説明

運搬車両

【課題】運搬車両の荷こぼれを低減することができること。
【解決手段】運搬車両1は、荷物50を積載するベッセル5と、ベッセル5を載置し、かつ走行する車両本体3と、車両本体3に対してベッセル5を傾斜させるために伸縮して長さが変化する第1の傾動装置7及び第2の傾動装置8のうち少なくとも1つと、車両本体3がベッセル5に荷物を積載して走行している場合にベッセル5を水平にするように第1の傾動装置7及び第2の傾動装置8のうち少なくとも1つの長さを制御する制御装置4と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱山、工事現場等において、鉱石、岩又は土等の荷物を積載し搬送を行う運搬車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱山では、油圧ショベル等の作業機械が掘削を行い、掘削した鉱石を運搬車両であるダンプトラックに積載する。このダンプトラックは生産物である鉱石を処理設備のホッパまで運び投入している。例えば、特許文献1には、ダンプトラックが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−098843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鉱山等で用いられるダンプトラックは、坂道を往復することがある。また、鉱山等では、路面が舗装されてないことが多いので、運搬車両の走路は平坦とは限らない。坂道又は平坦ではない走路を運搬車両が走行すると、荷こぼれが発生するおそれがある。荷こぼれを低減することは、荷物の搬送効率、荷こぼれした走路の整備負荷の低減及び他の作業車の通行安全性を確保する観点からも好ましいものであるが、特許文献1には、荷こぼれの低減については言及がなく、改善の余地がある。本発明は、運搬車両の荷こぼれを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、荷物を積載するベッセルと、前記ベッセルを載置し、かつ走行する車両本体と、前記車両本体に対して前記ベッセルを傾斜させるために伸縮して長さが変化する傾動装置と、前記車両本体が前記ベッセルに荷物を積載して走行している場合に前記ベッセルを水平にするように前記傾動装置の長さを制御する制御装置と、を含むことを特徴とする運搬車両である。
【0006】
本発明において、前記傾動装置が前記車両本体の進行方向の前方側及び後方側にそれぞれ配置されることが好ましい。
【0007】
本発明において、前記車両本体は、運転台のない無人運搬車両であることが好ましい。
【0008】
本発明において、前記制御装置は、傾斜する前記車両本体の傾斜下方寄りに前記傾動装置が位置するように前記車両本体の走行方向を決定することが好ましい。
【0009】
本発明において、前記制御装置は、水平に対する傾斜角度を含む地図情報を記憶しており、前記車両本体の現在位置に対応する前記地図情報の前記傾斜角度を取得することが好ましい。
【0010】
本発明において、前記車両本体の前記現在位置を検出する車両本体位置計測器をさらに含むことが好ましい。
【0011】
本発明において、水平に対する前記車両本体の傾斜角度を測定する第1の傾斜角度計測器をさらに含むことが好ましい。
【0012】
本発明において、水平に対する前記ベッセルの傾斜角度を測定する第2の傾斜角度計測器をさらに含むことが好ましい。
【0013】
本発明において、前記ベッセルに積載されている荷物を検出可能な荷物検出装置をさらに含み、前記制御装置は、所定の荷物が前記ベッセルに積載されている場合、前記傾動装置の長さを制御することが好ましい。
【0014】
本発明において、前記制御装置は、前記車両本体が前記ベッセルに荷物を積載して坂道を走行している場合に前記傾動装置の長さを制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、運搬車両の荷こぼれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施形態1に係る運搬車両の構成例を示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示す運搬車両がホッパへ荷物を投入する一例を示す模式図である。
【図3】図3は、運搬車両の走路の一例を示す模式図である。
【図4】図4は、運搬車両の車両本体の構造を説明するための説明図である。
【図5】図5は、制御装置の機能を説明するための機能ブロック図である。
【図6】図6は、本実施形態に係る運搬車両の荷こぼれ低減制御の一例を示すフローチャートである。
【図7】図7は、荷こぼれ低減制御された運搬車両の一例を示す模式図である。
【図8】図8は、荷こぼれ低減制御された運搬車両の一例を示す模式図である。
【図9】図9は、実施形態2に係る運搬車両の荷こぼれ低減制御の一例を示すフローチャートである。
【図10】図10は、実施形態3に係る運搬車両の構成例を示す模式図である。
【図11】図11は、荷こぼれ低減制御された図10に示す運搬車両の一例を示す模式図である。
【図12】図12は、実施形態4に係る運搬車両の構成例を示す模式図である。
【図13】図13は、荷こぼれ低減制御された図12に示す運搬車両の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0018】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る運搬車両の構成例を示す模式図である。図2は、図1に示す運搬車両がホッパへ荷物を投入する一例を示す模式図である。図3は、運搬車両の走路の一例を示す模式図である。図2は、無人のダンプトラックである図1に示す運搬車両1が、例えば、掘削した鉱石等の荷物50を積載し、かつ運搬車両1が荷物50を処理設備のホッパ52まで運び投入している状態を示している。
