説明

運搬車両

【課題】ユーザの要望等に応じて、右上がり及び左上がりいずれの方向に対しても取り付け可能なラダーを備えた運搬車両を提供する。
【解決手段】運搬車両(1)は、アッパデッキ(16)に形成された第1の出入口領域(17a)と第1のロアデッキ(18a)又は第2の出入口領域(17b)と第2のロアデッキ(18b)との間に架け渡されたメインラダー(20)を備え、メインラダーは、複数個のステップ体(24)に沿って延び、少なくとも車体(2)の前側に位置する側桁(22)に固定されている手摺りユニット(28)を有し、車体の前側に位置する最上側桁部(23)に取付ボルト(52)を介して取り付けられ、ステップ体の最上段として形成された最上フロア部(25)から車体に対する前側への進行を防止するための第1の柵体(30)をさらに備え、前記取付ボルトを受け入れるための溶接ナット(54)が最上側桁部のそれぞれ両方に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷台に積載した運搬物を運搬するための運搬車両に関する。
【背景技術】
【0002】
運搬車両に関する発明が特許文献1に開示されている。この運搬車両は、掘削した土砂等を所望の排土場所まで運ぶためのものである。
この運搬車両は、フレーム構造を有する車体と、この車体の後部にて傾動可能に設けられ、運搬対象物を積載するための荷台と、この荷台の前側に位置して車体上部に形成されたフロア(アッパデッキ)と、このフロアの左側に設けられ、内部に運転室が規定されるキャブとを備えている。
【0003】
また、車体の前側には昇降階段としてのラダー(メインラダー)が設けられており、このラダーは車体前面に沿って車体下部から車体上部に向けて傾斜して延びている。具体的には、ラダーは右側の前輪の前方に位置する車体下部(ロアデッキ)と、フロアの前面におけるキャブ側、即ち、左側との間に架け渡され、その両端部がそれぞれ車体下部及びフロア前面に溶接により取り付けられている。即ち、ラダーは車体の右側から左側(正面視で右上がり)に上昇している。
【0004】
また、ラダーの車体に対して前面側(正面視で右上がりに取付けられているラダーでは右側)のみには手摺り(手摺りユニット)が溶接により取り付けられている。すなわち、この手摺りはラダーの下部から上部に向けて車体の前側に位置する側部に沿って延びている。反対側の側部は車体前面が壁となっているため手摺りは設けられていない。また、フロアの両側及びラダー最上段と連続する部位、即ち、出入口領域を除くフロアの前側には手摺り(ハンドレール)が溶接により取り付けられている。これら手摺りはラダー及びフロアから作業者が落下するのを防止する。また、ラダーの最上段には、この最上段を形成する段板に沿ってフロアの出入口領域に案内するように手摺りが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−30581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ユーザによっては、左側の前輪の前方に位置する車体下部と、フロア前面の右側との間、即ち、車体の左側から右側に上昇するように(正面視で左上がりに)ラダーを取り付けたいという要望がある。また、作業地域によってはラダーの傾斜方向が法律等により規定されている。
しかしながら、ラダーの向きを右上がりから左上がりに入れ替えると手摺りが車体側に位置付けられるため、車体に対して前面側に手摺りがないことになり、手摺りを有効に利用できない。また、ラダーの最上段に沿って形成された手摺りがフロアの出入口領域を塞いでしまい、作業者はラダー最上段からフロアへと移動することができない。このため、運搬車両の製造時、又は、納品後に、ユーザの要望又は作業現場の要求に応じてラダーの傾斜方向を左右変えることができなかった。
