運搬装置および方法,ロープ走行装置ならびに運搬装置を利用した削孔装置の設置方法
【目的】 一本の運搬用ロープによって被運搬物を運搬する。
【構成】 運搬装置1では,2つの滑車装置2,3が,被運搬物を運搬する区間の両端に配置されている。上記滑車装置2が長さ調整されて立木12に取付けられた保持ロープ21aに保持され,上記滑車装置3が長さ調整されて立木13に取付けられた保持ロープ21bに保持されている。被運搬物を運ぶ一本の運搬用ロープ10が,第1ウィンチ装置31から上記滑車装置2,3を経て,第2ウィンチ装置32まで張設されている。
【構成】 運搬装置1では,2つの滑車装置2,3が,被運搬物を運搬する区間の両端に配置されている。上記滑車装置2が長さ調整されて立木12に取付けられた保持ロープ21aに保持され,上記滑車装置3が長さ調整されて立木13に取付けられた保持ロープ21bに保持されている。被運搬物を運ぶ一本の運搬用ロープ10が,第1ウィンチ装置31から上記滑車装置2,3を経て,第2ウィンチ装置32まで張設されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,2点間に張られた運搬用ロープを走らせることにより運搬用ロープによって被運搬物を運ぶ運搬装置および運搬方法,この運搬装置および運搬方法で使用されるロープ走行装置ならびにこの運搬装置を利用した削孔装置の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
資材等を運搬するケーブル・クレーンがある。このケーブル・クレーンでは,運搬用トロリーが移動自在に主索に設けられている。主索の一端は,両端がそれぞれ基礎に固定された軌索に移動自在に設けられた走行トロリーに固定されている。主索の他端は緊張装置を介して基礎に固定されている(例えば,特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−151467号公報
【0003】
このケーブル・クレーンでは,運搬用トロリーが所望の経路を走行するように走行トロリーを位置決めした後,運搬用トロリーを走行させて資材等を運搬する。すなわち,運搬用トロリーおよび主索に加えて,走行用トロリーおよびこの走行トロリーが移動自在に設けられる軌索が必要である。
【発明の開示】
【0004】
この発明は,一本の運搬用ロープを用いた運搬装置および運搬方法を提供することを目的とする。
【0005】
この発明は,上記運搬装置および方法で使用するロープ走行装置を提供することを目的とする。
【0006】
この発明はまた,上記の運搬装置を利用した削孔装置の設置方法を提供することを目的とする。
【0007】
この発明による運搬装置は,回転自在に保持される少なくとも2つの滑車装置が,被運搬物を運搬する区間の両端に相当する位置に配置され,被運搬物を運ぶ一本の運搬用ロープが,繰出しウィンチ装置から上記少なくとも2つの滑車装置を経て巻取りウィンチ装置まで張設され,上記少なくとも2つの滑車装置のうち少なくとも1つの滑車装置が,位置調整自在に保持されているものである。
【0008】
この発明による運搬方法は,被運搬物を運搬する区間の両端に相当する位置に少なくとも2つの滑車装置を回転自在に保持した状態で配置し,少なくとも1つの滑車装置の位置を調整可能とし,運搬用ロープを繰出しウィンチ装置から上記少なくとも2つの滑車装置を経て巻取りウィンチ装置まで張設し,上記張設された運搬用ロープを,繰出しウィンチ装置から繰出し,巻取りウィンチ装置によって巻取るものである。
【0009】
ウィンチ装置は,滑車装置,これらに掛けられる運搬用ロープの邪魔にならない場所に配置される。必要に応じて,第3,第4の滑車装置等を,上記滑車装置と,繰出しウィンチ装置,巻取りウィンチ装置との間に配置し,運搬用ロープをこれらの滑車装置に掛けるようにしてもよい。
【0010】
被運搬物を運搬する区間(ロープ走行区間)とは,被運搬物を運搬する始点から終点までの区間を意味し,相当する位置とは原則的には上記始点または終点の近傍であるが,やや離れていてもよい。
【0011】
被運搬物は,資材,削孔装置等の材料,機器(器具)等を含む。被運搬物は,その一部を運搬用ロープに直接に取付けてもよいし,運搬用ロープに取付けられたホルダー(吊籠等)に積載または取付けてもよい。もちろん,運搬用ロープに複数の被運搬物またはホルダーを取付けてもよい。運搬用ロープは,ワイヤ,ワイヤロープ等を含む。
【0012】
滑車装置を位置調整自在に保持するための具体的手段にはさまざまな態様がある。最も簡便には,一端が固定部材に取付けられた保持ロープによって滑車装置を回転自在に保持することである。この保持ロープの長さを調整することにより滑車装置の位置を調整することができる。保持ロープは,ワイヤ,ワイヤロープ,チェーン等を含む。固定部材は,地面に定着されたもの,例えば,地面に打込んだアンカー等を含む。もちろん,固定部材として地面に生えている立木を利用してもよい。一つの滑車装置を,それぞれ別の固定部材に取付けられた複数本の保持ロープによって保持してもよい。
【0013】
この発明によると,少なくとも2つの滑車装置間に張設された一本の運搬用ロープを,繰出しウィンチ装置から繰出し,巻取りウィンチ装置によって巻取ることにより走行させれば,上記の区間において,運搬用ロープによって被運搬物を運搬できる。また,保持ロープの長さを調整し,少なくとも1つの滑車装置の配置位置を変更させれば,運搬用ロープの走行経路を変更できる。
【0014】
この発明によるロープ走行装置は,枠体内に,少なくとも回転自在に支持されたロープ巻回用巻胴と,ロープ巻回用巻胴を回転駆動するモータとを備えた第1のウィンチ装置,枠体内に少なくともロープ巻回用巻胴と,ロープ巻回用巻胴を回転駆動するモータとを備えた第2のウィンチ装置,および上記第1のウィンチ装置を,第2のウィンチ装置の枠体の上にその上面に平行な面内で回転自在に保持する軸受装置を備えている。軸受装置は,転がり軸受等を含む。これにより,一箇所に繰出しウィンチ装置および巻取りウィンチ装置を設置することができる。
【0015】
この発明によると,狭い場所でも2台のウィンチ装置を設置できる。第1のウィンチ装置が回転自在に第2のウィンチ装置上に載置されているので,第1のウィンチ装置の方向の設定が容易である。
【0016】
運搬装置を利用した削孔装置の設置方法は,削孔装置を運搬するロープ走行区間の両端に相当する位置に少なくとも2つの滑車装置を,回転自在に保持した状態で配置し,少なくとも1つの滑車装置の位置を調整可能とし,運搬用ロープを,繰出しウィンチ装置から上記少なくとも2つの滑車装置を経て,巻取りウィンチ装置まで張設し,上記ロープ走行区間において上記運搬用ロープに削孔装置の上部を取付け,上記運搬用ロープを,繰出しウィンチ装置から繰出し,巻取りウィンチ装置によって巻取ることにより,上記削孔装置を所定箇所まで運搬し,上記運搬された削孔装置の下端部を削孔すべき箇所に当て,上記削孔装置の地面に対する設置角度を調整し,上記削孔装置が調整された設置角度を保つように上記運搬用ロープの少なくとも一部分を地面に固定するものである。
【0017】
運搬装置を利用した削孔装置の設置方法によると,一本の運搬用ロープによって運搬された削孔装置を運搬用ロープから取外すことなく設置できる。削孔作業を行う場合も削孔装置を運搬用ロープから取外す必要はない。また,削孔作業の終了後,運搬用ロープを走行させれば別の箇所に削孔装置を運搬することができ,そこで削孔作業を行うことができる。必要であれば,保持ロープを長さ調整して滑車装置を移動させて運搬用ロープの走行経路を変更できる。
【実施例】
【0018】
図1において,運搬装置1は山または丘の一部の斜面に設置されている。図1において,紙面の上部が斜面の上部,紙面の下部が斜面の下部である。運搬装置1は,保管場所S1(またはS2)から作業場所W1(またはW2)まで被運搬物を運搬するものである。保管場所S1(S2)と作業場所W1(W2)はいずれも斜面上部の互いに離れた場所にある。
【0019】
被運搬物を運搬するために保管場所S1(S2)に設けられた滑車装置2と作業場所W1(W2)に設けられた滑車装置3との間に運搬用ロープ10が張られている。より詳しくは,斜面の下部にはロープ駆動装置30が設けられ,運搬用ロープ10はロープ駆動装置30の下部の第2ウィンチ装置31Bから繰出され(引出され),斜面下部の滑車装置4を経て斜面上部の滑車装置2,3に掛けられ,さらに斜面下部の滑車装置5に延ばされ,ロープ駆動装置30の上部の第1ウィンチ装置31Aに至る(巻取られる)ように張設されている。
【0020】
この実施例では,滑車装置2,3,4および5はいずれも斜面に生えて立っている立木12,13,14および15を利用して設けられる。もちろん,立木12,13,14および15に代えて,斜面に支柱(アンカー),その他の固定物を立設(設置)して,この固定物に滑車装置2,3,4および5を取付けてもよい。
【0021】
滑車装置2の取付けについて説明すると,立木12の幹には,支持ベルト20が巻付けられている。この支持ベルト20に金属製の,たとえばU字形に屈曲した吊具が取付けられている。吊具には,保持滑車22を回転自在に支持する軸の両端が取付られる。この保持滑車22に保持ロープ21aが掛けられる。保持ロープ21aの一端部は,調整用リール装置26aのリールに巻付けられており,他端部に滑車装置2が取付られている。リール装置26aは斜面に固定されている。リール装置26aのリールから引出す(または巻取る)保持ロープ21aの長さを調整することにより立木12から滑車装置2までの距離(保持ロープ21aの長さ)が調整される。すなわち,滑車装置2は,長さ調整可能な保持ロープ21aに保持されることになる。リール装置26aは,保持ロープ21aの長さを調整したのち保持ロープ21aの引出しを阻止するストッパを備えている。
【0022】
滑車装置2は,図2に示すように,支持板25と,この支持板25の一面に軸によりそれぞれ回転自在に取付けられたフィンガー滑車23およびガード回転体24とから構成されている。フィンガー滑車23は,円盤を有し,この円盤の一面の周縁から複数本のフィンガー23aが等角度間隔で放射状に斜め外方(円盤の上記一面に対して斜めで,かつ支持板25の上記一面から離れる方向)に延びている。また円盤の周面にはガイド溝23bが形成されている。このガイド溝23bには運搬用ロープ10が掛けられる。ガード回転体24の一端面からも複数本のフィンガー24aが等角度間隔で放射状に斜め外方に延びている。フィンガー滑車23およびガード回転体24は,フィンガー滑車23が回転したときに,フィンガー滑車23のフィンガー23aの間に,ガード回転体24のフィンガー24aが順次入り,これらのフィンガー23a,24aによりフィンガー滑車23の回転がガード回転体24に伝えられるように,少しの間隙をあけて配置されている。ガイド溝23bに掛けられた運搬用ロープ10はフィンガー滑車23とガード回転体24の間の間隙を通っており,これらのフィンガー23a,24aにより運搬用ロープ10がフィンガー滑車23から外れるのが防止される。支持板25の一端部には,取手25aが設けられている。この取手25aに保持ロープ21aの端部がループを形成して締結される。滑車装置3,4および5は滑車装置2と同じ構成であるから説明を省略する。
【0023】
滑車装置3の取付けも滑車装置2の取付けと同じである。簡単に説明すると,支持ベルト20を用いて立木13に回転自在に取付けられた保持滑車22に,斜面に固定された調整用リール装置26bから引出された保持ロープ21bが掛けられ,保持ロープ21bの端部には滑車装置3が取付けられている。
【0024】
滑車装置4,5は,立木14,15の幹に巻付けられた支持ベルト20に結びつけられた連結ロープ28a,28bの一端が滑車装置4,5の取手に結びつけられることにより,立木14,15に取付けられている。これらの滑車装置4,5を取付ける連結ロープ28a,28bは長さ調整自在ではない。もちろん,連結ロープ28a,28bを保持ロープ21a,21bと同じように長さ調整自在としてもよい。
【0025】
滑車装置2と滑車装置3との間(すなわち,被運搬物を運搬する区間の両端に相当する位置に配置された2つの滑車の間)において運搬用ロープ10の適所には,吊籠取付具11によって吊籠8が固定されている。
【0026】
ロープ駆動装置30の付近には,ロープ駆動装置30に動作電力を供給する電源装置(発電機)80と,ロープ駆動装置30の駆動を制御するロープ駆動制御装置70とが配置されている。ロープ駆動制御装置70は後述するように遠隔操作装置9(図8も参照)からの指令に応答してロープ駆動装置30を制御する。
【0027】
ロープ駆動装置30の第2ウィンチ装置31Bから運搬用ロープ10を繰出し,第1ウィンチ装置31Aで巻取ることによって一本の運搬用ロープ10を保管場所S1の滑車装置2から作業場所W1の滑車装置3に向けて走行させ(この方向の運搬用ロープ10の走行を,以下順方向走行という),運搬用ロープ10に取付けた吊籠8を移動させることができる。すなわち,吊籠8に載せた被運搬物を保管場所S1から作業場所W1に運搬することができる。
【0028】
作業場所を作業場所W1からその下方の作業場所W2に変更し,保管場所S1をその下方の保管場所S2に変更したときには,調整用リール装置26a,26bからそれぞれ保持ロープ21a,21bを引出して,立木12,13から滑車装置2,3までの保持ロープ21a,21bの長さを調整すれば,滑車装置2,3の配置位置がそれぞれ保管場所S2の付近,作業場所W2の付近に変更される。このようにして,保持ロープ21a,21bの長さを調整することにより,保管場所または作業場所の少なくともいずれか一方の位置の変更,被運搬物の搬送経路の変更に対処することが可能となる。
【0029】
後述するように第1ウィンチ装置31Aは動力伝達装置55Aを,第2ウィンチ装置31Bは動力伝達装置55B(図3,4参照)をそれぞれ有している。運搬用ロープ10を静止状態に保つ場合,第1ウィンチ装置31Aにおいてその動力伝達装置55Aによって,運搬用ロープ10の自重,吊籠8に載せられた被運搬物等の重量の力により運搬用ロープ10が逆方向に繰出されないように阻止し,第2ウィンチ装置31Bにおいてその動力伝達装置55Bによって,上記重量による力により運搬用ロープ10が繰出されるのを阻止する。
【0030】
運搬装置1の設置方法について説明すると,被運搬物を運搬する区間の両端に相当する位置に当たる保管場所S1および作業場所W1にそれぞれ滑車装置2,3を配置する。滑車装置2を保管場所S1付近の立木12の保持滑車22に掛けた保持ロープ21aに保持させる。また,滑車装置3を作業場所W1付近の立木13の保持滑車22に掛けた保持ロープ21bに保持させる。さらに,滑車装置4,5を斜面下部の立木14,15に連結ロープ28a,28bによりそれぞれ取付ける。斜面下部に設置したロープ駆動装置30の第2ウィンチ装置31Bから運搬用ロープ10を繰出し,滑車装置4,滑車装置2,滑車装置3,滑車装置5の順に掛け,第1ウィンチ装置31Aによって巻取る。必要に応じて第2ウィンチ装置31Bからの繰出しを停止し,第1ウィンチ装置31Aによって巻取ることにより,運搬用ロープ10を緊張させる。滑車装置2と滑車装置3との間において運搬用ロープ10に吊籠取付具11を用いて吊籠8を取付ける。
