説明

運転模擬装置

【課題】操作者がいわゆる「VR酔」を起こしにくい運転模擬装置を提供する。
【解決手段】操作者が模擬運転席11に座り運転を模擬する運転模擬装置10において、模擬運転席11の前方に設けられ、模擬運転の操作を行う操作手段が取り付けられているベース筐体14と、ベース筐体14に載置されて模擬運転画像を表示するモニタ20とを備え、モニタ20は、ベース筐体14に対して移動可能に取り付けられており、模擬運転席11とモニタ20との間隔を操作者の任意に変更可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作者の操作に応答して仮想空間内の移動体を移動させて運転を模擬する運転模擬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者や違反者などを対象とした運転講習において、自動車を実際に運転する代わりに仮想空間内を移動する移動体を操作して運転を疑似体験できる運転模擬装置が用いられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−150038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際の自動車の運転経験が豊富な人など、過去の経験によって記憶された感覚情報の組み合わせと、従来の運転模擬装置にて移動体を操作する際にモニタに表示された模擬運転画像から得られる感覚情報とが異なるため、いわゆる「VR酔」や「シミュレータ酔」と呼ばれる乗物酔いに似た症状を起こすことがあった。
【0005】
そこで、本発明は、操作者がいわゆる「VR酔」を起こしにくい運転模擬装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の運転模擬装置は、操作者が模擬運転席に座り運転を模擬する運転模擬装置であって、前記模擬運転席の前方に設けられ、前記模擬運転の操作を行う操作手段が取り付けられているベース筐体と、前記ベース筐体に載置されて模擬運転画像を表示するモニタとを備え、前記モニタは、前記ベース筐体に対して移動可能に取り付けられており、前記模擬運転席と当該モニタとの間隔が変更可能であることを特徴とする。
【0007】
また、前記モニタは、把持部を備え、前記把持部は、前記模擬運転席に座っている操作者が左手で把持する左手用把持部と、右手で把持する右手用把持部とからなることが好適である。これにより、操作者は模擬運転席に座っている状態でモニタを移動させることができる。
【0008】
また、前記モニタの移動を制止するロック機構と、前記模擬運転席に座っている操作者が操作することで前記ロック機構の制止を解除する解除手段を備え、前記解除手段は、前記左手用把持部および前記右手用把持部のそれぞれに1つずつ設けられており、全ての解除手段が同時に操作されているときに前記制止を解除することが好適である。これにより、操作者は、モニタを移動させる際には、両手で同時に解除手段を操作している必要があり、したがって、例えば、片手で移動させながら他方の手をモニタとベース筐体との間に挟まれるといった危険を防ぐことができる。
【0009】
また、前記操作手段は、前記模擬運転席の前方の略中央に設けられたステアリングホイールを含み、前記把持部は、前記モニタの画面の下方近傍で、且つ、前記ステアリングホイールを挟んで対向する位置に1つずつ配設されていることが好適である。これにより、操作者は模擬運転席に座った状態で容易にモニタを移動させることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上の通り、本発明によれば、モニタと模擬運転席との間隔を運転者の任意に調節することができ、運転者にとって最も好適な、いわゆる「VR酔」を起こしにくい位置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態による運転模擬装置の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による運転模擬装置のモニタ付近を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態による運転模擬装置のロック機構の構成を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、運転模擬装置10は実際の乗用車の運転席を模した筐体で構成されている。模擬運転席11の周囲には、模擬運転を行う際に操作する方向指示スイッチ12やステアリングホイール13(操作手段)が、実際の乗用車とほぼ同一の位置関係で設けられており、それらを操作した際の模擬運転における作用も、実際の乗用車において操作した際の作用を模すものとなっている。
【0014】
ステアリングホイール13は、模擬運転席11の前方の略中央となるように、模擬運転席11の前方に設けられたベース筐体14に取り付けられている。ベース筐体14の下方にはアクセルペダル15及びブレーキペダル16が設けられており、ステアリングホイール13と同様に、模擬運転において実際の乗用車と同様に操作される。また、ベース筐体14は、模擬運転席11が取り付けられている筐体17とは別体であり、運転模擬装置10を搬送する際などに分離することが可能となっている。