【0007】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、ユーザの要望等に応じて、右上がり及び左上がりいずれの方向に対しても取り付け可能なラダーを備えた運搬車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、請求項1の発明では、自走可能な車体と、該車体の後部に設けられ、運搬物を積載するための荷台と、前記車体の上部前側に配設されたキャブと、前記車体の上部前側であって前記車体の左右方向に亘って形成され、前記キャブに通じるアッパデッキと、該アッパデッキの前側に形成され、左右方向にそれぞれ離間している第1及び第2の出入口領域と、前記車体の下部前側であって前記車体の左右方向に離間してそれぞれ前方向に向けて突出する第1及び第2のロアデッキと、前記第1の出入口領域と前記第1のロアデッキ又は前記第2の出入口領域と前記第2のロアデッキとの間に架け渡されたメインラダーとを備え、前記メインラダーは、傾斜した階段状に形成された複数個のステップ体と、該複数個のステップ体の左右両側に沿って固定された側桁と、前記ステップ体の最上段として形成された最上フロア部と、前記側桁と一体として連続して形成され、前記最上フロア部の左右両側にそれぞれ固定された最上側桁部と、前記複数個のステップ体に沿って延び、少なくとも前記車体の前側に位置する前記側桁に固定されている手摺りユニットとを有し、前記車体の前側に位置する前記最上側桁部に取付ボルトを介して取り付けられ、前記最上フロア部から前記車体に対する前側への進行を防止するための第1の柵体をさらに備え、前記取付ボルトを受け入れるための溶接ナットが前記最上側桁部のそれぞれ両方に設けられていることを特徴とする運搬車両を提供する。
【0009】
請求項2の発明では、前記手摺りユニットは、手摺りと該手摺りから垂下する複数本の手摺り子とを有し、前記手摺り子の下端にはボルト座が形成され、前記ボルト座に挿通された前記取付ボルトが螺入されるボルト孔が、前記ステップ体の左右両側に固定された側桁のそれぞれに形成されていることを特徴としている。
請求項3の発明では、前記手摺りユニットと前記第1の柵体とが連続して一体となっていることを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明では、前記手摺りユニットは、前記ステップ体の左右両側に固定された側桁のそれぞれに溶接されていることを特徴としている。
請求項5の発明では、前記最上フロア部の前記第1の柵体が取り付けられた側面に隣接する側面であって、前記複数個のステップ体が形成された側と反対側の側面には、第2の柵体が取り付けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、車体の上部前側であって車体の左右方向に亘って形成され、キャブに通じるアッパデッキと、アッパデッキの前側であって左右方向に離間してそれぞれ形成された第1及び第2の出入口領域と、車体の下部前側であって車体の左右方向に離間してそれぞれ前方向に向けて突出する第1及び第2のロアデッキと、第1又は第2の出入口領域及び第1又は第2のロアデッキとの間に架け渡されたメインラダーとを備える。メインラダーを第1の出入口領域と第1のロアデッキとの間、又は、第2の出入口領域と第2のロアデッキとの間に架け渡すことで、右上がり及び左上がりのいずれに傾斜する方向であってもメインラダーを取り付けることができる。また、メインラダー20を一方の傾斜方向にて取り付けた後であっても他方の傾斜方向に付け替えることができる。したがって、製造段階だけでなく納品時又は納品後であってもユーザの要望や作業地域における法規に応じて、右上がり及び左上がりいずれの方向に対してもメインラダーを取り付けることができる。
【0012】
また、メインラダーは、傾斜した階段状に形成された複数個のステップ体と、該複数個のステップ体の左右両側に沿って固定された側桁と、ステップ体の最上段として形成された最上フロア部と、側桁と一体として連続して形成され、最上フロア部の左右両側にそれぞれ固定された最上側桁部と、複数個のステップ体に沿って延び、少なくとも車体の前側に位置する側桁に固定されている手摺りユニットとを有している。また、運搬車両は、車体の前側に位置する最上側桁部に取付ボルトを介して取り付けられ、最上フロア部から車体に対する前側への進行を防止するための第1の柵体をさらに備え、取付ボルトを受け入れるための溶接ナットが最上側桁部のそれぞれ両方に設けられている。このため、最上側桁部の両側に設けられた溶接ナットを利用することで、メインラダーがいずれの傾斜方向に取り付けられた場合であっても、第1の柵体を車体の前側に位置する最上側桁部側に取り付けることができる。また、メインラダーを左右入れ替えて車体に付け替える場合であっても、取付ボルトを緩めて外すことで、第1の柵体を簡単に反対側の最上側桁部に取り付けることができる。したがって、メインラダーをいずれの方向に傾斜させて車体に取り付けた場合であっても、第1の柵体を最上フロア部における車体の前側に取り付けることができる。