【0031】
運搬装置1を使用して被運搬物を保管場所S1から作業場所W1に運搬する場合には,運搬用ロープ10を緊張した状態で静止させておいて,保管場所S1において,作業員(以下,積込作業員という)が,被運搬物を吊籠8に積込む。もちろん,運搬用ロープ10を緩めて降下させた吊籠8に被運搬物を積込んでもよい。
【0032】
作業場所W1おいて,作業員(以下,施工員という)は,手に持った遠隔操作装置9を用いて,運搬用ロープ10を順方向走行させて吊籠8を保管場所S1から作業場所W1まで移動させ,運搬用ロープ10を静止させる。施工員は吊籠8から被運搬物を取出し,取出した被運搬物を用いて作業を行う。このとき,運搬用ロープ10を緩めて吊籠8を降下させてもよい。この後,遠隔操作装置9を用いて,運搬用ロープ10を順方向とは逆方向に走行(以下,逆方向走行という)させて,吊籠8を保管場所S1に戻しておけば,再度,保管場所S1に保管された被運搬物を作業場所W1に運搬できる。
【0033】
作業場所を作業場所W1から作業場所W2に,保管場所を保管場所S1から保管場所S2にそれぞれ変更する場合,積込作業員は調整用リール装置26aから保持ロープ21aを引出して立木12から滑車装置2までの保持ロープ21aの長さを長くして滑車装置2を下方に移動させる。施工員は調整用リール装置26bから保持ロープ21bを引出して立木13から滑車装置3までの保持ロープ21bの長さを長くして滑車装置3を下方に移動させる。このように,滑車装置2,3の配置位置を変更して,運搬用ロープ10の走行経路を変更することができる。
【0034】
ロープ駆動装置30の具体的構成が図3,図4および図5に示されている。このロープ駆動装置30は,斜面の,好ましくはほぼ水平な場所に固定(設置)される下部の第2ウィンチ装置31Bと,第2ウィンチ装置31Bの上に,第2ウィンチ装置31Bの上面(上板39)に平行な面内で回転自在に載置された第1ウィンチ装置31Aとから構成される。ロープ駆動装置30は,図3では第1ウィンチ装置31Aの正面と第2ウィンチ装置31Bの右側面とが現れ,図4では第1ウィンチ装置31Aの右側面と第2ウィンチ装置31Bの後面とが現れた状態で図示されている。第1ウィンチ装置31A,第2ウィンチ装置31Bはそれぞれ,巻胴,モータ等を内部に収めた第1枠体33,第2枠体34を有している。
【0035】
第1枠体33は,方形の平行に配置された下板36と上板37とを含み,下板36と上板37とがそれらの四隅にそれぞれ立てられた支柱35によって固定されている。第2枠体34も同じように,方形の平行に配置された下板38と上板39とを含み,下板38と上板39とがそれらの四隅にそれぞれ立てられた支柱35によって固定されている。これらの第1枠体33および第2枠体34の内部構造は,全く同じであるから同じ構成要素には同じ符号を付し,第1ウィンチ装置31Aと第2ウィンチ装置31Bとでは動作が異なることがあるので,上記符号にAまたはB(Aは第1ウィンチ装置31Aの構成要素であることを,Bは第2ウィンチ装置31Bの構成要素であることを示す)の添字を用いて区別する。
【0036】
まず,第1ウィンチ装置31Aについて説明する。運搬用ロープ10を保管場所S1(S2)から作業場所W1(W2)に走行させる場合,第1ウィンチ装置31Aは巻取り用として用いられる。第1ウィンチ装置31Aの第1枠体33の内部には,基台50A,巻胴52Aおよびその回転軸53A,モータ54A,動力伝達装置55A,ウィンチ制御装置56A,ロープガイド装置57A,張力調整装置59Aおよび引出防止装置60Aが収められ,かつ固定されている。以下の説明において,第1ウィンチ装置31Aの構成(特に,動力伝達装置55Aおよびロープガイド装置57A)と動作については巻取り動作を中心に説明する。
【0037】
運搬用ロープ10を巻取る場合,モータ54Aが,運搬用ロープ10を巻取るために巻取り方向(以下,正方向という)に回転し,正方向の回転動力を動力伝達装置55Aを介して巻胴52Aに与える。
【0038】
巻胴52Aは,基台50A上に互いに間隔をあけて立設された支持板51Aa,51Abの間に配置されている。巻胴52Aが固定されたその回転軸53Aの両端部は,支持板51Aa,51Abにそれぞれ回転自在に支持され,支持板51Aa,51Abからそれぞれ外方に突出している。回転軸53Aの支持板51Aaから突出した部分は,動力伝達装置55A内の動力伝達機構の出力側に連結されている。また,動力伝達装置55Aの動力伝達機構の入力側にはそのハウジングに固定されたモータ54Aが連結されている。
【0039】
基台50A上に固定された動力伝達装置55Aのボックス内には,ギア,歯車,軸受,電磁ブレーキ等から構成される動力伝達機構が内蔵されている(図示略)。動力伝達装置55Aは,ロープ駆動制御装置70からの動作命令に基づいて基台50A上に固定されたウィンチ制御装置56Aによって制御される。
【0040】
運搬用ロープ10を巻取る場合,ロープ駆動制御装置70から巻取動作命令がウィンチ制御装置56Aに与えられると,動力伝達装置55Aは,モータ54Aから発生する駆動力を巻胴52Aの回転軸53Aに伝達し,これにより巻胴52Aが正方向に回転する。
【0041】
運搬用ロープ10を静止状態に保つ場合は,ウィンチ制御装置56Aによる制御にもとづき動力伝達装置55A内の電磁ブレーキが働き,これによって巻胴52Aの回転軸53Aが回転することを阻止する。
【0042】
ロープガイド装置57Aは,2枚のローラ支持板51Ac,上部ローラ57Aaおよび下部ローラ57Abから構成されている。2枚のローラ支持板51Acは,基台50A上に巻胴52Aの前方に間隔をあけて平行に立設されている。これらのローラ支持板51Acの間に,運搬用ロープ10の径とほぼ同じ程度の間隔をあけて,上下に並行に,径が小さい上部ローラ57Aaおよび径が大きい下部ローラ57Abが配置されている。上部ローラ57Aaが固定された軸および下部ローラ57Abが固定された軸の両端は,2枚のローラ支持板51Acにそれぞれ回転自在に支持されている。ロープガイド装置57Aは,運搬用ロープ10を上部ローラ57Aaと下部ローラ57Abとの間に通すことにより,巻取る運搬用ロープ10が第1枠体33に接触することなく巻胴52Aに巻回されるように運搬用ロープ10をガイドする。
【0043】
次に,第2ウィンチ装置31Bについて説明する。運搬用ロープ10を順方向走行させる場合,第2ウィンチ装置31Bは繰出し用として用いられる。第2ウィンチ装置31Bの第2枠体34の内部には,第1ウィンチ装置31Aと同様に基台50B,巻胴52Bおよびその回転軸53B,モータ54B,動力伝達装置55B,ウィンチ制御装置56B,ロープガイド装置57B,張力調整装置59Bおよび引出防止装置60Bが収められ,かつ固定されている。以下,第2ウィンチ装置31Bの構成(動力伝達装置55B,ウィンチ制御装置56B,ロープガイド装置57B,張力調整装置59Bおよび引出防止装置60B)と動作については繰出し動作を中心に説明する。
【0044】
運搬用ロープ10を静止状態を保つ場合は,第2ウィンチ装置31Bでは,動力伝達装置55Bに内蔵された電磁ブレーキを動作させて巻胴52Bの回転軸53Bが回転することを防止する。上述したように第1ウィンチ装置31Aでも運搬用ロープ10を静止状態に保つ場合には動力伝達装置55Aの電磁ブレーキが働く。したがって,運搬用ロープ10の自重や,被運搬物の重量等による力に抗して,第2ウィンチ装置31Bでは運搬用ロープ10が引出されるのが阻止され,第1ウィンチ装置31Aでも巻胴52Aが逆転するのが阻止される。
【0045】
ロープガイド装置57Bにおいて,繰出される運搬用ロープ10は上部ローラ57Baと下部ローラ57Bbとの間の間隙に通され,これによって運搬用ロープ10がガイドされ,第2枠体34に接触することなく巻胴52Bから運搬用ロープ10が繰出される。
【0046】
運搬用ロープ10を繰出す場合,ロープ駆動制御装置70から繰出動作命令がウィンチ制御装置56Bに与えられると,動力伝達装置55Bは,ウィンチ制御装置56Bによって制御されて,内蔵されたギアにより巻胴52Bの回転軸53Bをモータ54Bの回転軸から切離して回転自在な状態とする。
【0047】
運搬用ロープ10を繰出す場合,巻胴52Bに掛かる力は,第1ウィンチ装置31Aの巻胴52Aが運搬用ロープ10を巻取ることによる引張り力と,運搬用ロープ10の自重,被運搬物の重量等による引張り力との和である。巻胴52Bの回転軸53Bは,電磁ブレーキが解除されて回転自在となっているが,あらかじめ予測(予定)された運搬用ロープ10の自重,被運搬物の重量等による引張り力に対しては,この引張り力により巻胴52Bが繰出し方向に回転するのを引出防止装置60Bによって阻止する。第1ウィンチ装置31Aの巻胴52Aが運搬用ロープ10を巻取ることによる引張り力がさらに加わると,引出防止装置60Bは後述するトルクリミッタ65Bの働きにより巻胴52Bの回転阻止を解除する。したがって,巻胴52Bが回転して運搬用ロープ10の繰出しが可能となるが,繰出される運搬用ロープ10の張力は,張力調整装置59Bによって調整される。
【0048】
運搬用ロープ10を巻取る場合,上述したように第1ウィンチ装置31Aにおいて,モータ54Aから与えられた回転動力は,動力伝達装置55Aを介して,巻胴52Aの回転軸53Aに伝わる。巻胴52Aを正方向に回転させようとする力は,運搬用ロープ10を介して,第2ウィンチ装置31Bの巻胴52Bに与えられる。
【0049】
第2ウィンチ装置31Bにおいては,上記の力に抗して巻胴52Bが回転するのを阻止しようとする力が,斜面に固定された第2ウィンチ装置31B,これに固定された張力調整装置59Bのボックスから,つめ63B,歯車62B,トルクリミッタ65B,回転伝達軸61Bを経て,張力調整装置59B内の張力調整機構を介して,巻胴52Bの回転軸53Bに働く。つめ63B,ラチェット歯車62B,トルクリミッタ65Bおよび回転伝達軸61Bは引出防止装置60Bを構成する。
【0050】
つめ63Bは,その軸63Bbにより張力調整装置59Bのボックスの外側面に揺動自在に取付けられている。
【0051】
ラチェット歯車62Bはトルクリミッタ65Bの外周面に,その回転中心がトルクリミッタ65Bの軸と一致する位置に固定されている。ラチェット歯車62Bには,つめ63Bの先端が係合している。運搬用ロープ10を繰出そうとする力によって,歯車62Bが正方向(図3において実線の矢印RB2で示す方向)(張力調整装置59Bによって歯車62B(回転伝達軸61B)と巻胴52B(回転軸53B)とは回転方向が逆になるので,巻胴52Bの逆方向回転に相当)に回転しようとするが,つめ63Bがラチェット歯車62Bに係合しているので,ラチェット歯車62Bの回転は阻止される。
【0052】
なお,第1ウィンチ装置31Aにおいて,運搬用ロープ10を巻取る場合,ラチェット歯車62Aが逆方向(図4において実線の矢印RA2で示す方向)に回転するので,つめ63Aの先端部がラチェット歯車62Aの歯62Aaに係合することはなく,ラチェット歯車62Aは回転しうる状態となる。
【0053】
トルクリミッタ65Bは,外側の継手部材と内側の回転部材との二層の筒状構造からなり,外側の継手部材の外端面に,ラチェット歯車62Bがその軸を一致させて固定されている。また,内側の回転部材は,回転伝達軸61Bの一端部にその軸を一致させて固定されている。第1ウィンチ装置31Aによる運搬用ロープ10の巻取りにより第2ウィンチ装置31Bの巻胴52Bを逆方向に回転させようとする力は張力調整装置59B,回転伝達軸61Bを経てトルクリミッタ65Bの内側の回転部材に伝わる。他方トルクリミッタ65Bの外側の継手部材にはつめ63B,ラチェット歯車62Bを介して回転を阻止しようとする力が働く。これらの力が,所与の値以下の場合にはトルクリミッタ65Bの外側の継手部材と内側の回転部材とは強く結合しており,巻胴52Bは回転しない。上記の力が所与の値を超えると,外側の継手部材と内側の回転部材との間に滑りが発生する。したがって,ラチェット歯車62Bがつめ63Bに係合していても,巻胴52Bは繰出し方向に回転することになる。
【0054】
張力調整装置59Bの入出力側に,巻胴52Bの回転軸53Bおよび回転伝達軸61Bが連結されている。張力調整装置59Bでは,張力調整装置59Bに内蔵された互いに噛み合う2つ歯車のうちの一方が回転軸53Bに固定され,他方が回転伝達61Bにそれぞれ固定されている。また,張力調整装置59Bに内蔵された張力調整ブレーキは,回転伝達軸61Bが正方向(巻取り方向)に回転することを抑制する。上記2つの歯車および張力調整ブレーキは張力調整機構を構成し,支持板51Bbの外側面に固定された張力調整装置59Bのボックス内に内蔵されている。第1ウィンチ装置31Aによる運搬用ロープ10の巻取りにより第2ウィンチ装置31Bにおいて巻胴52Bに上記所与の値を超える力が働き,運搬用ロープ10が繰出される場合には,巻胴52B(回転軸53B)を逆方向(繰出し方向)に回転させようとする力は張力調整装置59Bによって正方向に方向転換されて回転伝達軸61Bに伝わるが,回転伝達軸61Bを正方向に回転させようとする力は上記張力調整ブレーキによって抑制される。したがって,巻胴52Bからの運搬用ロープ10の繰出しにおける張力が調整される。
【0055】
また,トルクリミッタ65Bには,内側の回転部材と外側の継手部材との間にあらかじめ定められた以上の負荷が掛かったこと(滑りはじめたこと)を検知するセンサが設けられている。
【0056】
ウィンチ制御装置59Bは,トルクリミッタ65Bのセンサから検知信号を受付けると,張力調整装置59Bの張力調整ブレーキを作動させ,運搬用ロープ10の張力を調整させる。
【0057】
運搬用ロープ10を緊張させる場合(たとえば,吊籠8を吊上げる,保管場所や作業場所を変更した後等),第1ウィンチ装置31Aには,ロープ駆動制御装置70から巻取動作命令が与えられる。このときの第1ウィンチ装置31Aの各構成要素の動作は,上述の運搬用ロープ10を順方向走行させる場合と同じである。また,第2ウィンチ装置31Bには,ロープ駆動制御装置70から回転停止命令が与えられるので,これに応答して動力伝達装置55Bにおける電磁ブレーキを動作させて巻胴52Bの回転軸53Bの回転を阻止する。したがって,第1ウィンチ装置31Aでは運搬用ロープ10を巻取り,第2ウィンチ装置31Bでは運搬用ロープ10が繰出されるのを阻止する。
【0058】
張設された運搬用ロープ10を緩める場合(たとえば,吊籠8から被運搬物を降ろす,または吊籠8に被運搬物を乗せる,保管場所や作業場所を変更する場合),第1ウィンチ装置31Aには,ロープ駆動制御装置70から回転停止命令が与えられるので,動力伝達装置55Aにおける電磁ブレーキを動作させて巻胴52Bの回転軸53Aの回転を阻止する。また,第2ウィンチ装置31Bには,ロープ駆動制御装置70から弛緩繰出動作命令が与えられるので,これに応答して動力伝達装置55Bは,ウィンチ制御装置31Bの制御の下に,モータ54Bから与えられた駆動力を,内蔵されたギアにより巻胴52Bを逆方向に回転させるように回転方向を逆転させて巻胴52Bの回転軸53Bに伝達する。したがって,第1ウィンチ装置31Aにおいて運搬用ロープ10が繰出されるのが阻止され,第2ウィンチ装置31Bでは巻胴52Bをモータ54Bにより回転させて運搬用ロープ10を繰出す。