【0015】
なお、ベース筐体14と筐体17とが一体となっている構成であっても良く、その場合、模擬運転席の前方にあってステアリングホイールが取り付けられている、実際の乗用車におけるダッシュボードを模している部分がベース筐体として機能する。
【0016】
ベース筐体14上には、モニタ20が載置されている。モニタ20には、実際の自動車の運転席に座った運転手から見える風景を模した模擬運転画像が表示される。模擬運転画像は図示しないコンピュータ等の制御装置によって既存技術のいずれかを以て生成、表示される。
【0017】
ベース筐体14の上面14aには、模擬運転席11から見て奥行き方向をスライド方向とする直動スライダ21が2本、互いに平行となるように埋設されており、モニタ20は該直動スライダ21のそれぞれを介してベース筐体14と連結されている。即ち、モニタ20は、直動スライダ21にガイドされながら、模擬運転席11の方向とモニタ20との角度を一定に保ちながら、ベース筐体14の上面14aにおいて、模擬運転席11に対して近づいたり、遠ざかったりすることができるようになっている。操作者は、モニタ20をベース筐体14上で移動させ、模擬運転席11とモニタ20との間隔を任意に調整することができるので、模擬運転席11、ステアリングホイール13及びモニタ20の位置関係を、操作者にとって最も違和感のない(経験上の実際の乗用車に最も近い)関係とすることができ、いわゆる「VR酔」を起こしにくいものとすることができる。
【0018】
なお、ベース筐体14とモニタ20との連結は、上記の直動スライダを介したものに限られず、モニタがベース筐体上で移動可能であれば、例えば、モニタ下面から下方に突出するピンをベース筐体の上面14aに設けた溝に差し込むといった単純なものなど、適宜の構成とすればよい。
【0019】
図2に示すように、モニタ20の画面20aは、画面20aを囲む略矩形の枠部20bによって保持されている。画面20aの下方近傍となる枠部20bの、模擬運転席11に座っている操作者側に対向する面上には、アーチ形状のバーからなる把持部25がモニタ20と一体となるように組みつけられて手前に突出している。
【0020】
把持部25は、模擬運転席11に座っている操作者が手を伸ばして把持することができ、操作者の左手で把持する左手用把持部26と、右手で把持する右手用把持部27とから構成されている。左手用把持部26は、模擬運転席11に座っている操作者から見て、ステアリングホイール13の左側に、右手用把持部27は、模擬運転席11に座っている操作者から見て、ステアリングホイール13の右側に配置されている。
【0021】
さらに、左手用把持部26及び右手用把持部27の内側には、ロック解除レバー30(解除手段)がそれぞれ1つずつ設けられており、模擬運転席11に座っている操作者が、把持部25を把持しながら、ロック解除レバー30を模擬運転席11の方向(操作者の手前側)へ引くと、各ロック解除レバーに対応するロック機構40(図3に図示)によるモニタ20の移動に対する制止が解除される。即ち、ロック解除レバー30のいずれか一つのみを引いても、他のロック解除レバー30に対応するロック機構40の制止が解除されないため、操作者は、モニタ20を移動させることができない。これにより、操作者は、両手で、両方のロック解除レバー30を同時に引く必要があり、したがって、片手が空くことが無いために、片手でモニタ20を移動させながら他方の手をモニタ20とベース筐体14との間に挟まれるといった危険を防ぐことができる。
【0022】
なお、ロック解除レバー30を同時に操作するとは、制止解除のために引く動作の開始及び終了とも同時ということではなく、全てのロック機構40が制止を解除する状態に同時になればよく、例えば、一方のロック解除レバー30を先に引き、その状態を維持しながら他方のロック解除レバー30を引く場合も、同時に操作されたこととする。
【0023】
なお、把持部は、上記のようなアーチ形状のバーに限られず、模擬運転席に座っている操作者が把持できるものであれば、例えば、ノブ形状など、適宜の形態とすればよい。
【0024】
ロック機構40の主要な要素のみを図3に示す。図示されている各要素は、図3では省略されている適宜のブラケット等によってそれぞれがモニタ20の内部またはベース筐体14の内部にて支持されており、後述するように、これらの可動範囲は制限または固定されている。また、図3では左手用把持部26に対応するロック機構40を示したが、右手用把持部27に対応するロック機構40も同じ構成となっている。
【0025】
ロック機構40は、ワイヤ41、下プーリー42、上プーリー43、スプリング44、ストッパーブロック45、ガイドブロック46を含んでおり、これらが連動することによってモニタ20の移動を制止する。以降、模擬運転席に座る操作者側を前側として説明する。
【0026】