【0013】
請求項2によれば、手摺りユニットは、手摺りと該手摺りから垂下する複数本の手摺り子とを有し、手摺り子の下端にはボルト座が形成され、ボルト座に挿通された取付ボルトが螺入されるボルト孔が、側桁のそれぞれに形成されている。このため、手摺りユニットはメインラダーの両側に対してそれぞれ取り付け及び取り外しが可能である。したがって、メインラダーの傾斜方向に対応させて車体の前側に位置する側桁に手摺りユニットを取り付けることができる。
【0014】
請求項3によれば、手摺りユニットと第1の柵体とが連続して一体となっているため、これらを同時に取り付けることができる。したがって、取付作業における作業性が向上する。
請求項4によれば、手摺りユニットは、ステップ体の左右両側に固定された側桁のそれぞれに溶接されているため、メインラダーを左右いずれの方向に傾斜させて取り付けた場合であっても、手摺りユニットは必ず車体の前側に位置付けられることになる。このため、メインラダーの傾斜方向に対応させて手摺りユニットを付け替える必要がない。したがって、作業性がより一層向上する。
【0015】
請求項5によれば、最上フロア部の第1の柵体が取り付けられた側面に隣接する側面であって、複数個のステップ体が形成された側と反対側の側面には、第2の柵体が取り付けられているため、第2の柵体はメインラダーの傾斜方向に対応させて付け替える必要がない。このため、作業の手間が軽減できる。また、第2の柵体があることにより、最上フロア部からステップ体に対する反対側への作業者の進行を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る運搬車両の側面図である。
【図2】ラダーが右上がりに取り付けられた本発明に係る運搬車両の正面図である。
【図3】アッパデッキの平面図である。
【図4】メインラダーの側面図である。
【図5】メインラダーの正面図である。
【図6】図4のVI-VI線図である。
【図7】図5のVII-VII線図である。
【図8】ラダーが左上がりに取り付けられた本発明に係る運搬車両の正面図である。
【図9】一体となった手摺りユニット及び第1の柵体が取り付けられたメインラダーを示す側面図である。
【図10】手摺りユニットが両側の側桁に取り付けられたメインラダーを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る運搬車両ついて図面を参照して説明する。
図1及び図2を参照すれば、運搬車両としてのダンプトラック車両1は自走可能な車体2を備え、この車体2は前後に前輪4及び後輪6を有している。前輪4は左右に一つずつ、後輪6は左右に二つずつ配置されている。
車体2の後部には、運搬物を積載するための荷台8が設けられている。荷台8は車体2と略等しい幅を有し、車体2の後部を支点として車体2に取り付けられた油圧シリンダ10を介して上下方向に傾斜、即ち、起伏可能である。また、荷台8の前部には車体2の前方に向けて延びる庇9が設けられており、この庇9は後述するアッパデッキ16及びキャブ12を上方から覆っている。
【0018】
車体2の上部前側、即ち、荷台8の前側には内部に運転席が確保されたキャブ12が設けられている。図の例では、キャブ12は車体2の左側に位置付けられている。
また、車体2の上部前側にはキャブ12へ通じるアッパデッキ16が設けられており、このアッパデッキ16は車体2の左右方向に亘って形成され、車体2と略等しい幅を有する。アッパデッキ16は、右側部16a、左側部16b及び中央部16cから構成されており、前述したキャブ12はアッパデッキ16の左側部16bに配置されている。
【0019】