【0059】
なお,運搬用ロープ10を逆方向に走行させる場合(これにより運搬用ロープ10を緊張させるまたは緩める場合を含む)には,第1ウィンチ装置31Aと第2ウィンチ装置31Bの役割は逆となる。
【0060】
第2枠体34上に第1枠体33を回転自在に載置するために第1枠体33と第2枠体34との間に設けられた軸受装置を図6および図7を参照して説明する。図6は第1枠体の平面図,図7は図6のVII−VII線に沿う断面図である。
【0061】
軸受装置400 は,円筒軸46,軸受筒40および回転支持体41から構成されている。
【0062】
軸受筒40は,金属製の円筒の形状を有し,第2枠体34の上板39の上面の中央に垂直に,下端が溶接されて固定されている。円筒軸46は,金属製の円筒の形状を有し,第1枠体33の下板36の下面の中央に垂直に,上端が溶接されて固定されている。軸受筒40の内径は,円筒軸46の外径よりも若干大きく,円筒軸46が軸受筒40にゆるく嵌込まれている。
【0063】
4つの金属製の回転支持体41は,軸受筒40を中心とする円上に90度の角度間隔で第2枠体34の上板39の上面に軸受筒40から離れて,設けられている。各回転支持体41は1対の軸受部材44とローラ42とから構成されている。1対の軸受部材44は間隔をあけて上板39の上面に溶接されて固定されている。これらの軸受部材44がローラ42の回転軸43の両端を回転自在に受ける。ローラ42は第1枠体33の下面36を受ける。これによって,第1枠体33は,円筒軸46を中心に第2枠体34上で回転する。
【0064】
第1枠体33と第2枠体34との間にはさらに,固定装置47が設けられている。固定装置47は,複数の鉤受筒45と,1つの支持筒48と,この支持筒48に上下方向に移動自在に支持された1つの鉤部材49とから構成され,第2枠体34上で第1枠体33の角度位置を固定するものである。
【0065】
金属製の円筒の形状を有する複数の鉤受筒45は,第2枠体34の上板39の上面の回転支持体41よりも外側において軸受筒40を中心とする円上に一定の角度間隔をあけて垂直に,下端が溶着されて固定されている。金属製の円筒の形状を有する支持筒48は,第1枠体33の外周面の下部に溶着により固定されている。この支持筒48内に金属製の屈曲した鉤部材49の上部が挿通されている。鉤部材49の下端部がいずれかの鉤受筒45内に収められることにより,第2枠体34上で所定の角度位置に第1枠体33を固定することができる。先に,図1を参照して説明したように運搬用ロープ10は第2ウィンチ装置31Bから引出され,第1ウィンチ装置31Aに巻取られる。運搬用ロープ10の張設方向は巻胴52A,52Bの回転軸53A,53Bの軸方向に垂直であることが好ましい。図1に示すように張設された運搬用ロープ10の張設方向にあわせて第2ウィンチ装置31B,第1ウィンチ装置31Aの姿勢(向き)を定め,固定装置47により第1ウィンチ装置31Aを第2ウィンチ装置31Bに対して固定する。
【0066】
ロープ駆動制御装置70は,図8に示すように,制御部71,入力部72,送信部73および受信部74から構成されている。
【0067】
制御部71は,入力部72で入力された,または遠隔操作装置9から送信されて受信部74によって受信されたロープ駆動装置30の動作要求を受付ける。制御部71は受付けた動作要求に基づいて動作命令を生成する。生成された動作命令は第1ウィンチ装置31Aのウィンチ制御装置56Aおよび第2ウィンチ装置31Bのウィンチ制御装置56Bに,送信部73から送信される。
【0068】
遠隔操作装置9は,図9に示すように,遠隔操作制御部75,入力部77および遠隔操作送信部76から構成されている。入力部77は,ロープ駆動制御装置70の入力部72と同じものである。これによりロープ駆動制御装置70と遠隔操作装置9とにおいて,全く同じ操作を行うことができる。遠隔操作制御部75は,入力部77によって入力されたロープ駆動装置30の動作要求を受付け,これを遠隔操作送信部76によってロープ駆動制御装置70に送信させる。
【0069】
遠隔操作装置9の入力部77の操作面90を,図10に示す。作業員は,操作面90において,連動モードボタン94または単独モードボタン95を押下した後,第1巻取ボタン95,第2巻取ボタン96,第1繰出しボタン97または第2繰出しボタン98を押下し続ければ,第1ウィンチ装置31Aまたは第2ウィンチ装置31Bは巻取動作,繰出し動作等を行い,ボタンの押下を止めれば,第1ウィンチ装置31Aおよび第2ウィンチ装置31Bはそれぞれの動作を停止する。
【0070】
運搬用ロープ10を順方向走行させる場合,作業員は連動モードボタン94および第1巻取ボタン95または第2繰出しボタン98を押す。ロープ駆動制御装置70の制御部71は,連動モードボタン94が押下されたと判断すると(操作面90の各種ボタンの押下に関する信号に関しては,以下の説明では,ロープ駆動装置70の入力部72のみならず遠隔操作装置9の入力部77から入力され,遠隔操作装置9からロープ駆動装置70に送信された信号を含むものとする)連動モードを設定する。連動モードを設定した制御部71は,第1巻取ボタン95または第2繰出しボタン98が押下され続けていると判断すると,巻取動作命令および繰出動作命令を生成し,巻取動作命令を第1ウィンチ装置31A宛てに,繰出動作命令を第2ウィンチ装置31B宛てに送信させる。なお,運搬用ロープ10を逆方向走行させる場合,作業員は連動モードボタン94および第2巻取ボタン96または第1繰出しボタン97を押す。連動モードを設定した制御部71は,第2巻取ボタン96または第1繰出しボタン97が押下され続けていると判断すると,繰出動作命令および巻取動作命令を生成し,繰出動作命令を第1ウィンチ装置31A宛てに,巻取動作命令を第2ウィンチ装置31B宛てに送信させる。
【0071】
吊籠8を吊上げる等のために運搬用ロープ10を順方向に走行させて(第1ウィンチ装置31Aを巻取り用として駆動し,第2ウィンチ装置31Bにおいて巻胴52Bにブレーキを掛けておく)運搬用ロープ10を緊張させる場合,作業員は,単独モードボタン93および第1巻取ボタン95を押す。制御部71は,単独モードボタン93が押下されたと判断すると単独モードを設定する。単独モードを設定した制御部71は,第1巻取ボタン95が押下され続けていると判断すると,巻取動作命令および回転停止命令を生成し,巻取動作命令を第1ウィンチ装置31A宛てに,回転停止命令を第2ウィンチ装置31B宛てに送信させる。なお,運搬用ロープ10を逆方向に走行させて(第2ウィンチ装置31Bを巻取り用として駆動し,第1ウィンチ装置31Aにおいて巻胴52Aにブレーキを掛けておく)運搬用ロープ10を緊張させる場合,作業員は単独モードボタン93および第2巻取ボタン96を押す。単独モードを設定した制御部71は,第2巻取ボタン96が押下され続けたと判断すると,巻取動作命令および回転停止命令を生成し,回転停止命令を第1ウィンチ装置31A宛てに,巻取動作命令を第2ウィンチ装置31B宛てに送信させる。
【0072】
吊籠8から被運搬物を降ろす等のために運搬用ロープ10を順方向に走行させて(第2ウィンチ装置31Bを繰出し用として駆動し,第1ウィンチ装置31Aにおいて巻胴52Aにブレーキを掛けておく)張設された運搬用ロープ10を緩める場合,作業員は単独モードボタン93および第2繰出しボタン98を押す。単独モードボタン93が押下されたと判断した制御部71は,単独モードを設定する。単独モードを設定した制御部71は,第2繰出しボタン98が押下され続けていると判断すると弛緩繰出動作命令および回転停止命令を生成し,回転停止命令を第1ウィンチ装置31A宛てに,弛緩繰出動作命令を第2ウィンチ装置31B宛てに送信させる。なお,運搬用ロープ10を逆方向に走行させて(第1ウィンチ装置31Aを繰出し用として駆動し,第2ウィンチ装置31Bにおいて巻胴52Bにブレーキを掛けておく)張設された運搬用ロープ10を緩める場合,作業員は,単独モードボタン93および第1繰出しボタン97を押す。単独モードを設定した制御部71は,第1繰出しボタン97が押下され続けたと判断すると,弛緩繰出動作命令および回転停止命令を生成し,弛緩繰出動作命令を第1ウィンチ装置31A宛てに,回転停止命令を第2ウィンチ装置31Bに送信させる。
【0073】
制御部71はまた,第1巻取ボタン95,第2巻取ボタン96,第1繰出しボタン97または第2繰出しボタン98が押下され続けていないと判断すると,回転停止命令を生成する。制御部71は,生成した回転停止命令を第1ウィンチ装置31Aおよび第2ウィンチ装置31Bに送信させる。
【0074】
図11,図12を参照して運搬装置1の第2使用例について説明する。図11および図12において,紙面の左部が斜面の上部,紙面の右部が斜面の下部である(以下,第3使用例を示す図13および第4使用例を示す図14においても同様である)。第2使用例は落石等を防護する落石防護用ネットを山の急斜面に張る工程で運搬装置1を利用するものである。斜面上部に間隔をあけて支柱101a,101bおよび支柱101c,101dを定着し,これらの支柱101a,101b間および支柱101c,101d間にそれぞれ主索102 を張設する。この主索102 にネット103 の上端部を取付ける。また,複数本の縦ロープ104 の一端部を主索102 にそれぞれ間隔をあけて取付けて吊下げ,ネット103 と結合させる(ネット103 の両側には必ずそれぞれ,縦ロープ104 を設置する)。さらに,複数本の横ロープ105 を縦ロープ104 とほぼ直交するようにそれぞれ間隔をあけて張り,交叉した縦ロープ104 に締結するとともにネット103 に結合し,さらに横ロープ105 の両端部をそれぞれネット103 の両端に設置された縦ロープ104 に固定,またはネット103 の外側の位置で斜面に固定する(ネット103 の下端には必ず横ロープ105 を取付け,その横ロープ105 の両端をネット103 の外側の位置で斜面に固定する。この横ロープ105 に,複数本の縦ロープ104 の下端部を固定する。)。運搬装置1は,これらの縦ロープ104 および横ロープ105 をその張設に適した位置に運搬するために用いられる。図11に縦ロープ104 を運搬する様子を,図12に横ロープ105 を運搬する様子を示す。
【0075】
図11の運搬装置1において,落石防護用ネット103 を張設する範囲を囲むようにその外側を運搬用ロープ10が走行するように,滑車装置2,3,4,5,ロープ駆動装置30が設置される。滑車装置2,3は,縦ロープ104 の運搬区間より長い区間の両端に配置されている。リール装置104A は斜面上部に固定され,運搬される縦ロープ104 が,このリール装置104A のリールに巻回されている。滑車装置2付近において,作業員(以下,取付作業員という)は,運搬用ロープ10を静止させておいて,リール装置104A のリールから縦ロープ104 を引出し,引出した縦ロープ104 の一端部を,ロープ取付具11Aを用いて運搬用ロープ10に取付ける。施工作業場所(運搬された縦ロープ104 を主索102 に取付ける位置)において,施工員は,遠隔操作装置9を用いて,運搬用ロープ10を順走行させて縦ロープ104 の一端部を施工場所まで移動させ,運搬用ロープ10を静止させる。施工員は,運搬された縦ロープ104 を取外し,取外した縦ロープ104 を主索102 に取付けるとともに落石防護用ネット103 に取付ける。上記を繰返して縦ロープ104 を順次張っていく。
【0076】
図12においては,横ロープ105 の取付けが進み,保持ロープ21a,21bを長くして,滑車装置2,3の設置位置が変更されている。リール装置105A が斜面下部に固定されており,運搬される横ロープ105 がリール装置105A のリールに巻回されている。また,斜面には,運搬用ロープ10の走行経路の外側においてガイド滑車106 が固定されている。リール装置105A のリールから引出された横ロープ105 はガイド滑車106 に掛けられている。取付作業員は,運搬用ロープ10を静止させておいて,滑車装置2付近で,横ロープ105 の一端部を,ロープ取付具11Aを用いて,運搬用ロープ10に取付ける。施工員は,運搬用ロープ10を順方向に走行させて落石防護用ネット103 上を横切って運搬し,落石防護用ネット103 の図12において右側まで運搬する。これにより,横ロープ105 は運搬用ロープ10の走行経路(滑車装置2,3間)に沿うように配置される。横ロープ105 の設置場所(高さ)に応じて,保持ロープ21a,21bの長さを調整して運搬用ロープ10の走行経路を順次下方に向って変更すればよい。
【0077】
図13を参照して,第3使用例について説明する。山の斜面の崩壊等を防止する斜面安定化装置は次のようにして山の斜面に設置される。まず,斜面安定化装置を設置する範囲を囲むように,左右両側において縦方向に間隔をあけて,また上下方向において横方向に間隔をあけてアンカー111 を斜面に定着する。上下の対応するアンカー111 間に縦方向に複数本の縦ロープ114aを,左右に対応するアンカー111 間に横方向に複数本の横ロープ115aを張設し,それらの両端をアンカー111 に結びつける。また,最上部の横ロープ115aと最下部の横ロープ115aとの間に,縦ロープ114aに平行に縦補助ロープ114bを架設する。さらに,最左端の縦ロープ114aと,最右端の縦ロープ114aとの間に,横ロープ115aに平行に横補助ロープ115bを架設する。これらの縦ロープ114a,横ロープ115a,縦補助ロープ114bおよび横補助ロープ115bをそれぞれの交叉した箇所で互いに締結する。
【0078】
図13では,既に,複数本の縦ロープ114aと縦補助ロープ114bが,運搬装置1によって運搬されて張設されている(縦補助ロープ114bの下端はまだ横ロープ115aに結付けられていない)。また,斜面上部において横ロープ115aおよび横補助ロープ115bが運搬装置1によって運搬されて張設されている。
【0079】
図13の運搬装置1において,斜面安定化装置を設置する範囲を囲むようにその外側を運搬用ロープ10が走行するように,滑車装置2,3,4,5,ロープ駆動装置30が設置される。横ロープ115aおよび横補助ロープ115bの取付けが進み,保持ロープ21a,21bを長くして,滑車装置2,3の設置位置が変更されている。リール装置115Abが斜面に固定されており,運搬される横補助ロープ115b が,リール装置115Abのリールに巻回されている。また,斜面には,運搬用ロープ10の走行経路の外側においてガイド滑車116 が固定されている。リール装置115Abのリールから引出された横補助ロープ115bはガイド滑車116 に掛けられている。取付作業員は,滑車装置2付近において,運搬用ロープ10を静止させておいて,横補助ロープ115bの一端部を,ロープ取付具11Bを用いて,運搬用ロープ10に取付ける。施工員は,施工作業場所(運搬された横補助ロープ115bを最右端の縦ロープ114aに締結する位置)において,運搬用ロープ10を順方向に走行させて,最右端の縦ロープ114aまで横補助ロープ115bを運搬する。これにより,横補助ロープ115bは運搬用ロープ10の走行経路(滑車装置2,3間)に沿うように配置される。この後,横補助ロープ115bを縦ロープ114a,縦補助ロープ114bにそれぞれ締結する。横ロープ115a,横補助ロープ115bの設置場所(高さ)に応じて,保持ロープ21a,21bの長さを調整して運搬用ロープ10の走行経路を順次下方に向って変更すればよい。
