説明

過大部品の通過規制部

【課題】部品の移動軌跡に応じて異常部品の通過を規制する過大部品の通過規制部。
【解決手段】過大部品に異常な移動軌跡を形成させる規制突起20が、部品の滑動面18から突出した状態で設けられ、規制突起20に部品の移送方向24に向かって高さが徐々に高くなる傾斜面21が設けられ、この傾斜面21に沿って過大部品が移送されてきたときに過大部品の一部を受け止める規制壁25が規制突起20にほぼ対向する箇所に配置されている。したがって、傾斜面21によって異常な高さに達した部品は、その先端上部が規制壁25で受止められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通路を滑動する部品の中に過大部品が混在している場合、この過大部品の通過を規制する通過規制部に関している。
【背景技術】
【0002】
特許第3416770号公報には、プロジェクションナットの表裏関係が逆になっている場合、異常な向きのナットの通過を規制することが記載されている。その規制部の構造は、図5(A)に示されている。四角いプロジェクションナット1の四隅に、ナットの厚さ方向と横方向に突出した溶着用突起2が形成され、ゲート型の通過規制部材3において異常な向きのナット1の通過を制止することが記載されている。以下の説明において、プロジェクションナットを単にナットと表現する場合もある。
【0003】
この通過規制部材3には、溶着用突起2を通過させる広い通路幅の非規制部4と、溶着用突起2を通過させない狭い通路幅の規制部5が設けてある。図5に示すように、溶着用突起2が下側になったいわゆる表出しの正常な場合には、溶着用突起2の部分が非規制部4を通過する。一方、溶着用突起2が上側になったいわゆる裏向きの異常な場合には、溶着用突起2が規制部5にひっかかって通過が制止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3416770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載されているような通過規制部材3であると、通路幅という幅方向だけの構造・寸法によって異常な向きのナット1を制止するものであるから、図5(B)に示したような溶着用突起2がナット1の横方向には突出しないで、厚さ方向にだけ突出している場合には、表裏何れの向きであっても通過規制部材3を通過できることとなる。そのため異常な裏出しのまま送出されて行くと、正常な溶接が不可能となる。さらに、通路幅の広い非規制部4と通路幅の狭い規制部5を設ける必要があるので、その加工に手間取るという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、部品の移動軌跡に応じて異常部品の通過を規制する過大部品の通過規制部の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、過大部品に異常な移動軌跡を形成させる規制突起が、部品の滑動面から突出した状態で設けられ、前記規制突起に部品の移送方向に向かって高さが徐々に高くなる傾斜面が設けられ、この傾斜面に沿って過大部品が移送されてきたときに過大部品の一部を受け止める規制壁が規制突起にほぼ対向する箇所に配置されていることを特徴とする過大部品の通過規制部である。
【発明の効果】
【0008】
部品の滑動面から垂直な方向、すなわち部品の高さ方向において異常に過大な部品が滑動面に沿って移送されてくると、部品は前記傾斜面に沿って移動し、部品の先端上部の移動軌跡は異常に高い箇所を通過したものとなる。このような移動軌跡を描くので、部品の先端上部が前記規制壁に受止められる。したがって、高さが異常に高い部品は待機している規制壁によって通過が阻止されるので、異常寸法の部品が通過することが確実に防止される。そして、過大部品は規制壁で受止められる状態であり、狭い箇所に楔状に食い込むような状態で制止されるものではないから、制止された部品を移動方向とは逆方向に小さな力で戻して除去することが、簡単に実施できる。
【0009】
このように前記規制突起に部品の移送方向に向かって高さが徐々に高くなる傾斜面が設けられているので、高さが異常に高い部品を確実に制止することができるとともに、高さ方向に突起が形成された部品が移送されてくる場合、突起が上向きであれば突起部分の移動軌跡が異常に高い箇所を通過するので、突起部分が前記規制壁に受止められる。他方、突起が下向きであれば突起部分を前記傾斜面を避けて通過させることにより、部品の先端上部の移動軌跡の高さは正常な高さ位置となる。したがって、部品の先端上部は規制壁に受け止められることなく、正常に移送されてゆく。上述のように、突起付き部品の裏表によって、異常な向きの部品の通過を確実に規制することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記滑動面の両側に起立している横内面を有する本体部に蓋部材が固定され、この蓋部材に前記規制壁が形成されている請求項1記載の過大部品の通過規制部である。