【0019】
<運搬車両>
図1に示す運搬車両1は、例えば、運転台を備えていない無人のダンプトラック(無人運搬車両)である。運搬車両1は、車両本体3と、車両本体3に備えられた複数(本実施形態では4個)の車輪31、32と、車両本体3に備えられたベッセル5と、車両本体3とベッセル5との間に備えられた第1の傾動装置7及び第2の傾動装置8と、車両本体位置計測器93と、通信装置94とを含む。なお、図1では、ベッセル5は車両本体3に水平の状態で保持されている。
【0020】
運搬車両1は、採掘された鉱石又は鉱石の採掘時に発生した土砂若しくは岩石等を図3に示す積荷場51で、電動ショベルやホイールローダ等の積込機械59により荷物50としてベッセル5に積み込んで走行する。ベッセル5は、荷物50が積み込まれる容器(荷台)である。ベッセル5は、車両本体3に載置され搬送される。なお、運搬車両1はダンプトラックに限定されるものではない。また、運搬車両1は自身が有する内燃機関等によって得られる電力で走行する車両であっても、外部からの電力と自身が有する内燃機関等によって得られる電力との両方で走行する車両であってもよい。また、運搬車両1は自身が有する内燃機関で走行する車両であってもよい。
【0021】
運搬車両1は、鉱山で使用される機械(鉱山機械)であるので、主として未舗装路を走行することが多い。例えば、運搬車両1は、図3に示す積荷場51の区間E1と、ホッパ52の区間E2との間を往復し、積荷場51とホッパ52との間の坂道の区間Tを走行する。なお、図3に示す区間Tの路面の傾斜角は、水平線を基準としてθである。
【0022】
運搬車両1は、生産物である鉱石等の荷物50を処理設備のホッパ52まで運び、図2に示すように、第1の傾動装置7又は第2の傾動装置8を延ばすことで、ベッセル5を傾斜させる。これにより、荷物50はベッセル5からホッパ52へ投入される。
【0023】
第1の傾動装置7又は第2の傾動装置8は、車両本体3に対してベッセル5を傾斜させるために伸縮することができる。運搬車両1は、複数の傾動装置、つまり第1の傾動装置7、第2の傾動装置8が前記車両本体3の進行方向の前方側及び後方側にそれぞれ配置されている。
【0024】
車両本体3が運転台のない車両であるので、運搬車両1は、第1の傾動装置7及び第2の傾動装置8を車両本体3の進行方向の前方側及び後方側にそれぞれ配置する領域を確保しやすい。このような構造により、運搬車両1は、第1の傾動装置7及び第2の傾動装置8を備えても車両本体3を小型とすることができる。
【0025】
第1の傾動装置7は、油圧シリンダ71と、ロッド72と、ヒンジピン73を含むヒンジ部74とを含む。第1の傾動装置7は、ベッセル5のシリンダブラケット部5Aと車両本体3とを連結している。第2の傾動装置8は、油圧シリンダ81と、ロッド82と、ヒンジピン83を含むヒンジ部84とを含む。第2の傾動装置8は、ベッセル5のシリンダブラケット部5Bと車両本体3とを連結している。
【0026】
ロッド72、82は、油圧シリンダ71、81に供給される作動油の油量の変化に応じて長さが変化する。車両本体3を基準として、第1の傾動装置7と第2の傾動装置8との長さが異なる場合、車両本体3に対してベッセル5が傾斜する。図2に示す運搬車両1は、油圧シリンダ81が動作し、油圧シリンダ71が動作していない。このため、ロッド82が延伸し、ロッド72が縮んだままである。シリンダブラケット部5Bは、シリンダブラケット部5Aよりも車両本体3から離れ、ヒンジピン73を支点としてベッセル5が傾斜する。逆に、油圧シリンダ81が動作せず、油圧シリンダ71が動作する場合、ヒンジピン83を支点としてベッセル5が傾斜する。
【0027】
このような構造により、運搬車両1は、ホッパ52が進行方向の前方側又は後方側にあっても、第1の傾動装置7又は第2の傾動装置8のいずれかを延伸し、延伸しなかった第1の傾動装置7又は第2の傾動装置8側へベッセル5を傾斜し、荷物50を排出することができる。また、第1の傾動装置7又は第2の傾動装置8が同じ長さだけ延伸する場合、運搬車両1はベッセル5を車両本体3に対し平行な状態で持ち上げることができる。
【0028】
ホッパ52に荷物50を投入した運搬車両1は、ベッセル5が空荷となるので、図3に示す区間Tの下り坂を走行して、鉱石の採掘現場である積荷場51に向かう。ベッセル5が空荷であれば、運搬車両1は荷こぼれのおそれがない。そこで、運搬車両1は、図1に示すように第1の傾動装置7又は第2の傾動装置8を縮めたまま走行する。しかし、運搬車両1は、ベッセル5に荷物を積載した状態で上り坂又は下り坂を走行している場合、荷こぼれを低減する必要がある。
【0029】
運搬車両1は、ベッセル5に積載されている荷物50を検出可能な荷物検出装置をさらに含み、後述する制御装置は、所定の荷物50がベッセル5に積載されている場合、第1の傾動装置7又は第2の傾動装置8の長さを制御することが好ましい。
【0030】
荷物検出装置としては、例えば、運搬車両1に積載された荷物の搭載量を検出するペイロードメータ(搭載量検出装置)が用いられている。ペイロードメータは、重量計であって、車両本体3の車輪31及び車輪32を支持するサスペンションの圧力を検出する圧力センサで構成できる。ペイロードメータの検出圧力に基づいて、ベッセル5に積載された荷物の搭載量を検出している。なお、荷物検出装置として、ペイロードメータを説明したが、この構成に限らず、荷物検出装置として、撮像カメラ(撮像装置)を適用してもよい。
