、前記ハンドルレバーは折り曲げ収納可能とされていることを特徴とする運動補助具。
【請求項9】
請求項8に記載の運動補助具において、
前記ハンドルレバーは使用者の体型や動作に合わせて位置調整が可能とされていることを特徴とする運動補助具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−340764(P2006−340764A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166657(P2005−166657)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(301041508)株式会社オージーエー (9)