【0080】
運搬装置1において,運搬用ロープ10は張設されるので,保持ロープ21a,21bの長さを調整して立木12から滑車装置2までの距離,立木13から滑車装置3までの距離を長くすると,滑車装置2,3間の距離は縮り,被運搬物の運搬が適当にできなくなる場合には,滑車装置2,3を掛ける立木を変更すればよい,または滑車装置2,3を設置する場所の付近にアンカー(支柱)を立てればよい。
【0081】
図14を参照して,運搬装置1の第4使用例について説明する。第4使用例は,落石防護用柵を斜面下部に設置する場合に運搬装置1を利用するものである。斜面下部の,地中内に基礎120 を定着し,その両端部上に端末支柱122a,122bを立設し,端末支柱122a,122b間には複数本の中間支柱123 を間隔をあけて立設する。さらに,複数本の防護用ロープ121 を上下方向に一定の間隔をあけて互いに平行に端末支柱122a,122b間に張設する。運搬装置1は,この防護用ロープ121 を運搬するために用いられる。図14に防護用ロープ121 を運搬する様子を示す。
【0082】
落石防護用柵の端末支柱122a,122bにはそれぞれ巻付ロープ129 が巻付け固定され,これにループが取付けられる。斜面に固定された調整用リール装置26a,26bからそれぞれ引出された保持ロープ21a,21bが上記ループに通され,その端部に滑車装置2,3がそれぞれ取付けられている。滑車装置2,3は,運搬される防護用ロープ121 が張設される高さに応じた位置に配置されている。滑車装置4,滑車装置5およびロープ駆動装置30は基礎120 から少し離れた位置に設置される。リール装置121A が,斜面に固定され,このリール装置121A のリールに防護用ロープ121 が巻回されている。また,端末支柱122aにガイド滑車124 が設置され,防護用ロープ121 がリール装置121A のリールから引出されてガイド滑車124 に掛けられている。
【0083】
図14においては,防護用ロープ121 の張設が進み,保持ロープ21a,21bを長くして,滑車装置2,3の設置位置が変更されている。作業員は,運搬用ロープ10を静止させておいて,端末支柱122a付近で,防護用ロープ121 の一端部を,ロープ取付具11Cを用いて,運搬用ロープ10に取付ける。作業員は,運搬用ロープ10を順方向に走行させて端末支柱122bまで防護用ロープ121 を運搬する。これにより,防護用ロープ121 は運搬用ロープ10の走行経路(滑車装置2,3間)に沿うように配置される。この後,防護用ロープ121 が端末支柱122a,122bおよび中間支柱123 に取付けられる。防護用ロープ121 の設置場所(高さ)に応じて,保持ロープ21a,21bの長さを調整して運搬用ロープ10の走行経路を順次下方に向って変更すればよい。
【0084】
図15,図16を参照して第2実施例の運搬装置1Aについて説明する。運搬装置1Aは,削孔装置を運搬するとともに削孔装置を設置するために使用されるものである。削孔装置を用いた削孔作業は,斜面上において,縦,横に一定の間隔をあけた場所で行われる。運搬装置1Aについて,第1実施例の運搬装置1の構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付し,説明を省略する。
【0085】
削孔作業を行うべき範囲の外側の位置,たとえば削孔作業を行うべき範囲を方形とした場合にその四隅の外方に滑車装置4,滑車装置6,滑車装置5およびロープ駆動装置30が配置される。第1実施例の運搬装置1に比べると滑車装置6が追加されている。削孔作業を行うべき範囲の下側に滑車装置2が,上側に滑車装置3が配置される。運搬用ロープ10は,ロープ駆動装置30から,滑車装置4を経て滑車装置2,滑車装置3に掛けられ,さらに滑車装置6,滑車装置5を経て,ロープ駆動装置30に戻る。これによって,滑車装置2と滑車装置3とが上下の関係になり,これらの滑車装置2と滑車装置3との間を運搬用ロープ10が上下方向に走行する。滑車装置2と滑車装置3の間において,運搬用ロープ10に取付けられた削孔装置取付具11Dによって削孔装置130 が運搬用ロープ10に取付けられる。滑車装置3は,保持ロープ21bと保持ロープ21cとに保持されている。保持ロープ21cは,調整用リール装置26cから引出されて立木13Aに掛けられている。
【0086】
削孔装置130 は,ロッド等を打込む打込機131 およびガイド支柱132 を有し,打込機131 がガイド支柱132 に沿って移動するタイプのものである。ガイド支柱132 の上端には掛け部132aが設けられ,この掛け部132aを削孔装置取付具11Dに連結することにより削孔装置130 が運搬用ロープ10に取付けられる。
【0087】
削孔作業を行うべき場所において,遠隔操作装置9を用いて,運搬用ロープ10を逆方向走行させて,直前に削孔作業の完了した場所から次に削孔作業を行うべき場所まで削孔装置130 を移動させ,運搬用ロープ10を静止させる(図16で破線で示す)。張設された運搬用ロープ10を緩めて,削孔装置130 を降下させる(図16で鎖線で示す)。降下された削孔装置130 のガイド支柱132 の下端を斜面上の削孔する箇所に当てる(下端部が斜面の地中に入ってもよい)。ガイド支柱132 の掛け部132aに2本の調整用ロープ140 の一端部を結付ける(もちろん,あらかじめ結付けられていてもよい)。その後,2本の調整用ロープ140 を作業員がそれぞれ水平に互いに反対方向に引張るとともに,遠隔操作装置9を用いて,運搬用ロープ10を逆方向走行させて削孔装置130 が斜面に垂直に設置されるように設置角度の調整を行う。設置角度の調整を行った後,調整用ロープ140 の他端部を杭141aで斜面に固定する。さらに,運搬用ロープ10の削孔装置130 が取付けられた部分から運搬用ロープ10の走行方向の前方および後方に相当する部分を斜面まで下ろして杭141bを用いて固定する。この状態で削孔装置130 を運転して削孔作業を行うことができる。
【0088】
削孔作業の終了後,運搬用ロープ10の斜面に固定した部分および調整用ロープ140 の他端部を斜面から外し,遠隔操作装置9を用いて運搬用ロープ10を緊張させて削孔装置130 を吊上げて,運搬用ロープ10を逆方向走行させれば,次の削孔作業場所に削孔装置130 を運搬できる。削孔装置130 を用いた削孔作業が縦一列分終了したのちは,滑車装置2,滑車装置3の位置を横方向にずらして,次の縦一列分の削孔作業に移ることができる。削孔装置130 を運搬用ロープ10から取外すことがないため,削孔装置130 の設置を安全に行うことができる。
【0089】
図17を参照して,第3実施例の運搬装置1Bについて説明する。運搬装置1Bは,斜面上方で落石を受止める落石防護用柵の資材を運搬するものである。ここでは,巨大な岩石Gがあるため道路M脇の保管場所S3から斜面上方の作業場所W3まで運搬用ロープ10を張ることが困難であり,岩石Gを避けるため保管場所S3を変えることも沢Tがあるので困難である場合の実施例を示す。運搬装置1Bについては,第1実施例の運搬装置1の構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付し,説明を省略する。
【0090】
岩石Gを避けて運搬用ロープ10を,作業場所W3付近の滑車装置3まで張れる位置(沢Tを挟んで保管場所S3と反対側)に滑車装置2を配置する。保管場所S3の付近に滑車装置5を配置する。さらに,滑車装置4の位置から滑車装置3の位置に直接に運搬用ロープ10を張れないので,それらの間の適当な場所に滑車装置7を設ける。運搬用ロープ10は,ロープ駆動装置30(第1ウィンチ装置31A)から,滑車装置5を経て滑車装置2に向い(ここで,沢Tを渡る),岩石Gを避けるように滑車装置2から滑車装置3に向い,さらに滑車装置7,滑車装置4を経てロープ駆動装置30(第2ウィンチ装置31B)に戻るように張設される。
【0091】
滑車装置3は,作業場所W3付近に生えている立木13に連結ロープ28dによって連結されている。滑車装置7は,連結ロープ28eによって,斜面の上部の立木17に取付けられている。
【0092】
吊籠8は滑車装置2と滑車装置3との間の滑車装置2に近い位置に運搬用ロープ10に取付けられている。運搬装置2付近において,作業員(以下,調整作業員という)は,調整用リール装置26aから保持ロープ21aを引出すとともに,保持ロープ21aを引出すことによりたるんだ運搬用ロープ10を第1ウィンチ装置31Aを駆動して緊張させる。これにより,滑車装置2の配置位置が変更され,滑車装置2とともに吊籠8が沢T上を渡って保管場所S3に近づく。保管場所S3において,運搬用ロープ10を静止させておいて,積込作業員が吊籠8に資材を載せる。その後,調整作業員は,調整用リール装置26aによって保持ロープ21aを巻取るとともに緊張させた運搬用ロープ10を第2ウィンチ装置31Bを駆動して運搬用ロープ10を緩める。これにより,滑車装置2の配置位置を変更される前の配置位置に戻すことができる。作業場所W3では,施工員が,第1ウィンチ装置31Aから運搬用ロープ10を繰出し,第2ウィンチ装置31Bで巻取ることによって運搬用ロープ10を逆方向に走行させ,吊籠8を作業場所W3まで移動させ,運搬用ロープ10を静止させる。施工員は,吊籠8から資材を取出し,取出した資材を用いて落石防護用柵の設置作業を行う。
【0093】
運搬装置1,1Aおよび1Bは,一本の運搬用ロープ10を走行させれば,被運搬物を運搬できる。また,保持ロープ21a,21b,21cの長さを調整して滑車装置2,3の配置位置を変更させれば,被運搬物を運搬するのに適した経路を運搬用ロープ10が走行できる。
【0094】
ロープ駆動装置30は,第1ウィンチ装置と第2ウィンチ装置を上下に配置するのではなく,並列に設置してもよい。また,第1ウィンチ装置および第2ウィンチ装置は,運搬用ロープが被運搬物を運搬する区間を走行するように,運搬用ロープの繰出し側および巻取り側にそれぞれ別個に配置してもよい。
【0095】
第1,第2および第3実施例において,運搬装置1,1Aおよび1Bは,丘や山の斜面ではなく,平坦は場所に設置することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】第1実施例の運搬装置の全体的な配置構成を示す全体図である。
【図2】滑車装置を示す斜視図である。
【図3】ロープ駆動装置を示す正面図である。
【図4】ロープ駆動装置を示す右側面図である。
【図5】第1枠体内の内部構造の平面図である。
【図6】第2枠体の平面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】ロープ駆動制御装置の電気的構成を示すブロックである。
【図9】遠隔操作装置の電気的構成を示すブロックである。
【図10】遠隔操作装置の操作面を示す正面図である。
【図11】第1実施例の運搬装置の第2使用例を示すもので,運搬装置によって落石防護用ネットの縦ロープを運搬する様子を示す。
【図12】第1実施例の運搬装置の第2使用例を示すもので,運搬装置によって落石防護用ネットの横ロープを運搬する様子を示す。
【図13】第1実施例の運搬装置の第3使用例を示すもので,運搬装置によって斜面安定化装置の横補助ロープを運搬する様子を示す。
【図14】第1実施例の運搬装置の第4使用例を示すもので,運搬装置によって落石防護用柵の防護用ロープを運搬する様子を示す。
【図15】第2実施例の運搬装置の全体的な配置構成を示す全体図である。
【図16】削孔装置を斜面に設置する様子を示す側面図である。
【図17】第3実施例の運搬装置の全体的な配置構成を示す全体図である。
【符号の説明】
【0097】
1,1A,1B 運搬装置
2,3,4,5,6,7 滑車装置
10 運搬用ロープ
21a,21b,21c 保持ロープ
30 ロープ駆動装置
31A 第1ウィンチ装置
31B 第2ウィンチ装置
33 第1枠体
34 第2枠体
130 削孔装置
400 軸受装置
【技術分野】
【0001】
この発明は,2点間に張られた運搬用ロープを走らせることにより運搬用ロープによって被運搬物を運ぶ運搬装置および運搬方法,この運搬装置および運搬方法で使用されるロープ走行装置ならびにこの運搬装置を利用した削孔装置の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
資材等を運搬するケーブル・クレーンがある。このケーブル・クレーンでは,運搬用トロリーが移動自在に主索に設けられている。主索の一端は,両端がそれぞれ基礎に固定された軌索に移動自在に設けられた走行トロリーに固定されている。主索の他端は緊張装置を介して基礎に固定されている(例えば,特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−151467号公報
【0003】
このケーブル・クレーンでは,運搬用トロリーが所望の経路を走行するように走行トロリーを位置決めした後,運搬用トロリーを走行させて資材等を運搬する。すなわち,運搬用トロリーおよび主索に加えて,走行用トロリーおよびこの走行トロリーが移動自在に設けられる軌索が必要である。
【発明の開示】
【0004】
この発明は,一本の運搬用ロープを用いた運搬装置および運搬方法を提供することを目的とする。
【0005】
この発明は,上記運搬装置および方法で使用するロープ走行装置を提供することを目的とする。
【0006】
この発明はまた,上記の運搬装置を利用した削孔装置の設置方法を提供することを目的とする。
【0007】
この発明による運搬装置は,回転自在に保持される少なくとも2つの滑車装置が,被運搬物を運搬する区間の両端に相当する位置に配置され,被運搬物を運ぶ一本の運搬用ロープが,繰出しウィンチ装置から上記少なくとも2つの滑車装置を経て巻取りウィンチ装置まで張設され,上記少なくとも2つの滑車装置のうち少なくとも1つの滑車装置が,位置調整自在に保持されているものである。
【0008】
この発明による運搬方法は,被運搬物を運搬する区間の両端に相当する位置に少なくとも2つの滑車装置を回転自在に保持した状態で配置し,少なくとも1つの滑車装置の位置を調整可能とし,運搬用ロープを繰出しウィンチ装置から上記少なくとも2つの滑車装置を経て巻取りウィンチ装置まで張設し,上記張設された運搬用ロープを,繰出しウィンチ装置から繰出し,巻取りウィンチ装置によって巻取るものである。
【0009】
