説明

運転支援装置

【課題】円滑に駐車を行うことができる運転支援装置を提供する。
【解決手段】駐車場の所定の駐車スペースに一の車両が駐車するのに要する時間、あるいは所定の駐車スペースから一の車両が発進するのに要する時間に基づいて、他の車両の運転支援を行う。例えば、自車両が駐車スペースに駐車する場合は、他車両を制御して駐車中は自車両に接近できないように速度制限や停車をさせ、あるいは別ルートを通過させることによって、自車両の運転者は心理的なプレッシャーや空間的な障害を受けることなくスムーズに駐車することを可能とする。また、自車両が駐車スペースから発進する場合も、発進中に他車両の速度制御などを行うことによって速やかに発進し、その結果として他車両の駐車も速やかに駐車させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転の支援を行う運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の運転支援装置として、自車両の進行方位、走行距離、駐車場地図情報に基づいて駐車場内における自車両の位置を算出すると共に、駐車場内の全ての車両の位置と進行方位を取得することによって、駐車場内の各車両の位置や進行方向を自車両の運転者に表示し、自車両を駐車スペースに誘導するものが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−268648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の運転支援装置にあっては、空き駐車スペースがどこにあるのかが分かっても、他車両との関係によっては当該スペースに最短時間でいけるかまでは不明である。更に、駐車をしている最中は通路をふさいでしまうが、他車両が自車両の近くで待機していると運転者は心理的にプレッシャーを感じ焦りを覚えてしまい、あるいは他車両の存在によって駐車時の軌道を変える必要が生じることによって駐車時間がかかってしまう場合がある。このように、従来の運転支援装置では、円滑な駐車が阻害されてしまう可能性があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、円滑に駐車を行うことができる運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る運転支援装置では、駐車場の所定の駐車スペースに一の車両が駐車するのに要する時間、あるいは所定の駐車スペースから一の車両が発進するのに要する時間に基づいて、他の車両の運転支援を行うことを特徴とする。
【0007】
この運転支援装置では、駐車場の所定の駐車スペースに一の車両を駐車するのに要する時間、あるいは所定の駐車スペースから一の車両が発進するのに要する時間に基づいて他の車両の運転支援を行うことによって、例えば、自車両が駐車スペースに駐車する場合は、他車両を制御して駐車中は自車両に接近できないように速度制限や停車をさせ、あるいは別ルートを通過させることによって、自車両の運転者は心理的なプレッシャーや空間的な障害を受けることなくスムーズに駐車することができる。また、自車両が駐車スペースから発進する場合も、発進中に他車両の速度制御などを行うことによって速やかに発進し、その結果として他車両の駐車も速やかに駐車させることが可能となる。以上によって、円滑に駐車を行うことができる。
【0008】
また、本発明に係る運転支援装置では、他の車両が一の車両周辺の所定のスペースに進入しないように、他の車両の運転支援を行うことが好ましい。これによって、自車両が駐車スペースに駐車している最中や発進する最中は他車両が近づかないように制御することが可能となり、これによって、自車両の運転者は心理的なプレッシャーや空間的な障害を受けることなくスムーズに駐車することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、円滑に駐車を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る運転支援装置のブロック構成を示した図である。
【図2】一の車両が駐車場に進入し、他の車両が駐車スペースに駐車しようとしている様子を示す図である。
【図3】図2に示す車両M2が駐車スペースに駐車をする際に車両M2において行われる制御処理を示すフローチャートである。
【図4】図2に示す車両M2が駐車スペースに駐車をする際に他車両に対して当該駐車スペースを譲る場合に車両M2において行われる制御処理を示すフローチャートである。
【図5】図2の車両M2が駐車スペースに駐車した後、当該駐車スペースから発進する際に車両において行われる制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明に係る運転支援装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
まず、本発明の実施形態に係る運転支援装置1の構成を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る運転支援装置1のブロック構成を示した図である。運転支援装置1は、駐車場において他車両との関係で駐車動作をスムーズに行えるように自車両を制御すると共に通信することによって他車両の制御を行う機能を有するものである。図1に示すように、運転支援装置1は、ECU(Electronic Control Unit)2、通信器3を備えて構成されている。
【0013】
通信器3は、他車両との間で情報の送受信を行う機能を有しており、送信部と受信部から構成されている。通信器3では、例えば、駐車を円滑に行うために他車両の動作を制御する制御信号を出力するとともに、当該制御信号が他車両から送信された場合に受信する機能を有している。
【0014】