アッパデッキ16(中央部16c)の前側には第1及び第2の出入口領域17a、17bが形成されており、これら第1及び第2の出入口領域17a、17bは左右方向にそれぞれ離間している。図3の例では、第1の出入口領域17aはアッパデッキ16の中央部16cの左側、第2の出入口領域17bは中央部16cの右側にそれぞれ位置付けられている。
【0020】
また、図3を参照すれば、アッパデッキ16にはその前側及び両側を囲むハンドレール36(36a、36b)、37a、37bが設けられている。ハンドレール36、37a、37bはパイプ状の柵形状を有し、アッパデッキ16にて移動する作業者の手摺りとなるとともに、作業者の落下を防止するためのものである。具体的には、ハンドレール36は、アッパデッキ16の中央部16cの左側に配置された平面視で略L字形状の屈曲部36aと、中央部16cの右側に配置された平面視で略コ字形状の柵部36bとからなり、これら屈曲部36a及び柵部36bは、アッパデッキ16に対して取り外し可能に取り付けられ、且つ、互いに左右入れ替えて取り付け可能である。これら屈曲部36a及び柵部36bは車幅方向に互いに離間して配置されており、第1又は第2の出入口領域17a,17bに対応する部位を除きアッパデッキ16の中央部16cの前側を部分的に囲んでいる。一方、ハンドレール37aはアッパデッキ16の右側部16aにおける前端縁及び右側縁を、また、ハンドレール37bはアッパデッキ16の左側部16bにおける前端縁及び左側縁をそれぞれ囲んでいる。
【0021】
なお、ハンドレール36、37a、37bの下端部にはガード板が設けられており、このガード板はハンドレール36、37a、37bの幅方向に延び、例えば4mmの高さを有している。これにより、作業者の爪先がハンドレール36、37a、37bから車体2の外側にはみ出るのを防止することができる。
また、アッパデッキ16の左側部16bに設けられた保護柵37bとキャブ12との間はアッパデッキ16からキャブ12内へ乗り込むための通路として形成されている。この通路に対応するアッパデッキ16の左側部16bの上面には滑り止め部材が取り付けられている。
【0022】
車体2の前側における下部、即ち、アッパデッキ16の下側にはエンジンやエンジンにより駆動される油圧ポンプ等の機器類14が配設されている。また、これら機器類14の近傍にはタンク装置(図示しない)が設けられている。タンク装置は、エンジンに供給するための燃料を貯留するための燃料タンク及び油圧ポンプに供給される作動油を貯留されるための作動油タンクから構成されている。したがって、エンジンにより駆動された油圧ポンプは作動油タンクから作動油を吸い上げ、前述した油圧シリンダ10や前輪4又は後輪6の走行用モータに向けて作動油を供給する。
【0023】
また、車体2の下部前側には第1及び第2のロアデッキ18a、18bがそれぞれ設けられており、これら第1及び第2のロアデッキ18a、18bはそれぞれ車体2の左右方向に離間しており、それぞれ前方向に向けて突出している。これらロアデッキ18a、18bの側面には、作業者が昇降するための昇降梯子19が設けられている。なお、第1及び第2のロアデッキ18a、18bの上面にはそれぞれ滑り止め部材が取り付けられている。
【0024】
車体2の前側には、車体2の下部からアッパデッキ16に昇降するためのメインラダー20が設けられている。このメインラダー20は、第1の出入口領域17aと第1のロアデッキ18a又は第2の出入口領域17bと第2のロアデッキ18bとの間に架け渡されている。図2の例では、メインラダー20は、第1のロアデッキ18aから正面視において右上がりに傾斜して第1の出入口領域17aに架け渡されるように設けられている。
【0025】
図4及び図5を参照すれば、メインラダー20は、傾斜した階段状に形成された複数個のステップ体24と、これら複数個のステップ体24の左右両側に沿って固定された側桁22とを有する。また、ステップ体24の最上段は最上フロア部25として形成されており、この最上フロア部25は作業者がメインラダー20とアッパデッキ16との間を移動する際に移動方向を換えるための踊り場となる。また、最上フロア部25の左右両側にはそれぞれ最上側桁部23が固定されており、この最上側桁部23は側桁22と連続して形成されている。