【0011】
前記滑動面の両側に横内面を起立させることにより、本体部の断面形状がほぼコ字型となり、本体部の開放部を封鎖するように取り付けた蓋部材に前記規制壁が形成されているものであるから、簡単な構造で通過規制部が構成できる。また、蓋部材に規制壁が形成されているから、蓋部材の取り付け位置を部品の移送方向に前後させて調整することにより、過大部品の移動軌跡と規制壁との相対位置を適正に求めることができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記規制壁は、部品の移送方向に対してほぼ直交した状態で配置してある請求項1または請求項2記載の過大部品の通過規制部である。
【0013】
このような構成により、過大部品は確実に規制壁に受止められる。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記規制壁に制止されている過大部品を部品の移送方向とは逆の方へ排出する排出切り溝が前記蓋部材に形成されている請求項2または請求項3記載の過大部品の通過規制部である。
【0015】
前記規制壁で制止されている過大部品を除去するときには、細長い工具を前記排出切り溝に挿入し、過大部品を引っ掛けるようにして移送方向とは逆の方へ移動させて除去する。このような動作で過大部品を押し戻すものであるから、修復作業が簡素なものとなる。また、過大部品は規制壁に突き当たっているから、過大部品を押し戻すときの力が大幅に軽量化されて、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】通過規制部の平面図、断面図および立体図である。
【図2】通過規制部の規制動作を示す断面図である。
【図3】他の部品の規制状態を示す断面図である。
【図4】部品形状を示す立体図である。
【図5】従来技術を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、本発明の過大部品の通過規制部を実施するための形態を説明する。
【実施例1】
【0018】
図1〜図3は、本発明の実施例1を示す。
【0019】
最初に、通過規制の対象になる部品について説明する。
【0020】
図4(A)に示した部品は、鉄製のプロジェクションナット5である。ナット5は、四角い形状の本体6の中央にねじ孔7が形成され、本体6の片側の四隅に溶着用突起8が形成されている。この溶着用突起8は本体6の厚さ方向、つまりねじ孔7の軸線方向に突出している。しかし、溶着用突起8は図5(A)に示したようなナット5の厚さ方向と横方向に突出した型式のものであってもよい。なお、本体6は平面的に見ると、正方形であり、表面9と裏面10(図4(A)には図示していない)を有している。
【0021】
ナット5の各部の寸法は、正方形の一辺が12mm、本体6の厚さH1が5.5mm、溶着用突起8の突出高さH2は1mm、ねじ孔7の内径は6mmである。
【0022】
つぎに、通過規制部について説明する。
【0023】
通過規制部全体は、符号12で示されている。通過規制部12は通路部材13の途中または端部に配置してある。通路部材13は断面コ字型の部材であり、通過規制部12の前後に溶接してある。符号14は溶接部を示している。この通路部材13はナット5を移送するものとして種々な箇所に採用されている。例えば、移送振動が付与される円形ボウルの周囲に設けられたパーツフィーダの部品通路や、電気抵抗溶接機への部品供給通路などに採用されている。
【0024】
通過規制部12は、断面コ字型の本体部15に蓋部材16が溶接されたもので、その通路空間17は通路部材13の通路空間に連続している。本体部15の底面が部品の滑動面18とされ、その両側に起立した状態で横内面19が配置してある。滑動面18から突出した状態で規制突起20が形成してあり、この規制突起20に部品の移送方向に向かって高さが徐々に高くなる傾斜面21が設けられている。この傾斜面21は、滑動面18と滑らかに連続しており、また、滑動面18と平行になった頂面22とも滑らかに連続している。そして、規制突起20は、滑動面18の幅方向で見た中央部に配置され、その左右に通過空間23が形成してある。この通過空間23を溶着用突起8が通過する。
【0025】
部品は、矢線24で示した方向に移送される。移送は、振動式パーツフィーダのような方式でもよく、また、傾斜面を降下させたり噴射空気を吹き付けたりするものでよい。
【0026】
ここで規制の対象となる部品は、図4(A)に示したプロジェクションナット5であり、その溶着用突起8が下側になった表向きが正常な移送姿勢であり、その逆が裏向きの異常な移送姿勢である。後述の説明から明らかなように、溶着用突起8が上側になってその突出高さH2が突き出ている状態が過大部品としての形態である。この突出高さH2の部分が過大部品の一部に相当している。また、溶着用突起8が下側になってその高さH2が突き出ていない状態が正常部品としての形態である。したがって、この実施例は、ナット5の表裏を判別して異常な向きのナット5の通過を禁止するものである。