ECU2は、運転支援装置1全体の制御を行う電子制御ユニットであり、例えばCPUを主体として構成され、ROM、RAM、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などを備えている。ECU2は、演算部4と制御部5を備えて構成されている。
【0015】
演算部4は、駐車開始時に自車両に向かっている他車両が存在するか否かの判定を行う機能を有する。また、自車両が駐車スペースに駐車するまでに要する時間を演算すると共に自車両が駐車を行うために必要とされる必要スペースS(図2参照)を推定し、更に、他車両が必要スペースSに到達するまでに要する時間を演算する機能を有している。更に、他車両の運転者にとって他の駐車スペースの空き及び別ルートがあるか否かを判定する機能を有している。また、他車両が自車両の駐車を行っている通路L1を通過して他の空きスペースASにまで到着するまでにかかる時間を演算すると共に、他車両が別ルートL2を通過して他の空きスペースASへ到着するまでにかかる時間を演算する機能を有している(図2参照)。また、本通路L1の先に駐車の空きスペースがあるか否かを判定する機能を有し、更に、他車両が駐車スペースを探しているか否かを判定する機能を有している。
【0016】
制御部5は、演算部4の演算結果に基づいて自車両や他車両の制御を行うことによって運転支援を行う機能を有している。具体的には、通信器3を介して他車両の速度を制御し、停車させる機能を有し、他車両の運転者に別ルートを通知すると共にナビゲートする機能を有している。また、駐車場の駐車スペースに駐車するのに自車両が要する時間、あるいは駐車スペースから自車両が発進するのに要する時間を他車両に通知すると共に、駐車場の駐車スペースに駐車するのに他車両が要する時間、あるいは駐車スペースから他車両が発進するのに要する時間を自車両の運転者に通知する機能を有している。また、制御部5は、他車両が自車両周辺の必要スペースSに進入しないように、他車両の速度制御を行い、あるいは運転者に通知して待機させるなどの運転支援を行う機能を有している。
【0017】
次に、図2〜図5を参照して、本実施形態に係る運転支援装置1の動作について説明する。図2は、一の車両が駐車場に進入し、他の車両が駐車スペースに駐車しようとしている様子を示す図である。図3は、図2に示す車両M2が駐車スペースに駐車をする際に車両M2において行われる制御処理を示すフローチャートである。図4は、図2に示す車両M2が駐車スペースに駐車をする際に他車両に対して当該駐車スペースを譲る場合に車両M2において行われる制御処理を示すフローチャートである。図5は、図2の車両M2が駐車スペースに駐車した後、当該駐車スペースから発進する際に車両において行われる制御処理を示すフローチャートである。なお、車両M1及び車両M2は、請求項における「一の車両」及び「他の車両」に該当し、一方が「一の車両」となった場合は他方の車両が「他の車両」となる。また、以下においては車両M2を自車両とし、車両M1を他車両として説明しているが、車両M1を自車両として車両M2を他車両とした場合も本発明を適用することができる。
【0018】
まず、図2に示す車両M2が駐車スペースに駐車をする際に車両M2において行われる制御処理について説明する。図3に示すように車両M2のECU2の演算部4は、駐車開始時に自車両である車両M2に向かっている他車両が存在するか否かの判定を行う機能を有している(ステップS10)。例えば、図2の車両M1が車両M2の存在する通路に曲がっている場合はS10において、車両M2に向かっている他車両が存在すると判定され、車両M1がその通路に曲がってこない場合はS10において存在しないと判定される。S10で存在しないと判定された場合は、図3に示す制御処理は終了する。一方、S10で存在すると判定された場合、演算部4は、車両M2が駐車スペースに駐車するまでに要する時間T1を演算すると共に、車両M2が駐車を行うために必要とされる必要スペースS(所定のスペース)を推定し、更に、他車両である車両M1が必要スペースSに到達するまでに要する時間T2を演算する(ステップS12)。ここで、駐車スペースに駐車するまでに要する時間T1は、駐車スペースや通路の大きさなどの駐車場の環境情報と過去の駐車履歴から算出することができる。また、必要スペースSは、駐車スペースのみならず当該駐車スペースへの進入に必要となる通路上のスペースも含んでおり、各ドライバーが予め設定した駐車操作時に近寄って欲しくない領域(例えば10m、車2台分など)を加えて設定したスペースである。この必要スペースSは過去の駐車履歴などから推定することができる。
【0019】
次に、演算部4は、S12で取得した時間T1と時間T2とを比較する。時間T1が時間T2以下であった場合、すなわちT1≦T2の関係が成り立つ場合は、図3に示す制御処理は終了する。一方、S14においてT1>T2と判定された場合、演算部4は、車両M1の運転者にとって他の駐車スペースの空き及び別ルートがあるか否かを判定する(ステップS16)。図2に示す例によれば、空きスペースASと別ルートL2が検出できた場合は、空きスペース及び別ルートありと判定する。S16において空きスペース及び別ルートがないと判定された場合、制御部5は、通信器3を介して車両M1の速度を制御する(ステップS24)。具体的には、車両M1が必要スペースSに進入するまでにかかる時間T2が時間T1以上となるように車両M1の車速を遅くし、あるいは必要スペースSの手前で停車するように制御する。
【0020】
一方、S16において空きスペース及び別ルートがあると判定された場合、演算部4は、他車両である車両M1が本通路L1を通過して他の空きスペースASにまで到着するまでにかかる時間T3を演算すると共に、車両M1が別ルートL2を通過して他の空きスペースASへ到着するまでにかかる時間T4を演算する(ステップS18)。時間T3は、自車両である車両M2の駐車時間を考慮して演算される。次に、S18で演算した時間T3と時間T4の比較を行う(ステップS20)。S20において、時間T3≦時間T4と判定されると、制御部5はS24と同様の処理を行う。一方、S20において時間T3>時間T4と判定されると、車両M2の制御部5は、通信器3を介して車両M1に別ルートL2を通知すると共にナビゲートする(ステップS22)。S22の処理が終了すると図3に示す制御処理は終了する。