【0026】
最上フロア部25は、以下のようにして車体2に取り付けられている。
図6及び図7を参照すれば、最上フロア部25は両側がそれぞれ折り曲げられた屈曲板25aと、この屈曲板25aの折り曲げられた端部同士をそれぞれ連結する板状の連結板25bとを有している。これら屈曲板25aと連結板25bとは溶接により連結されている。また、連結板25bからはリブ25c、25dが上方に延びるように突出しており、これらリブ25c、25dは屈曲板25aを下側から支持している。
【0027】
最上フロア部25の屈曲板25aの上面には略長方形の開口部27が形成されている。また、屈曲板25aの下面にはナット38が設けられており、このナット38は最上フロア部25の上面に滑り止め部材39を取り付ける際に使用される。したがって、滑り止め部材39をステップ体24の上面に載置して滑り止め部材39の上からボルト(図示しない)を貫通させてナット38にねじ込むことにより滑り止め部材39を最上フロア部25に固定することができる。このとき、滑り止め部材39は、最上フロア部25の開口部27を閉塞する。また、最上フロア部25の連結板25bには楕円形状を有する複数のボルト孔29が形成されており、これらボルト孔29はステップ体24の幅方向に互いに離間して配置されている。
【0028】
一方で、第1の出入口領域17aが形成されたアッパデッキ16の前面には取付板40aが取り付けられている。この取付板40aにはボルト42を介してブラケット44が取り付けられていて、このブラケット44は車体2の前方に向けて水平に延びている。ブラケット44の下面にはボルト50を受け入れるための複数のナット54(図では3つ)が溶接にて設けられており、これらナット54はブラケット44の長手方向に沿って互いに間隔を存して配置されている。また、ブラケット44には各ナット54に対応してボルト50が貫通可能なボルト孔43が形成されている。
【0029】
最上フロア部25を車体2に取り付ける際には、まずブラケット44をボルト42及び取付板40aを介してアッパデッキ16に固定しておく。そして、メインラダー20の最上フロア部25をブラケット44に載置し、最上フロア部25のボルト孔29とブラケット44のボルト孔43とをそれぞれ合致させ、ステップ体24の開口部27を通じてボルト50をボルト孔29、43に貫通させてナット54にねじ込む。なお、ボルト50を挿通する際、最上フロア部25のボルト孔29には円筒形状を有する鉄製のスペーサ47が予め配設されており、このスペーサ47内を挿通させる。スペーサ47は、連結板25bを貫通し、また、その内径はボルト50を挿通可能な大きさを有している。また、ボルト50を挿通する際、ボルトヘッド直下にワッシャ45を配置し、このワッシャ45と連結板25bとの間、及びブラケット44と連結板25bとの間にゴム部材46を介装させる。その後、上述した滑り止め部材39を最上フロア部25に取り付けて、最上フロア部25の開口部27を閉塞する。これにより、最上フロア部25がブラケット44を介して車体2に取り付けられる。すなわち、メインラダー20を第1の出入口領域17aに通じるようにアッパデッキ16に取り付けることができる。したがって、図2に示されるように、メインラダー20は正面視において右上がりに傾斜している。
【0030】
一方、メインラダー20の最下部には取付部26が設けられており、この取付部26は略板形状を有し、側桁22の下端同士を連結している。取付部26には、ボルト孔(図示しない)が設けられている。また、第1のロアデッキ18aにはボルトを受け入れ可能な複数のナット(図示しない)が溶接にて設けられている。メインラダー20の最下部を第1のロアデッキ18aに載置し、取付部26のボルト孔と第1のロアデッキ18aのナットとをそれぞれ合致させ、ボルト(不図示)をボルト孔に貫通させてナットにねじ込むことにより、メインラダー20の最下部と第1のロアデッキ18aとを接続する。
【0031】
以上により、メインラダー20は車体2に取り付けられる。具体的には、メインラダー20の上部はアッパデッキ16の第1の出入口領域17aに対応した位置に、下部は第1のロアデッキ18aに対してそれぞれ取り外し可能に取り付けられる。