【0027】
ナット5が矢線24の方へ移送されつつあるとき、傾斜面21に沿って上側に変位する。このような移動軌跡が異常に高い箇所を通過する場合に、ナット5が規制壁25に受止められる。つまり、ナット5の先端上部が突き出た溶着用突起8であり、この溶着用突起8が規制壁25に受止められる。この規制壁25は、規制突起20にほぼ対向する箇所に配置されており、ここでは蓋部材16の一部に形成されている。規制壁25を形成する構造としては色々なものが採用できる。ここでは、蓋部材16に切り溝26が形成されたもので、規制壁25の壁面は矢線24方向に対して垂直な方向、すなわち通過空間17の幅方向に形成してある。規制壁25の壁面は、ナット5の移送方向に対してほぼ直交した状態で配置してある。
【0028】
規制壁25に制止されている裏向きナット5を移送方向とは逆の方へ排出する排出切り溝28が前記蓋部材16に形成されている。この排出切り溝28は、前記切り溝26の近傍から通路空間17の中心に沿って移送方向とは逆方向に延びた状態で形成され、蓋部材16の端部に開放されている。
【0029】
つぎに、ナットの通過が規制される状態を説明する。
【0030】
ナット5が裏向きになった過大部品の場合を説明する。
【0031】
図2(A1)はナット5が裏向きになって移送されてきた場合を示す。そして、同図のA2矢視図が図2(A2)である。2点鎖線図示のように、移送されてきたナット5が傾斜面21に沿って移動すると、ナット5の先端上部である溶着用突起8が異常に高い箇所を通過する移動軌跡を描くこととなる。これによって切り溝26の空間内に溶着用突起8が進入し、さらに進行すると溶着用突起8の前面部が規制壁25に突き当たる。このときには、同図(A2)図に示すように、ナット5の表面9が頂面22の後端部に乗り上げた状態になっている。
【0032】
このように異常な向きのナット5の通過が禁止されている状態で、棒状の工具を排出切り溝28から挿入し、ナット5に引っ掛けて工具を移送方向とは逆方向に移動させる。ナット5はその溶着用突起8の前面部が規制壁25に突き当たっているだけであるから、その逆方向へ押し戻す力は極わずかなものとなり、ナット除去作業が簡単に行える。
【0033】
ナット5が表向きになった正常部品の場合を説明する。
【0034】
図2(B1)はナット5が表向きになって移送されてきた場合を示す。そして、同図のB2矢視図が図2(B2)である。2点鎖線図示のように、移送されてきたナット5が傾斜面21に沿って移動すると、両側の溶着用突起8は通過空間23を通過しながら、裏面10の先端部が傾斜面21を滑動し行く。このように溶着用突起8が通過空間23を通過しているので、ナット5の先端上部が正常な高さの箇所を通過する移動軌跡を描くこととなる。これによって切り溝26の空間内にナット5の先端上部が進入することなく、規制壁25に接触しないで通過して行く。
【0035】
図2(C)に示すように、通過規制部12を起立させることも可能である。このときには微弱は永久磁石29を規制突起20の背後に取り付けて、ナット5が規制突起20に密着するようにすることが望ましい。
【0036】
つぎに、異なった部品形状の場合を説明する。
【0037】
図4(B)に実線で示した四角い形状のブロック部品30の場合であり、縦13mm、横13mm、高さH1が5mmである。このようなブロック部品30が正常部品として移送するのであるが、縦横寸法が同じで高さがH2だけ過大な部品が混入しているときに、この過大部品の通過を阻止する。ここでのH2は2mmである。
【0038】
図3に示すように、ここでの規制壁25は、前述のような切り溝26を設けたものではなく、蓋部材16の端面によって形成されている。したがって、排出切り溝28もここでは設けられていない。また、この例では、規制突起20の幅を通過空間17の全幅にわたって形成してもよい。
【0039】
実線図示の過大部品が規制壁25に突き当たり、正常部品が2点鎖線図示のように通過して行く動作は、先の例と同じである。それ以外の構成は、図示されていない部分も含めて先の実例と同じであり、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
【0040】
以上に説明した実施例1の作用効果は、つぎのとおりである。
【0041】