ウィンチ装置は,滑車装置,これらに掛けられる運搬用ロープの邪魔にならない場所に配置される。必要に応じて,第3,第4の滑車装置等を,上記滑車装置と,繰出しウィンチ装置,巻取りウィンチ装置との間に配置し,運搬用ロープをこれらの滑車装置に掛けるようにしてもよい。
【0010】
被運搬物を運搬する区間(ロープ走行区間)とは,被運搬物を運搬する始点から終点までの区間を意味し,相当する位置とは原則的には上記始点または終点の近傍であるが,やや離れていてもよい。
【0011】
被運搬物は,資材,削孔装置等の材料,機器(器具)等を含む。被運搬物は,その一部を運搬用ロープに直接に取付けてもよいし,運搬用ロープに取付けられたホルダー(吊籠等)に積載または取付けてもよい。もちろん,運搬用ロープに複数の被運搬物またはホルダーを取付けてもよい。運搬用ロープは,ワイヤ,ワイヤロープ等を含む。
【0012】
滑車装置を位置調整自在に保持するための具体的手段にはさまざまな態様がある。最も簡便には,一端が固定部材に取付けられた保持ロープによって滑車装置を回転自在に保持することである。この保持ロープの長さを調整することにより滑車装置の位置を調整することができる。保持ロープは,ワイヤ,ワイヤロープ,チェーン等を含む。固定部材は,地面に定着されたもの,例えば,地面に打込んだアンカー等を含む。もちろん,固定部材として地面に生えている立木を利用してもよい。一つの滑車装置を,それぞれ別の固定部材に取付けられた複数本の保持ロープによって保持してもよい。
【0013】
この発明によると,少なくとも2つの滑車装置間に張設された一本の運搬用ロープを,繰出しウィンチ装置から繰出し,巻取りウィンチ装置によって巻取ることにより走行させれば,上記の区間において,運搬用ロープによって被運搬物を運搬できる。また,保持ロープの長さを調整し,少なくとも1つの滑車装置の配置位置を変更させれば,運搬用ロープの走行経路を変更できる。
【0014】
この発明によるロープ走行装置は,枠体内に,少なくとも回転自在に支持されたロープ巻回用巻胴と,ロープ巻回用巻胴を回転駆動するモータとを備えた第1のウィンチ装置,枠体内に少なくともロープ巻回用巻胴と,ロープ巻回用巻胴を回転駆動するモータとを備えた第2のウィンチ装置,および上記第1のウィンチ装置を,第2のウィンチ装置の枠体の上にその上面に平行な面内で回転自在に保持する軸受装置を備えている。軸受装置は,転がり軸受等を含む。これにより,一箇所に繰出しウィンチ装置および巻取りウィンチ装置を設置することができる。
【0015】
この発明によると,狭い場所でも2台のウィンチ装置を設置できる。第1のウィンチ装置が回転自在に第2のウィンチ装置上に載置されているので,第1のウィンチ装置の方向の設定が容易である。
【0016】
運搬装置を利用した削孔装置の設置方法は,削孔装置を運搬するロープ走行区間の両端に相当する位置に少なくとも2つの滑車装置を,回転自在に保持した状態で配置し,少なくとも1つの滑車装置の位置を調整可能とし,運搬用ロープを,繰出しウィンチ装置から上記少なくとも2つの滑車装置を経て,巻取りウィンチ装置まで張設し,上記ロープ走行区間において上記運搬用ロープに削孔装置の上部を取付け,上記運搬用ロープを,繰出しウィンチ装置から繰出し,巻取りウィンチ装置によって巻取ることにより,上記削孔装置を所定箇所まで運搬し,上記運搬された削孔装置の下端部を削孔すべき箇所に当て,上記削孔装置の地面に対する設置角度を調整し,上記削孔装置が調整された設置角度を保つように上記運搬用ロープの少なくとも一部分を地面に固定するものである。
【0017】
運搬装置を利用した削孔装置の設置方法によると,一本の運搬用ロープによって運搬された削孔装置を運搬用ロープから取外すことなく設置できる。削孔作業を行う場合も削孔装置を運搬用ロープから取外す必要はない。また,削孔作業の終了後,運搬用ロープを走行させれば別の箇所に削孔装置を運搬することができ,そこで削孔作業を行うことができる。必要であれば,保持ロープを長さ調整して滑車装置を移動させて運搬用ロープの走行経路を変更できる。
【実施例】
【0018】
図1において,運搬装置1は山または丘の一部の斜面に設置されている。図1において,紙面の上部が斜面の上部,紙面の下部が斜面の下部である。運搬装置1は,保管場所S1(またはS2)から作業場所W1(またはW2)まで被運搬物を運搬するものである。保管場所S1(S2)と作業場所W1(W2)はいずれも斜面上部の互いに離れた場所にある。
【0019】
被運搬物を運搬するために保管場所S1(S2)に設けられた滑車装置2と作業場所W1(W2)に設けられた滑車装置3との間に運搬用ロープ10が張られている。より詳しくは,斜面の下部にはロープ駆動装置30が設けられ,運搬用ロープ10はロープ駆動装置30の下部の第2ウィンチ装置31Bから繰出され(引出され),斜面下部の滑車装置4を経て斜面上部の滑車装置2,3に掛けられ,さらに斜面下部の滑車装置5に延ばされ,ロープ駆動装置30の上部の第1ウィンチ装置31Aに至る(巻取られる)ように張設されている。
【0020】
この実施例では,滑車装置2,3,4および5はいずれも斜面に生えて立っている立木12,13,14および15を利用して設けられる。もちろん,立木12,13,14および15に代えて,斜面に支柱(アンカー),その他の固定物を立設(設置)して,この固定物に滑車装置2,3,4および5を取付けてもよい。
【0021】
滑車装置2の取付けについて説明すると,立木12の幹には,支持ベルト20が巻付けられている。この支持ベルト20に金属製の,たとえばU字形に屈曲した吊具が取付けられている。吊具には,保持滑車22を回転自在に支持する軸の両端が取付られる。この保持滑車22に保持ロープ21aが掛けられる。保持ロープ21aの一端部は,調整用リール装置26aのリールに巻付けられており,他端部に滑車装置2が取付られている。リール装置26aは斜面に固定されている。リール装置26aのリールから引出す(または巻取る)保持ロープ21aの長さを調整することにより立木12から滑車装置2までの距離(保持ロープ21aの長さ)が調整される。すなわち,滑車装置2は,長さ調整可能な保持ロープ21aに保持されることになる。リール装置26aは,保持ロープ21aの長さを調整したのち保持ロープ21aの引出しを阻止するストッパを備えている。
【0022】
滑車装置2は,図2に示すように,支持板25と,この支持板25の一面に軸によりそれぞれ回転自在に取付けられたフィンガー滑車23およびガード回転体24とから構成されている。フィンガー滑車23は,円盤を有し,この円盤の一面の周縁から複数本のフィンガー23aが等角度間隔で放射状に斜め外方(円盤の上記一面に対して斜めで,かつ支持板25の上記一面から離れる方向)に延びている。また円盤の周面にはガイド溝23bが形成されている。このガイド溝23bには運搬用ロープ10が掛けられる。ガード回転体24の一端面からも複数本のフィンガー24aが等角度間隔で放射状に斜め外方に延びている。フィンガー滑車23およびガード回転体24は,フィンガー滑車23が回転したときに,フィンガー滑車23のフィンガー23aの間に,ガード回転体24のフィンガー24aが順次入り,これらのフィンガー23a,24aによりフィンガー滑車23の回転がガード回転体24に伝えられるように,少しの間隙をあけて配置されている。ガイド溝23bに掛けられた運搬用ロープ10はフィンガー滑車23とガード回転体24の間の間隙を通っており,これらのフィンガー23a,24aにより運搬用ロープ10がフィンガー滑車23から外れるのが防止される。支持板25の一端部には,取手25aが設けられている。この取手25aに保持ロープ21aの端部がループを形成して締結される。滑車装置3,4および5は滑車装置2と同じ構成であるから説明を省略する。
【0023】
滑車装置3の取付けも滑車装置2の取付けと同じである。簡単に説明すると,支持ベルト20を用いて立木13に回転自在に取付けられた保持滑車22に,斜面に固定された調整用リール装置26bから引出された保持ロープ21bが掛けられ,保持ロープ21bの端部には滑車装置3が取付けられている。
【0024】
滑車装置4,5は,立木14,15の幹に巻付けられた支持ベルト20に結びつけられた連結ロープ28a,28bの一端が滑車装置4,5の取手に結びつけられることにより,立木14,15に取付けられている。これらの滑車装置4,5を取付ける連結ロープ28a,28bは長さ調整自在ではない。もちろん,連結ロープ28a,28bを保持ロープ21a,21bと同じように長さ調整自在としてもよい。
【0025】
滑車装置2と滑車装置3との間(すなわち,被運搬物を運搬する区間の両端に相当する位置に配置された2つの滑車の間)において運搬用ロープ10の適所には,吊籠取付具11によって吊籠8が固定されている。
【0026】
ロープ駆動装置30の付近には,ロープ駆動装置30に動作電力を供給する電源装置(発電機)80と,ロープ駆動装置30の駆動を制御するロープ駆動制御装置70とが配置されている。ロープ駆動制御装置70は後述するように遠隔操作装置9(図8も参照)からの指令に応答してロープ駆動装置30を制御する。
【0027】
ロープ駆動装置30の第2ウィンチ装置31Bから運搬用ロープ10を繰出し,第1ウィンチ装置31Aで巻取ることによって一本の運搬用ロープ10を保管場所S1の滑車装置2から作業場所W1の滑車装置3に向けて走行させ(この方向の運搬用ロープ10の走行を,以下順方向走行という),運搬用ロープ10に取付けた吊籠8を移動させることができる。すなわち,吊籠8に載せた被運搬物を保管場所S1から作業場所W1に運搬することができる。
【0028】
作業場所を作業場所W1からその下方の作業場所W2に変更し,保管場所S1をその下方の保管場所S2に変更したときには,調整用リール装置26a,26bからそれぞれ保持ロープ21a,21bを引出して,立木12,13から滑車装置2,3までの保持ロープ21a,21bの長さを調整すれば,滑車装置2,3の配置位置がそれぞれ保管場所S2の付近,作業場所W2の付近に変更される。このようにして,保持ロープ21a,21bの長さを調整することにより,保管場所または作業場所の少なくともいずれか一方の位置の変更,被運搬物の搬送経路の変更に対処することが可能となる。
【0029】
後述するように第1ウィンチ装置31Aは動力伝達装置55Aを,第2ウィンチ装置31Bは動力伝達装置55B(図3,4参照)をそれぞれ有している。運搬用ロープ10を静止状態に保つ場合,第1ウィンチ装置31Aにおいてその動力伝達装置55Aによって,運搬用ロープ10の自重,吊籠8に載せられた被運搬物等の重量の力により運搬用ロープ10が逆方向に繰出されないように阻止し,第2ウィンチ装置31Bにおいてその動力伝達装置55Bによって,上記重量による力により運搬用ロープ10が繰出されるのを阻止する。
【0030】
運搬装置1の設置方法について説明すると,被運搬物を運搬する区間の両端に相当する位置に当たる保管場所S1および作業場所W1にそれぞれ滑車装置2,3を配置する。滑車装置2を保管場所S1付近の立木12の保持滑車22に掛けた保持ロープ21aに保持させる。また,滑車装置3を作業場所W1付近の立木13の保持滑車22に掛けた保持ロープ21bに保持させる。さらに,滑車装置4,5を斜面下部の立木14,15に連結ロープ28a,28bによりそれぞれ取付ける。斜面下部に設置したロープ駆動装置30の第2ウィンチ装置31Bから運搬用ロープ10を繰出し,滑車装置4,滑車装置2,滑車装置3,滑車装置5の順に掛け,第1ウィンチ装置31Aによって巻取る。必要に応じて第2ウィンチ装置31Bからの繰出しを停止し,第1ウィンチ装置31Aによって巻取ることにより,運搬用ロープ10を緊張させる。滑車装置2と滑車装置3との間において運搬用ロープ10に吊籠取付具11を用いて吊籠8を取付ける。
【0031】
運搬装置1を使用して被運搬物を保管場所S1から作業場所W1に運搬する場合には,運搬用ロープ10を緊張した状態で静止させておいて,保管場所S1において,作業員(以下,積込作業員という)が,被運搬物を吊籠8に積込む。もちろん,運搬用ロープ10を緩めて降下させた吊籠8に被運搬物を積込んでもよい。
【0032】
作業場所W1おいて,作業員(以下,施工員という)は,手に持った遠隔操作装置9を用いて,運搬用ロープ10を順方向走行させて吊籠8を保管場所S1から作業場所W1まで移動させ,運搬用ロープ10を静止させる。施工員は吊籠8から被運搬物を取出し,取出した被運搬物を用いて作業を行う。このとき,運搬用ロープ10を緩めて吊籠8を降下させてもよい。この後,遠隔操作装置9を用いて,運搬用ロープ10を順方向とは逆方向に走行(以下,逆方向走行という)させて,吊籠8を保管場所S1に戻しておけば,再度,保管場所S1に保管された被運搬物を作業場所W1に運搬できる。
【0033】
作業場所を作業場所W1から作業場所W2に,保管場所を保管場所S1から保管場所S2にそれぞれ変更する場合,積込作業員は調整用リール装置26aから保持ロープ21aを引出して立木12から滑車装置2までの保持ロープ21aの長さを長くして滑車装置2を下方に移動させる。施工員は調整用リール装置26bから保持ロープ21bを引出して立木13から滑車装置3までの保持ロープ21bの長さを長くして滑車装置3を下方に移動させる。このように,滑車装置2,3の配置位置を変更して,運搬用ロープ10の走行経路を変更することができる。
【0034】
ロープ駆動装置30の具体的構成が図3,図4および図5に示されている。このロープ駆動装置30は,斜面の,好ましくはほぼ水平な場所に固定(設置)される下部の第2ウィンチ装置31Bと,第2ウィンチ装置31Bの上に,第2ウィンチ装置31Bの上面(上板39)に平行な面内で回転自在に載置された第1ウィンチ装置31Aとから構成される。ロープ駆動装置30は,図3では第1ウィンチ装置31Aの正面と第2ウィンチ装置31Bの右側面とが現れ,図4では第1ウィンチ装置31Aの右側面と第2ウィンチ装置31Bの後面とが現れた状態で図示されている。第1ウィンチ装置31A,第2ウィンチ装置31Bはそれぞれ,巻胴,モータ等を内部に収めた第1枠体33,第2枠体34を有している。
【0035】
第1枠体33は,方形の平行に配置された下板36と上板37とを含み,下板36と上板37とがそれらの四隅にそれぞれ立てられた支柱35によって固定されている。第2枠体34も同じように,方形の平行に配置された下板38と上板39とを含み,下板38と上板39とがそれらの四隅にそれぞれ立てられた支柱35によって固定されている。これらの第1枠体33および第2枠体34の内部構造は,全く同じであるから同じ構成要素には同じ符号を付し,第1ウィンチ装置31Aと第2ウィンチ装置31Bとでは動作が異なることがあるので,上記符号にAまたはB(Aは第1ウィンチ装置31Aの構成要素であることを,Bは第2ウィンチ装置31Bの構成要素であることを示す)の添字を用いて区別する。
【0036】
まず,第1ウィンチ装置31Aについて説明する。運搬用ロープ10を保管場所S1(S2)から作業場所W1(W2)に走行させる場合,第1ウィンチ装置31Aは巻取り用として用いられる。第1ウィンチ装置31Aの第1枠体33の内部には,基台50A,巻胴52Aおよびその回転軸53A,モータ54A,動力伝達装置55A,ウィンチ制御装置56A,ロープガイド装置57A,張力調整装置59Aおよび引出防止装置60Aが収められ,かつ固定されている。以下の説明において,第1ウィンチ装置31Aの構成(特に,動力伝達装置55Aおよびロープガイド装置57A)と動作については巻取り動作を中心に説明する。