【0021】
次に、図2に示す車両M2が駐車スペースに駐車をする際に他車両に対して当該駐車スペースを譲る場合に車両M2において行われる制御処理について説明する。図4に示すように、本制御処理においても図3に示すS10〜S14と同様の処理がなされる。S14において時間T1>時間T2と判定されると、車両M2の演算部4は、本通路L1の先に駐車の空きスペースがあるか否かを判定する(ステップS30)。S30において、空きスペースASがないと判定されると、車両M2の制御部5は、通信器3を介して車両M1の速度を制御する(ステップS34)。具体的には、車両M1が必要スペースSに進入するまでにかかる時間T2が時間T1以上となるように車両M1の車速を遅くし、あるいは必要スペースSの手前で停車するように制御する。一方、S30において本通路L1の先に空きスペースASがあると判定されると、車両M2の制御部5は、自車両に対して空きスペースASの位置とルート情報を通知してナビゲートするように制御を行う(ステップS32)。これによって、車両M2は車両M1に駐車スペースを譲り、先の空きスペースASへ向かうことができる。S32の処理が終了すると図4に示す制御処理は終了する。
【0022】
次に、図2の車両M2が駐車スペースに駐車した後、当該駐車スペースから発進する際に車両において行われる制御処理について説明する。図5に示すように、本制御処理においても図3に示すS10〜S14と同様の処理がなされる。ただし、図5の処理においては、時間T1は車両M2の駐車スペースからの発進に要する時間であり、必要スペースSは、車両M2が発進をするのに要するスペースであり、図3、図4に示す制御処理における必要スペースSよりも狭く設定することができる。S14において時間T1>時間T2と判定されると、車両M2の演算部4は、他車両である車両M1が駐車スペースを探しているか否かを判定する(ステップS40)。S40において、車両M1が駐車スペースを探していると判定された場合、車両M2の制御部5は、自車両が駐車しているスペースから発進して当該駐車スペースを譲るべく、通信器3を介して車両M1の速度を制御する(ステップS44)。具体的には、車両M2が駐車スペースから出るのに要する時間情報を車両M1に送信すると共に、当該時間が経過するまで、車両M1が必要スペースSに進入しないように車両M1の車速を遅くし、あるいは必要スペースSの手前で停車するように制御する。このとき、車両M1の運転者に車両M2が駐車スペースを出るまでの時間を通知してもよい。一方、他車両である車両M1が駐車スペースを探していないと判定された場合、車両M2の制御部5は、車両M1が自車両の手前の通路を通過するまで発進しないように、スピーカーやモニタを介して自車両の運転者に注意喚起を行う(ステップS42)。
【0023】
以上によって、本実施形態に係る運転支援装置1によれば、駐車場の所定の駐車スペースに車両M2が駐車するのに要する時間、あるいは駐車スペースから車両M2が発進するのに要する時間に基づいて他の車両M1の運転支援を行うことによって、例えば、自車両が駐車スペースに駐車する場合は、他車両を制御して駐車中は自車両に接近できないように速度制限や停車をさせ、あるいは別ルートを通過させることによって、自車両の運転者は心理的なプレッシャーや空間的な障害を受けることなくスムーズに駐車することができる。また、自車両が駐車スペースから発進する場合も、発進中に他車両の速度制御などを行うことによって速やかに発進し、その結果として他車両の駐車も速やかに駐車させることが可能となる。以上によって、円滑に駐車を行うことができる。
【0024】
また、本実施形態に係る運転支援装置1では、自車両が駐車スペースに駐車している最中や発進する最中は他車両が近づかないように制御することが可能となり、これによって、自車両の運転者は心理的なプレッシャーや空間的な障害を受けることなくスムーズに駐車することができる。
【0025】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0026】
例えば、上述の実施形態では、他の空きスペースがあるか否かの判定を行ったが、これに代えて出口があるか否かを判定してもよい。また、必要スペースSは図2に示した範囲に限定されず、駐車場の通路の広さや運転者の熟練度に応じて適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1…運転支援装置、M1…車両(一の車両、他の車両)、M2…車両(一の車両、他の車両)、S…必要スペース(所定のスペース)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車場の所定の駐車スペースに一の車両を駐車するのに要する時間、あるいは前記所定の駐車スペースから前記一の車両が発進するのに要する時間に基づいて、他の車両の運転支援を行うことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記他の車両が前記一の車両周辺の所定のスペースに進入しないように、前記他の車両の運転支援を行うことを特徴とする請求項1記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−244461(P2010−244461A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94924(P2009−94924)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】