一方、第2の出入口領域17bが形成された位置のアッパデッキ16の前面に取付板40aと同様の取付板を取り付ければ、メインラダー20を反転させて車体2に取り付けることができる。この場合、第2のロアデッキ18bにも第1のロアデッキ18aに設けられたものと同様なナットを設ける。したがって、メインラダー20は、第2の出入口領域17bに通じるように車体2に対して取り外し可能に取り付けることができる。この場合、図8に示されるように、メインラダー20は正面視において左上がりに傾斜している。
【0032】
なお、メインラダー20は第1又は第2の出入口領域17a、17b及び第1及び第2のロアデッキ18a、18bとの間に架け渡されていれば、メインラダー20の最上フロア部25及び取付部26に限ることなく、例えば、メインラダー20の中間位置にて車体2に取り外し可能に取り付けられていてもよい。
このようにメインラダー20を第1の出入口領域17aと第1のロアデッキ18aとの間、又は、第2の出入口領域17bと第2のロアデッキ18bとの間に架け渡すことができるため、右上がり及び左上がりのいずれに傾斜する方向であってもメインラダー20を取り付けることができる。また、メインラダー20はボルトを介して車体2、即ち、第1又は第2の出入口領域17a、17bに通じる位置のアッパデッキ16及び第1又は第2のロアデッキ18a、18bにそれぞれ取り外し可能に取り付けられているため、一方の傾斜方向にて取り付けた後であっても他方の傾斜方向に付け替えることができる。したがって、製造段階だけでなく納品時又は納品後であっても、ユーザの要望や作業地域における法規に応じて、右上がり及び左上がりいずれの方向に対してもメインラダー20を取り付けることができる。
【0033】
なお、上述したように、ハンドレール36の屈曲部36a及び柵部36bは、アッパデッキ16に対して取り外し可能に取り付けられ、且つ、互いに左右入れ替えて取り付け可能である。このため、メインラダー20の傾斜方向に対応させて屈曲部36aと柵部36bとを互いに左右入れ替えることにより、第1又は第2の出入口領域17a、17bを確保することができる。
【0034】
図3の例では、メインラダー20は右上がりに傾斜するように取り付けられており、屈曲部36aが車体前方に向かって左側、柵部36bが右側に位置付けられ、第1の出入口領域17aが確保されている。一方、メインラダー20が左上がりに傾斜するように取り付けられたとき、又は付け替えられたとき、屈曲部36a及び柵部36bをそれぞれアッパデッキ16から取り外し、互いに左右入れ替え、さらに屈曲部36aを図3で視て時計回りに90度回転させてアッパデッキ16に取り付ける。これにより、第2の出入口領域17bが確保される。したがって、メインラダー20がいずれの傾斜方向であっても、メインラダー20の傾斜方向に対応させて屈曲部36a及び柵部36bを取り付けるだけで、第1又は第2の出入口領域17a、17bを確保することができ、これら屈曲部36a及び柵部36b、即ち、ハンドレール36は作業者のメインラダー20とアッパデッキ16との間における移動を妨げることはない。
【0035】
また、メインラダー20には、車体2の前側に位置する最上側桁部23に取付ボルト52を介して第1の柵体30が取り付けられている。この第1の柵体30は、最上フロア部25から車体2に対する前側への進行を防止するためのものである。また、メインラダー20の最上側桁部23のそれぞれ両側には、取付ボルト52を受け入れるための溶接ナット54が設けられている(図6参照)。このため、第1の柵体30はメインラダー20の最上側桁部23の両側において取り付け可能である。つまり、メインラダー20がいずれの傾斜方向に取り付けられた場合であっても、第1の柵体30を車体2の前側に位置する最上側桁部23側に取り付けることができ、作業者が最上フロア部25から車体2に対する前側へ進行するのを防止することができる。また、メインラダー22の傾斜方向を左右入れ替えて車体2に付け替える場合であっても、取付ボルト52を緩めて第1の柵体30を最上側桁部23から取り外して、反対側の最上側桁部23に容易に付け替えることができる。
【0036】