【0037】
運搬用ロープ10を巻取る場合,モータ54Aが,運搬用ロープ10を巻取るために巻取り方向(以下,正方向という)に回転し,正方向の回転動力を動力伝達装置55Aを介して巻胴52Aに与える。
【0038】
巻胴52Aは,基台50A上に互いに間隔をあけて立設された支持板51Aa,51Abの間に配置されている。巻胴52Aが固定されたその回転軸53Aの両端部は,支持板51Aa,51Abにそれぞれ回転自在に支持され,支持板51Aa,51Abからそれぞれ外方に突出している。回転軸53Aの支持板51Aaから突出した部分は,動力伝達装置55A内の動力伝達機構の出力側に連結されている。また,動力伝達装置55Aの動力伝達機構の入力側にはそのハウジングに固定されたモータ54Aが連結されている。
【0039】
基台50A上に固定された動力伝達装置55Aのボックス内には,ギア,歯車,軸受,電磁ブレーキ等から構成される動力伝達機構が内蔵されている(図示略)。動力伝達装置55Aは,ロープ駆動制御装置70からの動作命令に基づいて基台50A上に固定されたウィンチ制御装置56Aによって制御される。
【0040】
運搬用ロープ10を巻取る場合,ロープ駆動制御装置70から巻取動作命令がウィンチ制御装置56Aに与えられると,動力伝達装置55Aは,モータ54Aから発生する駆動力を巻胴52Aの回転軸53Aに伝達し,これにより巻胴52Aが正方向に回転する。
【0041】
運搬用ロープ10を静止状態に保つ場合は,ウィンチ制御装置56Aによる制御にもとづき動力伝達装置55A内の電磁ブレーキが働き,これによって巻胴52Aの回転軸53Aが回転することを阻止する。
【0042】
ロープガイド装置57Aは,2枚のローラ支持板51Ac,上部ローラ57Aaおよび下部ローラ57Abから構成されている。2枚のローラ支持板51Acは,基台50A上に巻胴52Aの前方に間隔をあけて平行に立設されている。これらのローラ支持板51Acの間に,運搬用ロープ10の径とほぼ同じ程度の間隔をあけて,上下に並行に,径が小さい上部ローラ57Aaおよび径が大きい下部ローラ57Abが配置されている。上部ローラ57Aaが固定された軸および下部ローラ57Abが固定された軸の両端は,2枚のローラ支持板51Acにそれぞれ回転自在に支持されている。ロープガイド装置57Aは,運搬用ロープ10を上部ローラ57Aaと下部ローラ57Abとの間に通すことにより,巻取る運搬用ロープ10が第1枠体33に接触することなく巻胴52Aに巻回されるように運搬用ロープ10をガイドする。
【0043】
次に,第2ウィンチ装置31Bについて説明する。運搬用ロープ10を順方向走行させる場合,第2ウィンチ装置31Bは繰出し用として用いられる。第2ウィンチ装置31Bの第2枠体34の内部には,第1ウィンチ装置31Aと同様に基台50B,巻胴52Bおよびその回転軸53B,モータ54B,動力伝達装置55B,ウィンチ制御装置56B,ロープガイド装置57B,張力調整装置59Bおよび引出防止装置60Bが収められ,かつ固定されている。以下,第2ウィンチ装置31Bの構成(動力伝達装置55B,ウィンチ制御装置56B,ロープガイド装置57B,張力調整装置59Bおよび引出防止装置60B)と動作については繰出し動作を中心に説明する。
【0044】
運搬用ロープ10を静止状態を保つ場合は,第2ウィンチ装置31Bでは,動力伝達装置55Bに内蔵された電磁ブレーキを動作させて巻胴52Bの回転軸53Bが回転することを防止する。上述したように第1ウィンチ装置31Aでも運搬用ロープ10を静止状態に保つ場合には動力伝達装置55Aの電磁ブレーキが働く。したがって,運搬用ロープ10の自重や,被運搬物の重量等による力に抗して,第2ウィンチ装置31Bでは運搬用ロープ10が引出されるのが阻止され,第1ウィンチ装置31Aでも巻胴52Aが逆転するのが阻止される。
【0045】
ロープガイド装置57Bにおいて,繰出される運搬用ロープ10は上部ローラ57Baと下部ローラ57Bbとの間の間隙に通され,これによって運搬用ロープ10がガイドされ,第2枠体34に接触することなく巻胴52Bから運搬用ロープ10が繰出される。
【0046】
運搬用ロープ10を繰出す場合,ロープ駆動制御装置70から繰出動作命令がウィンチ制御装置56Bに与えられると,動力伝達装置55Bは,ウィンチ制御装置56Bによって制御されて,内蔵されたギアにより巻胴52Bの回転軸53Bをモータ54Bの回転軸から切離して回転自在な状態とする。
【0047】
運搬用ロープ10を繰出す場合,巻胴52Bに掛かる力は,第1ウィンチ装置31Aの巻胴52Aが運搬用ロープ10を巻取ることによる引張り力と,運搬用ロープ10の自重,被運搬物の重量等による引張り力との和である。巻胴52Bの回転軸53Bは,電磁ブレーキが解除されて回転自在となっているが,あらかじめ予測(予定)された運搬用ロープ10の自重,被運搬物の重量等による引張り力に対しては,この引張り力により巻胴52Bが繰出し方向に回転するのを引出防止装置60Bによって阻止する。第1ウィンチ装置31Aの巻胴52Aが運搬用ロープ10を巻取ることによる引張り力がさらに加わると,引出防止装置60Bは後述するトルクリミッタ65Bの働きにより巻胴52Bの回転阻止を解除する。したがって,巻胴52Bが回転して運搬用ロープ10の繰出しが可能となるが,繰出される運搬用ロープ10の張力は,張力調整装置59Bによって調整される。
【0048】
運搬用ロープ10を巻取る場合,上述したように第1ウィンチ装置31Aにおいて,モータ54Aから与えられた回転動力は,動力伝達装置55Aを介して,巻胴52Aの回転軸53Aに伝わる。巻胴52Aを正方向に回転させようとする力は,運搬用ロープ10を介して,第2ウィンチ装置31Bの巻胴52Bに与えられる。
【0049】
第2ウィンチ装置31Bにおいては,上記の力に抗して巻胴52Bが回転するのを阻止しようとする力が,斜面に固定された第2ウィンチ装置31B,これに固定された張力調整装置59Bのボックスから,つめ63B,歯車62B,トルクリミッタ65B,回転伝達軸61Bを経て,張力調整装置59B内の張力調整機構を介して,巻胴52Bの回転軸53Bに働く。つめ63B,ラチェット歯車62B,トルクリミッタ65Bおよび回転伝達軸61Bは引出防止装置60Bを構成する。
【0050】
つめ63Bは,その軸63Bbにより張力調整装置59Bのボックスの外側面に揺動自在に取付けられている。
【0051】
ラチェット歯車62Bはトルクリミッタ65Bの外周面に,その回転中心がトルクリミッタ65Bの軸と一致する位置に固定されている。ラチェット歯車62Bには,つめ63Bの先端が係合している。運搬用ロープ10を繰出そうとする力によって,歯車62Bが正方向(図3において実線の矢印RB2で示す方向)(張力調整装置59Bによって歯車62B(回転伝達軸61B)と巻胴52B(回転軸53B)とは回転方向が逆になるので,巻胴52Bの逆方向回転に相当)に回転しようとするが,つめ63Bがラチェット歯車62Bに係合しているので,ラチェット歯車62Bの回転は阻止される。
【0052】
なお,第1ウィンチ装置31Aにおいて,運搬用ロープ10を巻取る場合,ラチェット歯車62Aが逆方向(図4において実線の矢印RA2で示す方向)に回転するので,つめ63Aの先端部がラチェット歯車62Aの歯62Aaに係合することはなく,ラチェット歯車62Aは回転しうる状態となる。
【0053】
トルクリミッタ65Bは,外側の継手部材と内側の回転部材との二層の筒状構造からなり,外側の継手部材の外端面に,ラチェット歯車62Bがその軸を一致させて固定されている。また,内側の回転部材は,回転伝達軸61Bの一端部にその軸を一致させて固定されている。第1ウィンチ装置31Aによる運搬用ロープ10の巻取りにより第2ウィンチ装置31Bの巻胴52Bを逆方向に回転させようとする力は張力調整装置59B,回転伝達軸61Bを経てトルクリミッタ65Bの内側の回転部材に伝わる。他方トルクリミッタ65Bの外側の継手部材にはつめ63B,ラチェット歯車62Bを介して回転を阻止しようとする力が働く。これらの力が,所与の値以下の場合にはトルクリミッタ65Bの外側の継手部材と内側の回転部材とは強く結合しており,巻胴52Bは回転しない。上記の力が所与の値を超えると,外側の継手部材と内側の回転部材との間に滑りが発生する。したがって,ラチェット歯車62Bがつめ63Bに係合していても,巻胴52Bは繰出し方向に回転することになる。
【0054】
張力調整装置59Bの入出力側に,巻胴52Bの回転軸53Bおよび回転伝達軸61Bが連結されている。張力調整装置59Bでは,張力調整装置59Bに内蔵された互いに噛み合う2つ歯車のうちの一方が回転軸53Bに固定され,他方が回転伝達61Bにそれぞれ固定されている。また,張力調整装置59Bに内蔵された張力調整ブレーキは,回転伝達軸61Bが正方向(巻取り方向)に回転することを抑制する。上記2つの歯車および張力調整ブレーキは張力調整機構を構成し,支持板51Bbの外側面に固定された張力調整装置59Bのボックス内に内蔵されている。第1ウィンチ装置31Aによる運搬用ロープ10の巻取りにより第2ウィンチ装置31Bにおいて巻胴52Bに上記所与の値を超える力が働き,運搬用ロープ10が繰出される場合には,巻胴52B(回転軸53B)を逆方向(繰出し方向)に回転させようとする力は張力調整装置59Bによって正方向に方向転換されて回転伝達軸61Bに伝わるが,回転伝達軸61Bを正方向に回転させようとする力は上記張力調整ブレーキによって抑制される。したがって,巻胴52Bからの運搬用ロープ10の繰出しにおける張力が調整される。
【0055】
また,トルクリミッタ65Bには,内側の回転部材と外側の継手部材との間にあらかじめ定められた以上の負荷が掛かったこと(滑りはじめたこと)を検知するセンサが設けられている。
【0056】
ウィンチ制御装置59Bは,トルクリミッタ65Bのセンサから検知信号を受付けると,張力調整装置59Bの張力調整ブレーキを作動させ,運搬用ロープ10の張力を調整させる。
【0057】
運搬用ロープ10を緊張させる場合(たとえば,吊籠8を吊上げる,保管場所や作業場所を変更した後等),第1ウィンチ装置31Aには,ロープ駆動制御装置70から巻取動作命令が与えられる。このときの第1ウィンチ装置31Aの各構成要素の動作は,上述の運搬用ロープ10を順方向走行させる場合と同じである。また,第2ウィンチ装置31Bには,ロープ駆動制御装置70から回転停止命令が与えられるので,これに応答して動力伝達装置55Bにおける電磁ブレーキを動作させて巻胴52Bの回転軸53Bの回転を阻止する。したがって,第1ウィンチ装置31Aでは運搬用ロープ10を巻取り,第2ウィンチ装置31Bでは運搬用ロープ10が繰出されるのを阻止する。
【0058】
張設された運搬用ロープ10を緩める場合(たとえば,吊籠8から被運搬物を降ろす,または吊籠8に被運搬物を乗せる,保管場所や作業場所を変更する場合),第1ウィンチ装置31Aには,ロープ駆動制御装置70から回転停止命令が与えられるので,動力伝達装置55Aにおける電磁ブレーキを動作させて巻胴52Bの回転軸53Aの回転を阻止する。また,第2ウィンチ装置31Bには,ロープ駆動制御装置70から弛緩繰出動作命令が与えられるので,これに応答して動力伝達装置55Bは,ウィンチ制御装置31Bの制御の下に,モータ54Bから与えられた駆動力を,内蔵されたギアにより巻胴52Bを逆方向に回転させるように回転方向を逆転させて巻胴52Bの回転軸53Bに伝達する。したがって,第1ウィンチ装置31Aにおいて運搬用ロープ10が繰出されるのが阻止され,第2ウィンチ装置31Bでは巻胴52Bをモータ54Bにより回転させて運搬用ロープ10を繰出す。
【0059】
なお,運搬用ロープ10を逆方向に走行させる場合(これにより運搬用ロープ10を緊張させるまたは緩める場合を含む)には,第1ウィンチ装置31Aと第2ウィンチ装置31Bの役割は逆となる。
【0060】
第2枠体34上に第1枠体33を回転自在に載置するために第1枠体33と第2枠体34との間に設けられた軸受装置を図6および図7を参照して説明する。図6は第1枠体の平面図,図7は図6のVII−VII線に沿う断面図である。
【0061】
軸受装置400 は,円筒軸46,軸受筒40および回転支持体41から構成されている。
【0062】
軸受筒40は,金属製の円筒の形状を有し,第2枠体34の上板39の上面の中央に垂直に,下端が溶接されて固定されている。円筒軸46は,金属製の円筒の形状を有し,第1枠体33の下板36の下面の中央に垂直に,上端が溶接されて固定されている。軸受筒40の内径は,円筒軸46の外径よりも若干大きく,円筒軸46が軸受筒40にゆるく嵌込まれている。
【0063】
4つの金属製の回転支持体41は,軸受筒40を中心とする円上に90度の角度間隔で第2枠体34の上板39の上面に軸受筒40から離れて,設けられている。各回転支持体41は1対の軸受部材44とローラ42とから構成されている。1対の軸受部材44は間隔をあけて上板39の上面に溶接されて固定されている。これらの軸受部材44がローラ42の回転軸43の両端を回転自在に受ける。ローラ42は第1枠体33の下面36を受ける。これによって,第1枠体33は,円筒軸46を中心に第2枠体34上で回転する。
【0064】
第1枠体33と第2枠体34との間にはさらに,固定装置47が設けられている。固定装置47は,複数の鉤受筒45と,1つの支持筒48と,この支持筒48に上下方向に移動自在に支持された1つの鉤部材49とから構成され,第2枠体34上で第1枠体33の角度位置を固定するものである。
【0065】
金属製の円筒の形状を有する複数の鉤受筒45は,第2枠体34の上板39の上面の回転支持体41よりも外側において軸受筒40を中心とする円上に一定の角度間隔をあけて垂直に,下端が溶着されて固定されている。金属製の円筒の形状を有する支持筒48は,第1枠体33の外周面の下部に溶着により固定されている。この支持筒48内に金属製の屈曲した鉤部材49の上部が挿通されている。鉤部材49の下端部がいずれかの鉤受筒45内に収められることにより,第2枠体34上で所定の角度位置に第1枠体33を固定することができる。先に,図1を参照して説明したように運搬用ロープ10は第2ウィンチ装置31Bから引出され,第1ウィンチ装置31Aに巻取られる。運搬用ロープ10の張設方向は巻胴52A,52Bの回転軸53A,53Bの軸方向に垂直であることが好ましい。図1に示すように張設された運搬用ロープ10の張設方向にあわせて第2ウィンチ装置31B,第1ウィンチ装置31Aの姿勢(向き)を定め,固定装置47により第1ウィンチ装置31Aを第2ウィンチ装置31Bに対して固定する。
【0066】
ロープ駆動制御装置70は,図8に示すように,制御部71,入力部72,送信部73および受信部74から構成されている。
【0067】