【0031】
運搬車両1は、未舗装路、上り坂又は下り坂を走行することができる。また、運搬車両1は、未舗装路の上り坂又は下り坂を走行することができる。運搬車両1が荷物50を搬送する場合、未舗装路が平坦でない場合又は坂道の傾斜が大きい場合には、ベッセル5から荷物50が落下するおそれがある。このような場合、運搬車両1は、第1の傾動装置7及び第2の傾動装置8の少なくとも一方を伸ばし、ベッセル5が水平と平行に近づくことで、荷こぼれを低減することができる。
【0032】
第1の傾動装置7及び第2の傾動装置8は、車両本体3の進行方向の前方側及び後方側にそれぞれ配置される。これにより、車両本体3が坂道を走行する場合、車両本体3を反転する動作をしなくても坂道の区間Tにおいて傾斜下方寄りとなるシリンダブラケット部5A又はシリンダブラケット部5Bを上昇させることができる。運搬車両1の荷こぼれ低減制御については、後述する。
【0033】
次に、運搬車両1は、車両本体位置計測器93を備え、GPS(Global Positioning System:全方位測位システム)衛星からの電波を受信し、現在位置を検出する機能を有している。例えば、運搬車両1は、車両本体位置計測器93より現在位置を検出し、図3に示す区間E1、区間T、区間E2のいずれかを走行しているのか把握することができる。
【0034】
なお、運搬車両1は、車両本体位置計測器93を備えなくても、制御装置が地図情報上で走行距離と走行方向をトレースする演算を行うことで現在位置を検出することもできる。また、運搬車両1が検出した現在位置の位置情報は、通信装置94により遠隔地の管理装置(不図示)に送られて、運搬車両1を制御したり管理したりするために用いられてもよい。
【0035】
運搬車両1が無人で動作するものだけでなく、作業者(オペレータ)の操作により動作する運搬車両1に対しても適用することができる。仮に、運搬車両1が有人であれば、前方を向いての走行は容易であるものの、後方への走行は熟練を要する。本実施形態において、運搬車両1は無人の装置であり、運搬車両1の走行は後述する制御装置によって動作が制御されるものである。このため、運搬車両1は、前後を問わず走行することができる。
【0036】
また、運搬車両1は、複数の傾動装置、つまり第1の傾動装置7、第2の傾動装置8が前記車両本体3の進行方向の前方側及び後方側にそれぞれ配置されている。このような構造により、車両本体3の方向転換をすることなしに、後述する制御装置は、傾斜する車両本体3の傾斜下方寄りに第1の傾動装置7又は第2の傾動装置8のいずれかが位置するように車両本体3の走行方向を決定することができる。その結果、運搬車両1は、方向転換に伴う燃料の消費を低減することができる。次に、車両本体3について説明する。
【0037】
<車両本体>
図4は、運搬車両の車両本体の構造を説明するための説明図である。図4に示したように、車両本体3は、制御装置4と、発電機35と、内燃機関であるエンジン34と、ステアリング36と、モータ33とを含んでいる。また、上述したように運搬車両1は、荷物検出器98を含んでもよい。そして、発電機35は、エンジン34と接続され、エンジン34の動力により電力を発生する自走駆動源である。
【0038】
また、制御装置4は、発電機35からの電力をモータ33及びステアリング36へ伝達する。モータ33は、車輪32内に配置されたインホイールモータである。また、モータ33は、車輪31内にも配置し車輪31を駆動輪としてもよい。また、モータ33は、車輪31及び32内にも配置し車両本体3が4輪駆動となってもよい。車両本体3は、車輪32及び車輪31のいずれかを回転駆動することで走行する。
【0039】
ステアリング36は、例えば電動モータを有し、制御装置4の制御に従って車輪31の方向を操舵する。制御装置4は、発電機35からの電力をモータ33に供給することで車両本体3を走行させる。
【0040】
油圧シリンダ71、81は、制御装置4の制御信号に基づいて供給される作動油によって、ロッド72、82を伸縮させることができる。
【0041】
運搬車両1は、地図情報上の進行方向や速度情報等を保持した走路情報を制御装置4内の後述する記憶手段に記憶する。運搬車両1は、走路の情報と車両本体位置計測器93から取得する現在位置情報とに基づいて進行方向や速度を決定し、走行する。また、運搬車両1は、記憶手段に記憶した情報に基づいて自立して走行条件を決定できる自律式無人ダンプとすることもできる。次に、制御装置4の機能について説明する。
【0042】
<制御装置の機能>
図5は、制御装置の機能を説明するための機能ブロック図である。制御装置4は、車両本体位置計測器93と、通信装置94と、モータ33と、ステアリング36と、油圧シリンダ71(81)と、に接続されている。
【0043】
制御装置4は、CPU(Central Processing Unit:中央演算装置)とメモリとを含むコンピュータシステムである。制御装置4は、演算手段41と、走行制御手段42と、油圧シリンダ制御手段43と、記憶手段44とを含んでいる。これらの機能は、制御装置4が演算手段41等の機能を実現するためのコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、演算手段41等は、ハードウェアで構成されてもよい。例えば、演算手段41等は、CPUの演算機能で構成され、記憶手段55は半導体メモリ、ハードディスクドライブ等で構成される。
【0044】