なお、第1の柵体30は、メインラダー20を車体2に取り付ける前にメインラダー20の最上側桁部23に取り付けてもよいし、メインラダー20を車体2に取り付けた後に最上側桁部23に取り付けてもよい。また、第1の柵体30は取り外し可能なため、第1の手摺り30が破損等した場合であっても容易に交換することができる。
また、メインラダー20には、複数個のステップ体24に沿って延び、少なくとも車体2の前側に位置する側桁22に固定されている手摺りユニット28が設けられている。この手摺りユニット28は、手摺り31と該手摺り31から垂下する複数本の手摺り子32とを有し、手摺り子32の下端にはボルト座33が形成されている。また、ステップ体24の左右両側に固定された側桁22のそれぞれにはボルト座33に挿通された取付ボルト53が螺入されるボルト孔(図示しない)が形成されている。このため、手摺りユニット28はメインラダー20の両側に対してそれぞれ取り外し可能である。したがって、メインラダー20の傾斜方向に対応させて車体2の前側に位置する側桁22に手摺りユニット28を取り付けることができる。
【0037】
図9を参照すれば、手摺りユニット28と第1の柵体30とが連続して一体となっているため、これらを同時に側桁22に取り付けることができる。したがって、作業性が向上する。
また、図10を参照すれば、手摺りユニット28は、ステップ体24の左右両側に固定された側桁22のそれぞれに溶接されていてもよい。この場合、メインラダー20を左右いずれの方向に傾斜させて取り付けた場合であっても、手摺りユニット28は必ず車体2の前側に位置付けられる。このため、メインラダー20の傾斜方向に対応させて手摺りユニット28を付け替える必要がない。したがって、作業性がより一層向上する。
【0038】
さらに、図4及び図5に示されるように、最上フロア部25の第1の柵体30が取り付けられた側面に隣接する側面であって、複数個のステップ体24が形成された側と反対側の側面には、第2の柵体35が取り付けられている。このような位置に第2の柵体35が固定されているので、メインラダー20の傾斜方向に対応させて付け替える必要がなく(図8参照)、最上フロア部25からステップ体24に対する反対側への作業者の進行を防止することができる。
【0039】
また、車体2の前側にはサブラダー60が取り付けられており、このサブラダー60は、メインラダー20が使用できない場合等の非常時に使用するためのものである。サブラダー60は、第1又は第2の出入口領域17a、17bと第2又は第1のロアデッキ18b,18aとの間に架け渡され、鉛直方向に延びている。図2に示されるように、メインラダー20が右上がりに傾斜して車体2に取り付けられたとき、サブラダー60は第1の出入口領域17aと第2のロアデッキ18bとの間に架け渡されている。一方、図8に示されるように、メインラダー20が左上がりに傾斜して車体2に取り付けられたとき、サブラダー60は第2の出入口領域17bと第1のロアデッキ18aとの間に架け渡されている。
【0040】
車体2の前面における第1又は第2の出入口領域17a、17bと第2又は第1のロアデッキ18b,18aとの中間位置には、サブラダー60を取り付けるための取付板62a、62bがそれぞれ設けられている。これら取付板62a,62bは、車体2の左右方向に互いに離間している。メインラダー20を車体2に取り付ける際の取付板40aとブラケット44及びブラケット44とメインラダー20のステップ体24との取り付けと同様に、取付板62a、62bにボルトを介してブラケット64を取り付け、このブラケット64に対してサブラダー60をボルト66により取り付けることができる。これにより、サブラダー60をメインラダー20の傾斜方向に対応させて車体2に取り付けることができる。また、メインラダー20の傾斜方向を左右入れ替える場合、メインラダー20の傾斜方向に対応させてサブラダー60も付け替えることができる。
【0041】
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施形態を逸脱しない範囲で種々の変更ができる。
例えば、運搬車両は、車体2の左右にそれぞれクローラを有したクローラ式運搬車両であってもよい。