制御部71は,入力部72で入力された,または遠隔操作装置9から送信されて受信部74によって受信されたロープ駆動装置30の動作要求を受付ける。制御部71は受付けた動作要求に基づいて動作命令を生成する。生成された動作命令は第1ウィンチ装置31Aのウィンチ制御装置56Aおよび第2ウィンチ装置31Bのウィンチ制御装置56Bに,送信部73から送信される。
【0068】
遠隔操作装置9は,図9に示すように,遠隔操作制御部75,入力部77および遠隔操作送信部76から構成されている。入力部77は,ロープ駆動制御装置70の入力部72と同じものである。これによりロープ駆動制御装置70と遠隔操作装置9とにおいて,全く同じ操作を行うことができる。遠隔操作制御部75は,入力部77によって入力されたロープ駆動装置30の動作要求を受付け,これを遠隔操作送信部76によってロープ駆動制御装置70に送信させる。
【0069】
遠隔操作装置9の入力部77の操作面90を,図10に示す。作業員は,操作面90において,連動モードボタン94または単独モードボタン95を押下した後,第1巻取ボタン95,第2巻取ボタン96,第1繰出しボタン97または第2繰出しボタン98を押下し続ければ,第1ウィンチ装置31Aまたは第2ウィンチ装置31Bは巻取動作,繰出し動作等を行い,ボタンの押下を止めれば,第1ウィンチ装置31Aおよび第2ウィンチ装置31Bはそれぞれの動作を停止する。
【0070】
運搬用ロープ10を順方向走行させる場合,作業員は連動モードボタン94および第1巻取ボタン95または第2繰出しボタン98を押す。ロープ駆動制御装置70の制御部71は,連動モードボタン94が押下されたと判断すると(操作面90の各種ボタンの押下に関する信号に関しては,以下の説明では,ロープ駆動装置70の入力部72のみならず遠隔操作装置9の入力部77から入力され,遠隔操作装置9からロープ駆動装置70に送信された信号を含むものとする)連動モードを設定する。連動モードを設定した制御部71は,第1巻取ボタン95または第2繰出しボタン98が押下され続けていると判断すると,巻取動作命令および繰出動作命令を生成し,巻取動作命令を第1ウィンチ装置31A宛てに,繰出動作命令を第2ウィンチ装置31B宛てに送信させる。なお,運搬用ロープ10を逆方向走行させる場合,作業員は連動モードボタン94および第2巻取ボタン96または第1繰出しボタン97を押す。連動モードを設定した制御部71は,第2巻取ボタン96または第1繰出しボタン97が押下され続けていると判断すると,繰出動作命令および巻取動作命令を生成し,繰出動作命令を第1ウィンチ装置31A宛てに,巻取動作命令を第2ウィンチ装置31B宛てに送信させる。
【0071】
吊籠8を吊上げる等のために運搬用ロープ10を順方向に走行させて(第1ウィンチ装置31Aを巻取り用として駆動し,第2ウィンチ装置31Bにおいて巻胴52Bにブレーキを掛けておく)運搬用ロープ10を緊張させる場合,作業員は,単独モードボタン93および第1巻取ボタン95を押す。制御部71は,単独モードボタン93が押下されたと判断すると単独モードを設定する。単独モードを設定した制御部71は,第1巻取ボタン95が押下され続けていると判断すると,巻取動作命令および回転停止命令を生成し,巻取動作命令を第1ウィンチ装置31A宛てに,回転停止命令を第2ウィンチ装置31B宛てに送信させる。なお,運搬用ロープ10を逆方向に走行させて(第2ウィンチ装置31Bを巻取り用として駆動し,第1ウィンチ装置31Aにおいて巻胴52Aにブレーキを掛けておく)運搬用ロープ10を緊張させる場合,作業員は単独モードボタン93および第2巻取ボタン96を押す。単独モードを設定した制御部71は,第2巻取ボタン96が押下され続けたと判断すると,巻取動作命令および回転停止命令を生成し,回転停止命令を第1ウィンチ装置31A宛てに,巻取動作命令を第2ウィンチ装置31B宛てに送信させる。
【0072】
吊籠8から被運搬物を降ろす等のために運搬用ロープ10を順方向に走行させて(第2ウィンチ装置31Bを繰出し用として駆動し,第1ウィンチ装置31Aにおいて巻胴52Aにブレーキを掛けておく)張設された運搬用ロープ10を緩める場合,作業員は単独モードボタン93および第2繰出しボタン98を押す。単独モードボタン93が押下されたと判断した制御部71は,単独モードを設定する。単独モードを設定した制御部71は,第2繰出しボタン98が押下され続けていると判断すると弛緩繰出動作命令および回転停止命令を生成し,回転停止命令を第1ウィンチ装置31A宛てに,弛緩繰出動作命令を第2ウィンチ装置31B宛てに送信させる。なお,運搬用ロープ10を逆方向に走行させて(第1ウィンチ装置31Aを繰出し用として駆動し,第2ウィンチ装置31Bにおいて巻胴52Bにブレーキを掛けておく)張設された運搬用ロープ10を緩める場合,作業員は,単独モードボタン93および第1繰出しボタン97を押す。単独モードを設定した制御部71は,第1繰出しボタン97が押下され続けたと判断すると,弛緩繰出動作命令および回転停止命令を生成し,弛緩繰出動作命令を第1ウィンチ装置31A宛てに,回転停止命令を第2ウィンチ装置31Bに送信させる。
【0073】
制御部71はまた,第1巻取ボタン95,第2巻取ボタン96,第1繰出しボタン97または第2繰出しボタン98が押下され続けていないと判断すると,回転停止命令を生成する。制御部71は,生成した回転停止命令を第1ウィンチ装置31Aおよび第2ウィンチ装置31Bに送信させる。
【0074】
図11,図12を参照して運搬装置1の第2使用例について説明する。図11および図12において,紙面の左部が斜面の上部,紙面の右部が斜面の下部である(以下,第3使用例を示す図13および第4使用例を示す図14においても同様である)。第2使用例は落石等を防護する落石防護用ネットを山の急斜面に張る工程で運搬装置1を利用するものである。斜面上部に間隔をあけて支柱101a,101bおよび支柱101c,101dを定着し,これらの支柱101a,101b間および支柱101c,101d間にそれぞれ主索102 を張設する。この主索102 にネット103 の上端部を取付ける。また,複数本の縦ロープ104 の一端部を主索102 にそれぞれ間隔をあけて取付けて吊下げ,ネット103 と結合させる(ネット103 の両側には必ずそれぞれ,縦ロープ104 を設置する)。さらに,複数本の横ロープ105 を縦ロープ104 とほぼ直交するようにそれぞれ間隔をあけて張り,交叉した縦ロープ104 に締結するとともにネット103 に結合し,さらに横ロープ105 の両端部をそれぞれネット103 の両端に設置された縦ロープ104 に固定,またはネット103 の外側の位置で斜面に固定する(ネット103 の下端には必ず横ロープ105 を取付け,その横ロープ105 の両端をネット103 の外側の位置で斜面に固定する。この横ロープ105 に,複数本の縦ロープ104 の下端部を固定する。)。運搬装置1は,これらの縦ロープ104 および横ロープ105 をその張設に適した位置に運搬するために用いられる。図11に縦ロープ104 を運搬する様子を,図12に横ロープ105 を運搬する様子を示す。
【0075】
図11の運搬装置1において,落石防護用ネット103 を張設する範囲を囲むようにその外側を運搬用ロープ10が走行するように,滑車装置2,3,4,5,ロープ駆動装置30が設置される。滑車装置2,3は,縦ロープ104 の運搬区間より長い区間の両端に配置されている。リール装置104A は斜面上部に固定され,運搬される縦ロープ104 が,このリール装置104A のリールに巻回されている。滑車装置2付近において,作業員(以下,取付作業員という)は,運搬用ロープ10を静止させておいて,リール装置104A のリールから縦ロープ104 を引出し,引出した縦ロープ104 の一端部を,ロープ取付具11Aを用いて運搬用ロープ10に取付ける。施工作業場所(運搬された縦ロープ104 を主索102 に取付ける位置)において,施工員は,遠隔操作装置9を用いて,運搬用ロープ10を順走行させて縦ロープ104 の一端部を施工場所まで移動させ,運搬用ロープ10を静止させる。施工員は,運搬された縦ロープ104 を取外し,取外した縦ロープ104 を主索102 に取付けるとともに落石防護用ネット103 に取付ける。上記を繰返して縦ロープ104 を順次張っていく。
【0076】
図12においては,横ロープ105 の取付けが進み,保持ロープ21a,21bを長くして,滑車装置2,3の設置位置が変更されている。リール装置105A が斜面下部に固定されており,運搬される横ロープ105 がリール装置105A のリールに巻回されている。また,斜面には,運搬用ロープ10の走行経路の外側においてガイド滑車106 が固定されている。リール装置105A のリールから引出された横ロープ105 はガイド滑車106 に掛けられている。取付作業員は,運搬用ロープ10を静止させておいて,滑車装置2付近で,横ロープ105 の一端部を,ロープ取付具11Aを用いて,運搬用ロープ10に取付ける。施工員は,運搬用ロープ10を順方向に走行させて落石防護用ネット103 上を横切って運搬し,落石防護用ネット103 の図12において右側まで運搬する。これにより,横ロープ105 は運搬用ロープ10の走行経路(滑車装置2,3間)に沿うように配置される。横ロープ105 の設置場所(高さ)に応じて,保持ロープ21a,21bの長さを調整して運搬用ロープ10の走行経路を順次下方に向って変更すればよい。
【0077】
図13を参照して,第3使用例について説明する。山の斜面の崩壊等を防止する斜面安定化装置は次のようにして山の斜面に設置される。まず,斜面安定化装置を設置する範囲を囲むように,左右両側において縦方向に間隔をあけて,また上下方向において横方向に間隔をあけてアンカー111 を斜面に定着する。上下の対応するアンカー111 間に縦方向に複数本の縦ロープ114aを,左右に対応するアンカー111 間に横方向に複数本の横ロープ115aを張設し,それらの両端をアンカー111 に結びつける。また,最上部の横ロープ115aと最下部の横ロープ115aとの間に,縦ロープ114aに平行に縦補助ロープ114bを架設する。さらに,最左端の縦ロープ114aと,最右端の縦ロープ114aとの間に,横ロープ115aに平行に横補助ロープ115bを架設する。これらの縦ロープ114a,横ロープ115a,縦補助ロープ114bおよび横補助ロープ115bをそれぞれの交叉した箇所で互いに締結する。
【0078】
図13では,既に,複数本の縦ロープ114aと縦補助ロープ114bが,運搬装置1によって運搬されて張設されている(縦補助ロープ114bの下端はまだ横ロープ115aに結付けられていない)。また,斜面上部において横ロープ115aおよび横補助ロープ115bが運搬装置1によって運搬されて張設されている。
【0079】
図13の運搬装置1において,斜面安定化装置を設置する範囲を囲むようにその外側を運搬用ロープ10が走行するように,滑車装置2,3,4,5,ロープ駆動装置30が設置される。横ロープ115aおよび横補助ロープ115bの取付けが進み,保持ロープ21a,21bを長くして,滑車装置2,3の設置位置が変更されている。リール装置115Abが斜面に固定されており,運搬される横補助ロープ115b が,リール装置115Abのリールに巻回されている。また,斜面には,運搬用ロープ10の走行経路の外側においてガイド滑車116 が固定されている。リール装置115Abのリールから引出された横補助ロープ115bはガイド滑車116 に掛けられている。取付作業員は,滑車装置2付近において,運搬用ロープ10を静止させておいて,横補助ロープ115bの一端部を,ロープ取付具11Bを用いて,運搬用ロープ10に取付ける。施工員は,施工作業場所(運搬された横補助ロープ115bを最右端の縦ロープ114aに締結する位置)において,運搬用ロープ10を順方向に走行させて,最右端の縦ロープ114aまで横補助ロープ115bを運搬する。これにより,横補助ロープ115bは運搬用ロープ10の走行経路(滑車装置2,3間)に沿うように配置される。この後,横補助ロープ115bを縦ロープ114a,縦補助ロープ114bにそれぞれ締結する。横ロープ115a,横補助ロープ115bの設置場所(高さ)に応じて,保持ロープ21a,21bの長さを調整して運搬用ロープ10の走行経路を順次下方に向って変更すればよい。
【0080】
運搬装置1において,運搬用ロープ10は張設されるので,保持ロープ21a,21bの長さを調整して立木12から滑車装置2までの距離,立木13から滑車装置3までの距離を長くすると,滑車装置2,3間の距離は縮り,被運搬物の運搬が適当にできなくなる場合には,滑車装置2,3を掛ける立木を変更すればよい,または滑車装置2,3を設置する場所の付近にアンカー(支柱)を立てればよい。
【0081】
図14を参照して,運搬装置1の第4使用例について説明する。第4使用例は,落石防護用柵を斜面下部に設置する場合に運搬装置1を利用するものである。斜面下部の,地中内に基礎120 を定着し,その両端部上に端末支柱122a,122bを立設し,端末支柱122a,122b間には複数本の中間支柱123 を間隔をあけて立設する。さらに,複数本の防護用ロープ121 を上下方向に一定の間隔をあけて互いに平行に端末支柱122a,122b間に張設する。運搬装置1は,この防護用ロープ121 を運搬するために用いられる。図14に防護用ロープ121 を運搬する様子を示す。
【0082】
落石防護用柵の端末支柱122a,122bにはそれぞれ巻付ロープ129 が巻付け固定され,これにループが取付けられる。斜面に固定された調整用リール装置26a,26bからそれぞれ引出された保持ロープ21a,21bが上記ループに通され,その端部に滑車装置2,3がそれぞれ取付けられている。滑車装置2,3は,運搬される防護用ロープ121 が張設される高さに応じた位置に配置されている。滑車装置4,滑車装置5およびロープ駆動装置30は基礎120 から少し離れた位置に設置される。リール装置121A が,斜面に固定され,このリール装置121A のリールに防護用ロープ121 が巻回されている。また,端末支柱122aにガイド滑車124 が設置され,防護用ロープ121 がリール装置121A のリールから引出されてガイド滑車124 に掛けられている。
【0083】
図14においては,防護用ロープ121 の張設が進み,保持ロープ21a,21bを長くして,滑車装置2,3の設置位置が変更されている。作業員は,運搬用ロープ10を静止させておいて,端末支柱122a付近で,防護用ロープ121 の一端部を,ロープ取付具11Cを用いて,運搬用ロープ10に取付ける。作業員は,運搬用ロープ10を順方向に走行させて端末支柱122bまで防護用ロープ121 を運搬する。これにより,防護用ロープ121 は運搬用ロープ10の走行経路(滑車装置2,3間)に沿うように配置される。この後,防護用ロープ121 が端末支柱122a,122bおよび中間支柱123 に取付けられる。防護用ロープ121 の設置場所(高さ)に応じて,保持ロープ21a,21bの長さを調整して運搬用ロープ10の走行経路を順次下方に向って変更すればよい。
【0084】