制御装置4は、通信装置94より取得した又は、既に記憶している地図情報を記憶手段44に保持している。制御装置4は、地図情報と、地図上の運搬車両1が走行する予定のコースとなる走路の情報として記憶している。走路(コース)の情報は、例えば、上述した図3に示す坂道の区間Tと、積荷場51の区間E1と、ホッパ52の区間E2とに識別された地図情報上の走路情報である。また地図情報は、図3に示す区間Tの坂道等のように路面の傾斜がある場合、コース上の路面の傾斜角度の情報を含むことが好ましい。
【0045】
また、走行制御手段42は、走路の情報に基づいて進行方向や速度を決定し、図4に示すモータ33及びステアリング36を制御する。油圧シリンダ71、81は、油圧シリンダ制御手段43の制御信号に基づいて供給される作動油によって、ロッド72、82を伸縮させることができる。
【0046】
また、上述したように運搬車両1が荷物検出器98を含む場合、荷物検出器98は、制御装置4に接続されている。制御装置4は、前後の車輪31、32における荷物検出器98(ペイロードメータ)の各シリンダ圧から演算手段41が演算して荷物の重量を求めることができる。
【0047】
<荷こぼれ低減制御>
図6は、本実施形態に係る運搬車両の荷こぼれ低減制御の一例を示すフローチャートである。まず、ステップS11において、車両本体位置計測器93は、運搬車両1の位置情報を計測する。
【0048】
次に、制御装置4は、処理をステップS12へ進める。ステップS12においては、制御装置4の演算手段41が前記位置情報を記憶手段44に記憶されている走路の情報に照会し、運搬車両1が走行する予定の走路(コース)上の現在位置が検出される。そして、演算手段41は、現在位置におけるコース上の路面の傾斜角度の情報を地図情報から取得する。
【0049】
次に、図6のフローチャートにおいて、制御装置4は、処理をステップS13へ進める。ステップS13において、ステップS12において現在位置におけるコース上の路面の傾斜角度、例えば図3に示す傾斜角度θを抽出した結果、演算手段41は、路面の傾斜角度θを車両本体3の傾斜角度とみなす。すなわち、演算手段41は、ステップS12において抽出した、地図情報上の傾斜角度、例えば図3に示す傾斜角度θを車両本体3の傾斜角度とする。
【0050】
ステップS13において、制御装置4は、傾斜角度θと閾値とを比較する。そして、傾斜角度θが閾値(例えば、10度)未満である場合(ステップS13、No)、制御装置4は、処理をステップS11に戻し、車両本体位置計測器93は、運搬車両1の位置情報を計測する。そして、油圧シリンダ71(81)の制御については、第1の傾動装置7及び第2の傾動装置8が縮小した、例えば図1に示す状態を維持する。傾斜角度θが閾値(例えば、10度)以上である場合(ステップS13、Yes)、制御装置4は、処理をステップS14に進める。なお、制御装置4は、水平に対する車両本体3の傾斜角度が所定の閾値以上である場合を判断せず、ステップS13を省略し上述したステップS12からステップ14へ処理を進めてもよい。
【0051】
次に、ステップS14においては、コース上の路面の傾斜角度θに基づいて、制御装置4は、傾斜するベッセル5の傾斜下方寄りを持ち上げるように、第1の傾動装置7又は第2の傾動装置8を動作させる。すると、ベッセル5は、傾斜下方寄りが持ち上がる方向に傾動する。このとき、制御装置4は、ベッセル5が傾動する角度が、前記傾斜角度θと等しくなるように第1の傾動装置7又は第2の傾動装置8を動作させて、ベッセル5を車両本体3に対し傾動させる。具体的には、油圧シリンダ制御手段43は第1の傾動装置7の油圧シリンダ71又は第2の傾動装置8の油圧シリンダ81の少なくとも1つを制御するための制御信号を送出する。すると、前記制御信号に従って、ロッド72又はロッド82の少なくとも1つの長さが変化して、ベッセル5の傾きが変更される。なお、ロッド72又はロッド82の少なくとも1つの長さを変化させる制御を油圧シリンダ制御という。
【0052】
図7及び図8は、荷こぼれ低減制御された運搬車両の一例を示す模式図である。図7において、運搬車両1が進行方向Vに走行する場合、車輪31が車輪32よりも進行方向V方向側(前方)にあり、かつ車輪31が車輪32よりも高くなっている。また、路面Gの傾斜角度は、θ1である。例えば、図7に示すように車両本体3の車輪32が車輪31よりも下がっている場合、制御装置4は、ロッド82をロッド72よりも長くするように制御する。このため、ベッセル5の傾斜角度α1の絶対値が、路面Gの傾斜角度θ1と同等な地図情報上の傾斜角度θに近づくように制御される。
【0053】
なお、車両本体3に対するベッセル5の傾斜角度α1は、車両本体3の基準線3Hとベッセル5の基準線5Hとのなす角である。傾斜角度α1と傾斜角度β1とは、車両本体3の基準線3Hに対して水平線Hとベッセル5の基準線5Hとがそれぞれ交差してできる角のうち斜め向かいに位置する錯角の関係になる。
【0054】
また、図8において、運搬車両1が進行方向Vに走行する場合、車輪32が車輪31よりも進行方向V方向側(前方)にあり、かつ車輪32が車輪31よりも高くなっている。また、路面Gの傾斜角度はθ2である。なお、車両本体3に対するベッセル5の傾斜角度α2は、車両本体3の基準線3Hとベッセル5の基準線5Hとのなす角である。傾斜角度α2と傾斜角度β2とは、車両本体3の基準線3Hに対して水平線Hとベッセル5の基準線5Hとがそれぞれ交差してできる角のうち斜め向かいに位置する錯角の関係になる。
【0055】
図8に示すように車両本体3の車輪31が車輪32よりも下がっている場合、制御装置4は、ロッド72をロッド82よりも長くするように制御する。このため、ベッセル5の傾斜角度α1の絶対値が、路面Gの傾斜角度θ2と同等な地図情報上の傾斜角度θに近づくように制御される。以上説明したように、制御装置4は、傾斜するベッセル5の傾斜下方寄りを持ち上げるように、ベッセル5を車両本体3に対し傾動する。