また、車体2の前側に位置する側桁22には複数の手摺りユニット28が取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 ダンプトラック車両(運搬車両)
2 車体
4 前輪
6 後輪
8 荷台
9 庇
10 油圧シリンダ
12 キャブ
14 機器類
16 アッパデッキ
17a 第1の出入口領域
17b 第2の出入口領域
18a 第1のロアデッキ
18b 第2のロアデッキ
19 昇降梯子
20 メインラダー
22 側桁
23 最上側桁部
24 ステップ体
25 最上フロア部
25a 屈曲板
25b 連結板
25c、25d リブ
26 取付部
27 開口部
28 手摺りユニット
29 ボルト孔
30 第1の柵体
31 手摺り
32 手摺り子
33 ねじ座
35 第2の柵体
36 ハンドレール
36a 屈曲部
36b 柵部
37a、37b ハンドレール
38 ナット
39 滑り止め部材
40a 取付板
42 ボルト
43 ボルト孔
44 ブラケット
45 ワッシャ
46 ゴム部材
47 スペーサ
49 ボルト孔
50 ボルト
52 取付ボルト
53 取付ボルト
54 溶接ナット
60 サブラダー
62a、62b 取付板
64 ブラケット
66 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、
該車体の後部に設けられ、運搬物を積載するための荷台と、
前記車体の上部前側に配設されたキャブと、
前記車体の上部前側であって前記車体の左右方向に亘って形成され、前記キャブに通じるアッパデッキと、
該アッパデッキの前側に形成され、左右方向にそれぞれ離間している第1及び第2の出入口領域と、
前記車体の下部前側であって前記車体の左右方向に離間してそれぞれ前方向に向けて突出する第1及び第2のロアデッキと、
前記第1の出入口領域と前記第1のロアデッキ又は前記第2の出入口領域と前記第2のロアデッキとの間に架け渡されたメインラダーと
を備え、
前記メインラダーは、
傾斜した階段状に形成された複数個のステップ体と、
該複数個のステップ体の左右両側に沿って固定された側桁と、
前記ステップ体の最上段として形成された最上フロア部と、
前記側桁と一体として連続して形成され、前記最上フロア部の左右両側にそれぞれ固定された最上側桁部と、
前記複数個のステップ体に沿って延び、少なくとも前記車体の前側に位置する前記側桁に固定されている手摺りユニットと
を有し、
前記車体の前側に位置する前記最上側桁部に取付ボルトを介して取り付けられ、前記最上フロア部から前記車体に対する前側への進行を防止するための第1の柵体をさらに備え、
前記取付ボルトを受け入れるための溶接ナットが前記最上側桁部のそれぞれ両方に設けられていることを特徴とする運搬車両。
【請求項2】
前記手摺りユニットは、手摺りと該手摺りから垂下する複数本の手摺り子とを有し、
前記手摺り子の下端にはボルト座が形成され、
前記ボルト座に挿通された前記取付ボルトが螺入されるボルト孔が、前記ステップ体の左右両側に固定された側桁のそれぞれに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の運搬車両。
【請求項3】
前記手摺りユニットと前記第1の柵体とが連続して一体となっていることを特徴とする請求項2に記載の運搬車両。
【請求項4】
前記手摺りユニットは、前記ステップ体の左右両側に固定された側桁のそれぞれに溶接されていることを特徴とする請求項1に記載の運搬車両。
【請求項5】
前記最上フロア部の前記第1の柵体が取り付けられた側面に隣接する側面であって、前記複数個のステップ体が形成された側と反対側の側面には、第2の柵体が取り付けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の運搬車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−103649(P2013−103649A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249793(P2011−249793)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】