図15,図16を参照して第2実施例の運搬装置1Aについて説明する。運搬装置1Aは,削孔装置を運搬するとともに削孔装置を設置するために使用されるものである。削孔装置を用いた削孔作業は,斜面上において,縦,横に一定の間隔をあけた場所で行われる。運搬装置1Aについて,第1実施例の運搬装置1の構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付し,説明を省略する。
【0085】
削孔作業を行うべき範囲の外側の位置,たとえば削孔作業を行うべき範囲を方形とした場合にその四隅の外方に滑車装置4,滑車装置6,滑車装置5およびロープ駆動装置30が配置される。第1実施例の運搬装置1に比べると滑車装置6が追加されている。削孔作業を行うべき範囲の下側に滑車装置2が,上側に滑車装置3が配置される。運搬用ロープ10は,ロープ駆動装置30から,滑車装置4を経て滑車装置2,滑車装置3に掛けられ,さらに滑車装置6,滑車装置5を経て,ロープ駆動装置30に戻る。これによって,滑車装置2と滑車装置3とが上下の関係になり,これらの滑車装置2と滑車装置3との間を運搬用ロープ10が上下方向に走行する。滑車装置2と滑車装置3の間において,運搬用ロープ10に取付けられた削孔装置取付具11Dによって削孔装置130 が運搬用ロープ10に取付けられる。滑車装置3は,保持ロープ21bと保持ロープ21cとに保持されている。保持ロープ21cは,調整用リール装置26cから引出されて立木13Aに掛けられている。
【0086】
削孔装置130 は,ロッド等を打込む打込機131 およびガイド支柱132 を有し,打込機131 がガイド支柱132 に沿って移動するタイプのものである。ガイド支柱132 の上端には掛け部132aが設けられ,この掛け部132aを削孔装置取付具11Dに連結することにより削孔装置130 が運搬用ロープ10に取付けられる。
【0087】
削孔作業を行うべき場所において,遠隔操作装置9を用いて,運搬用ロープ10を逆方向走行させて,直前に削孔作業の完了した場所から次に削孔作業を行うべき場所まで削孔装置130 を移動させ,運搬用ロープ10を静止させる(図16で破線で示す)。張設された運搬用ロープ10を緩めて,削孔装置130 を降下させる(図16で鎖線で示す)。降下された削孔装置130 のガイド支柱132 の下端を斜面上の削孔する箇所に当てる(下端部が斜面の地中に入ってもよい)。ガイド支柱132 の掛け部132aに2本の調整用ロープ140 の一端部を結付ける(もちろん,あらかじめ結付けられていてもよい)。その後,2本の調整用ロープ140 を作業員がそれぞれ水平に互いに反対方向に引張るとともに,遠隔操作装置9を用いて,運搬用ロープ10を逆方向走行させて削孔装置130 が斜面に垂直に設置されるように設置角度の調整を行う。設置角度の調整を行った後,調整用ロープ140 の他端部を杭141aで斜面に固定する。さらに,運搬用ロープ10の削孔装置130 が取付けられた部分から運搬用ロープ10の走行方向の前方および後方に相当する部分を斜面まで下ろして杭141bを用いて固定する。この状態で削孔装置130 を運転して削孔作業を行うことができる。
【0088】
削孔作業の終了後,運搬用ロープ10の斜面に固定した部分および調整用ロープ140 の他端部を斜面から外し,遠隔操作装置9を用いて運搬用ロープ10を緊張させて削孔装置130 を吊上げて,運搬用ロープ10を逆方向走行させれば,次の削孔作業場所に削孔装置130 を運搬できる。削孔装置130 を用いた削孔作業が縦一列分終了したのちは,滑車装置2,滑車装置3の位置を横方向にずらして,次の縦一列分の削孔作業に移ることができる。削孔装置130 を運搬用ロープ10から取外すことがないため,削孔装置130 の設置を安全に行うことができる。
【0089】
図17を参照して,第3実施例の運搬装置1Bについて説明する。運搬装置1Bは,斜面上方で落石を受止める落石防護用柵の資材を運搬するものである。ここでは,巨大な岩石Gがあるため道路M脇の保管場所S3から斜面上方の作業場所W3まで運搬用ロープ10を張ることが困難であり,岩石Gを避けるため保管場所S3を変えることも沢Tがあるので困難である場合の実施例を示す。運搬装置1Bについては,第1実施例の運搬装置1の構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付し,説明を省略する。
【0090】
岩石Gを避けて運搬用ロープ10を,作業場所W3付近の滑車装置3まで張れる位置(沢Tを挟んで保管場所S3と反対側)に滑車装置2を配置する。保管場所S3の付近に滑車装置5を配置する。さらに,滑車装置4の位置から滑車装置3の位置に直接に運搬用ロープ10を張れないので,それらの間の適当な場所に滑車装置7を設ける。運搬用ロープ10は,ロープ駆動装置30(第1ウィンチ装置31A)から,滑車装置5を経て滑車装置2に向い(ここで,沢Tを渡る),岩石Gを避けるように滑車装置2から滑車装置3に向い,さらに滑車装置7,滑車装置4を経てロープ駆動装置30(第2ウィンチ装置31B)に戻るように張設される。
【0091】
滑車装置3は,作業場所W3付近に生えている立木13に連結ロープ28dによって連結されている。滑車装置7は,連結ロープ28eによって,斜面の上部の立木17に取付けられている。
【0092】
吊籠8は滑車装置2と滑車装置3との間の滑車装置2に近い位置に運搬用ロープ10に取付けられている。運搬装置2付近において,作業員(以下,調整作業員という)は,調整用リール装置26aから保持ロープ21aを引出すとともに,保持ロープ21aを引出すことによりたるんだ運搬用ロープ10を第1ウィンチ装置31Aを駆動して緊張させる。これにより,滑車装置2の配置位置が変更され,滑車装置2とともに吊籠8が沢T上を渡って保管場所S3に近づく。保管場所S3において,運搬用ロープ10を静止させておいて,積込作業員が吊籠8に資材を載せる。その後,調整作業員は,調整用リール装置26aによって保持ロープ21aを巻取るとともに緊張させた運搬用ロープ10を第2ウィンチ装置31Bを駆動して運搬用ロープ10を緩める。これにより,滑車装置2の配置位置を変更される前の配置位置に戻すことができる。作業場所W3では,施工員が,第1ウィンチ装置31Aから運搬用ロープ10を繰出し,第2ウィンチ装置31Bで巻取ることによって運搬用ロープ10を逆方向に走行させ,吊籠8を作業場所W3まで移動させ,運搬用ロープ10を静止させる。施工員は,吊籠8から資材を取出し,取出した資材を用いて落石防護用柵の設置作業を行う。
【0093】
運搬装置1,1Aおよび1Bは,一本の運搬用ロープ10を走行させれば,被運搬物を運搬できる。また,保持ロープ21a,21b,21cの長さを調整して滑車装置2,3の配置位置を変更させれば,被運搬物を運搬するのに適した経路を運搬用ロープ10が走行できる。
【0094】
ロープ駆動装置30は,第1ウィンチ装置と第2ウィンチ装置を上下に配置するのではなく,並列に設置してもよい。また,第1ウィンチ装置および第2ウィンチ装置は,運搬用ロープが被運搬物を運搬する区間を走行するように,運搬用ロープの繰出し側および巻取り側にそれぞれ別個に配置してもよい。
【0095】
第1,第2および第3実施例において,運搬装置1,1Aおよび1Bは,丘や山の斜面ではなく,平坦は場所に設置することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】第1実施例の運搬装置の全体的な配置構成を示す全体図である。
【図2】滑車装置を示す斜視図である。
【図3】ロープ駆動装置を示す正面図である。
【図4】ロープ駆動装置を示す右側面図である。
【図5】第1枠体内の内部構造の平面図である。
【図6】第2枠体の平面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】ロープ駆動制御装置の電気的構成を示すブロックである。
【図9】遠隔操作装置の電気的構成を示すブロックである。
【図10】遠隔操作装置の操作面を示す正面図である。
【図11】第1実施例の運搬装置の第2使用例を示すもので,運搬装置によって落石防護用ネットの縦ロープを運搬する様子を示す。
【図12】第1実施例の運搬装置の第2使用例を示すもので,運搬装置によって落石防護用ネットの横ロープを運搬する様子を示す。
【図13】第1実施例の運搬装置の第3使用例を示すもので,運搬装置によって斜面安定化装置の横補助ロープを運搬する様子を示す。
【図14】第1実施例の運搬装置の第4使用例を示すもので,運搬装置によって落石防護用柵の防護用ロープを運搬する様子を示す。
【図15】第2実施例の運搬装置の全体的な配置構成を示す全体図である。
【図16】削孔装置を斜面に設置する様子を示す側面図である。
【図17】第3実施例の運搬装置の全体的な配置構成を示す全体図である。
【符号の説明】
【0097】
1,1A,1B 運搬装置
2,3,4,5,6,7 滑車装置
10 運搬用ロープ
21a,21b,21c 保持ロープ
30 ロープ駆動装置
31A 第1ウィンチ装置
31B 第2ウィンチ装置
33 第1枠体
34 第2枠体
130 削孔装置
400 軸受装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に保持される少なくとも2つの滑車装置が,被運搬物を運搬する区間の両端に相当する位置に配置され,
被運搬物を運ぶ一本の運搬用ロープが,繰出しウィンチ装置から上記少なくとも2つの滑車装置を経て巻取りウィンチ装置まで張設され,
上記少なくとも2つの滑車装置のうち少なくとも1つの滑車装置が,位置調整自在に保持されている,
運搬装置。
【請求項2】
上記繰出しウィンチ装置が,回転自在に支持されたロープ巻回用巻胴と,ロープ巻回用巻胴を回転駆動するモータとを内部に収めた枠体を有し,
上記巻取りウィンチ装置が,回転自在に支持されたロープ巻回用巻胴と,ロープ巻回用巻胴を回転駆動するモータとを内部に収めた枠体を有し,
上記2つの枠体のうち一方の枠体が,他方の枠体上に,その上面に平行な面内で回転自在に設けられている,請求項1に記載の運搬装置。
【請求項3】
被運搬物を運搬する区間の両端に相当する位置に少なくとも2つの滑車装置を回転自在に保持した状態で配置し,少なくとも1つの滑車装置の位置を調整可能とし,
運搬用ロープを繰出しウィンチ装置から上記少なくとも2つの滑車装置を経て巻取りウィンチ装置まで張設し,
上記張設された運搬用ロープを,繰出しウィンチ装置から繰出し,巻取りウィンチ装置によって巻取る,
運搬装置を用いた運搬方法。
【請求項4】
枠体内に,少なくとも回転自在に支持されたロープ巻回用巻胴と,ロープ巻回用巻胴を回転駆動するモータとを備えた第1のウィンチ装置,
枠体内に少なくともロープ巻回用巻胴と,ロープ巻回用巻胴を回転駆動するモータとを備えた第2のウィンチ装置,および
上記第1のウィンチ装置を,第2のウィンチ装置の枠体の上にその上面に平行な面内で回転自在に保持する軸受装置,
を備えたロープ走行装置。
【請求項5】
削孔装置を運搬するロープ走行区間の両端に相当する位置に少なくとも2つの滑車装置を,回転自在に保持した状態で配置し,少なくとも1つの滑車装置の位置を調整可能とし,
運搬用ロープを,繰出しウィンチ装置から上記少なくとも2つの滑車装置を経て,巻取りウィンチ装置まで張設し,
上記ロープ走行区間において上記運搬用ロープに削孔装置の上部を取付け,
上記運搬用ロープを,繰出しウィンチ装置から繰出し,巻取りウィンチ装置によって巻取ることにより,上記削孔装置を所定箇所まで運搬し,
上記運搬された削孔装置の下端部を削孔すべき箇所に当て,上記削孔装置の地面に対する設置角度を調整し,
上記削孔装置が調整された設置角度を保つように上記運搬用ロープの少なくとも一部分を地面に固定する,
運搬装置を利用した削孔装置の設置方法。
【請求項1】
回転自在に保持される少なくとも2つの滑車装置が,被運搬物を運搬する区間の両端に相当する位置に配置され,
被運搬物を運ぶ一本の運搬用ロープが,繰出しウィンチ装置から上記少なくとも2つの滑車装置を経て巻取りウィンチ装置まで張設され,
上記少なくとも2つの滑車装置のうち少なくとも1つの滑車装置が,位置調整自在に保持されている,
運搬装置。
【請求項2】
上記繰出しウィンチ装置が,回転自在に支持されたロープ巻回用巻胴と,ロープ巻回用巻胴を回転駆動するモータとを内部に収めた枠体を有し,
上記巻取りウィンチ装置が,回転自在に支持されたロープ巻回用巻胴と,ロープ巻回用巻胴を回転駆動するモータとを内部に収めた枠体を有し,
上記2つの枠体のうち一方の枠体が,他方の枠体上に,その上面に平行な面内で回転自在に設けられている,請求項1に記載の運搬装置。
【請求項3】
被運搬物を運搬する区間の両端に相当する位置に少なくとも2つの滑車装置を回転自在に保持した状態で配置し,少なくとも1つの滑車装置の位置を調整可能とし,
運搬用ロープを繰出しウィンチ装置から上記少なくとも2つの滑車装置を経て巻取りウィンチ装置まで張設し,
上記張設された運搬用ロープを,繰出しウィンチ装置から繰出し,巻取りウィンチ装置によって巻取る,
運搬装置を用いた運搬方法。
【請求項4】
枠体内に,少なくとも回転自在に支持されたロープ巻回用巻胴と,ロープ巻回用巻胴を回転駆動するモータとを備えた第1のウィンチ装置,
枠体内に少なくともロープ巻回用巻胴と,ロープ巻回用巻胴を回転駆動するモータとを備えた第2のウィンチ装置,および
上記第1のウィンチ装置を,第2のウィンチ装置の枠体の上にその上面に平行な面内で回転自在に保持する軸受装置,
を備えたロープ走行装置。
【請求項5】
削孔装置を運搬するロープ走行区間の両端に相当する位置に少なくとも2つの滑車装置を,回転自在に保持した状態で配置し,少なくとも1つの滑車装置の位置を調整可能とし,
運搬用ロープを,繰出しウィンチ装置から上記少なくとも2つの滑車装置を経て,巻取りウィンチ装置まで張設し,
上記ロープ走行区間において上記運搬用ロープに削孔装置の上部を取付け,
上記運搬用ロープを,繰出しウィンチ装置から繰出し,巻取りウィンチ装置によって巻取ることにより,上記削孔装置を所定箇所まで運搬し,
上記運搬された削孔装置の下端部を削孔すべき箇所に当て,上記削孔装置の地面に対する設置角度を調整し,
上記削孔装置が調整された設置角度を保つように上記運搬用ロープの少なくとも一部分を地面に固定する,
運搬装置を利用した削孔装置の設置方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−290505(P2006−290505A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111332(P2005−111332)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(000003528)東京製綱株式会社 (139)
【出願人】(301061632)株式会社モノテック (2)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(000003528)東京製綱株式会社 (139)
【出願人】(301061632)株式会社モノテック (2)
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