【0056】
また、制御装置4は、上述した荷物検出装置98の情報に基づいて、所定の荷物50がベッセル5に積載されている場合に、荷こぼれ低減のための制御を開始することが好ましい。これにより、運搬車両1は、油圧シリンダ制御(ステップS14)の処理を抑制し、油圧シリンダ71又は油圧シリンダ81の耐久性低下を抑制することができる。例えば、制御装置4は、荷物検出装置98であるペイロードメータからの重量情報により荷物50の重量が所定の閾値を超える場合、所定の荷物50がベッセル5に積載されているとして、処理をステップ11から開始することができる。
【0057】
上述したように運搬車両1は、車両本体が前記ベッセルに荷物を積載して走行している場合にベッセル5を水平にするように、第1の傾動装置7及び第2の傾動装置8の少なくとも一方の長さを変化させる制御を行う。これにより、運搬車両1は、荷こぼれを低減することができる。荷こぼれを低減することは、荷物の搬送効率が向上する。また、荷こぼれした走路の整備負荷が低減される。荷こぼれが低減された走路は、他の作業車が通行しても安全を確保できるようになるので好ましい。
【0058】
例えば、図7及び図8に示す運搬車両1は、第1の傾動装置7及び第2の傾動装置8のうち、傾斜する路面の傾斜下方寄りに位置する第1の傾動装置7及び第2の傾動装置8のいずれか一方を他方の第1の傾動装置7又は第2の傾動装置8よりも延伸させる。これにより、ベッセル5に積載された荷物50の荷こぼれが低減する。
【0059】
図7及び図8に示す運搬車両1は、上り車両であったが、運搬車両1は走行方向Vと逆方向に走行し、下り車両としてもよい。第1の傾動装置7及び第2の傾動装置8は、車両本体3の進行方向の前方側及び後方側にそれぞれ配置される。これにより、車両本体3が坂道を走行する場合、車両本体3を反転する動作をしなくてもよい。このため、運搬車両1を優先してホッパ52に荷物50を投入させることで、稼働率を向上させ、鉱山の生産性を向上させることができる。
【0060】
(実施形態2)
図9は、実施形態2に係る運搬車両の荷こぼれ低減制御の一例を示すフローチャートである。本実施形態では、運搬車両3の制御装置は、地図情報を用いず、傾斜角度測定器91が測定した実際の路面Gの傾斜角度に合わせてベッセル5を水平にするように制御する。このため、実施形態2は、実施形態1とは異なり、記憶手段44が地図情報を記憶していないので、記憶手段44の容量を低減することができる。次の説明においては、実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0061】
<傾斜角度測定器>
図1及び図2に示すように、実施形態2の運搬車両1は車両本体3に傾斜角度測定器91を備え、傾斜角度測定器91は車両本体3の傾斜を検知することができる。例えば、車両本体3の傾斜角度が車両本体3の基準線3Hと水平との角度で決定し、路面Gが水平の場合、傾斜角度は0度である。車両本体3の基準線3Hの設定の仕方は、これに限られず、所定の規則で定められていればよい。また、図5に示すように、運搬車両1が傾斜角度測定器91を含む場合、傾斜角度測定器91は制御装置4に接続されている。
【0062】
なお、傾斜角度測定器91は、例えばポテンショメータ又は静電容量式加速度センサで構成することができる。傾斜角度測定器91は、水平をゼロ度として、マイナス角からプラス角まで測ることができる。例えば、車輪32が車輪31よりも下がっている場合をプラス角度とし、車輪32が車輪31よりも上がっている場合をマイナス角度とする。なお、ベッセル5の傾斜の基準線5Hは、ベッセル5の上面上にある基準線である。
【0063】
なお、車両本体3が傾斜している場合、上述したペイロードメータの各シリンダ圧に傾斜に伴うずれが生じるおそれがある。この場合であっても、制御装置4は、傾斜角度測定器91から取得する傾斜角度の情報により、傾斜に伴うずれを演算手段44が補正する演算をすることができる。
【0064】
<荷こぼれ低減制御>
まず、ステップS21において、制御装置4は、傾斜角度測定器91により車両本体3の傾斜角度、例えば図7に示す傾斜角度β1又は図8に示す傾斜角度β2を計測する。そして、記憶手段44は、車両本体3の傾斜角度を記憶しておく。
【0065】
例えば、制御装置4は、車両本体3に搭載された傾斜角度測定器91によって、図7に示す車両本体3の傾斜角度β1を取得する。または、制御装置4は、車両本体3に搭載された傾斜角度測定器91によって、図8に示す車両本体3の傾斜角度β2を取得する。
【0066】
次に、制御装置4は、処理をステップS22へ進める。ステップS22において、ステップS21において取得した車両本体3の傾斜角度が閾値未満である場合(ステップS22、No)、制御装置4は、処理をステップS21に戻し、油圧シリンダ71(81)の制御については、第1の傾動装置7及び第2の傾動装置8が縮小した、例えば図1に示す状態を維持する。ステップS21において取得した車両本体3の傾斜角度が閾値以上である場合(ステップS22、Yes)、制御装置4は、処理をステップS23に進める。
【0067】
閾値は、車両本体3の傾斜による荷こぼれが生じる条件を判定するための値である。閾値は、例えば、車両本体3の傾斜により許容できない荷こぼれが生じると予測される値とすることができる。制御装置4は、水平に対する車両本体3の傾斜角度と所定の閾値とを比較し(ステップS22)、所定の閾値より小さい場合には、油圧シリンダ71又は油圧シリンダ81が動作しないようにすることができる。このため、第1の傾動装置7の油圧シリンダ71又は第2の傾動装置8の油圧シリンダ81の煩雑な伸縮を抑制して、これらの耐久性低下を抑制することができる。なお、後述する変形例のように、制御装置4は、ステップ22の処理を省略することもできる。