部品の滑動面から垂直な方向、すなわちナット5またはブロック部品30の高さ方向において異常に過大な部品5または30が滑動面18に沿って移送されてくると、部品5または30は前記傾斜面21に沿って移動し、部品5または30の先端上部の移動軌跡は異常に高い箇所を通過したものとなる。このような移動軌跡を描くので、部品5または30の先端上部が前記規制壁25に受止められる。したがって、高さが異常に高い部品5または30は待機している規制壁25によって通過が阻止されるので、異常寸法の部品5または30が通過することが確実に防止される。そして、過大部品は規制壁25で受止められる状態であり、狭い箇所に楔状に食い込むような状態で制止されるものではないから、制止された部品5または30を移動方向とは逆方向に小さな力で戻して除去することが、簡単に実施できる。
【0042】
このように前記規制突起20に部品の移送方向24に向かって高さが徐々に高くなる傾斜面21が設けられているので、高さが異常に高い部品5または30を確実に制止することができるとともに、高さ方向に溶着用突起8が形成されたプロジェクションナット5が移送されてくる場合、溶着用突起8が上向きであれば突起部分の移動軌跡が異常に高い箇所を通過するので、溶着用突起8の前面部が前記規制壁25に受止められる。他方、溶着用突起8が下向きであれば、突起部分を通過空間23を通過させることにより、ナット5の先端上部の移動軌跡の高さは正常な高さ位置となる。したがって、ナット5の先端上部は規制壁25に受け止められることなく、正常に移送されてゆく。上述のように、突起付きプロジェクションナット5の裏表によって、異常な向きのナット5の通過を確実に規制することができる。
【0043】
前記滑動面18の両側に起立している横内面19を有する本体部15に蓋部材16が固定され、この蓋部材16に前記規制壁25が形成されている。
【0044】
前記滑動面18の両側に横内面19を起立させることにより、本体部15の断面形状がほぼコ字型となり、本体部15の開放部を封鎖するように取り付けた蓋部材16に前記規制壁25が形成されているものであるから、簡単な構造で通過規制部12が構成できる。また、蓋部材16に規制壁25が形成されているから、蓋部材16の取り付け位置を部品5の移送方向に前後させて調整することにより、過大部品の移動軌跡と規制壁25との相対位置を適正に求めることができる。
【0045】
前記規制壁25は、部品5または30の移送方向に対してほぼ直交した状態で配置してある。
【0046】
このような構成により、過大部品は確実に規制壁25に受止められる。
【0047】
前記規制壁25に制止されている過大部品をナット5の移送方向とは逆の方へ排出する排出切り溝28が前記蓋部材16に形成されている。
【0048】
前記規制壁25で制止されている過大部品を除去するときには、細長い工具を前記排出切り溝28に挿入し、裏向きナット5を引っ掛けるようにして移送方向とは逆の方へ移動させて除去する。このような動作で裏向きナット5を押し戻すものであるから、修復作業が簡素なものとなる。また、過大部品は規制壁に突き当たっているから、過大部品を押し戻すときの力が大幅に軽量化されて、作業性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0049】
上述のように本発明は、部品の移動軌跡に応じて異常部品の通過を規制するものであるから、自動車の車体溶接工程や家庭電化製品の板金溶接工程におけるプロジェクションナット供給装置など広い産業分野で利用できる。
【符号の説明】
【0050】
5 プロジェクションナット
8 溶着用突起
12 通過規制部
15 本体部
16 蓋部材
17 通過空間
18 滑動面
19 横内面
20 規制突起
21 傾斜面
22 頂面
23 通過空間
25 規制壁
26 切り溝
28 排出切り溝
30 ブロック部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過大部品に異常な移動軌跡を形成させる規制突起が、部品の滑動面から突出した状態で設けられ、前記規制突起に部品の移送方向に向かって高さが徐々に高くなる傾斜面が設けられ、この傾斜面に沿って過大部品が移送されてきたときに過大部品の一部を受け止める規制壁が規制突起にほぼ対向する箇所に配置されていることを特徴とする過大部品の通過規制部。
【請求項2】
前記滑動面の両側に起立している横内面を有する本体部に蓋部材が固定され、この蓋部材に前記規制壁が形成されている請求項1記載の過大部品の通過規制部。
【請求項3】
前記規制壁は、部品の移送方向に対してほぼ直交した状態で配置してある請求項1または請求項2記載の過大部品の通過規制部。
【請求項4】
前記規制壁に制止されている過大部品を部品の移送方向とは逆の方へ排出する排出切り溝が前記蓋部材に形成されている請求項2または請求項3記載の過大部品の通過規制部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−79660(P2011−79660A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251320(P2009−251320)
【出願日】平成21年10月10日(2009.10.10)
【出願人】(000196886)
【Fターム(参考)】