ワイヤ41は、その前端部41aをロック解除レバー30に、ブラケット47を介して連結されており、ロック解除レバー30の動きに合わせて前端部41aは前後方向に移動するようになっている。ワイヤ41の後端部41bは、上下方向を中心軸とする円柱形状のストッパーブロック45の上端に連結されており、前端部41aの前後方向への移動に伴ってストッパーブロック45も移動する。ワイヤ41は、前端部41aから後端部41bに至るまでに下プーリー42及び上プーリー43に掛け渡されることによって、前端部41aの前後方法への移動に伴う後端部41bの移動は上下方向に変化されている。このため、ストッパーブロック45は、ロック解除レバー30を前方に引いたときには上方向に、後方に戻したときには下後方に移動する。
【0027】
ストッパーブロック45は、スプリング44によって常に下方向へ付勢されており、したがって操作者は、ロック解除レバー30を引くにはスプリング44の付勢に対抗する必要があるが、逆に、ロック解除レバー30を引いた状態から開放すると、スプリング44の付勢によって自動的に最も後ろ側の位置に戻ることになる。この後ろ側の位置は、ロック解除レバー30をモニタ20の内部にて支持する部材(図示省略)によって規制される位置であり、その位置にある場合にモニタ20の移動が制止されるよう調整されている。
【0028】
ガイドブロック46は、その上面46aが露呈するようにベース筐体14の上面14aに埋設されている。上面46aには前後方向の列状に孔46bが複数設けられており、孔46bのいずれかにストッパーブロック45が差し込まれる。ストッパーブロック46は、これをモニタ20の内部にて支持する部材(図示省略)によって、上下方向を除く方向への移動が規制されており、したがって、ストッパーブロック45が孔46bに差し込まれた状態のときにモニタ20の移動は制止される。操作者が、ロック解除レバー30を引くとストッパーブロック45が孔46bから引き抜かれ、モニタ20は移動可能になり、移動後にロック解除レバー30を引いた状態から開放すると、移動前とは異なる孔46bにストッパーブロック45が差し込まれ、モニタ20は新たな位置にて移動が制止される。
【0029】
なお、ロック機構は上記形態に限られず、モニタの移動を任意に制止及び解除できるものであれば、例えば、電磁ブレーキにてレールを挟んだり開放したりする構成とするなど、適宜の形態としてもよい。また、ロック機構の形態に応じて、解除手段の形態も、例えば、先述の電磁クラッチを用いていれば、それへの通電のオン・オフを切り替えるスイッチとるなど、適宜の形態とすればよい。
【0030】
なお、上記実施形態では、モニタ20を移動させても画面20aに表示される模擬運転画像にはなんらの変化も与えていないが、これを、モニタの移動に応じて仮想空間を画面に投影する際の視野角が変化するようにしてもよい。例えば、ベース筐体上にモニタの位置を検出するセンサを設け、検出された位置に基づいて、模擬運転席に近づく際には視野角を狭くし、遠ざかる際に視野角を広くすることで、模擬運転画像から得られる感覚を、実際の乗用車を運転する際の感覚に近づけることができる。
【符号の説明】
【0031】
10…運転模擬装置
11…模擬運転席
13…ステアリングホイール
14…ベース筐体
20…モニタ
25…把持部
26…左手用把持部
27…右手用把持部
30…ロック解除レバー
40…ロック機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者が模擬運転席に座り運転を模擬する運転模擬装置であって、
前記模擬運転席の前方に設けられ、前記模擬運転の操作を行う操作手段が取り付けられているベース筐体と、
前記ベース筐体に載置されて模擬運転画像を表示するモニタとを備え、
前記モニタは、前記ベース筐体に対して移動可能に取り付けられており、前記模擬運転席と当該モニタとの間隔が変更可能である
ことを特徴とする運転模擬装置。
【請求項2】
前記モニタは、把持部を備え、
前記把持部は、前記模擬運転席に座っている操作者が左手で把持する左手用把持部と、右手で把持する右手用把持部とからなる
ことを特徴とする請求項1記載の運転模擬装置。
【請求項3】
前記モニタの移動を制止するロック機構と、前記模擬運転席に座っている操作者が操作することで前記ロック機構の制止を解除する解除手段を備え、
前記解除手段は、前記左手用把持部および前記右手用把持部のそれぞれに1つずつ設けられており、全ての解除手段が同時に操作されたときに前記制止を解除する
ことを特徴とする請求項2記載の運転模擬装置。
【請求項4】
前記操作手段は、前記模擬運転席の前方の略中央に設けられたステアリングホイールを含み、
前記把持部は、前記モニタの画面の下方近傍で、且つ、前記ステアリングホイールを挟んで対向する位置に1つずつ配設されていることを特徴とする請求項2または3記載の運転模擬装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−53090(P2012−53090A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193151(P2010−193151)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000132471)株式会社セガ (811)