【0068】
運搬車両1は、図1に示すように第1の傾動装置7又は第2の傾動装置8を縮めたままの場合、例えば図7(図8)に示す車両本体3が傾いた傾斜角度β1(β2)分、ベッセル5も傾斜することになる。このため、ステップS23では、制御装置4は、ステップ21において計測し、かつベッセル5が傾いた傾斜角度β1(β2)分を相殺(キャンセル)するように第1の傾動装置7又は第2の傾動装置8を動作させる。つまり、制御装置4は、傾斜するベッセル5の傾斜下方寄りを持ち上げるように、第1の傾動装置7又は第2の傾動装置8を動作させる。すると、ベッセル5は、傾斜下方寄りが持ち上がる方向に傾動する。このとき、制御装置4は、ベッセル5が傾動する角度が、傾斜角度β1(β2)と等しくなるように第1の傾動装置7又は第2の傾動装置8を動作させて、ベッセル5を車両本体3に対し傾動させる。これにより、ベッセル5(の基準線5H)が水平線Hと平行に近づいていく。
【0069】
また、車両本体の傾斜角度β1(β2)とコース上の路面Gの傾斜角度θ1(θ2)とは同じと見ることができる。このため、制御装置4は、ベッセル5が傾動する角度が、路面Gの傾斜角度θ1(θ2)と等しくなるように第1の傾動装置7又は第2の傾動装置8を動作させて、ベッセル5を車両本体3に対し傾動させてもよい。
【0070】
また、車両本体3に対するベッセル5の傾斜角度α1は、錯角の関係にある水平線Hと車両本体3の基準線3Hとのなす角である傾斜角度β1の値に近づくように、油圧シリンダ制御手段43が処理を行ってもよい。図8に示す運搬車両1についても、制御装置4は同様に処理することができる。
【0071】
地図情報が坂道でなくても、実際の路面Gは傾斜していることがある。本実施形態では、制御装置4は、地図情報上の傾斜角度を判断することなく実際の路面Gの傾斜に対応してベッセル5を水平にするように第1の傾動装置7又は第2の傾動装置8の長さを制御する。運搬車両1は、実際の路面の傾斜に合わせて荷こぼれを低減することができるので、より確実に荷こぼれを抑制できる。
【0072】
また、制御装置4は、上述した荷物検出装置98の情報に基づいて、所定の荷物50がベッセル5に積載されている場合に、荷こぼれ低減のための制御を開始することが好ましい。これにより、運搬車両1は、油圧シリンダ制御(ステップS23)の処理を抑制し、油圧シリンダ71又は油圧シリンダ81の耐久性低下を抑制することができる。例えば、制御装置4は、荷物検出装置98であるペイロードメータからの重量情報により荷物50の重量が所定の閾値を超える場合、所定の荷物50がベッセル5に積載されているとして、処理をステップ21から開始することができる。
【0073】
(変形例)
実施形態2に係る運搬車両の荷こぼれ低減制御の変形例としては、図9に示すフローチャートにおいて、制御装置4は、上述したステップS21を処理した後、上述したステップS22を省略して、ステップS23の処理へ進めてもよい。
【0074】
ステップS23では、制御装置4は、ステップ21において計測し、かつベッセル5が傾いた傾斜角度β1(β2)分を相殺(キャンセル)するように第1の傾動装置7又は第2の傾動装置8を動作させる。つまり、制御装置4は、傾斜するベッセル5の傾斜下方寄りを持ち上げるように、第1の傾動装置7又は第2の傾動装置8を動作させる。すると、ベッセル5は、傾斜下方寄りが持ち上がる方向に傾動する。このとき、制御装置4は、ベッセル5が傾動する角度が、傾斜角度β1(β2)と等しくなるように第1の傾動装置7又は第2の傾動装置8を動作させて、ベッセル5を車両本体3に対し傾動させる。これにより、ベッセル5(の基準線5H)が水平線Hと平行に近づいていく。
【0075】
油圧シリンダ制御手段43は、第1の傾動装置7の油圧シリンダ71又は第2の傾動装置8の油圧シリンダ81の少なくとも1つをリアルタイムに制御する制御信号を送出する。そして、前記制御信号に従って、ロッド72又はロッド82の少なくとも1つの長さが変化し、ベッセル5が水平となるように油圧シリンダ制御手段43が油圧シリンダ制御の処理を行う。
【0076】
<未舗装路の走行>
上述した実施形態1及び実施形態2の運搬車両1は坂道を走行している。運搬車両1は、未舗装路を走行する場合でも、制御装置4は、上述した実施形態1及び実施形態2の荷こぼれ低減制御を処理することができる。
【0077】
未舗装路を走行する運搬車両1は、坂道を走行する運搬車両1よりも車両本体3の前後方向の傾斜角度の変動(前後のピッチング)の頻度が高まることが考えられる。例えば、制御装置4の演算手段41が傾斜角度測定器91から取得した傾斜角度の変動の頻度を捉え、未舗装路の走行を判断してもよい。また、制御装置4は、上述した地図情報に未舗装路の情報を記憶手段44に記憶しており、演算手段41が現在位置における未舗装路の情報を地図情報から取得するようにしてもよい。
【0078】
未舗装路は舗装路と比較して路面の凹凸が大きいため、運搬車両1の前後の変動(ピッチング)の周期が早くなる。また、未舗装路の路面の凹凸の振幅は、舗装路よりも大きいことが多い。運搬車両1の走行中にベッセル5を水平に制御する場合、制御装置4は、前記周期及び前記振幅に合わせて油圧シリンダ71(81)を伸縮させる必要がある。このため、運搬車両1が未舗装路を走行中にベッセル5を水平に制御する場合、油圧シリンダ71(81)の伸縮の頻度が高まるとともに伸縮長も大きくなる結果、油圧シリンダ71(81)の耐久性低下を招くおそれがある。
【0079】
未舗装路を走行する運搬車両1の制御装置4は、水平に対する車両本体3の傾斜角度と所定の閾値とを比較し(ステップS22)、所定の閾値より小さい場合、つまり未舗装路の凹凸の振幅が小さい場合には、油圧シリンダ71又は油圧シリンダ81が動作しないようにすることができる。このとき、所定の閾値は、例えば、運搬車両1の走行中に、許容できない荷こぼれが生じると予測される大きさとする。運搬車両1は、未舗装路を走行中に許容できない荷こぼれが生じると予測される場合に、油圧シリンダ71(81)の伸縮を行うようにして、荷こぼれを抑制する。このようにすることで、油圧シリンダ71(81)の伸縮の頻度を低減できるので、未舗装路を走行する運搬車両1は油圧シリンダ71又は油圧シリンダ81の耐久性低下を抑制することができる。なお、坂道の未舗装路を走行する運搬車両1であっても、油圧シリンダ71又は油圧シリンダ81の耐久性低下を抑制することができる。
【0080】
(実施形態3)
図10は、実施形態3に係る運搬車両の構成例を示す模式図である。図11は、荷こぼれ低減制御された図10に示す運搬車両の一例を示す模式図である。次の説明においては、実施形態1及び実施形態2で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0081】
<運搬車両>
図10及び図11に示す運搬車両1Aは、例えば、運転台を備えていない無人のダンプトラックである。運搬車両1Aは、上述した運搬車両1と同様に、車両本体3と、車両本体3に備えられた複数(本実施形態では4個)の車輪31、32と、車両本体3に備えられたベッセル5と、車両本体3とベッセル5との間に備えられた第2の傾動装置8と、車両本体位置計測器93と、通信装置94とを含む。また、運搬車両1Aは、第1の傾動装置7の代わりに、ヒンジ部76を含む。また、運搬車両1Aは、運搬車両1と同様に、傾斜角度測定器91を含んでもよい。
【0082】
言い換えると、本実施形態に係る運搬車両1Aは、実施形態1の運搬車両1が含む第1の傾動装置7及び第2の傾動装置8のうち、第1の傾動装置7を含まない。このような構造のため、運搬車両1Aは、製造コストを低減することができる。
【0083】
車両本体3が運転台のない車両であるので、運搬車両1Aは、第2の傾動装置8を車両本体3の進行方向の前方側又は後方側のいずれかに配置する領域を確保しやすい。このような構造により、運搬車両1Aは、第2の傾動装置8を備えても車両本体3を小型とすることができる。
【0084】
図11に示すロッド82は、油圧シリンダ81の油量の変化に応じて伸縮する。車両本体3を基準として、第2の傾動装置8のロッド82が延伸する場合、車両本体3に対してベッセル5が傾斜する。図11に示す運搬車両1Aは、油圧シリンダ81が動作することでロッド82が延伸し、シリンダブラケット部5Bは、車両本体3から離れ、ヒンジ部76を支点としてベッセル5が傾斜する。
【0085】
上述した制御装置4は、傾斜する車両本体3の傾斜下方寄りに第2の傾動装置8が位置するように車両本体3の走行方向を決定する。その上で、運搬車両1Aも上述した運搬車両1と同様に、実施形態1及び実施形態2に示した運搬車両の荷こぼれ低減制御の一例を示すフローチャートに沿って制御される。なお、制御装置4は、水平に対する車両本体3の傾斜角度が所定の閾値以上であるか否か(ステップS13、ステップS22)を判断してもしなくてもよい。
【0086】
例えば、図11に示す運搬車両1Aは、上述した図6に示すステップS14において油圧シリンダ制御が処理されると、ベッセル5の基準線5Hが水平線Hと平行に近づくことになる。なお、車両本体3に対するベッセル5の傾斜角度α1は、錯角の関係にある水平線Hと車両本体3の基準線3Hとのなす角である傾斜角度β1の値に近づくように、油圧シリンダ制御手段43が処理を行ってもよい。
【0087】
上述したように運搬車両1Aは、ベッセル5を水平にするように、第2の傾動装置8の長さを変化させる制御を行う。これにより、運搬車両1Aは、荷こぼれを低減することができる。
【0088】
(実施形態4)
図12は、実施形態4に係る運搬車両の構成例を示す模式図である。図13は、荷こぼれ低減制御された図12に示す運搬車両の一例を示す模式図である。本実施形態に係る運搬車両1Bは、有人のダンプトラックとしている。次の説明においては、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0089】
<運搬車両>
図12及び図13に示す運搬車両1Bは、例えば、運転台38を備えた有人のダンプトラックであり、エンジンと発電機が備えられている。運搬車両1Bは自身が有する内燃機関等によって得られる電力で走行する車両であっても、外部からの電力と自身が有する内燃機関等によって得られる電力との両方で走行する車両であってもよい。また、運搬車両1Bは自身が有する内燃機関で走行する車両であってもよい。
【0090】
運搬車両1Bは、上述した運搬車両1と同様に、車両本体3と、車両本体3に備えられた複数(本実施形態では4個)の車輪31、32と、車両本体3に備えられたベッセル5と、車両本体3とベッセル5との間に備えられた第1の傾動装置7と、車両本体位置計測器93と、通信装置94とを含む。また、運搬車両1Bは、運搬車両1と同様に、傾斜角度測定器91を含んでもよい。また、運搬車両1Bは、第2の傾動装置8の代わりに、ヒンジ部86を含む。なお、運搬車両1Bは、運転台38を備えた無人のダンプトラックであってもよい。また、車両本体位置計測器93はなくてもよい。
【0091】
言い換えると、本実施形態に係る運搬車両1Bは、実施形態1の運搬車両1が含む第1の傾動装置7及び第2の傾動装置8のうち、第2の傾動装置8を含まない。このような構造のため、運搬車両1Bは、製造コストを低減することができる。
【0092】
図13に示すロッド72は、油圧シリンダ71の油量の変化に応じて伸縮する。車両本体3を基準として、第1の傾動装置7のロッド72が延伸する場合、車両本体3に対してベッセル5が傾斜する。図13に示す運搬車両1Bは、油圧シリンダ71が動作することでロッド72が延伸し、シリンダブラケット部5Aは、車両本体3から離れ、ヒンジ部86を支点としてベッセル5が傾斜する。
【0093】
運搬車両1Bも上述した運搬車両1と同様に、実施形態1及び実施形態2に示した運搬車両の荷こぼれ低減制御の一例を示すフローチャートに沿って制御できる。なお、制御装置4は、水平に対する車両本体3の傾斜角度が所定の閾値以上であるか否か(ステップS13、ステップS22)を判断してもしなくてもよい。
【0094】
なお、本実施形態では、制御装置4は、例えば、運転台38のオペレータに音声、あるいは運転台に設けられたモニタ(表示部)の画面上にステアリングを制御する方向を矢印のマークや文字等で指示してもよい。そして、オペレータは、運搬車両1Bを進行方向Vに走行させることができる。
【0095】
例えば、図13に示す運搬車両1Bは、上述した図6に示すステップS14において油圧シリンダ制御が処理されると、ベッセル5の基準線5Hが水平線Hと平行に近づくことになる。また、車両本体3に対するベッセル5の傾斜角度α1は、錯角の関係にある水平線Hと車両本体3の基準線3Hとのなす角である傾斜角度β1の値に近づくように、油圧シリンダ制御手段43が処理を行ってもよい。
【0096】
上述したように運搬車両1Bは、ベッセル5を水平にするように、第1の傾動装置7の長さを変化させる制御を行う。これにより、運搬車両1Bは、荷こぼれを低減することができる。
【0097】
以上説明した実施形態の運搬車両1、1A、1Bは、車両本体3に対してベッセル5を傾斜させるために伸縮して長さが変化する第1の傾動装置7及び第2の傾動装置8のうち少なくとも1つと、ベッセル5を水平にするように第1の傾動装置7及び第2の傾動装置8のうち少なくとも1つの長さを制御する制御装置4とを含む。運搬車両1、1A、1Bは、特に、鉱山で用いられる運搬車両であることが好ましい。鉱山では、未舗装、坂道をコースに含む。このため、坂道、平坦ではない走路(未舗装路)、又は未舗装路の坂道を運搬車両1、1A、1Bが走行しても荷こぼれ低減の効果を有効に利用できる。
【符号の説明】
【0098】
1、1A、1B 運搬車両
3 車両本体
3H 車両本体の基準線
4 制御装置
5 ベッセル
5A、5B シリンダブラケット部
5H ベッセルの基準線
7、8 傾動装置
31、32 車輪
38 運転台
41 演算手段
43 油圧シリンダ制御手段
44 記憶手段
50 荷物
51 積荷場
52 ホッパ
71、81 油圧シリンダ
72、82 ロッド
74、84、76、86 ヒンジ部
91 傾斜角度測定器
93 車両本体位置計測器
98 荷物検出装置
G 路面
H 水平線
α1、α2 傾斜角度
β1、β2 傾斜角度
θ、θ1、θ2 路面の傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を積載するベッセルと、
前記ベッセルを載置し、かつ走行する車両本体と、
前記車両本体に対して前記ベッセルを傾斜させるために伸縮して長さが変化する傾動装置と、
前記車両本体が前記ベッセルに荷物を積載して走行している場合に前記ベッセルを水平にするように前記傾動装置の長さを制御する制御装置と、
を含むことを特徴とする運搬車両。
【請求項2】
前記傾動装置が前記車両本体の進行方向の前方側及び後方側にそれぞれ配置される請求項1に記載の運搬車両。
【請求項3】
前記車両本体は、運転台のない無人運搬車両である請求項1又は2に記載の運搬車両。
【請求項4】
前記制御装置は、傾斜する前記車両本体の傾斜下方寄りに前記傾動装置が位置するように前記車両本体の走行方向を決定する請求項1から3のいずれか1項に記載の運搬車両。
【請求項5】
前記制御装置は、水平に対する傾斜角度を含む地図情報を記憶しており、前記車両本体の現在位置に対応する前記地図情報の前記傾斜角度を取得する請求項1から4のいずれか1項に記載の運搬車両。
【請求項6】
前記車両本体の前記現在位置を検出する車両本体位置計測器をさらに含む請求項5に記載の運搬車両。
【請求項7】
水平に対する前記車両本体の傾斜角度を測定する第1の傾斜角度計測器をさらに含む請求項1から6のいずれか1項に記載の運搬車両。
【請求項8】
水平に対する前記ベッセルの傾斜角度を測定する第2の傾斜角度計測器をさらに含む請求項1から7のいずれか1項に記載の運搬車両。
【請求項9】
前記ベッセルに積載されている荷物を検出可能な荷物検出装置をさらに含み、前記制御装置は、所定の荷物が前記ベッセルに積載されている場合、前記傾動装置の長さを制御する請求項1から8のいずれか1項に記載の運搬車両。
【請求項10】
前記制御装置は、前記車両本体が前記ベッセルに荷物を積載して坂道を走行している場合に前記傾動装置の長さを制御する請求項1から9のいずれか1項に記載の運搬車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−1362(P2013−1362A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137883(P2011−137883)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)